2018/3/4 06:55神戸新聞NEXT
https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201803/0011036674.shtml

裁量労働制を巡る不適切なデータ処理問題を受け、政府は働き方改革関連法案から裁量労働制拡大の部分を削除する方針を決めた。制度導入によりサービス残業を強いられる労働者や、法案に反発していた兵庫県内の過労死遺族らはひとまず安堵(あんど)し、「働き過ぎを助長する」「十分な裁量のない若者に適用される恐れがある」と問題点を改めて指摘する。(末永陽子)

 裁量労働制は、働き手が業務時間を柔軟に決められる利点がある。一方で、企業側が残業代削減のため悪用する事例も相次ぎ、不動産やデザイン関連会社などが労働基準監督署から是正勧告・指導を受けている。

 「このままだと死んでしまう。会社を辞めて!」

 神戸市内のIT関連会社で働く30代男性は、体調を心配する妻の一言で退職を決意した。昨秋、妻に連れられて受診し、医師から「うつ病の一歩手前。すぐに休暇を取った方がいい」と言われた。「会社に人間扱いされていなかった」と思い至り、号泣したという。

 一昨年に事業リーダーになって以降、1カ月の残業は2倍の80時間に上り、繁忙期は100時間を超えた。納期に終われ、土日も自宅で仕事をこなした。

 会社は技術職の一部に裁量労働制を導入し、男性も対象となった。残業時間が減った先輩もいたが、男性はみなし労働時間を大幅に上回った。経験の浅かった男性は上司の指示で動かざるを得ず、「要領が悪い」とたびたび怒鳴られた。

 男性は「自分の裁量はなかった」と振り返り、「残業して過労死しても、本人のせいにされてしまう。そんな理不尽な制度を広めてほしくない」と憤る。

 政府は同法案で、裁量労働制を営業職などに拡大する方針だった。かつて20代の息子を過労死で亡くした女性は「営業職に拡大されれば、息子と同じような若者も対象となってしまう」と強調。「子どもを会社に奪われてしまう悲しみを、もう誰にも味わわせたくない」と訴える。

(以降ソースにて)