https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180109-00054085-gendaibiz-int

 昨年12月28日、韓国の文在寅大統領は、2015年12月に日韓が“最終的かつ不可逆的”な合意に至った慰安婦問題が解決されていないとの声明を発表した。政府間の合意を一方的に無視することは、通常では考えられない。しかし、この常識は韓国には通用しないと考えた方がよいようだ。

 今後、韓国政府はわが国への批判的な姿勢を強め、慰安婦問題の再交渉などを求める可能性がある。中国との首脳会談で目立った成果を上げられなかった文大統領は、そうすることによって国内での支持率を維持しようとしている。

 その韓国に対して、わが国は冷静に、日韓合意の遵守が重要との認識を示せばよい。それ以上の対応はとるべきでなく、必要でもないはずだ。

常識の通用しない国…?

 文大統領は日韓合意の交渉過程に問題があるとの見解を示しただけでなく、日韓政府が非公表としてきた資料を一方的に公開した。これは、国際政治の常識から逸脱している。本来であれば、韓国は安全保障の強化などを目指して米国、および、わが国との関係を強化する必要がある。国内でも、保守系、革新系の主要新聞からそうした指摘が出ている。

 文政権はそうした現実的な政策ではなく、一部の有権者にとって耳触りの良い主張=対日批判を選択した。本来、文大統領には国のリーダーとして日韓合意の意義を国民に解き、納得させる義務がある。

 しかし、実際には、同氏が“当たり前”の取り組みを進めることはかなり難しい。なぜなら、政財界を巻き込むスキャンダルを起こした朴前大統領への批判をうまく取り込んで、文氏は大統領に当選したからだ。

 文大統領の当選に関して、国際政治の専門家の中には「韓国の政治が、大衆の不満取り込み(人気取り)を重視する“ポピュリズム政治”に向かっている」と指摘する者もいる。日韓合意は前政権のレガシーだ。それを反故にしようとする考えを示すことは、過去との決別をアピールするために重要な取り組みといえる。

 また、中国との関係修復も思うようにいっていない。昨年12月の中韓首脳会談については、屈辱的な失敗だったとの国内世論もある。そのため、水準こそ高いものの、支持率のトレンドは低下している。この状況に歯止めをかけるためにも、文大統領は日韓合意の再交渉などを求める方針を示し、国内世論の悪化に歯止めをかけようとしている。

先行き不透明感は高まるばかり

 韓国の政治家は、状況が悪くなると対日批判を行うことが多い。それにより社会全体の一体感のようなものを引き出し、その場をしのげるという考えがあるのだろう。見方を変えれば、構造改革を進め国民の満足度を高めることが難しいということだ。

(略)