穂乃果「ある英雄譚」
にこ「驚いたわよ…」
希「この件に関して、西木野家が関わってるとみてよさそうや。」
ことり「今まで敵対してるのは神様だと思ってたけど…人間ってことでいいんだよね。」
希「人間の恨みによって怪異が起こる…これはいくつか事例があるね。お菊井戸とかが1番有名なんじゃないやろか。」
穂乃果「1枚…2枚…って数えるやつかな?」
希「そうそう。似たような話は色々あるんやけど、数える話は、『番町皿屋敷』やね。」 言うと、希ちゃんは改まって話し始めた。
希「ある屋敷に、菊という下女がおった。ある日彼女は、主人が大切にしていた皿10枚のうちの1枚を割ってしまった。それを聞いた主人は皿の代わりに菊の中指を切り落とし、監禁した。」
ことり「ひどい…」
希「なんとか抜け出した菊は、井戸に身を投げてしまった。すると間もなくその井戸から「一つ…二つ…』と数える女の声が響いた。その後生まれた奥方の子供には、中指がなかったそうな。」
希「その後もその声は収まらんから、たまらず主人はある僧に読経を依頼した。ある夜、読経してたところに皿を数える声が聞こえた。「八つ…九つ…』そこで、僧は『十』と呟くと、菊の亡霊は『あらうれしや』と言って消えたとさ…」
ヒュゥゥ… 穂乃果「うぅっ…」
背筋が冷たくなる…真夏にはとっておきの…って…
にこ「…あんた、ちょっと楽しくなってんじゃないわよ。」
希「あ、バレた?」
そう言ってニシニシと笑う。
ことり「あはは…この話を参考にすると、ある人が酷い目にあって、恨みを持ったまま死んじゃって、復讐するために現世に幽霊として現れるってことかな。」
希「敵が人身御供となった人間、恨む対象が西木野家だと筋は通る仮定できたけど…まだもう少し情報が必要やな。」 海未「それなら、やっぱり真姫に聞いてみるしかないんでしょうか。」
にこ「待ちなさい。今の状態の真姫にそんな質問するのは危険よ。それに、そんな曖昧な状態で事実だけを突きつけると、何するか分かんないわよ。」
にこちゃんが天井を指しながら片目を瞑り言った。
海未「しかしですね…」
ことり「真姫ちゃん、何かあったのかな…」
確かに、今手にしている情報だけだと『昔のことなんて知らない』と言えば、容易にしらばっくれることができる。
やはり公開するべきタイミングは、全て解明した時…というのが理想だ。
ただ、今晩も1人… …あぁ。
ここで私は、既に真姫ちゃんが敵であると認識していることに気づいて、少し嫌になった。
にこ「それより、この屋敷を探すことが先決だと思うわ。私は仏間を探すから。」
そう言ってにこちゃんは仏間へ消えていった。
海未「それじゃ、私たちも少し探索しましょうか。」
穂乃果「じゃあ、私はこの部屋を探してみる。」 ことり「じゃあ私はあっちにするね。」
海未「希…?」
海未ちゃんが仏間の方をじっと見て固まる希ちゃんに声をかけると、ビクッと飛び跳ねて振り向く。
希「ん、あ、いや、なんでもないよ。ウチはあっちな。」
そう言って、希ちゃんはキッチンの方へ小走りで歩いて行った。
… 穂乃果「ん〜やっぱり何もないな…」
あの後私は机の下へ入ったり、押し入れを開けてみたりしたが、何も出てこず、肩をすくめるばかりだった。
この部屋には何もないと思って、縁側に出てみる。窓ガラスの向こうはとう日が暮れて、霧のモヤが見えるだけだった。
私は障子を閉め、縁側の窓を開けてみる。
案の定、霧が縁側に侵食してきて、障子をノックしている。
私はそこに座ってみて、1人黄昏る。
一つ息を吐いたのち、道に大きな桂の木を見る。初日には煌々とした陽の光に照らされて生き生きとしていたが、今はただ黒い輪郭を見せているだけだった。 …あの時、真姫ちゃんと喋ったっけ。
…
真姫『まぁ、拝むのはここだけじゃなくて、あっちの建物の方にもしてたし…』
…
ふと、その言葉を思い出した。
それは、どこなのだろうか。真姫ちゃんの言う通り、たたら場なのか?
