https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171213-00183353-okinawat-oki

 米軍ヘリの部品が園舎の屋根に落下したとみられる事故で、沖縄県宜野湾市の緑ヶ丘保育園に対し、米軍が落下の可能性を否定したことを引き合いに「自作自演では」などと誹謗(ひぼう)中傷する十数件の電話やメールが相次いでいる。命が脅かされただけでなく、心ない“言葉の暴力”が園児や保護者、園関係者を二重三重に苦しめている。神谷武宏園長は「こういうことがあると本当にきつい」と漏らした。

米軍の“否定”を機に

 神谷園長によると、米軍が事故発生翌日の8日に「飛行中の機体から落下した可能性は低い」との認識を示すと週明けの11日、園と園を運営する教会に中傷する電話がかかってきたという。

 「米軍は落としていないと言っている」「(落下の衝撃で壊れず)よっぽど丈夫なトタン屋根なんですね」「でっち上げて、よくそんな暇があるな」。電話の主は名乗らないまま「自作自演」を疑う批判の言葉を園長や園職員に言ったという。

 12日午前9時すぎには、子どもたちが登園する「保育園にとって一番忙しい時間」(園長)にも2件の電話があった。「週末にも電話があったようだが、閉園しているので詳しくは分からない。メールも5、6件ありいくつかは開いてしまったが、今は(受信を)はじいている」という。

 事故後、神谷園長と職員、保護者は「一緒に乗り越えよう」と励まし合いながら毎日を過ごしている。神谷園長は「みんなが一丸となろうとしていることが崩されるような感じで、怖くなる」と吐露した。

たたくことが娯楽に

◆安田浩一さん(ジャーナリスト)

 この1、2年で沖縄に対する日本社会の言説が底抜けしたと感じる。機動隊員の「土人発言」を政治家が差別でないと擁護し、基地建設に反対する人に「金をもらっている」「外国の工作員」とのデマをネットや一部メディアが拡散している。

 この風潮は東日本大震災の被災者や生活保護受給者、在日外国人にも及ぶ。マイノリティーが被害や当然の権利を訴えるたびに一部のグループから直接・間接の攻撃が加えられ、社会問題が「なかった」ことにされようとする。分かりやすい「敵」をつくり、たたくことが娯楽にすらなっており、非常に腹立たしい。

 今回の保育園への攻撃も、原因が解明されていない時点でデマと偏った断片情報を集め、「自作自演」と言い張る。この勢力には正当な議論が成り立たない。

 調査検証能力があるメディアが事実を積み上げ、報じ続けることでデマに対抗できる。大きな権力ほど非を認めない。米軍の言い分が事実か疑い、検証の徹底が求められている。(談)