小池百合子都政への信認も含めた東京都議会選挙は、大方の予想通り小池女史率いる都民ファーストの会公認候補と推薦候補、その政策連携をすでに表明している公明党の合計議席がおそらく都議会の過半数、64議席以上を占めるであろうということで落ち着きました。もちろん、現段階で当選確実が出ていない選挙区も多数残っている状態ではありますが、本稿では速報的に都民は何を考えて投票したのか、また今回の都議会選挙で何が語られたか、あるいは語られなかったかを整理してみたいと思います。

■ 東京都民は何を考えて投票行動に臨んだか

今回の都議会選挙においては、告示前の調査でも選挙期間中も概ね「自民党本部や官邸の失点」について大変な逆風にさらされたことで、自民党が本来得意とする選挙活動が充分に実施できなかった、と総括されます。

また、それまでの期日前投票の出口調査や各種世論調査で予想されたよりも、投票日当日の自民党への投票数がはるかに低かった、という特徴が見られます。小池都政への期待と同時に、既存の自民党政治、とりわけ昨今の官邸のドタバタに対する、都民の強い拒否感が見られます。

実際、東京都議会選挙の告示前は、5月27日28日調査において東京都の有権者の投票傾向は概ね自民党17%から22%、都民ファーストの会11%から15%と、どちらかというと「都民ファーストの会」という政党そのものの知名度、政策や候補者の浸透が課題とすら見られていた状態でした(毎日新聞、読売新聞)。それが、最終的に自民党候補者への得票傾向が一気に減衰し、告示日直前の調査では互角とみられていた選挙区で自民党が議席を確保できないケースや、2議席目を落とすケースが続出し、結果的にこの自民党に対する逆風・ダウントレンドが最後まで効いて多くの選挙区を落として自民党大敗を印象付けることになってしまいました。

とりわけ、本来であれば全勝も見込んでいたはずの一人区での完敗は非常に重要で、千代田区、中央区では本来なら勝てる戦いを大きく落としたことになり、自民党都連だけでなく、逆風の原動力となった安倍政権での各種スキャンダルへの総括はどうしても必要になるでしょう。

一方で、設問は各社異なりますが都民が投票に当たって重視するという争点の項目上位はいずれも「育児・教育」「都政改革」「雇用・経済」「福祉の充実」であって、自民党だけでなく、民進党、共産党、公明党といった既存各政党への投票内容を見ても概ね満遍なくこれらの政策課題は都民から重要だと判断されていることが分かります。あくまで選挙区での当落においては政策議論が充分に行われたとは言えず、非常に流動的な票が自民党低迷のモメンタムに乗って非自民の各候補者に流れていったということが理解できます。

実のところ、育児教育にせよ雇用経済にせよ、都政でできることには限界があるとはいえ小池都政は一年にも満たず、政策に対する実績という点ではまだ都民は全く見えていないはずです。存在するはずのない小池都政の実績に対して信認が得られたというよりは、都政改革、とりわけ情報公開に対する考え方が都民の意向にフィットしたと見られます。もちろん、小池都政においては市場問題PTのメンバー承認過程が不透明であるなど、必ずしも情報公開すべてに前向きかどうかは未知数なところはありますが、都民の投票動向からすると都政改革を求める有権者が比較的多く、争点としてこれらを挙げた有権者に都民ファーストの会への投票傾向が強い以上、期待感を票に替えることに奏功したと言えましょう。

一方、都政に福祉を求める層の投票先は分散しました。投票日当日には高齢者を中心に共産党への投票が伸び、また劣勢が予想されていた民進党候補者に対しても福祉を重視する有権者の票が流れて当落線上になるなどの事例が見られます。あまり選挙戦の中で明確な争点として提示されなかった部分が一部の選挙区で勝敗を分けている部分があります。