製鉄を営む身からすると、神聖な場所なのは間違いないだろう。
ただ、少し違和感がある。 神聖な場所と言えど、やはり製鉄の建物だ。温度などをしくじると水蒸気爆発するかもしれないような場所に、神様を在中させるだろうか。
きっとそれは、俗世と隔てたもっと奥の…
穂乃果「あれ…?」
たたら場の先、森の斜面に、丸太を横たわらせただけの階段のようなものが見える。
あれは…なんだろう…
私が腰を浮かせようとした瞬間、
海未「わっ!すごい霧…!穂乃果、何やっているんですか!」
穂乃果「あ、」
言うより前に、海未ちゃんは私の服の襟を持って、猫のように居間へと連れ去ってしまった。
… 戻ると、もうすでに皆は集まっており、机に座っている。
穂乃果「どうだった?」
私の問いかけに、すぐさま答えるものはおらず、皆一様に首を振るだけだった。
希「ダメや、めぼしいものはなかったよ。」
ことり「こっちもだよ。」
にこ「私も。まぁしょうがないわ、そうやすやすと出てこないものよ。」
穂乃果「そうだよね…」
海未「くっ、人身御供なんてなんで…どんな理由で…そんなの、無駄死にと変わらないじゃないですか!」 希「海未ちゃん!そんなの、その時代や犠牲となった人に失礼や!前提として、彼らを知恵のない者と下に見たら、本質は掴めんくなるんよ。私たちだって、信じているのは誰かが見つけた科学。神を信じるのと、対象が変わっただけや。」
海未「ですが…いや、すみませんでした。」
希「わかれば__
いいんよ。と希ちゃんが言い終わる前に、ガタンと何かが落ちたような音が、部屋の外に響いた。
ことり「な、なに?」
穂乃果「ちょっと行ってくる。」
扉を開けると、
真姫「うぅ…頭が…」
唸る真姫ちゃんがいた。 穂乃果「真姫ちゃん大丈夫!?」
真姫「うっ…ぅ…」
ことり「真姫ちゃん!」
私の声に気付いたのか、ことりちゃんが入り口から飛び出てきた。
ことりちゃんは慣れた手つきで、真姫ちゃんを抱えた。
真姫「い、嫌っ!!」
真姫ちゃんが弾けるようにことりちゃんを突き飛ばし、壁へもたれかかる。
その時、ことりちゃんが一瞬戸惑いの表情を見せたが、それはすぐ悲しそうなものに変わり、
ことり「寝かせてあげた方がいいかも…」
と、やはり悲しそうな声で言った。 海未「私が運びます。」
穂乃果「じゃあそっちお願い。」
私が真姫ちゃんの足を持とうとするも、
真姫「い、いや、大丈夫。1人で歩けるから…」
明らかに大丈夫じゃない顔で、そう言われた。
あの脂汗…焦点の定まらない目…危険な状態だ。
希「そんな、無理せんでも…」
真姫「大丈夫…」
その後、なんとか真姫ちゃんの部屋まで送り届け、布団に寝かせてあげた。 その後を皆がついて来てたようで、真姫ちゃんの部屋に集合することになった。
真姫「…ありがとう。もう良くなったから。」
ことりちゃんが温めた牛乳を飲みながら、真姫ちゃん力なく笑った。
にこ「…無理しないでね。」
希「もうそろそろやな…」
希ちゃんが時計を見る。
針は23:30を指していた。
今夜もまた、この中の誰かと会えなくなる…そう考えると、胸が苦しい。
今まで、水→木と来ている。それなら、次は土になる可能性が1番高い。となると…3、6、9、12月か… 全員の顔色を見る。同じことを考えているのか、一様に白い顔をしている。
私は、今でも…信じたい。
