http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171128/KT171127ETI090003000.php

 大阪市の吉村洋文市長が米サンフランシスコ市との姉妹都市提携を解消する方針を打ち出した。中国、韓国系団体などがサンフランシスコ市内に設置した慰安婦問題を象徴する像を、市として受け入れる文書にリー市長が署名したからだという。

 姉妹都市提携は市民同士の取り組みにより、政府から離れた立場で交流、親善を発展させるために結ばれる。相手都市の市長が自分の政治心情に合わない行動に出たからといって、独断で解消するのは問題が多い。交流を重ねてきた両市の市民に対して失礼だ。

 発端は中国、韓国系市民でつくる団体が民有地に像を設置したことだった。中国、韓国、フィリピンの少女3人が背中合わせに手をつなぐデザインだ。碑文には「旧日本軍によって数十万の女性と少女が性奴隷にされた」「ほとんどが捕らわれの身のまま亡くなった」などの記述がある。

 団体は民有地を市に寄贈、市議会は像の受け入れを決めた。リー市長が22日、像を受け入れる文書に署名した。

 像設置と寄贈の動きに対し、橋下徹前市長はかねてサンフランシスコ市側に懸念を伝えていた。2015年秋に退任した橋下氏の後を継ぐ形で政治団体・大阪維新の会から立候補し、市長になった吉村氏が、前市長時代からの懸案事項で具体的行動に出ようとしているのが今の段階だ。

 吉村市長はリー市長宛ての公開書簡で述べている。「研究者の間でも議論が分かれる慰安婦の数、旧日本軍の関与の度合い、被害の規模について、一方的な主張を碑文に記することは歴史の直視ではなく日本批判である」

 そう考えるからといって姉妹都市解消を言い出すのは筋違いではないか。慰安婦問題については日本側でもさまざまな理解がある。碑文の内容に問題があると吉村市長が思うなら、個人の意見としてリー市長やサンフランシスコ市議会に伝えればいい。

 60年の歴史を持つ姉妹都市関係である。ケーブルカー寄贈、高校生の相互訪問、料理フェアなどの事業を重ねてきた。

 そうした取り組みに市長の一存で幕を引くのはやりすぎだ。

 自民、公明の市議団は交流の継続と、対話による問題解決を求める申し入れ書を市長宛てに提出した。公明市議の一人は「市民の声も聞かずに判断するのは拙速だ。このまま解消されるのはあまりに残念」と述べている。うなずく人は多いだろう。