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 「丁寧な説明」に続く安倍晋三首相のキーワードは「真摯(しんし)に受け止める」か−−。学校法人森友学園への国有地売却で値引きの根拠が不十分だと会計検査院が指摘した一件。11月30日まで4日間の国会論戦で首相は何度も繰り返したが、真相はあいまいなまま。それで真摯と言えるのか。【福永方人、岸達也】

 検査院が指摘するまで安倍首相は「売却の手続きも価格も適正だ」と言い続けてきた。これを共産党の辰巳孝太郎氏が30日の参院予算委員会で取り上げたが、何を問われようと首相は「真摯に受け止める」。辰巳氏は「謝罪すべきだ」と迫ったが「財務省や国土交通省からそう報告を受けた」として、訂正も謝罪もしなかった。

 28日の衆院予算委では「丁寧な説明」の中身を問われ、「政府が扱う森羅万象を全て私が説明できるわけではない」と発言。ならばなお関係者を国会に呼ぶべきだと畳みかけられた。真摯に受け止めると言うなら応じてもよさそうだが、首相は「国会で決めること」と後ろ向きだった。

 ジャーナリストの江川紹子さんは「安倍首相は、妻の昭恵氏や前財務省理財局長の佐川宣寿氏らに国会で証言させるべきだ。野党がそれ以上追及できなければ疑惑はそれで終わるかもしれない。政府・与党にマイナスばかりではないはずだ」と首をかしげる。

 立命館大政策科学部の上久保誠人(かみくぼまさと)教授(現代日本政治論)は「首相や昭恵氏の直接関与はなく官僚がそんたくしたのだろうが、野党が追及しても証明できない」と見る。それでも「検査院の指摘に向き合い、過去の答弁の誤りを認めて謝罪すべきだ」と首相や財務省を批判。売却交渉の音声データと矛盾する答弁をした佐川氏について「虚偽答弁の可能性がある」と問題視する。

 近畿財務局に対する告発を受けて大阪地検特捜部は捜査を続けている。元検事の落合洋司弁護士は「背任容疑立証の壁は高い。北朝鮮情勢などを考えれば国会で森友、加計問題ばかり議論していていいのか」と疑問視するが、「疑惑に一定の結論を出し、他の重要課題を審議するためにも昭恵氏らの国会招致は必要だ」と語る。

 「首相は逃げまくっている。国民の疑念はむしろ深まった」と五十嵐仁・法政大名誉教授(政治学)は言う。「真摯に受け止めるというなら、資料を公開し、関係者を国会に呼んで正々堂々と議論すべきだ」