千歌「浦の星農業高校へようこそ!」
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曜「かわいい〜っ」スッ
🐰「!?」ビクッ
曜「わっ!?ご、ごめんね!?」
善子「ああ、ダメよそんなにいきなり撫でたら」
善子「撫でるならそーっとね」
曜「…………そーっと、そーっと……」スッ
🐰「…………」
曜「わあぁ……もふもふ……触らせてくれてありがとう〜っ」ナデナデ
鞠莉「貴女達も入ったら?」
千歌「ありがとうございます!よーちゃん!私もウサギ触るー!」タッ
梨子「ありがとうございます、……あっ」
🐢「………………」
梨子「……カメだ……」 鞠莉「満咲よ」
梨子「まんさく?」
鞠莉「カメの名前。小さくて可愛いでしょう?」
梨子「……はい。とっても可愛いです」
曜「善子先輩!私エサあげたいです!」
善子「ええ……なんかあったかしら……」ガサゴソ
鞠莉「あ、善子。水も替えて」
善子「はぁい。千歌も手伝って」
千歌「またー?パシリだよそれー」
善子「いつもやってんでしょ。早くして」
千歌「ちぇーっ……」
曜「私も手伝いまーす!」トテテテ 鞠莉「…………ねぇ」
梨子「は、はい」
鞠莉「梨子はどうしてこんな時期に農業高校に来たの?」
梨子「……ああ、やっぱり皆気になるんですね。私はお父さんの仕事の都合で内浦に引っ越してきたんですけど……私の通っていた普通科の高校が凄く窮屈で……」
梨子「毎日毎日勉強ばっかりしかなくて……これでいいのかなって思ってた時に転勤の話が出て」
梨子「どうせなら今度は普通科の高校じゃないところに行こうって思ったんです。それで見つけたのがここの、浦の星農業高校で」
鞠莉「ふぅん。なるほどね」 梨子「あの、……何か?」
鞠莉「……うちの学校、……と言ってもうちだけじゃないと思うけど。結構辞めていく人が多くてね」
鞠莉「東京の子がうちの学校に来た、なんて聞いたから、どうしてかなって。直ぐに辞められても困るしね」
鞠莉「……梨子が入れたのは、梨子のクラスメイトが一人辞めたからなのよ」
鞠莉「千歌っちは全力で止めたわ。もっと良い事があるって、楽しいことがあるって。……まあ、その頃千歌っちはどうすればいいのか分からなくて泣きながら私に相談して来たりしてたんだけど」クスッ
梨子「……千歌ちゃんが……?」
鞠莉「ええ、意外でしょ?」 梨子「……はい。少し。千歌ちゃんってもっとこう……勢いだけでいきているような人じゃないですか」
梨子「だから……色々考えてるんだなぁって……びっくりで……」
鞠莉「それ、悪く言ってる?」
梨子「いえそんな!」アワアワ
梨子「……でも、千歌ちゃんが……」チラッ
千歌「あはは!うんちしたー!」
善子「小学生か!」
曜「ウサギかわいい〜!」 鞠莉「……梨子は、辞めない?」
梨子「……私は……」
梨子「……辞めないです。絶対に」
鞠莉「……そう」フッ
鞠莉「はーい、そろそろ片付けて。帰るわよ〜」パンッ
ちかようよし「「「はーい」」」
梨子「(鞠莉先輩、最初は雰囲気怖かったけど……良い人なのかも)」
梨子「(やっぱり農業高校って色々な人がいて面白いな……)」 −−−−−−
−−−−
−−
五月
農販会 当日
千歌「五、六時間目に実習はほんとにだるい〜っ……それに今日農販会だし……お昼食べて眠たいし……」スンスン…
梨子「泣き真似してないでいいから……」
千歌「梨子ちゃんは眠くないの?」
梨子「私は平気。もう慣れちゃった」
千歌「まだうちの学校来て一ヶ月しか経ってないのにすごい……」
山崎「駐車場係、整列係、販売係が大まかな担当やけど、どこか希望はあるかー?」
ダイヤ「あの、私は販売で」スッ
山崎「お前いつも販売やな。まあ頭の回転早いからお釣りの計算も早いし、黒澤な。他にはー?」 梨子「ねぇ千歌ちゃん。この学科って何を売ってるの?ブドウはまだただの草だし……売るもの無いわよね?」
千歌「ああ、今日はローズマリーの苗売るよ」
梨子「ローズマリー……?」
千歌「いっぱい余ってるんだよね……うちの学科の緑化物、需要無くて」コソッ…
梨子「な、なるほど……?」コソッ…
山崎「そこ聞こえとるぞ」 千歌「私は駐車場係しよっかな〜。販売のとこ行くといつも怒られるんだよね〜」
梨子「怒られるって誰によ?」
千歌「お客さんだよお客さん……早くしろーだのもっと考えて動けーだの、色々言ってくる人が毎回居て……」
梨子「その標的になってるのね……」
山崎「千歌は駐車場。梨子は?」
梨子「え、ええっと……」アワアワ
山崎「……じゃあ、整列が足りとらんけん整列係な。よーし、それじゃあローズマリーの苗持って行くぞ〜。帽子は必ず持って行けよ〜」
千歌「ああぁ……まだ座っていたい……」
ダイヤ「行きますわよ千歌さん」ズルズル
千歌「いやだあぁ……」 −−−−
農販会 会場
梨子「わ、もう来てる人がいる……まだ二時間前なのに……」
千歌「よくやるよね〜。待ち時間長いって怒られるよこりゃ」
梨子「え?私達は時間通りにやってるのに……?」
ダイヤ「先に来た人がクレームを言い始めるのは割とありがちですわね。正直迷惑だから辞めて欲しいですわ」
千歌「自分が待てる時間に来ればいいのにねー」
梨子「困るわね……どうしよう怒られたら……」
千歌「梨子ちゃんは可愛いし平気平気」
