2018年2月4日 日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/222545

もはや言い逃れはできまい。選挙区内で衆院手帳や線香を配りまくり、有権者の「買収常態化」の疑惑が浮上している茂木敏充経済再生担当相。野党の追及に対して「違法性はない」などと突っぱねているが、本紙の調べで、茂木大臣の行為は極めて“クロ”に近いことが判明。さらにこの問題は現職の大物閣僚にまで“飛び火”し始めた。

 茂木大臣は線香については、1日の参院予算委で「2014〜16年に秘書が配布した」と言い、手帳についても先月30日の衆院予算委で、秘書が有権者に配っていたことを認めた。公職選挙法は、議員や候補者が選挙区内の有権者にカネやモノを贈ることを禁じている。それなのに茂木大臣は「政党支部の活動として配った」から「違法性はない」と強弁している。つまり、「オレが個人的に配ったわけじゃないからセーフ」と言いたいわけだ。

 しかし、公選法は「候補者の氏名が類推される方法」の寄付も禁じている。政党支部からの寄付だろうが、有権者が「茂木大臣の寄付」であることを推測できる場合はアウト。1日の参院予算委では、総務省の選挙部長が、秘書が議員名入りの名刺を渡した場合や、口頭で議員名を伝えた場合も「類推される方法」に含まれるとの見解を示した。

■“買収”行為は常態化

 茂木大臣は、秘書が名刺を渡していたのかについて「その場に居合わせておらず分からない」と逃げていたが、日刊ゲンダイは茂木大臣の選挙区内で手帳を受け取っていた有権者リストを入手。早速、リストに掲載された人を直撃すると、複数人から「手帳配布」について驚きの証言が次々と飛び出した。

「昔から顔見知りの秘書さんが『茂木事務所の○○です』と挨拶がてら、自宅に届けにきてくれます。過去に何回かありましたね。もちろん茂木先生からの頂き物と認識しています」(自営業・50代男性)

 違法という認識を持っていないからなのか、皆、明るく極めて口が軽い。自営業の70代男性は、「私は10年くらい前から手帳を定期的にもらっています。結構たくさんもらったなぁ。最近は去年の10月くらいだった。当然、茂木さんからの頂き物だと思っていますよ」。2人とも「政党支部の活動」として受け止めているのではなく、「茂木さん、いつも手帳をサンキュー」と思っているようだ。元選挙区内の住民によると、茂木大臣が線香や衆院手帳を配り始めたのは「20年くらい前から」というから、以来、茂木事務所の有権者の“買収”行為は常態化していた疑いが濃厚だ。茂木大臣が「今さら、わしゃ知らん」とトボケたってムリなのだ。政治資金に詳しい神戸学院大の上脇博之教授はこう言う。

「寄付を長年行ってきたということは、拠出側は『茂木氏の寄付』と明確に伝え、受ける側も当たり前のように茂木氏からと理解していたのでしょう。公選法違反の疑いは強く、極めて悪質です」

 さらに、ここにきて、問題は茂木大臣だけで終わりそうになくなってきた。複数の自民党議員にも茂木大臣同様、線香の“違法配布”疑惑が広がり始めたのだ。名前がざっと挙がっているだけでも、現職の大物閣僚や元大臣、ベテラン議員がゾロゾロだ。2日は維新以外の野党が結集し、茂木氏の問題について総務省へのヒアリングを始めたが、この問題はまだまだ長引きそうだ。