希「みんな、私な、今日私の番でもいい思てるとこもあってな。」
穂乃果「えっ!?」
にこ「希!?」
ついこの前、ことりちゃんの口から同じようなことを聞いたばかりだ。
希「だって、μ'sの1人でも残ってくれれば、必ず解決してくれる。現に、事態は良い方向に進んでるやろ?」 にこ「そうだけど…私は嫌よ、死ぬのは。」
希「そりゃウチだって死にたくはないよ。けど、みんながウチを覚えてる間は、みんなの中でウチは生きてる。花陽ちゃんも、そう言ってたんやろ?」
穂乃果「そうだね。私も、賛成だな。」
私はその問いかけに、自然と口角があがって、力強くそう答えた。
海未「まだ何にも解決してないのに…全くあなたたちは…もちろん、私も賛成です。」
ことり「じゃあ、円陣組もうよ!久しぶりにっ。今朝はさ、全員集合してなかったし!」
そう言ってことりとゃんはVサインを作って見せた。 にこ「ええっ、こんな時に?って、今朝って何よ。」
穂乃果「それは今いいの!にこちゃん、こんな時だからこそだよ!ほら、真姫ちゃんも!」
真姫「わ、わかってるわよ。」
真姫ちゃんはやおら起き上がり、その手をいつもの位置に寄せる。
もちろん、隙間は空けてある。
見てくれているかもしれないから。
海未「ふふっ、なんだか懐かしいですね。」
希「よっしゃ、気合い入れよか!」 私は皆の顔を見渡したのち、天を仰ぎ大きく息を吸って叫ぶ。
穂乃果「いち!」
ことり「に!」
海未「さん!」
真姫「よん」
にこ「なな」
希「はち!」
穂乃果「μ's!ミュージックスタート!」
… 私は自室に戻り、数分の猶予を得る。
穂乃果「…」
目が冴えて眠れない。体に力が入らないが、頭くらいなら働かせることができる。どうせ寝る準備をしなくても寝られるので、今日あったことをまとめよう。
やっぱり思い浮かぶのは、あの祠だ。
あそこあった名前は、西木野…
そして、作られた年代は、永正10年と書かれていた。
海未ちゃんによれば、1500年頃らしい。
今からおよそ500年前か。
そう言えば、飛行機で聴いたけど、西木野家は約500年前から、子供が長く生きれないらしい。 もしこれが事実であれば、一種の呪いと言ってもいいだろう。
両方とも500年前だ…偶然だろうか?
いや違う。あの祠に西木野家が関係していることは間違いない。ただ、何の因果だ?
思い当たる特徴…
やはり製鉄だろう。
柱に縛り付けるなど、この災厄は金屋子神を模倣している点もある。
さらに、山を切り開き、土を流す事でその比重で土と砂鉄とを分ける技術、鉄穴流しは、戦国時代頃から運用されたらしい。 戦国時代の期間を応仁の乱〜大阪夏の陣だとすると、1467年〜1615年だ。
人身御供発生、西木野家の呪いの始まり、鉄穴流しの発祥。
この3つの出来事は、全て同じ時期に被っていたとしたら。
それならば、1つ仮説を立てよう。
それは、麓の農家を営む人たちと、山で製鉄を営む人たちの争いがあった。という体で話を進める。
鉄穴流しによって、上流から大量の砂の混じった水が流れ出る。 当然、それは下流へと流れていくだろう。
そうなれば、川の底は上がり、氾濫が多発するし、水路に入れば詰まることになる。
そういった中で農民民と製鉄民との間で軋轢が生まれ、ついには実力行使に出る。その際に命を落としたものを祀るため…?