梨子「千歌ちゃんだって可愛いでしょ?」
千歌「……むーっ……」
山崎「ほら、早く運べー」
千歌「げっ、運搬車山崎が来たよ〜……」
ダイヤ「ローズマリー、降ろしましょうか」 初期学年設定だけで貴重だし敬語Aqours好きだし
題材も面白いしでマジで完走してほしい −−−−
30分後
ワラワラ ガヤガヤ
梨子「ど、どうしよう……人が多い……」
梨子「もう100人越えてるらしいし……私がここを動かすなんて無理だよぉ……」ペソ…
山崎「梨子、そろそろ抽選のくじ引かせて並ばせようか」
梨子「わ、わかりましたっ……」
曜「あっ!りーこ先輩〜っ!」タッ
梨子「あ、曜ちゃん!曜ちゃんのところは何か出すの?」
曜「いえ何にも!でも今日の農販会が緑化科が運営だって聞いたから駆け付けてきたんです!」
千歌「やっほー、よーちゃん!」
梨子「え!?ちょ、ちょっと駐車場係はどうしたのよ!?」 千歌「さっき白津先生が桜内を手伝ってやれーって言ってきたから」
梨子「それでこっちに……あ、千歌ちゃんそろそろ抽選のくじ引くって言ってたんだけどどうやって……」
千歌「ああ、任せて」スゥ…
千歌「今から抽選を行いまーす!整理券の順番にこちらに並んで頂いて、一人ずつくじを引いて行ってくださーい!再び抽選での順番で並び直すのでご確認をお願いしまーす!」
ゾロゾロ
曜「千歌ちゃんすごい!」
千歌「えへへ、声だけは大きいからこの役はいつも私なんだ」
千歌「はい、梨子ちゃん。くじ引いてもらって」スッ
梨子「ありがとう。整理券1番の方どうぞーっ」
梨子「(……千歌ちゃんって、私の思ってるよりずっと凄いわ……)」 −−−
数十分後
梨子「9番のくじをお持ちの方はいらっしゃいますかーっ!こちらにお並びくださーい!」
曜「あれ、梨子先輩。千歌ちゃんは?」
梨子「えっ?さっきまでそこに居たと思うけど……」
曜「何処行ったんだろう……トイレかな」
鞠莉「今日は凄い人ね〜、テレビの影響かしら?」
梨子「ええ、……多分。駐車場のところも凄いことになってましたよ」 鞠莉「これは争奪戦になるわね。買えない人も沢山居るんじゃないかしら」
梨子「買えないこともあるんですか?」
鞠莉「そりゃ勿論。テレビで放送してなくても売り切れるんだから今日は大変かもしれないわね」
浦の星農業高校の農産物販売会では、早く来れば必ず商品が買える。というわけではない。
早く来た順から整理券が配られる。定員は100名。それを越えてしまったら整理券は貰えない。
その整理券の順番毎に、更に抽選が行われる。これは商品を購入する順番を決めるもので、例えば、一番最初に来た人が抽選で100番を引いてしまった場合は、来た順番関係無く100番目に購入することになる。
学校で出せる商品にも限りがある為、100番に行く前に全て売り切れてしまうケースも多いのだ。 梨子「それより、千歌ちゃんを探さないと……」
鞠莉「動物科はもう準備終わってるから、千歌っち探しに行っても良いわよ」
曜「で、でも忙しいんじゃ……ひとりでこの人数は大変じゃないですか?」
鞠莉「まあ何とかなるなる。善子とかがぼちぼち帰って来るでしょうし、気にしないで」
梨子「そこまで言うなら……行ってきます」
鞠莉「はーい、気を付けてー」フリフリ −−
曜「梨子先輩、あれ……」ユビサシ
梨子「……えっ?」
千歌「……………………」モグモグモグ
曜「なんか……食べてますね……」
梨子「……ええ」
千歌「わっ、このみかん美味しい!まだこーんなに緑なのにすごーい!」モグモグ
梨子「」 千歌「あっ、梨子ちゃん、よーちゃん。見て見て、どっかの学科のみかん!これお金払ってみかん狩りしてる人可哀想だよね、だってここからちぎって食べちゃえば──」
梨子「こらあああぁっ!!」
千歌「げっ……」
梨子「それは園芸科のみかんよ!?みかん狩りがあるんだから今のうちから食べちゃダメじゃない!足元に転がってる皮からして……3つは食べたでしょ!?」
千歌「で、でもほら、この辺りみかん農家さんが沢山居るから、お金払ってみかん狩りしに来る人なんて居ないと思うんだよね?」
千歌「みかんがありすぎても嫌じゃない?ねっ?ねっ?」
曜「たしかに!」
梨子「たしかに!じゃないわよ、良いわけないでしょ!?」 千歌「梨子ちゃん厳しいな〜……ほら、梨子ちゃんも食べてみて?ほら、あーん……」
梨子「……んっ!?……むぐ……」モグ…
梨子「すっぱ!!!!」
曜「千歌ちゃん!私も食べたい!」
千歌「ほら、あーんっ」
曜「あーむっ!」ハムッ モグモグ…
曜「すっぱい!!!」
山崎「おい」
千歌「あっ……」 山崎「なんばしよっと。それ園芸科のみかんやろ。お前何個食っとるんや」
千歌「い、いやぁ……私ったら美味しいみかんに目がないというか……」汗ダラダラダラ…
千歌「違うんです!梨子ちゃんが食べ始めて!」
梨子「なんでよ!?」
山崎「お前毎回農販会の度に食ってるからな。こんな熟れてないみかん食べてもどうしようも無いやろ……」
山崎「一年生まで巻き込んで……お前恥ずかしくないと?」
千歌「ぅぐ……ごめんなさい……」
山崎「……明日、放課後実習な」
千歌「いやああああぁっ!!!」 花丸「あの、すみません」
山崎「ん?」
花丸「農販会の会場って何処ですか?お手洗い行っている間に、学科の皆とはぐれちゃって」
千歌「ああ、今から私達も行くから一緒に行こ」
