安倍政権の劣化象徴
「自衛隊としてお願い」 稲田防衛相発言
中立性侵し社会の脅威

 「防衛省、自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いしたい」―。27日夜、東京都議選の自民党候補の応援で行った稲田朋美防衛相の発言は、最も中立性が求められる自衛隊という実力組織を選挙のために利用する重大発言であり、即刻、辞任に値します。稲田氏をかばい続けてきた安倍晋三首相の責任も免れません。

(写真)安倍首相

 「政治的活動に関与しない」―。防衛省職員や自衛隊員が任官の際、読みあげる「服務の宣誓」の中の一文です。今年4月、防衛省内での入省式で代表者が稲田氏に対して宣誓を行い、各地の自衛隊基地で行われた入隊式でも同様の宣誓が行われました。

 ところが、「宣誓」された稲田氏が、防衛省職員や自衛隊員を自民党候補の選挙運動に動員しようという発言を行ったのです。組織のトップとして、究極の裏切り行為と言わざるを得ません。

 宣誓の中の一文は、「政治的行為」の「制限」などを規定した自衛隊法や施行令などに基づきます。これらは国家公務員の「政治的行為」を「制限」している国家公務員法をベースにしたものですが、自衛隊は強大な軍事力を有した実力組織です。公務員の中でも、とりわけ中立性が求められるのは当然です。

 それすら理解できていない稲田氏の大臣資質の欠如は決定的であり、発言の撤回で済む問題ではありません。

 これまでも自衛隊OB組織を中心に、国政選挙や地方選挙で特定候補支持の締め付けが行われてきた実態は存在していました。しかし、現役の隊員にまで選挙動員を呼びかける発言は前代未聞です。

 仮に、特定候補支持の動きが自衛隊内で広がればどうなるか。

 これまで、政治活動の「制限」規定は、自衛隊の中立性を確保するだけではなく、個々の隊員の意思表明を萎縮させてきた負の側面もありました。ところが、自衛隊のトップである防衛大臣がこの規定を平然と踏みにじったのです。これほどの不公平はありません。

 自衛隊は上意下達の組織です。特定候補の支持が個々の隊員やその家族に押し付けられ、「思っていることを言えない」だけではなく、「応援してもいない候補の支持」の強要で、思想信条の自由はさらにじゅうりんされることになります。

 その先には、特定の政治勢力のために動く軍隊への変質につながる危険も見えてきます。そうなれば、市民運動の暴力的な弾圧が容易に行われるようになるなど、市民社会全体の危機にもつながりかねません。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-06-29/2017062903_01_1.html