いや違う。
それだと、人身御供という語を使うだろうか。
海未ちゃんが飛行機の中で言っていた…
人柱…人身御供はしばしば若い純潔な少女が選ばれ、沼、川に入ったり、生き埋めになるらしい。
そして、生贄を求めるのは水神が多い。
それを踏まえると、まず氾濫が起きる。そして、人身御供の少女が犠牲になる。それが500年前。 少女が犠牲になった後、成仏できなかった彼女は、氾濫の原因を知る。そして、西木野家に後継を作らせないため、呪いをかける。
でもそうなると、真姫ちゃんのおばあちゃんや、お母さんはなんで…
…あの祠を建てたのがおばあちゃんだとすると、それによって呪いは封じ込まれた。
しかし、去年の末に亡くなってしまい、祠も土砂崩れにより崩壊してしまった。
それを見て怒った少女の霊は、この災厄を産み出した…
とすれば…辻褄は合う。
でも、なんでわざわざ1人ずつ、しかもあんな柱に縛るようなことを…
普通の娘が、たたらのことや五行説を知ってるとは思えない。 私は一昨日と今日の光景を思い出す。あの時__
なるほど、そういう事か。
円陣、楽しかったなぁ。
私は意識を自ら手放した。
…
……
……… 私は目を開ける。
ここに来て5日目の朝だ。
私は、今日も何とか生き延びることができた。
しかし、代わりに…
考えても仕方ない。
頭を振り、頬を叩く。
私はおそらく、この世界の真相を掴んだ。
今日で全て、終わらせるんだ。
穂乃果「本当に、それでいいの…?」
私が説明すれば…ある者は救われ、ある者は不幸になる。
甘いのは分かっている。既に人も死んでいる。それは今朝もだろう。
でも私は…最後まで皆を信じたい…それだけだ。 思い悩みつつゆっくり居間に降りると、私以外はもう集合していた。
…いや、
鼓動が上がる。
ついにこの時が来てしまったのか。
ことりちゃんがいない。
皆悟ったような顔をし、たたら場へと重い足取りで向かう。 扉を開けた先には、
あぁ…嘘だ…本当に…
いつになったら慣れるんだろうか。
私は膝から崩れ落ちる。
横には、腰を抜かした海未ちゃんがいた。
私の目の前には、血まみれのことりちゃんが括られていた。
…
私は、最悪の予想ができていなかったのかもしれない。
ことりちゃんは、もう最初に会った時を覚えていないくらい、昔からの知り合いで…かけがえのない人で… この世界に飛ばされ、数々の仲間の死を見てきた。ただ漠然と、「死ぬ」という予想はできていたはずだった。その後の感情も、想定していたはずなのに、足に力が入らない。
私が今までしてきたことは…なんだったんだろうか。今までのものが一瞬で崩れ去っていくような気がした。
それはこの世界の出来事だけではない。
隣の海未ちゃんを見やる。
もはや涙も流せないような状態だが、悲痛な感情は容易に見て取れた。
私たちは、3人で完成する関係だった。
2人同士でも仲がいいのはもちろんだが、やっぱり3人揃った時は安心する。
そんな風景を思い出して、また涙が出てきた。 あれが最期だなんて…
もう…どうでも…
脳が勝手に足に命令を送るのをやめ、その場にへたり込もうとする。
その肩を、掴んだ人がいた。
にこ「ことりは、なんて言うと思う?」
穂乃果「…え?」
にこ「にこはね、あんたより知り合って長くないけど、それくらいは分かるわよ。」
穂乃果「なに…を。」 にこ「悲しんでくれて、ことりはそりゃ嬉しいとは思うわよ…でも彼女なら、穂乃果にはいつまでも進み続けて欲しいって思ってるんじゃないかしら。」
…
ことり『いつだって、私1人だと見れない景色を見せてくれる…そんな穂乃果ちゃんが、わたしは大好き!』
…
穂乃果「あ…」
にこ「それにあんた、花陽にも顔向けできないわよ。」
花陽ちゃん…そうだ。私がここでへこたれたら、ことりちゃんの、みんなの無念を誰が晴らす?
