西田亮介氏が分析 東京都議選の雪崩現象と「ポスト真実」
日刊ゲンダイ:2017年7月17日
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/209415
(全文は掲載元でどうぞ)

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 英ブレグジット(EU離脱)や米トランプ大統領誕生の昨年来、「ポスト真実」というキーワードをよく耳にする。
〈客観的事実より感情的な訴えかけの方が世論形成に大きく影響する状況〉を意味する言葉とされるが、都議選での反自民・親都民ファーストの雪崩現象の背景にも、「ポスト真実」があるのだろうか。
ネットなどの「情報と政治」の関係に詳しい気鋭の情報社会学者で東工大准教授の西田亮介氏を訪ね、分析してもらった。

■都議選結果に見る脊髄反射

  ――まず、都議選の結果を、どうご覧になりましたか。

 小池さん(都知事)が率いた都民ファーストは戦略戦術ともに練られていた一方で、自民党は自滅しました。これに尽きると思います。

  ――小池さんの戦術はどこが練られていた?

 仕掛け方に複合的なうまさがありました。
1つ目は、豊洲問題の争点化を避けたこと。
2つ目に、保育の重点化など生活に密着したテーマを掲げたこと。
過去の国政選挙などの世論調査でも、有権者の反応がいいのは景気対策と生活に密着した主題です。
3つ目に候補者に女性や新人が多く、フレッシュさをプレゼンテーションできたこと。
そして「小池、是か非か」の構図に仕立て上げたことです。

  ――自民の自滅は国政に原因があった。

 国政が足を引っ張ったことに尽きますが、大逆風にもかかわらず伝統的な選挙戦を展開し続けたことも失敗でした。
普通に考えれば、足を引っ張った張本人である安倍首相を秋葉原の街頭に立たせなくてもよいはずです。
伝統的な選挙では演説する人の「格」が重視されます。定型通りやらざるを得なかったのでしょう。

  ――今回の選挙結果もそうですが、世論は政治を見る時に、一極に寄る傾向が強まっているのではないか。

 脊髄反射的だと思います。
もっとも「わざわざ投票に行くなら都民ファーストに投票する」ように都民ファーストが仕掛けた作戦勝ちともいえますが。

  ――秋葉原での「安倍帰れコール」。都議選で象徴的な現象でした。

 仕掛けた人や秋葉原に集まった人たちは、秋葉原というネットに親和的な場所でコールが湧き起こるとどんなインパクトを持ちうるのか、ということをよく分かっていたといえそうです。
体制側のみならず相対するグループの中にも、こうした仕掛けに気づき始めている人たちがいる。

  ――よく分かっているというのは?

 メディアが動く力学についてです。
現場の実際の盛り上がりよりも、シンボリックな場所で、あるインシデント(事象)が起きた時に、ネットがどう盛り上がり、それを見たマスメディアが取り上げ、さらにどのような政治的影響力を持ちうるのか、といった全体の構図をイメージできるかどうかということです。
最近ではネットとマスメディアが直結するようになりましたが、そのメディア環境に対する介入は、2000年代に自民党が組織的に始めました。
今度の選挙では都民ファーストは相当意識的でしたし、小池さん自身も分かっている。それからシールズに代表される市民派の中にも同様のグループが出てきました。
13年にネット選挙が解禁されたこともあり、日本政治も少しずつ新しいメディア環境に適応しつつあると思います。

(以下省略)