ソース:2017年11月5日 04時02分(最終更新 11月5日 04時06分)
https://mainichi.jp/articles/20171105/ddv/010/070/019000c

衆議院選挙も終わり、与党が3分の2を超える議席を「漁夫の利」で獲得し、「謙虚に」「謙虚に」を連呼するお仲間をよそに、副総理が「北朝鮮のおかげ」と、「国難」を選挙利用したと受け取られても仕方がない不謹慎かつある意味正直な発言をした。森友・加計疑惑に「国会で丁寧に説明していく」と言っていたのが全くのうそであったことを裏付ける言動も連日露呈しているが、今度は「野党の質問の割当時間を削る」というすこぶる行儀の悪いことを言い出した。この政権の優先順位のおかしさ、狡猾(こうかつ)でアンフェアな姿勢もここまで臆面なくやるかといった印象だ。

 質問時間は議席数に応じて考えるべきだ、と一見筋が通っているような言い回しを用いているが、全くもっておかしい。麻生政権の時に「野党6、与党4」だったのを、民主党政権になって当時野党の自民党がごね、「野党8、与党2」のバランスになったのではなかったか。自分たちの政権運営で野党に突っ込まれると困る部分がよほど多いのか、野党の質問時間を減らすという暴挙に出たことは、ずるいうんぬんよりも、ただただ恥ずかしい。

 逆に、与党に質問の機会など与えることはないとすら感じる。前の自民党なら、党内にもさまざまな考えや立場の人がいたから与党への時間配分も当然だと感じる部分があったけれど、いまの与党にはトップが言ったことに何でも右へ倣えで、与党の質問時間こそが無駄であると言いたい。だから時間が余って般若心経を唱えるボンクラな質問までやらかしてしまうのだ。

 「もりかけ」からの逃走だと思われないために、若手からの要望のフリをしてるのではないかとも感じる。自分たちから言い出すと卑劣だと批判されてしまうから、「地方の声」「若手からの要望」という形にして、それを受けての「それもそうだ、当然だ」という演出をしたいのだろう。

 つまりは「これからも追及から逃げるぜ」という分かりやすい意思表示だ。こんなことのために大事な税金と時間をさらに浪費させることを、国民が許してはいけない。

 若手からの声とされている、地元からの「なぜもっと質問しないのか」という要求は噴飯だ。法案が出る前に身内で議論し調整すればいいだけのことだ。地元への説明こそ、己でやるべきではないのか。

 テレビのニュース番組でコメンテーターの後藤謙次氏が、「自民党が野党の時、質問時間をよこせ、よこせと。宮沢内閣の時は自民党側が自分たちの時間を譲った。自己都合。今の国会は審議時間至上主義で、審議時間を与党が支配してしまうと、時間が来たら、はい採決、となってしまう」と語っていたが、わかりやすい。同じ意見をだらだらしゃべり合って「十分審議に時間を費やした」と強行採決が繰り返されるばかりの無意味な国会になってしまうではないか。

 こんなばかなことを言って恥ずかしいという自覚症状はないのか。民意だというが、民意は安倍政権不支持が多数派なのだ。

 近年の与党からの質問というのは、つまりは「おべんちゃらトークショー」であって、身内の褒め合いを見せられるほうはむなしさを感じる以外にない。政権運営の「手前みそ大会」に多くの時間を使いたい、けれども野党からの批判、要望、提案、疑義には答えたくないということの表れ以外の何ものでもない。

 マスコミも中立を装っている場合ではない。明らかに間違っているのだから、総出で真っ向から批判すべき事件だろう。