6月5日、外国特派員協会(東京・有楽町)で元経済産業省のキャリア官僚の古賀茂明氏が記者会見を行った。これは、著書『日本中枢の狂謀』(講談社)の刊行を記念したもの。同書は、安倍晋三首相率いる一強政権の弊害や、そのマスメディア操作術など、日本の中枢の暗部に斬り込んだ内容だったが、会見場には朝日新聞以外の大手メディアの姿はなかった。今回、古賀氏は本誌の独占取材に応え、日本、そして安倍政権の闇を語った。

「先週も日本のマスコミについて、NYタイムズの東京支局長の取材を受けました。彼らの目には、日本の大手メディアは不思議そのものなんです。何か政権に問題があっても、報じないわけですからね。特に、政権とメディアトップとの距離は、海外メディアとの決定的な違いと言えます。前川(喜平氏、前文部科学省事務次官)さんの告発が出て、加計学園問題で世間が大騒ぎしている渦中ですよ、あろうことか、安倍首相とメディアトップの一人である、テレビ朝日の早河(洋)会長が会食しているんです。しかも、テレ朝の報道局長と政治部長、官邸詰め記者まで同席しているんです。しかも、そこに3時間も費やされている可能性もある。早河会長は、安倍首相や菅(義偉)官房長官と仲良しだと自慢したいのか、社内で“菅さんから電話だ”と周囲にこれみよがしに言って、中座するそうです。

 これでやりにくくなるのは、現場の記者。自分の会社の上層部が安倍首相らと“仲がいいアピール”をするわけですから、批判する記事を書いたり流したりすれば、上から何か言われるんじゃないかとなるのは当然です。記者は忙しいですから、そこで無為な時間を取られたくない。触らぬ神に祟りなしとなり、結果的に政権へのマイナス報道は減っていくわけです」

 古賀氏はかつて、イスラム国に誘拐された日本人ジャーナリスト問題で政府の対応のまずさを指摘し、当時出演していた『報道ステーション』(テレ朝系)で「I am not ABE」のフリップを掲げた(2015年3月27日放送)。すると、当時の中村格官房長官秘書官から同局の報道局ニュースセンター編集長の中村直樹氏に、「古賀は万死に値する」といった内容のショートメールが入ったと明かしている。

「僕の場合はたまたま、官房長官秘書官からの圧力でしたが、いろんなレベルで行われています。たとえば、官邸の広報官や事務方の官僚が、官邸詰めの記者個人に“昨日の報道なんだけど……”とやることも一つ。さらに官邸から見て放置できない記事だと判断すると、記者個人ではなく、政治部デスクや政治部長といった上司や周辺に抗議する。「I am not ABE」のときには、官邸が許せないと思ったから、報道局へ直に圧力が入ったんですよ。

 こうしたことは民主党政権時代にもありました。ただ、それは個別のクレームでした。安倍政権が民主党政権と決定的に違うのは、日常的かつ網羅的に文句をつけ、機を見てガーンとやること。従わなければ徹底的に個人攻撃してきます。それから、すでにお話したようにマスコミのトップを押さえていることですね。菅官房長官も官邸詰めの記者らを手なずけていますし、オフレコ取材を利用して自分たちの意思が漏れ伝わるようにもしている」

 加計学園問題で安倍政権が窮地に立つ中、安倍首相は6月24日に行った神戸市内での講演会で突然、これまで加計学園にしか認めなかった獣医学部を全国に解禁すると方針転換。6月25日放送の『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ系)は、安倍首相は周囲にその理由を「あまりにも批判が続くから頭にきて言った」と漏らしたと報じた。

「京都産業大学の参入の機会を奪い、加計学園に絞るための条件を設定したことに問題の本質があります。ところが官邸は、“安倍政権は岩盤規制に穴を開ける正義の味方”というすり替えを必死にやっているんです。それを証明するために、<閉鎖的な文科省に対して頭にきた。本当は全国で獣医学部を作りたかったんだ→しかし、文科省は認可しない→だから文科省は抵抗勢力>という論法にしたい。まあ、官邸にとって、そのシナリオ作りまではよかったんですが、演者(安倍首相)が悪くて、シナリオが国民に伝わりませんでした。そもそも、森友問題や加計学園の問題を通して、安倍総理自身への批判が最近の支持率低下につながっているわけですが、安倍総理は、“政策がちょっと悪かっただけ”だと思っていて、自分が攻撃されているとはいまだに思っていません」

2017年7月10日 6時0分 日刊大衆
http://news.livedoor.com/lite/article_detail/13314891/