花丸「ありがとうございます」ペコリ
曜「あれ!花丸ちゃん!花丸ちゃんも農販会で何か売り物があるの!?」パアァッ
千歌「はなまるちゃん?」
梨子「お友達?」 曜「うん、ルビィちゃんとの繋がりでお友達になったの!」
花丸「あら、曜ちゃんずら。曜ちゃんも農販会……じゃなさそうな。制服だし……」
曜「うん、今日はお手伝いに来たんだ!花丸ちゃんは?」
花丸「オラは今日パンと梅ジュースと肉味噌を売るずら。毎回食品科が出してる商品で、一年生は大まかな流れを掴む為に見に来たずら」
曜「なるほどね〜」
梨子「オラ……?」
千歌「……ずら?」 曜「ああ、花丸ちゃんはお寺の子で、おじいちゃんがすっごい訛ってる人なんだって。だから花丸ちゃんも移っちゃったというか……」
花丸「お、オラの喋り方、変……?」アワアワ
千歌「そんなことない!かわいいよ!」
花丸「えっと……」
千歌「私は緑化科二年の高海千歌!で、こっちが桜内梨子ちゃん!」
梨子「よろしくね、花丸ちゃん」
花丸「はい、よろしくお願いします」ペコリ
山崎「自己紹介はいいけど、お前ら早く戻らんでいいと?」
千歌「……あっ」 −−−−
農販会 会場
善子「ちょっと!千歌達は何処行ったのよ!?」💢
ダイヤ「知りませんわよ!私がお金の管理をしている間に千歌さんも梨子さんも居なくなったんですわ!」💢
果南「やっほー、って……なんか荒れてる?」
ダイヤ「あ、果南先輩!果南先輩も販売物があるんですの?」
果南「うん、うちはお花を売るよ。って、人ヤバ……」
ダイヤ「運営していた千歌さん達が居ないんですわ」
鞠莉「ああ、梨子なら居なくなった千歌っちを探しに行ったわよ。私が善子と回しとくから〜って言って」
善子「何適当言ってるんですか」 おじさん「あの、すみません」
善子「あ、はーい。どうなさいましたか?」
おじさん「あそこに生えてる木は何の木ですか?」
善子「…………はい?」
おじさん「だから、あそこに生えてる木です」
ダイヤ「ユーカリじゃないんですの?」
おじさん「いーや、あれはユーカリじゃないな。俺は植物に詳しくて──」
善子「は???」ポカーン
ダイヤ「(どう見てもユーカリですわ)」 千歌「ごめんなさあぁい遅れました!」タッ
千歌「……っげ……あの人…………」ピタッ
おじさん「ああ、君。あそこの木は──」
千歌「(こ、今度はそっち系……答えられないとチカが怒られるやつだ……)」
千歌「ゆ、ゆーかり?……じゃないんですかね〜、あはは〜……」
おじさん「………………」😠
千歌「ひょええぇ……」ガクブル 山崎「すみません、今から販売を行うので抽選の番号順に整列お願いします」スッ
千歌「せ、先生……っ、」
山崎「お前また絡まれてんのか。もう少し気を付けろ」
千歌「ううぅ……せんせーっ……」ウルウル
ダイヤ「やっと来ましたわね。鞠莉先輩、善子さん。ありがとうございました」
善子「千歌、後でジュース奢りね」
鞠莉「じゃあ私はパウンドケーキ」
千歌「いやいやいや!何で私だけ!」 山崎「梨子、販売するから10人ずつ中に入れて行って。また合図するから少しずつな」
梨子「分かりました」
曜「せんせー、私、何か手伝いますよ!」
山崎「ん、じゃあ並んでない人に声掛けて来て」
曜「分かりました!行ってきます!」ビシッ
梨子「千歌ちゃんも行くわよ」
千歌「はぁい……」 −−−−
農販会 終了
更衣後 緑化棟 緑化教室
千歌「だあああっ……疲れたぁ……」グデ
梨子「中々キツかったわね……」グッタリ
ダイヤ「ふたりともお疲れ様です、大変でしたね……」ゲッソリ
ルビィ「お、お姉ちゃんっ……」タッ
ダイヤ「あら、ルビィ……?」
梨子「るびぃ?」
千歌「ダイヤちゃんの妹だよ。デザイン科の一年生」
ルビィ「こ、これ……皆に……」スッ
千歌「わ!ジュースだ!買って来てくれたのっ!?」パアァッ ルビィ「は、はい……お姉ちゃん達が頑張って販売してるの、見てたから……」
曜「千歌ちゃーん!梨子先輩ー!」タッ
曜「あ!ルビィちゃんのお姉ちゃんも!こんにちは!」
ダイヤ「あら、曜さんではないですか」
曜「えへへ、差し入れ買ってきたんです!皆で食べましょー!」
ルビィ「マルちゃんがまだ……」
曜「花丸ちゃんは着替えてから来るって!あとは、果南ちゃんにも声掛けたし、善子先輩と鞠莉先輩にも声掛けたよ!」
千歌「オールスターじゃん!?」 梨子「……果南ちゃんっていうのは……」
千歌「ああ、私とよーちゃんの幼馴染だよ!園芸科の三年生!」
千歌「果南ちゃんはね、カッコイイんだよ!背も高いしスタイルも良いし!おっぱいもおっきいし!」
梨子「おっぱ……!?」
千歌「え?うん!大きいよね!」
曜「わかる!果南ちゃん良いおっぱいしてるよねー!」
ダイヤ「千歌さん、曜さん」圧
ようちか「「はい、すみませんでした」」 ガララッ
花丸「お待たせしたずら〜」
果南「おわ、……めちゃくちゃ人居る」
鞠莉「なぁに?この集まりは」
善子「え、帰っていい?」
千歌「ダメだよー!せっかく集まったんだから皆で仲良くやろうよー!」
鞠莉「…………まあ、偶にはこういうのも……」ポソ
善子「?……なにか?」
鞠莉「んーん、何でもない」フルフル 千歌「自己紹介しようよ自己紹介!まず私からね、私は緑化科二年の高海千歌!好きな食べ物はみかん!あ、部活は書道部!」