にこ「辛いのはみんな同じ….もちろん私も辛いわ…でも、もう1人だけの命じゃないの。そして、全てが終わったら、また会いに行ってあげなさい。その時は…笑顔で。」
希「それでも、辛かったら泣いてええんよ。」 希ちゃんが両手を開けて膝をつく。
正直甘えたい。希ちゃんの胸に飛び込みたい。
ただ、今は。
私は右足を踏み出し、立ち上がる。
穂乃果「涙は、この世界を出た時のために取っておくよ。」
にこ「…その調子よ。」
海未「穂乃果…そうですよね。」
穂乃果「ことりちゃん、みんな…見ててね。」 希「海未ちゃん、ほら、もうちょっとだけ、頑張りや。」
希ちゃんが手を差し伸べ、海未ちゃんがそれを掴んだ。
海未「すみません。希、ありがとうございます。」
ありがとう。みんな。
みんなに助けられて。全く…理想のリーダーとは程遠いよ。
でも私、何をすべきなのか、分かったよ。
穂乃果「また会おうね。ことりちゃん。」
亡骸にそう告げて、私はたたら場を後にした。
… ふぅっと息を吐く。
昼下がりの時間ではあるけど、少し遅めの朝食も済ませて、戦の準備は万端だ。
希ちゃんにアイコンタクトをする。
希ちゃんは少し目を見開き、頷いた。
もう、迷わない。
私は…
さぁ、全てを終わらせる時だ。
凛ちゃん、絵里ちゃん、花陽ちゃん、ことりちゃん、見ていてね。
穂乃果「すっかり、寂しくなったね。もう5人になっちゃったよ。」
穂乃果「初日はさ、楽しかったよね。みんな思い思いの夏をたのしんで。これから一緒に絆を深めていければ…って思ってた。」 穂乃果「凛ちゃんが死んじゃって…絵里ちゃんも花陽ちゃんも、ことりちゃんも。みんな悲しんで、泣いて、それでも、私はみんなを信じてた。」
穂乃果「それはみんなも同じだと思う。」
私の言葉に、皆が頷く。
穂乃果「でも、私、真相がわかっちゃった。」
にこ「穂乃果!?」
海未「いいんですか!?」 周りのざわつきに見向きもせず、私は真姫ちゃんの目を刺すように見る。
真姫「いいわ。聞かせて。」
穂乃果「真姫ちゃん、まず確認なんだけど、西木野家では、500年前から産まれてくる子供が悉く短命で苦労したんだってね。」
真姫「聞いてたのね。そうよ。」
穂乃果「昨日、ここから数100メートル先に、ちょっとした祠に行ったよ。そこには、西木野って書かれていた。何か知らない?」
真姫「…そんなこと言われても困るわ。」
穂乃果「そっか、そうだよね。そこにはね、人身御供って書かれていたよ。この辺で何があったのかな。」
真姫「さぁ、昔の話でしょ。」 穂乃果「そう。永正って年号が書いてあったよ。およそ500年前だね。そして、さっき言った西木野家の呪いも500年前だ。これから分かることは、少なくともその犠牲となった少女が、西木野家に恨みを持った状態であるということ。思い当たる節はある?」
真姫「だから、あんまり家の過去の話なんか聞いたことないわ。」
やっぱり、真姫ちゃんは知らないというスタンスを取り続けるか。
それならば…少し希ちゃんの真似事をしてみよう。
穂乃果「まぁそうだよね。多分これは、製鉄による川の氾濫。」
希「なるほど、製鉄には木が必要。それによってハゲ山になって、保水力がなくなれば…」 穂乃果「それによって、生贄となった少女は、怒って西木野家に呪いをかけた。」
にこ「待ってよ!じゃあなんで真姫のお母さんとかは長生きできてるの?」
穂乃果「おそらく、真姫ちゃんのおばあちゃんが、祠を建てたから。」
海未「確かにあれは、そんなに古いものじゃありませんでした。」
穂乃果「そして、今になってまた呪われたのは、土砂崩れで祠が壊されたことによる、少女の怒りだと思うんだよ。」
にこ「でも…それでも真姫がなんで。」 穂乃果「逆に考えて欲しいんだ。私の説によれば、犠牲になった子はおそらく、農家のいち娘。その子が金屋子神の性質を知ってたと思う?これは、誰かから教えてもらったものだと思う。そして、少女の側に立つと、最初にコンタクトを取るのは、」
真姫「まぁ、私よね。」
ここで認めてくるか。それによって、皆驚いた表情になる。
海未「でも、まだ推測の域を出てませんよ。」
