都議選最終日の応援演説で初めて街頭に立った安倍晋三首相は、一団の聴衆から強烈な「辞めろ」「帰れ」コールを浴びた。この選挙を象徴する異例の場面だった。

 東京都議選は2日、投開票され、小池百合子知事が代表を務める地域政党「都民ファーストの会」が、小池人気に乗って自民党批判票を手堅くまとめ、大きく躍進した。

 公明党を含む小池都知事の支持勢力が過半数を確保し、自民党は歴史的大敗を喫した。

 都議選なのに何かと国政が話題になったのは、築地市場の移転問題など都政が抱える政策課題に加え、「安倍政治」そのものが、隠れた争点になったからだ。この選挙結果は今後の国政にも重大な影響を与えずにはおかないだろう。

 国民の懸念に応えることなく「共謀罪」法の採決を強行した手法、学校法人「加計(かけ)学園」を巡る疑惑、公職選挙法違反の疑いの残る稲田朋美防衛相の失言、自民党2回生国会議員の相次ぐ不祥事…。

 そのすべてが自民党にマイナスに作用した。

 安倍首相側近の下村博文・自民党幹事長代行が、加計学園の元秘書室長から政治資金パーティー券の代金を受け取っていたことが投票前に明らかになった。

 稲田氏の失言も発言を撤回すれば済むような軽い話ではない。

 臭いものにふたをするようなあいまいな処理は許されない。早急に臨時国会を開くか閉会中審査を行い、国民の疑問に答えることが必要だ。

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 安倍政権の「おごり」と「緩み」を象徴する事例にはこと欠かない。

 東日本大震災を巡り「まだ東北で良かった」と失言した今村雅弘復興相は安倍首相の判断で即座に更迭された。首相はなぜ稲田氏をかばい続けるのか。その感覚が理解できない。

 「加計」問題を巡り、萩生田光一官房副長官の発言内容をまとめたとされる文書が国会閉幕後、新たに見つかり、官邸が計画に深く関与したとの疑惑が深まった。

 そのあとに浮上したのが、下村氏のパーティー券を巡る疑惑である。

 萩生田氏も下村氏も疑惑を否定しているが、共通するのはともに安倍首相の側近で、ともに加計学園と関係があったこと。国民が疑念を抱くのは当然である。

 安倍首相は野党の追及に対して「印象操作だ」と批判するだけで、説明を尽くしたとはいえない。

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 日本の政治にとって深刻なのは、安倍1強体制の下で、国会にも自民党にも官僚にも、チェック機能が働かなくなっていることだ。

 各省庁の幹部級人事を采配する内閣人事局の局長は官房副長官の萩生田氏が兼ねる。菅義偉官房長官と萩生田氏を中心にした「官邸主導」の幹部人事が進み、官僚は過度に官邸の意向を忖度(そんたく)するようになったといわれる。

 権力の行使をためらわない首相の下で、行政権限が肥大化したとき、どういうことになるか。今回の都議選結果を「警鐘」と受け止めたい。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170703-00107782-okinawat-oki