千歌「はいっ、次梨子ちゃん!」
梨子「え!?わ、私!?」
梨子「……えっと……さ、桜内梨子です。4月からこの浦の星農業高校に転入してきました。クラスは千歌ちゃんとダイヤちゃんと同じ緑化科です。よ、よろしくお願いしますっ」ペコリ
千歌「梨子ちゃんかたーい」
梨子「仕方ないでしょ!?」
果南「あ、この子が梨子ちゃんか」
梨子「え!?ち、千歌ちゃん!また変なこと言って……っ!」
千歌「言ってない言ってない言ってない!!」フンブン 果南「はじめまして、私は園芸科三年の松浦果南。千歌と曜から梨子ちゃんの話は聞いてるよ。部活は太鼓をしてて、実家はダイビングショップを経営してるんだ。よろしくね」
ダイヤ「えっと、はじめましての方は、はじめまして。知り合いの方はご機嫌よう。千歌さんと梨子さんと同じ緑化科二年の黒澤ダイヤですわ。部活は華道部に所属しております。よろしくお願いいたします」ペコリ
ダイヤ「……ほら、ルビィ。自己紹介なさい」
ルビィ「ぅえええっ!る、るびぃ?……え、ええっと……その……ルビィは、……デザイン科の一年生で……」
ルビィ「それで、部活は……製菓製パン部で……」ジワッ
梨子「あああ……大丈夫?無理しなくてもいいのよ?」背中サスサス…
ルビィ「ううぅ……ごめんなさい……」
ダイヤ「相変わらずですわね、ルビィ……」呆 花丸「……じゃあ、今度はオラが」ガタッ
花丸「はじめまして、オラは国木田花丸です。食品科の一年生で、部活はルビィちゃんと同じ製菓製パン部に入っています。よろしくお願いします」ペコリ
曜「私は渡辺曜!ルビィちゃんと同じデザイン科の一年生です!部活とかはやってなくて近所のスイミングクラブに通ってます、よろしくお願いいたしますっ」ビシッ
善子「つ、津島善子です。動物科の二年生で、普段はこの鞠莉先輩と二人で動物同好会として動物のお世話をしています」
鞠莉「あら、今日はヨハネじゃなくていいの?」
善子「ちょっっ!!先輩も後輩も居るのにヨハネ出来るわけないじゃないですか!」
花丸「よはね?」
善子「い、いやなんでもないのよ!この人直ぐ変な事言う先輩で、こ、困っちゃうよねぇ〜。よねぇ〜、あはは〜」
ダイヤ「無理してるのがバレバレですわ」
善子「うっさい!」 鞠莉「……最後は私ね。私は動物科三年の小原鞠莉。さっき善子が言った通り、私も同好会に入ってるわ。……大人数なんて、そんなに好きじゃないんだけど……今日は楽しくなりそうね」
花丸「覚える名前がいっぱいあるずら」
果南「花丸ちゃんはあんまりこの人達と関わったこと無さそうだし、一気に覚えないといけないもんね」
花丸「はい、……オラ、人の名前覚えるの苦手で……」
千歌「そんなことより!早く農販会の打ち上げしようよ〜!よーちゃんが沢山お菓子買って来てくれたんだし!」
曜「ほら!皆さん食べてください!」ドサアァッ
善子「それもそうね。幾らだった?あとでお金渡すわよ」
曜「えっ!?い、いえそんなっ……申し訳ないですっ!」アワアワ
鞠莉「いいのいいの。甘えちゃいなさい」
曜「そ、それなら……」コクリ ルビィ「……ぁ、チョコ……」ポソ…
梨子「チョコ、好きなの?」
ルビィ「っ!……ぁ、は、はい……」カアァッ
梨子「……っふふ、怖がらなくても大丈夫よ。ルビィちゃんと仲良く出来たら嬉しいな、なんて」ナデナデ
ルビィ「なかよく……」
ダイヤ「…………」
ダイヤ「(梨子さんが良い人で安心しましたわ。これならルビィも直ぐに心を開きそう)」クスッ 千歌「あ、そう言えばルビィちゃんが買って来てくれたジュース、私と梨子ちゃんとダイヤちゃんの分しかない……これじゃ足りないや。ちょっとチカ買って来るけど、皆何がいい〜?」
善子「私炭酸がいい」
鞠莉「……んー、じゃあ紅茶で」
千歌「おっけー、善子ちゃん炭酸、鞠莉先輩はミルクティーです?ストレートティーです?」
鞠莉「ストレートで」
千歌「はぁい。果南ちゃんと花丸ちゃんとルビィちゃんはどうする?」
果南「私は緑茶でいいよ」
花丸「オラもそれで」 ルビィ「あ、あのっ……」
千歌「んー?」
ルビィ「る、るびぃも……買うの手伝いますっ……ルビィの所為で、足りない、から……」
千歌「ルビィちゃんの所為じゃないよ〜!でも手伝ってくれるの嬉しい!一緒に自販機まで行こうね〜♪」
ルビィ「は、はいっ……!」 −−−−
−−
−
ワイワイガヤガヤ…
ガララッ
山崎「お前らまだおったと?早く帰る準備しろ、もう19時やぞ」
千歌「あ、もうそんな時間?」
曜「完全に時計見てなかったね」
山崎「こんな大人数で何しよったと?意味分からんメンツやし」
ダイヤ「農販会の打ち上げを知り合い同士が集まってやっていたのですわ」
山崎「なるほどな。ゴミとかは各自で持ち帰れよ」
花丸「あ、ゴミはオラが貰います」
善子「良いわよ、私が持って帰るから。ペットボトルも回収するから皆飲みきっちゃってください」
鞠莉「はい、ありがと善子」 花丸「えっ、でも……」
善子「一年生に押し付けたら私が嫌な人になるでしょ。こういうのは先輩を敬いつつ、後輩にサポート出来る二年に任せておけばいいの」
花丸「善子先輩……」
千歌「あっ!善子ちゃん!私のペットボトルどーぞ!」
善子「あんたはもう少し気遣ってくれる??」
梨子「私もゴミ集めるよ、……あ、ウェットティッシュ持って来てるから手拭いたり自分が使ってたところの机拭いたりして」
