安倍晋三首相が8月にも断行するとみられた内閣改造・自民党役員人事が前倒しされる可能性が出てきた。7月下旬に東京開催で調整していた日中韓首脳会談が、中国側の意向で先送りされることが固まったのだ。「7月下旬の改造」もあり得るのか。憲法改正を見据えた局面打開のため、「自衛隊の政治利用」と受け取られる失言をした稲田朋美防衛相らを退任させる一方、小泉進次郎衆院議員を閣僚に抜擢(ばってき)するなど大胆かつ堅実な起用が注目される。

 「国民のみなさまに申し訳ない。『自民党は何をやっているんだ』という厳しいお叱りもいただいている。党総裁としておわびしたい」

 安倍首相は28日、東京都議選(7月2日投開票)の応援演説で、こう謝罪した。具体的に稲田氏の失言には言及しなかったが、自身の国会対応も含めて反省したようだ。

 都議選は、「加計学園問題」「豊田真由子衆院議員の暴言・暴行問題」「稲田氏の失言」という三重苦が直撃し、自民党にかつてない大逆風が吹いている。自民党は現有57議席だが、30議席台との見方もある。

 こうしたなか、内閣改造の前倒しがささやかれ始めた。

 安倍首相にとって7月は外交日程が山積していた。同月7、8日には、ドイツでの20カ国・地域(G20)首脳会議に出席する。これに合わせて北欧のデンマーク、フィンランド、スウェーデンと、バルト三国の1つ、エストニアを訪問する予定。同月下旬には、東京で日中韓首脳会談を開催する方向で調整していた。

 ところが、中国側が日中韓首脳会談の先送りを通告してきた。日本政府は年内開催を目指して、調整を続ける意向だが、安倍首相には「渡りに船」ともいえる。一連の外交日程を終えて8月に行う予定だった内閣改造を、前倒しできる時間的余裕ができたのだ。

 更迭候補としては、今回の失言だけでなく、南スーダンPKO(国連平和維持活動)の日報問題でも批判を浴びた稲田氏を筆頭に、「テロ等準備罪」を新設する改正組織犯罪処罰法の国会答弁で不安のあった金田勝年法相など、7、8人の名前が浮上している。

 民進、共産、自由、社民の野党4党は、稲田氏の即時罷免を要求しているが、北朝鮮が日本への軍事的恫喝を続けるなか、官邸としては「防衛相の急な更迭は混乱を招く。稲田氏は内閣改造で交代させる方向」(関係者)と判断したようだ。

 一方、入閣候補としては、進次郎氏や、憲法改正で安倍首相と意見が近い橋下徹前大阪市長らの名前が出ている。

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