https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180308-00000091-sasahi-pol

https://amd.c.yimg.jp/amd/20180308-00000091-sasahi-000-11-view.jpg
崖っぷちに立たされている麻生太郎財務相 (c)朝日新聞社

 国会が空転するなど連日、論議されている森友学園への国有地売却に関する決裁文書“改ざん”問題。財務省への包囲網が強まっている。

 自民党の二階俊博幹事長が政府に対し、資料などを速やかに国会に提出するよう昨夜、要求していたにもかかわらず、渦中にある財務省の対応はまたも「肩すかし」だった。

「原本のコピー」とする文書を8日、参院予算委員会の理事会に提出したものの、このコピーは昨年に国会に提出した文書と文言が同じものだった。

 朝日新聞によると、2015〜16年に財務省近畿財務局が学園と土地取引をした際に作った文書と、昨年2月に問題が表面化した後に財務省が国会議員に開示した文書の一部が異なり、当時の文書にある「特例的な内容となる」「価格提示を行う」などの文言が開示文書から消えていたという。

 野党はこの日も朝日が指摘した改ざん前の文書が存在するのかを問いただし、「他に文書が作られていないと明言してほしい」と財務省に迫った。

 だが、財務省の富山一成理財局次長は「調査は継続中」と繰り返し、書き換え文書の有無については最後まで答えなかった。

 さらには毎日新聞(8日付夕刊)が、財務省が国会に提出したものとは別の決裁文書にも「本件の特殊性に鑑み」「学園に価格提示を行う」と、朝日が報じた表現と似た文言があったと指摘した。この文書は近畿財務局が森友学園や国土交通省大阪航空局に売却の方針を通知した際のもので、近畿財務局への情報公開請求で入手したという。国会に提出された決裁文書になかった表現が、またもや明らかになったことで疑惑はさらに深まった。

 民進、共産、立憲民主などの野党は「説明が一ミリも進んでいない」と反発。その後の予算委集中審議への出席を拒否した。

 立憲民主党の福山哲郎幹事長はこう訴えた。

「今日の文書は与党の厳命で提出しろと言われたものであり、与党の面子も潰されたといわざるを得ません。与野党が参議院予算委員会で一致して、国会法104条に基づく資料の要求を政府に求めるべき」

 ある官僚はこう話す。

「公文書の書き換えが事実なら、近畿財務局の独断でできるわけはなく、本省も知っていたはず。それにしても、財務省はあちこちに痕跡を残している。交番の前で1万円札を拾って懐に入れたようなものです。こんなことが許されてはならないし、逮捕者が出て当然です」

 この官僚が指摘する「痕跡」とは、紙のコピーで8日に提出された決裁文書に書き込まれていたチェック印のことだ(資料写真参照)。昨年2月に問題が発覚した後に国会議員に開示された資料にはチェック印はなかった。つまり、チェック印はその後に誰かが書き加えたものと思われる。この点も野党は財務省に問いただしたが、同省の富山氏は「今、調査している」と繰り返すだけだった。

 なぜ、財務省は「調査中」を理由に事実上のゼロ回答を続けるのか。元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏は、こう分析する。

「朝日が報じたとおり書き換えが事実だと、現在、決裁文書の原本には2つの可能性があります。一つは、国会議員に提出されたものだけ内容が書き換えられていて、原本は正しい状態にあること。これは、原本を持っている大阪地検特捜部に『原本を使用したい』と言えば、すぐに突き合わせることができます。第二の可能性は、原本そのものが書き換えられていること。この場合は、誰が、どのような目的で書き換えたのかを調査しなければなりません。いずれの可能性も、有印公文書偽造・変造などの犯罪にあたる可能性があります」

 問題発覚から1週間が経過したが、沈静化の気配はない。与党内でも財務省の対応を批判する声が高まっている。

「副幹事長の小泉進次郎ら若手の間で、財務省の対応を批判する声が出ている。このまま、『調査中』という曖昧な対応で逃げ切ることは難しく、いずれ麻生太郎財務相の進退問題となる可能性もある。そうなれば、9月の総裁選に向け、政局に発展する危険性がでてきた」(与党関係者)

 国会から当分、目が離せない。(横田一/AERA dot.編集部・西岡千史)