たった今、NHKの都議選開票速報を最終確認して投稿ボタンを押した。まあ、情勢については選挙中の報道、そして各陣営の独自調査を仄聞していたので、ほぼ書き上げていたわけだが、ほぼ予定稿通り、都民ファーストの会は第1党になるどころか、公明党と合わせて都議会の過半数を大きく超える雲行きだ(午後8時現在)。自民党の議席は「過去最低」の大惨敗の情勢という。今回の都議選が、政局にあまりにも大きすぎる意味をもたらすのは必至だ。
小池陣営ピンチから一転…1か月で様変わりした政局

それにしても、小池知事は「悪運が強かった」というしかない。早川さんが指摘したように(http://agora-web.jp/archives/2026957-2.html)、この1か月であまりにも政界の風景が一変した。豊洲市場問題の迷走と都外の五輪会場負担を巡って、小池知事に「決められない知事」のレッテルが定着しかけ、6月の上旬まではたしかに効果はあった。

根強かった小池人気がじりじり落ち、組織力で劣る都民ファーストの脆弱性もあって、渡瀬さんがFLASH(http://agora-web.jp/archives/2026957-2.html)で予想したように小池、自民、公明の「痛み分け」という展開は十分あり得た。

その時は、都民ファーストが第1党を窺うところに躍進し、公明と合わせてぎりぎりで過半数を制したとしても、自民党の負け数が40台前半に踏みとどまるかどうかに注目していた。というのも、「政変」次第で、公明が再び小池から自民に寝返るという「自民+公明」の“逆過半数” となり、都民ファースト側が切り崩される可能性も考えられた。その一環で、不仲が噂される都民ファースト内の「野田特別秘書VSファーストペンギン3人集(おときた、上田、両角の各都議)」の内部抗争も表面化し、小池派、反小池派ともに不毛な政争劇に陥ることで、この都議選が「勝者なき戦い」に陥るのではないかと予期し、私はベストセラーにひっかけてこの都議選を「応仁の乱」(http://agora-web.jp/archives/2025815.html)と評したこともあった。

「加計」「豊田」…相次ぐ敵失。小池氏の悪運の強さ

しかし、その流れを全て覆したのが都議選リング外からの乱入ともいえる加計学園問題の勃発だった。

春先の森友学園問題と同じく一蹴できるかと思いきや、前川氏が出現。文科省前事務次官が公然と反旗を翻したインパクトは、同じトリックスターでも、森友の籠池前理事長とは役者が違った。そして「安倍憎し」の左派メディアが一気に勢いに乗った。週刊誌は面白ければなんでもありなので、反安倍の流れに加担。折悪く、“共謀罪”(テロ等準備罪)の採決という可燃性の高い燃料も投入。しまいには、豊田真由子のパワハラ音声というワイドショー受けするネタも自民のトドメを刺す形で飛び出した。2012年の政権再交代以降、安倍政権の安定化を支えていた“消極的支持層”の離反を一気に招き、まさに東京都全体がスイングステートと化す様相となった。

そういうわけで、当初は自民党に議席数で及ばないはずだった小池知事・都民ファーストの会のバカ勝ちというのは、明らかに「敵失」に過ぎない。まさに、小泉政権退陣後、第一次安倍政権→福田政権→麻生政権と失策を重ねた末に、棚ぼたで政権をゲットしてしまった民主党政権と同じような展開になりはしないか不安は残る。

都民ファーストの会は、情報公開推進や議会改革などは好感が持てるし、政策的発想はイノベーション分野などについては良い意味での若さを感じる。しかし政治経験・人脈は相対的に明らかに劣る。頭目である小池知事とともに、オリンピック・パラリンピックを大過なく成功させられるか。築地再開発との併用という大風呂敷を広げてしまった豊洲市場問題、そして肝心要の「After 2020」の少子高齢化、首都直下地震対策もろもろ、きちんと進めていくことができるのだろうか。

そもそも、「東京大改革」とは一体なんなのか?維新の会が大阪で目指した大阪都構想のような具体的なゴールが見えない。都議会で知事に睨みを効かせるドンも勢力もいなくなった今、変革へのわずかな期待以上に、さらなる混迷の入口に見える。

連合と組んだことで職員の待遇見直し・天下り規制などもおよそ期待できそうにない(むしろ、このことが民進党からの合流組と、旧みんなの党系や希望の塾系との内部抗争に発展するリスクも孕む)。下世話な予測では、新人議員たちの脇の甘いスキャンダルが早晩週刊誌で取り上げられる可能性もある。