加計学園問題では、読売新聞が前川・前文科次官の「出会い系バー通い」を“追及”したことが記憶に新しいが、そうした「政権批判封じ」は公共放送・NHKでも起きていた。

〈官邸の最高レベルが言っている〉
──前川喜平・前文科事務次官が「本物」と認めた文科省の内部文書の存在の第一報は朝日新聞(5月17日付朝刊)のスクープと世間では思われがちだが、
実は最初に報じたのはNHKである。
5月16日の夜に放送された『ニュースチェック11』で、「内閣府の担当者が文科省側に、
加計学園の獣医学部設置を前提としたスケジュール作成を指示した文書がある」と報じたニュースのなかで、その実物が示されていた。

ところがこの映像では、翌朝に朝日新聞が一面トップで大きく取り上げた〈官邸の最高レベル〉というセンセーショナルな文言が、なぜか消されていたのである。
ところが、翌日になると態度が変わる。朝日新聞が朝刊で文書を公開すると、民進党の玉木雄一郎氏が国会で、この文書について追及。
同日の夕刊で産経や毎日など各紙も後追いした。するとNHKは同じ日の『ニュースチェック11』で、黒塗りを“解禁”して報じたのである。

NHKは放送法に基づき「公平公正」「不偏不党」が義務づけられているが、実際には幾度となく政治に翻弄されてきた。
有名なのが2001年に放送されたETV特集シリーズ「問われる戦時性暴力」の内容が改変された問題である。
当時内閣官房副長官だった安倍晋三氏ら政治家の介入があったのではないかと朝日新聞などが問題視し、
安倍氏は「番組内容に注文をつけた事実はない」と反論したことから、大きな騒動となった。

しかし、当時と決定的に違うのは、かつてのNHKには政治介入に抵抗する局員が数多くいたのに対し、いまでは政治家の意向を先回りして“忖度”し、マイナスになるような報道を避けている。
そしてそのことを、問題とすら思わない局員ばかりになっている。

「籾井(勝人)前会長は『政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない』などの率直すぎる発言で批判を受けましたが、
籾井さんが去った今、何も言わずに政権の空気を読む“静かな籾井さん”が局内に多くいるということではないか」(元NHK局員)

上智大学教授の田島泰彦氏(メディア論)はNHKの報道姿勢をこう批判する。
「NHKの報道は、政府の仕掛けに率先して乗った読売新聞のケースとは別の問題を孕んでいる。
情報を入手した場合、事実を事実として伝えるのがジャーナリズムの最低限のルールですが、NHKは肝心の部分だけを黒塗りにしており、視聴者からすれば、なにを報じているか分からない。
ではなんのための報道かといえば、政府に対してNHKが『情報は持ってるけど報じませんよ』と自らのスタンスを示すため。
視聴者より政府に伝えることを優先したのですから、公共放送としてあるまじき態度です。権力を監視するというジャーナリズムの基盤が歪み、極めて危うい状況になりつつある」

NHKに黒塗りにした理由などを質した。
「個別の編集材料や取材の過程などについては、お答えを差し控えますが、ご指摘のあったニュースに関しては、NHKの独自取材によるものも含めて随時、お伝えしています」(広報局)

さて、この回答は誰に伝えるためのものだろう。

https://www.news-postseven.com/archives/20170615_563132.html?PAGE=1
NEWSポストセブン 2017.06.15 16:00