ダイヤ「ルビィも早く飲みきっちゃいなさい」
ルビィ「ま、待って…っ……もうルビィ飲めないよぉ……」ピエェ…
果南「貸して、私が飲んじゃうよ」ヒョイ
ルビィ「果南先輩……」
果南「あ”……ご、ごめん。嫌だったかな?」
ルビィ「い、いえっ……その……ありがとう、ございます……」
果南「……っふふ、どういたしまして」ナデナデ 鞠莉「じゃあ大体片付けも出来たし帰りましょ。皆、家は何処?全員うちが送っていくわよ」
千歌「え、鞠莉先輩ちの車ってそんなにおっきいんですか!?」
鞠莉「ええ、全員乗れると思うけど」
曜「お金持ちすごい!」
山崎「あ、千歌と梨子」ヒョコ
梨子「は、はいっ」
山崎「明日、一年生と一緒に田植えするけん覚えといて。千歌は放課後実習はそれで。梨子はまだ田植えしてないやろうけん、一年生と一緒な」
梨子「分かりました」
千歌「えーっ!田植え〜!?……んん、まあ刈り込みよりはいいけど……」
花丸「……オラ達と一緒?」
曜「千歌ちゃんと梨子先輩と一緒に出来るんですか!?」パアァッ
キーンコーンカーンコーン
果南「やば、あと五分で出ないと閉められちゃうよ」
ダイヤ「急ぎますわよ!」 >>148
近くに農業高校があるなら行ってみるといいよ!生徒側はめちゃくちゃ忙しいけど、きっと楽しめると思う −−−−−−−
−−−−−
−−−
翌日
緑化科 緑化教室
千歌「昨日は楽しかったねぇ〜♪」
ダイヤ「ええ、とても。……まあ、家に帰ってから帰りが遅いと叱られましたが」
梨子「私も少しだけ怒られちゃった。でも楽しかったし良いかな」
千歌「皆怒られちゃったの!?厳しいな〜」
梨子「千歌ちゃんのところは怒られないの?」
千歌「私はよく遅くまで学校に残ってたりするし、あんまりかな」
ダイヤ「そんな遅くまで何をしているんです?」
千歌「私、隙あらば他所のみかんばっかり食べてるから放課後実習はよく入れられるんだけど、その後先生とお喋りしたり昨日みたいに友達とお話したりすると、気が付いたら19時過ぎてたりするかな」 ダイヤ「ちゃんと勉強してるんですの?再来月には造園技能士の筆記試験がありますのに」
梨子「あ、ダイヤちゃん、それなんだけど……ここがちょっと不安で……」
ダイヤ「ああ、縮景と借景ですわね。これは最初誰でもごちゃごちゃになってしまうので気にしないで大丈夫ですわ」
ダイヤ「まず縮景ですが、これは最初に各地の名所を思い浮かべましょう。例えば静岡は富士山。富士山を庭園に取り入れたいと思っても不可能でしょう?」
ダイヤ「ですが富士山を模写し、縮小したものを庭園に取り入れることは出来ますよね。それが縮景の技法となります」
梨子「なるほど……名前の通り縮小させるのね。借景は……?」✍ ダイヤ「借景は庭園から見える景色だと思ってください。敷地外の山や林、森林、それから滝までもを取り込み、景色を借りる技法ですわ」
梨子「……ふむふむ……そのままね」✍
ダイヤ「そうでしょう?難しいようで簡単なのですよ」
千歌「あー……そういえば筆記試験の模擬テストって今日提出だったっけ……」
ダイヤ「一時間目からですわよ。間に合いますの?」
千歌「余裕だよ〜、朝読書なんてしないで寝てるか白津先生から貰った課題やるだけだもん」
ダイヤ「お先真っ暗ですわね……これで農業技術検定はクラス一番で合格してるんですから、腹立ちますわ」
梨子「そうなの!?千歌ちゃんが!?」
千歌「まぐれだよ〜、まさかダイヤちゃんが私より点数取れてないとは思わなくて……」
ダイヤ「……はぁ、つ、次は負けませんから」
千歌「再来月の筆記試験、勝負しようね〜」
ダイヤ「ね〜、ってやかましい!」 −−−−
緑化棟
授業:課題研究
千歌「今日は苔玉を作るって聞いたんですけど……挿し木の方は……」
山崎「そんな簡単に根付くわけないやろ。あ、あとまたソメイヨシノ枯れてたぞ」
ちかダイ「「いやああああああああっっ!!」」
千歌「あんなに頑張ったのに!」
ダイヤ「あんなに気を付けたのに!」
梨子「ご、ごめん……私が……」
山崎「千歌がしたとこだけ枯れてたな」
ダイヤ「千歌さん!」💢
千歌「あっははぁ……おかしいなぁ……」 ダイヤ「大体、貴女去年も枯死させてましたわよね!?半分以上は貴女の責任ですわよ!」
千歌「え〜!私?」
山崎「ほらやるぞ」
千歌「はぁい……」
山崎「これ、何の植物か覚えとる?」
梨子「えっと、たしか……フィカスプミラ……」
山崎「正解。これがフィカスプミラな。今日はこれで苔玉を作っていこうと思っとる」
山崎「用意するものは麻布、お椀、天糸、赤玉土、……あー、そうやな……ケト土も用意しておいて。あとは木バサミ」
梨子「お椀?……何に使うんですか?」
山崎「後で説明するけん、道具準備しようか」 −−−−
山崎「まずこの赤玉土と、ソフトシリカミリオン……ケイ酸塩白土を10対1の割合で混ぜる」サッサッ…
千歌「ソフトシリカミニオン?」
ダイヤ「ミニオンじゃなくてミリオンですわ。これは何の効果があるんですの?」
山崎「これは病原菌を抑制して、植物の抵抗力を高める役割があるんよね。根腐れを防いで発根を促進することが出来る」
山崎「安いところだと1キロ500円くらいで買えるな」
千歌「ミニオンすごーい!」
梨子「ミリオンよ……」 山崎「お椀貸して」
