1日1トンの糞を掃除 「糞虫」の美しさに魅せられた男
古沢範英2018年2月4日09時25分

 奈良公園(奈良市)には約1200頭の鹿がいる。毎日合計1トンほどの糞(ふん)をするが、園内が糞まみれになることはない。掃除して自然界に戻す虫「糞虫(ふんちゅう)」がいるからだ。中学生の頃、その美しさや生態に魅せられた中村圭一さん(53)=奈良市高畑町=が奈良公園の近くで、糞虫と「糞虫の聖地」を紹介する施設の開館準備を進めている。

 「この辺りが鹿の通り道です」。中村さんに案内され、春日大社境内に続く奈良公園の林に踏み入った。落ち葉の中に鹿の糞があった。周囲に糞の粉。糞虫が入り込んだ証拠だ。枯れ枝で糞を割ると羽の一部が黄色い3ミリほどの虫が数匹いた。「ネグロマグソコガネです。春秋は種類が多いですが、今は地味な4、5種類しかいないんですよ」

 糞虫は食糞性コガネムシのこと。数ミリから数センチの大きさで、動物が消化できない成分を食べて分解する。食べかすは微生物も作用して芝生の養分となり、その芝を鹿が食べる。糞虫のおかげで糞の分解は格段に早まり、ハエの繁殖を抑える効果もある。

 鹿の糞が多い奈良公園は糞虫にとって絶好の生息環境だ。中村さんによると、国内150種余りのうち、約60種が確認されている。糞虫愛好家の間では「聖地」と呼ばれている。

※以下略
https://www.asahi.com/articles/ASL194Q1KL19POMB006.html