毎日新聞 9/1(金) 21:03配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170901-00000097-mai-pol

 8月3日の内閣改造からまもなく1カ月。安倍晋三首相は通常国会閉会後の6月19日の記者会見で「真摯(しんし)に説明責任を果たす」と語り、改造の際も「謙虚に、丁寧に」と低姿勢を強調した。森友、加計学園問題など残る疑問点について、説明は進んだのだろうか。【佐藤丈一】

 「対抗勢力もある。非公開でお願いできたら」。国家戦略特区ワーキンググループ(WG)は8月25日、獣医学部新設を巡って2015年6月5日に愛媛県に行ったヒアリングの議事録を公開した。冒頭部分では、愛媛県が議事内容の非公開を要請し、八田達夫座長が「分かりました」と了承していた。

 一方、内閣府が3月に公開した議事要旨はこの部分を省略。「公開でいいか」との質問に愛媛県が「はい」と答えたことになっている。WGの原英史座長代理は食い違いについて「非公開の希望を公開するほうがネガティブだ。公開すべき内容は示しており問題ない」と説明するが、「改ざん以外の何物でもない」(民進党幹部)との批判は強い。

 WGはまた、ヒアリングに加計学園幹部が出席したことも認めているものの「『説明補助者』の非公式な発言だ」(原氏)と内容を伏せたままだ。

 「一点の曇りもない。議事録を読んでもらいたい」。首相はWGの公平性をこう強調してきた。「国家戦略特区の正体」(集英社新書)の著書がある立教大の郭洋春教授(国際経済論)は「WGは限られた人たちの密室の議論だ。議事録は国民が内容を知るただ一つの手段なのに、信ぴょう性が問われている。公平性を担保しにくい意思決定に問題がある」と疑問視する。

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 森友問題で野党から証人喚問要求も出た首相の妻昭恵氏。8月下旬、フェイスブックで「6月に植えた稲がスクスク育ち、花を付けています」と活動を紹介した。国が国有地を不当に安く売却した疑惑では、政権と学園の接点になった昭恵氏だが、公の場で説明に応じる気配はない。

 自衛隊の国連平和維持活動(PKO)の「日報」隠蔽(いんぺい)問題。特別防衛監察で未解明のまま残った稲田朋美元防衛相への事前報告に関し、小野寺五典防衛相は8月10日の国会答弁で「証言が一致しなかった」と深入りを避け、再調査も拒否した。

 民進党など野党4党が臨時国会の召集を要求したのは6月22日。政府・与党が調整する今月25日の召集となれば、要求から95日間も放置されることになる。民進党の代表選が政権側に猶予を与えた側面もあるものの、召集を要求から「20日以内」とした自民党の2012年の憲法改正草案とも矛盾する。

 官邸前の抗議活動などに詳しい五野井郁夫高千穂大教授(民主主義論)は「近年増えているデモの参加者には、退陣要求だけでなく首相の真意を聞きたいという人もおり、説明すれば納得する人も多い。国のトップが説明責任を果たさずに居直れば、長期的には社会や民主主義を腐敗させるのではないか」と警鐘を鳴らした。