ダイヤ「はい」サッ
山崎「そしたらまず、お椀に25×25のサイズに切ったを敷いて、底に軽くさっきミリオンを混ぜた土を引く」サッサッ…
山崎「次はこのフィカスプミラを苗から出して、根っこを露出させる。これは慎重にやらんと根っこが切れるから気を付けないといかんよ。特に千歌」
千歌「えっ」
山崎「このくらい。このくらい根っこを出したら、お椀の中に入れて……周りに土を被せる」
山崎「麻布で土と一緒に植物を包み込んで、こんな感じで……」キュッ
梨子「おにぎりみたいにするんですね」
山崎「そう。そうしたら、天糸で周りから麻布を固定するように巻き付ける」クルクル…
山崎「こうやな。最後にミズゴケを付けて、もう一度同じように天糸で巻き付けたら完成。分かったか?」キュッ
ダイヤ「一旦やってみないと分からないですわね……」
梨子「じゃあ、取り敢えずやってみましょう。実践あるのみ!よね」
千歌「うん!それじゃ誰が一番上手く作れるか勝負だー!」 −−−
梨子作苔玉:まだ丸い。惜しい。
ダイヤ作苔玉:綺麗な丸。お手本みたい
千歌作苔玉:原型を留めてない。植物が死にかけ。天糸が絡まりまくってる。
千歌「…………モウヤダカエリタイ……」
ダイヤ「この勝負、私の勝ちですわ!」ドヤァ
千歌「悔しい悔しい悔しい〜っ!なんでだよ〜っ!」ジタバタ 梨子「ちょっと千歌ちゃん。暴れないの。背中砂だらけじゃない。ほら立って」パッパッ…
千歌「ううぅ……りこえもーん!ダイヤんがいじめるよーっ!」ギューッ
梨子「誰がりこえもんよ!?」
ダイヤ「誰がダイヤんですか!!」
山崎「まあどっちにしろ、梨子はともかく、今の千歌の苔玉を売るのは厳しそうやな……」
千歌「なっ!?そ、そんなに!?」
山崎「ダイヤのと比べてみろよ」
ダイヤ作苔玉✨
千歌作苔玉😇
千歌「モウヤダ」 千歌「むーっ……何でこうなるのかなぁ……」
ダイヤ「沢山作っていけば上手くいくはずですわ」
梨子「そうよ、千歌ちゃん元気出して?」
千歌「……うん……」
山崎「まぁ、大体容量は掴めたやろうし、もう一個作ってみるか」
千歌「こ、今度こそ……っ!」 −−−
苔玉2つ目
梨子作苔玉:形にはなったが、植物が傾いている。でも丸い。許容範囲。
ダイヤ作苔玉:もはや職人。
千歌作苔玉:巨大。何故こんなに大きくなったのか誰も分からない。でも丸いし、植物は真っ直ぐになった。
山崎「ま、まあ……ギリ合格ラインやな」
千歌「私がこんなに頑張ったのにギリ!?」
ダイヤ「努力と商品価値は比例しませんからね……」
千歌「ダイヤちゃんが言わないで。むかつく」 梨子「千歌ちゃんも上手になってるわよ。元気出して?」
千歌「ううぅ……りこちゃぁん……」ギューッ
山崎「あ、もうこんな時間か。片付けるぞ」
ダイヤ「はい。ほら、千歌さんも動く!」
千歌「うるさいなー!もー!」💢
ダイヤ「何ですのその言い方!大体貴女は!」💢
梨子「も、もう…っ、ふたりともやめなさいよ……」 −−−−−
−−
放課後
浦の星農業高校 水田
花丸「……五月、暑いなぁ……」
花丸「(せっかく仲良くなったルビィちゃんも曜ちゃんも、違う学科だから会えないし……寂しいなぁ……)」
梨子「あ、花丸ちゃん?」
花丸「梨子先輩!?」パアァッ
梨子「田植え、私はしてないから、食品科にお邪魔させてもらうことになったの。食品科って聞いたら花丸ちゃんだなって……迷惑だった?」 花丸「いえ!オラも仲良い人が居なくて寂しかったので心強いです」
梨子「そう?良かった」クスッ
「それじゃあこの位置から始めまーすっ」
花丸「うひゃあぁ……水があったかいずら……」
梨子「へ、変な感じするわね……痛っ……なんか鋭いもの踏んだし……」
花丸「油断してたら足持ってかれちゃいますね……」
梨子「そうね……」 −−−
一方その頃……
浦の星農業高校 水田(小さめ)
千歌「なんで私も田植え……」ズーン
果南「あ、千歌。やっほー」
千歌「果南ちゃん!今暇!?」
果南「今日は部活も無いしね。暇だよ」
千歌「チカひとりじゃ寂しいから、一緒に田植えしよ!田植え!」
果南「ひとりで水田で何してんだろうって思ったら……そっか。放課後実習」 千歌「ねー!お願い!一生のお願い〜!」
果南「……もー……仕方ないなぁ」
果南「待ってて。実習服、着替えてくるよ」
千歌「果南ちゃん!ありがとう!だーいすき!」パアァッ
千歌「あ、でも早くしないとチカの足持ってかれちゃうから急いでね〜」
果南「やっぱ手伝うの辞めようかな」
千歌「わー!ごめんごめん!もう言わないからーっ!」 −−−−
一時間後
花丸「はひゃあぁ……腰が痛いずらぁ……」グデッ
梨子「そ、そうね……お米農家さんって凄い……」
花丸「流石に農家さんは機械じゃないですかね……」
梨子「そ、そっか……」
花丸「……でも、農業高校って、なんかいいですね」
梨子「……えっ?」 花丸「オラ、入学前は凄い不安だったんです。中学の時から環境が一気に変わって……こんな街みたいな学校に来て、……着いて行けるかなって」
花丸「オラは農業なんてしたことないし……受験の面接の時も、周りの皆が農家さんだったり、夢を持っていたりして、オラには何も無いなってずっと考えてたんです」
花丸「……だけど、違った」
花丸「皆が皆、農業をしたくて此処に来ているんじゃなくて、……学校生活を思う存分楽しむ為に此処に来てるんじゃないかって思うんです」
