https://news.yahoo.co.jp/byline/komazakihiroki/20171017-00077003/

 保育士かつ、保育園を20園運営している駒崎です。

 最近、起業家として著名なホリエモンこと堀江貴文さんが、Twitter上で以下のようなご発言をされて炎上する事件が勃発したようです。

 また、補足する形で、

 「誰でも(やろうとしたら大抵の人は)出来る(大変かもしれない)仕事だから希少性が低く(コンビニバイトなどと同様に)給料が上がらない構造になっている」

 という発言をされています。

 堀江さんは予防医療のプロジェクトをご一緒させて頂いており、その鋭い知性についてはリスペクトしています。

 ただ、今回に関してはおそらくは保育業界の構造について前提知識がなかったことで、かなりバイアスのかかった論理になってしまっているかと思います。

 以下、説明をしていきますので、堀江さんほどの方ならご理解頂けるでしょうし、またその他あまり保育業界に詳しくない一般の方々にも「なぜ保育士の給与が上がらないか」そして、それは保育士の仕事が「誰でもできる仕事」だからでは「ない」、ということを分かって頂けるかと思います。

中略

【保育士の給与を上げる方法】

 こうした仕組みに対し、保育士の給与を上げる方法があります。それは「補助金を増やすこと」です。

 実際、「保育園落ちた日本死ね」騒動によって政府も保育士不足と処遇の低さに気づき、保育士全体に2%(約6000円)+役職者には最大4万円の補助がいくように制度改正しました。

 しかし、まだまだ十分とは言えません。

 公立学校の先生の給与も、低賃金による教師不足を受けて、田中角栄政権の時に「人材確保法」が制定され、一気に25%改善し、一般公務員より高くなりました。

 保育業界には「人材確保法」は創られることがなかったのです。

【まとめ】

以上、簡単にまとめます。

・保育士の給与が上がらないのは、保育士の仕事が「誰でもできるから」ではない
・保育園が補助によって成り立っており、基礎収入が固定化されていて、混合保育も禁止されているので、収入が頭打ちである
・保育士が1人でみる子どもの数は決められていて、それは今でも非常に多いため、これ以上生産性は上げられないので、コストは削れない
・収入が頭打ちで、コストが削れないので、昇給原資となる利益が限定的になる
・これらは制度的な問題だが、補助金を増やせば保育士給与は上がる
・政府が予算を組んで実行すればできることなので、やろう

 大雑把に説明しましたが、世の中の誤解が解け、日夜子どもに懸命に向き合う幾万の同胞保育士の皆さんへのまなざしが、温かなものになることを願っています。

 また、保育士の給与が上がらないのは完全に人災ですが、こうした状況をつくっている政府と政治家を選んでいるのもまた我々なので、我々も投票という行為によって、変化の一歩を生み出していかねばならないことも、また事実だと思います。

 保育現場からは以上です。