https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171122-00000005-withnews-n_ame

 初めて日本を訪れたアメリカのトランプ大統領は、安倍晋三首相と「ドナルド」「シンゾー」と下の名前で呼び合うなど友好ムードが目立ち、日本のおもてなしにご満悦の様子でした。しかし、首脳会談後の記者会見では「トランプ節」も炸裂させていました。通訳されなかったアドリブ発言から見える、トランプ大統領の「本音」とは?(朝日新聞国際報道部・神田大介)

「これまでの50年以上で最も深い絆」と自賛

 トランプ氏は5日から7日にかけて日本に滞在。演説や会合のほか、安倍首相とはゴルフも楽しみました。6日にあった首脳会談のあとの会見で、安倍首相が「半世紀を超える日米同盟の歴史において、首脳同士がここまで濃密に、そして深い絆で結ばれた1年はなかったと思います」と言うと、トランプ氏は「あなたの意見に賛同します」と応じました。

 また、日本を「本当にすばらしい国ですね。驚くべき歴史、文化、伝統、精神を持っています」と称賛。「先の選挙での偉大な成功をお祝いします。たいへんな大勝であり楽勝だったこと、まったく驚きません」とも話し、自民党の衆院選での圧勝を持ち上げます。

 さらに「日本人は成功し、街は活気に満ちています。みなさんは世界で最もパワフルな経済の一つを作りました」と言ったところで、ピタリと動きが止まりました。

「そうだね? 日本は2位」

 「みなさんは世界で最もパワフルな経済の一つを作りました。……我々に並ぶほどかどうかは知りませんが。たぶん違うと思います。そうだね? 我々はそれ(順位)が維持されるようにします。あなた(日本)は2位です」

 映像を見ると、トランプ氏は「最もパワフルな経済の一つを作りました」までは下を向いています。演台に置いた原稿を読んでいる様子です。しかし、読み上げた文章が気に入らなかったのか、しばし沈黙して顔を上げ、安倍首相の方を向きます。そして放ったのは、「パワフルな経済と言っても俺たちほどじゃないし、この先もずっとそうだけどな」という趣旨の発言。

 アメリカの新聞ワシントン・ポストはこのやりとりについて、「我々に並ぶほどかどうか」以下はアドリブだったと指摘。「そうだね?」は親が子どもに言い聞かせるようだったと書いています。

 この部分、日本のテレビ局が中継した際の同時通訳をいくつか聞きましたが、いずれもうまく訳せていません。同時通訳自体がきわめて難しいということもありますが、トランプ氏が文脈とまったく違うことを突然言い出したため、対応しきれなかったのかもしれません。


(略)

隅に追いやられた安倍首相

 いずれの発言も、相手と場合によっては外交問題に発展してもおかしくありませんが、先のワシントンポスト紙を除くと、日本でもアメリカでもあまり報じられていません。

 トランプ氏の場合、無礼ととれる態度をとることがあまり珍しくないという事情があります。5月のヨーロッパ訪問でもモンテネグロの首相を押しのけて記念写真におさまろうとしたり、会合に遅刻したりといった不作法が話題に。今回のアジア歴訪では、フィリピンで予定されていた会議をドタキャンしてアメリカに帰ってしまいました。

 暴言では、メキシコ不法移民を「麻薬犯罪者」「強姦犯」などと決めつけ、テレビのキャスターを「IQが低い」「頭がおかしい」「サイコ(精神異常者)」などと攻撃。気に入らない政治家の「間抜け」「腰抜け」呼ばわりは日常茶飯事と言えるほどです。

 ただ、日本でトランプ氏が見せた態度は、どうも日本をアメリカよりも下に見ているような感じがあり、そこが気になります。

 訪日中、安倍首相はトランプ氏とゴルフをする前に、サプライズでプレゼントを用意していました。白いゴルフキャップで、「DONALD
& SHINZO MAKE ALLIANCE EVEN GREATER」(ドナルドとシンゾーは同盟をより良くする)と金色のししゅうがされていました。

 2人はつばの部分にサイン。写真をよく見ると、トランプ氏は中央に大きくサインをし、安倍首相はふちに追いやられていました。