花丸「千歌先輩は特に……学校がいつも楽しそうで、笑顔で。だから、オラも釣られて笑顔になっちゃうし、学校が楽しいなって思えるんです」
花丸「……変、ですかね……?」 梨子「……ううん、とっても素敵」
梨子「私もね、農業高校ってこんなに楽しいものなんだって知らなかったの」
梨子「……私も花丸ちゃんと一緒で、千歌ちゃんにそう気付かせてもらったの。農業高校は楽しいよって」
梨子「千歌ちゃんったら、実習嫌だ嫌だって直ぐにぐずるのに、楽しそうに授業を受けてるんだから……狡いわよね」クスッ
梨子「千歌ちゃんと同じクラスにならなかったら、皆と出会えなかったし……何より農業は辛いものだって思い込んじゃってたかもしれない」
梨子「千歌ちゃんには、感謝しかないわね」
梨子「……千歌ちゃんの話してたら会いたくなって来ちゃった。花丸ちゃんも一緒に行く?」
花丸「……はいっ!」 −−−−
緑化棟 農環室裏 高台
果南「お疲れ様。はい、オレンジジュース」
千歌「実習後のオレンジジュースはちょっと……でもありがと」
果南「……景色がいいね」
千歌「ここは水田も見えるし、学校の外も見えるし……全部見えちゃうスペシャルな場所だからね。私のお気に入りの場所なの」
果南「良いね。私も今度からここに来ようかな」
千歌「風が気持ちいよねぇ〜」 千歌「…………ねー、果南ちゃん」
果南「んー?」
千歌「……私ね、浦の星を楽しい学校にしたいんだ」
果南「楽しい学校?」
千歌「うんっ。そりゃあ、あと三年もすれば廃校になっちゃうんだけど……でも、残りの期間、在校生みんなが楽しかったって心の底から笑える学校にしたいの」
千歌「……辞めちゃったあの子にも、辞めなきゃ良かったなって思って貰えるような楽しい学校」
千歌「その為にどうしたらいいのかなってずっと考えてた。みんなに、楽しんでもらうには……」
果南「……千歌……」
千歌「だから──」 千歌「文化祭、一緒にステージ発表出よう!」
果南「な、なんでそうなるの?」
千歌「楽しいと言ったら文化祭!雑用だらけの農業高校で唯一楽しい行事なんだよ!?思い出作るにはここしかないって思うの!」
果南「まあ?……でもステージ発表なんて何するの?」
千歌「ほらっ、最近流行ってるじゃん。スクールなんちゃら〜ってやつ!」
果南「もしかして、スクールアイドルのこと?」
千歌「そう!それのコピーユニットしようよ〜!」
千歌「あっ、それとも私達が曲作っちゃう!?衣装はデザイン科のルビィちゃんとか曜ちゃんに手伝ってもらって──」
果南「千歌」 千歌「……や、やっぱり……ダメ?」
果南「……私達は都会のキラキラした学校に居るわけじゃないの。泥んこだらけで汗だくで……そんな農業高校で、スクールアイドルなんて出来ると思う?」
千歌「それは……」
果南「……ごめんね、本当は応援してあげたいんだけど──」
千歌「でもっ!」
千歌「でもね、果南ちゃんもきっと楽しめると思う!私、絶対後悔させない。約束する!だから……だから……」
千歌「果南ちゃんも、一緒にステージ発表出てくれる……?」コテリ
果南「千歌……」 果南「……しょうがないな……文化祭だけ、なんだよね?」
千歌「してくれるのっ!?」パアァッ
果南「流行りのスクールアイドル……より大々的には出来ないけどさ、なんかこういうのも良いよね。裏で静かに輝くアイドル〜みたいなの」
千歌「うううぅ……果南ちゃ〜んっ!」ギューッ
千歌「絶対成功させようね!」
果南「……うんっ」
千歌「あっ、そうだ。なら皆誘おうよ!よーちゃんも、ダイヤちゃんも梨子ちゃんも!それからルビィちゃんに花丸ちゃん、善子ちゃんに鞠莉先輩!」
千歌「接点の無かった皆が集まってスクールアイドルするなんて、凄い面白いと思わない?見てる皆も変なメンバーで笑っちゃうと思うんだ!」 果南「まあ、そういうのもいいんじゃない」クスッ
千歌「えへへ、まずね〜、よーちゃんとルビィちゃんに衣装作って貰ってね!それでそれで、果南ちゃんには振り付け作ってもらうの!」
千歌「作曲は……うーん、鞠莉先輩とか?鞠莉先輩はお金持ちだからピアノとか弾けそうだし!あ、梨子ちゃんもピアノ絶対似合う!」
千歌「ダイヤちゃんと花丸ちゃんと善子ちゃんは作詞かな〜?でもなんか皆の個性が強過ぎて凄い曲出来ちゃいそうだよね」クスクス
果南「じゃあ……千歌は何をするの?」
千歌「私?私は……リーダーかな!」ドヤァ
果南「り、リーダー?」
千歌「皆をまとめることも仕事のひとつなんだよ!だから私はリーダーをする!」ムンッ
梨子「あっ!居た居た!」タッ
花丸「千歌先輩、此処に居たずらぁっ……」ゼェゼェ 八つ橋です。
補足として、この世界線のスクールアイドルは、女子高生が個人的にアイドルの真似事をしているもので、ラブライブ!という大会の概念は無いです
分かりにくかったらごめんなさい 田舎学生の等身大な感じが出ててええやん>スクドルの設定 あくまでメインは農業高校の話だから……スクールアイドルはついでだから大目に見て…… 高校生が文化祭でやるアイドルの真似事ってのがリアリティーあってよいな 果南「あれ、梨子ちゃんとマルちゃんだ」
千歌「なになに?誰か探してたの?」
花丸「千歌先輩の話をしてたら、会いたくなっちゃって……」ゼェゼェ