穂乃果「その通りだよ。これは単なる私の仮説。ただ、これ以上補強できなくもないんだよ。」
海未「…というと?」
穂乃果「私たちを囲うこの結界。それに使われている注連縄に、少し違和感を覚えたの。なんかちがうなぁって。」 にこ「私には何も分からなかったけど。」
穂乃果「にこちゃん。あれは、注連縄の向きが逆なんだ。」
希ちゃんか海未ちゃんなら、反応するはず。
海未「…出雲大社!」
希「なるほど…そこまでは気付かんかったな。」
穂乃果「そう。出雲大社のしめ縄の向きが逆なのは有名な話だよね。」
真姫「それがなんだって言うのよ。単に真犯人が、この土地にちなんだ方法を取ってるだけでしょ。」
私もそう思う。ただ、この世界を作った人はもう少し考えているみたいだ。 穂乃果「私もそう思って放置してたんだけど、仮説と結びつくとこがあったよ。希ちゃん、出雲大社の主人祭は…?」
希「…大国主大神やろ?」
穂乃果「そう。でも、さっき言った3つの出来事が重なる時期…中世では、これが違ったんだ。」
希「いや、あそこは昔から…」
穂乃果「出雲大社の荒垣入り口には、鳥居があって、これは毛利家が寄進したもので、これが1666年。そこには、『一を日神といい、二を月神といい、三を素戔嗚というなり、日神とは地神五代の祖天照太神これなり、月神とは月読尊これなり、素戔嗚尊は雲陽の大社の神なり』
と刻まれていて、当時の主人祭はスサノオだったみたい。でも、希ちゃんの言う通り平安時代まではちゃんと大国主大神だったよ。」 旅行前に気になって、ほんのちょっとだけ調べていたことが役に立った。
海未「なぜ変わったのでしょうか…」
穂乃果「出雲大社の近くにお寺があるみたいで、ここが出雲国引き、国作りの神をスサノオとしていたみたいで、これが一般に広まったことによるみたい。それだけ、出雲の地はスサノオに対する信仰が強かったんだろうね。まぁ、ちょっとした都市伝説のような出で立ちだよ。」
にこ「あんた、なんでそんなこと…」
穂乃果「この旅行が楽しみすぎて、ちょっとね。」
海未「神仏習合ですか…よく軌道修正できましたね。」
希「それは分かったよ。でも、それが…あ。」 穂乃果「スサノオと言えば、八岐大蛇伝説だよね。これって私の仮説と似てない?」
海未「ええっと確か、八岐大蛇の人身御供に出される娘がいて、それを聞いたスサノオは八岐大蛇に酒を飲ませてから首を切り落とした…」
穂乃果「八岐大蛇は、その正体が荒れ狂う斐伊川という説があるんだよ。製鉄によって木材を大量に使用した結果氾濫したとすれば。」
希「英雄のいない物語の完成やね。」
にこ「で、真姫がやったっていう直接的な証拠には!?」
穂乃果「確かにね。でも、状況証拠で良ければ。昨日、海未ちゃんが人身御供云々の話をした時、真姫ちゃんの体調がおかしくなったよね。その子、今取り憑いてるでしょ。」 真姫「…」
真姫ちゃんは私の問いかけに答えない。
穂乃果「で、取り憑かれた真姫ちゃんは、その少女に私たちを殺すよう仕向けられた。それがおそらく12時から6時の間。」
希「じゃあ穂乃果ちゃん!真姫ちゃん部屋を探せば何か見つかるかもしれんってこと?」
穂乃果「いや、慎重な真姫ちゃんのことだから…部屋には何も残ってないと思うよ。おそらく、肌身離さず持ち歩いてると思う。昨日、ことりちゃんが抱えた時、頭が痛いはずなのにまず逃げることを選んだ…それが答えなんじゃないかな。」
海未「失礼します…」 真姫ちゃんは、ボディチェックしようとする海未ちゃんを片手で静止させ、なにやらゴソゴソと肌着を脱ぐような仕草を見せ、
真姫「もう…いいわ。」
ナイフを、机に置き、
にこ「真姫…」
突き通すような目つきで、私を見て、
真姫「それなら__
どう?私を殺してみる?」
そう、口角を上げて言った。
… 今日はここまでです。
体調を崩していたので、保守助かりました。 スノチャンネル200万行くね
あー面白かったなwおいw
俺は
過去最高に感染するという極端な行動でた 真面目な話をするな
個人的に薬はやめなさいお婆ちゃんカタカナ苦手すぎ問題(´・ω・`)
結局仕事あるよ