千歌「えー!なにそれうれしい!かわいい!」ギューッ
梨子「果南さんと千歌ちゃんで何してたんですか……?」
果南「ちょっとね。千歌ったら私に田植え手伝えって言うもんだから」
千歌「……あ、あはは〜……ひとりじゃ寂しいし?」
曜「ちかちゃーん!かなんちゃーん!」タッ
梨子「あれ、曜ちゃんも?」
曜「田んぼでふたりを見つけたから走って来たの!梨子先輩も花丸ちゃんも居てビックリ!」 千歌「丁度いいところに!私、皆に話があったんだ!」
梨子「話?」
果南「え”。千歌、本当に言うの?」
千歌「言わないつもりなの?」
果南「あー……いや、なんでもない……」
果南「(千歌のことだからどうせすぐ忘れるだろうと思って承諾したけど……これは本当にアイドルやらないといけなくなるやつだ……)」
花丸「何かあるんですか?」
千歌「うんっ、最近テレビとかで取り上げられてるスクールアイドルってあるでしょ?」
花丸「その……スクールアイドルというのは……?」
曜「高校生とかがアイドルの真似して歌とか振り付けとか衣装とか作ってるやつ?」
千歌「そう!それを今年の文化祭でやりたいなーって思ってて!」 千歌「メンバーはこないだ一緒に農販会の打ち上げをした9人!絶対このメンバーがいいんだー!」
梨子「す、凄いメンバーになりそうね……」
千歌「何他人事みたいなこと言ってるの?梨子ちゃんもメンバーだよ!」
梨子「だ、だよねぇ……」
曜「えー!果南ちゃんもやるの!?」
果南「え、いや、私は──」
千歌「うん!果南ちゃんもメンバーになってくれるって!」
果南「え!?いや違っ!」
千歌「ちがうの?」ウルッ
果南「ぅ”っ……」メソラシ
曜「果南ちゃんも千歌ちゃんもやるなら私もやるー!」 曜「梨子先輩も花丸ちゃんも一緒にやろうよ!絶対楽しいですよ!」
梨子「わ、私はそういうの向いてないし……」
花丸「オラもアイドルはちょっと……」
千歌「そっかぁ……」ションボリ
曜「せっかく皆と出来ると思ったのに……」ションボリ
花丸「…………ぁ」
りこまる「「………………」」メアワセ
花丸「……あの、……やっぱり、話だけ聞いてもいいですか?」
梨子「私も……少しだけ考えてみるね」
千歌「花丸ちゃん!梨子ちゃん……!」パアァッ
千歌「これで5人か!」
果南「千歌、早とちりし過ぎだよ……」呆れ −−−−−−
−−−
−
翌朝
デザイン科教室
ルビィ「──スクールアイドルの、コピーユニット?」
曜「うん、千歌ちゃんがやろう!って言ってるんだけど……ルビィちゃん、こういうの興味無い?」
ルビィ「ルビィは……」
ルビィ「……興味、あるけど……」ポソリ
曜「本当っ!?」パアァッ
ルビィ「……でも、お姉ちゃんが許してくれるかどうか、分からなくって」
曜「お姉ちゃん……あ、ダイヤ先輩?」
曜「ダイヤ先輩って、アイドル嫌いなの?」
ルビィ「う、うーん……なんて言うか……うちの両親、けっこう厳しくてね。家のテレビで流れてるはニュースだけなの」
曜「にゅ、ニュースだけ!?」 ルビィ「うん……一回、夜中にお姉ちゃんとベッドから抜け出して、クラスの子達がいつもお話してるアイドルを見ようってなったんだけど……結局見つかってお母さんに怒られちゃって……」
ルビィ「ルビィの我儘でお姉ちゃんも巻き込んじゃったから……嫌じゃないかなって……」
曜「……そっか……」
ルビィ「うん、……だから、お姉ちゃんが良いよって言うまで待ってて欲しいな。ルビィは……千歌先輩達と一緒にしたいなって、思ってるから」
曜「……分かった。じゃあルビィちゃんのポジションは私が守っておくから!」ビシッ
ルビィ「うんっ……ありがとう!」 −−−−
動物科 緑化科 教室前
善子「──はぁ?スクールアイドル?」
千歌「うん!ぜーったい入って欲しいの!善子ちゃんったら可愛いじゃない?だから似合うと思うの!アイドル!」
善子「興味無いから」スンッ
千歌「そんなこと言わずにさぁ!お願い!」
善子「千歌のクラスに可愛い人沢山居るでしょ。そっちを誘いなさいよ」
千歌「私は絶対善子ちゃんがいーの!」
善子「どうして?」
千歌「………………善子ちゃんがいちばん可愛いから……」ポソッ
善子「……………………」 善子「はい残念〜、善子じゃなくてヨハネって言ってたらスクールアイドルやってました〜」
千歌「ちくしょおおおぉっ!」床ダンッッ
善子「残念だったわね。そういうとこ考えていかないと」
千歌「善子ちゃんに言われたくない……」
善子「どういう意味よ」
ダイヤ「お二人とも。朝から騒がしいですわよ」
千歌「あ、ダイヤちゃん!良いところに!」タッ
千歌「ダイヤちゃん……!一緒に、スクールアイドルやりませんか!」パッ
ダイヤ「……スクール、アイドル?」 ダイヤ「……何ですの?それ」
善子「今テレビとかでやってる……って、あんたん家、テレビ自由に見れないんだっけ」
ダイヤ「ええ。まあ」
善子「……んー、高校生がアイドルごっこするのが流行ってるのよ。自分達で曲を作ったり、衣装を作ったりして、オリジナルMVとかを投稿してる人も居て結構有名なのよ」
ダイヤ「はぁ、そうなんですか」
千歌「うん!ダイヤちゃんもやってくれるよね!」
ダイヤ「お断りさせていただきますわ」
千歌「……えっ」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています