千歌「浦の星農業高校へようこそ!」
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静岡県内浦にある創立百年を越えた伝統ある学校、浦の星農業高校。
緑化科、動物科、園芸科、食品科、デザイン科の5つの学科から成り立つこの学校だが、生徒数が年々減少していることから、来年度からの生徒募集を取り止め、三年後には廃校が決定している。
今年は三学年全員が揃う最後の年。
緑化科の生徒である高海千歌を初めとした9人の奮闘劇が、ここから始まる。 −−−−−−−
−−−−−
−−−
四月
果南「おはよ、千歌」
千歌「おはよー……果南ちゃん……」ズーン
果南「あらら。新学期早々どうしたの」
千歌「……ねぇ、果南ちゃん」
果南「ん〜?」
千歌「今日の時間割、聞きたい?」
果南「なぁに。言ってみな」 千歌「実習四時間と国語と体育」
果南「あちゃー。嫌な時間割になったね」
農業高校では、割とありがちである。
実習のある専門科目は基本二時間でひとつの授業になっていて、専門科目が並んでしまうと、午前中はずっと実習。ということもある。
千歌「これ国語要らなくない?どう頑張っても寝ちゃうんだけど」
果南「寝たらダイヤに叱られるよ」
千歌「もーっ!どうしてダイヤちゃんったら直ぐに怒るの〜!」ムキーッ 果南「……それより千歌、聞いた?今日千歌のクラスに転入生来るらしいよ」
千歌「え!?この学校に転入生!?しかも緑化科に!?」
千歌「動物科じゃないんだ……って違くて。それ、本当?」
果南「みたいだよ。噂になってるし」
千歌「どうせ嘘だよ〜。だってこの時期に農業高校に転入生なんて有り得ないもん」
果南「まあそうなるよね。実際来てみないと分かんないし」
千歌「だね〜、それじゃあここで」フリフリ
果南「うん。頑張ってね千歌」フリフリ −−−
緑化科 教室
千歌「あ〜、実習だるいよ〜……どうせまたツツジの剪定なんだ……私は知ってるよ……ここ最近ツツジしか刈ってないもん……」ドンヨリ
ダイヤ「千歌さん。しゃんとしなさい。みっともないですわよ」
千歌「……だってぇ、毎日同じことの繰り返しだし……代わり映えしないし……私、農業高校ってもっと自由で楽しいものだと思ってたもん」
ダイヤ「そんなこと言って……ほら、千歌さん今年は造園技能士の資格を取るのでしょ。造園技能士は一応国家資格なのでとても達成感を感じられますわよ」
毎年緑化科の二年生は造園技能士三級の資格を取ることになっている。筆記、実技から成る試験で、そのほとんどは授業で習得する。農業や造園の基礎知識や、基本技術を試される試験で、合格率は70%ほどだと言われている。 千歌「それは皆取るやつだし、大体、私お庭が好きってわけでもないし……」
ダイヤ「だったらどうして緑化科に来たのですか……」ハァ…
千歌「…………む〜……あっ、ダイヤちゃん、今日このクラスに──」
ガラララッ
緑化科担任「おはようございます」
緑化科生徒「おはようございます〜」
緑化科担任「噂になっていて知っている方は居ると思いますが、今日からこのクラスに新しく転入してくる生徒が居ます」
緑化科担任「桜内さん、入っておいで」チョイチョイ
「は、はいっ……」 千歌「──ぁ、」
梨子「初めまして。東京から転校してきました。桜内梨子といいます。よろしくお願いします」ペコリ
千歌「嘘でしょ……本物の転入生じゃん!?しかも美少女じゃん!?東京人じゃん!?!?」ガタッ
ダイヤ「千歌さん、お静かに」
千歌「は、はひ……」ストン…
千歌「(な、なんであんな美少女が農業高校に!?有り得ない、有り得ないよ!?!?)」
何故農業高校に居るのか分からないくらいの美少女が居るのも、割とあるあるである。 千歌「(農業高校は農業をする場所なんだよ!?合コンなんか無いし制服も可愛くないし実習服は世界で一番ダサいし!)」
千歌「(そんな農業高校にどうしてこんな美少女が!?)」
緑化科担任「それじゃあ桜内さんは高海さんの隣の席が空いてるので、そこに座りましょうか」
梨子「は、はい……っ」ストン
千歌「……………………」ジーッ
梨子「えっと……」
千歌「あぁ、えっと、高海千歌。よろしくね」ニッ 千歌「それより、梨子ちゃんって本当可愛いね!どうして浦の星を選んだの?どうして東京からここまで転校してきたの?どうして農業高校に来たの?」ズイッ
ダイヤ「千歌さん」
千歌「ぁあっ!つ、つい……」
ダイヤ「気持ちは分かりますが、質問責めをしていてもいい事はありませんよ」
千歌「それもそっか……あ、桜内さん。実習服はもうある?一時間目から実習だけど……」
梨子「ああ、それなら大丈夫。何が必要か分からなかったから、取り敢えず全部持ってきたの」
千歌「ん、そっか。それならおっけーだね!」グッ 千歌「まず、このHRが終わったら走って緑化棟の更衣室まで行って実習服に着替えるの。そこから階段を登って、9時までに緑化教室の自分の席に着席。おっけー?」
梨子「え、えぇ?走って……?」
ダイヤ「ここの敷地は広いですから、歩いていると更衣や実習に間に合わないんです」
梨子「な、なるほど……」
緑化科担任「はい、それではHRを終わります。起立、礼」
緑化科生徒「ありがとうございました〜」
千歌「さっ、行こ!梨子ちゃん!」タッ
ダイヤ「急がないと怒られますわよ!」タッ
梨子「ま、待って……そんないきなりぃっ……!」アワアワ −−−−−−−
−−−−−
−−−
緑化棟 緑化教室
梨子「……はぁ……はぁ……」ゼェゼェ
千歌「あっ、やっと来た!もう向こう行くって〜」
ダイヤ「記録用紙は私が書いておきましたから、刈り込みバサミを運搬車に積んでそこからまた校舎の方に戻ってツツジの剪定を行います」
梨子「えっ……ええぇ?……も、戻るの?」
ダイヤ「?……ええ、戻りますが?」
梨子「何がおかしいのか分からないって顔してる……これが農業高校の普通なのね……」
千歌「はやく行こ〜っ!」タッ
ダイヤ「早くしないと怒られますわよ!」タッ
梨子「あぁっ、ま、待ってぇ……」ヘトヘト −−−−−
校舎前
千歌「刈り込みバサミはこの持ち手の先端。真ん中らへんは作業しにくいから持たない方がいいよ。それから、作業する時は危ないから手袋を必ず付けてね。今日は持ってる?」
梨子「ご、ごめんなさい……手袋は持ってきてなくて……」
千歌「なら私の貸してあげるね!」
梨子「高海さんはどうするの……?」
千歌「バレなきゃ素手でも大丈夫だから!梨子ちゃんは今回が初めてなんだし、一応手袋あった方がいいでしょ?」
梨子「本当に大丈夫?手とか切っちゃうんじゃ……」
千歌「大丈夫だいじょーぶっ、そんな簡単に手切らないから。ほら、まずはここの飛び出してるとこがあるでしょ?そこを……」ジャキン ジャキン
千歌「こんな感じで整えていくの。桜内さんもやってみて!」
梨子「わ、分かった……」スッ 梨子「(お、重いっ……刈り込みバサミって意外と腕に負担が掛かるのね……)」ヨロッ
千歌「おっと……大丈夫?」スッ
梨子「ぁ、う、うん。大丈夫」
ブーンッ
梨子「ひゃっ!?な、何!?虫!?」ビクッ
千歌「あ、クマバチだ。かわい〜!」
梨子「か、可愛い!?ハチが!?」
千歌「え?うん。可愛いよ?クマバチは何もしないから優しいんだよ〜♪」
梨子「え、えぇ……」
梨子「(……農業高校の人って、みんなこうなの……?)」 ダイヤ「千歌さん、梨子さん。うるさいですわよ。早く作業しなさいな」
千歌「ちぇ〜……怒られちゃった……だって先週も先々週もずーっとツツジの刈り込みじゃん!楽しくないよ〜」
ダイヤ「楽しいかどうかは関係ありません。これは授業ですから」
千歌「む〜……ダイヤちゃんの鬼……」
梨子「そういえば、黒澤さん……凄い実習服似合いますよね。それにその刈り込みバサミとの相性が……」
千歌「あ!梨子ちゃんもそう思う!?私もずっっと思っててさぁ!」
ダイヤ「……褒められてる気がしませんわね」
千歌「ほら!ダイヤちゃん!強そう!!」
ダイヤ「は?」
千歌「なんて言うか、その実習服と刈り込みバサミで敵を蹴散らして来たんだなって!」
ダイヤ「しょうもないですわ」フンッ −−−−
梨子「………………」ゼェゼェ
梨子「え……刈り込みバサミが重くて腕痛いし……なんか上手く刈り込めないし……」
千歌「あちゃ〜……梨子ちゃんがやってたとこ、見事にハゲちゃってるね」
梨子「うぅ……ごめんなさい……」
千歌「いいのいいの!私もよくするし、案外刈り込みって難しいでしょ?」
梨子「ええ。もっと簡単にできると思っていたけど……こんなに大変だったなんて……」
千歌「私も最初は簡単なことだと思ってたよ〜!難しいよねぇ」ウンウンッ
実習助手「おーい、そろそろ戻るぞー。道具片付けろー!」
千歌「はぁーい!」
梨子「……あの人は?」
千歌「緑化科の実習担当の山崎先生だよ。といってもあの人は実習助手なんだけどね」
梨子「実習助手っていうのは?」
千歌「えー、なんて言うんだろう……正式な先生じゃないんだよね」 ダイヤ「千歌さん、梨子さん。刈り込みバサミ貰いますわよ」スッ
千歌「ありがとうダイヤちゃ〜ん!」スッ
梨子「こ、このくらい自分でするよ、申し訳ないし……」
ダイヤ「大丈夫ですわ。こうした方が早く終わりますし……あ、では梨子さん達はホウキで刈った草を拾い集めてくださいな」
千歌「おっけー。梨子ちゃん、一緒にやろ!」タッ
梨子「わ、ま、待ってよ〜!」アワアワ −−−−
緑化棟 緑化教室
梨子「これは何を記録しているの?」
千歌「今日の日付とか温度、湿度を記録して、今日したことを書くの。人目見て分かるように、かな」
梨子「へぇ……」
梨子「……緑化科はいつも刈り込み作業をしているの?」
千歌「この時期はほとんど刈り込みかな〜?でも去年は野菜も作ったよ。ナスとピーマンとトマト!今年はブドウ栽培するみたい。あとは、造園技能士三級を取るんだって」
梨子「造園技能士?」
ダイヤ「造園……日本庭園などの庭園を作る人ですわ。その為の専門的な知識な技術を試される資格です。国家資格なので持っているといい資格ですわよ」
梨子「へぇ……造園、ねぇ……」 千歌「そうだ!せっかく休み時間なんだし、梨子ちゃんのこと、聞いてもいい?」
梨子「あ、う、うんっ」
千歌「ええ、……こほん。梨子ちゃんはどうして浦の星農業高校に来たの?」
梨子「私はお父さんの仕事の都合で内浦に来たんだけど、……何か新しいことがしたくて、農業高校に転入してみようって思ったの」
梨子「私ね、今まで皆と同じように何となく勉強して、何となく進学して……それでいいんだって思ってたんだけど、……突然つまらなくなったゃって」
梨子「どうしたらいいのかなって思った時に、家の近くに農業高校があるって知って」
ダイヤ「……なるほど、それで、どうして緑化科に?」
梨子「たまたま目に止まったから……って言ったら怒られるかな……」
千歌「ううん!私も何となくこの学科に入ったから!」
ダイヤ「何となくって、あなたねぇ……」ゲッソリ 梨子「黒澤さんは何か理由が?」
ダイヤ「……ええ、昔家族旅行で京都に行きまして、その時見た枯山水式庭園に心を奪われたんです。私もこんな風に人の心を動かせるような庭を作りたい、と思って浦の星農業高校に入学しましたわ」
千歌「色々考えてて凄いねぇダイヤちゃん」
梨子「高海さんは、どうしてこの学校に?」
千歌「………………」ジッ
梨子「な、なぁに?」
千歌「その高海さん、って呼び方。やだ」
梨子「や、やだ!?」
千歌「千歌ちゃんって呼んで!!」ズイッ
ダイヤ「そ、それなら私も是非ダイヤちゃんと呼んでくださいな!」ズイッ
梨子「わ、わかった!呼ぶ!呼ぶからぁ!」アワアワ ガラララッ
おじいちゃん先生「はーい、授業始めるぞ〜」
梨子「あの人は……?」
千歌「白津先生だよ。すっごいんだよ、白津先生!色々な資格持ってるし、結構偉い人らしくて……まあ見た目はただのおじいちゃんなんだけどね」
白津「今年から始まる課題研究の授業なんやけど、全員で同じことは出来んから3つの班に分けないといけないんですね」
課題研究。毎年一月には一年間のまとめを行い、クラスの前で発表し、クラス代表を決めることになっている。クラス代表となった班は学校全体で発表し、更にその中から学校代表の班を決め、県大会へと進めることになっているのだ。 白津「私の班はブドウのツルを使ったグリーンカーテン制作を行います」
ガチャッ
おじいちゃん先生2「すみません、遅れました〜」トテトテ
梨子「おじいちゃんが増えた……」
ダイヤ「薦田先生ですわ。同じく農業の先生ですの」
薦田「先生の班は放置された農場を新しくリニューアルして野菜の栽培を行う予定です」
山崎「俺の班は文化祭や農販会で販売する苔玉制作をします。使用する植物は学校にある余った植物を使う予定です」
白津「今から五分間時間を取るので、入りたい班のところに黒板に名前を書いていってください」 千歌「んー、どうしよっかなぁ」
ダイヤ「迷いますわねこれ……」
千歌「苔玉作るのは楽しそうだけど……後々考えたら白津先生の班かなぁ……でも野菜作るのもいいしなぁ……」ウーン
梨子「…………」アワアワ
千歌「……梨子ちゃんは、どこか興味あるとこある?」
梨子「えっ、わ、私は……」
梨子「……ねぇ、私、……二人と同じ班が良いなって思うんだけど、……ダメかしら?」
千歌「私は全然いいよ!ダイヤちゃんは?」
ダイヤ「仕方ないですわね。それで、どこにするんですの?」 千歌「あ、見て。山崎先生の班、誰も居ないよ。どんだけ人気無いんだろう」
山崎「なんか言ったか?」ヌッ
千歌「ぎゃあああっ!?!?」ドンガラガッシャーン
梨子「だ、大丈夫!?凄い勢いで椅子から落ちたけど……」
千歌「な、何するんですか先生!痛いんですけど!」
山崎「痛いも何も、千歌が変な事言うのが悪いっちゃろ」
千歌「なんだとぉ!」 ダイヤ「どうするんですの?この人の班しか残ってませんが」
山崎「この人言うなこの人」
千歌「えー、じゃあもうここでいいよー。苔玉にしよー」
山崎「雑」
梨子「わ、私は楽しいと思いますよっ、苔玉……」
山崎「ん?……ああ、転入してきた」
梨子「桜内梨子です。よろしくお願いします」ペコリ
山崎「…………なんか千歌達とは大違いやな」
千歌「なんだとぉ!やんのかこらぁ!」
梨子「や、やめなさいよ千歌ちゃん……」 山崎「まあ決まったなら名前書いとき。後でゆっくり話そうな」
千歌「ちぇー……」
梨子「か、変わった人ね……?」
千歌「そうかな?うちの学校にはああいう人しか居ないけど……」
梨子「(農業高校、やっぱり変わってる……)」 ダイヤ「名前は私が書いておきましたよ」スッ
千歌「ダイヤちゃん!ありがとう!」
千歌「課題研究はこの三人で出来るね!良かった〜!」
白津「はい、じゃあ決まったみたいなので担当の先生の近くに座って班ごとに活動してください」
山崎「お前らはここでいいか」
千歌「雑過ぎ!こんにゃろ!!」ドスッドスッ
梨子「ち、千歌ちゃん!叩かないの!」 山崎「えー、さっきも話した通りこの班は農販会や文化祭で販売する用の苔玉制作を行います」
梨子「あの、その農販会っていうのは?」
ダイヤ「農産物販売会のことですわ。学科ごとに作物や食品を生徒主体で売っていたりしています」
梨子「へぇ、それが農販会」
山崎「次の農販会は緑化が担当やろ?」
ダイヤ「はい。うちだったと思いますわ」 千歌「毎回凄い人なんだよー!梨子ちゃん、最初の農販会が次回って、大丈夫かなぁ」
梨子「そ、そんなに人が来るの?」
千歌「うんっ、あのねこの間うちの学校、テレビに出たの!その影響もあって人がいっぱい来るんじゃないか〜って噂になってるよ!」
梨子「テレビに……凄いわね……」
山崎「まあ次回の農販会には間に合わんやろうから取り敢えず文化祭を目標にな」 山崎「それで、苔玉に使用する植物を決めようと思うんやけど、なんか案あるか?」
千歌「オリーブかなぁ。あとはイロハモミジ!」
ダイヤ「私はイチョウがいいですわね。沈丁花とかも余ってましたよね?」
梨子「えっ?えっ?」ポカーン
山崎「そりゃ、梨子は分からんやろうな……」
山崎「ええっと、オリーブ、イロハモミジ、イチョウ、沈丁花……あ、フィカスプミラもあったな」
千歌「フィカスプミラ?」 山崎「こんなやつ。去年の三年生が買ってきたやつ」スッ
千歌「おお!かわいい!」
ダイヤ「これも使うとして……梨子さん、何か案はありますか?」
梨子「え、えっと…………」
梨子「……ぁ、さ、桜!桜が良い、かも……」
山崎「桜……ソメイヨシノなら校舎前に沢山咲いとるし、それ使うか」 山崎「取り敢えず、まず挿し木を行ってからじゃないと苔玉には入れられんけん、挿し木をしないといけんっちゃね」
梨子「挿し木?」
千歌「うん、採取した植物をそのまま使うっていうのは出来ないんだ。枯れちゃうから」
ダイヤ「根付かせてからではないと簡単に枯死してしまいますが、採取したものに植物調整剤を付け、苗に刺しておくことで根が出てくるのですわ」
梨子「な、なるほど……」メモメモ…
山崎「……っふ、」
山崎「メモせんでもええけどな。千歌達も見習っとけ」
千歌「なっ!?なんてこと言うんだ〜!」 −−−−
校舎前
千歌「……よし、これで100本かな」パチン
梨子「これから挿し木、するのよね……」ハァ…
ダイヤ「ええ。戻りましょうか」
梨子「ええっ、またぁ?」
ダイヤ「当たり前です。校舎前は車通りが激しいですから早く退かないと邪魔になってしまうでしょう。行きますよ千歌さん、梨子さん」
千歌「はーい、梨子ちゃんもバケツ持ってくよ〜」
梨子「ええっ、ま、待ってぇ……」ヘトヘト −−
緑化棟 ブドウハウス前
梨子「わっ……このビニールハウスは?」
千歌「これはブドウハウスだよ。その名の通り、ブドウ作ってるの!」
梨子「へぇ、ブドウを……」
梨子「そういえば山崎先生は?」
千歌「ああ、あの人色んなとこ行ったりしてるからずっとここに居るわけじゃないんだ。今はサツマイモ圃場に行ってると思う」
ダイヤ「早速始めますわよ」ストン
千歌「ああ、梨子ちゃんも座って座って」ストン
梨子「えっ……じ、地べたに座るの?」
千歌「他にどこがあるの……?」
梨子「……い、いや、……なんでもないわ」ストン
梨子「(こ、この学校で生きていくためには考えるのを止めないと行けないわね……)」 千歌「まずね、採取してきた植物があるでしょ?これをね、木バサミでこう……」パチンッ
梨子「あっ……ど、どうして葉っぱを半分切っちゃうの!?」
千歌「水分の蒸散を防ぐんだよ。ただでさえ本体から切り離されちゃって弱ってるのに、エネルギーが水分の蒸散に使われてたら中々発根しないんだ」
梨子「な、なるほど……」パチンッ
ダイヤ「育苗ポットに割り箸で植物を挿入する穴を開けておくのですわ。今回、土は赤玉土を使用します。はい、どうぞ」
千歌「ありがとっ。そしたらね、この切り口をこう斜めに切って、割り箸で空けておいた穴に入れるの!」
千歌「どうして斜めに切るかって言うと、普通に真っ直ぐ切るよりもこっちの方が水分を吸収する面積が大きくなるからだよ」 梨子「へぇ……色々考えられてるのね……」
千歌「一応お客さんに出す商品だからね。農業してる身としてそこは一番気を使っていかないと」
ダイヤ「千歌さん、そのまま入れてますけどコレ忘れてますわよ」
千歌「あっ!しまった!!」ガーン
梨子「この白い粉は何?」
ダイヤ「発根剤ですわ。その名の通り、これを切り口に付けておくと発根しやすくなるんですわ」
千歌「それで、その挿した植物にしっかり土を密着させるの!これが一番大事!」ビシッ
梨子「そ、そんなに大事なの?」 千歌「うん!本当に大事!ここが運命を左右するから!」
梨子「ふ、ふぅん……?」
千歌「去年、今と同じようにダイヤちゃんと二人で100本の挿し木に挑戦したんだけどね……55本は枯死しちゃって、結局上手くいかずに終わったんだよね……」
ダイヤ「失敗理由は根と土の密着が甘かったこと。だからこそ、今回は失敗出来ないんです。前回の反省を活かしてリベンジですわ!」
千歌「梨子ちゃんも一緒に頑張ろ!あと99本あるよ!」
梨子「ああっ、そうだったぁ……」ショモ
ダイヤ「急ぎましょう。あと30分で授業が終わりますわよ!」 −−−−
昼休み
緑化科 更衣室
千歌「梨子ちゃん!今からどっかの学科が作ってるみかんをもぎって勝手に食べに行くんだけど梨子ちゃんも行く──って」
梨子「…………」コクン コクン……
千歌「ありゃ、寝ちゃった。さっきまでこんなに汚い更衣室でご飯食べるの嫌〜って言ってたのに」
ダイヤ「転校初日に四時間実習は大変でしょうからね……私達ですら眠くなってしまいますし」
ダイヤ「……って、貴女今みかんを──」
千歌「なっ、何でもないよ!?別に他所の学科からみかんを取って食べようだなんてそんな……」
ダイヤ「はぁ、……全く。今の時期みかんがなっていると思うのですか?」
千歌「まだ青いよねぇ〜」 千歌「あ、時間やば!?掃除始まっちゃうよ!?」
ダイヤ「あ、本当ですわ!梨子さん、起きてください!掃除行きますよ!」ユサユサ
梨子「ん、んん……」ムニャムニャ
千歌「あ。かわい……」ツンツン
千歌「ダイヤちゃ〜ん……私、掃除サボる……」
ダイヤ「良いわけないでしょ!二人とも行きますわよ!」グイグイ
千歌「あ〜ん……掃除も国語も嫌だあああぁっ」
ダイヤ「一時間くらい我慢しなさいな!一時間頑張れば貴女の大好きな体育でしょう!?」
千歌「年度始めは集団行動だよどうせ!ラジオ体操と行進と駆け足!」💢 ダイヤ「文句言わずに立ちなさいな!間に合いませんわよ!」
千歌「どうせまたトイレ掃除なんだよおおおおおぉっ!!!」💢
梨子「ん、んぅ……何の騒ぎ……?」ムニャ…
千歌「り、梨子ちゃん!今から掃除サボ──」
バッチーンッ
ダイヤ「さ、行きますわよ」
千歌「はい」ヒリヒリ
梨子「えっ、何?何!?」 −−−−
体育館 六時間目終了
体育教師「はい、気を付け。礼」
生徒「ありがとうございました〜」
梨子「……はぁ、……やっと終わった……」クタクタ
ダイヤ「梨子さん、お疲れ様でした」
梨子「ありがとう、ダイヤちゃん……農業高校の一日ってこんなに大変なのね……」ゲッソリ
ダイヤ「慣れるまでは大変でしょうけど……慣れたら心地良い疲れですわ。夜もぐっすり眠れますし、農作業は良い運動になりますし」
梨子「そうね、ここまで動いてたら運動と一緒。……私、農業高校を甘く見てたわ……今日自力で帰れるか分からないもの……」 梨子「それに比べて千歌ちゃんは──」チラッ
千歌「善子ちゃーん!!お疲れ様〜!!今度また遊びに行ってもいい〜!?」
善子「ちょっ、来るなぁ!私は堕天使ヨハネだってば!」
梨子「他の学科の子にちょっかい出しに言ってるし……」
ダイヤ「千歌さんは顔が広いですからね」
千歌「善子ちゃん!次はいつ同好会ある!?」
善子「いつもあるに決まってんでしょ!私と鞠莉先輩以外人居ないのよ!」
千歌「はへ〜……動物科ってそんなに人居ないの?」
善子「そりゃ当然よ。動物科だからこそ同好会に入ってまで動物の面倒見たくないんでしょ」 千歌「え〜、私からしたら動物に触れるだけでも幸せなのになぁ」
善子「ただ触るのと世話をするのは違うのよ。私達動物科は動物として、じゃなくて商品として動物と関わってる。勿論大切な命だけど。……ただ、商品を管理する者として責任を伴うか伴わないか。ここは重要なことなの」
千歌「……なるほどねぇ。私、動物科じゃなくて良かったかも」
善子「そうね。あんたは向いてないわ」
善子「能天気に農業してるのがお似合いね。それじゃ私これから畜産棟行かなきゃいけないから」ヒラヒラ
千歌「うんっ、またね〜」フリフリ 梨子「お友達?」
千歌「うん、動物科の。あ、今度梨子ちゃんも一緒に動物同好会行こうよ!」
梨子「動物同好会?」
千歌「うんっ。イヌとかウサギとか、カメも居るよ〜!」
梨子「へぇ、良いわね。学校で飼ってるの?」
千歌「そうそう、だからそのお世話をする部活〜みたいのが動物同好会!」
梨子「なるほど……うん、考えておくね」
千歌「ありがとう!……あっ、やば、バス間に合う?早く着替えて急いでバス停行こ!」ダッ
梨子「あっ、ちょっと待ってよ〜っ!」ダッ −−−−−−
−−−−
−−
翌日 桜内宅
梨子「……………………」ガチゴチ
梨子「あー……なるほど……全身筋肉で起き上がれないわね…………」
梨子「(……今日が入学式で良かった。今日が登校日だったら私死んじゃってたもの)」ゴロッ
梨子「(……ダイヤちゃんは生徒会で出席って言ってたっけ。皆忙しそう……千歌ちゃんは確か──)」
千歌『入学式?そりゃ行くよ!』
千歌『私の幼馴染がこの学校に入学してくるんだ〜!だからそのお祝い!』
梨子「(……千歌ちゃんの幼馴染、か。どんな子なんだろう……)」ウト… −−−−−
−−−
入学式後
曜「千歌ちゃーん!果南ちゃーん!」トテテテ
千歌「よーちゃん!入学おめでと〜っ!」ギューッ
曜「ありがとう!ふたりと同じ学校に入れて良かったよ〜!」ギューッ
果南「まさか私と同じ園芸科でも千歌と同じ緑化科でもないのは驚いたけど……」
曜「えへへぇ、デザイン科も中々楽しそうだな〜って思って!」
曜「それに友達も出来たんだよ!おーいっ!」
果南「にゅ、入学式初日に!?」
千歌「よーちゃんすごーい!」 ルビィ「はっ……はじめ、まして……」ヒョコッ
千歌「わっ、かわいい!」
千歌「はじめまして〜、私は緑化科二年の高海千歌!それでこの人が園芸科の松浦果南ちゃんだよ!」
果南「よろしくね」
ルビィ「は、はひぃ……」
千歌「そんなに怖がらなくてもいいんだよ?ほら、飴!食べる?」スッ…
ルビィ「は、はいっ……」ギュッ…
千歌「くうぅ〜っ、……かわいいっ!」 曜「この子は黒澤ルビィちゃん!裁縫が得意でデザイン科に進学したんだって!それから緑化科にお姉ちゃんが──」
ダイヤ「ルビィ!」ダッ
ダイヤ「こんなところに居たのですね。入学おめでとう」
ルビィ「お、お姉ちゃんっ!」
千歌「あぁ、この子、ダイヤちゃんの妹ちゃんだったんだ!」
ダイヤ「……この方は?」
ルビィ「わ、渡辺曜ちゃん。……ルビィとお友達になってくれたの」
ダイヤ「……そう。曜さん、ルビィをよろしくね」
曜「はいっ、ルビィちゃんを任せてください!」ビシッ ダイヤ「あ、……果南先輩」
果南「久しぶり。相変わらず千歌とは仲良くしてくれてるみたいで良かったよ。私の方こそ千歌を宜しくね」
ダイヤ「はい、勿論ですわ。……それより聞きました?この人、園芸科のみかんを勝手に──」
千歌「ああーっ!!一年生の前でそれはダメー!!!」 ダイヤが果南先輩いう二次創作初めて読んだかも
初期設定いいよね これ書いてるのは農業高校出身の八ツ橋?
農高の文化祭は売ってる食い物がどれも美味いので卒業生でもないのによく行ってた >>65
農業高校出身の八つ橋です。
元生徒としては来てくれるだけでも凄い有難かった! −−−−−−
−−−−
−−
次の日 登校中
曜「えへへ〜♪こうして三人で学校行くのも久しぶりだね〜♪」ルンルン
果南「曜も今日から立派な高校生だね」ウンウンッ
曜「えへへ、早くふたりと同じ学校に通いたくてうずうずしてたんだ」
千歌「よーちゃんは何か部活入るの?」
曜「んー……千歌ちゃん達は何だっけ?」
果南「私は太鼓部。千歌は書道ね」
曜「うーん……でも私、水泳クラブあるし……やっぱりそっちを続けようかな」
千歌「ああ、そっか……うち、プール無いもんね」 曜「農業高校ってプールも音楽室も無いんだねぇ。それに比べて農場の方は止まれ!とかの看板もあるし、こんなに広いし、色々な建物があるし……何だか違う街に来たみたい」
千歌「分かるよ〜、チカも入学した時びっくりしたもんね。学校の中なのに、学校の外に居る気持ちになっちゃうもん」
千歌「あ!そうだ、よーちゃん今日放課後に動物化の畜産棟行こうよ!たくさん動物居るよ!」
曜「えー!いくいくー!果南ちゃんは?」
果南「ごめん、私は今日部活あるから……」
千歌「そっかぁ、残念……」 果南「千歌と曜二人で行って来たら?」
千歌「うんっ……あ、そうだ!梨子ちゃんも一緒に行ってもいい?」
かなよう「「りこちゃん?」」
千歌「うんっ!一昨日転入してきたばっかりの超絶美少女だよ!桜内梨子ちゃん!」
曜「美少女!?」
千歌「そーだよ!東京から来たんだって!梨子ちゃんってば何か良い匂いするし……あれが東京のじぇーけーなんだ!」
千歌「東京のじぇーけーってみんなあんなに良い匂いがするのかな?」
果南「何言ってんのさ……」 −−−−
緑化科 教室
千歌「あ、梨子ちゃんおはよ!」
梨子「おはよう千歌ちゃん、今日も元気ね……」
千歌「梨子ちゃんどうしたの?元気無いけど……ん、湿布の匂い……」スンッ…
梨子「一昨日のやつで全身筋肉痛なのよ……昨日一日じゃ治らなかったし……」
千歌「梨子ちゃんったら弱いなぁ。私を見習ってよこの元気さ!」ムンッ
梨子「それは一年も通ってたらそうなるわよ……私なんか初登校でアレだったんだから……」 ダイヤ「ん……湿布の匂い……あ、千歌さん梨子さん。おはようございます」
梨子「おはよう……ってそんなに湿布の匂いする?」
ダイヤ「ええ、少し」
梨子「嘘……は、剥がしてこようかな……」
ダイヤ「心配無いですわ。特別気になるというわけではないので。……それに、何故かこの学校に来てから鼻が良くなった気がするのです」
梨子「や、野生化してるとか?」
ダイヤ「……………………」
千歌「梨子ちゃん…………酷い………………」
梨子「ご、ごめんなさあぁいっ……」ピエェ… −−−−
昼休み
デザイン科 教室
曜「ルビィちゃーん!一緒にお昼食べよ!」
ルビィ「うんっ、あ、そうだ……お友達、呼んでもいい……?」
曜「友達?全然良いよ!一緒に食べた方がもっと美味しいに決まってるもん!」ビシッ
ルビィ「えへへ、ありがとう。ちょっと呼んでくるね」
曜「私も行く〜!」トテテ −−−
食品科 教室
ルビィ「あれ……マルちゃん居ない……」
曜「マルちゃん」
ルビィ「うん、国木田花丸ちゃんだからマルちゃん。……教室、だぁれもいないね」
曜「実習なのかな?」
ルビィ「たぶん……」
花丸「あ、ルビィちゃん!」
ルビィ「あ!マルちゃん!」パアァッ
花丸「オラ、今教室に戻ってきたばっかだから、ちょっと待ってな」 曜「あの子、すっごい訛ってるね?」
ルビィ「マルちゃんのおじいちゃんが凄い訛ってる人でね、それを聞いてたらマルちゃんもこうなっちゃったんだって」
曜「なるほどねぇ。私の周り、あんなに訛ってる子居ないから何か興味出てきた!」
曜「マルちゃーん!」ブンブン
花丸「あらら、どうしたずら。ルビィのお友達?」
ルビィ「う、うんっ。渡辺曜ちゃんだよ」
花丸「渡辺曜ちゃん。ああ、はじめまして。オラは国木田花丸ずら、よろしくね」
曜「よろしくね、花丸ちゃん!」ビシッ ルビィ「三人でご飯食べようって思ったんだけど……良いかな……?」
花丸「オラはいいよ。曜ちゃんは?」
曜「私はそのつもりで着いてきたから!三人で食べよ〜!」
ルビィ「でも……何処で食べたらいいんだろう……」
花丸「あ、食堂の裏。あそこは景色が良いからあそこで食べるずら!」
曜「良いね!それじゃあ全速全身〜っ、ヨーソロー!」タッ
花丸「行こ、ルビィちゃん!」タッ
ルビィ「ああっ、ま、待ってよ〜っ!」タッ −−−−
放課後
梨子「(今日は一日座学だったから何とかなったけど……明日からはまた実習か……憂鬱だな……)」教科書トントンッ
千歌「あ、梨子ちゃーん!今日用事ある?」
梨子「え?いや、何も無いけど……」
千歌「なら一緒に動物同好会に行こうよ!今日、私の幼馴染の曜ちゃんと一緒に行く予定が──」
曜「千歌ちゃ〜ん!」オーイ
千歌「あっ、よーちゃん!今行くね〜!」 千歌「それでね、梨子ちゃんも一緒にどうかなーって!」
梨子「私は行きたいと思ってたけど……お邪魔じゃない?」
千歌「そんなことないよ!一緒に行こ!」ギュッ
梨子「あ、うんっ」コクリ
千歌「よーちゃん、お待たせっ。この子が桜内梨子ちゃんだよ」
曜「初めまして!デザイン科一年生の渡辺曜です!梨子先輩っ、よろしくお願いします!」ビシッ
梨子「け、敬礼……?」
曜「ほら、梨子先輩も一緒に!」
梨子「よ、よろしくね曜ちゃん」ビシ…
曜「はい!よろしくお願いします!」ニパ
梨子「(な、何だかワンちゃんみたいね……)」
千歌「それじゃあ畜産棟まで、レッツゴー!」
曜「おーっ!」
梨子「お、おおーっ!」 −−−
動物科 畜産棟
千歌「ここが畜産棟だよ。畜産棟にはウシとか、ポニーとかヤギとか……あとはニワトリも居るね。動物同好会の方にはイヌとカメとウサギも居るよ!」
曜「ポニー乗れる!?」
千歌「50キロまでなら大丈夫みたいだよ!」
鞠莉「あら、珍しいお客さんね」ヒョコ
曜「こ、こんにちは!」
千歌「あっ!鞠莉先輩!こっちは転入生の桜内梨子ちゃんと、一年生の渡辺曜ちゃんです」
梨子「よ、よろしくお願いします!」ペコリ
曜「よろしくお願いします!」ビシッ 鞠莉「よろしくね。動物科三年の小原鞠莉よ」
千歌「鞠莉先輩は動物同好会の部長でもあるの。私はよく遊びに来てるから偶にお喋りするんだ〜」
鞠莉「あ、今日は善子も当番だったはずよ」
善子「………………」ドンヨリ
鞠莉「あら、噂をすれば。善子ったら泥だらけの実習服でどうしたの?」
善子「用水路に落ちたんです……って千歌」
千歌「ああ、善子ちゃんも相変わらずだね〜……」
曜「千歌ちゃん、この人は……?」
千歌「こっちは津島善子ちゃん。動物科の二年生だよ」 善子「善子じゃなくてヨハネ!……クックック……このヨハネと出会ってしまったからには貴女も不幸の星か灯るのよ……逃げても無駄、私の不幸の星からは一生逃げられないんだから!」
曜「はい?」ポカーン
曜「先輩、何言ってるんですか?」
善子「〜っ!!」カアァッ
善子「な、なんか調子狂うんだけど……」
鞠莉「善子も立派な二年生になったんだし、メリハリつけないとダメね」
善子「……ん、……ああ。貴女、転入してきた」
梨子「さ、桜内梨子です。よろしくね、善子ちゃん」
善子「……その呼び方辞めて。嫌なの」ムッ
梨子「えっ?あ、……そ、それじゃあ……よっちゃん、とか……?」
千歌「なにそれダサ──」
鞠莉「…………」サッ
千歌「っむぐ!?」 善子「よっちゃん……まあいいわ。それで、貴女は初めて見るけど」
曜「はいっ、デザイン科一年の渡辺曜です!善子先輩っ、よろしくお願いします!」ビシッ
善子「だから善子は……むむ、でもこの子一年生だし……もうそれでいいわ」
千歌「そんなことより早く動物見に行かない!?可愛いよ!?」
曜「そうだった!善子先輩、鞠莉先輩、動物見て行ってもいいですか!?」
鞠莉「ええ、好きにしてくれていいわよ。私達も各自で色々作業してるから、困ったら声掛けて。行くわよ、善子」
善子「はぁい。また後でね」
梨子「うん、またね」
千歌「ウシ見ようウシ!おっきいんだよー!」 梨子「ウシが居るなんて凄いわね……私が前通ってた学校じゃ考えられない……」
千歌「ウチの学校は黒毛和牛を5頭か4頭飼ってるんだって!あ、でもついこの間出荷したばっかだったっけ……まあ覚えてないけどね!」
梨子「出荷ってことは……やっぱりお肉にするのね」
千歌「動物科はそういうのばっかりだからつらいよねぇ。でもでも、出荷したウシはA5ランクだったんだって!1キロ当たり2500円以上!凄いよねぇ!」
曜「…………」ジーッ
梨子「よ、曜ちゃん?……どうかした?」 曜「ほんとだ。梨子先輩……良い匂いする……」スンスン
梨子「え!?」
曜「千歌ちゃん!これが東京のじぇーけーの匂いなんだね!」
千歌「げっ……」
梨子「…………千歌ちゃん、まさか曜ちゃんに変なこと……」
千歌「………………」汗ダラダラダラ
千歌「や、ヤギでも見に行こうかー」メソラシ
梨子「こらー!説明しなさいってば!」
千歌「ぎゃーっ!ごめんなさああぁいっ!」
曜「……私、何か変なこと言っちゃったのかな……?」 −−−
牛舎
曜「……動物園の匂いがする……」
梨子「ええ……ちょっと。……ちょっとね……」
千歌「そんなに臭う?まあ気持ちは分かるけど……」
千歌「ほら見てウシだよウシ!こっちおいで〜!」
🐮「…………」ジョババババ
千歌「あ〜、おしっこしちゃった」
千歌「まあ目の前でうんちされるよりは全然良いよね〜」ゲラゲラ
ようりこ「「……………………」」
梨子「千歌ちゃん……」
曜「……私、ヤギ見たい……」
千歌「えっ」 −−−
畜産棟
千歌「ふたりともウシ嫌いだった?ごめんね……?」
梨子「そういうわけじゃないんだけど……」
曜「わーっ!見て!ヤギにポニー!可愛い〜!」キャッキャ
曜「千歌ちゃん、ポニー触ってもいいかな?」
千歌「良いと思うよ!私もよく撫でるんだ〜!」ヨシヨシ
鞠莉「あら。案外早く戻って来たのね」
千歌「ふたりがウシはもういい〜って。何が嫌だったんだろ〜……」 曜「千歌ちゃん!私、ポニー乗りたい!」
千歌「えっ!?の、乗るの!?」
曜「ダメ?」
千歌「ダメ……じゃないけど……」チラッ
鞠莉「ん?ああ、別に乗ってもいいけど今まで本当に乗ったことある人が居ないから、どうなっても自己責任よ」
曜「ひぇっ……」
千歌「鞠莉先輩は乗ったことないんですか?……馬、好きなんですよね?」
鞠莉「ええ、馬は好きよ。愛馬が居るくらいだもの。……でも私が好きなのはポニーじゃなくて馬。ポニーはお子ちゃま専用って感じがするし」 鞠莉「……まあ、この子も好きよ。スターブライトには勝てないけどね」ナデ…
梨子「……どうして同好会に入ったんですか?」
鞠莉「えっ……?」
梨子「い、いや……深い意味とかは無くって。気になったので」
鞠莉「……実はね……勘違いしていたのよ」
曜「勘違い?」
鞠莉「馬術部があると思い込んでいたのだけど、実際この学校に来てみたら小さくて可愛いポニーしか居なくてね」
鞠莉「最初はかなりショックだったけど、もう慣れたわ」 善子「あっ、ちょっと待ちなさい!」
🐶「わふっ!」トテテテ
梨子「な、何!?犬!?」
🐶「わんっ!」
曜「かわいい〜っ!何の犬種ですか?かわいい!」
善子「雑種よ雑種。ほら、こっち来なさいってば」
🐶「……っふ」プイッ
善子「あっ、こいつ……」
鞠莉「善子は相変わらず舐められてるわね」
善子「何とかしてくださいよ。自分のゲージ戻らなくて……」 鞠莉「簡単よ。見てて」スッ
梨子「ボール?」
鞠莉「てりゃああぁっ!」ブンッ
千歌「な、投げたーっ!!!」
🐶「わん!」トテテテッ
曜「わ、凄い!ボールがぴったりゲージに入って……」
鞠莉「……っよ、っと……」ガシャン
鞠莉「ほら、簡単じゃない」
善子「嘘でしょ……こんなやり方、アリなの……?」
鞠莉「善子のやり方はこの子に合わないのでしょうね。だから舐められるのよ」
善子「ぅぐ……」
千歌「善子ちゃん、年中発情されてるもんね♪」
善子「そういうの後輩の前で言わないでくれる?」 梨子「よっちゃんが出てきた部屋は何?」
善子「ああ。あそこが同好会の活動場所よ。ウサギとかカメとかいるし、見ていく?」
曜「いいんですか!?」パアァッ
善子「ええ。勝手に入ってる人とか居るし。こいつとか」ユビサシ
千歌「やめてよ〜、私はちゃんと鞠莉先輩に許可取ってるもん。ねー、鞠莉先輩」
鞠莉「そんなこと滅多に無いじゃない」
千歌「やーめーてーよーっ!嘘でも頷いてくださいよー!」
曜「見て千歌ちゃん!ウサギだよウサギ!いっぱい居る!」
千歌「って!もう入ってるし!」 曜「かわいい〜っ」スッ
🐰「!?」ビクッ
曜「わっ!?ご、ごめんね!?」
善子「ああ、ダメよそんなにいきなり撫でたら」
善子「撫でるならそーっとね」
曜「…………そーっと、そーっと……」スッ
🐰「…………」
曜「わあぁ……もふもふ……触らせてくれてありがとう〜っ」ナデナデ
鞠莉「貴女達も入ったら?」
千歌「ありがとうございます!よーちゃん!私もウサギ触るー!」タッ
梨子「ありがとうございます、……あっ」
🐢「………………」
梨子「……カメだ……」 鞠莉「満咲よ」
梨子「まんさく?」
鞠莉「カメの名前。小さくて可愛いでしょう?」
梨子「……はい。とっても可愛いです」
曜「善子先輩!私エサあげたいです!」
善子「ええ……なんかあったかしら……」ガサゴソ
鞠莉「あ、善子。水も替えて」
善子「はぁい。千歌も手伝って」
千歌「またー?パシリだよそれー」
善子「いつもやってんでしょ。早くして」
千歌「ちぇーっ……」
曜「私も手伝いまーす!」トテテテ 鞠莉「…………ねぇ」
梨子「は、はい」
鞠莉「梨子はどうしてこんな時期に農業高校に来たの?」
梨子「……ああ、やっぱり皆気になるんですね。私はお父さんの仕事の都合で内浦に引っ越してきたんですけど……私の通っていた普通科の高校が凄く窮屈で……」
梨子「毎日毎日勉強ばっかりしかなくて……これでいいのかなって思ってた時に転勤の話が出て」
梨子「どうせなら今度は普通科の高校じゃないところに行こうって思ったんです。それで見つけたのがここの、浦の星農業高校で」
鞠莉「ふぅん。なるほどね」 梨子「あの、……何か?」
鞠莉「……うちの学校、……と言ってもうちだけじゃないと思うけど。結構辞めていく人が多くてね」
鞠莉「東京の子がうちの学校に来た、なんて聞いたから、どうしてかなって。直ぐに辞められても困るしね」
鞠莉「……梨子が入れたのは、梨子のクラスメイトが一人辞めたからなのよ」
鞠莉「千歌っちは全力で止めたわ。もっと良い事があるって、楽しいことがあるって。……まあ、その頃千歌っちはどうすればいいのか分からなくて泣きながら私に相談して来たりしてたんだけど」クスッ
梨子「……千歌ちゃんが……?」
鞠莉「ええ、意外でしょ?」 梨子「……はい。少し。千歌ちゃんってもっとこう……勢いだけでいきているような人じゃないですか」
梨子「だから……色々考えてるんだなぁって……びっくりで……」
鞠莉「それ、悪く言ってる?」
梨子「いえそんな!」アワアワ
梨子「……でも、千歌ちゃんが……」チラッ
千歌「あはは!うんちしたー!」
善子「小学生か!」
曜「ウサギかわいい〜!」 鞠莉「……梨子は、辞めない?」
梨子「……私は……」
梨子「……辞めないです。絶対に」
鞠莉「……そう」フッ
鞠莉「はーい、そろそろ片付けて。帰るわよ〜」パンッ
ちかようよし「「「はーい」」」
梨子「(鞠莉先輩、最初は雰囲気怖かったけど……良い人なのかも)」
梨子「(やっぱり農業高校って色々な人がいて面白いな……)」 −−−−−−
−−−−
−−
五月
農販会 当日
千歌「五、六時間目に実習はほんとにだるい〜っ……それに今日農販会だし……お昼食べて眠たいし……」スンスン…
梨子「泣き真似してないでいいから……」
千歌「梨子ちゃんは眠くないの?」
梨子「私は平気。もう慣れちゃった」
千歌「まだうちの学校来て一ヶ月しか経ってないのにすごい……」
山崎「駐車場係、整列係、販売係が大まかな担当やけど、どこか希望はあるかー?」
ダイヤ「あの、私は販売で」スッ
山崎「お前いつも販売やな。まあ頭の回転早いからお釣りの計算も早いし、黒澤な。他にはー?」 梨子「ねぇ千歌ちゃん。この学科って何を売ってるの?ブドウはまだただの草だし……売るもの無いわよね?」
千歌「ああ、今日はローズマリーの苗売るよ」
梨子「ローズマリー……?」
千歌「いっぱい余ってるんだよね……うちの学科の緑化物、需要無くて」コソッ…
梨子「な、なるほど……?」コソッ…
山崎「そこ聞こえとるぞ」 千歌「私は駐車場係しよっかな〜。販売のとこ行くといつも怒られるんだよね〜」
梨子「怒られるって誰によ?」
千歌「お客さんだよお客さん……早くしろーだのもっと考えて動けーだの、色々言ってくる人が毎回居て……」
梨子「その標的になってるのね……」
山崎「千歌は駐車場。梨子は?」
梨子「え、ええっと……」アワアワ
山崎「……じゃあ、整列が足りとらんけん整列係な。よーし、それじゃあローズマリーの苗持って行くぞ〜。帽子は必ず持って行けよ〜」
千歌「ああぁ……まだ座っていたい……」
ダイヤ「行きますわよ千歌さん」ズルズル
千歌「いやだあぁ……」 −−−−
農販会 会場
梨子「わ、もう来てる人がいる……まだ二時間前なのに……」
千歌「よくやるよね〜。待ち時間長いって怒られるよこりゃ」
梨子「え?私達は時間通りにやってるのに……?」
ダイヤ「先に来た人がクレームを言い始めるのは割とありがちですわね。正直迷惑だから辞めて欲しいですわ」
千歌「自分が待てる時間に来ればいいのにねー」
梨子「困るわね……どうしよう怒られたら……」
千歌「梨子ちゃんは可愛いし平気平気」
梨子「千歌ちゃんだって可愛いでしょ?」
千歌「……むーっ……」
山崎「ほら、早く運べー」
千歌「げっ、運搬車山崎が来たよ〜……」
ダイヤ「ローズマリー、降ろしましょうか」 初期学年設定だけで貴重だし敬語Aqours好きだし
題材も面白いしでマジで完走してほしい −−−−
30分後
ワラワラ ガヤガヤ
梨子「ど、どうしよう……人が多い……」
梨子「もう100人越えてるらしいし……私がここを動かすなんて無理だよぉ……」ペソ…
山崎「梨子、そろそろ抽選のくじ引かせて並ばせようか」
梨子「わ、わかりましたっ……」
曜「あっ!りーこ先輩〜っ!」タッ
梨子「あ、曜ちゃん!曜ちゃんのところは何か出すの?」
曜「いえ何にも!でも今日の農販会が緑化科が運営だって聞いたから駆け付けてきたんです!」
千歌「やっほー、よーちゃん!」
梨子「え!?ちょ、ちょっと駐車場係はどうしたのよ!?」 千歌「さっき白津先生が桜内を手伝ってやれーって言ってきたから」
梨子「それでこっちに……あ、千歌ちゃんそろそろ抽選のくじ引くって言ってたんだけどどうやって……」
千歌「ああ、任せて」スゥ…
千歌「今から抽選を行いまーす!整理券の順番にこちらに並んで頂いて、一人ずつくじを引いて行ってくださーい!再び抽選での順番で並び直すのでご確認をお願いしまーす!」
ゾロゾロ
曜「千歌ちゃんすごい!」
千歌「えへへ、声だけは大きいからこの役はいつも私なんだ」
千歌「はい、梨子ちゃん。くじ引いてもらって」スッ
梨子「ありがとう。整理券1番の方どうぞーっ」
梨子「(……千歌ちゃんって、私の思ってるよりずっと凄いわ……)」 −−−
数十分後
梨子「9番のくじをお持ちの方はいらっしゃいますかーっ!こちらにお並びくださーい!」
曜「あれ、梨子先輩。千歌ちゃんは?」
梨子「えっ?さっきまでそこに居たと思うけど……」
曜「何処行ったんだろう……トイレかな」
鞠莉「今日は凄い人ね〜、テレビの影響かしら?」
梨子「ええ、……多分。駐車場のところも凄いことになってましたよ」 鞠莉「これは争奪戦になるわね。買えない人も沢山居るんじゃないかしら」
梨子「買えないこともあるんですか?」
鞠莉「そりゃ勿論。テレビで放送してなくても売り切れるんだから今日は大変かもしれないわね」
浦の星農業高校の農産物販売会では、早く来れば必ず商品が買える。というわけではない。
早く来た順から整理券が配られる。定員は100名。それを越えてしまったら整理券は貰えない。
その整理券の順番毎に、更に抽選が行われる。これは商品を購入する順番を決めるもので、例えば、一番最初に来た人が抽選で100番を引いてしまった場合は、来た順番関係無く100番目に購入することになる。
学校で出せる商品にも限りがある為、100番に行く前に全て売り切れてしまうケースも多いのだ。 梨子「それより、千歌ちゃんを探さないと……」
鞠莉「動物科はもう準備終わってるから、千歌っち探しに行っても良いわよ」
曜「で、でも忙しいんじゃ……ひとりでこの人数は大変じゃないですか?」
鞠莉「まあ何とかなるなる。善子とかがぼちぼち帰って来るでしょうし、気にしないで」
梨子「そこまで言うなら……行ってきます」
鞠莉「はーい、気を付けてー」フリフリ −−
曜「梨子先輩、あれ……」ユビサシ
梨子「……えっ?」
千歌「……………………」モグモグモグ
曜「なんか……食べてますね……」
梨子「……ええ」
千歌「わっ、このみかん美味しい!まだこーんなに緑なのにすごーい!」モグモグ
梨子「」 千歌「あっ、梨子ちゃん、よーちゃん。見て見て、どっかの学科のみかん!これお金払ってみかん狩りしてる人可哀想だよね、だってここからちぎって食べちゃえば──」
梨子「こらあああぁっ!!」
千歌「げっ……」
梨子「それは園芸科のみかんよ!?みかん狩りがあるんだから今のうちから食べちゃダメじゃない!足元に転がってる皮からして……3つは食べたでしょ!?」
千歌「で、でもほら、この辺りみかん農家さんが沢山居るから、お金払ってみかん狩りしに来る人なんて居ないと思うんだよね?」
千歌「みかんがありすぎても嫌じゃない?ねっ?ねっ?」
曜「たしかに!」
梨子「たしかに!じゃないわよ、良いわけないでしょ!?」 千歌「梨子ちゃん厳しいな〜……ほら、梨子ちゃんも食べてみて?ほら、あーん……」
梨子「……んっ!?……むぐ……」モグ…
梨子「すっぱ!!!!」
曜「千歌ちゃん!私も食べたい!」
千歌「ほら、あーんっ」
曜「あーむっ!」ハムッ モグモグ…
曜「すっぱい!!!」
山崎「おい」
千歌「あっ……」 山崎「なんばしよっと。それ園芸科のみかんやろ。お前何個食っとるんや」
千歌「い、いやぁ……私ったら美味しいみかんに目がないというか……」汗ダラダラダラ…
千歌「違うんです!梨子ちゃんが食べ始めて!」
梨子「なんでよ!?」
山崎「お前毎回農販会の度に食ってるからな。こんな熟れてないみかん食べてもどうしようも無いやろ……」
山崎「一年生まで巻き込んで……お前恥ずかしくないと?」
千歌「ぅぐ……ごめんなさい……」
山崎「……明日、放課後実習な」
千歌「いやああああぁっ!!!」 花丸「あの、すみません」
山崎「ん?」
花丸「農販会の会場って何処ですか?お手洗い行っている間に、学科の皆とはぐれちゃって」
千歌「ああ、今から私達も行くから一緒に行こ」
花丸「ありがとうございます」ペコリ
曜「あれ!花丸ちゃん!花丸ちゃんも農販会で何か売り物があるの!?」パアァッ
千歌「はなまるちゃん?」
梨子「お友達?」 曜「うん、ルビィちゃんとの繋がりでお友達になったの!」
花丸「あら、曜ちゃんずら。曜ちゃんも農販会……じゃなさそうな。制服だし……」
曜「うん、今日はお手伝いに来たんだ!花丸ちゃんは?」
花丸「オラは今日パンと梅ジュースと肉味噌を売るずら。毎回食品科が出してる商品で、一年生は大まかな流れを掴む為に見に来たずら」
曜「なるほどね〜」
梨子「オラ……?」
千歌「……ずら?」 曜「ああ、花丸ちゃんはお寺の子で、おじいちゃんがすっごい訛ってる人なんだって。だから花丸ちゃんも移っちゃったというか……」
花丸「お、オラの喋り方、変……?」アワアワ
千歌「そんなことない!かわいいよ!」
花丸「えっと……」
千歌「私は緑化科二年の高海千歌!で、こっちが桜内梨子ちゃん!」
梨子「よろしくね、花丸ちゃん」
花丸「はい、よろしくお願いします」ペコリ
山崎「自己紹介はいいけど、お前ら早く戻らんでいいと?」
千歌「……あっ」 −−−−
農販会 会場
善子「ちょっと!千歌達は何処行ったのよ!?」💢
ダイヤ「知りませんわよ!私がお金の管理をしている間に千歌さんも梨子さんも居なくなったんですわ!」💢
果南「やっほー、って……なんか荒れてる?」
ダイヤ「あ、果南先輩!果南先輩も販売物があるんですの?」
果南「うん、うちはお花を売るよ。って、人ヤバ……」
ダイヤ「運営していた千歌さん達が居ないんですわ」
鞠莉「ああ、梨子なら居なくなった千歌っちを探しに行ったわよ。私が善子と回しとくから〜って言って」
善子「何適当言ってるんですか」 おじさん「あの、すみません」
善子「あ、はーい。どうなさいましたか?」
おじさん「あそこに生えてる木は何の木ですか?」
善子「…………はい?」
おじさん「だから、あそこに生えてる木です」
ダイヤ「ユーカリじゃないんですの?」
おじさん「いーや、あれはユーカリじゃないな。俺は植物に詳しくて──」
善子「は???」ポカーン
ダイヤ「(どう見てもユーカリですわ)」 千歌「ごめんなさあぁい遅れました!」タッ
千歌「……っげ……あの人…………」ピタッ
おじさん「ああ、君。あそこの木は──」
千歌「(こ、今度はそっち系……答えられないとチカが怒られるやつだ……)」
千歌「ゆ、ゆーかり?……じゃないんですかね〜、あはは〜……」
おじさん「………………」😠
千歌「ひょええぇ……」ガクブル 山崎「すみません、今から販売を行うので抽選の番号順に整列お願いします」スッ
千歌「せ、先生……っ、」
山崎「お前また絡まれてんのか。もう少し気を付けろ」
千歌「ううぅ……せんせーっ……」ウルウル
ダイヤ「やっと来ましたわね。鞠莉先輩、善子さん。ありがとうございました」
善子「千歌、後でジュース奢りね」
鞠莉「じゃあ私はパウンドケーキ」
千歌「いやいやいや!何で私だけ!」 山崎「梨子、販売するから10人ずつ中に入れて行って。また合図するから少しずつな」
梨子「分かりました」
曜「せんせー、私、何か手伝いますよ!」
山崎「ん、じゃあ並んでない人に声掛けて来て」
曜「分かりました!行ってきます!」ビシッ
梨子「千歌ちゃんも行くわよ」
千歌「はぁい……」 −−−−
農販会 終了
更衣後 緑化棟 緑化教室
千歌「だあああっ……疲れたぁ……」グデ
梨子「中々キツかったわね……」グッタリ
ダイヤ「ふたりともお疲れ様です、大変でしたね……」ゲッソリ
ルビィ「お、お姉ちゃんっ……」タッ
ダイヤ「あら、ルビィ……?」
梨子「るびぃ?」
千歌「ダイヤちゃんの妹だよ。デザイン科の一年生」
ルビィ「こ、これ……皆に……」スッ
千歌「わ!ジュースだ!買って来てくれたのっ!?」パアァッ ルビィ「は、はい……お姉ちゃん達が頑張って販売してるの、見てたから……」
曜「千歌ちゃーん!梨子先輩ー!」タッ
曜「あ!ルビィちゃんのお姉ちゃんも!こんにちは!」
ダイヤ「あら、曜さんではないですか」
曜「えへへ、差し入れ買ってきたんです!皆で食べましょー!」
ルビィ「マルちゃんがまだ……」
曜「花丸ちゃんは着替えてから来るって!あとは、果南ちゃんにも声掛けたし、善子先輩と鞠莉先輩にも声掛けたよ!」
千歌「オールスターじゃん!?」 梨子「……果南ちゃんっていうのは……」
千歌「ああ、私とよーちゃんの幼馴染だよ!園芸科の三年生!」
千歌「果南ちゃんはね、カッコイイんだよ!背も高いしスタイルも良いし!おっぱいもおっきいし!」
梨子「おっぱ……!?」
千歌「え?うん!大きいよね!」
曜「わかる!果南ちゃん良いおっぱいしてるよねー!」
ダイヤ「千歌さん、曜さん」圧
ようちか「「はい、すみませんでした」」 ガララッ
花丸「お待たせしたずら〜」
果南「おわ、……めちゃくちゃ人居る」
鞠莉「なぁに?この集まりは」
善子「え、帰っていい?」
千歌「ダメだよー!せっかく集まったんだから皆で仲良くやろうよー!」
鞠莉「…………まあ、偶にはこういうのも……」ポソ
善子「?……なにか?」
鞠莉「んーん、何でもない」フルフル 千歌「自己紹介しようよ自己紹介!まず私からね、私は緑化科二年の高海千歌!好きな食べ物はみかん!あ、部活は書道部!」
千歌「はいっ、次梨子ちゃん!」
梨子「え!?わ、私!?」
梨子「……えっと……さ、桜内梨子です。4月からこの浦の星農業高校に転入してきました。クラスは千歌ちゃんとダイヤちゃんと同じ緑化科です。よ、よろしくお願いしますっ」ペコリ
千歌「梨子ちゃんかたーい」
梨子「仕方ないでしょ!?」
果南「あ、この子が梨子ちゃんか」
梨子「え!?ち、千歌ちゃん!また変なこと言って……っ!」
千歌「言ってない言ってない言ってない!!」フンブン 果南「はじめまして、私は園芸科三年の松浦果南。千歌と曜から梨子ちゃんの話は聞いてるよ。部活は太鼓をしてて、実家はダイビングショップを経営してるんだ。よろしくね」
ダイヤ「えっと、はじめましての方は、はじめまして。知り合いの方はご機嫌よう。千歌さんと梨子さんと同じ緑化科二年の黒澤ダイヤですわ。部活は華道部に所属しております。よろしくお願いいたします」ペコリ
ダイヤ「……ほら、ルビィ。自己紹介なさい」
ルビィ「ぅえええっ!る、るびぃ?……え、ええっと……その……ルビィは、……デザイン科の一年生で……」
ルビィ「それで、部活は……製菓製パン部で……」ジワッ
梨子「あああ……大丈夫?無理しなくてもいいのよ?」背中サスサス…
ルビィ「ううぅ……ごめんなさい……」
ダイヤ「相変わらずですわね、ルビィ……」呆 花丸「……じゃあ、今度はオラが」ガタッ
花丸「はじめまして、オラは国木田花丸です。食品科の一年生で、部活はルビィちゃんと同じ製菓製パン部に入っています。よろしくお願いします」ペコリ
曜「私は渡辺曜!ルビィちゃんと同じデザイン科の一年生です!部活とかはやってなくて近所のスイミングクラブに通ってます、よろしくお願いいたしますっ」ビシッ
善子「つ、津島善子です。動物科の二年生で、普段はこの鞠莉先輩と二人で動物同好会として動物のお世話をしています」
鞠莉「あら、今日はヨハネじゃなくていいの?」
善子「ちょっっ!!先輩も後輩も居るのにヨハネ出来るわけないじゃないですか!」
花丸「よはね?」
善子「い、いやなんでもないのよ!この人直ぐ変な事言う先輩で、こ、困っちゃうよねぇ〜。よねぇ〜、あはは〜」
ダイヤ「無理してるのがバレバレですわ」
善子「うっさい!」 鞠莉「……最後は私ね。私は動物科三年の小原鞠莉。さっき善子が言った通り、私も同好会に入ってるわ。……大人数なんて、そんなに好きじゃないんだけど……今日は楽しくなりそうね」
花丸「覚える名前がいっぱいあるずら」
果南「花丸ちゃんはあんまりこの人達と関わったこと無さそうだし、一気に覚えないといけないもんね」
花丸「はい、……オラ、人の名前覚えるの苦手で……」
千歌「そんなことより!早く農販会の打ち上げしようよ〜!よーちゃんが沢山お菓子買って来てくれたんだし!」
曜「ほら!皆さん食べてください!」ドサアァッ
善子「それもそうね。幾らだった?あとでお金渡すわよ」
曜「えっ!?い、いえそんなっ……申し訳ないですっ!」アワアワ
鞠莉「いいのいいの。甘えちゃいなさい」
曜「そ、それなら……」コクリ ルビィ「……ぁ、チョコ……」ポソ…
梨子「チョコ、好きなの?」
ルビィ「っ!……ぁ、は、はい……」カアァッ
梨子「……っふふ、怖がらなくても大丈夫よ。ルビィちゃんと仲良く出来たら嬉しいな、なんて」ナデナデ
ルビィ「なかよく……」
ダイヤ「…………」
ダイヤ「(梨子さんが良い人で安心しましたわ。これならルビィも直ぐに心を開きそう)」クスッ 千歌「あ、そう言えばルビィちゃんが買って来てくれたジュース、私と梨子ちゃんとダイヤちゃんの分しかない……これじゃ足りないや。ちょっとチカ買って来るけど、皆何がいい〜?」
善子「私炭酸がいい」
鞠莉「……んー、じゃあ紅茶で」
千歌「おっけー、善子ちゃん炭酸、鞠莉先輩はミルクティーです?ストレートティーです?」
鞠莉「ストレートで」
千歌「はぁい。果南ちゃんと花丸ちゃんとルビィちゃんはどうする?」
果南「私は緑茶でいいよ」
花丸「オラもそれで」 ルビィ「あ、あのっ……」
千歌「んー?」
ルビィ「る、るびぃも……買うの手伝いますっ……ルビィの所為で、足りない、から……」
千歌「ルビィちゃんの所為じゃないよ〜!でも手伝ってくれるの嬉しい!一緒に自販機まで行こうね〜♪」
ルビィ「は、はいっ……!」 −−−−
−−
−
ワイワイガヤガヤ…
ガララッ
山崎「お前らまだおったと?早く帰る準備しろ、もう19時やぞ」
千歌「あ、もうそんな時間?」
曜「完全に時計見てなかったね」
山崎「こんな大人数で何しよったと?意味分からんメンツやし」
ダイヤ「農販会の打ち上げを知り合い同士が集まってやっていたのですわ」
山崎「なるほどな。ゴミとかは各自で持ち帰れよ」
花丸「あ、ゴミはオラが貰います」
善子「良いわよ、私が持って帰るから。ペットボトルも回収するから皆飲みきっちゃってください」
鞠莉「はい、ありがと善子」 花丸「えっ、でも……」
善子「一年生に押し付けたら私が嫌な人になるでしょ。こういうのは先輩を敬いつつ、後輩にサポート出来る二年に任せておけばいいの」
花丸「善子先輩……」
千歌「あっ!善子ちゃん!私のペットボトルどーぞ!」
善子「あんたはもう少し気遣ってくれる??」
梨子「私もゴミ集めるよ、……あ、ウェットティッシュ持って来てるから手拭いたり自分が使ってたところの机拭いたりして」
ダイヤ「ルビィも早く飲みきっちゃいなさい」
ルビィ「ま、待って…っ……もうルビィ飲めないよぉ……」ピエェ…
果南「貸して、私が飲んじゃうよ」ヒョイ
ルビィ「果南先輩……」
果南「あ”……ご、ごめん。嫌だったかな?」
ルビィ「い、いえっ……その……ありがとう、ございます……」
果南「……っふふ、どういたしまして」ナデナデ 鞠莉「じゃあ大体片付けも出来たし帰りましょ。皆、家は何処?全員うちが送っていくわよ」
千歌「え、鞠莉先輩ちの車ってそんなにおっきいんですか!?」
鞠莉「ええ、全員乗れると思うけど」
曜「お金持ちすごい!」
山崎「あ、千歌と梨子」ヒョコ
梨子「は、はいっ」
山崎「明日、一年生と一緒に田植えするけん覚えといて。千歌は放課後実習はそれで。梨子はまだ田植えしてないやろうけん、一年生と一緒な」
梨子「分かりました」
千歌「えーっ!田植え〜!?……んん、まあ刈り込みよりはいいけど……」
花丸「……オラ達と一緒?」
曜「千歌ちゃんと梨子先輩と一緒に出来るんですか!?」パアァッ
キーンコーンカーンコーン
果南「やば、あと五分で出ないと閉められちゃうよ」
ダイヤ「急ぎますわよ!」 >>148
近くに農業高校があるなら行ってみるといいよ!生徒側はめちゃくちゃ忙しいけど、きっと楽しめると思う −−−−−−−
−−−−−
−−−
翌日
緑化科 緑化教室
千歌「昨日は楽しかったねぇ〜♪」
ダイヤ「ええ、とても。……まあ、家に帰ってから帰りが遅いと叱られましたが」
梨子「私も少しだけ怒られちゃった。でも楽しかったし良いかな」
千歌「皆怒られちゃったの!?厳しいな〜」
梨子「千歌ちゃんのところは怒られないの?」
千歌「私はよく遅くまで学校に残ってたりするし、あんまりかな」
ダイヤ「そんな遅くまで何をしているんです?」
千歌「私、隙あらば他所のみかんばっかり食べてるから放課後実習はよく入れられるんだけど、その後先生とお喋りしたり昨日みたいに友達とお話したりすると、気が付いたら19時過ぎてたりするかな」 ダイヤ「ちゃんと勉強してるんですの?再来月には造園技能士の筆記試験がありますのに」
梨子「あ、ダイヤちゃん、それなんだけど……ここがちょっと不安で……」
ダイヤ「ああ、縮景と借景ですわね。これは最初誰でもごちゃごちゃになってしまうので気にしないで大丈夫ですわ」
ダイヤ「まず縮景ですが、これは最初に各地の名所を思い浮かべましょう。例えば静岡は富士山。富士山を庭園に取り入れたいと思っても不可能でしょう?」
ダイヤ「ですが富士山を模写し、縮小したものを庭園に取り入れることは出来ますよね。それが縮景の技法となります」
梨子「なるほど……名前の通り縮小させるのね。借景は……?」✍ ダイヤ「借景は庭園から見える景色だと思ってください。敷地外の山や林、森林、それから滝までもを取り込み、景色を借りる技法ですわ」
梨子「……ふむふむ……そのままね」✍
ダイヤ「そうでしょう?難しいようで簡単なのですよ」
千歌「あー……そういえば筆記試験の模擬テストって今日提出だったっけ……」
ダイヤ「一時間目からですわよ。間に合いますの?」
千歌「余裕だよ〜、朝読書なんてしないで寝てるか白津先生から貰った課題やるだけだもん」
ダイヤ「お先真っ暗ですわね……これで農業技術検定はクラス一番で合格してるんですから、腹立ちますわ」
梨子「そうなの!?千歌ちゃんが!?」
千歌「まぐれだよ〜、まさかダイヤちゃんが私より点数取れてないとは思わなくて……」
ダイヤ「……はぁ、つ、次は負けませんから」
千歌「再来月の筆記試験、勝負しようね〜」
ダイヤ「ね〜、ってやかましい!」 −−−−
緑化棟
授業:課題研究
千歌「今日は苔玉を作るって聞いたんですけど……挿し木の方は……」
山崎「そんな簡単に根付くわけないやろ。あ、あとまたソメイヨシノ枯れてたぞ」
ちかダイ「「いやああああああああっっ!!」」
千歌「あんなに頑張ったのに!」
ダイヤ「あんなに気を付けたのに!」
梨子「ご、ごめん……私が……」
山崎「千歌がしたとこだけ枯れてたな」
ダイヤ「千歌さん!」💢
千歌「あっははぁ……おかしいなぁ……」 ダイヤ「大体、貴女去年も枯死させてましたわよね!?半分以上は貴女の責任ですわよ!」
千歌「え〜!私?」
山崎「ほらやるぞ」
千歌「はぁい……」
山崎「これ、何の植物か覚えとる?」
梨子「えっと、たしか……フィカスプミラ……」
山崎「正解。これがフィカスプミラな。今日はこれで苔玉を作っていこうと思っとる」
山崎「用意するものは麻布、お椀、天糸、赤玉土、……あー、そうやな……ケト土も用意しておいて。あとは木バサミ」
梨子「お椀?……何に使うんですか?」
山崎「後で説明するけん、道具準備しようか」 −−−−
山崎「まずこの赤玉土と、ソフトシリカミリオン……ケイ酸塩白土を10対1の割合で混ぜる」サッサッ…
千歌「ソフトシリカミニオン?」
ダイヤ「ミニオンじゃなくてミリオンですわ。これは何の効果があるんですの?」
山崎「これは病原菌を抑制して、植物の抵抗力を高める役割があるんよね。根腐れを防いで発根を促進することが出来る」
山崎「安いところだと1キロ500円くらいで買えるな」
千歌「ミニオンすごーい!」
梨子「ミリオンよ……」 山崎「お椀貸して」
ダイヤ「はい」サッ
山崎「そしたらまず、お椀に25×25のサイズに切ったを敷いて、底に軽くさっきミリオンを混ぜた土を引く」サッサッ…
山崎「次はこのフィカスプミラを苗から出して、根っこを露出させる。これは慎重にやらんと根っこが切れるから気を付けないといかんよ。特に千歌」
千歌「えっ」
山崎「このくらい。このくらい根っこを出したら、お椀の中に入れて……周りに土を被せる」
山崎「麻布で土と一緒に植物を包み込んで、こんな感じで……」キュッ
梨子「おにぎりみたいにするんですね」
山崎「そう。そうしたら、天糸で周りから麻布を固定するように巻き付ける」クルクル…
山崎「こうやな。最後にミズゴケを付けて、もう一度同じように天糸で巻き付けたら完成。分かったか?」キュッ
ダイヤ「一旦やってみないと分からないですわね……」
梨子「じゃあ、取り敢えずやってみましょう。実践あるのみ!よね」
千歌「うん!それじゃ誰が一番上手く作れるか勝負だー!」 −−−
梨子作苔玉:まだ丸い。惜しい。
ダイヤ作苔玉:綺麗な丸。お手本みたい
千歌作苔玉:原型を留めてない。植物が死にかけ。天糸が絡まりまくってる。
千歌「…………モウヤダカエリタイ……」
ダイヤ「この勝負、私の勝ちですわ!」ドヤァ
千歌「悔しい悔しい悔しい〜っ!なんでだよ〜っ!」ジタバタ 梨子「ちょっと千歌ちゃん。暴れないの。背中砂だらけじゃない。ほら立って」パッパッ…
千歌「ううぅ……りこえもーん!ダイヤんがいじめるよーっ!」ギューッ
梨子「誰がりこえもんよ!?」
ダイヤ「誰がダイヤんですか!!」
山崎「まあどっちにしろ、梨子はともかく、今の千歌の苔玉を売るのは厳しそうやな……」
千歌「なっ!?そ、そんなに!?」
山崎「ダイヤのと比べてみろよ」
ダイヤ作苔玉✨
千歌作苔玉😇
千歌「モウヤダ」 千歌「むーっ……何でこうなるのかなぁ……」
ダイヤ「沢山作っていけば上手くいくはずですわ」
梨子「そうよ、千歌ちゃん元気出して?」
千歌「……うん……」
山崎「まぁ、大体容量は掴めたやろうし、もう一個作ってみるか」
千歌「こ、今度こそ……っ!」 −−−
苔玉2つ目
梨子作苔玉:形にはなったが、植物が傾いている。でも丸い。許容範囲。
ダイヤ作苔玉:もはや職人。
千歌作苔玉:巨大。何故こんなに大きくなったのか誰も分からない。でも丸いし、植物は真っ直ぐになった。
山崎「ま、まあ……ギリ合格ラインやな」
千歌「私がこんなに頑張ったのにギリ!?」
ダイヤ「努力と商品価値は比例しませんからね……」
千歌「ダイヤちゃんが言わないで。むかつく」 梨子「千歌ちゃんも上手になってるわよ。元気出して?」
千歌「ううぅ……りこちゃぁん……」ギューッ
山崎「あ、もうこんな時間か。片付けるぞ」
ダイヤ「はい。ほら、千歌さんも動く!」
千歌「うるさいなー!もー!」💢
ダイヤ「何ですのその言い方!大体貴女は!」💢
梨子「も、もう…っ、ふたりともやめなさいよ……」 −−−−−
−−
放課後
浦の星農業高校 水田
花丸「……五月、暑いなぁ……」
花丸「(せっかく仲良くなったルビィちゃんも曜ちゃんも、違う学科だから会えないし……寂しいなぁ……)」
梨子「あ、花丸ちゃん?」
花丸「梨子先輩!?」パアァッ
梨子「田植え、私はしてないから、食品科にお邪魔させてもらうことになったの。食品科って聞いたら花丸ちゃんだなって……迷惑だった?」 花丸「いえ!オラも仲良い人が居なくて寂しかったので心強いです」
梨子「そう?良かった」クスッ
「それじゃあこの位置から始めまーすっ」
花丸「うひゃあぁ……水があったかいずら……」
梨子「へ、変な感じするわね……痛っ……なんか鋭いもの踏んだし……」
花丸「油断してたら足持ってかれちゃいますね……」
梨子「そうね……」 −−−
一方その頃……
浦の星農業高校 水田(小さめ)
千歌「なんで私も田植え……」ズーン
果南「あ、千歌。やっほー」
千歌「果南ちゃん!今暇!?」
果南「今日は部活も無いしね。暇だよ」
千歌「チカひとりじゃ寂しいから、一緒に田植えしよ!田植え!」
果南「ひとりで水田で何してんだろうって思ったら……そっか。放課後実習」 千歌「ねー!お願い!一生のお願い〜!」
果南「……もー……仕方ないなぁ」
果南「待ってて。実習服、着替えてくるよ」
千歌「果南ちゃん!ありがとう!だーいすき!」パアァッ
千歌「あ、でも早くしないとチカの足持ってかれちゃうから急いでね〜」
果南「やっぱ手伝うの辞めようかな」
千歌「わー!ごめんごめん!もう言わないからーっ!」 −−−−
一時間後
花丸「はひゃあぁ……腰が痛いずらぁ……」グデッ
梨子「そ、そうね……お米農家さんって凄い……」
花丸「流石に農家さんは機械じゃないですかね……」
梨子「そ、そっか……」
花丸「……でも、農業高校って、なんかいいですね」
梨子「……えっ?」 花丸「オラ、入学前は凄い不安だったんです。中学の時から環境が一気に変わって……こんな街みたいな学校に来て、……着いて行けるかなって」
花丸「オラは農業なんてしたことないし……受験の面接の時も、周りの皆が農家さんだったり、夢を持っていたりして、オラには何も無いなってずっと考えてたんです」
花丸「……だけど、違った」
花丸「皆が皆、農業をしたくて此処に来ているんじゃなくて、……学校生活を思う存分楽しむ為に此処に来てるんじゃないかって思うんです」
花丸「千歌先輩は特に……学校がいつも楽しそうで、笑顔で。だから、オラも釣られて笑顔になっちゃうし、学校が楽しいなって思えるんです」
花丸「……変、ですかね……?」 梨子「……ううん、とっても素敵」
梨子「私もね、農業高校ってこんなに楽しいものなんだって知らなかったの」
梨子「……私も花丸ちゃんと一緒で、千歌ちゃんにそう気付かせてもらったの。農業高校は楽しいよって」
梨子「千歌ちゃんったら、実習嫌だ嫌だって直ぐにぐずるのに、楽しそうに授業を受けてるんだから……狡いわよね」クスッ
梨子「千歌ちゃんと同じクラスにならなかったら、皆と出会えなかったし……何より農業は辛いものだって思い込んじゃってたかもしれない」
梨子「千歌ちゃんには、感謝しかないわね」
梨子「……千歌ちゃんの話してたら会いたくなって来ちゃった。花丸ちゃんも一緒に行く?」
花丸「……はいっ!」 −−−−
緑化棟 農環室裏 高台
果南「お疲れ様。はい、オレンジジュース」
千歌「実習後のオレンジジュースはちょっと……でもありがと」
果南「……景色がいいね」
千歌「ここは水田も見えるし、学校の外も見えるし……全部見えちゃうスペシャルな場所だからね。私のお気に入りの場所なの」
果南「良いね。私も今度からここに来ようかな」
千歌「風が気持ちいよねぇ〜」 千歌「…………ねー、果南ちゃん」
果南「んー?」
千歌「……私ね、浦の星を楽しい学校にしたいんだ」
果南「楽しい学校?」
千歌「うんっ。そりゃあ、あと三年もすれば廃校になっちゃうんだけど……でも、残りの期間、在校生みんなが楽しかったって心の底から笑える学校にしたいの」
千歌「……辞めちゃったあの子にも、辞めなきゃ良かったなって思って貰えるような楽しい学校」
千歌「その為にどうしたらいいのかなってずっと考えてた。みんなに、楽しんでもらうには……」
果南「……千歌……」
千歌「だから──」 千歌「文化祭、一緒にステージ発表出よう!」
果南「な、なんでそうなるの?」
千歌「楽しいと言ったら文化祭!雑用だらけの農業高校で唯一楽しい行事なんだよ!?思い出作るにはここしかないって思うの!」
果南「まあ?……でもステージ発表なんて何するの?」
千歌「ほらっ、最近流行ってるじゃん。スクールなんちゃら〜ってやつ!」
果南「もしかして、スクールアイドルのこと?」
千歌「そう!それのコピーユニットしようよ〜!」
千歌「あっ、それとも私達が曲作っちゃう!?衣装はデザイン科のルビィちゃんとか曜ちゃんに手伝ってもらって──」
果南「千歌」 千歌「……や、やっぱり……ダメ?」
果南「……私達は都会のキラキラした学校に居るわけじゃないの。泥んこだらけで汗だくで……そんな農業高校で、スクールアイドルなんて出来ると思う?」
千歌「それは……」
果南「……ごめんね、本当は応援してあげたいんだけど──」
千歌「でもっ!」
千歌「でもね、果南ちゃんもきっと楽しめると思う!私、絶対後悔させない。約束する!だから……だから……」
千歌「果南ちゃんも、一緒にステージ発表出てくれる……?」コテリ
果南「千歌……」 果南「……しょうがないな……文化祭だけ、なんだよね?」
千歌「してくれるのっ!?」パアァッ
果南「流行りのスクールアイドル……より大々的には出来ないけどさ、なんかこういうのも良いよね。裏で静かに輝くアイドル〜みたいなの」
千歌「うううぅ……果南ちゃ〜んっ!」ギューッ
千歌「絶対成功させようね!」
果南「……うんっ」
千歌「あっ、そうだ。なら皆誘おうよ!よーちゃんも、ダイヤちゃんも梨子ちゃんも!それからルビィちゃんに花丸ちゃん、善子ちゃんに鞠莉先輩!」
千歌「接点の無かった皆が集まってスクールアイドルするなんて、凄い面白いと思わない?見てる皆も変なメンバーで笑っちゃうと思うんだ!」 果南「まあ、そういうのもいいんじゃない」クスッ
千歌「えへへ、まずね〜、よーちゃんとルビィちゃんに衣装作って貰ってね!それでそれで、果南ちゃんには振り付け作ってもらうの!」
千歌「作曲は……うーん、鞠莉先輩とか?鞠莉先輩はお金持ちだからピアノとか弾けそうだし!あ、梨子ちゃんもピアノ絶対似合う!」
千歌「ダイヤちゃんと花丸ちゃんと善子ちゃんは作詞かな〜?でもなんか皆の個性が強過ぎて凄い曲出来ちゃいそうだよね」クスクス
果南「じゃあ……千歌は何をするの?」
千歌「私?私は……リーダーかな!」ドヤァ
果南「り、リーダー?」
千歌「皆をまとめることも仕事のひとつなんだよ!だから私はリーダーをする!」ムンッ
梨子「あっ!居た居た!」タッ
花丸「千歌先輩、此処に居たずらぁっ……」ゼェゼェ 八つ橋です。
補足として、この世界線のスクールアイドルは、女子高生が個人的にアイドルの真似事をしているもので、ラブライブ!という大会の概念は無いです
分かりにくかったらごめんなさい 田舎学生の等身大な感じが出ててええやん>スクドルの設定 あくまでメインは農業高校の話だから……スクールアイドルはついでだから大目に見て…… 高校生が文化祭でやるアイドルの真似事ってのがリアリティーあってよいな 果南「あれ、梨子ちゃんとマルちゃんだ」
千歌「なになに?誰か探してたの?」
花丸「千歌先輩の話をしてたら、会いたくなっちゃって……」ゼェゼェ
千歌「えー!なにそれうれしい!かわいい!」ギューッ
梨子「果南さんと千歌ちゃんで何してたんですか……?」
果南「ちょっとね。千歌ったら私に田植え手伝えって言うもんだから」
千歌「……あ、あはは〜……ひとりじゃ寂しいし?」
曜「ちかちゃーん!かなんちゃーん!」タッ
梨子「あれ、曜ちゃんも?」
曜「田んぼでふたりを見つけたから走って来たの!梨子先輩も花丸ちゃんも居てビックリ!」 千歌「丁度いいところに!私、皆に話があったんだ!」
梨子「話?」
果南「え”。千歌、本当に言うの?」
千歌「言わないつもりなの?」
果南「あー……いや、なんでもない……」
果南「(千歌のことだからどうせすぐ忘れるだろうと思って承諾したけど……これは本当にアイドルやらないといけなくなるやつだ……)」
花丸「何かあるんですか?」
千歌「うんっ、最近テレビとかで取り上げられてるスクールアイドルってあるでしょ?」
花丸「その……スクールアイドルというのは……?」
曜「高校生とかがアイドルの真似して歌とか振り付けとか衣装とか作ってるやつ?」
千歌「そう!それを今年の文化祭でやりたいなーって思ってて!」 千歌「メンバーはこないだ一緒に農販会の打ち上げをした9人!絶対このメンバーがいいんだー!」
梨子「す、凄いメンバーになりそうね……」
千歌「何他人事みたいなこと言ってるの?梨子ちゃんもメンバーだよ!」
梨子「だ、だよねぇ……」
曜「えー!果南ちゃんもやるの!?」
果南「え、いや、私は──」
千歌「うん!果南ちゃんもメンバーになってくれるって!」
果南「え!?いや違っ!」
千歌「ちがうの?」ウルッ
果南「ぅ”っ……」メソラシ
曜「果南ちゃんも千歌ちゃんもやるなら私もやるー!」 曜「梨子先輩も花丸ちゃんも一緒にやろうよ!絶対楽しいですよ!」
梨子「わ、私はそういうの向いてないし……」
花丸「オラもアイドルはちょっと……」
千歌「そっかぁ……」ションボリ
曜「せっかく皆と出来ると思ったのに……」ションボリ
花丸「…………ぁ」
りこまる「「………………」」メアワセ
花丸「……あの、……やっぱり、話だけ聞いてもいいですか?」
梨子「私も……少しだけ考えてみるね」
千歌「花丸ちゃん!梨子ちゃん……!」パアァッ
千歌「これで5人か!」
果南「千歌、早とちりし過ぎだよ……」呆れ −−−−−−
−−−
−
翌朝
デザイン科教室
ルビィ「──スクールアイドルの、コピーユニット?」
曜「うん、千歌ちゃんがやろう!って言ってるんだけど……ルビィちゃん、こういうの興味無い?」
ルビィ「ルビィは……」
ルビィ「……興味、あるけど……」ポソリ
曜「本当っ!?」パアァッ
ルビィ「……でも、お姉ちゃんが許してくれるかどうか、分からなくって」
曜「お姉ちゃん……あ、ダイヤ先輩?」
曜「ダイヤ先輩って、アイドル嫌いなの?」
ルビィ「う、うーん……なんて言うか……うちの両親、けっこう厳しくてね。家のテレビで流れてるはニュースだけなの」
曜「にゅ、ニュースだけ!?」 ルビィ「うん……一回、夜中にお姉ちゃんとベッドから抜け出して、クラスの子達がいつもお話してるアイドルを見ようってなったんだけど……結局見つかってお母さんに怒られちゃって……」
ルビィ「ルビィの我儘でお姉ちゃんも巻き込んじゃったから……嫌じゃないかなって……」
曜「……そっか……」
ルビィ「うん、……だから、お姉ちゃんが良いよって言うまで待ってて欲しいな。ルビィは……千歌先輩達と一緒にしたいなって、思ってるから」
曜「……分かった。じゃあルビィちゃんのポジションは私が守っておくから!」ビシッ
ルビィ「うんっ……ありがとう!」 −−−−
動物科 緑化科 教室前
善子「──はぁ?スクールアイドル?」
千歌「うん!ぜーったい入って欲しいの!善子ちゃんったら可愛いじゃない?だから似合うと思うの!アイドル!」
善子「興味無いから」スンッ
千歌「そんなこと言わずにさぁ!お願い!」
善子「千歌のクラスに可愛い人沢山居るでしょ。そっちを誘いなさいよ」
千歌「私は絶対善子ちゃんがいーの!」
善子「どうして?」
千歌「………………善子ちゃんがいちばん可愛いから……」ポソッ
善子「……………………」 善子「はい残念〜、善子じゃなくてヨハネって言ってたらスクールアイドルやってました〜」
千歌「ちくしょおおおぉっ!」床ダンッッ
善子「残念だったわね。そういうとこ考えていかないと」
千歌「善子ちゃんに言われたくない……」
善子「どういう意味よ」
ダイヤ「お二人とも。朝から騒がしいですわよ」
千歌「あ、ダイヤちゃん!良いところに!」タッ
千歌「ダイヤちゃん……!一緒に、スクールアイドルやりませんか!」パッ
ダイヤ「……スクール、アイドル?」 ダイヤ「……何ですの?それ」
善子「今テレビとかでやってる……って、あんたん家、テレビ自由に見れないんだっけ」
ダイヤ「ええ。まあ」
善子「……んー、高校生がアイドルごっこするのが流行ってるのよ。自分達で曲を作ったり、衣装を作ったりして、オリジナルMVとかを投稿してる人も居て結構有名なのよ」
ダイヤ「はぁ、そうなんですか」
千歌「うん!ダイヤちゃんもやってくれるよね!」
ダイヤ「お断りさせていただきますわ」
千歌「……えっ」 ダイヤ「そういうの興味無いので」
善子「ほら、皆スクールアイドルなんて興味無いのよ」
千歌「で、でも……ダイヤちゃんだって浦の星で思い出作りたいでしょ?」
ダイヤ「……それならアイドルじゃなくてもいいじゃない」
ダイヤ「……私は、アイドルなんて……」キュッ
キーンコーンカーンコーン
善子「あ、やば!?予鈴じゃない!」
千歌「わ、わあぁっ急げ急げ〜っ!」アワアワ
ダイヤ「………………」
千歌「ぁ……」ハッ
千歌「(ダイヤちゃん、なんか変……?)」 −−−−
緑化棟 緑化教室
授業:造園技術 (自習)
千歌「…………」モグモグ
千歌「…………グミ食べる?」
ダイヤ「いりません」カキカキ…
千歌「梨子ちゃんは?」
梨子「ぁ、ううん。私はいい」フルフル
千歌「皆真面目に勉強してて偉いなぁ」
ダイヤ「筆記試験落ちますわよ」
千歌「大丈夫大丈夫」
ダイヤ「……ぁ、」ピタッ
ダイヤ「そういえば千歌さん、今年測量はどうするのですか?」
千歌「あー、去年私達二人しか居なくて出れなかったもんねぇ……」チラッ
梨子「…………」カリカリ
ダイヤ「………………」ジッ
梨子「…………なぁに?その、測量っていうのは……」
千歌「毎年農業クラブが開催してる平板測量競技大会だよ。3人1組でやるんだけどね、制限時間内に地面に書かれた複雑な五角形を測量して、面積を求めたりするの」
千歌「解答と誤差が少ないチームが勝ち。全国大会もあるんだよ」
梨子「農業クラブ?」
ダイヤ「まあ、農業高校の生徒会のようなものですわ」 難しいよな…あんまり専門的なところ踏み込まない方がいい? 自分は専門的で未知な領域描いてくれるほうが新鮮で楽しいかな
農業高校ってそんなことやってるんだーみたいなの知れるし 書き手の好きにしてくれれば良いけど、個人的にはせっかくなら専門的な方が独自性があって好き 知らない分野のこと知れて面白いし、何ならキャラの発言だけでなく地の文などで解説入れてもらっても全然良いと思いますよ 日常系ssは正直アニメ本編見てりゃ誰にでも書ける
でも農業高校のssは農業高校に行った人か詳しい人にしか書けない
本当に安定して面白いからそのままで続けて欲しいな 周り農家ばっかりな中、サラリーマン家庭から農業高校入ってきた銀の匙の八軒みたいな心境 ありがとうございます
このままの流れで続けていきます 千歌「それで……梨子ちゃん、測量とか興味無い……?」
千歌「大会は平日だから学校公欠になるし、早く終わったらその後遊べるし!いいことばっかりだよ!ねっ?」
梨子「私は別に……」
千歌「梨子ちゃんしか居ないの!……おねがい……」ウルウル
梨子「ぅ”っ!!!」
梨子「………………わかった……」
千歌「ほんとっ!?やったー!この調子でスクールアイドルも──
梨子「それはまだ」
千歌「ちぇ〜っ……」
千歌「あ、今日から体育祭の練習の後に測量の練習するらしいからよろしくね〜」
梨子「」
梨子「ちょ、ちょっとそれは聞いてないんだけど!?」
ダイヤ「そういえば私も初めて聞きましたわ」
千歌「白津先生、最近忙しいみたいだしね〜」
ダイヤ「流れは私達がやりながら説明しますから、梨子さんも頑張りましょう」
梨子「わ、わかった。やってみるよ」 −−−−−
放課後
浦の星農業高校 グラウンド
梨子「はぁ……体育祭の練習が終わったと思ったら今度はこっち……」
梨子「ジャージでもいいって言われてたのにわざわざ実習服に着替えに行ったダイヤちゃん偉過ぎるわ……」
千歌「だよねぇ。あ、そろそろ白津先生来るんじゃない?」
ブロロロロロロ……
千歌「あ、軽トラ来た」
白津「おー、お前ら〜」
ダイヤ「…………」荷台に正座で乗るダイヤちゃん
千歌「っふ…………」
梨子「何で荷台に????」
ダイヤ「……荷物おろしましょうか」ヨッコラセ
千歌「いやなんで!?なんで荷台に乗ってんの!?www」
ダイヤ「助手席も荷物でいっぱいなんですの!早く下ろしなさいな!」 千歌「はいはい、今下ろしますよーだ」
梨子「……沢山あるのね……」ヨッコラセ
平板測量を行う際に使用するのは、三脚、測板、移動器、アリダード、求心器、垂求、デグリ(磁針)、それから測量ポール。
白津「それじゃ桜内が居るから改めて、測量のやり方を説明します」
まず、図面を書きたい測点の上に三脚を立て、その上に測板をセットする。このとき図面を書くための用紙も測板上にマスキングテープか何かで固定しておく。
測板は移動器を使って水平にセットする。ここで測板が水平になっていないと、作図した時に大きくズレが生じてしまう。
水平にする際は、アリダードについている気泡管を利用するか、平板用T字水平器を使用する。 測点を、求心器と下げ振りを使って、測板上に測点の位置を決める。
測りたい位置を、求心器で決めた位置を中心にアリダードを回転させ測りたい目標を視準し、メンバーの一人が立てている測量ポールへと合わせる。
求心器で求めた点には測量針を立てると便利。
測点から測りたい点までの距離を記録主以外の二人が巻尺等で測り、その距離を全員で復唱する。それから、アリダードのスケールで測った距離を書き込む。
白津「これを繰り返して製図していきます。詳しいことはやってみながら教えるので、取り敢えず記録主を決めてください」
千歌「私記録苦手だし、ダイヤちゃんで。梨子ちゃんは私と一緒にポール立てと巻尺担当ねっ!」
梨子「わ、わかった」
ダイヤ「それではやってみましょうか」 −−−
数十分後…
千歌「ありゃ、めちゃくちゃズレてる」
ダイヤ「どうしてこうズレていくのですか!」
ダイヤ「もう無理です終わりました……」ズーン
千歌「何処でズレたんだろ……」
梨子「あそこ、水平取ってたっけ?」
千歌「あー、そういえば水平取ってなかった気がする。ダイヤちゃん何してるんだよ〜」
ダイヤ「ぅぐ……た、確かに私が悪いですが、ポールを持って立ってるだけの千歌さんに言われたくありませんわ!」
千歌「いやいやいや、あれも重要な役割だよ?それにポールを持って立ってるだけじゃなくてちゃんと巻尺で距離測ったりしてるし!」
ダイヤ「絶対嘘ですわ!貴女、去年測量の練習が嫌だからって学校抜け出してましたけどそれもどうかと思いますの!」
千歌「去年の話は今関係なくない!?」
梨子「ふ、二人とも止めなさいよ……」 眠たいのと、今週はテストがある教科が多いので今週は更新が疎かになってしまうかもしれないです。すみません >>221
残念!この間農業高校を卒業したばかりのJD ラ板に書き込んでるのはJKしかいない
みんな知ってるよね 白津「まあズレるのは仕方ないですね。練習を重ねていかんとどうしようも無い」
白津「それと時間が掛かり過ぎてるから、側板を運ぶ時は全員で手伝った方がいいですね」
梨子「改善点が沢山あるわね……」
白津「測量はこれだけじゃなくて、その作図した図形の面積も求めなくちゃいけないですからまだまだ課題はありますね」
梨子「な、なるほど……」
ダイヤ「大体、貴女はいつも──!」
千歌「何で私ばっかり悪いみたいな言い方するの!?ダイヤちゃんだって──!」
白津「……皆疲れてるみたいやし、今日は解散にしましょうか」
梨子「そうですね……」
梨子「(午前中は四時間全部実習で、午後の二時間は体育祭練習……その後に暑い中で測量の練習……流石に千歌ちゃんやダイヤちゃんも疲れちゃうよね……)」
白津「おーい、高海、黒澤。荷物片付けるぞー!」 −−−−
ブロロロロロロ…
ダイヤ「結局またトラックの荷台で緑化棟まで移動……」正座
梨子「トラックの荷台なんて始めて乗ったわ……」体操座り
千歌「まあ人が乗るとこじゃないもんねぇ……」胡座
ダイヤ「疲れましたね……」
千歌「……うん、疲れた」
ダイヤ「……千歌さん、先程はすみませんでした」
千歌「ええっ!?ぜ、全然いいのに!?気にしてないよ!」
千歌「……私の方こそごめんね」
ダイヤ「お互い疲れていましたし、仕方ないですね……」
梨子「二人とも……良かった……」ホッ 千歌「……っふふ、」
梨子「何?」コテリ
千歌「ううん。なんかね、梨子ちゃんを見ると、梨子ちゃんったらすっかり農業高校に染まったな〜と思っちゃって」
梨子「え、そう?」
千歌「うん。だって何の抵抗も無く地べたに座るようになったし、更衣室でご飯食べるのも当たり前になってきたし!」
千歌「梨子ちゃんの実習服の落ちない泥を見て、私は胸が熱くなるよ……」
梨子「何よそれ……」
ダイヤ「でも、私も思っていましたわ。梨子さん、農業高校は楽しいですか……?」
千歌「………………」ジッ
梨子「………………」フゥ…
梨子「うん、とっても楽しい」ニコ
千歌「!」パアァッ
千歌「良かったぁ〜!ダイヤちゃん!梨子ちゃん農業高校楽しいって!」ワーイワーイ!
ダイヤ「ええ、良かったですね」ニコ −−−−−−−−
−−−−−
−−
一週間後
体育祭 当日
浦の星農業高校 グラウンド
赤ブロック:千歌、梨子、ダイヤ、果南、花丸
青ブロック:鞠莉、善子、曜、ルビィ
『100mリレーに出る選手は入場門へ整列してください』
千歌「梨子ちゃん!今から行ってくるからチカのカッコイイとこ見てて!!」ガタッ
梨子「うん、ちゃんと見てるよ」
千歌「じゃあ行ってくるから!!」ダッ εε= 从c*^ヮ^§
梨子「走るとスタンドから落ちるわよ〜!」
梨子「……うーん……私は綱引きしか出ないし……ずっとスタンドに居るのも退屈なのよね……」ウーン
花丸「……ぁ、梨子先輩!」
梨子「あれ、花丸ちゃん!今ひとり?」
花丸「はい。曜ちゃんもルビィちゃんも敵だからあんまり話せなくって……」
梨子「て、敵でも話していいと思うけど……」 花丸「あの……心細いので一緒に座って見てもいいですか……?」
梨子「勿論!ほらおいで」ポンポン
花丸「!……ありがとうございます!」パアァッ
花丸「……千歌先輩とダイヤ先輩は一緒ではないんですか……?」
梨子「ああ、うん。千歌ちゃんはこの後のリレーに出るの。ダイヤちゃんは生徒会演舞の最終打ち合わせがあるんだって」
花丸「なるほど……」
花丸「次の100mリレー、曜ちゃんと果南先輩も出るみたいです」
梨子「あ、そうなの?曜ちゃんは分かるけど、果南先輩のことまで知ってるのね」
花丸「あの日、あの場に同じ学科の人が居ない同士意気投合して、少しだけ仲良くなったんです。その時に教えてもらいました」 梨子「そうだったのね。……どう?果南先輩優しい?」
花丸「はい、とっても。優しいし面白いし、笑顔がとっても可愛い良い先輩です」
梨子「良いなぁ……私も果南先輩と仲良くなりたいんだけど……果南先輩って、私のこと、千歌ちゃんの友達〜みたいな感じに思われてるんじゃないかって思ってて……」
花丸「……」ポカーン
梨子「え、どうしたの?」
花丸「てっきりもう仲良しさんなのかと思ってました。果南、オラと一緒に帰る度に梨子ちゃんは〜、梨子ちゃんが〜って話してるので」
梨子「そうなの!?というか果南先輩と一緒に帰ってるの!?」
花丸「はい、意気投合して」
梨子「意気投合は関係無くない!?」 梨子「……どんな話されるの?」
花丸「……梨子ちゃんが可愛い。梨子ちゃんは良い匂いがする。梨子ちゃんは千歌には勿体無い。……とかですかね」
梨子「本当にそんなこと言ってるの!?」
花丸「言ってますよ」
『100mリレーの選手は入場してください』
花丸「あ、ほら見てください」🫵
果南「………………」キョロキョロ
梨子「な、なんかすっごい赤ブロックのスタンド見てるわね……」
果南「!」ハッ
梨子「あ、気付いた」
果南「──!──!!」ブンブン
花丸「すっごい笑顔で手振ってますね」
梨子「……か、かわいい……っ……」💘 花丸「あ、梨子先輩見てください。曜ちゃんも……」
曜「…………」キョロキョロ
曜「!」パアァッ
曜「──!──!!」ブンブン
梨子「さ、流石幼馴染ね……似てるわ……かわいい……」💘
千歌「……」キョロキョロ
花丸「千歌先輩は青ブロックの方探してますね」
梨子「そういえば青ブロックって誰が……」
鞠莉「──、──?」
ルビィ「」
善子「──、──。──?」
梨子「あぁ……鞠莉先輩とよっちゃんに挟まれてるわ……」
花丸「魂出ていきそうずら……」
梨子「何話してるんだろう……」 −−
青ブロック スタンド
鞠莉「あそこにいるの千歌っち達じゃない?」
善子「本当ですね。めちゃくちゃ手振ってる」
ルビィ「…………」チーン
善子「あ、見て、ルビィ。花丸達よ」🫵
ルビィ「ほ、ほんとだぁ!あのっ、ルビィあっちに……」パアァッ
鞠莉「ダメよ。あっちは敵陣だもの。死にたいの?」
ルビィ「死っ!?!?」ピエエェッ
善子「適当言ってるだけよ。気にしないで」
善子「……ん?見て、あれ千歌じゃない?」
千歌「…………」キョロキョロ
鞠莉「本当ね、誰探してるのかしら?」
ルビィ「死……ルビィ……死……」
善子「さぁ、誰でしょう。私たちとか?」 千歌「鞠莉せんぱーい!善子ちゃーん!ルビィちゃーん!」
善子「あのバカっ……!」ガタッ
ルビィ「ぅゆ!?」ビクッ
鞠莉「善子、そんなに急に立ち上がると──」
善子「……あっ……」ガタッ!
鞠莉「……っ!」ガシッ
鞠莉「もう……気をつけなさいよ……」
善子「あ、ありがとうございます……死ぬかと思った……」バクハグ
ルビィ「だ、大丈夫ですか……?」
善子「ええ……私みたいにスタンドから勢い良く立ち上がらないようにするのよ……」
ルビィ「はい……」 『位置について、よーい』
パァンッッ!!
果南「──っ!」タッ
鞠莉「あら、果南が走り始めたわよ」
善子「早いわねぇ、あの人」
ルビィ「……かっこいい……」
鞠莉「転べ転べ〜っ♪カッコ悪いところ見せちゃえ〜っ♪」
善子「やめなさいよ」
鞠莉「私、先輩だけど?」
善子「うっざいわねこの人……」ハァ…
ルビィ「ぁ、見てください。次、千歌先輩……」
千歌「──っ!──っ、」ダッ
鞠莉「千歌っちは動けるけど特別早いって訳じゃないのよね」
善子「果南先輩見ちゃうと皆遅く感じますよね」
鞠莉「あの人がずば抜けて早過ぎるのよ」 ルビィ「あっ!曜ちゃん!」
曜「──っ!」ビューンッッ
鞠莉「まるで飛行機ね」
善子「こうして走ってるところ見るとあの子って本当犬っぽいですよね」
鞠莉「分かるわ〜、一度でいいから撫で回してみたい」
鞠莉「………………」チラッ
ルビィ「……っ?……??」キョトン
鞠莉「ルビィを撫で回しちゃえ〜!」ワシャワシャ
ルビィ「わぁあぁっ……な、なんでるびぃがぁ……っ……」アワアワ
ルビィ「た、……たすけてぇ、善子せんぱ──」チラッ
善子「…………」ソワソワ
ルビィ「な、なんでぇ!うらぎりものぉ!」ウユ… 鞠莉「それはそうと、善子とルビィは何の競技に出るの?状況次第では応援してあげなくもないけど」
善子「なんですか状況次第って」
ルビィ「……る、ルビィは綱引きに……」
善子「私は障害物リレーです」
鞠莉「じゃあルビィだけ応援するわ」
善子「なんでですか」
鞠莉「善子も応援してほしいの?」
善子「………………まあ」
鞠莉「fu〜〜♪」( 🤞ᐛ )🤞⤴︎⤴︎⤴︎
善子「今日テンション高くてめちゃくちゃ面倒臭いわこの人」
鞠莉「体育祭だからね」
善子「先輩そんな燃えるタイプじゃないでしょ」 ルビィ「鞠莉先輩は何に出るんですか……?」
鞠莉「ん〜?気になる?」
ルビィ「……はい、ルビィも、応援……したいので……」
鞠莉「やだもうかわいい〜♪」ナデナデ
善子「え〜私も鞠莉先輩応援した〜い!」
鞠莉「ふーん」
善子「なんでよ」 −−−−
梨子「千歌ちゃん達カッコよかったね」
花丸「はい、皆足速くてビックリしました……オラ、全然早くないから……」
梨子「そうねぇ……リレーに出てる人は凄いわ」
『障害物リレーに出る選手は──』
花丸「あ、オラの競技ずら。それじゃ、梨子先輩、ありがとうございました」ペコ
梨子「こちらこそありがとう、頑張ってね。応援してるから」
花丸「はい。それではまた」フリフリ
梨子「うん、またね」フリフリ
梨子「………………花丸ちゃんも何だかんだリレー出てるじゃない…………」
千歌「梨子ちゃーん!ただいまー!」
梨子「ああ、走らないの。お疲れ様、千歌ちゃん」
千歌「どう?速かった?カッコよかった?」
梨子「うん、凄いカッコよかったよ」
千歌「えへへぇ……うれしい……」フニャリ 善子「──、──」トテトテ
千歌「あ!見て!あそこにスタンバイしてるのって善子ちゃんじゃない?」
梨子「あら、ほんとだ。一番最初なのね」
千歌「障害物リレーはあんまりやる人居ないから誰かが三年生と一緒に走らないといけないって聞いてたけど、善子ちゃんだったんだね〜」
梨子「よっちゃん運動神経良いんだ……」
千歌「割と良い方だと思う。まあよく良いところで転んでるんだけどね」
善子「──、」スッ…
千歌「あ、走り始めるんじゃない?」
『位置について、よーい』
パァンッッ!!
善子「──っ!」ダッ
千歌「おお!善子ちゃん速い!」 善子「……っ!──っ!」ダッ
梨子「な、何あれ!?今何持ったの!?」
千歌「3キロの砂袋だよ。あれを持って、あそこの一輪車に乗せるの。そこから、一輪車を押して、1年生の子にバトンを届けるんだよ」
梨子「さ、3キロ……重そう……よっちゃん、よくあんなの持って走れるわね……」
千歌「一輪車押すの上手いなぁ。アレ、重いと真っ直ぐ進まなくて大変なんだよ〜」
梨子「そうなのね……よっちゃん凄い……」
善子「──っ!?」ガクッ
千歌「あ、やばいよ一輪車が石に躓いた」
善子「──〜っ!!」ドンガラガッシャーン
梨子「す、凄い勢いで転んだけど!?大丈夫なのあれ!?」
千歌「あっはっはっはっは!もう最高だよ善子ちゃ〜ん!」ゲラゲラ
梨子「最悪ね貴女!」 花丸「──っ!?──!」ソワソワ
梨子「花丸ちゃん、敵なのにすっごい心配そう……」
善子「──っ、……」ヨロヨロ
千歌「ひぃ……お腹痛いお腹痛い……」
梨子「な、なんとか次の人にバトンが渡ったわね……」
千歌「あ、見て。今袋に入ったの花丸ちゃんじゃない?」
花丸「──っ……」ヨイショヨイショ
梨子「何に入ってるの?」
千歌「麻袋だよ〜、あれでぴょんぴょんして前に進むの」
花丸「──っ!──っ!」ヨッコラセ ヨッコラセ
梨子「……なんだか重そうね……」
千歌「……うん、一歩一歩がゆっくり……小学校低学年の子がしてる縄跳びみたい……」 一輪車って手押し車のやつか
乗って遊ぶほうの一輪車かと思ったw 千歌「ああほらこうしてる間にもめちゃくちゃ抜かされて行ってるよ……」
花丸「……っ、…………っ!」ゼェゼェ
梨子「麻袋は終わったけど、……あと半分……大丈夫なのかな……」
花丸「……っ、……」ゼェゼェ ピラッ
梨子「何か紙を貰ったわね」
千歌「借り物競争みたいなやつだよ。あそこに各学科がよく使ってる道具があるでしょ?それが書いてあるから、それを持ってゴール!」
梨子「な、なるほどね……あの人みたいのは何?」
千歌「柔道部が使ってるダミーくんだよ。あれ、意外と軽いんだよ〜」
梨子「……あ、見て。鞠莉先輩」
鞠莉「………………」チョコン
🐶「………………」ハッ ハッ
千歌「あ、ほんとだ。同好会のワンちゃんも居るんだ」 花丸「──っ!……っ、……」ゼェゼェ
千歌「あ、丁度花丸ちゃんがワンちゃん引き当てたみたいだね」
鞠莉「──?──!」ハイドウゾ
🐶「──!」タッ
花丸「──っ!──っっ!!」ズルズル
梨子「…………花丸ちゃん……引っ張られて行ってるわね……」
千歌「小型犬なのに…………」
『赤ブロック、一位でゴールしました』
千歌「でも一位なんだ。すごい」
梨子「さっきまで最下位まっしぐらだったのにね」
千歌「ほんとにね」 −−−−
善子「………………」ボロッ
千歌「ひいいぃっ……くるしいっ……くるしい〜!」ゲラゲラ
ルビィ「そ、そんなに派手に行くとは思いませんでした……」
善子「……慰めないで。……辛いから……」
ルビィ「……はい。これで大丈夫ですよ」ペタッ
善子「ありがと。今担当してる保健委員がルビィで良かったわ。知らない人に同情されながら絆創膏貼られると気が可笑しくなるもの」
千歌「あっはっはっはっ!くるしいくるしい!腹筋割れる!シックスパック!」ゲラゲラ
善子「あんたは少しでも同情しなさいよ!」💢
ルビィ「……でも、善子先輩、とってもカッコよかったですよ。ルビィ、思わずがんばれーって叫んじゃいました」
善子「!……ありがとね」
ルビィ「はいっ」ニコ 『綱引きに出る生徒は入場門前に整列してください』
千歌「ああ、ルビィちゃん、そろそろ整列しないと綱引き始まっちゃうよ」
ルビィ「っあ!そうでした!……ルビィ、行ってきますね」
善子「ええ、頑張ってね。応援してるわ」
ルビィ「ありがとうございます、失礼します」ペコリ
善子「…………どっかの誰かさんと比べて良い子ね〜」
千歌「どっかの誰かさん?ダイヤちゃんのこと?」
善子「あんたに決まってんでしょ」
ダイヤ「あら、千歌さんに善子さん。どうして救護テントに……」チラッ
善子「…………」ボロッ
ダイヤ「ああ……なるほど……」
善子「辞めてくれる?その反応」 ダイヤ「次は梨子さんとルビィの競技ですわね」
千歌「そうだねぇ。どっち応援するか迷っちゃうなぁ」
善子「そこは同じチームの梨子を応援しなさいよ」
千歌「後輩を応援しないなんて嫌な先輩じゃない?」
善子「面倒臭いわねぇあんた」
ダイヤ「そろそろ始まりますわよ」
『位置について、よーい』
パァンッッ!!
梨子「──!」
千歌「あ!梨子ちゃんだ!頑張れー!梨子ちゃーん!」
善子「あ、見て。相手のチームにはルビィも居るわよ」
ルビィ「──っ…………っ!」ウユウユ…
千歌「ありゃ、青負けちゃいそう」
善子「ルビィ、今にでも泣き出しそうね」
ダイヤ「情けないですわ……」
「ファイトーっっ!!!!」
千歌「青ブロックに凄い声援送ってる人居る……」
善子「一体誰が……」 曜「ルビィちゃーん!!がんばれー!!!!」
鞠莉「負けるなー!!!全員蹴落とせー!!!!」
ダイヤ「」
千歌「まあ予想的中だよね」
パァンッッ!!
『ただいまの結果、赤ブロックの勝ちです』
善子「でしょうね」
千歌「あっ!見て!ルビィちゃん泣いちゃう」
ルビィ「……っ……」ジワッ
善子「赤ちゃんか」
ダイヤ「ルビィー!しゃきっとしなさい!」
ルビィ「…………っ……」フルフル
千歌「なんか言ってるけど、なんにも聞こえないね」
善子「……ええ」 梨子「…………」チラッ
善子「あ、梨子がこっち見てる」
千歌「どこどこー!?!?」
梨子「……っ……」フリフリ
善子「!」ドキッ
善子「ん、んん……?ドキッ……??」
千歌「あ、居た!りこちゃーん!おーい!!」ブンブン
ダイヤ「お止めなさい。救護テントで騒ぐんじゃないですの」
千歌「ああそうだった……ちょっと退場門で梨子ちゃん達にお疲れ様してくる〜!」タッ −−−−
『三年生全員は入場門前に整列してください』
千歌「いよいよ三年生の学年種目だね〜」
ダイヤ「鞠莉先輩がどこまで本気になってくるかが勝負の鍵を握ってますわね」
梨子「鞠莉先輩ってそんなに体育祭で手を抜いたりしてるんですか?」
ダイヤ「ええ。去年はそもそも学校に来てませんでしたから」
千歌「面倒臭いって言ってサボってたよね。その度胸カッコイイ〜!」
梨子「絶対見習っちゃダメなやつね」
花丸「あそこに準備されてる竹はなんですか……?」
千歌「孟宗竹だよ〜、学校に生えてる竹なんだけど、あれを使って台風の目っていう競技をするの」
花丸「台風の目?」
梨子「あら、知らない?」
花丸「はい……あんまり……」 ダイヤ「あの竹を四人一組で持って、コーンの周りを回っていきます。二つ目のコーンを回ったところが往復地点ですわ。自分のチームが並んでいるところまで戻ってきたら、今度は両側の二人だけが竹を持ち、並んでいるチームメイトの足元へ通します」
梨子「この時、ぶつかったり転ばないようにしないように並んでる人は竹を跳ぶの。後ろ列まで行ったら、また前に戻ってきて、一番前に並んでいる人に竹を回す」
千歌「一番早く全員回ったチームが優勝!わかった?」
花丸「なるほど……少し分かりました」
千歌「大体は見てたらわかると思うから!皆で果南ちゃんを応援するぞー!」エイエイオー! 『位置について、よーい』
パァンッッ!!
果南「──っ!」ダッ
千歌「始まった!」
花丸「果南先輩、一番前です!」
千歌「がんばれー!果南ちゃーん!」フレーフレッ!!
ダイヤ「果南先輩が端だと有利ですね。脚も速いし力もある」
梨子「が、頑張ってくださーいっ!果南先輩ー!」
果南「──っ!」ハッ
果南「……っ……」カアァッ
梨子「ぁ……目逸らされちゃった……」シュン
千歌「(果南ちゃん、梨子ちゃんのこと大好きだからなぁ……)」
花丸「(果南先輩、完全に照れてるずら)」
ダイヤ「(分かりやすい人ですわ)」 体育祭長くなってきちゃった
あと一種目書く。つまらなかったらごめん 千歌「果南ちゃーん!!梨子ちゃんに良いとこ見せちゃ──っもご!?」
ダイヤ「ちょっとお止めなさい!果南先輩の気持ちも考えるんですわ!」ガバッ
花丸「流石にオラも命の危機を感じるずらっ……」ガバッ
千歌「んー!!んんーっっ!!」モゴゴ…
果南「後で覚えとけ千歌ーっ!!」
千歌「ひいぃっ……」
梨子「??……?」 −−−−
青ブロック スタンド
曜「あれぇ……鞠莉先輩はどこに?」キョロキョロ
善子「どうせあの先輩のことだから出ないんじゃないの?結局出る種目聞けなかったし」
ルビィ「最後まで教えてくれませんでしたよね……」
曜「あ!居た!あそこ!一番後ろ!」🫵
善子「一番後ろ!?あの人が!?」
鞠莉「…………」
ルビィ「ほ、ほんとだ……アンカーだからゼッケンも着てる……」
善子「嘘でしょ……あの人がちゃんと種目に出てるなんて……」
善子「あの人、去年の体育祭サボってるからね」
曜「そうなんですか!?」
善子「ええ。私も鞠莉先輩休んだと思ったんだけど、実は学校には居たのよね」
ルビィ「??……どういう意味ですか……?」
善子「木の上登ってたのよ」
曜「野生か!!!!!」 鞠莉「……」ヒョイッ
善子「いやせめて出てるならもっと楽しそうにしなさいよね……真顔って……」
ルビィ「あ、あれはあれで楽しんでるんじゃ……」
鞠莉「…………」ポケーッ
曜「あんなぼーっとしてたらぶつかっちゃいそうですけど……」
ワイワイワイ! ワイワイワイ! ワーイワーイワイ ワイワイワイ!
鞠莉「…………」ポケーッ
善子「あの人、竹が迫ってることに気がついてないわね」
鞠莉「──っ!?!?」ゴッ
ルビィ「脛、打ちましたね」
鞠莉「──っ……〜〜っっ……」ウズクマリィ
曜「本気で痛そう……涙目になってる……」
善子「今までクールキャラ演じてた人が脛ぶつけただけでこんなに面白いのね」
鞠莉「〜っ……っ……」
ルビィ「……あ、立ち上がれてないですよ」
果南「!──っ?──!」タッ
曜「あ、果南ちゃん気付いた」
果南「──っ」ヨッコラセ
鞠莉「〜っ!……っ、……」プルプル
善子「……お姫様だっこで運ばれて行ったわね……」
曜「………………」
ルビィ「………………」 −−−−
救護テント
千歌「ひぃいぃwwwwww」ゲラゲラ
鞠莉「………………」
果南「千歌。やめな」
千歌「だってwwwだって気がついたら脛押さえて蹲ってんだもん!www」
梨子「もう、千歌ちゃんいい加減にしなさい」
ダイヤ「脚、大丈夫ですの?」
果南「いや、かなり腫れてたよ。握り拳くらい!」
善子「そりゃあんな太い孟宗竹に真正面からぶつかったらそうなるわよね」 ルビィ「相当痛そうでしたし……」
曜「ほんとほんと。脚にこんな大きなこぶなんか出来ちゃって……っぶふwww」
果南「こら曜!」
曜「分かってる……分かってるよぅ……www」
千歌「よーちゃんだけに分かってるよぅってこと!?www」\\\ドッ///
果南「いやどこにツボってんの」
花丸「最悪ずら」
鞠莉「…………帰る…………」
果南「えっ?」
鞠莉「帰るぅ……皆して私のこと笑ってぇ…………」ポロポロ
千歌「えええええ!!違うんです!!!違うんです待ってチカ悪くない!!!!」
善子「あんたが一番悪いでしょ」 鞠莉「皆本当のこと言って」
全員「…………………………」ゴクリ…
鞠莉「私は別に、皆が私の姿を見て笑うことはいいの」
鞠莉「ただ、それを隠されてるのが悲しいの」
鞠莉「私に気を使ってるんでしょ?」
ダイヤ「ですから――」
鞠莉「ちゃんと受け止めるから。怒らないから」
鞠莉「皆私を見て面白いなって思ったんでしょ?」
全員「……………………」
全員「……………………」コクリ
鞠莉「ほ゛ら゛や゛っ゛ぱ゛り゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」ポロポロ
善子「全然受け止められてないじゃないですか……」 鞠莉「だって嫌だもんこんなっ……こんな両脚の脛におっきくこぶ出来てるの〜!!」ポロポロ
鞠莉「千歌っちと曜に笑われたもんんんんんん!!!」ポロポロ
ようちか「「ご、ごめんなさい…………」」
鞠莉「皆のばかあああああああああぁぁぁ!!もう嫌い!!!帰らせてぇえ」ポロポロ
果南「お、落ち着いて?確かにこのこぶは面白いけど……ここに皆が来てくれたってことは、少なくとも鞠莉を心配してるからなんだよ」
鞠莉「……っ……心配……?」グスン
梨子「そ、そうですよ!心配で駆け付けて来たんです!」
鞠莉「ほんと……?」
千歌「はい!勿論!鞠莉先輩の脚が心配で心配で……っぶふ!wwwwww」
ダイヤ「貴女もういい加減にしなさい!!」💢 このメスガキ感ある鞠莉ちゃんがガチ泣きしてるの興奮する −−−−
『続いては、学科対抗リレーです』
梨子「──なんて言ってるけど、」
梨子「実習服着ていつも使ってる道具持って皆でトラック回ってるだけじゃない!」
千歌「何がリレーだ!って感じだよね」アハハ…
千歌「よっこらせっ、っと……」ヨイショ
梨子「千歌ちゃんはダブルスコップなのね……重そう……」
千歌「かなり重いよ〜、ダイヤちゃん見て見て」🫵
ダイヤ「緑化科でーす」
千歌「緑化科〜って書かれた看板しか持ってないよ。梨子ちゃんはちゃんと刈り込みバサミ持ってるのにぃ……」
梨子「ちょっとずるいよね……」
ダイヤ「……二人とも、何か?」圧
ちかりこ「「い、いえ何も〜……」」メソラシ 果南「園芸科でーす」ワイワイワイ
梨子「果南先輩の周り、沢山人が居るわね」
千歌「人気者だからね〜果南ちゃん」
ダイヤ「綺麗なお花が持てて羨ましいですわ。私達なんか小汚い道具ですし」
ちかりこ「「看板だけしか持ってないダイヤちゃんが言わないで」」
梨子「あ、見て。あっちは動物科よ」
善子「あ、こら!走らないの!」
🐶「わふ!」
梨子「よっちゃん大変そうね……」 千歌「いいなぁ、緑化も何か動物飼おうよ動物〜」
ダイヤ「害虫なら沢山居るでは無いですか」
千歌「ダイヤちゃんは害虫をペットにするのかって話!」💢
梨子「あはは……なんかこの学科対抗リレーって、各学科の差が激しいわね……」
千歌「だよねぇ……」苦笑
千歌「でも、パレードみたいで面白いでしょ?」
梨子「……ええ、すっごい楽しい」
千歌「……っふふ、良かった」ニッ
白津「おー、桜内、高海、黒澤」
ダイヤ「あ、白津先生。どうかしましたの?」
白津「体育祭が終わった後、グラウンドで測量の練習するので残っててくださいね」
千歌「ちくしょおおおおおおおっ!!!!帰れると思ったのに!!!帰れると思ったのに!!!!!」 −−−−−−−−−
−−−−−−
−−−
六月
平板測量競技会当日
静岡県 某農業高校
ブロロロロ……
ガチャッ
千歌「おおーっ!他所の農業高校ってなんか良いね〜!」
梨子「千歌ちゃんも、はしゃがないで荷物運んでよ〜っ……」
ダイヤ「そうですわよ。こんな大荷物、どうして二人だけで持たせるんですの!」
千歌「ああ、ごめんごめん。自分の学校じゃないところってテンション上がっちゃうから……」
梨子「気持ちは分かるわね……私なんて、浦の星しか農業高校知らなかったから、何だか不思議な気分」
千歌「広いね〜!楽しいね〜!」
ダイヤ「あんまり騒がないでください。バカに見えますわよ」
千歌「ばかって言ったダイヤちゃんの方がばかだよ!ばーか!」
ダイヤ「なんですってえぇええ!!」💢
梨子「ふ、二人とも落ち着いて……」 生徒「あの、測量で来た方ですか?」
梨子「は、はい……浦の星農業高校です」
生徒「浦の星農業高校の生徒さんですね、ご案内します」
梨子「ありがとうございます。ほら、千歌ちゃんダイヤちゃん、行くよ」 −−−−
生徒 控え室
生徒「こちらで実習服に着替えてください。開会式は9時からになります。遅れないように時間を見ながら隣の教室へ集まるようにお願いします」
千歌「はい、ありがとうございます!」
ガララッ
ピシャ……
ダイヤ「……かなり汚い教室に案内されましたわね……」
梨子「ちょっと荷物退けただけの教室、って感じね……」
千歌「まあまあ、文句言ってても仕方ないよ。そもそも浦の星はこんな空き教室用意出来ないもんね」
千歌「さっと着替えて最後打ち合わせしていこう。私達、まだ全然練習出来てないし、測量の大会って授業で測量やってるところがほとんどだから絶対悪く目立つよ」
梨子「それもそうね……早く着替えちゃいましょ」
ダイヤ「仕方ないですわね……」 −−−−
開会式 会場 教室
司会「起立」
司会「これより、農業クラブ平板測量競技大会を開催致します。礼」
司会「FFJの歌。皆様、ご斉唱ください」
梨子「FFJの歌……?」
生徒「……」スッ
梨子「(指揮出てきたし。絶対要らないわよねこれ……)」
梨子「(それよりFFJの歌って何?)」チラッ
千歌「………………」ニコニコ
ダイヤ「………………」スンッ
梨子「(え、二人とも知ってるの!?)」アワ… みのる和穂に 富士と鳩
愛と平和を表わした
梨子「(うわ……何この曲……歌詞書いてあるけど全然歌えないし……)」
ダイヤ「♪〜」
梨子「(ダイヤちゃんはちゃんと歌ってるみたいだけど……)」チラッ
♪旗はみどりの、風に鳴る
土にとりくむ 若人の意気と熱とが もりあげた
千歌「……ぁ、ふふふ〜ん、ふ〜んふ〜ん!」
梨子「(せめて口パクとかにしなさいよ!どうして歌えないのにチャレンジするのよ!声大きいし!)」
♪ FFJ FFJ われらの誇り
千歌「えふえふじぇー!えふえふじぇー!わーれらっの ほっこっりー!」
梨子「(なんか恥ずかしいから千歌ちゃんお願い今の一瞬だけ黙っててーっ!)」 −−−
競技場 グラウンド
梨子「結局千歌ちゃん最後しか歌わなかったわよね」
千歌「なんにも歌ってない梨子ちゃんよりはマシだよー」
梨子「だってFFJの歌なんて聞いたことないし!」
ダイヤ「私もまさかここで歌うとは思っていませんでしたけどね」
梨子「え、そうなの?ダイヤちゃん、ちゃんと歌ってたからビックリ……」
ダイヤ「まあ、私は生徒会副会長ですから!」ドヤァ
千歌「関係無いと思うよー」
ダイヤ「お黙らっしゃい!!」💢
千歌「でも逆に、農業クラブ長の鞠莉先輩はFFJの歌とか全く歌えないらしいよ」
梨子「え、そうなの!?」
千歌「歌えなくても損することは無い〜、覚えるだけ無駄だ〜って言ってたもん」
梨子「メンタル強……」
千歌「前、脛ぶつけただけであんなに泣いてたのにねwww」
ちかダイりこ「「「wwwwwwwwwwww」」」 白津「おー、お前らちゃんと水分摂ったか」
千歌「あ、白津先生〜」トテテテ
白津「今日は暑いけんね、水分摂らな熱中症になりますからね」
ちかダイりこ「「「はーい」」」
千歌「…………」チューッ ゴクゴク ←ストロータイプの水筒
梨子「…………」トポポポ… ゴクゴク ←コップタイプの水筒
ダイヤ「…………」ゴクゴク ←そのまま飲めるタイプの水筒
白津「お前らバラバラやなぁ……」 白津「いよいよ大会本番ですからね、皆で協力して、取り敢えずどれだけ時間が掛かっても良いので完成を目指してください」
白津「授業で測量やってるとこばっかりですから、勝ちに行けとは言いませんが、諦めないで楽しんで測量してきてください」
ちかダイりこ「「「はい!」」」
千歌「頑張ろうねふたりとも」👊
梨子「頑張ろう」👊
ダイヤ「やるからには全力ですわ」👊
コツン…
千歌「……」スッ…
梨子「……」コクリ
梨子「……」スッ…
ダイヤ「……」コクリ
白津「お前ら何しようとね」 課題に追われているため今日はおサボりです
測量競技大会が終わったらいよいよステージ発表に向けて千歌がメンバー集めを始めます 『只今より測量競技大会を始めます。位置について、よーい』
パァンッッ!!
千歌「今だ急げ!」ダッ
ダイヤ「いやリレーじゃありませんから!」ガタッ…
ガッシャーンッ
ダイヤ「ああ!ほら!測板が倒れてしまったではないですか!」
梨子「水平器とか全部落ちたわよ!」アワアワ
千歌「こうしてる間にも向こうの学校は進めて行ってるしアフリカでは一分間に六十秒もの時間が流れてるんだよ!?」
ダイヤ「当たり前でしょ!!」💢
梨子「せめて拾ってから喧嘩しよう!?」
白津「(終わりましたね〜)」 大会の名前に間違いがありました
✕ 測量競技大会
○ 平板測量競技大会 平板測量は測板に画用紙をマスキングテープで貼り付け、用紙の右端に方角を書いておきます。その測板を三脚へ取り付け、アリダート、磁針箱など必要な道具を測板の上へ出した状態から始めます。
基準点へ合うように下げ振りを使い、水平器で測板を水平にしていきます。
用紙の下側には基準点となる点を書いておきます。測量し、作図していく際の大きな基準となります。
千歌「最初私が行くね」タッ
梨子「ええ、ありがとう。お願い」
記録主以外の二人、測定主は次の目標点へと立ち、ポールを立てます。記録主は、水平を保つ為に測板を取り付けた木の板のみ動かします。そして、アリダートの後視準板の穴を覗き、前視準板の視準糸と目標のポールに合わせます。
ダイヤ「…………」ジッ… ダイヤ「……ええ、大丈夫ですわ」
梨子「分かった。千歌ちゃん!」タッ
千歌「おっけー!」タッ
測定主は二人で巻尺を使って距離を測り、用紙へ三角スケールで縮尺に合わせ、点を打ちます。この点は最初書いた基準点と繋ぎ、これを繰り返すことで競技場を上から見た図形を描くことが出来ます。
千歌「梨子ちゃん押さえてて。チカが測るから」ビューン
梨子「わ、分かった」グッ
梨子「(千歌ちゃんったら真剣になり過ぎて果南先輩や曜ちゃんの前でしか出さない一人称になってるわ……)」 千歌「………………」スッ… ジィィィッ……
千歌「12m52!」
ダイヤ「12m52!」
梨子「じゅ、12m52!」
この時、測定した記録を全員で大きな声で繰り返します。これを行わなかった場合、減点されてしまいます。
梨子「(千歌ちゃん、練習の時は一個ずつメモリ数えてたのに……農業高校生って大会になるとここまでゾーンに入るものなのね……)」
⚠︎人によります
千歌「りこちゃーん!引っ張ってー!」
梨子「はーい!」グッ
千歌「ありがとー!」グルグルグルグル
これを繰り返すことで、平板測量を行うことが出来るのです。 ------
数十分後
審査員「皆さん、お疲れ様でした。全学校測定が終わったため、今から学校内に移動して──」
千歌「……結局私達が最後だったねぇ」
梨子「そうね……まあ仕方ないわよ。授業でやってる所に勝てっこないわ」
ダイヤ「でも作図は今までで一番良いのではないですか?誤差も少なかったですし、大丈夫なはずです」
千歌「でも最初に測板倒したりしちゃってるし……減点されてそうだよねぇ……」
白津「おー、高海、黒澤、桜内。どうだったか」
ダイヤ「あまり自信はありませんわ……」
梨子「そうね……ちょっと不安です」
白津「まあ練習もそんなに出来とらんけんね、仕方ないっちゃけどね」
生徒「あ、すみません。お二人はこっちで、もう一人は……」
白津「こっちですね、ありがとうございます」
千歌「それじゃ梨子ちゃんダイヤちゃん、またあとで」フリフリ
梨子「ええ、よろしくね」
ダイヤ「お互い頑張りましょう」
千歌「うんっ、また」フリフリ ---
某農業高校 空き教室
平板測量が終わると、各チームごと三斜法に二人、三辺法に一人で分かれ、作業を行い、面積を求めたりします。これを二次作業と言います。
白津「えー、三辺法の試験監督をすることになりました。浦の星農業高校の白津です、よろしくお願い致します」ペコ
白津「それでは解答用紙を配るので裏にして机の上に置き、時間まで待機していてください。また、机の上に置いてある電卓が付かない場合は声を掛けてください」
白津「……全員行き渡りましたね。それでは始めます」ピッ
千歌「………………」カキカキ…
千歌「………………」カタカタッ…
千歌「…………」ウーン…
千歌「………………」カキカキ…
千歌「(──えっと……3,540…これって、点つけるかな……)」カタカタ…
千歌「(……付けちゃお)」カタッ
カタカタッ カタカタッ
千歌「(他の学校の人、もう終わってる……電卓打つ手も早かったし、これが経験の差かぁ……)」カタッ
千歌「(よし、これで合計が出て──)」
千歌「(ん?……何でこんなに小さい値になるんだ……?)」ピタッ
千歌「(………ちょっと待って、なんかおかし──)」
ピピピピッ ピピピピッ
白津「時間になりましたので筆記用具を置いてください。回収します」
千歌「(終わった……え、何であんな数字になったんだろ……)」 農業関係で田畑は耕したり肥料まいたりで測量が必要になるのは想像つくんだけど
緑化科って測量何に使うのかな 造園する際とかに必要になるんですかね?自分でもよく分からず測量やってましたが、授業の中には無かったので、学科の中でも三人だけ有志のような形で大会に行ってました ----
白津「荷物は全部積み込めましたか?」
ダイヤ「はい、忘れ物も確信してきたので大丈夫ですわ」
千歌「……………………」
梨子「ど、どうしたの?千歌ちゃん、さっきから元気ないけど……」
千歌「さっきの三辺法、何故か合計がすっごい小さい数字になっちゃって……なんでかなって……」
梨子「あらら……まあ大丈夫よ。元気出して?まだお昼前なのに帰れるのよ!」
千歌「んん……そうだけど……」
ダイヤ「してしまったことをいつまでも考えても仕方ないですわ。前向きに行きましょう」 真鍋「お、高海さんと黒澤さんじゃん」ヒラヒラ
千歌「あ!真鍋先生!お久しぶりです!」
梨子「だ、誰……?」
ダイヤ「去年まで浦の星に居た先生ですわ」
真鍋「一年生?」
梨子「い、いえ……今年転校してきました、桜内です」
真鍋「え、この時期に転入してきたの?凄いなぁ、高海さんうるさいやろ?」
梨子「い、いえそんな……」
真鍋「あっはっはっ!まあお疲れさんやな。気を付けて帰りよ」
ダイヤ「はい、ありがとうございます」
千歌「それではまた」フリフリ
白津「おーい、高海、黒澤、桜内〜。駅に行くぞ〜。車乗れ〜」
ちかダイりこ「「「はーい」」」 これだけモブ教師出るSSも珍しい
モデルはいるんだろうか ----
某農業高校 最寄り駅 (無人駅)
白津「おにぎり買ってきておいてますから、これ皆で食べてくださいね。先生は学校に戻るので気をつけて帰ってください」
ダイヤ「はい、ありがとうございます」
千歌「先生、また明日!」
梨子「送ってくれてありがとうございました」
白津「また」フリフリ
ブロロロロロ……
ちかダイりこ「「「……………………」」」ストン
ダイヤ「電車来ませんわね」
梨子「来ないわね〜」
千歌「あー…………沼津でも行こうかな」
梨子「えっ、帰らないの?折角お昼に終わって帰れる〜ってワクワクしてたのに」
千歌「折角お昼に終わったからこそじゃない?三人で沼津行ってお茶しようよ」
ダイヤ「……ま、偶には良いですわね」
梨子「ダイヤちゃんまで……」
千歌「どうせ公欠で学校行かなくていいんだしさ!一緒に行こ!」
梨子「……もう、仕方ないわね……」 ダイヤ「……あ、白津先生から頂いたおにぎりでも食べますか?電車、中々来ないようですし」
千歌「あ、食べよ食べよ」ガサッ…
千歌「えっと、鮭、鮭、鮭、ツナマヨ、ツナマヨ、ツナマヨ………………」
梨子「白津先生………………」
千歌「ま、まあおじいちゃん先生が女子高生の好みなんて分からないもんね……鮭とツナマヨ、一個ずつ食べよ」
ちかダイりこ「「「いただきます」」」
ちかダイりこ「「「………………」」」パリッ
ちかダイりこ「「「………………」」」モグモグ
ちかダイりこ「「「………………」」」
千歌「(そういえば、合計があそこまでズレ始めたのって、私が点を付けたから──)」ハッ
千歌「あそこかあああああああああぁぁぁ!!!!!」クワッ
梨子「え!?何!?どうしたの!?」
千歌「コンマ!コンマ付けちゃった!!!だからあんなに数が少なかったんだ!!」
ダイヤ「千歌さん……」 千歌「あれって点付けなくて良かったやつじゃん!!どうすんの!!今から戻って直してくる!!」タッ
梨子「ダメに決まってるでしょ!?!?」ガシ
ダイヤ「もう諦めなさいな。ほら、松月さんのメニューでも見て落ち着きなさい」スッ…
千歌「あ、私みかんタルトにしよ。……みかんどら焼きも買って帰ろっかな」
梨子「機嫌直るの早っ……」
ダイヤ「梨子さんは何か気になるメニューはあります?」
梨子「えっ?うーん……」
梨子「あ、私このケーキにしようかな。ダイヤちゃんは?」
ダイヤ「私はプリンにしますわ」
梨子「いいね、プリンもあるんだ」
千歌「あ、それならこっちもおすすめだよ〜」
ダイヤ「なら私はこっちをおすすめしますわ」
梨子「ちょ、ちょっとそんなに食べられないから〜!」アワアワ ----
松月
千歌「そういえば、二人ともあの話考えてくれた?」
ダイりこ「「あの話?」」キョトン
千歌「うん、スクールアイドルの話」
梨子「あ、あー……そんな話もあったわね……」
ダイヤ「私はお断りさせて頂いたはずなのですが」
千歌「でもでも、やっぱりあの九人で出たいな〜って思うの。ダメかな?」
ダイヤ「九人……?」ピクッ
千歌「うんっ、まず出るのが決まってるのが私でしょ、それから果南ちゃんと、よーちゃん!あとは、梨子ちゃんとダイヤちゃんと、善子ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃん、鞠莉先輩も入ってくれたら嬉しいな〜って思うんだけど……」
ダイヤ「……ルビィも……」 ダイヤ「…………やはりダメですわ。ルビィをステージ発表には出せません」
梨子「えっ?」
千歌「え、なんで?なんでダメなの?」
ダイヤ「知っているでしょう。ルビィは極度の人見知りです。初対面の人はもちろん、大勢の人の前に立つことすら出来ません」
ダイヤ「今まで、私はルビィと一緒に数々の習い事を経験してきましたが、ルビィは毎回発表会には出られなかった。……ルビィは、人の目が怖いんです」
ダイヤ「……だからこそ、ルビィに怖い思いはさせたくない……」ギュッ
梨子「ダイヤちゃん……」
千歌「……そんなこと言うのは、ルビィちゃんの気持ちを聞いてからにしようよ」
ダイヤ「えっ……?」 千歌「私、よーちゃんから言われたの。ルビィちゃんに絶対入って欲しいから、ルビィちゃんのところは空けておいてって」
千歌「……ルビィちゃん、スクールアイドル、興味あるんだって」
梨子「!……そうだったのね……」
千歌「ダイヤちゃん、一度ルビィちゃんと二人でアイドルの番組見ようとしたことあるんだよね。それでね、私思ったんだ。ダイヤちゃんも、ルビィちゃんと同じくらいアイドルとか興味あるんじゃないかなって」
ダイヤ「……ええ、確かに……千歌さんからスクールアイドルの話を聞いた日、少しだけ自分の携帯で調べてみましたの」
ダイヤ「自分達で曲を作って、振り付けを作って、衣装を作って、周りの人々を笑顔にする……スクールアイドルはテレビに出ているアイドルと違い、ただの自己満足だと思いました」
ダイヤ「でも、自己満足だけでは終わらない何かがあるんだと思ったんですの。スクールアイドルは、浦の星に足りない何かを持っている気がします」
ダイヤ「……賭けをしましょう。これに勝ったらルビィを、……私を、スクールアイドルに入れる権限をあげますわ」
千歌「賭け……」ゴクリ
千歌「分かった。受けるよ、その賭け」
梨子「ち、千歌ちゃん、本当に良いの?その賭けに負けたらルビィちゃんもダイヤちゃんも入ってくれなくなっちゃうのよ?」
千歌「分かってる。でも私に任せてよ」ニッ
梨子「千歌ちゃん……」 千歌「あ!心配してくれてるってことは、梨子ちゃん、入る気になってくれた!?」
梨子「…………はぁ、」
梨子「……まあ、少しだけ、興味出てきたかも」
千歌「ほんと!?やったー!!」ワーイワーイ!
千歌「この調子で九人集めるぞ〜!!」
千歌「あっ!早速果南ちゃんとよーちゃんに報告しないと!私学校行ってくる!」ガタッ
ダイヤ「おバカ。今は授業中ですわ」
千歌「ああそうだった」ストン
梨子「それに千歌ちゃん、声大きいわよ。静かにね」
千歌「はぁーい」
千歌「……あ、それより、二人とも見て!」バッ
ダイりこ「「これは……歌詞?」」
千歌「うん!私ね、スクールアイドルやりたいって思った時から作詞に挑戦してみたんだ!これを皆で曲に出来たらいいなって思うんだけど……どうかな?」
ダイヤ「……ええ、千歌さんらしい真っ直ぐな歌詞だと思いますわ」
梨子「千歌ちゃんってこんなに素敵な歌詞が書けるのね……ちょっと意外かも」
千歌「なにそれ?褒められてるの?貶されてるの?」
梨子「っふふ……褒めてるのよ」 >>269
あのSS自分も好き
平均を大幅に上回るスピィィィィィド!! 農業高校あるあるネタだけじゃなくて、G'sとか初期設定とかラ!板のネタとか色々なネタを入れ込もうとしてるので是非探してみて欲しいです ダイヤ「……さ、食べ終わったことですし……どうします?」
千歌「ちょっと沼津で遊んでこーよ!」
ダイヤ「はぁ?」
梨子「お茶して帰るーって言ってたじゃない」
千歌「なんかここで帰るの勿体なくて。……あ、もしかしてもう帰りたかったりする……?」ショモ…
ダイヤ「……まあ、……私もこのまま帰るのは何だか寂しいなと思っていたところです。折角の公欠ですし、何処か行きますか」
千歌「いいの!?わーい!梨子ちゃんは?」
梨子「もう……しょうがないわね……」フゥ…
梨子「良い機会だし、二人が好きな場所教えて?」
千歌「うん!じゃあ早速行こう!」ガタッ -----
---
千歌「はーっ、遊んだ遊んだ〜!」
梨子「そうね、結構楽しかったかも」
ダイヤ「学校もそろそろ六時間目が終わる時間ですし、長いこと遊んでしまいましたね……増援技能士の筆記試験を控えているというのに……」
千歌「まあ偶には良いじゃない!だって今日はこーんなに楽しかったんだし!私、ダイヤちゃんと梨子ちゃんと、もっともっと仲良くなれたなって思った!」
梨子「……そうね、私も楽しかったし、二人と仲良くなれた気がしたわ」
梨子「……こう思い返してみると、転校してきてから皆で遊ぶ、なんてしてなかったし」 ダイヤ「それもそうですわね、私も学校以外で千歌さんと遊ぶのは初めてですわね」
梨子「え?そうだったの?」
千歌「そっか!私確かにダイヤちゃんと学校以外で会わないかも」
ダイヤ「休日はお互い習い事や家の手伝いがありますからね」
梨子「そういえば千歌ちゃんのお家って旅館だったっけ」
千歌「そうなの!毎日のようにこき使われて大変だよ〜」
梨子「私で良ければいつでも手伝いに行くから呼んで?」
千歌「梨子ちゃん!ありがとう〜!」ギューッ
ダイヤ「……さて、そろそろ帰りましょうか」
千歌「あー、ごめん。私学校に忘れ物してきちゃった。学校戻るから先帰ってて!」
梨子「わかった、また明日ね千歌ちゃん」
ダイヤ「暗くなる前に帰るんですよ」
千歌「はぁーい!じゃあね二人とも〜!」フリフリ
千歌「…………」
千歌「………………」タンタンッ
千歌「…………」prrr… prrr……
千歌「……あ、もしもしルビィちゃん……?今から学校の近くでで会えたりしないかな?」 -----
浦の星農業高校 空き教室
ルビィ「すみません、お待たせしましたっ……」タッ
千歌「ううん、私こそ急に呼び出しちゃってごめんね……っあ!?ダイヤちゃんには何も言ってないよね!?」
ルビィ「はい、お姉ちゃんには花丸ちゃんと勉強して帰るって言ってあります」
千歌「そっかぁ……良かった〜っ……」
千歌「……それでね、ちょっとルビィちゃんに聞きたいことがあって……」
ルビィ「聞きたいこと……ですか……?」キョトン
千歌「……ルビィちゃん、スクールアイドル興味ある?」
ルビィ「……!」
ルビィ「……ぇっ、……ぁ、る、ルビィは……その……」
千歌「私、ダイヤちゃんと賭けをすることになったの」 千歌「私がダイヤちゃんと賭けに勝ったら、ルビィちゃんはスクールアイドル出来るんだよ」
千歌「私は絶対負けない。約束する」
千歌「だからその前に、ルビィちゃんの、本音を聞きたいなと思って」
千歌「……ルビィちゃんは、スクールアイドルやりたい?」
ルビィ「………………ルビィは……」
ルビィ「……ルビィ、アイドルやりたいです……っ、千歌先輩と、お姉ちゃんと一緒に……!」
千歌「……うん」クスッ
千歌「わかった。それだけ聞きたかったの。明日の放課後、緑化教室でする予定だから、ルビィちゃんも応援に来て欲しいな」
ルビィ「……はいっ」
千歌「あとこれ!」
千歌「ルビィちゃんとお話出来て嬉しかったから、今日のお礼!みかんどら焼き!」
ルビィ「……あ、ありがとうございますっ……」
千歌「うんっ、じゃあ帰ろっか!」
ルビィ「はいっ……!」 ------
----
--
放課後
浦の星農業高校 緑化棟 緑化教室
千歌「………………」
ダイヤ「………………」
果南「い、一体何で呼び出されたの……?」
曜「何?どうしたの?喧嘩しちゃったの?」
梨子「……実は、ダイヤちゃんとルビィちゃんを加入させるために賭けをすることになって……」
果南「賭け!?千歌がダイヤとの賭けを受けたの!?」
梨子「はい……私に任せてって……」
果南「千歌……」
果南「(千歌にとって、スクールアイドルはそんなに本気でやらないといけないものなの……?)」
果南「(そんなに、この学校を楽しくしたいの?)」
果南「(……どうせあと三年で廃校になっちゃうこの学校を、思い出として、残そうとしてるの?)」 >>328 付け忘れがありました
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--
翌日 放課後
浦の星農業高校 緑化棟 緑化教室
千歌「………………」
ダイヤ「………………」
果南「い、一体何で呼び出されたの……?」
曜「何?どうしたの?喧嘩しちゃったの?」
梨子「……実は、ダイヤちゃんとルビィちゃんを加入させるために賭けをすることになって……」
果南「賭け!?千歌がダイヤとの賭けを受けたの!?」
梨子「はい……私に任せてって……」
果南「千歌……」
果南「(千歌にとって、スクールアイドルはそんなに本気でやらないといけないものなの……?)」
果南「(そんなに、この学校を楽しくしたいの?)」
果南「(……どうせあと三年で廃校になっちゃうこの学校を、思い出として、残そうとしてるの?)」 超ミスりました。全然違った
正しくは >>328 ではなく >>324 の付け足しです ダイヤ「勝負は一回のみです。分かりましたね」
千歌「……分かった。何をするの?」
ダイヤ「ダウトです」
千歌「ダウト……」グッ
曜「千歌ちゃん、大丈夫かな……」
果南「どうだろう……千歌は嘘が下手だからな……」
梨子「千歌ちゃん……」
千歌「……わかった。それでいいよ」
ダイヤ「それでは始めましょう」
ダイヤ「…………善子さん、カードの配布をお願いします」
梨子「えっ?よっちゃん……?」キョロキョロ
善子「げっ……」
善子「……どうして分かったのよ」
ダイヤ「気になっていた様子だったので。もしかしてと思いまして」
善子「……あー……あー、まあ?気になっていたけど……はぁ……仕方ないわね……」
善子「……私のカード、大事に使いなさいよ」スッ…
ダイヤ「ありがとうございますわ」 善子「……ったく、……千歌、本気なの……?」コソッ
千歌「…………本気だよ」
善子「…………そう……」
千歌「……私ね、本気で浦の星を楽しい学校にしたいって思ってる」
千歌「楽しいっていうのは私だけじゃなくて、ダイヤちゃんに善子ちゃん。果南ちゃんによーちゃん、ルビィちゃんに花丸ちゃん、鞠莉先輩……」
千歌「それから……梨子ちゃん」
千歌「私は、この学校で良かったって思って欲しい。この学校が無くならなきゃいいのにって、皆に思ってもらいたい」
千歌「……その為にも、まずは第一歩、みたいな」ニッ
善子「!」
善子「あんた、本当、どこまでもバカね」
千歌「っえへへ、ありがとう」
善子「ふんっ……」フイ
善子「…………まあ、精々頑張りなさいよね。私も……期待してるんだから」ポソ
善子「──配り終わりました。始めてください」 --
緑化教室前
ルビィ「………………」
花丸「ルビィちゃん、入らないの?」
ルビィ「……ルビィは……いい……」ギュッ
花丸「でも塀の後ろに隠れてたら千歌先輩とダイヤ先輩の賭けが見られないずら」
ルビィ「……そうだけど……ルビィが行くと、千歌先輩も、お姉ちゃんも……集中出来なくなっちゃうと思うから……」
「──わっ!」
るびまる「「わっ!?!?」」ビクッ
鞠莉「おおおっと、こらこら。しーっ……ね?」
花丸「鞠莉先輩が脅かすからですっ……」 鞠莉「ごめんごめん。そんなところで何してるんだろーって思ってね」
花丸「実は、千歌先輩とダイヤ先輩が賭けをしてるんです」
鞠莉「え?何で????」
花丸「とにかくっ、鞠莉先輩も隠れてください」グイッ
鞠莉「お、おおっと……意外と強引ね……それで?」
ルビィ「千歌先輩が、ルビィの為に賭けに勝ってくるから応援して欲しいって……」
鞠莉「な、何でルビィの為にダイヤと千歌っちが賭けしてるの……??」
花丸「色々ありまして」
鞠莉「うん、そうね。私の知らないところで私の知らない何かが繰り広げられていることは分かるわ」 ルビィ「……二人とも、ルビィの為って……思ってるから……」
鞠莉「だから、応援しに行かないの?」
ルビィ「…………」
鞠莉「私はね、別にそれでも良いんじゃないのかなって思うわよ」
るびまる「「……え?」」
鞠莉「ルビィはルビィなりに色々気を遣って、そうやって隠れているんでしょう?でも、隠れてるだけでしっかりこの場に来てるじゃない」
鞠莉「応援してないように見えるかもしれないけど、この場に居る誰よりも一番ルビィが応援していると思う。だから別に後ろめたい気持ちになる必要は無いのよ」
ルビィ「……鞠莉先輩……」
鞠莉「信じましょう、千歌っちを」
ルビィ「…………はい」コクリ --
ダイヤ「7」スッ…
千歌「……っ……」ペロッ
千歌「……8、」スッ…
ようかなよし「「!」」ハッ
善子「(……このバカ……)」
果南「(……自分じゃ気が付いてないかもしれないけど……千歌、嘘つく時に唇舐める癖あるんだよ……)」
曜「(ああああああっ……どうなっちゃうのぉ……)」オロオロ
ダイヤ「……千歌さん、喉が渇いてますの?」
千歌「……え?な、なんで?」
ダイヤ「唇が乾燥していたようでしたから。……お水でも飲んで来ます?」
千歌「あ、あはは〜……そうしようかな?ちょっと冷水機でお水飲んで──」ガタッ
ダイヤ「ダウト」
ようかなよしりこ「「「「!!!」」」」 ダイヤ「千歌さん、先程のカードは8ではありませんでしたね」
千歌「……どうして?」
ダイヤ「唇を舐める癖……千歌さんが嘘をつく時、毎回そうしているのです」
千歌「……なるほどね。それじゃあ、カードを確認して」
善子「ちょっ!?あんた少しは嘘ついたことくらい隠しなさいよ!?」ギョッ
ダイヤ「……ええ、そうさせて貰いますわ」スッ…
ダイヤ「──っえ……?」
善子「う、嘘でしょ……」
果南「こんなことってある……?」
曜「ど、どうして……どうして本当に8のカードなの!?」 千歌「昨日からずっと考えてたんだ。どんなゲー厶が来てもいいように、戦い方は考えようって」
千歌「まず私の弱点を考えてみたの。私は嘘が下手。賭け事に関して、嘘が下手だと絶対に勝てない」
千歌「だから昨日は、”嘘をつく”練習をしたの」
-
果南『千歌、今嘘ついたでしょ』
千歌『え”っ……何で分かったのー?』
果南『千歌、嘘つく時絶対唇舐めるからね』
-
千歌「昔果南ちゃんが私に千歌は嘘が下手だねって言った時のこと思い出してね」
千歌「去年一年間一緒に過ごしてきたダイヤちゃんでも分かるんじゃないかと思って仕掛けてみたんだ」 梨子「………………」ゴクリ…
梨子「(千歌ちゃん……本気なんだ……)」
ダイヤ「……っ……分かりました……ここに置かれたカードは私が貰います」
ダイヤ「ですが勝負は手札のカードが無くなるまで。まだ負けではないですわ」
果南「(ダイヤの手元には積まれたカードが沢山ある……奇跡が起きない限り、勝ち目は無さそうだけど……)」チラッ…
千歌「………………」
果南「(今まで素直で純粋な千歌の嘘を見抜けなかったことなんて無かった。……なのに今は──)」
果南「(千歌が何を考えてるのか分からない……千歌が、怖い……)」 曜「(……千歌ちゃん……カッコイイ!)」キラキラ
ダイヤ「次こそ……っ……」
ダイヤ「9……」
千歌「……んーっと、……あった。10」パサッ
ダイヤ「……J」パサッ
千歌「……Q」
ダイヤ「K……!」
千歌「──ダウト」
千歌「ダイヤちゃん、今の嘘だよね」
梨子「えっ……!?」
善子「は、はぁ!?何してんのよこいつ!?何処に嘘ついた要素があったのよ!」 果南「!」ハッ
果南「(目だ。千歌、ずっとダイヤの目を見てた。……嘘をついてたら、直ぐに揺らぐのが分かるんだ)」
ダイヤ「…………っ……」
千歌「ダイヤちゃん、カード、確認してもいい?」
ダイヤ「……っ、……」グッ
曜「ダイヤ先輩……?」
ダイヤ「……黒澤家に相応しいのは、常に勝利のみ……」
ダイヤ「…………ルビィ、すみません……私は黒澤家の長女失格です……」パラッ…
梨子「カードは、……A……」
ダイヤ「……千歌さん。貴女の勝ちですわ」
千歌「……で、でもまだダイヤちゃんの手札は残って……」
ダイヤ「……いいんです。時には相手の戦意に敬意を示すことも大切ですから」
ダイヤ「……約束通り、ルビィをスクールアイドルにしてあげてください」
ダイヤ「ルビィを、よろしくお願いします」 曜「!やったぁ!これでルビィちゃんもスクールアイドルになるんだね!」パアァッ
千歌「……ダイヤちゃんもだよ」
ダイヤ「……えっ……?」
千歌「約束通り、ダイヤちゃんもスクールアイドルになるんだよ!今から誤魔化したって無駄だぞ〜!」
ダイヤ「えっ!?わ、私はそもそもスクールアイドルなんて──」
千歌「捕まえた〜っ!」ギューッ
ダイヤ「ちょ、ちょっと!離しなさいな!」
千歌「やだ!ぜ〜ったい離さないぞ〜!」ギュムッ
ダイヤ「千歌さん!ちょっともう!」
千歌「(……私ね、ダイヤちゃんとルビィちゃんがスクールアイドル一緒にやってくれることもすっごく嬉しいけど……)」
千歌「(何より……ダイヤちゃんを騙して、引っ掛けた私の戦意に敬意を示すって言って、降参してくれたダイヤちゃんの優しさに触れられたことが一番嬉しいんだ)」
千歌「(賭け事じゃ私は勝てない。ダイヤちゃんは、……きっと私に態と負けてくれたのかなって、そう思うんだ)」 やっと課題から開放されたので少しずつペースを上げて更新していきます ---
ワイワイ
鞠莉「あら、千歌っちが勝ったみたいね」
花丸「良かったなぁ、ルビィちゃん!千歌先輩が勝ったって!」
ルビィ「……っえ?」
ルビィ「(お、お姉ちゃんが……負けたの……?)」
ルビィ「…………」ソローリ
千歌「ダイヤちゃーん!」ギューッ!
ダイヤ「ちょっと!もういい加減離れなさいな!果南先輩も何か言ってやってください!」
果南「まあ千歌楽しそうだし良いんじゃない?」
ルビィ「……ほんとに……お姉ちゃんが負けちゃったんだ……」ポソッ 善子「ちょっと。さっきからそんなところで何してるの?」
ルビィ「わ、あぁっ!?」ビクッ
花丸「あ!善子先輩っ、何でオラ達が居ることに気が付いたんですか?」
善子「私からは丸見えなのよね……鞠莉先輩の輪っか」🫵
鞠莉「わっか? ……ああ、髪の毛?」
善子「千歌とダイヤが賭けをしてる間もぴょこぴょこ動いてるから何かと思いましたよ」
鞠莉「Sorry。私のせいでバレちゃったみたい」テヘペロ
花丸「Sorry、じゃないんですよ……」
ダイヤ「る、ルビィ……どうしてここに……」
ルビィ「……ごめんなさい……気になって、見に来ちゃってた……」
ダイヤ「……謝るのは私の方ですわ、……ごめんなさい。ルビィ……」
ルビィ「ど、どうしてお姉ちゃんが謝るの……?」
ダイヤ「黒澤家の長女として、……情けないことをしてしまいました……」
ダイヤ「私も、……千歌さんが本気でやろうとしているところを見て、段々、私もやってみたいという気持ちが出てきて…」
ダイヤ「……すみません、ルビィ……」
ルビィ「お姉ちゃん……」 鞠莉「……ダイヤは勝負に負けたことを謝ってるんじゃなくて、ルビィの姉としてかっこ悪いことをしてしまったことに謝っているのよ」
果南「ルビィちゃん、どうする?ダイヤにお仕置しちゃう?」
ルビィ「……お姉ちゃん……あのね、ルビィ……」
ルビィ「ルビィ、お姉ちゃんとアイドル出来たらいいなって……ずっと思ってたの……」
ルビィ「お姉ちゃんとやりたくて、曜ちゃんにも、ルビィが入るの待ってって……」グスッ
ルビィ「ルビィ、お姉ちゃんとやりたい……っ……お姉ちゃんと、千歌先輩と、皆でやりたい……」ポロッ…
ルビィ「千歌先輩が勝ったって聞いた時……少しだけほっとしちゃったの。これでお姉ちゃんとスクールアイドル出来るんだって……」
ルビィ「だから……ルビィもごめんなさい……お姉ちゃんを応援しないといけなかったのに……」ポロポロ…
千歌「……ルビィちゃん……」 ダイヤ「……ルビィ」ギュッ
ルビィ「ごめんなさい……ごめんなさいお姉ちゃん……」ギュウゥ……
ダイヤ「……一緒にスクールアイドル、頑張りましょうね」
ルビィ「……っうん……!」
鞠莉「……一件落着ってことね。良かったじゃない」
千歌「そうですね……これで五人!私と果南ちゃんとよーちゃんと、ルビィちゃんとダイヤちゃん!五人になったよ〜!」ワーイワーイ! 善子「……スクールアイドル、ね……」ポソッ
花丸「善子先輩、興味あるんですか……?」
善子「ぅぐ……き、聞こえてたの?」
花丸「……はい。オラも、……少しだけ」
善子「……ああ、そういえば花丸も誘われてたって言ってたわね」
善子「……やるの?スクールアイドル」
花丸「まだ考えてる途中ですけど……ルビィちゃんも居るならやってみようかなって、……でもオラ、運動苦手で……」
善子「やってみたらいいじゃない。貴女、きっとアイドルとか似合うんじゃない」クスッ
花丸「!」カアァッ
花丸「……は、はい……まだ考えてる途中なので……」ポフッ
善子「な、何で顔隠すのよ?」
花丸「内緒です」 果南「あれ、梨子ちゃんはまだメンバーじゃないの?」
梨子「はい、一応、考えてるところで……」
曜「梨子先輩も一緒にやりましょ〜よ〜っ!!」グイグイ
梨子「うーん……どうしようかな……」
果南「やりたいかやりたくないかで言ったらどっちなの?」
梨子「それは、まあ……」
梨子「…………やりたい、ですけど……」
果南「ふ、ふーん……」ニヘラ
ようりこ「「(嬉しそう……)」」 千歌「あ!鞠莉先輩、あの──」
鞠莉「あ、ごめん。私、今から同好会行かないといけないから」
鞠莉「また明日」フリフリ
千歌「ぁ……、はい……」ショモ…
鞠莉「(私の知らないところで色々な事が起きてるわね〜)」スタスタ…
鞠莉「(……というか、スクールアイドルって……何の話かしら……)」 ヨハネが原作以上にイケメン化してて捗りますね。よしりこもよしまるも楽しみ ------
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翌日 緑化棟 実技試験練習場
授業:造園技術
白津「今日から造園技能検定の、実技試験の練習を行います」
毎年浦の星農業高校緑化科の二年生が受けることになっている造園技能士試験3級。
この試験は学科試験と実技試験に分けられ、両方の試験に合格する必要があります。学科試験は、正誤法による問題と4肢択一式問題があわせて出題されています。
実技試験は実際に課題を作成する作業試験と樹木の枝を見て樹木名を判定する要素試験に分けられ、共に合格しなければなりません。
学科と実技の両方の試験に合格すると、「技能士」の称号が与えられます。1級は厚生労働大臣の、2・3級は都道府県知事名の合格証書が交付されます。
合格率は70%程度。 技能検定試験の中でも難易度は低めで、造園を学ぶ学生ではほとんどが合格しているとの情報もあります。 とはいえ、学科試験と実技試験の両方に合格する必要がありますから、暗記すれば合格できる試験ではないということも心得ておく必要があります。
実技試験は図面通りに竹垣製作、縁石・敷石敷設、植栽、整地・清掃を行います。
https://imgur.com/a/ii4Y6vf
https://imgur.com/a/1W6ZKwR 白津「それでは今から一緒にやりながら説明していくので、まずはこの剣スコップを使って土を掘り返して、土を柔らかくしていきましょう」
千歌「えっ……全部掘り返すんですか?」
白津「はい。土を柔らかくすると作業がしやすくなるんでね。早速始めてください」
梨子「……ふ、ふんっ……!」ガツンッッ
梨子「い、いったぃ……土相当硬いわよこれ……」
ダイヤ「わ、私も負けませんわ!」ガツンッッ
ダイヤ「痛い!!土硬すぎですの!!」
白津「一年間手を付けてない土ですからね。硬くもなります」 千歌「ふんっ!……ふんっ!」ガッ ガッ!
梨子「千歌ちゃんすごい……」
千歌「こういうのは腰を落として、剣スコを地面に刺す感じでやったら上手くいくよ〜!」
千歌「あとはね、こう斜めに剣スコを立てて……こう!」ガッ!
千歌「ここを思いっ切り踏み込むと地面に刺さるから、剣スコをこうやって倒すと……」ボコッ
千歌「こうやって土が掘れるの!簡単だからやってみて!」
梨子「わ、分かった……えいっ!」ガッ!
梨子「ふ、ふんっ……!」ボコッ
梨子「で、出来た……、出来たよ千歌ちゃん!」パアァッ
千歌「うん!梨子ちゃん上手上手!」
ダイヤ「ふんっ……!ふんっ……!」ガッ ガッ!
千歌「あ!ダイヤちゃんも上手になった!すごいね〜!」 数十分後
白津「──よし、大体の人が土を掘り返せたようなのでこのこうがい板を使って整地していきましょう」
千歌「うぅ……私こういう作業苦手……」サッサッ…
梨子「確かに難しいよね……」サッサッ…
千歌「難しいんじゃなくて面倒臭いんだよ〜」
千歌「……って、そんなこと言って、梨子ちゃん上手じゃん!」サッサッ…
ダイヤ「…………」サッ…サッ…
千歌「あー!!梨子ちゃん見て!ダイヤちゃん、ジョレン使ってる!ズルい!」
ダイヤ「ズルではありませんわ。借りたんですの」
千歌「ひとりだけ!?ズルすぎるよ!」ムキーッ
山崎「梨子も終わらなさそうやな。はい」スッ…
梨子「あ、ありがとうございます」
千歌「梨子ちゃんまで!?私は!?」
山崎「千歌はこういうの一瞬で終わるやろ」
千歌「終わるけど!終わるけど〜っ!!!」 白津「今度は一人一本、丸太の柱を持って広いところに出てください。ノコは腰に付けてると思うので、そっちを使うようにしてください」
梨子「千歌ちゃん、ダイヤちゃん行こう」
ダイヤ「わかりましたわ」
千歌「よっと、よーっし!切るぞ〜!」 めっちゃ面白い
先輩善子とか文学少女マルが絶頂してしまう 白津「よし、全員居るな」
白津「最初、大体3センチくらいの厚さで柱の天端を切り揃えます」
梨子「な、何で切り揃えるの?」
ダイヤ「柱が真っ直ぐ切れているのかも審査の基準となるんですわ。手を付けていない柱は真っ直ぐ切られているのが当たり前。切らないとズルになってしまうでしょう?」
梨子「な、なるほどね……」ギコギコ…
千歌「あー!みて!斜めになっちゃった!!」
梨子「ど、どんまい……」 白津「次にこの柱を図面に書いてある900ミリ……90センチのところに印を付けますが、これよりも少し長めに切ります。巻尺は道具箱に入ったものを腰につけていると思うので、それを使いましょう」
白津「道具箱の中に赤鉛筆も入っていたと思うのでそれで印をつけてください」
梨子「80……90……よし、ここね」スッスッ…
千歌「梨子ちゃんえんぴつ貸して〜」
梨子「ええ?千歌ちゃんの道具箱にも赤鉛筆入ってたでしょ?」
千歌「芯が潰れてたんだよ〜…これじゃ何にも書けないもん……」
梨子「あ、ほんとだ……これは酷いわね……ダイヤちゃんも見て、これ酷──」チラッ
サッ…サッ…
ダイヤ「………………」サッ…サッ…
千歌「剪定バサミでえんぴつ削ってる……」
梨子「これがもし本番の試験だったら時間切れになるやつね……」 千歌「……はい、梨子ちゃんありがとう。私達は印もつけたし早く切っちゃお」
梨子「そうね、他の人はもう切り終わってるし、急ぎましょ」
千歌「うおおおおおっ!!私が一番になるぞ〜!!!」ベコンベコン
ダイヤ「情けないですわね!ノコが踊ってますの!」ベコンベコン
千歌「えっちょっとなにこれ」ベコンベコン
ダイヤ「ああもう上手く切れないですの!」ベコンベコン
梨子「ふ、二人とも一旦落ち着こっか……」ギコギコ…
白津「おー、切り終わったかー」
千歌「や、やば!急ご!」ギコギコ! ギコギコ! 白津「次は自分のところに戻って図面通りに柱を設置していきます」
白津「図面を見ながら長さを測定したところにピンポールを二本立てて、ダブルスコップで土を掘ります」ザッカ ザッカ
白津「大体掘ったらですね、柱を入れて、90センチピッタリ合うように土の量を調節しながら柱を設置してください」
白津「この時、先程立てたピンポールを抜いて掘った穴へ橋になるように置くと線に合っているのか確認することが出来ます」
千歌「よくわかんないね〜」
ダイヤ「やってみるしかなさそうですわね」 梨子「……あれ……深く掘り過ぎちゃったみたい……」
山崎「土を足せばいいんだよ」サッサッ…
山崎「それからつき棒で突いたら良い感じに高さが出るから、そんな感じで調節していったらいい」
梨子「ありがとうございますっ、……なるほど、つき棒で……」
ダイヤ「………………」トントンッ トントンッ…
ダイヤ「どうです!?高さはバッチリですの!」
山崎「ああ。じゃあその調子で真っ直ぐ据えてみろ」
ダイヤ「勿論ですわ!私にかかればこのくらい余裕ですの!」トントン! トントン!
梨子「ダイヤちゃん凄いやる気ですね……」
山崎「ダイヤは割とこういう実技の授業好きだからな。座学もしっかり話を聞いてたりはするけど、何だかんだイキイキしてるのは実習の時だし」
千歌「山崎せんせー!梨子ちゃーん!ダイヤちゃーん!見てー!」 千歌「ピサの斜塔」バーンッッ
With 斜めに据えられた柱
山崎「落ちたな」
ダイヤ「技能試験不合格ですわね」
梨子「先生(審査員)の前でそれは……」
千歌「先生これ据えてる途中から動かなくなっちゃったんですけどどうしたらいいんです?」
山崎「木槌で叩いたらええやん」コンコンッ… ごめんなさい!おサボりします
明日には全員集めたいです 気長に待つから好きなときに書いてくれたら良いわ
保守は任せてくれ >>374 ありがとうございます
嬉しくて涙が止まらないです 優しい人が多くて心があったまりました
本当にありがとうございます 千歌「おおおすごい!さっきまでビクともしなかった柱が動いた!!」
山崎「本当は据え付ける時に調節しないといけないんだけどな。ほら、水平器で測ってみろ」
千歌「うおおおおおすげー!!!水平だ!!!梨子ちゃん梨子ちゃん見て〜!!」
ダイヤ「うるさいですわよ」
梨子「う、うん、……すごいねー」
山崎「梨子、ウザイ時はウザイって言っていいんだぞ」
ダイヤ「大体貴女、天端切り揃えた時物凄く斜めってたではないですか」
千歌「ありゃほんとだ……めっちゃずれてる……」
梨子「千歌ちゃんはまず真っ直ぐ切れるようにしないとダメね……」
千歌「し、仕方ないじゃん?すっごい急いでたんだし!」
白津「二本立て終わったか〜」
ダイヤ「先生が異次元レベルで進めていきますわね……」
梨子「着いて行くのに精一杯で作業に集中出来ないわ……」
ダイヤ「とにかく急ぎましょう」 ---
一時間後
キーンコーンカーンコーン
千歌「ああ!やばいチャイム鳴っちゃったよ!」
梨子「次国語でしょ?間に合うかしら……」
白津「道具箱と使った工具はシャッターの部屋に片付けて行ってください。それでは授業終わりまーす」
ダイヤ「あと10分で着替えて教室に戻らないといけないのに片付けまで……」
梨子「これ間に合わないわね……」
千歌「ふたりともダブルスコップと剣スコ貸して。私が片付けてくる」
ダイヤ「ありがとうございます。なら千歌さんの道具箱は私が持っていきますわ」
千歌「あ、つき棒も持てそう」プルプル…
ダイヤ「流石に死にますわよ。私と梨子さんで持っていくので早く行ってくださいな」
千歌「はぁい……お願いしま〜す」プルプル…
梨子「…………あれ本当に大丈夫なの……?」
ダイヤ「…………さぁ?」
ガッシャーンッッ
山崎「おい、何の音だー」
千歌「ぎゃー!!!全部落とした!!!全部落としたー!!!!」
ダイりこ「「…………はぁ……」」 ----
緑化科 教室前
キーンコーンカーンコーン…
国語教師「…………誰も、居ない……」
国語教師「というか、鍵も閉まってる……」
国語教師「前の時間が実習なのかな……帰ってきてないみたい……」
国語教師「…………」キョロキョロ
国語教師「ちょっとだけ、ちょっとだけ……」タプタプッ
国語教師「………今流行りのスクールアイドル………」
国語教師「私も、……もう少し遅く生まれてたら出来たのかな……アイドル……」
千歌「何見てるんですか?」ヒョコ
国語教師「ああ、高海さんこんにちは。これは今流行りのスクールアイド──って高海さん!?!?」ビクッ 千歌「小泉先生、何か見てたから気になっちゃって!」ニシシ
小泉「そ、そう……あ、前の時間、実習だったの?」
千歌「はい、片付けもしてないのにチャイム鳴っちゃって……皆まだ着替えると思います」
小泉「そうだったんだ、お疲れ様だね。……それにしても……高海さん速いね……」
千歌「私は今日お昼が食堂なので……見てください!手作りチキン買ったんです!」バーンッ
小泉「わ、良い匂い……私もお腹空いてきちゃうなぁ……」
千歌「あの!さっき先生が見てたのって、スクールアイドルの動画ですよね!」
千歌「先生、スクールアイドル好きなんですか!?」キラキラ
小泉「す、好きっていうか……まあ……好き、なのかなぁ……」ムムム… 千歌「私、文化祭でスクールアイドルする予定なんです!」
小泉「高海さんが……?」
千歌「はい!もし成功したら先生も感想聞かせてくださいね!」
小泉「高海さん……」
千歌「……あ、ごめんなさい。教室の鍵取ってくるの忘れちゃいました……ちょっと職員室行ってきます!」タッ
小泉「ああ、廊下は走っちゃダメだよ〜っ!」
小泉「…………高海さんが、スクールアイドル、かぁ……」 ----
昼休み
緑化科 教室前
善子「…………」チラッ…
善子「………………」キョロキョロ
梨子「何してるの?」
善子「ぎゃっ!?」ビクッ
善子「な、なんだ……梨子か……」
梨子「お、驚かせちゃってごめんね?……一体何してたの?」
善子「ねぇ、千歌居ない?」
梨子「千歌ちゃん?千歌ちゃんならチキン三つ目とアイス買いに食堂に行ったよ」
善子「どんだけチキン食べてんのよ……」
千歌「あー!善子ちゃんじゃん!どうしたの?」
善子「…………ふん……」スタスタ 善子「千歌」スッ…
千歌「……なにこれ?黒い羽根?」
千歌「あー!分かった!これカラスの羽でしょ?拾ったらダメだよー、バイ菌だらけだから──」
善子「カラスの羽じゃなくて買ったのよ!!!!!!」
千歌「買ったの?羽を?なんで?」
善子「うっさい!!」
善子「これは契約よ。堕天使ヨハネとしての私を、スクールアイドルへ加入──」
千歌「よはね?あー!あったね!そんな設定!」
善子「設定言うな!」 善子「……と、とにかく……後輩も出来て、先輩とも知り合って……私の中の堕天使を制御しないといけない場面ばかりだったの……」
善子「だからこそ……こうして堕天使ヨハネとしての私を、解放したい……っ!堕天使ヨハネとして、千歌と一緒にステージに立ちたいの!」
千歌「ええっと……つまり……それは……」ムム…
千歌「一緒にスクールアイドルやってくれるってこと!?」ハッ
善子「そう言ってるでしょ!察し悪いわね!!」
千歌「そうは言ってなかったよね」
善子「ほんとウザイわねあんた」 ダイヤ「こんな廊下のど真ん中で何をしているのかと思えば……」
千歌「ダイヤちゃんダイヤちゃん!善子ちゃんスクールアイドルやってくれるって!」
ダイヤ「えっ、本当ですの?」
善子「………………」
-
花丸「……オラ一人で入ります〜って言うのは中々……千歌先輩もオラを誘ったこと忘れちゃってるんじゃないかなって……」
善子「……じゃあ、私が入ったら入って来れる?」
花丸「えっ?」
善子「明日の昼休み、私がチャンスを作るから、花丸はそれに乗っかってきなさいよ」
-
善子「……まあ、色々考えてね……」 「ほら頑張って花丸ちゃん!」
「う、うんっ……頑張ってマルちゃん!」
「お、オラには無理ずらぁっ……」
千歌「この声……もしかして!」パアァッ
花丸「わわっ、曜ちゃん押さないでぇ……」ピェェ…
梨子「あら、花丸ちゃん!」
花丸「こ、こんにちは……」ペコ
曜「千歌ちゃん!捕獲して来ました!」ビシッ
千歌「よーちゃん!よくやった!」ビシッ
ダイヤ「なんとまぁこんな強引に……」呆
ルビィ「ご、ごめんなさい……ルビィもどうしてもマルちゃんにスクールアイドルして欲しくて……」 花丸「お、オラは別に……アイドルなんて向いてなくって……」
善子「やってみたらいいじゃない」
花丸「……えっ……?」
千歌「そうだよ!善子ちゃんの言う通り!」
千歌「一番大切なのは自分に向いてるかとか、出来るかどうかじゃない」
千歌「やりたいかどうかなんだよ!」
梨子「千歌ちゃん……」
千歌「うおおおお今良いこと言った!良いこと言ったよね!」
曜「よっ!出ました名言!!」
善子「台無しね」 花丸「……でも、オラは……」
善子「……良いんじゃない。やってみて、やっぱり自分には向いてないって思ったらまた考える。やってないことを向いてないって諦めるよりはずっと良いと思うけど?」
花丸「……善子先輩……」
善子「それに花丸、こんなに可愛いんだしね」フッ…
花丸「な、なあぁっ!?」カアァッ
花丸「こ、これが沼津に住んでる人の輝きっ……眩しい……オラには眩しいよぉ……」顔隠し
善子「い、意味分かんないんだけど……」
千歌「それでそれでっ、花丸ちゃん!スクールアイドルやってくれるの!?」
花丸「………………」ゴクリ…
花丸「オラにも……出来ますか……?」
千歌「私だって自分はアイドルなんか向いてないって思うよ。でも、やっぱり大切なのはやってみたいって気持ち!」
千歌「花丸ちゃんが少しでもやってみたいって思うなら、私は心から歓迎するよ!」スッ…
花丸「…………やってみたいって気持ち……」チラッ
善子「…………ん、」ニコ
花丸「……それなら……よろしくお願いします」ギュッ
千歌「えへへ、ようこそ花丸ちゃん!」ギュッ 曜「…………梨子せんぱぁぁい……」ウルウル…
ルビィ「……まだ入る気にならないですか……?」ウルウル
梨子「ぅ”っ……」💘
梨子「……ち、違うのよ……?別に入る気にならないというか……そういうのじゃなくって……」
梨子「……まだ、勇気が出ないの。……やっぱり私も何処かスクールアイドル…アイドルに対して引け目を感じてる」
梨子「……私なんかがアイドルしていいのかなって、ずっと考えてたら……気が付いたらもうあと私と鞠莉先輩だけになってて……」
梨子「中々、言い出すタイミングも無くて……」 ダイヤ「……梨子さんはやりたいんですの?」
梨子「それは……勿論……」
ダイヤ「だったらそれでいいではないですか。考えるのは後にして、今は前進あるのみ」
ダイヤ「そう思いませんか?」フッ…
梨子「ダイヤちゃん……」
梨子「……後で千歌ちゃんに話してみるね」
梨子「ありがとう、ダイヤちゃん。曜ちゃんもルビィちゃんもありがとう」
曜「いえ!早く一緒にスクールアイドルしたいので!」ニパ
キーンコーンカーンコーン
ルビィ「あぁっ!掃除始まっちゃう!曜ちゃんマルちゃん、早く戻ろうっ……!」アワアワ
花丸「も、もうそんな時間ずら!?」アワアワ
曜「急げ急げ〜!」タッ
ルビィ「怒られちゃうよぉ〜っ」タッ
花丸「先輩方、失礼します」ペコ
花丸「待ってよルビィちゃん曜ちゃ〜ん!」タッ >>367
ベコンベコンめっちゃわかる
なかなか刃が入っていかないのよね -----
五、六時間目
緑化棟 製図教室
授業:造園計画
千歌「………………」ムムム…
梨子「あ、あの……千歌ちゃん……」
千歌「ちょっと待って……あと少し……あと少しだから……」スススッ…
千歌「こうだ!絶対真っ直ぐ線引けたでしょこれ!」パッ
ダイヤ「有り得ないくらい斜めですわよ」
千歌「ちくしょおおおおおおっ!!!!」ダンッ
白津「こら高海。製図台叩きませんよ」
千歌「は、はぁい……」
白津「ドラフターの製図台は30万円以上しますからね。壊さないでください」
千歌「わ、わかってまぁす……」
千歌「……もう……本当ムカつくなぁこれ……」ムムム…
緑化科、二年生は資格取得が多く、七月と八月には国家資格である造園技能検定、九月頃にはトレース技能検定を取得する予定となっている。
造園計画はそのふたつの中のトレース技能検定の取得を目指して、授業の中で製図台を使用し、トレース技能検定3級の課題を練習している。
梨子「ち、千歌ちゃん、あのね……」
千歌「あと少しで完成するから……ちょっとだけ待ってて」ニッ
千歌「……この丸いところが一番難しいんだよねぇ……」スススッ…
梨子「…………」ガタッ
千歌「えー!梨子ちゃんもう終わったの!?」
梨子「うん。実は前回終わってて……」 千歌「は、速いなぁ……流石美術部……」
梨子「それ関係ある……?」
ダイヤ「トレース検定の三大原則は「正しく」「速く」「美しく」ですからね。速いのは良いことですわ」
千歌「ダイヤちゃんまだ一枚目でしょ〜?そろそろ終わらせないと怒られちゃうよ〜」
ダイヤ「い、良いんですの!気になるところばかりで……」
梨子「……んー……綺麗だと思うけど……」
ダイヤ「本当ですの!?」パアァッ
梨子「え、う、うん?綺麗だよ?」
ダイヤ「……な、なら一旦これで提出しましょうかね……」ガタッ
千歌「あ!!待って!私も!!私ももうすぐで終わるから!」
白津「高海」
千歌「はいごめんなさいちょっと黙ります」 梨子「……先生、終わりました」サッ
ダイヤ「私もですわ」サッ
白津「はい、お疲れ様です」スッ…
白津「……うん、二人ともよく書けてますね。桜内はここの部分が少しはみ出ているのでこれを気を付けて書きましょう」
白津「黒澤はこの円の部分ですね。少し歪んでしまっているので綺麗に書けるようにしましょうね」
千歌「せんせー!私も出来ました!」
白津「どれどれ……」ジィィ…
梨子「ち、千歌ちゃん上手い……」
ダイヤ「……ええ、悔しいですけど上手いですわ……」
白津「高海は割とこういうの得意ですからね。よく書けました」
千歌「えへへ、ありがとうございます!」 白津「それじゃあ桜内と高海は三枚目、黒澤は二枚目を書きましょう」ピラッ…
ちかダイりこ「「はーい」」
千歌「いやぁ、なんか細かい作業だから頭痛くなるけど楽しいよねトレースって」
ダイヤ「そうですわね。何より集中力も鍛えられますし」
梨子「……ねぇ、千歌ちゃん。ちょっと話があるんだけど……」
千歌「ああ、そう言えば言ってたね!どうしたの?」
梨子「……耳貸して」
千歌「んー?」ススッ…
梨子「わ、私も……スクールアイドル、やってみたいなって……」ボソッ
千歌「え!!!!!!やってくれるの!!!」クソデカ声
白津「高海」
千歌「す、すみませぇん……」 千歌「……それで、本当にしてくれるの?」コソッ…
梨子「……うん。折角誘ってくれたんだし……皆もやるって言ってたから、私もやりたくなっちゃった」
千歌「り、梨子ちゃぁん……」ウルウル
千歌「梨子ちゃんだーいすき!!!!」ギューッ!
梨子「わっ、ちょっと危ないわよ!」グラッ
ダイヤ「ちょ、大丈夫ですの!?倒れますわよ!」
千歌「だって、だって嬉しいんだもん!!!」
白津「高海。桜内。黒澤」
ちかダイりこ「「「はい。すみませんでした」」」 -------
----
--
放課後
千歌「ダイヤちゃん梨子ちゃん帰ろ〜!」
梨子「ごめん、私今日部活があって……」
千歌「そっかぁ……梨子ちゃん美術部入ったばっかだもんね……忙しいかぁ……」ショモ
ダイヤ「私も部活ですわ」
千歌「えっ、華道部も?……そっかぁ……」
梨子「千歌ちゃん先帰っていいわよ」
千歌「うーーん…………ぁ、私畜産棟に遊びに行ってくる!なんか久々に動物触りたくなっちゃって!」
千歌「もし時間が合えば一緒に帰ろ!」
ダイヤ「また善子さんと鞠莉先輩の邪魔をしに行くだけでしょ?全く……」ハァ…
千歌「ま、まあ間違っては無いけど……」 梨子「鞠莉先輩勧誘しに行くの?」
千歌「うん!よく考えたら鞠莉先輩にまだ言ってなかったから言いに行こうと思って!」
千歌「せっかく皆やりたいって言ってくれたんだもん、……絶対成功させたい」
梨子「……そっか」
千歌「っていうことで、鞠莉先輩を誘ってきます!二人とも、部活頑張ってね!」ニッ
千歌「じゃーねー!」ブンブン
梨子「い、行っちゃった……」
ダイヤ「騒がしい人ですね……」
梨子「……千歌ちゃん、そんなにスクールアイドルが好きなのかな……?」
ダイヤ「……あの人はスクールアイドルが好き、と言うよりはこの学校が好きなんでしょうね」
梨子「学校が?」 ダイヤ「ええ。浦の星は人が少ない田舎町にありますけど……こんなに自然が豊かで、人も優しくて、様々なことを経験させてくれる……そんな学校は中々ありませんの」
ダイヤ「……千歌さんは、そんな浦の星が大好きなんです。無くなっても仕方ない、なんて言い方していますけど、この学校で誰よりも廃校になって欲しくないと願っています」
ダイヤ「……だからこそ、せめて思い出だけでも残したいのでしょう」
梨子「……そっか」
梨子「千歌ちゃん、とっても良い子ね」
ダイヤ「……ええ、本当に」フッ… ----
畜産棟
鞠莉「──スクール、アイドル……」
千歌「はい、鞠莉先輩も興味無いかなって。善子ちゃん達もメンバーになってくれるって言ってたし、……鞠莉先輩も……」
鞠莉「Sorry。そういうの興味無いの。それじゃあ、私は同好会の仕事があるから」
鞠莉「……じゃあね、千歌っち」
千歌「……はい……」
鞠莉「……………………」スタスタ…
鞠莉「……………………」スタスタスクスタ… 鞠莉「(うわあああなんで断っちゃったんだろおおおおっ……)」頭抱え
鞠莉「(そりゃ…まあ最初は私だけ誘われなくって……ダイヤと千歌っちが賭けをした時に初めて知ったくらいだし……ちょっと寂しかったけど……)」グスン…
鞠莉「(あそこで強がるんじゃなかった〜っ!)」
鞠莉「(私も皆とアイドルした〜い!曲作ったり振り付け作ったり衣装作ったりして青春した〜い!)」
鞠莉「(こんな泥まみれの実習服より可愛い衣装が着たい〜!!!!)」
千歌「あっ、鞠莉先輩っ」タッ
鞠莉「なぁに、千歌っち。何度も言うけど私はスクールアイドルなんて──」キリッ
千歌「いえ!実習服にカナブン付いてました!」ヒョイッ
鞠莉「あ、あー……カナブン……カナブンね……」
鞠莉「(……ホントに嫌〜っ!!!!!!!)」 ----
校舎 自動販売機前ベンチ
千歌「だあああっ……ダメだぁ……」ドサッ
善子「そこ汚いわよ」
千歌「善子ちゃんからも何とか言ってよ〜……鞠莉先輩、あの調子じゃ絶対入ってくれないよ」
善子「……さぁ、あの人のことだし強がってるだけじゃないの?」
千歌「そんな訳無いじゃん。絶対入らないよあれ……」
善子「ふぅん……」グイッ
千歌「よしこちゃ〜ん……そのジュースおいし?」
善子「普通。特別美味しくもないし不味くもない」
千歌「ふーん……ねー、どうしたら鞠莉先輩入ってくれると思う?」
善子「全員で押しかけたらいいんじゃない?」
千歌「全員で?」 ごめんなさい頑張ろうと思ってたけど眠過ぎるので今日は一旦寝ます。起きたら頑張ります 善子「さっきも言ったでしょ。あの人、ただ強がってるだけなのよ。全員で押しかけたら尻尾出すでしょ」
千歌「善子ちゃんかしこーい!」
善子「あんたがアホなだけよ」
千歌「それより善子ちゃん、今日は同好会行かなくてもいいの?」
善子「……ま、偶にはサボってもいいでしょ」
千歌「行けないんだー!怒られるよ」
善子「週に二回しかない部活をほぼ毎回サボってるあんたに言われたくないわよ」
千歌「だってこの時期書道教室すっごい暑いんだよ?書道教室は冷房無いし、汗が半紙に垂れてびちょびちょになるし」
善子「うわ……嫌ねそれ」
千歌「でしょ〜?でもそろそろ作品仕上げないといけないんだけどね」
善子「……それで、スクールアイドルはどんな感じなの?」
千歌「えっ?いや、鞠莉先輩を勧誘しないと──」
善子「そうじゃなくて。スクールアイドルって自分で曲とか作ったりするんでしょ?何か進んでるの?」
千歌「えっ」 善子「まさか……あんた……」
千歌「い、いやいやいや違う違う違う」ブンブンブン
千歌「な、何にも考えてなかったなんてないないないないない!!!!」ブンブンブン
善子「考えてなかったのね。期待して損した」
千歌「ごめん〜っ!!善子ちゃんやっぱり辞めるとか言わないでぇ〜っ!!」ギューッ!
善子「言ってないでしょ!離れなさいよ!」グイグイ
曜「あっ!千歌ちゃーん!善子先輩〜!」ブンブン
善子「あ、曜じゃない」
ルビィ「せ、先輩っ……こんにちは……」ペコリ
千歌「よーちゃん!ルビィちゃんもこんにちは!」ニコ ルビィ「……あ、あの……千歌先輩」クイクイ
千歌「んー?どうしたの?」コテリ
ルビィ「これ……」スッ…
善子「何それ?ノート?」
曜「衣装デザインですよ!スクールアイドルやるって決まった時から二人で考えてみたんです!」
千歌「おおー!可愛い!」パアァッ
曜「これが千歌ちゃんの衣装で〜、これが善子先輩のです!」
善子「えっ、全員分考えたの!?」
ルビィ「は、はい……どうですか……?」
善子「うん……良いじゃない、とっても可愛いわ」
ルビィ「!」パアァッ
ルビィ「え、えへへ……」フニャリ
千歌「ルビィちゃん……か、可愛い〜っ……」キュウゥ… 善子「……二人とも、ジュース買いに来たの?」
曜「あ、はいそうです!休憩に〜と思って自販機に来たんですけど、千歌ちゃんと善子先輩がいたので話しかけちゃいました!」
善子「……どれがいい?奢るわよ」
ルビィ「えっ……でも……」
善子「良いの。さ、選んで」
曜「私これがいいです!オレンジジュース!」
善子「はいはい、オレンジね。ルビィは何がいい?」ポチッ
ルビィ「ルビィは、えっと……」アワアワ
ルビィ「ぃ……いちごみるくが良いです……」
善子「いちごみるくね」ポチッ
善子「はい、どうぞ」スッ…
曜「善子先輩ありがとうございます!」
ルビィ「あ、ありがとうございます……」ペコリ
千歌「えー!ずるい!善子ちゃん私にもジュース買って!」
善子「嫌」
千歌「なんでだよー!!!」 善子「あんたは自分で買えばいいでしょ」
千歌「今日もうお金無いんだって!買って!」
善子「チキン食べ過ぎなのよ。今日三個食べたって聞いたけど」
千歌「だ、だって食堂のチキン、すっごい美味しいじゃん?ほら、ケンタッキーのクリスピーみたいな味するし」
曜「わかる!」
千歌「美味しいよね〜!」
曜「ね〜!」
ルビィ「る、ルビィは大学芋が好きです……」
善子「私はピリ辛チキンが……って何この学食トーク」 千歌「ああ。そういえば花丸ちゃん知らない?今から皆で鞠莉先輩のところに押しかけようと思ってるんだけど、花丸ちゃんにだけ会えなくて……」
ルビィ「マルちゃんならコンビニにお菓子買いに行ってます」
千歌「な、なんで?」
曜「ルビィちゃんと私で衣装デザイン考えてる時、ずっと見守っててくれてたんですけどどうしてもお腹空いたから〜って買いに行っちゃって!」
ルビィ「それでルビィ達も喉乾いたから飲み物買いに……と思ったんですけど……っあ!マルちゃんにジュース買っていかないと!」
善子「あの子何飲むの?」
曜「お茶とか飲んでますね。緑茶」
善子「んー、あの子抹茶ラテとか飲むかしら」
ルビィ「あっ、それマルちゃんが気になってたやつです」
善子「あ、そうなの?じゃあこれ買うから渡してあげて」ポチッ
曜「わー!善子先輩やっさしー!」
千歌「ねぇ!ねぇ優しい善子先輩!チカにも!」
善子「嫌」
千歌「なんでだよおおおおっ!」 なんかめちゃくちゃ回線悪くてIDが安定しません…ごめんなさい 花丸「あ、ルビィちゃん曜ちゃん。こんなところに居たずら」
善子「あら、噂をすれば」
花丸「よ、善子先輩もこんにちは……っ」ペコッ
千歌「ちょちょちょちょ、私も居るよーっ!」
花丸「あっ、す、すみません……こんにちは」
千歌「善子ちゃんたらしてるね〜……」
善子「たらしてないわよ……っあ、丁度良いからあげるわ」
花丸「抹茶ラテ、ですか……?」
善子「それ、気になってたんでしょ?」
花丸「〜っ!」カアァッ
花丸「は、はいぃ……」プシューッ
曜「花丸ちゃん顔隠しちゃった」
ルビィ「善子先輩苦手なのかな……?」コソッ
千歌「いや逆だよ逆。絶対好きだよあれ」コソッ
善子「そこ。聞こえてるわよ」 花丸「それで……こんなところで先輩達は何をしているんですか?」
千歌「あ、そうだ。あのね、鞠莉先輩を勧誘しに行こうと思ってるんだけど上手くいかなくて……だからもう全員で押しかけようと思って」
ルビィ「偶然千歌先輩と善子先輩に会ったからルビィ達も行こうってなって」
曜「あと居場所が分からないのが花丸ちゃんだけだったんだけど、丁度来てくれたから助かったよ〜!」
千歌「それじゃあ今から美術部と華道部に行って、梨子ちゃんとダイヤちゃんを捕まえに行こう!」ガタッ
善子「あんた背中砂だらけよ」
曜「汚いベンチで寝転がってるから〜」パッパッ
千歌「さぁ!早速行こう!」ギュッ
ルビィ「え、えぇ……?」
千歌「れっつごー!!」タッ
ルビィ「わあぁぁっ……引っ張らないでくださぁぁいっ……」ウユウユ
善子「ちょっとあんた活動場所知ってるの!?」
千歌「全くわかんない!!!」
善子「ダメね、あいつ……」
曜「あ、あはは……」
花丸「変わった人ずら……」 ----
畜産棟 裏口
ダイヤ「…………これはどういう状況ですの?」
千歌「ダイヤちゃん、しっ!聞こえちゃうでしょ!」
善子「あんたが一番うるさいけどね」
梨子「こんな所で隠れてたら私達が変な人みたいじゃない……」コソコソッ
花丸「こんなことしてる時点で手遅れずら……」
ルビィ「あっ、いました……!あれ、鞠莉先輩じゃ……!」🫵
鞠莉「──、──……」トボトボ…
曜「何か言ってますね……なんて言ってるんだろう……」
ダイヤ「それに元気が無いですわよ」
梨子「鞠莉先輩にしては珍しい……」 果南「そんなとこで何してるの?」ヒョコ
千歌「あのね果南ちゃん、今から鞠莉先輩を勧誘しに……って果南ちゃん!?」ビクッ
善子「こらあんたうるさいわよ!」バッ
果南「畜産棟の階段で皆してへばりついてるから何かと思ったら……そういうこと?」
梨子「か、果南先輩はどうしてここが分かったんです……?」
果南「そりゃ太鼓部の活動場所から丸見えだからね。挙動不審な千歌達」
花丸「ま、まさかの丸見え……」
曜「そういえば皆果南ちゃんのこと忘れてたね……」
果南「えっ…………」ガーン…
果南「そっか……私、別にスクールアイドルやらなくても……」ズーン…
梨子「ち、違うんです違うんです!」アワアワ
ダイヤ「あ!鞠莉先輩が近付いてきましたわよ!皆さん隠れて!」サッ… 鞠莉「…………はぁ、」
鞠莉「……どうして素直になれないのかしら……」
果南「あれ……なんかいつもと様子違うくない?」
善子「強がって千歌からの勧誘断ったんですよあの人」
花丸「何だかこどもみたいずら……」
鞠莉「……私は別に、アイドルなんて……」
曜「なんか、ドラマ観てるみたい……」
千歌「アイドル、なんて……、」ゴクリ 鞠莉「うわあああああああぁぁんっ!!やっぱり私もアイドルしたああぁい!!」
鞠莉「スクールアイドル!?文化祭のステージ発表!?何それすっごい楽しそうじゃない!!このっっ!!!」バシーンッ
ルビィ「何か床に叩きつけましたね……」
善子「自分の実習服の帽子じゃない?」
鞠莉「千歌っちったらどうして最初に私を誘ってくれなかったの!?言ってくれれば絶対最初に入ったのに!!」
鞠莉以外の八人「…………………………」
▼絶対最初は断るだろ。という顔 鞠莉「もううんざりよ……泥だらけの実習服を着て、動物園みたいな臭いがする畜産棟で毎日毎日……同じことの繰り返しで……」
鞠莉「もうこんな毎日は嫌!絶対抜け出してやる!」バッ
🐴「…………」バーンッ!
鞠莉「行くわよ偽スターブライト!!こんな生活から抜け出すのよ!!」スタッ
鞠莉「Let's Go!!!!!」タッ!
梨子「ぽ、ポニーに乗ってどっか行っちゃったけど!?」
果南「何!?偽スターブライトって」
善子「言ってる場合!?」
千歌「と、とにかく追いかけよう!」タッ ----
果南「園芸の方は居なかったよ。そっちは?」
花丸「食品科の畑にも居なかったです……」ゼェゼェ
果南「何処行っちゃったんだろう……」
曜「果南ちゃーん!花丸ちゃーん!」タッ
果南「曜とルビィちゃん。デザイン科の畑はどうだった?」
ルビィ「何も無かったです……足跡とかも無くて……」
果南「じゃあ畜産棟か緑化棟かな。ちょっと行ってみよっか」 -
千歌「ポニー居ないねぇ」
梨子「あれだけ大きかったら直ぐに分かりそうだけど……」
ダイヤ「居ないですわね……」
千歌「うん、何処に……って、ああああああああああああっ!?!?」
梨子「う、うるさいわよ千歌ちゃん!」ビクッ
ダイヤ「一体何なんですの!?」ビクッ
千歌「み、見てあれ!!さっきのポニーじゃない!?」🫵
🐴「………………」ムシャムシャ… 梨子「あ、本当だ。雑草食べてる……じゃなくてポニーに乗ってた鞠莉先輩は何処に行ったのよ!?」
ダイヤ「そんなの鞠莉先輩とポニーにしか分かるわけないでしょう!?一旦善子さんを呼んでポニーを畜産棟に戻してもらいましょう」
千歌「そ、それもそうだね……おーい!善子ちゃーん!!津島善子ちゃーん!!!」
梨子「なんでフルネーム!?」
千歌「動物科の津島善子ちゃーん!!!!」
ダイヤ「迷子のアナウンスですか!!」
善子「ちょっとあんまり大声で善子善子言わないでくれる?」
千歌「ヨハネちゃーん!堕天使ヨハネちゃーん!」
善子「今すぐ辞めなさい」
善子「ほら、こっち来なさい」ドウドウ
🐴「………………ブルルッ」プイッ
千歌「……なんで善子ちゃんはこう、……好かれないんだろうね?」
善子「黙って」 🐴「……ブルルッ」
梨子「わ、わぁっ!?」
🐴「………………」スリスリ…
ダイヤ「梨子さん……」
善子「なんか懐かれてるわね……」
梨子「こ、怖い怖い!誰か助けてよぉ!」アワアワ
千歌「……梨子ちゃん……ちょっと失礼」ヒョイッ
梨子「ひゃ!?ちょ、ちょっと何してるの!?」
善子「…………ポニーに乗ったわね」
ダイヤ「………………ええ、乗りましたね」
千歌「いけー!畜産棟に帰るのだ〜!」ビシッ
🐴「……っ!」タッ!
梨子「きゃあぁっ!?!降ろして!降ろして〜!!!」 ---
畜産棟
梨子「……何か言うことは?」ゴゴゴゴゴ…
千歌「すみませんでした」土下座
果南「梨子ちゃんが怪我しないで良かったよ。多分鞠莉は振り落とされたんだろうけど、梨子ちゃんは軽いみたいだから振り落とされなくて良かったね」
ダイヤ「その言い方だと鞠莉先輩が重いみたいな……」
千歌「あのおっぱいだもん。重そうだよね」
果南「千歌」
千歌「はい。すみませんでした」土下座
花丸「それより鞠莉先輩を探さないとですよ……」
曜「このままじゃ下校時間になっちゃいます……」
善子「それもそうね。早くあのバカ探しに行きましょ」
千歌「じゃあ次はサツマイモ圃場の方に行ってみよう。それで居なかったら水田の方も探しに行ってみよう」
ルビィ「わ、わかりまし──」
ポタリッ
ルビィ「ぅわあぁっ!?」ビクッ
花丸「ルビィちゃん!?どうしたずら!?」
ルビィ「あぁっ……雨、降ってきましたっ……」
梨子「本当に時間が無さそうね……」
善子「ったく、何処で何してるのよあの人!さっさと探しに行きましょ!」タッ ----
鞠莉「…………」トボトボ…
鞠莉「(偽スターブライトに振り落とされたわ……)」ボロッ
鞠莉「(……というか、なんで私こんなことしてたんだろう……)」
ポタリッ……
鞠莉「……ぁ……」
鞠莉「……雨……」
鞠莉「………………っと、」ポフリッ…
鞠莉「……地面湿ってるわ……背中が濡れる……」ゴロッ 鞠莉「………………」
鞠莉「(どうして内浦の農業高校なんかに来ちゃったんだろう。……なんて、よく考える)」
鞠莉「(私は別に自然が好きって訳でも無いし、動物だって……正直、相棒のスターブライト以外興味無い)」
鞠莉「(そんな私が、どうして農業高校なんかに居るのかなって……)」
鞠莉「(……私ね、千歌っちが羨ましかったの)」
鞠莉「(毎日楽しそうで、毎日笑ってて……そんな千歌っちが、羨ましかった)」
鞠莉「(私も、その中に入りたかったの)」ポロッ… ----
梨子「雨が強くなってきた……そろそろ何処かで雨宿りしないと皆揃って風邪引いちゃうわよ!」タッタッ
ルビィ「ぅわあぁっ!!」ツルッ
果南「おっ、とと……大丈夫?」ガシッ
ルビィ「は、はひ……」
善子「階段で転んだら怪我じゃ済まないことだってあるし気を付けてよね?」
ルビィ「す、すみません……」
ダイヤ「それにしても鞠莉先輩、何処にも居ないなんてどうなってますの……!?」
花丸「本当にまだ学校に居るずら……?」ゼェゼェ
曜「あ!千歌ちゃん、あそこに寝転がってるのって!」
千歌「本当だっ……見つけた……!」タッタッ 千歌「鞠莉先輩っ!」
鞠莉「……へっ?」クルッ
千歌「はぁっ……はぁ……やっと見つけた……」
鞠莉「千歌っち……それに皆も……どうしたの?」
千歌「やっぱり一緒にやりましょう。スクールアイドル!」
鞠莉「だから、……さっきも言ったはずよ。興味無いって……」グッ…
千歌「……そりゃ、こんな田舎だし……何にしろ、農業高校生っていう地味な私達だけど……でも、思い出は刻まれる。私達が輝いた成果が、三学年全員揃う最後の文化祭で!」
果南「まったく。いい加減入ります〜って折れたらどうなの?」
ダイヤ「果南先輩の言う通りですわ。せっかく三学年全員が揃う最後の文化祭なんです。思い出作りしたいとか思わないんですの?」 ルビィ「ま、鞠莉先輩の衣装も……考えてあるんです。入ってくれると、思って……」
鞠莉「……衣装……」
花丸「デザイン科の曜ちゃんとルビィちゃんの二人で考えてくれてるんです。それに、衣装だけじゃなくて、オラは9人居た方がしっくりすると思います」
曜「目の前のことに何でも全速全身で突き進む、それが千歌ちゃんなんです!鞠莉先輩も、私達と追い風に乗っていきましょうよ!」
梨子「何としてでも、生徒全員に楽しかったって心の底から言って貰えるような学校にしたいんです。千歌ちゃんは」
善子「って、皆言うけど……どうしますか、鞠莉先輩」
鞠莉「………………」
鞠莉「…………っふ、そんなこと言われて断ったら私が悪者じゃないの」
鞠莉「絶対後悔させないで。それだけ約束」
千歌「!」パアァッ
千歌「はい!」
こうして三学年全員が揃う最後の文化祭は、この学科も学年もバラバラな9人でステージ発表を行うこととなった。
奇跡としか言いようがないこの出会いを歓迎するかのように、晴れ間が見えて、虹が出た。 -------
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初練習当日
浦の星農業高校 体育館裏
千歌「ということで!やっと九人揃ったので練習を始めたいと思います!」
曜「やったー!九人だー!」
果南「よし、皆体操服に着替えてるね。それじゃあまだ曲も衣装も出来てないから、簡単なステップからやってみようか」
鞠莉「果南はダンスとかやってたの?」
果南「経験はないけど……昨日スクールアイドルの動画見てみて、練習方法を考えてみたんだ」
鞠莉「おお……わざわざノートにもまとめてるのね……凄いじゃない」
果南「ま、やるからには本気でやらないとね」
ルビィ「そ、それで言うならお姉ちゃんも昨日ステップを練習していたような……」
ダイヤ「ち、違いますわ!あれはたまたま……」
梨子「たまたま……?」
ダイヤ「ううぅ……練習ですの練習!私だってやるからには自分が満足するレベルでやりたいんです!!」 腕が何か分からない毒虫に刺されてしまい、腕に力が入らない状態なので一旦おサボりします。すみません 花丸「……あの、」スッ…
果南「どうしたの?」
花丸「……オラ、ダンスとか全く出来なくて……」
花丸「お遊戯会のダンスも、中学校の時の体育祭のダンスも、オラだけいつも踊れなくて背が低いのに後ろに回されてて……」
梨子「今年のダンスはどうだったの?あれ、ちょっと難しくなかった?」
ダイヤ「そうですね、去年より遥かに難易度が高かった気がします」
千歌「私もあのステップ全然出来なかったし!果南ちゃんは踊れてたけど」
果南「あのくらいならね」 花丸「今年の体育祭のダンスも全然……放課後までダンスリーダーの先輩に教えられてました……」ズーン
善子「それで、結局踊れたの?」
花丸「…………いえ……」
善子「致命的みたいね」
ルビィ「る、ルビィも運動が苦手で……ダンスって結構体力使うし、着いて行けるか分からなくて……」
梨子「そ、それなら私もあんまり体力無くて……」
果南「ルビィちゃんはまあ、そんな感じするけど……梨子ちゃんもそうなの?」
千歌「いや?梨子ちゃんこの学校来てからだいぶ体力ついたよ」
曜「はいはい!果南ちゃん果南ちゃん!私は体力凄いあるよ!」ムンッ
果南「それは知ってるから……」 鞠莉「それで、どうするの?体力無い、運動出来ない、ダンスも苦手……スクールアイドルするならまずこれ何とかしないと」
ダイヤ「そうですわね……どうしたものか……」
果南「じゃあ今からランニングに行こっか!」
りこまるびぃ「「「えっ」」」
善子「ら、ランニングって……まさかこの学校の中を?」
果南「うん!この学校は広いし、坂道とかも沢山あるからきっと直ぐに体力つくよ!」ムンッ
曜「いいね!私も頑張るぞー!」エイエイオー!
善子「ちょ、ちょっと千歌、この脳筋達何とかしなさいよ!」
千歌「あ、あはは……こうなった果南ちゃんとよーちゃんは誰にも止められないのだ……」苦笑
果南「よーし!それじゃ皆、ついてこーい!」タッ
曜「行くぞー!」タッ
ダイヤ「あぁっ!本当に行ってしまいましたわ!」
ルビィ「どどどどどうするんですか!?」
鞠莉「どうするも何も……追いかけるしかなさそうね」タッ
花丸「ま、待ってぇっ……オラ、靴紐ちゃんと結べてないずらぁっ……」アワアワ
善子「もう……」キュキュッ
善子「これで良し。ほら、行くわよ」タッ
花丸「は、はいっ……」タッ
千歌「折角アイドル出来ると思ったのにこれじゃ持久走と一緒だよー!」タッ ----
果南「はーい、休憩〜!」
ルビィ「もうダメしんじゃうぅ……」グデッ
梨子「ほんとにダメ……足が震えるわ……」ガクガク
花丸「オラもう限界ずらぁ……」プルプル
果南「三人ともよく頑張ったね!ちゃんと着いてこれて偉いよ!」
梨子「一周だけかと思ったのに、……結局学校の中三週もして、……何キロくらい走ったのかな……」ゼェゼェ
曜「学校の中が大体……2キロ近くあるのかな?」
果南「うん、多分そのくらいはあると思う」コクリ
ルビィ「じゃあ、ルビィ達は6キロも……休憩なしで……」
花丸「お、恐ろしいずら……」 千歌「だあああっ……疲れたぁ……」ドサッ
ダイヤ「……汚れますわよ」
千歌「いいのいいの。実習服と同じで、洗っちゃえば問題ないよ!」
ダイヤ「貴女の実習服、もう洗っても落ちない泥だらけじゃないですか……」
花丸「…………ダイヤ先輩と千歌先輩って、全然タイプが違うのに一年生の時から仲良しだったんですか……?」
千歌「そうだよ〜っ、去年は基本ダイヤちゃんと一緒だったかな」
曜「何がきっかけで仲良くなったの?」
千歌「んー、なんだったっけ……」
ダイヤ「覚えていないのです?……こほん。この人とは浦の星の受験二日目……つまり、面接が同じだったんです」
ダイヤ「その時に──」 ---
受験生A「わたしの夢はこの学校に入って、農業を学び、大好きなお米のことを更に詳しく知って、米マイスターになることです!」
千歌「こめ、まいすたー……」ボソ
ダイヤ「(隣の人、何か呟いてますわ……)」チラッ
千歌「ぷっ……あっはっはっはっは!」
千歌「なにそれなにそれ!あ、もしかして今のはお米のコメとマイをかけた……」
ダイヤ「説明しなくていいですから」
試験監督A「………………」
試験監督B「………………」
受験生A「………………」
ちかダイ「「………………あっ」」 ---
ダイヤ「──ということがありまして」
果南「よく受かったね」
千歌「でも米マイスターの子、うちのクラスに居ないもんね?あの子どうしたのかな」
善子「あんた達みたいなアホが居る学校に入りたくなかったんでしょうね」 鞠莉「スポーツドリンク買ってきたけど誰かいる?一応九本あるんだけど」
果南「素直に皆に買ってきたって言えば良くない……?」
善子「いや、まあ鞠莉先輩ってこういう人なんで……」
ダイヤ「あ、いくらでしたか?ルビィの分も払いますわ」
鞠莉「あ、大丈夫。私の家お金あるから」
果南「いや、それはどうなの?」
善子「…………いや、まあ……鞠莉先輩ってこういう人なんで……」
果南「うん……なんか、変わってるよね……」
千歌「皆人のこと言えないけどね〜」ケラケラ
善子「あんたもね」 ダイヤ「……そういえば、曜さんはどうしたんです?」
千歌「え?よーちゃんならそこに……ってあれ、居ない……」
花丸「曜ちゃん……そういえば、千歌先輩とダイヤ先輩の受験の時の話を聞いたときにはもう居ませんでした」
果南「曜から聞いたのに居なくなるってどういう……」
鞠莉「あ、曜ならさっき物凄い速さで走って行ったわよ」
善子「なんで???」
曜「先輩方っ、ヨーソロー!」ビシッ
善子「うわビックリした」
ダイヤ「何処に行っていたんですの?」
曜「走り足りなかったんで、もう一周走ってきました!」
果南「まあそんなことだろうと思ったけど……」 鞠莉「そういえば梨子とルビィも居なくない?」
千歌「あ、言われてみれば確かに……」
花丸「あ、二人はあそこに……」👉
梨子「ルビィちゃん……ここ、風が気持ちいわね……」
ルビィ「はい……」
果南「黄昏ちゃってるよ」
ダイヤ「あそこは景色が良いですからね……」 善子「どうします?今日はもう解散とか……」
果南「……いや。まだやるよ」
果南「休憩おしまい、次はステップをやるから全員集まってー!」
鞠莉「…………果南って意外と……」
善子「……スパルタ気質……」
千歌「……だよねぇ……」
果南「早速始めるよー!」 ----
果南「はーい、今日はこれでおしまい!皆お疲れ様!」
千歌「だあああっ……きつい……」グデッ
ダイヤ「千歌さん、果南先輩から集中攻撃受けてましたわね……」
千歌「私、ダンスとか好きなんだけど、実際そんなに上手くないんだよ……リズムがズレちゃうというか……」
千歌「スクールアイドルってこんなに厳しい世界なんだ……誘っちゃってごめんね皆……」スンスン…
梨子「絶対後悔させないって言ってくれた人の台詞とは思えないけど……」 花丸「オラ、今日自力で帰れないずらぁ……」プルプル
ルビィ「る、ルビィも……」プルプル
善子「ふたりとも平気?……って、汗凄いじゃない。熱中症にならないようちゃんと水分摂っておきなさいよ」パタパタ
るびまる「「はぁい……」」
曜「あ、飲み物無くなっちゃった……私、なんか買ってきますけど、先輩方何か要りますか!」
果南「うーん、取り敢えず全員分のスポーツドリンクもう一回買ってこれる?」
曜「はぁい。このクーラーボックス借りますねー!」
善子「あ、曜。お金は鞠莉先輩から貰いなさい」
曜「えっ、いいんです?」
善子「九人分の飲み物なんて高いでしょ。あの人なら払ってくれるから」
鞠莉「なんで決めつけるのよ。良いけど」
鞠莉「……あ、折角だし一緒に買いに行きましょうか」
曜「いいんですか!?」パアァッ
鞠莉「ええ。ひとりじゃ重いでしょ。手伝うわ」
曜「わーい!ありがとうございます!」 クセのないG’s時空という感じで良き
ここがアルカディアか ダイヤ「……と言っても、全員で揃えてみたらかなり酷かったですわね……」
ルビィ「バラバラ、というか……なんというか……」
花丸「ひとりひとり見たらそんなに違和感無いけど、全員で合わせてみたらどうしてもバラけて見えるずら……」
果南「これをステージの上で披露するんだよね、……今のままじゃ笑いモノにされちゃえよ」
梨子「どうにかしないと、ですよね……」
曜「どうしたらいいんだろう……」
善子「うわビックリした速いわね」
曜「えへへ、鞠莉先輩とふたりでどっちが早く買って帰れるか競走してきたんです!」
梨子「その鞠莉先輩は何処行ったの?」
曜「転んじゃったとこまでは見ました!」
千歌「いや助けてあげなよそれ」 果南「あ。そういえば、学校近くの神社のお祭り、ステージ発表募集してたなぁ……」
鞠莉「そこで一旦ステージの要領掴んでみる?」ヌッ
果南「うわビックリした」
善子「なんで曜といい鞠莉先輩といい、こう、突然出てくるんですか」
千歌「それいい!だってお祭りってことは沢山の人が見てくれるってことだよね。浦の星も注目されるし、興味持ってくれる人がいるかも!」
果南「じゃあ取り敢えず八月のお祭りに向けてやってみようか。千歌は作詞、鞠莉は作曲、衣装は時間が掛かるから作らない方向で考えようか」
ちかまり「「えっ?」」
果南「え?何か問題あった?」
千歌「い、いやー……私が作詞なんだっていう……」
鞠莉「なんで私が作曲??」
果南「出来そうだったから。ほら、千歌が前、鞠莉は金持ちだからピアノとか弾けそうって」
鞠莉「ピアノなんて全然弾けないわよ。精々オルガンかヴァイオリンくらいかしら」
善子「金持ちヤッバ」 果南「じゃあ他に居る?作詞出来そうな人と何か音楽が出来る人」
ルビィ「マルちゃんは?」
花丸「えっ、オラ?」
ルビィ「うん、マルちゃん、いつも本読んでるから何か書けないかなって……」
花丸「書けなくは無いけど……オラが書くとすれば作詞じゃなくて作詩になってしまいそうずら」
果南「そっちの詩じゃないもんねぇ……」
曜「梨子先輩は作詞とか出来ないんですか!?」キラキラ
梨子「む、無理無理……そういうの全くやった事ないし……」 ダイヤ「まあ出来る出来ない関係無く、やはり一曲目は言い出しっぺである千歌さんが作詞すべきだと思いますわ」
千歌「私かああぁ……」ガクッ
果南「嫌なら無理強いはしないよ?」
千歌「……んん……嫌とかじゃないけど……」
千歌「作詞ってほら、自分の気持ちをそのまま歌にするようなものでしょ?だから恥ずかしくて……」
梨子「……ん?でも待って、千歌ちゃんこの間私とダイヤちゃんに歌詞見せてくれ──」
千歌「わー!!!言わないでー!!!」
鞠莉「そうなの?」
ダイヤ「ええ。千歌さんらしい真っ直ぐ素直な曲でしたわ。ええっと、タイトルは確か……」
千歌「ちょ!!!言わないでってば!?!?」 果南「へぇ〜?なになに、千歌、歌詞書いてたの?」ニヤニヤ
善子「千歌が歌詞ねぇ」ニヤニヤ
千歌「うっざいなぁもう!善子ちゃんだって真っ黒なノートに変なこと書いてたの知ってるからね!?」
善子「いつ見たのよそれ!!」
千歌「廊下に落ちてたやつチカが善子ちゃんの教室まで届けたよ!!!!」
善子「凄い助かるけど!!!!中見んじゃないわよ!!!」
曜「千歌ちゃん歌詞書けるなんて凄いじゃん!どうしてそんなに嫌なの?」
千歌「は、恥ずかしいんだよ〜……」
鞠莉「じゃあ取り敢えず千歌っちにはお祭り用にまた別の歌詞を書いてもらって、……結局作曲は私なの?」
果南「鞠莉がしてくれた方が助かるかも、音楽経験者居ないもんね。出来そう?」
鞠莉「出来なくはないけど……んん、じゃあ頑張ってみる」 ルビィ「あ、あの……さっき衣装は作らないって言ってたのにこんなこと言うのはちょっと違うかもしれないんですけど……」
ダイヤ「どうしたんですの?」
ルビィ「……はっぴ、作ってみたいなって……折角のお祭りだし……お揃いの……」
曜「わ!いいねそれ!デザイン科コンビの腕の見せどころだ〜!」
ルビィ「ど、どうかな……?」
花丸「うん。オラもお祭りと言ったらはっぴだと思ってたし、ルビィちゃんと曜ちゃんの負担にならないなら全然作っていいと思うよ」
梨子「私も賛成。でも無理はしないようにしないとダメよ?」
ルビィ「は、はいっ……果南先輩、良いですか……?」ウルッ
果南「うっ!」💘
果南「……い、良いよ……でも梨子ちゃんの言う通り無理しちゃダメだからね」瀕死
曜「なんで震えてるの?寒いの?」
花丸「曜ちゃん……察してあげるずら。果南先輩は可愛い女の子に目が無いずら」
果南「語弊があるんじゃないかな?その言い方」
キーンコーンカーンコーン
ダイヤ「あっ、門が閉まりますわよ!」
果南「あ、本当だもうそんな時間……早く着替えて出ちゃおう!お疲れ様でした!」 キタワァ━━━━━━(n'∀')η━━━━━━ !!!! --------
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---
七月
緑化棟 調整室
ビリビリッ……
千歌「…………」ソッ…
千歌「せんせー!これも腐ってるー!!」
山崎「あーあ。梅雨明けは毎回ブドウが腐るな」
梨子「うわっ……先生、これ……」スッ…
山崎「うわぁ……もうぐちょぐちょやな……中でブドウが割れたんやろうね」
ダイヤ「先生……これしか残りませんでしたわ……」
山崎「もうダメやな……今年はあんまり出来なさそう……」
千歌「せんせー!これ病気!」
山崎「切って」 ---
梨子「……全部で11パック……」
山崎「少ないっちゃ少ないけど……まあ仕方ないやろ」
千歌「せんせー!この余ったやつ食べてもいいですか?」
山崎「そこに置いてあるの全部病気になってたり割れてたりするけど、……食えそうなやつがあれば食っていいぞ」
千歌「やったー!梨子ちゃんダイヤちゃん食べよ〜!」ヒョイ パクッ
梨子「えっ!?だ、大丈夫なのそれ!?」
千歌「うん!美味しいよ!梨子ちゃんも食べて食べて!はい、あーん!」
梨子「あ、あむ……」パクッ…モグモグ…
千歌「美味しい?」
梨子「うん、美味し──」ガリッ…
梨子「ぅえっ……ちょ、種あるの先に教えて欲しかったな……」
千歌「わー!ごめん!ペってして?」
梨子「ええ……」 ダイヤ「このブドウはジベレリン処理してませんから、種があるままなんですの」モグモグ
ダイヤ「……あ、それと皮は食べない方がいいので気をつけてくださいね」
梨子「千歌ちゃんもダイヤちゃんも、どうしてそんなに大切なことを先に言わないの……というか、千歌ちゃん種とか皮取ってる?食べちゃってない?」
千歌「んー?」ボリッ ゴリッ
梨子「ストップストップストップ!!食べてる!食べてるわよ!!」アワアワ
千歌「こんなのお腹に入っちゃったら全部一緒だよ〜」
ダイヤ「ちょっと引きますわ……」 千歌「あ、それよりね、この間話したお祭りの話なんだけど、歌詞書けたの!お昼休み見て欲しいなって!」
梨子「も、もう書けたの!?まだ数日しか経ってないのに……」
千歌「うん!なんかね、最初はちょっと嫌だったんだけどなんか筆が進む〜といいますか?」
ダイヤ「まあそれは良いことですわね」
山崎「あ、もうこんな時間や。緑化教室に戻って感想書いたやつから帰っていいぞー」
千歌「よっしゃー!お昼だお昼!早く戻ろ!」タッ
梨子「ま、待って待って!早いわよ千歌ちゃん!」タッ
ダイヤ「お待ちなさい二人とも!調整バサミは片付けたんですの!?」 ---
緑化棟 更衣室
千歌「じゃーん!これが出来た歌詞です!」バーン!
ダイヤ「えっと……『サンシャインぴっかぴか音頭』」
ダイりこ「「……………………」」
千歌「やっぱりお祭りと言ったらこういう感じじゃない?私ったら才能あると思うんだよね〜!」
梨子「……これは……酷いわね……」
ダイヤ「なんですかお祭りなのにすいすいって……」
梨子「千歌ちゃん、これ眠い時に書いたでしょ?」
千歌「ひどーい!!私は真面目に書いたのに!!」 梨子「あ、でも私この歌詞好きかも。
『しらなかった かった 場所だけど
ほらきれいな大空が おしえてくれるのは
おいしい空気 いいな いいな』ってとこ」
千歌「あー、そこはね、梨子ちゃんに歌って欲しくて!」
梨子「え?私……?」
千歌「うん!梨子ちゃん、空気が美味しいとか言うじゃん?だから書いてみたの!」
梨子「そう、だったんだ……」 ごめんなさいめちゃくちゃ遅筆なので更新が送れているのですが気長に待っていただけると嬉しいです 楽しんですから無理はせず、しかしエタらず書いてほしい ダイヤ「貴女、歌って欲しい人のパートのことまで考えていたのです?」
千歌「うん!だからね、歌って欲しい人の名前を書いて、それで鞠莉先輩に提出しようと思って!」
千歌「私の歌詞はダメダメでも、きっと鞠莉先輩ならいいもの作り上げてくれるって、そう信じてるんだ!」
千歌「私のサンシャインぴっかぴか音頭が何処までお祭りっぽくなるのかは鞠莉先輩次第なんだけどね」ニシシ
梨子「………………」
梨子「(千歌ちゃんって、やっぱり何も考えてないみたいで、何処か皆よりも多くのことを見て、感じて……沢山考えているように見える)」
梨子「(私と、千歌ちゃんが……少し離れて見えちゃうのは、その所為なのかな……)」
梨子「(少しだけ、千歌ちゃんが羨ましく感じるの)」 -------
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放課後
浦の星農業高校 体育館裏
果南「今日は歌の練習をするよ!」
花丸「果南先輩、部活は無いんですか?」
果南「毎日あるよ!でも大丈夫!皆との練習に集中したくて休み貰ったんだ」
曜「そんなこと言って、梨子先輩と会いたいだけじゃない──」
果南「ふんっ」スパーンッッ!
曜「い、痛い!どうしてぶつの!?」
果南「う、うるさい……なんでもいいでしょ。……ええと、こほん」
果南「そこに全員並んで。……えっと、……千歌、こっち来て」
千歌「え?なんでチカ?」
果南「いいからいいから」 千歌「……ん、なぁに?何するの?」
果南「私と千歌の位置と、並んでもらった皆からは大体10メートルくらいあるんだけど」
果南「今から一人ずつこの距離で皆にしっかり歌詞が聞き取れるようなハッキリした大きな声で校歌を歌ってもらうよ」
「「「「「「「「え??」」」」」」」」
果南「本番マイクがあっても、やっぱり練習で出来ないと意味無いからね。歌に自信が無い子は取り敢えず音程とかは気にせず大きな声で歌う意識を付けて欲しいんだ」
ルビィ「そ、そんなぁっ……」ガーン
善子「歌苦手?」
ルビィ「う、歌は……あんまり自信は無いですけど……でも、大きい声出すのが苦手で……」
花丸「ルビィちゃんは昔から声が小さかったですし、ちょっとだけ厳しいかもしれないです」
善子「……なるほどね。千歌、シャキッとしなさい。一年生にカッコイイとこ見せなさいよ」
千歌「いやチカもこういうの苦手なんだけど!」 ダイヤ「でも千歌さんは測量競技大会の時誰よりも大きな声でFFJの歌、歌ってましたわよね」
千歌「何でそういうこと言っちゃうかなぁ!?!?」💢
鞠莉「あら、千歌っちFFJの歌、歌えるの?」
ダイヤ「農業高校生なのですし、歌えなくちゃいけないですわよね……」
果南「え。私聞いたことすらないんだけど……」
善子「去年生徒総会で流れてましたよ……」
果南「と、とにかく千歌!一回やってみよっか!」
千歌「も、もうっ!こうなったらやけくそだぁ!」ムンッ 千歌「♪──!♪──っ!」ハキハキ
梨子「す、すごい……意外と声出るわね、千歌ちゃん」
ダイヤ「……千歌さんの歌っている時の声、なんだか可愛らしいですわよね」コソッ
善子「ああわかる。なんか小さい子供か歌ってるみたいで可愛いのよね」コソッ
梨子「え、二人とも、今何て──」
ダイよし「「──!」」ハッ
ダイヤ「な、なんでもないですの!今すぐ忘れてください!」アワアワ
善子「そ、そうよ!それと絶対千歌には言わないでよ!?わかった!?」ユサユサ
梨子「わ、わかったっ……わかったからぁ!」アワアワ 鞠莉「どう?合格点あげられそう?」
果南「うーん……」ムムム…
果南「千歌、ストップ」
千歌「合格っ!?」パアァッ
果南「ううん、もう一回」
千歌「ゑ」
果南「まだまだ声出せる。お腹から出さないでどうするの。歌詞も間違え過ぎ。ちゃんと覚えないと本番恥ずかしい思いするのは千歌だよ」
果南「それにリズムもズレてる。音程もあやふや。よくそんなんでリーダーやりますって言えたね」ズバズバ
千歌「ひ、ひいぃ……」
花丸「か、完全にスパルタずら……」
ルビィ「る、ルビィお家帰りたい……」
曜「果南ちゃんって一度スイッチ入ったらああなっちゃうから……」 千歌「や、やってやるよおおぉ!!!」
梨子「な、なんか燃え始めちゃった……」
曜「ち、千歌ちゃんも一度スイッチ入ったらああなっちゃうんで……」
千歌「♪──!♪──っ!!!」
果南「もう一回!」
千歌「♪────っ!!!♪────っ!!!」
果南「もう一回!!」
千歌「────っ!!!!────っ!!!!!」
果南「まだまだぁ!腹から声出せ千歌ァ!」 ちかなん「「…………」」ゼェハァ ゼェハァ……
ちかなん「「…………」」🤝 ギュッ
梨子「いや意味わかんないから!」
果南「よく頑張った千歌」
千歌「果南ちゃん……これでチカは合格……?」
果南「…………皆が歌い終わったら最後もう一回歌って」
千歌「なんでだよおおぉっ!合格するパターンだろこれぇ!!」床ダンッ 果南「それじゃあ……次、梨子ちゃん行ってみよっか」
梨子「えっ、わ、私ですか……?」
善子「が、頑張って梨子……」
ダイヤ「絶対生きて帰ってくるんですのよ……」
鞠莉「果南をなんだと思ってるのよ?」
果南「はい、いつでもいいよ」
梨子「(正直校歌なんて歌う機会なくてあんまり覚えられてないのよね……少し不安だけど……やるしかない、のよね!)」グッ
梨子「♪──っ……──っ……」メイ*> _ <リ💦
果南「梨子ちゃん、合格」スンッ
千歌「いや贔屓でしょ!絶対果南ちゃんが個人的に梨子ちゃんが大好きだから合格させたんでしょそれ!!」
果南「だって、梨子ちゃんかわいいもん!!!」
千歌「こどもか!!!!」 鞠莉「まあ、ね?贔屓は良くないわよね」
果南「贔屓じゃないもんん!!梨子ちゃんかわいいもん!!」ジタバタ
鞠莉「あ、そう」スンッ
善子「諦めないでくださいよ……」
ダイヤ「面倒臭い人とは関わりたくないという鞠莉先輩の性格が現れましたね……」
花丸「果南先輩、贔屓はダメずら」
果南「鞠莉もマルも贔屓するから!今回は許して!」
善子「もっとダメなやつじゃない!」 ルビィ「あ、あの……ルビィ、ちょっと果南先輩に相談が……」
曜「ああそうそう!私とルビィちゃんではっぴ作ることになったじゃん?その布買いに行きたくて!」
梨子「良いじゃない。親睦も兼ねて皆で行ってみますか……?」
梨子以外「「「「「「「「…………」」」」」」」」ジーッ
梨子「え、ええっ!?ご、ごめんなさいっ……変なこと言っちゃいましたか……?」アワアワ
ダイヤ「ふふ、寧ろ逆ですわ」
花丸「お、オラも皆で何処か行きたいなって思ってました!」
善子「ええ、私も思ってた。ちゃんと私達が集まってゆっくりお茶したのとか農販会の打ち上げくらいだったしね」
千歌「うんうん!私ももう一回やりたいなーって思ってた!」
果南「梨子ちゃん……っ、私は嬉しいよ……」ウルウル
鞠莉「どんだけ好きなのよ」
鞠莉「……あ、それならウチに来る?広いし、お菓子も用意するし」
曜「えー!鞠莉先輩のお家に行けるんですか!?」
ルビィ「で、でも鞠莉先輩のお家ってあそこの淡島ホテル、ですよね……?」
梨子「ホテル!?家が!?」
鞠莉「?……そんなに驚くことなの?」 善子「これだから金持ちは……」
果南「そうだね……お金が全てじゃないんだよ……」
果南「うん、でも良い提案だったね!流石梨子ちゃん!!」👏👏
果南「じゃあ今週の土曜日皆で沼津に行って、布を選んで買って、その後淡島まで行って鞠莉の家でお茶しよう!」
果南「あっ。淡島ってことは……梨子ちゃん、ウチ来る!?わかめの味噌汁作ってあげるよ!」
梨子「え、えええっ!?」アワアワ
善子「ちゃっかりナンパしないで貰えます……?」 千歌「そうだそうだ!梨子ちゃんは私のモノだぞ〜!」
ダイヤ「何を言っているんです!?梨子さんは私が!」
花丸「あ、じゃあオラも」
鞠莉「なら私も〜」
ルビィ「る、ルビィも……」
曜「私も私も〜!梨子先輩は私のモノだ〜っ!」
梨子「ええええぇっ!?!?どういう状況!?」
果南「なんでさ!皆今まで梨子ちゃんの可愛さに気付いてなかったくせに!」
千歌「梨子ちゃんの可愛さを果南ちゃんに教えたのは私です〜っ!」
果南「こいつぅ!!」 鞠莉「あ、土曜日泊まっていく?それなら日曜日も続けて練習出来るしいいんじゃない?」
果南「えっ、梨子ちゃんとホテルに泊まるなんてそんな……」ポッ
善子「うわ最低ねこの人」
花丸「でもそれ良いと思います。オラは賛成」
ルビィ「ルビィもその!……み、皆でお泊まりとか……してみたかったから……」
ルビィ「……でもお父さんとお母さん、許してくれるかなぁ……」
曜「ルビィちゃん家厳しいもんね……」
ダイヤ「……はぁ、それなら私から行っておきますわ」
ダイヤ「私が一緒ならあまり言われないはずでしょうし」
ルビィ「お姉ちゃん……っ!」パアァッ
千歌「じゃあ土曜日にお買い物して、その後に鞠莉先輩家に泊まるってことで!決定!!」
梨子「そ、そんないきなりぃ……っ!」アワアワ
善子「もしかして都合悪い?」
梨子「そ、そうじゃないけど……突然こんな大人数で押しかけちゃって、……迷惑じゃないですか?」
鞠莉「全然平気よ。賑やかなのは楽しいから」 曜「……賑やかなのは、楽しい……」
-
鞠莉『……大人数なんて、そんなに好きじゃないんだけど……』
-
曜「……っふふ」
果南「どうかした?」
曜「ううん、何でもない」
千歌「あ!じゃあじゃあ、土曜日の予定決めちゃお!あ、皆LINEやってます?交換してグループ作るんで、そこで話し合いましょー!」 --------
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土曜日
沼津某所 待ち合わせ場所
ミーンミンミンミンミン… ミーンミンミンミンミン……
千歌「おでかけおでかけうれしいな〜♪」
千歌「助けたカメに〜連れられて〜♪」
善子「絶対違うでしょその歌詞」
千歌「分かんないよ!?おでかけしたはずだったのに、いつの間にか助けたカメに連れ去られることだってあるかもしれないじゃん!!」
善子「意味分かんないわよ」
梨子「しかもその曲おでかけ、じゃなくておべんとうの歌だし」
千歌「え?そうなの?じゃあこういうこと?」
千歌「おべんとおべんとうれしいな〜♪助けたカメに〜連れられて〜♪」
善子「何で毎回カメに連れ去られるのよ」 千歌「皆来ないね」
梨子「ええ。それにしても暑いわね……」
千歌「もう七月だからね〜。夏本番!って感じだよ〜……」
善子「そうね……」
梨子「……よっちゃん、もしかして元気ない……?」
善子「ぅぐ、……そ、そんなこと……」メソラシ
千歌「ダメだよ!何かあったらすぐ言わないと!私達そういう仲だし!」
善子「そ、そういう仲ではなくない?相談とか全くしないし……」
梨子「何かあったの……?」
善子「んー……悩んでも仕方ないことなんだけど……」
善子「……動物科の二年生って、毎年一人一羽、ヒヨコを飼育するのよ」
千歌「え!いいなぁ!」 善子「……でも、ニワトリに成長したら自分達の手で命を頂いて、皆で食べなくちゃいけないのよね」
梨子「自分達の手でって……」
善子「……ええ。屠畜っていうんだけどね」
善子「それがついこの間、あったばかりで……少し憂鬱なのよ」
善子「……まだ手には、あの子にナイフを刺した時の感覚も残ってて、毎晩夢にあの子が出てくるの」
梨子「そんな授業があるのね……一体どうして……」
千歌「…………でも、その授業って悪いものじゃないよね」
千歌「命の大切さを学べるのは勿論だけど、ちゃんと”いただきます”と”ごちそうさま”を言おうって意識にも繋がるし、屠畜する前は生き物を愛することってこういう事なんだって思えるでしょ?」
千歌「だから私は、決して悪いものじゃないって思うんだ」
梨子「千歌ちゃん……」 千歌「で、でも私が善子ちゃんの立場だったら同じことになってたかも……」アハハ…
善子「……今思えば、鞠莉先輩も同じようなことになってた時期、あったわよね」
千歌「えー?あったっけ?」
善子「あったあった。同好会の仕事、サボってばっかだったのに丁度一年前くらいからサボるの辞めて毎日来るようになったじゃない」
千歌「あ、そういえば……私、それで鞠莉先輩と顔合わせる機会が多くなったのがきっかけで鞠莉先輩と仲良くなったし」
梨子「ま、鞠莉先輩って同好会サボったりするんだ!?」
千歌「意外?」
梨子「ええ、少し……学校行事とか、授業は来てないことがあるって聞いたことあるけど……何がなんでも同好会は行く人だと思ってたから」 千歌「ふふ、まあそこが鞠莉先輩らしいというか」
鞠莉「私がなんだって?」
梨子「きゃっ!?って、ま、鞠莉先輩!?」ビクッ
果南「梨子ちゃんっ!」ギュッ
梨子「か、果南先輩も!」
鞠莉「私と果南、淡島に住んでるから一緒に来たのよ。船乗って、それからうちの車で」
善子「電車じゃなかったんですか?」
鞠莉「果南がどうしてもお金無いってグズってね。仕方ないからうちの車で行くことにしたのよ」
果南「ま、……まあそういう時もあるよね!」 ダイヤ「おまたせしましたわ!」タッ
花丸「遅くなってしまってすみません〜」タッ
ルビィ「ごめんなさあああいっ……」タッ
果南「いちにぃ……うん、全員揃ったね」
善子「いや曜が来てないですよ」
果南「あ、ほんとだ。ごめんごめん、忘れてて」アハハ
鞠莉「単純に数数えられなかっただけでしょ」
千歌「よーちゃん寝坊かな?」
曜「あ、いたいた!おーい!」タッ
梨子「よ、曜ちゃん!……あれ、なんか凄い汗かいてない?」
曜「ああ、はい!待ち合わせ場所、学校かと思っててずっと待ってたんですけど、良く考えたら沼津だったー!と思って、学校から走ってきました!」ビシッ
ダイヤ「学校から走ってきたんですの!?相当距離あったでしょう?」
曜「そうですけど、私、運動大丈夫なんで!」
花丸「……これが俗に言う脳筋ずら……」
ルビィ「うん……」 千歌「まあまあ、全員揃ったことだし、れっつごー!」タッ
梨子「あ、千歌ちゃん!お店の場所分かるの?」
千歌「全然わかんない!」
ダイヤ「じゃあ一体何処に走り出そうとしたのですか!」
曜「あ!案内するから待って〜!」 -----
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-
数時間後
小原家 淡島ホテル
千歌「うおおおおお!広い!広いひろーいっ!!」キラキラ
曜「みてみてみて!海!海だよー!!!」
善子「海なんか毎日見てるでしょ!」
果南「ちょっと、静かにね……?」
鞠莉「あ、荷物はその辺置いていいわよ」
花丸「あ、はい……!」
ドサドサッ… ドサ……
花丸「はぁ〜っ……荷物重かったずらぁ……」グデッ
梨子「そうね……腕ちぎれちゃうかと思ったわ……」 ルビィ「……こんなに沢山買って貰っちゃって良かったんですか……?」
鞠莉「ええ。その代わり、今日は楽しい夜にしましょう」
善子「その台詞、なんか嫌なんだけど……」
鞠莉「ああ、嫌といえば、千歌っちから貰った歌詞に曲付けてみたわよ」
千歌「どうしてそれで思い出すんですか……」
ルビィ「これがルビィ達がスクールアイドルとして活動する一曲目……!」キラキラ
花丸「サンシャイン、ぴっかぴか音頭……?」
果南「お、お祭りらしいタイトルだね……」 鞠莉「じゃあ流すわよ」カチッ
♪〜サンシャインぴっかぴか音頭(ヘビメタver.)
果南「うーん、音頭って知ってる?????」
鞠莉「この部分は振り付けにヘッドバンキング入れたらいいと思うんだけど、果南はどう思う?」
果南「音頭って知ってる?????????」
鞠莉「え〜なんで?皆こういうの嫌い?」
梨子「嫌いってわけじゃないけど……」
善子「単純に馴染みがない、というか」
ダイヤ「私は個人的にはまあ、好きな方ですが、これではお祭りで歌えませんわ……」 花丸「もっとお祭りみたいにじゃんじゃか太鼓の音とか入れたいですね」
ルビィ「太鼓といえば……」チラ
果南「え、私?」
ルビィ「果南先輩、太鼓部だから……」
果南「まあ何とか出来なくもないけど……鞠莉は?」
鞠莉「え?別にいいわよ?これはこれで私が楽しむ用に取っておくから問題ナシ♪」
果南「よし、じゃあもう少しお祭りっぽく編曲してみるよ」 鞠莉「これパソコンね。これで色々できるからやってみて」
果南「わかった。頼りになるよ」パソコン カタカタ…
鞠莉「ありがとう。なら果南が編曲してる間にそれぞれの部屋に案内するわ」
曜「おおおおお!ついに!!!!」
鞠莉「あ、悪いけど……二人一部屋ね。その代わりタダにするから多めに見て頂戴」
鞠莉「ええっと、まず千歌っちと梨子がこの部屋ね」
千歌「え!梨子ちゃんと同じ部屋だって!やったやったー!!!」
梨子「うん、やったね千歌ちゃん」ニコ
千歌「枕投げしようね!!!!」
梨子「うーん」 鞠莉「次にダイヤとルビィ」
ダイヤ「予想通りですわね」
ルビィ「お姉ちゃんと一緒で良かったぁ……」ホッ
鞠莉「花丸と善子」
花丸「えっ」
善子「…………っ」ニコ
花丸「〜〜っ!?!?」カアァッ
花丸「??……???」バクバク
鞠莉「それから……果南と曜」
曜「やったー!果南ちゃんと同じ部屋だってー!!!」ユサユサ
果南「んー」パソコン カタカタ…
鞠莉「私は自分の部屋があるから、何かあったら私よ部屋に来て。それぞれの部屋に移動したら疲れてると思うし、各々でやりたいことしながらゆっくりしてって」
「「「「「「「はーい」」」」」」」
パタン… 果南「…………」カタカタ…
鞠莉「……あら、自分の部屋行かなくていいの?」
果南「曜が居ると集中出来ないからね。もう少しだけ鞠莉の部屋貸して」
鞠莉「良いけど……なんかいる?紅茶とか」
果南「あ、お願いしてもいい?あとイヤホンからヘッドフォン欲しいかも」
鞠莉「分かった、聞いてくる。ちょっと待ってて」
果南「うん、ありがとう」
鞠莉「こちらこそ」 ----
一時間後
カチッ……
果南「ふぅ……こんなもんかな」
鞠莉「出来た?」
果南「うん、どう?」イヤホン スッ…
鞠莉「────うん、良いんじゃない」
果南「ありがと。他の皆は?」
鞠莉「取り敢えずさっき様子見に行ってみたんだけど、多分疲れて寝ちゃったわね」 果南「大荷物だったもんね〜」
鞠莉「でも大体の素材は買えたんでしょ?お祭りの分と、文化祭の分で」
果南「そうみたい。何か青系の布多かったね」
鞠莉「それは私も思った。どんだけ青系好きなのよって思ったけど、まあ、衣装係に曜が居るしね」
果南「あ、そうだ。鞠莉、試しにこれ歌ってみてくれない?」
果南「皆にこんな感じなんだって雰囲気掴んで欲しいし、お手本があった方が歌いやすいしね」
鞠莉「えーなんでよ、果南が歌ったら?」
果南「私は歌そんなに上手くないし……」
鞠莉「んん……まあ、いいけど」 果南「ありがと、じゃあここの……鞠莉のパートから歌ってみて」
鞠莉「わかった……」スゥ…
鞠莉「自由に吹いてる風まかせーっ!!」⚠︎シャウト
果南「ストップ。違う違う違う」
果南「シャウトじゃなくて、ね?それだとヘビメタバージョンのぴっかぴか音頭みたいになっちゃうから」
果南「もう少しこぶし入れて歌ってみて」
鞠莉「分かった」
鞠莉「♪ン自由〜に吹いてる かっぜ まっかせェ〜〜〜」
果南「何故最初からそれをやらないのか」 果南「まあちゃんと歌えてるしいっか。このまま全パート歌って欲しいだけど……いい?」
鞠莉「いい?……というか、私しか居ないんでしょ。付き合うわよ」
果南「ありがとう鞠莉……なんかさ、鞠莉って案外優しいんだね」
鞠莉「優しくないように見えてた……?」
果南「ううん、そういう訳じゃないんだけど……」
果南「鞠莉ってさ、一人が好きって言ってたじゃん?」
果南「……だからさ、私達みたいにワイワイ騒ぐのとか好きじゃないのかなって思ってて、実は少し距離置いてたんだ」 果南「だからかな。その分、千歌が鞠莉を引っ張り出してくれたのが嬉しかったんだ。実は泣き虫だとか、皆で居る時優しく笑ったりとか、ロックな曲が好きだとか、歌が上手かったりとか……鞠莉の知らなかった一面も見れて」
果南「私、もっと鞠莉のこと知りたくなっちゃったよ」ニッ
鞠莉「……っふふ、何?口説いてるつもり?」クスッ
鞠莉「……その、ありがと」ポソ
果南「あ、照れてる?」
鞠莉「照れてないし。ま、……改めて同じ3年生同士よろしくね、果南」
果南「うん、よろしく鞠莉」 ----
夕方
バタンッッ
千歌「あーっ!!!ちょっともー!!寝ちゃってたじゃん!!どうして起こしてくれなかったの〜!!」
梨子「気が付いたら外も暗くなってるし!」
善子「あ、起きた?おはよ」
千歌「もう夜じゃん!ご飯は?もう食べちゃった?」
善子「ううん、今からよ。今鞠莉先輩と果南先輩とダイヤが作ってるわ」
千歌「良かったぁ……」ホッ
善子「あ、そうだ。一年生がまだ部屋で寝てると思うから起こしに行ってあげて」
千歌「じゃあ私起こしてくるー!」タッ
梨子「皆寝ちゃってたんだ……」
善子「ええ。私もさっき起きたとこ。鞠莉先輩と果南先輩はずっと起きてたみたいだけどね」
梨子「ずっと!?先輩達も疲れてるはずなのに……」 花丸「…………オハヨウゴザイマス……」グシグシ
梨子「わっ、おはよう花丸ちゃん」
花丸「……もう夜なんですね……オラ、こんなに寝ちゃったら夜眠れなさそう……」
善子「気持ちは分からなくもないわね……あ、寝癖……」サッサッ…
花丸「ありがとうございます……」ムニャ…
ルビィ「……おはようございまぁす……」
梨子「ルビィちゃんもおはよう。ゆっくり休めた?」
ルビィ「はい……っ、元気いっぱいです」ムンッ
梨子「ふふ、それは良かった。って、曜ちゃんは?」
善子「……見てあれ」
千歌「ほらよーちゃん自分で歩いて」グイグイ
曜「んん……まだ眠たいよぉ……」ズルズル
千歌「もーっ、そろそろご飯だよー」
曜「ごはん?ごはん、ごはん……」ムニャ… グシグシ…
善子「千歌がお姉ちゃんしてるわ……」
梨子「ほんとね……珍しい……」
ダイヤ「ご飯出来ましたわよー」
果南「皆今から外行くよー。準備してー」
梨子「な、何で外!?」
果南「それは行ってからのお楽しみだよ!さぁ行こ!」 ---
淡島ホテル 外
鞠莉「あ、来た来た。もう設置出来てるわよ」
千歌「な、なにこれ……」
ルビィ「……ご、ごくり……」
曜「これってもしかして……!」
ドォォォォォォォォォォォォン!!!
「「「「「「「流しそうめん!?!?」」」」」」」
果南「正解!私が鞠莉にやりたいってグズったら、鞠莉がしてくれるって言ったから!」
鞠莉「私も一度流しそうめんはやってみたかったし、せっかく皆居るんだから丁度いいと思ってね」
ダイヤ「鞠莉先輩達がナタを振り回しているのを見た時はどうなることかと思いましたけど……なんとか形になって良かったですわ」
果南「やっぱ緑化科は竹の扱いに慣れてるからいいね」
千歌「そりゃ、去年の文化祭は竹垣とししおどし作ったし……」
梨子「ここ最近の実習も造園技能士の資格取得に向けて竹垣ばっかり作ってるし……」
ダイヤ「辛い実習を思い出してきてしまいましたね……」 善子「まあ実習のことも忘れて楽しみましょ」
花丸「そうですね……!皆それぞれ実習だったりで忙しかったですし、偶にはこういうのも良いですね。ね、ルビィちゃん」
ルビィ「うんっ、ルビィ、流しそうめんやってみたかったんだぁ!」
鞠莉「よーっし、それじゃお箸と汁配って!早速始めるわよ〜!」
千歌「……なんか、鞠莉先輩少し明るくなった?」コソッ
果南「ああ見えて少し人見知りしてた部分もあるだろうし、漸く打ち解けたみたいだね」コソッ
曜「鞠莉先輩鞠莉先輩!私、そうめん流したいです!」
鞠莉「良いわねぇ。こっちおいで曜」
曜「やったー!!!」 ダイヤ「脚立危ないから気をつけるんですのよ」
曜「はぁい」ヨイショ ヨイショッ…
鞠莉「水流すわよ〜」
果南「ほら!皆竹の周りに集まって!そうめん流すよ!」
梨子「は、はいっ……!」
ルビィ「楽しみだなぁ……」キラキラ
花丸「な、流しそうめんってどうすれば良いずらぁっ!?」
善子「流れてきたそうめんをお箸で掬って取ればいいの。自分で掬ったやつは今持ってるお汁に潜らせて食べたらいいわ」
花丸「な、なるほど……」
善子「取り敢えず……聞くより慣れろってやつね」
曜「いきまーす!!!」
曜「とりゃあぁーっ!!」ドバドバドバ
千歌「ちょっ!?一気に全部!?」
ダイヤ「少しずつ流すものでは無いのですか!?」
梨子「と、取り敢えず取るしかないわよ!」
千歌「が、頑張るぞみんなぁ!」アワ
ドドドドドドドドドドッッ!!!!!
「「「「「「「わああああああぁーッ!!」」」」」」」
曜「あ、あれぇ……?」
鞠莉「曜。出禁ね」
曜「えっ」 テスト勉強と課題を潰してから書き始めるので、夜遅くになってしまうかもしれませんが今日必ず更新しますね〜! ------
数時間後…
千歌「…………」ゴクリ
千歌「…………」スッ…
シュワアアァァッ…!
千歌「おおおおおおっ!見て花火!!!花火だあああぁっ!!」キラキラ
果南「うおっ危な」
ダイヤ「振り回さないでください!!」
曜「千歌ちゃん千歌ちゃん!私にも火分けて!」
千歌「いいよいいよーっ!ほら!」ジュウゥ……
曜「おおおおおおーっ!!!見て!皆見てー!」シュワアアァァッ…!
梨子「綺麗ね……」
ルビィ「ですね……」 花丸「ルビィちゃん。こっちおいで。オラと一緒に花火やろう」チョイチョイ
ルビィ「ええっ!る、ルビィは……」
善子「良いから良いから。梨子も来なさいよ」
梨子「わ、ま、待ってよ〜!」タッ
花丸「……はい、善子先輩」
善子「ありがとう花丸。これロウソクね。気をつけて」
花丸「……はい」スッ…
花丸「……わぁ、綺麗……」シュワアアァァッ……
善子「火貰うわね」スッ…
花丸「ぁ……はい……」 善子「……高校にはもう慣れた?」
花丸「だいぶ……ですかね。でもまだ実習棟に行く時の移動が間に合わなくて…いつも怒られちゃってます……」
善子「体力無いときついわよね……」
花丸「……あの。善子先輩はどうして農業高校に入ったんですか?」
善子「……んー……何でだろう……」
善子「私ね、元々動物ってそんなに好きじゃなかったのよ。何考えてんだか分かんないから意思疎通なんて出来ないし、噛むし、引っ掻くし……」
善子「……でも、中学生の時に子猫を拾ってね」
善子「雨の日に大きな木の下に、本当に小さい……生まれたばかりなんじゃないかってくらいちっちゃい黒猫だったわ」 花丸「その猫ちゃんは善子先輩が飼ってるんですか……?」
善子「ううん、今はもう居ないわ」フルフル
善子「……死んじゃったのよ。小さいうちに」
善子「私が子猫の保護の仕方とか全く知らなくて、気が付いたら段々冷たくなってきちゃってて、……そのまま死んじゃってたわ」
善子「それで、自分の不甲斐なさに気がついたの。だからその子猫のような子達を今度こそ救えるようにって動物科に入学したわ」
善子「……ごめんね、暗い話しちゃって」
花丸「……いえ、オラの方こそ何も知らずに聞いてしまってすみません……」
善子「いいのいいの。気にしないで?」 善子「だから、私は今度こそ間違えない。次こそ、小さい命を救うの」
花丸「……善子先輩……なんだかヒーローみたいですね」
善子「えっ!?ヒーロー!?」
花丸「はい、どうしてか……そう思いました」
善子「ひ、ヒーローねぇ……」
善子「(……あの子は救えなかったけど、その経験が今に繋がっているわけだし……ヒーローと言えばあの子猫な気もするんだけど……)」
善子「(……でも、悪い気はしない、かも……)」フニャリ…
花丸「あ、バケツ持ってきますね」
善子「あっ、う、うん、ありがとう」
梨子「ルビィちゃん、そーっとよ。そーっと……」
ルビィ「……は、はひぃ……」アワアワ
善子「……ん?」チラッ 梨子「きゃっ!?き、気を付けてルビィちゃん!火傷しちゃうわ!!」ギュッ
ルビィ「わあぁんっ……怖くて火付けられないよぉ……」ウユウユ
鞠莉「何してるの?」
ルビィ「まりしぇんぱぁい……これぇ……」ウユウユ
鞠莉「っぷ!なになに、二人揃って火付けられなかったの!?」
鞠莉「なにそれかっわいい〜っ!!!もう貸して!この鞠莉先輩が火付けてあげるわ!」バッ!
梨子「あっ、鞠莉先輩それ置き花火──」 ザアアアアァァァッ!!!
鞠莉「あっっつ!?!?」ドッシーン!
果南「ちょ!?ちょっと大丈夫!?」
ダイヤ「凄い勢いで吹き出してますわっ……ちょっと誰かバケツバケツ!」
千歌「バケツ?ここここ!」
曜「こっちにもあります!」アワアワ
千歌「とりゃあぁー!」バシャーン!
善子「いや鞠莉先輩に水かけてどうすんのよ!?」
鞠莉「せ、セーフ……」ビチョビチョ…
果南「…………お風呂、入ろっか」
鞠莉「……ええ」 ----
千歌・梨子の部屋
千歌「皆おやすみー!」
パタンッ…
梨子「皆に挨拶しちゃったけど……昼間寝ちゃったからそんなに眠くないわね……」
千歌「そうだねぇ……少し夜更かししちゃうっ?」
梨子「明日は練習よ……?」
千歌「いいじゃんいいじゃん。ちょっとくらいお話しようよ!」
梨子「もう……じゃあ、ちょっとだけよ?」
千歌「うん!何話そっかなぁ」
千歌「……あ。そうだ、ねぇねぇ梨子ちゃんに私が浦の星に来た理由教えてあげるね!」
梨子「教えてくれるの?」
千歌「うん!特別だよ!」 千歌「私ね、実は勉強やりたくなくて農業高校に来たんだ」
千歌「中学生の時もテストの順位は下から数えた方が早くて……授業にも全然着いて行けなくって……」
千歌「このままじゃ行く高校が無い〜ってなってた時にね、果南ちゃんが農業高校へ進学するって言ってきたんだ」
梨子「果南先輩が?」
千歌「そうだよ〜、何も言わず突然進路決めちゃって!」
千歌「……それでね、あとでどうして農業高校にしたのー?って聞いたら……果南ちゃん、なんて言ったと思う?」
梨子「うーん……なんだろう……」 千歌「……『千歌がのびのび通える学校に、私も居たかったから』……なんて言ったんだよ!あの果南ちゃんが!」
千歌「高校って、自分の夢を叶える為に物凄く大切な選択だと思うの。それなのに果南ちゃん……自分の事じゃなくて私の事を考えててくれてて……」
千歌「私、すっっごい嬉しかったの!果南ちゃんが入学した後もずっと浦の星のこと話してくれて、私、浦の星がだーいすきになったんだ!」
千歌「あれだけ不安だった高校選びも、果南ちゃんのお陰で即決だったし!それに、ワクワクしながら受験にも、入学式にも行けて……」
千歌「それから、ダイヤちゃんに出会って、善子ちゃんに出会って、鞠莉先輩に出会って……」
千歌「梨子ちゃんにも、皆にも出会えた!これってとっても素敵なことじゃない?奇跡みたいな事じゃない!?」
梨子「……っふふ、そうね」クスッ 梨子「……千歌ちゃんは、浦の星が大好きなのね」
千歌「うんっ!だーいすき!」ニコ
千歌「……無くなっちゃうのは悲しいけど、でも、その前に皆でいっぱい思い出作るんだ。学科も、学年もバラバラな皆で!」
梨子「……うん、一緒に頑張ろうね」
千歌「うん!」
梨子「……あ、もうこんな時間……明日に響くからもう寝ましょうか」
千歌「えーっ、もう……?」
梨子「…………じゃあ、……枕投げでもする?」
千歌「えっ!いいの!?」パアァッ
梨子「バレないように、こっそりよ」
千歌「〜っ!!うん!」 -------
-----
--
翌日
果南「さーて、今日は練習するよー!」
ちかりこ「「………………」」ゲッソリ…
善子「うわっ。あんた達クマヤバいわよ」
ダイヤ「もしかして寝てないんですの?」
千歌「……梨子ちゃんが燃えちゃって……」
梨子「どうして私の所為にするのよ!?千歌ちゃんだって負けを認めなかったじゃない!」
千歌「だって梨子ちゃんズルした!」
梨子「枕投げにズルなんてないでしょ!?」
果南「それじゃ、早速練習を──」
果南「と言いたいところなんだけど……」
果南「今日から曜とルビィちゃんが衣装作りを始めるから、二人は取り敢えずそっちを優先してやってもらうよ。残りの人達はそのまま練習で!」 曜「任せて〜!私達がとっておきの衣装作っちゃうよ〜!」ビシッ
ルビィ「が、頑張りますっ……!」ムンッ
花丸「オラもそっちが良かったずらぁ……」ショモ
果南「マル、そんな事言わないで?私が居るじゃん!」
花丸「絶妙に嬉しくならないんですよ……」
果南「…………じゃ、じゃあ、それ以外はランニングから──」
鞠莉「果南。千歌っち借りてもいい?」
果南「え?良いけど……なにかするの?」
鞠莉「このタイミングで文化祭の曲も話し合っておこうと思って。もう作詞してるらしいし、どんな感じにしたいか、みたいなね」
果南「なるほどね。でも千歌は我儘だし根気強くいかないと大変だよ〜?」
千歌「そうだぞ〜!」ムッ
果南「千歌のことだから突然おっぱい吸わせてとか言うよ」
千歌「そうだぞ〜!」
千歌「……って言わないよそんなこと!!!言ったことないでしょうが!!!!」
鞠莉「まあどうでもいいけど。取り敢えず千歌っちは借りるわよ」
果南「うん、おっけー」 善子「ランニングって、何処走るんです?」
果南「淡島を一周かな。途中で淡島神社でお参りしていく予定だよ!」
ダイヤ「え、淡島神社ですか!?」
梨子「淡島神社?」
善子「めちゃくちゃ長い階段登らないといけないのよ。それをランニングの途中に挟むって……」
花丸「終わったずら……遺書を書いてくるべきだったずら……」トオイメ
梨子「は、花丸ちゃん!?帰ってきて〜っ!」ユサユサ
果南「それじゃ行くよ〜!出発〜!」タッ ------
淡島ホテル
鞠莉の部屋
千歌「ねー、鞠莉先輩〜。ねむーい……」
鞠莉「もう……昨日千歌っち達の部屋からドタドタ聞こえると思ったのよね。……自業自得」
千歌「そうだけどーっ!」
鞠莉「ほら、どんな感じがいいとかないの?」
千歌「ない!」
鞠莉「千歌っち」
千歌「やだやだやだやだーっ!チカも皆と練習したーい!」ジタバタ
鞠莉「……ふんっ」バチーンッ!
千歌「ぎゃっ!?い、痛!?どうしてチカをぶつんですか!?」
鞠莉「……千歌っち、右の頬をぶたれたら、左の頬は差し出すんでしょう?」
千歌「ひゃ……ひゃい…………」 鞠莉「歯食いしばりなさい」スッ…
千歌「……っ」キュッ
千歌「っておかしくないですか!?何でチカもう一発行かれそうになってるんですか!?」
鞠莉「いけそうだったから」
千歌「サイテー!」
鞠莉「……はぁ、もう適当にやっちゃうわよ」
千歌「またヘビメタになるじゃないですかー!」
鞠莉「もーっ、我儘ねぇ」
鞠莉「……おやつ食べる?」
千歌「え!おやつ!?」キラキラ
鞠莉「マカロンとかケーキとか沢山あるわよ」
千歌「食べたい食べたい!」ピョンピョン
鞠莉「分かったわ。じゃあ曜とルビィ呼んでおいて。用意してくるから」
千歌「やったやったー!私皆と一緒にランニングじゃなくて良かった〜!」 -----
一方その頃……
花丸「はぁ……はぁ……死ぬ……死ぬずら……」ゼェゼェ
梨子「私ももうダメ……朝ごはん出てきちゃいそう……」ゼェゼェ
ダイヤ「ふたりとも……頑張るんですわ……もっと気合い入れて……」ゼェゼェ
善子「果南せんぱーい。花丸と梨子とダイヤが萎れてます」タッタッ…
果南「えー、もう?」タッタッ…
善子「少し休憩しないと梨子死にますよ」
果南「それは困るなぁ」ピタッ
善子「最低ですよ貴女……」 おじいさん「すみません」
果南「あ、はーい。どうしましたか?」
おじいさん「淡島神社はどちらにありますか?」
果南「あー、神社ならこの階段を登った先にあります。私達も今行ってきたばかりなんですよ」
おじいさん「かなり長い階段ですねぇ。お嬢ちゃん達はこれ登ってきたの?偉いねぇ」
果南「最初は大変ですけど……やりがいがあって、達成感があって、気持ちがいいんです」ニッ
おじいさん「ありがとうねぇ。またね」フリフリ
果南「はい、お気をつけて。無理なさらず」フリフリ 果南「…………私、おじいちゃん好きだなぁ」
ダイヤ「どうしたんですの?突然……」
果南「なんかさ、農業高校とかっておじいちゃん先生が多いじゃん?だから自然に、おじいちゃんと話すと安心感があるというか……」
花丸「……オラも分かります。どの先生もじいちゃんみたいに優しくて、大好きなんです」
善子「……言われてみれば私も、若い先生よりおじいちゃん先生の方が話しやすいかも」
ダイヤ「……まあ、私もですが……」
梨子「み、皆も?」
果南「もしかして〜、梨子ちゃんもっ?」
梨子「はい、浦の星に来てからですけど……」 果南「やっぱり皆好きなんだねぇ。おじいちゃん」
果南「…………もう一回神社行こっか。あのおじいちゃん、ちゃんと登り切れるか心配だし」
ダイヤ「同意見ですわ」
花丸「オラもずら!」
善子「ふふ、そうね。梨子もいけそう?」
梨子「……うん、頑張ってみる」 -------
淡島ホテル ロビー
果南「ただいまぁ」
千歌「あー!ルビィちゃん曜ちゃん!こっちにケーキあるよケーキ!」
ルビィ「わあぁっ、いちごがたくさんっ!」パァッ
鞠莉「チョコレートフォンデュも用意する?」
ようちかるび「「「するするーっ!」」」
ダイヤ「……皆さん、随分と楽しそうですわね」ニッコリ
千歌「そうそう、鞠莉先輩が沢山お菓子用意してくれてね!それで皆でお菓子パーティを──」チラッ
千歌「ひっ!?ダイヤちゃん!?それに皆も!?いつの間に帰ってきたの!?」ビクッ
花丸「こんなこと有り得るんかぁ……信じて送り出してくれた友達がオラを裏切ってお菓子パーティしてるなんてぇ……」グスッ
善子「誰が発端?」
千歌「い、いやぁ……鞠莉先輩が、ね?」チラッ
鞠莉「千歌っちが機嫌悪かったから」
善子「千歌は赤ちゃんか何かなの?」 ルビィ「ご、ごめんなさい……」シュン
千歌「ええっ!る、ルビィちゃんは悪くないよぅ……」アワアワ
梨子「千歌ちゃん……」
千歌「ご、ごめんってばああぁっ!!」アワアワ
鞠莉「まあ、ほら。曲は出来たわよ」
果南「え!?出来たの!?こんな短時間で!?」
曜「私達がお菓子食べてる間に!!」
鞠莉「取り敢えず聞いてみて」
カチッ…
♪〜〜
梨子「す、凄い……これ、鞠莉先輩が?」
鞠莉「ええ。どう?」
ダイヤ「凄くいいと思いますわ。千歌さんの素直で明るい歌詞にも合いそうですし」
ルビィ「…………すごい……」キラキラ
曜「なんかダンスしたくなっちゃうねぇ!」
果南「ダンスしちゃう!?」
ようかな「「らんらんらーん!」」クネクネ
梨子「ぜ、絶対そのダンスは違うと思うけど……」
善子「……これが、スクールアイドルの曲……」
花丸「かっこいいずら……」キラキラ
鞠莉「ま。そういう訳で、これに歌を合わせて、ダンスを付けて衣装を作って。文化祭へ備えましょ」 千歌「………………」ポカーン
梨子「あれ、……千歌ちゃん?おーい、千歌ちゃーん……」ユサユサ
千歌「すごい……凄いです鞠莉先輩!私、感動しちゃいました!」
千歌「これなら絶対浦の星の皆に凄いって言って貰えるし、皆に思い出残せると思います!!!」
千歌「鞠莉先輩!貴女は天才ですよ!」ガシッ
鞠莉「そ、そう?ありがとう??」アワアワ
千歌「はいっ、天才です!!!」ズイッ
鞠莉「ちょ、ちょっと近いんだけど……」
千歌「今すぐ歌詞合わせましょう!!なんならチカが今ここで!」
鞠莉「あ……えと……」←詰め寄られるのは慣れてない
果南「落ち着きなってば千歌ぁ!!鞠莉困ってるから!!」アワアワ --------
------
---
翌日
緑化棟 緑化教室
授業:課題研究
山崎「今日課題研究の前に寒冷紗付けるの手伝ってくれんか」
千歌「嫌です」
山崎「おい」
梨子「寒冷紗?」
千歌「日除けだよ〜、ぜっんぜん効果無いけど」
ダイヤ「文句言わずに手伝わないと熱中症になるのは貴女ですよ」
千歌「あーもーっ!わかったわかった!やればいいんでしょ!」ガタッ
梨子「結局やるんだ!?」
千歌「熱中症、すーっごい辛いんだよ!!今年は去年よりも暑いって毎年言ってるし、今度こそ死人出るよ!」ズイッ
梨子「そ、それもそうね……」
千歌「さぁ早く行こう!今日も暑いんだから!」
山崎「いきなりやる気になるなぁ、あいつ」
ダイヤ「ですね……」 ----
造園技能士 実技試験練習場
千歌「せ、せんせー?……これ、3メートルはあるんじゃ……」
山崎「だから脚立持って来いって言ったやろ」
千歌「言ってたけど!」
梨子「どうしたらいいんですか?ボロボロの寒冷紗は付いてますけど……」
山崎「まず今付いてる寒冷紗を下ろしてからやな。そっから、この綺麗な寒冷紗を屋根に付けよう」
ダイヤ「分かりましたわ。千歌さん、去年もしましたわよね」
千歌「またこの作業かあ……」
梨子「……えっと……」
山崎「梨子はゆっくりで良いから、見ながらやってみて。無理そうやったらダイヤとか千歌に聞いてな」
山崎「ちょっとサツマイモ圃場のところ見てくるから、お前ら落ちるなよ〜」
ちかダイりこ「「「はぁい」」」 千歌「ふふふーん、ふーんふーん♪」
梨子「千歌ちゃん昨日からずっとそれ歌ってる」クスッ
千歌「曲が出来るとやっと動き始めたって感じがしない?」
梨子「……それもそうね」クスッ
ダイヤ「それにしても……曲が付くと改めて良い曲なのだと実感しますわね」
梨子「そうね、千歌ちゃんの歌詞、本当に素敵だわ」
千歌「えへへぇ、そう?」フニャ
千歌「いやーでも!?やっぱりチカ天才だったって言うかぁ!──って、うおおぉっ!?」ガタッ
ダイヤ「あっ!」タッ
梨子「危ない!」ガシッ
千歌「あ、あっぶなぁ……脚立の上で暴れると危険だねぇ……」バクバク
ダイヤ「当たり前でしょ!気を付けなさいな」
千歌「は、はぁい……」 5chもいつまで保つか分からんな…
移動するとしたらどことか言ってくれると助かるけど強制はできんな
頑張って 書き込めてるね
このスレは別所でもいいからふ続いてほしいわ 色々情報が錯綜してるけど、みんな少なくとも普通のブラウザからなら読むことは出来るので
ここで続けられるなら続けて欲しいかな、もちろん作者さんの判断に任せるけど 取り敢えず専ブラでは過去ログ的な感じで読み込めなくなってしまったので、通常ブラウザを使いながら進めていく予定ですが、また突然書き込めなくなるかもしれないので、その時はまた対応を考えます。何がなんでも完結させるので任せてください! ありがとうございます。皆さん優しい
通常ブラウザだと画像が貼り付けられないのが難点ですね……このssの最後にひとつ画像を貼り付ける予定なのですが、それが上手くいくかどうか…… 書き込めるか否かと画像を貼れるか否かはそれぞれ独立した問題なので書き込めない専ブラでも画像上げてそのURLが得ることができるなら通常ブラウザで貼れるので問題ないです
他にもimgurへのアップロードの方法はいくつかあるので調べてみるとよいと思います >>615
ご丁寧にありがとうございます!
自分で色々調べてみて、良い方法が見つかればそちらを試してみたいと思います。 Mateなんか使えないのでブラウザから支援
ずっと応援してますので主さんのペースで頑張ってください! −−−−
数十分後
山崎「お前ら終わったか〜」
山崎「……うん。ちゃんと出来てるな」
千歌「あ、先生!どうです?上手く貼れたでしょ!?」
山崎「ああ、ありがとう」
山崎「でもお前んとこ、寒冷紗全く意味無いぞ」
千歌「ああホントだ!?!?チカのとこ全っ然日除けになってない!!!これじゃ熱中症になっちゃうんですけどー!」
ダイヤ「そこは貴女がつけたところでしょう?自己責任ですわ」
千歌「何でそんなこと言うんだあああ!ダイヤちゃんは私が熱中症になってもいいの!?」
ダイヤ「良くは無いですが……しっかり対策すれば予防することは出来るはずです」
千歌「完全には出来ないでしょ!」
ダイヤ「だから!」
梨子「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて!」アワアワ 千歌「……はっ!……ま、また暑くて機嫌悪くなっちゃった……ごめんねダイヤちゃん」
ダイヤ「いえ、私こそ言い過ぎてしまいました……」
梨子「な、なんかデジャブ……」
山崎「それじゃ少し休憩しとけ。水分補給は忘れるなよ」
ちかダイりこ「「「はぁい」」」
千歌「なんかさー、アレだよね。農業って楽しいけど、大変だし身体中痛いし上手くいかないことが多いからつい人に当たっちゃうよね」
ダイヤ「そうですね……いくら二年目とはいえ筋肉痛が酷い日もありますし……」
千歌「善子ちゃんなんか腰壊してるのに毎日作業してて偉いよね」
梨子「えっ、よっちゃん腰悪いの……?」
千歌「うーん、元々悪いわけじゃないらしいんだけどね。やっぱり農業って屈んだり重いものを持ち上げたりする作業が多いじゃない?」
千歌「それで腰に負担が掛かって、今はコルセット生活らしいよ。あ、そうだ!今度善子ちゃんの腰触ってみたらいいよ!硬いよ!!」
梨子「し、知らなかった……」 ダイヤ「心配掛けたくないならと、言っていませんでしたものね。恐らく私と千歌さん、それから梨子さん以外は知りませんよ」
千歌「果南ちゃんは気付いてそうだけどね、ストレッチ中の動きとか見てるから」
ダイヤ「それで言うと……鞠莉先輩にも言っているのでしょうか?腰に爆弾を抱えてれば出来ない作業もあるでしょうし」
梨子「あ、そういえば……作業は基本鞠莉先輩と分担してるって……」
千歌「じゃあやっぱり話してそうだね。鞠莉先輩も意外と優しいから善子ちゃんがキツいことは変わってあげてるのかも」
ダイヤ「鞠莉先輩、最初は何考えてるのかさっぱり分からなくて恐怖でしか無かったですよね」
梨子「あ、ダイヤちゃんも?……私も最初は鞠莉先輩のこと怖かったのよね……クールだったし」
千歌「今はぜーんぜんクールじゃないけどね!脛ぶつけて泣いちゃうくらいだし!」
ダイヤ「ええ。思っていたよりずっと子どもらしくて安心しましたわ」
梨子「淡島合宿した時だって、……なんかワンちゃんみたいだったよね、鞠莉先輩。構って欲しそうにこっち見てたりするところとか」クスッ
ダイヤ「シベリアンハスキーに似てますよね、鞠莉先輩は」
千歌「分かる分かる!クールな見た目とは裏腹にあの甘えたなところとか!くぅ〜っ、一回撫で回してみたいなぁ!」
梨子「辞めなさいよ?先輩としての尊厳が奪われて泣いちゃうかも……」
ダイヤ「それとも照れて真っ赤になるのでは……」
千歌「考えれば考えるほど赤ちゃんだ……鞠莉先輩って……」 千歌「はぁ〜……それにしても暑いねぇ……」
梨子「そうね……梅雨も終わって、カラッとした暑さになったからより暑く感じるわ……」
ダイヤ「今日も40度近く上がりますしね……」
千歌「これじゃ死人出るよ〜……でもまだ誰も熱中症で倒れてないの凄くない?」
梨子「確かに……実習服長袖だし、最初の頃は絶対倒れると思ってたのに、意外と平気よね」
ダイヤ「夏用の実習服は生地が薄いですからね。それもあるんでしょうけど、……透けますよね。夏用の実習服」
千歌「ああ分かる。透けるんだよね〜これ。下にTシャツ着とかないと下着見えちゃうもん」
梨子「でもこのTシャツが暑いのよね……余計な布って感じで……」
ミーンミンミンミンミン…… ミーンミンミンミンミン……
千歌「やば、暑過ぎない?避難する?」
ダイヤ「しましょう……」 −−−−−−−
−−−−−
−−
放課後
動物科 畜産棟
善子「よっこらせっと……」
善子「鞠莉先輩ー、この堆肥もう片付けちゃっても良いですかー?」
鞠莉「良いわよー」
🐶「キャンキャン!!」
鞠莉「ああ、散歩ね。ちょっとあんこの散歩行ってくるけど、それ変わらなくて大丈夫?」
善子「このくらい負担のうちに入りませんよ。大丈夫です。行ってきてください」
鞠莉「……わかった。無理しないこと」
善子「はぁい」 善子「(……いたた……ちょっと最近無理し過ぎてるかも……)」トントンッ
善子「(前に倒すのは出来るけど……)」グッグッ グッグッ
善子「いたたたっ!?!?」グッ
善子「……後ろには反れないのよねぇ……」
善子「(文化祭に向けての活動も、本格的になり始めたし……そろそろ何とかしないとよね……)」
鞠莉「善子」
善子「は、はいっ!」ビクッ
善子「……って、鞠莉先輩。散歩に行ったんじゃ……?」
鞠莉「あんこが早く帰りたいって言うから戻ってきたのよ。……腰、今までよりも負担掛かってるんじゃないの?」
鞠莉「……文化祭、大丈夫なの?」
善子「………………」 善子「……どう、ですかね……」
善子「でも腰を壊してるのは今に始まったことじゃないし、ステージ発表に向けて皆で練習する時間は好きなんです。……だから、好きだからこそ無理していたいと言いますか」
善子「……とにかく、確かに今は忙しいですけど決してそれが負担になったりはしていませんよ」
鞠莉「それならいいけど……果南とかには言ってあるの?」
善子「いえ、果南先輩には……千歌とダイヤは知ってるんですけど」
鞠莉「なるほどね。それならそこ経由で梨子も知ってそうね。……一年生には?」
善子「……言えないですよ。かっこ悪い先輩だと思われちゃうから……」
鞠莉「そう……」 鞠莉「あ、満咲にご飯あげなきゃ」スッ…
🐶「わふ!」ポスッ
善子「……よしよし……」ナデナデ
鞠莉「ほーら満咲。ご飯よー」
🐢「…………」モグモグ
鞠莉「……ねぇ、善子。よく聞いて」
善子「は、はい……?」
鞠莉「貴女はカッコ悪くなんか無いわ。怪我如きで今更善子のことを嫌いになる人なんか居ない。これだけは覚えておいて欲しいの」
鞠莉「それに……後輩の前で泣いたり逃亡したりしたことがある私よりもずっとカッコイイわよ」フッ…
鞠莉「だから自信持ちなさい」ポンポン
善子「鞠莉先輩……」
善子「っふふ、なんですかそれ。今の先輩の方がカッコイイですよ」
鞠莉「あ、今揶揄ったでしょ」
善子「別に〜?」ソッポムキ…
善子「やっぱ揶揄ったかも!」タッ
鞠莉「あ!ほらやっぱり!こら待ちなさい!」タッ −−−−−−−−−−
−−−−−−
−−−
一週間後
造園技能士 筆記試験当日
沼津某所
千歌「んーと、……あ、あそこだ」
梨子「あ、本当だ。あの会場みたいね」
ダイヤ「一般の受験者も居ますから、静かにね」
ちかりこ「「はーい」」
梨子「あっ、白津先生だ……おはようございます」
白津「おお、高海、桜内、黒澤。ちゃんと来れたか」
千歌「そうなんです!ダイヤちゃんが乗る電車とか降りる駅とかバスとかずっと教えてくれてて、迷子にならずに何とか辿り着けました!」
白津「良かったなぁ。高海一人だけだと迷子になるしな」
千歌「先生は私の事赤ちゃんだと思ってるんですか?」 ダイヤ「それにしても……一般の方は勿論ですが、他の農業高校の方も居るんですね」
白津「そうやね。やっぱり同じ農業高校生として同じことを学んでいる学科も多いですし、測量の時に分かったと思いますけど、私達がやっていない範囲もやっている学校もありますし」
ダイヤ「なるほど……」
白津「筆記の方は大丈夫そうですか?」
梨子「私とダイヤちゃんは何度も復習してきたので。……千歌ちゃんはずっと寝てましたけど……」
千歌「いやいやいや!バッチリですよバッチリ!だって筆記試験って正誤問題でしょ?たった二択じゃないですか!」
白津「黒澤、桜内。こういう人ほどね、受かるんですよ」
ダイヤ「そんな……」
梨子「私達が落ちて千歌ちゃんだけ受かったら殴り殺しちゃうかも……」
千歌「何言ってんの!?!?物騒だよ!!!?!」
白津「桜内変わったなぁ」ウンウン
千歌「いや別にそこ納得するとこじゃないですし変わり方ヤバいですよ!!!!殴り殺しそうとか言ってますよこの人!!!」
ダイヤ「千歌さん、お静かに」
千歌「私が悪いのこれ!?!?」
白津「まあ今日の筆記試験を頑張れば一段落着きますからね。三人とも頑張ってくださいね」
ちかダイりこ「「「はい」」」 もっと更新する予定でしたがすこぶる体調が悪い為、今日ここまでにします… −−−−
試験会場
梨子「(広いホールみたいなところに机と椅子が並べられてる……意外と受ける人居るのね……)」
梨子「(受験番号が貼ってある席に座ったけど……ダイヤちゃんも千歌ちゃんも少し離れたところにいる……てっきり出席番号順かと思ってたけど、そんなこと無かったな)」
梨子「(国家資格だって言われてたから、緊張するかと思ってたけど……不思議。全然緊張してない)」
梨子「(それよりも……)」チラッ
千歌「………………」キョロキョロ アワアワ
梨子「(千歌ちゃんの方が緊張してるじゃない)」クスッ
ダイヤ「………………」ペラッ… ペラッ…
梨子「(ダイヤちゃんはギリギリまで復習してる……偉いなぁ……)」
梨子「(私は何となく確認する気にならないな……今はこうして千歌ちゃんやダイヤちゃんのこと見てた方が落ち着く──)」
梨子「(って、私、いつの間にこんな二人のこと大好きになっちゃったの)」ハッ
梨子「(……来て良かったな、浦の星)」
「それでは試験を始めますので、受験票と筆記用具以外の持ち物は鞄などにお入れ下さい」
梨子「(……よし、頑張らなくちゃ)」グッ −−−−−
−−−
−
試験後 沼津郊外
千歌「はぁ〜〜〜っ…………」
梨子「さっきから溜息ばっかり……思うように解けなかったの?」
千歌「いや?寧ろ自信ある方だよ」
ダイヤ「だったら何故そんなに溜息ばっかりつくのです?」
千歌「だってさぁ……こんな楽な筆記試験が終わったってことは、本格的に実技試験の練習に入るってことでしょ?」
千歌「こーんな炎天下の中で何時間も作業するのはちょっと……気が滅入るというか……」
ダイヤ「……まあ、気持ちも分かりますわ……」
梨子「実際、ここまで耐えてるのが奇跡だもの……」 ミーンミンミンミン… ミーンミンミンミン……
千歌「あーっ!ダメだ!考えたら考えただけ暑くなる!!」
梨子「そのまま帰る?」
ダイヤ「どうせなら何処かで遊んでいきますか?」
梨子「えっ、いいの?」
ダイヤ「ええ。良い機会ですし」
千歌「それいい!ダイヤちゃんからそんなこと言ってくれる日が来るなんて思わなかったよ!だってダイヤちゃん一年生の時、私の胸ぐら掴ん──
セミ「ミーンミンミンミン……」
千歌「あーもー!セミうっさい!」
ダイヤ「セミにキレても仕方ないでしょう?短い命なんですから許してあげてください」
梨子「そうよ。どうせあと三日もすれば地面に落ちてるんだから」
千歌「そうだけどー!」 ダイヤ「あ、近くにショッピングモールがありますよ。きっと冷房が効いていて涼しいのでは無いですか?」
千歌「確かに!早く行こ二人とも!」グイッ
梨子「わっ、引っ張らないでよーっ!」
千歌「良いから良いから!早く涼みに行こ!」グシャッ…
ダイヤ「ち、千歌さん。今何か踏みませんでした?」
梨子「う、うん……何か潰れる音したけど……」
千歌「やだやだやだやだやだやだ!!!チカ踏んだもの分かっちゃった!!!絶対下見たくない!!!」
千歌「…………っ、」チラッ
セミ「」
千歌「ほらやっぱりいぃぃぃぃぃ!!!!!!!」 −−−−−
数十分後
ショッピングモール ゲームセンター プリクラ機前
梨子「見てごらん、この千歌ちゃん凄い盛れてるよ」
千歌「わ!ほんとだ!この梨子ちゃんとダイヤちゃんも可愛い!スマホに送る写真コレにしよ!」
ダイヤ「プリクラは凄いですね。こんなに自然に目が大きくなるなんて……」
梨子「でも意外だったな。ダイヤちゃん、こういうのあんまり好きじゃないタイプかと思ってた」
ダイヤ「まあ……実際あまり良い印象は無いですが……私も一度プリクラというもので写真を撮ってみたいと思っていたので」
梨子「今まで撮ったことなかったの?」
ダイヤ「ええ、私の両親がこういうものをあまり良く思っていなくて……誘ってくれる友達も居ませんでしたし……」
ちかりこ「「………………」」カオミアワセ
千歌「なぁに言ってるの!今は私達が居るじゃん!」
梨子「うんっ、ダイヤちゃんがプリクラ撮りたいって言ったら私達いつでも撮るから。気軽に言って」
ダイヤ「千歌さん……梨子さん……」ウルウル
千歌「よーっし!じゃあもっかい撮ろ!!」
梨子「そうね!」
ダイヤ「次は千歌さんが200円払ってくださいね」
千歌「なんでだよおおおおおっ!!!!」 −−−−−−−−−
−−−−−−
−−−
数日後
造園技能検定 実技試験練習場
授業:造園技術
造園技能士 講習実習
白津「えー、今日はですね、プロの造園士をお呼びしたので、プロの方々に実習を指導してもらいましょう」
白津「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
千歌「……今日絶対熱中症になる人出そうじゃない?」コソッ
ダイヤ「……ええ、今年一番の暑さになるらしいですし、……実技講習となると普段の実習よりも休憩時間が無さそうですわね……」コソッ
千歌「死人出るよね絶対」
ダイヤ「ええ……」 白津「それじゃ、昨日の続きから各自進めていってくださいね」
ちかダイ「「はーい」」
千歌「梨子ちゃんも行こー!」
梨子「う、うんっ……!」
梨子「…………」
梨子「(……今日、あんまり眠れなかったし……朝ご飯も寝坊しちゃって食べられなかったんだよね……)」
梨子「(熱中症、ならないといいけど……)」 −−−
梨子「………………」
梨子「(頭、痛い…………)」
講師「……うん、よく出来てますね」
梨子「ぁ……ありがとうございます」ペコリ
講師「でももう少し丁寧にやらないといけないですね」
講師「ここを、こう……」グッ
梨子「はぁ……はぁっ……」ポタリッ…
梨子「(あれ……汗が止まんない……それに段々吐き気もしてきた……これ、もしかして熱中症……?)」ハァハァ…
講師「それから、ここはもっとこうしないといけませんね」ググッ
梨子「……ふぅ、……っはぁ……」ヨロッ
講師「…………どうしてさっきから返事しないんですか?」
梨子「……ぇ?」 梨子「……それは、……ご、ごめんなさい……体調、悪くて……それで……」ポロッ
梨子「ご、ごめんなさい……せっかく教えて頂いてるのに……」ポロポロ
千歌「!」ハッ
千歌「せんせー!梨子ちゃん具合悪いみたいです!」
白津「!」
山崎「大丈夫か、梨子」タッ
梨子「ごめんなさい……」ポロポロ
山崎「……白津先生、保健室の先生呼んできてもらってもいいですか」
白津「分かりました。すみません、講師の方、今日はここで……」
講師「分かりました。……体調悪かったのに気が付かなくてすみません」
千歌「梨子ちゃん大丈夫?」パタパタ
ダイヤ「梨子さんの水筒持ってきましたわ!これで水分補給してください」
梨子「……二人ともありがとう……」グスン
山崎「千歌、ダイヤ。ちょっと梨子を見とってやって。OS-1持ってくる」
千歌「分かりました」
ダイヤ「梨子さんは任せてください」 −−−−
職員室前
果南「──はい。失礼しました」
ガララッ
パタン
果南「あー、寝坊して超遅刻した……最悪〜……」
白津「…………」タッ
果南「おっ、あれ緑化の先生じゃん。あんなに走って何処行くんだろ」
果南「…………ま、どうせ今から授業行っても出席にならないし」タッ
果南「……ん、あそこ……保健室?」
果南「誰か倒れたのかな……」チラッ ガララッ
白津「西木野先生、すみません」
西木野「あ、白津先生。どうかしましたか?」
白津「緑化科の生徒の桜内が熱中症で倒れまして……」
西木野「分かりました。今向かいます」ガタッ
白津「作業場までは少し距離があるので車で……」タッ
西木野「分かりました」タッ
果南「ぅおっ、危な……」サッ
果南「桜内って……梨子ちゃんじゃない!?」
果南「だ、大丈夫かなぁ……」
キーンコーンカーンコーン…
果南「やば。チャイムなっちゃった……」
園芸科生徒「あっ、果南じゃん!」タッ
園芸科生徒「こんなところで何してるの?もしかして、具合悪かったとか!?」
果南「えっ?あ、あー……そうなんだよ〜っ、具合悪くってさぁ」
園芸科生徒「あはは!寝坊したのかと思ってたー!」
果南「(まあ全然具合悪くないしめっちゃ寝坊してきてるんだけどね)」
園芸科生徒「もう昼休みだし早くお昼食べいこー」
果南「え、あ、あー、うん!」
果南「(爆速で食べて梨子ちゃんの様子見に来よう……)」 −−−−−−−
−−−−−
−−−
昼休み
保健室
果南「梨子ちゃん!!愛しの梨子ちゃん!!」バァンッッ
西木野「あら」
果南「あっ」
西木野「………………」
果南「………………」
果南「あ、あのぅ……桜内梨子ちゃんは……」
西木野「体調不良で帰ったわよ」
果南「あっ……そうですか……」
西木野「………………」
果南「………………」
西木野「貴女、そういうキャラだったのね」
果南「待って誤解です」 −−−−−−
−−−−
−−
数日後
ガララッ
梨子「おはよう、千歌ちゃん、ダイヤちゃん」
ちかダイ「「…………」」ヒシッ
梨子「な、何!?どうしたの!?」
千歌「……梨子ちゃん死んだかと思った……」ギュッ
ダイヤ「数日間お休みだったので心配でした……」ギュッ
梨子「お、大袈裟だよ……」
千歌「もう元気……?」ウルッ
ダイヤ「今日はよく眠れましたか?朝ご飯は食べましたか?」ウルッ
梨子「うっ……」💘 グサッ
梨子「ふ、二人とも、本当に大丈夫だから。ねっ?」
千歌「ほんとっ!?」
ダイヤ「よかったです……!」
梨子「二人心配掛けてごめんね」
ダイヤ「気にしないでください。あ、梨子さんがお休みしていた間のノート、私が取ってあるので……」
梨子「わ、ありがとう!凄い助かる……」
千歌「私は梨子ちゃんがお休みしてた間の消しカスでおっきい練り消し作ったよ!」
梨子「そ、それは要らないかな……」 10年前なら助からなかったかもしれない…
だが今は違う!(ギュッ 千歌「あっ、そういえばね、今日の放課後果南ちゃんが部活休みみたいだから連絡したいって言ってたんだけど……梨子ちゃん来れそう?」
梨子「うん、行けるよ」
ダイヤ「大丈夫なんですか?」
梨子「うん、実は昨日から熱下がって元気だったんだけどね。お母さんが念の為休んだ方がいいって言うから休んでただけなの」
千歌「それなら良かった〜!果南ちゃん、すっごい心配してたから顔出してあげたらすっごい喜ぶよ!」
ダイヤ「萎れてましたもんね」
千歌「うん!しわしわだったよね!」
ダイヤ「しわしわと言うよりは乾燥わかめみたいな……」
梨子「どういう状況?」 −−−−−−
−−−−
−−
放課後
浦の星農業高校 体育館裏
千歌「あっ、果南ちゃーん!」タッ
果南「お、千歌。授業終わったの?」
千歌「うん!実習だったから少し遅くなっちゃった」
果南「いいよいいよ。曜とルビィちゃんは畑の水やり当番で、鞠莉と善子ちゃんは同好会で餌やりしてから来るって。マルも実習」
千歌「皆忙しいねぇ。あ、ダイヤちゃんは生徒会の資料を先生に渡しに行ったよ。梨子ちゃんは──」
果南「梨子ちゃん学校来てるの!?!?」クワッ
千歌「えっ、あ、来てるよ?」
果南「ぃよっしゃああああああっ!!!!!」ガッツポーズ
千歌「怖……」
果南「で!梨子ちゃんは何処!?!?」
千歌「に、日直だから日誌職員室に出しに行ったけど……」
果南「良し!!よしよしよし!!!」
千歌「怖〜、この人」
果南「この人呼び辞めて」 果南「あ、じゃあ皆が来る前に振り付けの相談に乗ってくれない?」
千歌「振り付け?良いけど……」
果南「ここの、二番サビが終わった後なんだけど……割と時間があるからここで何かパフォーマンスしたいなって思ってて」
千歌「あー、ここかぁ……確かに時間空くもんね」
千歌「あ!そうだ!馬跳び入れようよ!」
果南「えっ馬跳び……?」
千歌「うんっ!農業高校らしくってなんか良くない!?」
果南「…………千歌、試しにやってみようか」
千歌「うん!!」
果南「はい、おいで」
千歌「……よっと!」スタッ
果南「……ね?振り付けにするにはだいぶダサ──」
千歌「これいい!」
果南「」
千歌「早く皆来ないかな〜、早く教えたい!この馬跳びの良さを!」
果南「………………」
果南「(ダメだこりゃ……)」 梨子「果南先輩!お疲れ様です」タッ
果南「あ!!梨子ちゃん!!!」タッ
果南「会いたかった〜〜!!!!」ハグッッ
果南「ううぅ……心配だったよぉ……大好き梨子ちゃん……愛してるうぅ……」スリスリ
梨子「わ、……私も好きですよ……?」コテリ
果南「ミ°」パアァンッッ
千歌「あーっ!!果南ちゃんが破裂したー!!!!」 善子「お疲れ様です」タッ
鞠莉「あら、まだ千歌っちと梨子だけ?」
千歌「ああ、果南ちゃんならさっき破裂しました」
善子「何で?????」
千歌「でも大丈夫大丈夫。果南ちゃんは水掛けると出てくるから」チョロロロ……
果南「あ、善子ちゃん、鞠莉。やっほー」ヌッ
善子「いやどうやって復活したんですか……」
千歌「まあまあ、果南ちゃんってそういうとこあるから」
梨子「訳分かんないんだけど……」 果南「で、何の話してたんだっけ?」
千歌「振り付け振り付け」
果南「ああ、振り付けか」
果南「でも馬跳び……いいかも……」ポソ
果南「んー、善子ちゃん。ちょっと馬になって」
善子「え?わかりました」スッ…
千歌「え?いや待って果南ちゃん、善子ちゃんは腰が悪──」
果南「よっ」ヒョイッ
千歌「ぎゃああああああああああああ!!!!善子ちゃんが死ぬー!!!!!」
梨子「だ、大丈夫!?よっちゃん!」
善子「え?いや平気よ?何?」キョト
梨子「こ、腰悪いんじゃ……」
善子「あー……確かにコルセット付けてるけど、馬跳びが出来ないほど酷くは無いし大丈夫」
果南「えっ!善子ちゃんコルセット付けてたの!?」
千歌「気付いてたと思ってたよ!!」
果南「背筋バキなのかと……」ハワ…
千歌「そんなわけないでしょこんな綺麗な体つきしてるのに!!!!」
善子「何故突然褒める」 果南「ま、まあこっちは置いといて…………」
果南「鞠莉、千歌跳べる?」
鞠莉「え、私が千歌っちを跳ぶの?」
果南「無理?」
鞠莉「無理じゃないけど……絵面的にどうなのそれ」
果南「いいんじゃない?私達が二年生を跳んで、私達三年生を曜に跳んでもらったら面白そうじゃん!」
千歌「確かに!」
梨子「果南先輩と鞠莉先輩の上を曜ちゃんが跳ぶんですか?どうやって……」
果南「鞠莉、背中合わせになろ」ギュッ
鞠莉「え、ええ……」ピトッ
果南「そしてこう!腰曲げて鞠莉!」ボッ
鞠莉「ちょ、おしりで攻撃しないでくれる?」
果南「どう!?これで跳べそうじゃない!?」
梨子「ま、まあ跳べなくもなさそうですけど……」
千歌「かなり足開かないと転びそう……」
果南「千歌!千歌!!!跳んで千歌!!!カモン!!!」
千歌「えー無理」
果南「いいから早く!」
千歌「わ、わかった!」タッ
千歌「てりゃあぁっ!!」ヒョイッ
鞠莉「痛ッッッ!!」ガッッ
果南「ぐへっ!!」ガッッ
かなまり「「」」チーン…
千歌「ぎゃー!!!果南ちゃん鞠莉先輩ごめんなさあぁい!!頭蹴っちゃった!!!」 梨子「よ、曜ちゃんでも跳べるのこれ……?」
千歌「よ、よーちゃんなら大丈夫なはず……」
果南「いったた……ま、まあこれはやるかどうかは置いといて……」
果南「取り敢えず鞠莉は千歌を跳んで」
鞠莉「わ、わかった……」サスサス…
果南「それで私が跳ぶ人なんだけど……」
果南「流石に一年生馬にするわけにはいかないし……善子ちゃんも腰が心配だしなぁ……」
梨子「あ、なら私が馬になります」
全員「「「「「えっ!?」」」」」」
果南「む、無理無理無理無理無理!!!私なんかが乗ったら梨子ちゃんぺちゃんこになっちゃう!!!!!」ゾッ
果南「誰か!!!誰か私に戒めをおおおおおっ!!!!」
鞠莉「落ち着きなさいよ」
鞠莉「……それを言うなら私だって、千歌っちに乗ったら千歌っちがみかんジュースになっちゃうわよ」
千歌「え?みかんジュース??」
鞠莉「うん、みかんジュース」 果南「り、梨子ちゃん!嘘だよね!?嘘って言って!!!!」
梨子「私じゃダメですか……?」ウルウル
果南「ミ°」パアァンッッ
千歌「もー!!ほらー!!軽率に果南ちゃんを破裂させないでよー!!!!」 -----
数時間後
果南「今日の練習はこれでおしまい!お疲れ様!」
「「「「「「「「お疲れ様でした〜」」」」」」」」
善子「段々形になってきたわね」
花丸「そうですね……オラは着いて行くのに必死で、全然ですけど……」
曜「あの、少しいいですか〜!」
曜「まずは〜、はっぴが出来上がりました〜!」ジャーン!
千歌「わ!可愛い!」
曜「内浦の海をイメージした青色のはっぴです!どうぞ!」
鞠莉「ありがとう」
梨子「凄い……本格的なはっぴじゃない」
果南「どう!?似合う!?」
善子「早速着てるし……」
ダイヤ「こんな短時間で作れるなんて……凄いですね……」
曜「一年生三人で頑張りました!」
花丸「お、オラは仮縫いしただけだけど……」 ルビィ「そ、それからひとつお願いがあって……」
ルビィ「文化祭に向けて衣装を製作するので、皆さんを採寸したいんですけど……」
果南「採寸。そうだ、採寸。はっぴの時はしなかったけど、それは大丈夫なの?」
ルビィ「は、はい。はっぴはフリーサイズより少し大きいくらいの大きさで作ってるので大丈夫だと思います」
鞠莉「採寸って今から?」
ルビィ「いえ、明日昼休みか放課後を使って被服室に来て欲しいなって……そしたらルビィ達が採寸するので、サイズを測ったらそのまま実習とか練習とか」
鞠莉「なるほどね。今ここで脱ぐのかと思った」
梨子「大胆過ぎません?」
千歌「でもでも、お祭りに向けてはっぴも出来たし、曲も良い感じに皆歌えるようになってきてるし、良い調子じゃない!?」
果南「そうだねぇ」
曜「お祭りまであと一ヶ月も無いんだよ!楽しみだなあ〜♪」
千歌「そうだね!私も楽しみ!」
千歌「それじゃあ皆、改めて……」
千歌「練習頑張るぞ〜っ!!!」
「「「「「「「「「お〜っ!!!」」」」」」」」」
鞠莉「……って、練習終わったあとに言う?これ」
善子「鞠莉先輩も円陣終わった後に言いますかそれ……」 果南ちゃん面白人間すぎやろ
最近サンシャインSSの良作多くて感動 -------
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八月
夏休み
緑化棟 実技試験練習所
白津「はい、休憩〜」
梨子「はぁ……やっと休憩……腰が痛いわ……」
ダイヤ「寒冷紗を付けているとはいえ、8月は暑いですわ……」
千歌「……っふぅ、……」グシッ
梨子「千歌ちゃん、まだやってる……」
ダイヤ「千歌さん、日陰に来て休憩しないと死にますわよ」
千歌「うん。あと少しで終わるからちょっと待って」サッサッ…
ダイヤ「もう……」
梨子「千歌ちゃんのところ、全然日陰になってないね……」
ダイヤ「ですね……」 千歌「終わったー!見て!足跡ひとつも残さない私の技術!凄すぎない!?」
梨子「お疲れ様、千歌ちゃん。ちゃんとお水飲んで」
千歌「ありがとう、梨子ちゃ──」グラッ
千歌「…………っ、」ドサッ……
梨子「千歌ちゃん!?」
ダイヤ「ちょ、ちょっと大丈夫ですの!?」
千歌「ぁ……れ……今一瞬頭が真っ白に……」
梨子「もしかして……熱中症!?山崎先生ー!千歌ちゃんが!」
山崎「何や、倒れたと?お前水分摂ってたか?」タッ
千歌「ううぅ……あとちょっと、って思ってばっかりで……全然……」グッタリ
山崎「やろうな。ちょっと動けなさそうやけん、ダイヤは日陰作ってやって。梨子はタオルかなんかで扇いでやっといて」
ダイりこ「「わかりました」」
山崎「ちょっとOS-1持ってくるけん、待っとって」 ----
緑化教室
千歌「……ん、」ゴク
千歌「ぁ、おいしい」
山崎「はい、病院な」
千歌「えっ、なんで」
ダイヤ「経口補水液を美味しいと感じるのは相当やばいらしいですわよ」
梨子「脱水症状を起こしてるのよ。経口補水液って、本当は強い塩分が入ってるからしょっぱいのよ?」
千歌「え、そうなの?すっごい美味しいんだけど……」ゴクゴク
山崎「…………」ピタッ
千歌「わ、な、なんです!?おでこに手当てて……」
山崎「お前やっぱり熱もあるな。ぐったりしてるし、今日はもう帰った方がいいぞ。親に連絡ておくから送ってもらえ」
千歌「ぇ……で、でも今週試験だし……」
ダイヤ「今週試験があるからこそ、今日は家に帰って休んだ方がいいと言っているのですわ」
梨子「うん、私も今日は帰った方がいいと思う」
千歌「んん……わかった……」コクリ 山崎「それじゃ連絡してくるからそこで待っとき。扇風機は使っていいから」ガララッ
ダイヤ「ありがとうございます」
梨子「お願いします」
パタン…
千歌「…………」ポフリッ…
ダイヤ「……大丈夫ですの……?」パタパタ…
千歌「んー…………」
梨子「大丈夫?暑くない?」パタパタ…
千歌「……んん……」モゾッ
梨子「……ち、千歌ちゃんがここまで弱ってるの珍しいわね……」コソッ
ダイヤ「普段は体力有り余ってる人ですからね……熱中症恐るべしですわ……」コソッ
梨子「そういえばダイヤちゃんはまだ熱中症なってないの?」
ダイヤ「私はきちんと予防をしてしますから。と言っても、予防をしていても熱中症になることはありますし、熱中症になってしまったから悪い、という訳ではありませんの」
梨子「なるほどね……」
千歌「──っ!」ガタッ
千歌「…………っ、」ダッ
梨子「えっ!?ちょ、ちょっと千歌ちゃん!?」
ダイヤ「何処に行くんですの!?」
梨子「と、取り敢えず追いかけよう」タッ
ダイヤ「ええ」タッ --
実習棟 女子トイレ
千歌「はぁっ……はぁ……」ゼェゼェ
千歌「……ごめん、ふたりとも……汚いとこ、みせちゃって……」
梨子「ち、千歌ちゃん……大丈夫よ、ゆっくり。ゆっくりね……」サスサス…
梨子「……ダイヤちゃん、ちょっと白津先生呼んできて貰える?……これ、かなり重症かも……」
ダイヤ「分かりましたわ。すぐ来てもらうよう言っておきます」タッ
千歌「……はぁ、……はぁっ……」
梨子「大丈夫、……大丈夫……」
西木野「ちょっと、平気?」
梨子「あ……保健室の……」
西木野「さっきすれ違った生徒にトイレで吐いてる子が居るから早く行ってって言われたのよ。熱中症?」
梨子「はい。さっき実習中に倒れて、OS-1飲みながら涼しいところで休憩してたんですけど……突然トイレに駆け込んで……」
西木野「そのまま吐いたってことね。OK、ありがとう。大丈夫?喋れる?」
千歌「は、はい……だいぶ落ち着いてきました……」 西木野「そう、良かった。今日朝ご飯は食べた?」
千歌「……今日は寝坊しちゃって、朝ご飯食べる時間無くて……」
西木野「昨日は何時に寝たの?」
千歌「ま、漫画読み始めたら止まらなくなっちゃって……多分、3時半くらい……」
西木野「実習中水分摂ってた?」
千歌「あ、あんまり……」
養護教諭「……中身は?」
千歌「きょ、今日は緑茶だったかなぁ……」
西木野「ふぅん……」
梨子「水筒の中身も何か関係があるんですか?」
西木野「ええ。勿論。熱中症対策ならスポーツドリンクが一番お勧めだけど、お茶なら麦茶ね。麦茶の中にひとつまみの塩とか入れたりすると予防出来るわ」
梨子「麦茶に塩ですか!?想像出来ない……」
梨子「……先生、やっぱり保健室の先生なだけあって詳しいですね」
西木野「……そんなことないわよ」
白津「おお、大丈夫か高海」
梨子「あっ、白津先生!」
千歌「……はい、少し楽になりました」
白津「そうかそうか。お姉さんが迎えに来てくれとるみたいですから、移動出来るようなら涼しいところに移動しましょうか」
西木野「立てる?」
千歌「はい」
西木野「じゃあ移動しましょ」 ------
チャリンチャリン
善子「あ、緑化棟にめちゃくちゃ人居ますよ」🚲
鞠莉「千歌っち達、実技試験が終わるまでほぼ毎日実習って言ってたわよ」🚲
善子「緑化は大変ですね……」🚲
鞠莉「ウチもウチで毎日学校に来てるのもおかしいけどね」🚲
善子「確かに……」🚲
鞠莉「あれ。あそこに囲まれてるの千歌っちじゃない?」🚲
善子「え?どこ──っぎゃああぁ!?!?」ガターンッッ!!!
鞠莉「あーあ、水路に落ちた」
善子「ま、鞠莉先輩が余所見させるから……」
鞠莉「これぞ堕天使ってねw」
善子「は?」 「そんなところで何してるの?」
よしまり「「ぎゃっ!?」」ビクッ
鞠莉「ん……ぁ、園芸科の先生」
高坂「そうだよーっ、園芸科の高坂だよ!」
高坂「水路に落ちちゃったの?」
善子「は、はい……この人が余所見させたせいで」👉
鞠莉「いや違います。この人が勝手に落ちたんです」👈
高坂「あはは!二人は仲良しさんだねぇ」
鞠莉「先生はこんなところで何してるんですか?」
高坂「生徒が倒れたって聞いて、一応様子見に来たんだ。二人は、えっと……」
善子「同好会です。動物同好会」
高坂「あー!入ってる子、二人しか居ないって聞いてたけど貴女達だったんだ!」
善子「……やっぱり、もうすぐ廃校になるから、皆入りたがらないのかな……」
鞠莉「善子……」 高坂「……大丈夫っ!学校は無くなっても、思い出は残るし、全部が全部無くなるわけじゃないと思うんだ」
善子「……高坂先生……」
高坂「あっ!そうだ!倒れた生徒の様子見に行くんだった!善子ちゃん……だっけ、立てそう?」
善子「あ、はい。鞠莉先輩に引っ張ってもらうので大丈夫です」
鞠莉「何でよ。良いけど……」
高坂「じゃあ……鞠莉ちゃん?あとはよろしくね!」タッ
鞠莉「…………ほら、善子」スッ…
善子「……ん」ギュッ
鞠莉「……よっと。……ふぅ」グッ
善子「ありがとうございます、鞠莉先輩」
鞠莉「良いわよ」
善子「……高坂先生って、なんか……」
鞠莉「……うん、似てるわね……」 --------
-----
--
造園技能試験 実技試験 植物鑑定試験 当日
緑化棟 実技試験練習場
千歌「外あっつ!!」
ダイヤ「また倒れないでよ?」
千歌「分かってる分かってる!」
梨子「どうしよう……植物全然覚えられてない……」
千歌「私も全然覚えてないよ。ちらーっと見ただけだし」
ダイヤ「私も適当ですよ」
梨子「ダイヤちゃんの適当と千歌ちゃんのちらーっとは差が凄すぎて信用出来ないなぁ……」
白津「道具揃ってるか確認したかー」
千歌「あ、ダブルスコップ出すの忘れた。ちょっと取ってくる」
梨子「あ、私も忘れた」
ダイヤ「私もですわ……」
山崎「何してんだお前ら……」 ----
約二時間後…
千歌「っしゃ、終わった……!」バッ
白津「お、高海終わったか」
千歌「はい!ちゃんと整地もしたし敷石と柱の水平も何度も確認したしバッチリです!」
白津「そうか、よく頑張ったなぁ」
白津「それじゃあ高海も終了で。道具倉庫の中に扇風機がありますから、全員終わるまで涼んでいてくださいね」
千歌「はぁーい!」タッ 千歌「梨子ちゃんダイヤちゃんお待たせー!」
梨子「お疲れ様、千歌ちゃん。お水飲んだ?」
千歌「あ、そういえばもう無くなっちゃってたんだった……冷水機行ってくる!」タッ
ダイヤ「走ると転びますわよー」
梨子「……まさか千歌ちゃんがこの中で一番遅かったなんて意外ね」
ダイヤ「まあ……今週倒れましたから無理は出来なかったんでしょう……」
梨子「私が倒れた時より酷そうだったもんね」
ダイヤ「そうですね、……千歌さん、時々私達でも分からないようなところで無理しているみたいですし」
梨子「スクールアイドルのこととか……?」
ダイヤ「ん、……そうですね。それに……大好きな学校が無くなってしまうことが、千歌さんにとっては物凄くストレスになるのでしょうね」
梨子「……そっか」
ダイヤ「千歌さんは私達が思っているよりもこの学校が好きですから……」 千歌「おまたせー、って二人とも暗い顔してる!具合悪いの!?」
梨子「ううん、平気だよ」
ダイヤ「……千歌さん、梨子さん、終わったらご飯食べに行きますか」
千歌「えー!!行きたい行きたい!!」
梨子「何食べに行く?」
千歌「ハンバーグとか!?!?」
ダイヤ「さわやか?」
梨子「ちょっと遠くない?」
千歌「後で調べてみよ!行ける範囲だったら行こ!!」
白津「はーい、次は植物鑑定に移るので緑化教室に戻ってくださーい」
ちかダイりこ「「「はーい」」」 --------
------
---
数日後
浦の星農業高校 体育館裏
千歌「あ」
善子「あ」
千歌「なぁんだ、まだ善子ちゃんだけかぁ」
善子「嫌なら帰れば?」
千歌「やぁだ辛辣〜」
千歌「隣座ってもいい?」
善子「好きにして」
千歌「…………」
善子「…………」
善子「……はい、これ」スッ…
千歌「なに?これ」
善子「技能試験あったんでしょ?お疲れ様って意味のお菓子よ。要らないなら私が食べるけど」
千歌「いるいるいる!やった!もらっていいの!?」
善子「いいわよ」
千歌「よっしゃー!!!」 千歌「……食べていい?」
善子「ん、好きにすれば」
千歌「いただきまーす!」ヒョイ パクッ
千歌「う、うまいっ!!!!」モゴモゴ
善子「……倒れたって聞いたけど」
千歌「…………あー……まあね」
千歌「……でも倒れたのは私だけじゃないよ」
善子「……梨子もでしょ?」
千歌「んー、最近暑いからねぇ」
善子「ちゃんと水飲んどきなさいよ」
千歌「わかってるわかってる。……って、お菓子って言ってたのに塩分チャージしか入ってないじゃん!」
善子「熱中症予防よ」
千歌「やだー!お菓子が良かった〜!」
ブロロロロロ……
千歌「あ、車だ。先生かな?」
善子「いや……なんか黒塗りっぽくない……?もしかしてヤクザとか?」
千歌「え、ヤクザ?どうしよう……チカ達殺されるかな……」
ガチャッ
ちかよし「「ひいぃっ!!!」」ビクッ ちかよし良い!すごく良い!
このラブライブを、僕達だけしか見てないなんて、もったいないよ!(≧▽≦) ルビィ「先輩こんにちは〜」
ダイヤ「お待たせしました」
千歌「……え、ダイヤちゃん家ってヤク──」
善子「それ以上言うと消されるわよ」 ルビィ「千歌先輩の衣装が出来たので、ちょっと着てみて欲しくて……」
千歌「え!もう出来たの!?着たい着たい!!」ピョンピョコ
ダイヤ「千歌さんと梨子さんと曜さんの分は出来上がったそうですわ。昨日曜さんがウチに泊まりに来て、二人で完成させたみたいです」
千歌「すごい!えらーい!早く着たい早く着たい!」ピョンピョコ
善子「もーっ、ぴょんぴょんぴょんぴょん鬱陶しい!あんたはウサギか!」
善子「そういえば……泊まりなのに、曜は一緒じゃないの?」
ルビィ「曜ちゃんは走って来るって行ってました」
善子「何で止めてあげないのよ??」 ブロロロロロ…
千歌「今度はおっきい車だぁ……」
ダイヤ「あれは多分……」
ガチャッ
鞠莉「チャオ〜」
果南「いやー、助かった助かった。ってか外暑」
曜「鞠莉先輩の車いつ乗っても良い匂いするなぁ」
ルビィ「あ、曜ちゃん!走って来てたんじゃなかったの?」
曜「途中で鞠莉先輩家の車に会ってさ、乗せてもらったの!」
果南「こんな炎天下の中走ってたら死ぬよ」
鞠莉「そうよ。自殺行為だから」
ダイヤ「命拾いしましたね……」
梨子「すみません、遅くなりました」タッ
花丸「お疲れ様です、……あぁ……暑いずらぁ……」パタリ
果南「みんな揃ったけど……この暑さだしね……ちょっと休憩してから練習始めよっか」
「「「「「「「「はぁい」」」」」」」」 -----
職員室
小泉「(…………暑い……)」
小泉「(喉乾いたなぁ……というか何で私夏休みもこうして出勤してるんだろう……)」
小泉「(……ちょっと飲み物買ってこよう……)」ガタッ
「あら、小泉先生、どこか行くの?」
小泉「ひっ!?あ、絢瀬先生っ!!」ビクッ
絢瀬「そ、そんなに驚かなくてもいいんじゃないかしら……」
小泉「すみません……あの、飲み物を買いに……」
絢瀬「あ、そうだったの。ごめんなさいね、驚かせてしまって……」
小泉「い、いえ、大丈夫です……あの……何か買ってきましょうか……?」
絢瀬「え!いいのっ!?」パアァッ
小泉「(!?……か、可愛い……)」キュン 絢瀬「……あっ」ハッ
絢瀬「や、やだごめんなさい……ちょっと、ね?私も水筒の中身がもう無くて……喉が渇いていたからつい……」
小泉「いえ、でも何だか意外でした。絢瀬先生、そんな可愛い顔で笑うんだ」クスッ
絢瀬「っ!も、もう!辞めてください!」アワアワ
絢瀬「……はい、えっと……コーヒー、は苦くて飲めないか……」ポソ
小泉「?」キョトン
絢瀬「……い、いえ。カフェオレ的なやつをお願いします」
小泉「500円は少し多いんじゃ……」
絢瀬「……これで小泉先生の飲み物も買ってください。買って来てくれるから、そのお礼というか……」
小泉「そんなこと気にしなくても……」
小泉「分かりました、カフェオレですね。ちょっと行ってきます」
絢瀬「ええ、よろしくね」 --
浦の星農業高校 体育館裏 自販機前
小泉「意外と種類あるなぁ……どうしよう……」ムムム…
♪〜
小泉「え、音楽?……誰から?」キョロキョロ
「ワンツー、ツリーフォー!」
小泉「え、カウントしてる……でもウチにダンス部なんて無いし……」
小泉「……なんだろう……」ソッ… 果南「千歌、ズレてるよ」
千歌「うそ?!」
果南「うん、リズム違う」
果南「あっ!鞠莉、曜!ポジションズレてる!」
ようまり「「はぁい」」
果南「ルビィちゃん、マル、もっと動き大きく!」
るびまる「「は、はいぃっ……」」
果南「善子ちゃん、ダイヤ!もっと大きな声で歌わないと聞こえないよ!」
ダイよし「「はい!」」
果南「梨子ちゃん!!今日も可愛いよ!!!」
梨子「えっ!?」
千歌「コラ」
小泉「高海さんだ……何やってるんだろう……」コソッ…
花丸「ん……あ、先輩、先生が……」
果南「嘘やば!?ちょっとスマホ隠して!」
鞠莉「いやもう手遅れでしょ」
千歌「ちちちち違うんです!あの、スマホ禁止なのにスマホ使ったりしてるとかそんなんじゃ!!」
小泉「お、落ち着いて…?スマホは取り上げないから…」 小泉「えっと……こんなところで何してたの?夏休みなのに学校着てこんな暑いところで集まって……」
梨子「そ、それは……その……」アワアワ
小泉「?」キョトン
ダイヤ「それは、ね?善子さん」ニッコリ
善子「なっ、こっち見るんじゃないわよ。あんたが言いなさいよ!」コソッ
ダイヤ「嫌ですわ!口が裂けてもスクールアイドルの練習をしていたなんて言いたくないですわ!!」コソッ
ダイよし「「!」」バッ
梨子「……ご、ごめん私も嫌……」苦笑
果南「と、とにかくスマホ使ってたことは他の先生に言わないで貰えますか……?」
曜「そうですそうです!お願い先生!」 小泉「え、ええっ……まあ、そういうことなら──」
「ダメよ」
小泉「え?」クルッ
矢澤「……スマホ禁止っていう校則でしょ。甘やかしちゃダメ」ドン
ようるび「「や、矢澤先生っ……!!」」
鞠莉「誰?」コソッ
善子「デザイン科の先生ですよ」コソッ
矢澤「そこ!コソコソしない!」ビシッ
矢澤「貸しさない。没収です」スッ…
果南「ぅぐぐ……」ギリッ…
果南「あーっ!!!野生のイルカだーっ!!!!」ビシッ
小泉「えっ!?」バッ
矢澤「は、はあぁっ!?」バッ
果南「今だみんな!逃げろーっ!!」ダッ
花丸「どうしてこうなるずらぁっ!」ダッ
ルビィ「ま、待ってよマルちゃんーっ!」ダッ
曜「千歌ちゃん何処に逃げる!?」ダッ
千歌「と、取り敢えず緑化教室の方に行こ!梨子ちゃんもダイヤちゃんも!」ダッ
ダイヤ「分かりましたわ」ダッ
梨子「了解っ」ダッ
鞠莉「あっちに自転車置いてるし、自転車で移動しましょ」
善子「分かりました」
矢澤「あっ、待ちなさーい!!」
キャーキャー ワーワー!
小泉「な、なんだったんだろう……」グルグル ----
緑化科 女子更衣室
矢澤「あ け な さ い〜っ!!!」グググッ…
果南「いやだあああぁっ!!!」グググッ…
梨子「ま、まさかここまで追い掛けて来るなんて……」
ルビィ「矢澤先生はデザイン科で一番厳しい先生で……」
曜「授業中とかスマホ使ってる子が居ると地獄の底まで追い掛けて行くんです……」
善子「お、恐ろしいわね……」
花丸「地獄の万人ずらぁ……」
矢澤「どぅわぁれが地獄の万人よっ!!!!」
花丸「ひいぃっ!」 果南「誰かいい脱出方法ないの!?私が力尽きたら私のスマホ取り上げられちゃうんだけど!!」
千歌「……ひとつだけ」
千歌「……ひとつだけだけど、方法はあるよ」
梨子「こんな狭い更衣室はここしか出口無いじゃない!」
ダイヤ「一体どうやって脱走を!?」
千歌「あそこ」👆
ダイヤ「……天井、ですか?」
善子「違うわ、よく見て」
ルビィ「あっ!別の部屋と繋がってる!」
千歌「うん。隣は動物科の更衣室なんだ」
千歌「ちょっと危ないけど……この棚を登って、そっちに行けば動物科の方の更衣室に行けるでしょ?そこから出ちゃえば後はこっちのもんだよ!」
果南「誰でもいいから早く脱出してよーっ!!」グググッ… 善子「よっ、……と」ヒョイ
梨子「わっ!?よっちゃんいつの間に!?」
善子「私が引っ張るから登って。千歌は下で皆が怪我しないように受け止めてあげて」
千歌「分かった」ヒョイ
善子「落ちるんじゃないわよ」
千歌「わかってるわかってる」タッ
千歌「いいよ!おいで〜!」
矢澤「なっ!あんた達裏から脱走しようとしてるでしょ!」
果南「やば!バレた!!!」 矢澤「ちょっと待ってなさい──っうわぁ!?」ドンッ
矢澤「いったた……何処見て歩いてんのよ!」
絢瀬「貴女こそ、生徒と一緒に何をしているんですか?」
矢澤「げっ……絢瀬先生……」
小泉「ご、ごめんなさい……高海さん達が心配で……」
ガララッ
果南「あ、小泉先生だ。千歌ー、小泉先生が絢瀬先生呼んでくれたってよー」
千歌「え、ちょ、ちょっと回ってくるー」
絢瀬「もう、これは一体何の騒ぎ?」
果南「あ"っ……」 果南「ね、ねぇ。私がここでスマホ使ってましたーって言ったら怒られるよね……絢瀬先生、生徒指導の先生だし……」コソッ
鞠莉「そうね。早く言いなさい」
果南「無理無理無理っ、鞠莉ぃ……何とかしてよぉ……」
鞠莉「何とかって言われても……」チラッ
鞠莉「…………ぁ、」
絢瀬「ほら、早く説明しなさい。一体何なの?」
矢澤「この人達、学校でスマートフォンを使って音楽を流していたんです。それは小泉先生も見ているはず──」
鞠莉「いえ、スマートフォンは誰一人使っていません」
梨子「えっ?」
善子「は、はぁ?何言い出してるんです?鞠莉先輩」 鞠莉「……ラジカセです。このラジカセで音楽を流していました」
千歌「あ、そのラジオ……」
ダイヤ「……前から更衣室に置いてあったラジカセですわ」
カチッ
♪〜
鞠莉「ほら、きちんと音が鳴るでしょう?」
矢澤「なっ!?あんた達、スマートフォンを使ってたんじゃ!?」
鞠莉「いえ。このラジカセを使って音楽を流して踊っていただけです。スマートフォンは使用していません」
花丸「ま、鞠莉先輩……」
ルビィ「カッコイイ……」キラキラ
矢澤「ぜ、絶対嘘です!こいつ!こいつがスマートフォンを隠そうと……」🫵
鞠莉「ならボディーチェックでもしてみますか?」
矢澤「は、はぁ?」
果南「ど、どうぞ?」スッ…
矢澤「…………っ、この……」サワサワ…
矢澤「……本当だ……何も入ってない……」
果南「…………」バクバク チラッ
曜「……!」ウインク 鞠莉「それに矢澤先生、……それから小泉先生。お二人は松浦さんのスマートフォンを直接目にしましたか?」
小泉「わ、私は見てないけど……」
矢澤「……っ、私も見てないわ」
絢瀬「…………」ハァ
絢瀬「これで解決ということにしましょう。仮にスマートフォンを使っていたとしても、私達教師が目にしていなければ没収することは出来ません」
絢瀬「矢澤先生も。生徒と一緒になってこんなバカみたいなことをするのは辞めなさい」
矢澤「ぅぐ……ご、ごめんなさい……」
絢瀬「全く、貴女達もよ?ただでさえ更衣室が古いんだから、あんまり暴れないの。そこ、棚に登らない。ちゃんと降りなさい。怪我するわよ」
善子「は、はい……」
絢瀬「夏休みなんだし、楽しいのは分かるけど程々にね」
絢瀬「小泉先生、矢澤先生。仕事に戻りますよ」
小泉「は、はぁい……」
矢澤「ふんっ……」
千歌「あ!小泉先生!」タッ
小泉「ん、どうしたの高海さん」
千歌「ありがとうございます、先生のお陰で助かりました」ニッ
小泉「……うん、どういたしまして」ニコ
小泉「いつも助けてあげられる訳じゃないから、校内でのスマートフォンの使用は程々にしてね」
千歌「はぁい。ありがとうございました!」ペコ 果南「ま"り"い"ぃ"ぃぃぃっ…………!!!」ギュー!
鞠莉「ちょ、ちょっと離れなさいよ……」グイグイ
果南「だいすきあいしてるうぅぅぅっ……」ギュー!
鞠莉「果南が一番好きなのは梨子なんでしょ」グイ
果南「鞠莉も好きだもん!」ギュー!
鞠莉「はいはい」
果南「……ねー、鞠莉……」
鞠莉「……何よ」
果南「……ありがとう」
鞠莉「っ!」バシッ
果南「え……な、何でぶたれたの今……」
鞠莉「(〜っ……?……!?!?)」バクバク
善子「(乙女か……)」
梨子「(乙女だ……)」
ダイヤ「(乙女ですわ……)」 この矢澤先生は髪下ろしロングヘアーのさいつよ矢澤先生ですね ---------
------
---
お祭り 前日
果南「千歌、振り付け違う」
千歌「嘘」
果南「一旦ストップで〜!」
鞠莉「どうなの?」ヒョコ
果南「うーん、なんか正面から見ると配置がなぁ……」
鞠莉「配置変えたら?」
果南「うぅーん……」
鞠莉「もー、面倒臭いわね」 果南「ま、どうせ明日リハあるよね。そこで何とかしようかな」
鞠莉「面倒臭いわりに単純」
果南「あと一回通したら解散しよっか」
花丸「もう終わりですか?まだ午前中なのに……」
果南「今日はお祭り前夜だからね。しっかり身体休めてないと明日大変なことになるぞ〜っ!」ワキワキ
千歌「明日は出番まで自由にしてていいみたいだし、沢山周れるんじゃないかな」
ルビィ「…花丸ちゃん、明日一緒に周る?」
花丸「……うーん……」チラッ
善子「……?」キョト
花丸「い、いや……ルビィちゃん、一緒にいい?」
ルビィ「良いけど……良かったの?」コソッ
花丸「うん、大丈夫ずら」 果南「はーい、じゃあ最後に一回通して──」
曜「ねぇ見て!見てみて果南ちゃん!!」バーン!
梨子「これは……おっきいうちわ?」
ダイヤ「何に使うんですのこれ……」
曜「お祭りで使いたくって!昨日作ったんです!どう!?どうです!?」
梨子「う、うーん……どうだろう……」
鞠莉「いくらなんでも……大き過ぎるんじゃない……?」
善子「私もそう思います。……ね、千歌──」
千歌「それいいじゃん!お祭りでぶん回したら!?」
果南「うんっ!すっごく良い!」
曜「でしょでしょー!?これで決まりだー!」
よしりこまり「「「……はぁ……」」」 ----
果南「今日はここまで。皆お疲れ様〜」
「「「「「「「「お疲れ様でした〜」」」」」」」」
果南「あ、そうだ。皆明日は制服で着てね」
曜「えーっ!浴衣じゃダメなの?」
果南「浴衣だとはっぴ着れないでしょ?」
鞠莉「どうしても浴衣着たいなら出番終わったら着替えたら?」
善子「着替えてる間にお祭り終わりそうですけど……」
花丸「それ以前に着付け出来る人が居ないんじゃ……」
ダイヤ「私は出来なくもないですわ」
ルビィ「る、ルビィもちょっとだけならっ!」
果南「じゃあ二人に分担してもらって、浴衣着たい人は着るっていうのは?」 ダイヤ「ルビィ、貴女全然出来ないでしょう……?」
ルビィ「ででで出来るよぅ!」
ダイヤ「ルビィに任せたらきっと──」
ルビィ「お、お姉ちゃん、ここはどうやって……」
ルビィ「お姉ちゃん、結び方忘れちゃったよぅ……」
ルビィ「もうお姉ちゃんがやってえええぇっ……」ビエエェッ
ダイヤ「こうなるに決まってますわ!」
ルビィ「ううぅ……確かにああ言ったものの全然着付けの仕方覚えてなかったけどぉ!」 ---------
------
---
お祭り 当日
果南「さっ、リハも無事終わったし、自由行動にしよっか!」
鞠莉「いいの?思い思いにフラフラしちゃって」
果南「いいのいいの。あ、出番の30分前には必ずここに戻って来てね」
祭り運営「松浦さーん」
果南「あ、はーい!今行きまーす!」タッ
花丸「や、やったぁ!ルビィちゃん!自由行動だって!」
ルビィ「何処行く?ルビィはわたあめ買いたいなぁ」 曜「果南ちゃん千歌ちゃん、一緒まわろー!」
千歌「いいよいいよ。梨子ちゃん達はどうする?」
善子「あ、私は鞠莉先輩と周ることにしてるから」
千歌「なんで??」
鞠莉「何故かは分からないけど……日頃のお返しがしたいんだって」
千歌「何のお返しなの???」
鞠莉「さぁ?」
梨子「うーん……じゃあ私は、ダイヤちゃん良ければ一緒に周りたいんたけど……」
ダイヤ「!ぜ、是非!」パアァッ 花丸「ルビィちゃん、行くずらー!」タッ
ルビィ「あっ、待ってよマルちゃーん!」タッ
ダイヤ「あ、ルビィ!無駄遣いするんじゃないですよー!」
ルビィ「はぁーい!」
梨子「じゃあ私達も行こっか」
ダイヤ「ええ。それではお先に」ペコ
千歌「うんっ、また後でね」
善子「なら私達も行きましょう、鞠莉先輩。何食べたいです?」
鞠莉「えー……ちょっと待って、選ばせて」
果南「あっ……皆もう居ないし……」
千歌「私達も行こっか」
果南「だねー」
曜「………………」 曜「ねーねー、果南ちゃん、千歌ちゃん」クイクイ
果南「どうした?」
千歌「なぁによーちゃん、どうしたの?」
曜「あのねー、大したことじゃないんだけどねー」
果南「何さ、ハッキリ言ってみな?」
曜「えへへ、はっぴ忘れちゃった」
ちかなん「「」」
果南「ち、千歌!今すぐ美渡さんか志満さんに電話掛けて!」
千歌「今してる!」
果南「曜、何処に忘れた?」ガシッ
曜「た、多分家……」
果南「千歌、家だって」
千歌「わかった。……あ、もしもし美渡ねぇ?よーちゃんの家にはっぴ取りに行って欲しいんだけど……うん、沼津の……」
千歌「……出番まであと二時間あるか無いかくらいなんだけど、間に合いそう?……うん、わかった」
千歌「美渡ねぇ来てくれるって!」
果南「まあ……一安心だね」
曜「え、えっと……」オロオロ
果南「曜。美渡さん来てくれるから、ちゃんと頭下げてお礼するんだよ」
曜「うぅ……うううぅ……」ウルウル ----
善子「はい、たこせんで良かったですよね」
鞠莉「うん、ありがと。お金足りた?」
善子「流石に一万円もあれば……はい、これお釣りです」
鞠莉「はい、確かに。……食べていい?」
善子「食べないとこの暑さですし腐りますよ」
鞠莉「いただきます。……ん、おいしい」パリッ モグモグ
善子「鞠莉先輩も庶民の食べ物食べるんですね」
鞠莉「やぁだやめて。別に私だってお祭りで普通に食べたりするんだけど」 善子「ふぅん……あ、やっぱり美味しそう……一口くださいよ」
鞠莉「えー、いいけど」
善子「ありがとうございます。……はむっ、……あ、美味しい」モグモグ
鞠莉「美味しいわよね。まあ家でも作れそうだけど」
善子「それ言ったら全部そうでしょ」
曜「ぅええええっん……ごめんなさあああいっ……」ビエエェッ
善子「それで……どうしてあっちで曜泣いてるんです?」
鞠莉「自分の愚かさに気づいたんだって」
善子「はぁ?」ポカーン ルビィ「あっ!鞠莉先輩、善子先輩!」タッ
ルビィ「お隣いいですか?」
鞠莉「良いわよ。おいで」ポンポン
ルビィ「えへへ、やったぁ」トテトテ…
ルビィ「じゃあお言葉に甘えてっ……」ポフリ…
鞠莉「えっ」
よしまる「「えっ!?」」
花丸「るるるるるルビィちゃん!?どうして鞠莉先輩の膝に乗ってるずらぁ!?い、今すぐ降りないと失礼だよ!」アワアワ
ルビィ「えへへ、鞠莉先輩なら許してくれる気がして」フニャ
鞠莉「なぁにそれ!かわいい!」
鞠莉「でもほら、今はたこせん食べてるから……ソースとか付いちゃうわよ」
ルビィ「はぁい」 善子「び、びっくりしたわ……そんなに懐かれてるんですか鞠莉先輩」
鞠莉「さぁ?」
善子「あ、花丸、隣良いわよ」ポンポン
花丸「は、はい……」ストン…
鞠莉「……善子の膝じゃなくていいの?」
花丸「のっ、乗りませんからっ!!!」
善子「別に良いのに」
花丸「(……もしかしてルビィちゃん、オラと善子先輩が仲良くなれるように気を遣って……?)」ハッ
ルビィ「……♪」テヘペロ
花丸「あざと過ぎるにも程があるずらぁ!!!」
善子「うわビックリした」
鞠莉「何?どうしたの?」 八つ橋です。今出先にいる為、更新は明日します!
支援してくれた方ありがとうございます 帰宅しました!寝落ちしなければ更新します!
すみません! 楽しみにしています。寝落ちしても良いので無理せず続けてくださいね! 梨子「あ、鞠莉先輩。それによっちゃん達も」
ダイヤ「隣、座りますわよ」スッ…
鞠莉「何買ってきたの?」
梨子「焼きそばと焼き鳥とたこ焼きです。皆で食べようと思って」
善子「焼き過ぎでしょ」 ルビィ「あ、焼き鳥貰っていいですか?」
梨子「いいわよ。何がいい?」
ルビィ「ルビィは豚バラがいいなぁ♪」
善子「いやそこは鳥行きなさいよ鳥」
花丸「な、なんで焼き鳥に豚……??」
ダイヤ「福岡の方が出している焼き鳥屋さんなのですわ。福岡全域では焼き鳥という概念の中に豚バラが存在するようで……」
鞠莉「焼き"鳥"って言ってるのにね。しかも人気なんでしょ?豚バラって」
善子「福岡の人は鳥と豚の見分けすらつかないわけ……?」
花丸「福岡の人……恐るべしずらぁ……」 ----
ブロロロロロ…
ガチャッ
美渡「はい。曜ちゃん家から持ってきたからね」
曜「うわああああんっ……美渡ねぇぇ……」ギューッ
果南「違うでしょ曜。それとは別に言うことあるでしょ?」
曜「はっぴ忘れてごめんなさあああい……」ビエェッ
千歌「違うよねよーちゃん。ありがとうでしょ?」
曜「ありがとうございますううぅ……」ビエエエッ
美渡「あ、あんた達二人がかりで曜ちゃんを虐めないであげてよ?」
志満「曜ちゃん、あと何十分かしたら出番なんでしょ?頑張ってね、応援してるから」
曜「志満ねぇぇ……!」ビエエエッ 美渡「千歌、曜ちゃん何とかしなよ?あと30分も無いんだから」
千歌「あー、もうわかってる!曜ちゃん、いいこいいこ」ナデナデ
果南「子どもじゃないんだから……」
『ラムネ早飲み競走の参加者を募集してまーす』
曜「!ラムネ!千歌ちゃん!ラムネだって!」
千歌「今早飲みなんてしたらゲーでちゃうでしょ!?」
曜「千歌ちゃん、お願い……」ウルウル
千歌「ぅ……」
千歌「も、もー!よーちゃんのばかー!」 すみません、コロナになってしまってめちゃしんどいので今日はおサボりマンします…… 治す方優先してください!
お大事にです(>_<") まさかここまで悪くなるとは思っていなくて、自分でも驚いているのですが…数日間、もっと悪ければ1週間ほど間を空けてしまうかもしれません…… 多少間が空いても続けるつもりでいてくれるなら待ってるで 熱中症もコロナもかかると大変ですからね、しっかり治してくださいね 支援ありがとうございます。
何とか良くなってきたのでゆっくりですが再開します -----
「ラムネ早飲み競走の勝者は〜、浦の星農業高校一年、渡辺曜さんでーす!」
曜「やったー!!!」バンザーイ!バンザーイ!
千歌「ぉえっ……まってほんと……ゲーでちゃう……」
善子「あんた勝つ気ないならゆっくり飲めば良かったじゃない……」
千歌「待ってその手があったじゃん……」
梨子「二人ともお疲れ様。ほら、もう出番だからはっぴ着ときなさい」
曜「はぁい」
千歌「え!?で、出番!?今から!?」
梨子「ぼちぼちじゃなかった?」
果南「吐けるようなら吐いてきたら?」
千歌「軽っ。そんな簡単に吐けないでしょ……」 良くなって来たんですね、安心しました。まぁ、無理なさらずに。 支援ありがとうございます。
すみません、今日からは更新できるようにします おはよう保守
もう良くなったのかな
無理はしないでね 鞠莉「果南、果南居る?」キョロキョロ
果南「おっ、鞠莉どうしたの?」
鞠莉「やぐら登っていいって」
果南「あ、ほんと?太鼓も叩いていいって?」
鞠莉「うん」 ダイヤ「果南先輩。先程先生方と会いまして……学校の宣伝も兼ねて各学科の特産物を、と……」
果南「な、なにこれ……花はウチのでしょ……このパンは?」
花丸「オラの食品科ですかね……?多分先生が焼いてきてくれたやつです」
果南「で、これは?」
ルビィ「ルビィと曜ちゃんのデザイン科のクッキーと服……?」
曜「何この野菜みたいな服……」
果南「で、このウマとウシのぬいぐるみは?」
善子「多分動物科じゃないですか?」
果南「……で、緑化は?」
鞠莉「緑化だけ何にも貰えなかったのよ」
ダイヤ「…………ま、まあ……緑化って特別これといった特産物なんてありませんし……」
千歌「ほんとそういうとこなんだよね……緑化……」
梨子「何にもないもんね……」
善子「あんた達どうして緑化に入ったのよ……」 「浦の星農業高校の皆さん、スタンバイお願いしまーす!」
曜「あ!千歌ちゃん、果南ちゃん!そろそろだって!」
果南「そうだね。よし、皆はっぴ着てー」
曜「あ、果南ちゃーん」
果南「もー!曜いい加減にして!次はなに?」
曜「えへへ一瞬だけ射的やって来てもいい?」
果南「…………曜」
曜「ごめんなさい……」 「浦の星農業高校の皆さん、出番です!」
千歌「は、はい!今行きます!」タッ
善子「足元気をつけなさいよ」タッ
ルビまる「「は、はぁいっ……!」」タッ
千歌「あ、あーっ……皆さんこんにちは!お祭り楽しんでますかーっ!?」🎤
千歌「私達は内浦にある割と大きい学校、浦の星農業高校の生徒でーす!」🎤
千歌「今日はうちの学校の宣伝を兼ねて、各学科の特産物も持ってきました〜!」🎤
ルビィ「!」🍪フリフリ
曜「見てー!お野菜の服だよー!」🍆🍅🫑フリフリ
果南「あ、あはは……」⸜ 🌷 ⸝
鞠莉「なんか、恥ずかしいわね……」🐴フリフリ
善子「ですね……」🐮フリフリ
花丸「そもそもこんなやぐらに居るのに見えてるのかも分からないずら……」🍞フリフリ
梨子「緑化に至っては何も無いし……」
ダイヤ「箱庭でも作ってくるべきでしたか……?」
梨子「無理だよ、変な箱持ってる人になっちゃうし……」 千歌「浦の星農業高校は緑化科、動物科、園芸科、食品科、デザイン科の5つの学科から成り立つ伝統ある学校ですが、なんと……再来年度には廃校になってしまうのです!」🎤
千歌「そんな浦の星を私達が救いたい!残り少ない期間で何とか思い出を作りたい!という思いで、学科も学年もバラバラな私達が集まりました!」🎤
千歌「また、浦の星には農産物販売会、通称農販会と呼ばれる校内の販売所において実習で収穫した野菜や果物、栽培したお花、飼育した鶏の卵、製造したパンや加工品などを販売しています!」🎤
千歌「夏休み中にもあと一回農販会があるので機会がありましたら是非お越しください!」🎤
千歌「それでは浦の星農業高校の私達が作った曲でもっともっと盛り上がっていきましょー!」🎤
果南「……」スッ… 🥁
千歌「それでは聞いてください!『サンシャインぴっかぴか音頭』!」🎤 --------
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--
始業式当日
教室棟 緑化科教室
ガララッ
千歌「おはよー。あっ、冷房効いてるじゃん!ラッキー!」
むつ「あ、千歌おはよ。夏祭り見たよ〜、あれ千歌が作詞したんでしょ?」
千歌「なっ!?誰から聞いたのそれ!?」
いつき「果南先輩から聞いたよ。多分もう浦の星の子は殆ど知ってると思うけど……」
千歌「マジかーっ!あとから思ったんだけど、アレは無いよね」
むつ「ま、まあほら千歌らしくて良かったんじゃない?」
いつき「それにしてもあの小道具!はっぴは可愛かったんだけどさぁ……」
よしみ「何にも無かったね〜、緑化」
千歌「し、仕方なく無い!?なんにも無い学科なんだからさぁ!」 --------
------
---
九月
タッタッタッタッ…
千歌「梨子ちゃん早く早くー!実習間に合わないよー!」
梨子「今行くーっ」タッ
ザーッ…
梨子「えっ……トイレ、真っ暗なのに……」
千歌「最近多いよ。誰も居ないのに水だけ流れてるの。蛇口じゃなくて自動の水道なのに……」
ダイヤ「何か居るのでしょうか……?」
梨子「ちょっっっやめてよダイヤちゃん!」ビクッッ
ダイヤ「す、すみません……そんなに驚くとは……」 千歌「あ、ごめん実習服ロッカーだったわ」ピタッ
ダイヤ「何してるんですのもう……」
梨子「早く取りに行こ……?」
ダイヤ「あ、次の授業緑化棟じゃなくてパソコン室じゃなかったです……?」
梨子「そうだ。確か時間割入れ替わってるもんね」
千歌「じゃあ実習服要らな……ああ、ファイルも忘れた」
梨子「私もファイルロッカーに入れっぱなしだ」
ダイヤ「もう……二人とも何してるんですの……」 --
教室前 ロッカー
ズザアアァッ…
千歌「んあーっ……見てこれ。雪崩起きたよ」
梨子「ちゃんと教科書丁寧に入れないからでしょ」ガサゴソ
ダイヤ「千歌さんは無駄なプリントが多過ぎます……ほら、ちゃんと自分でなさい」
千歌「はぁい」ガサゴソ
梨子「ほら、あと千歌ちゃん待ちよ」
千歌「分かってる、分かってるって」ガサゴソ
梨子「全く……」
ダイヤ「…………り、梨子さん」クイクイ
梨子「ん?どうしたのダイヤちゃん」
ダイヤ「……階段下に貼ってあるアレ……御札、ですよね……」ユビサシ
ちかりこ「「えっ?」」
千歌「うわほんとだ……あれ御札じゃん……」
梨子「やだやだやだ怖い怖い怖い」
キーンコーンカーンコーン
千歌「あ、やばチャイム鳴った!」
ダイヤ「い、急いで授業に向かいましょう!」ダッ ----
授業:農業情報技術
場所:パソコン室
ちかダイりこ「「「………………」」」ゼェゼェ…
山崎「お前ら何しよったと?なんか遅かったけど」
ダイヤ「い、いえ……別に……」
梨子「ま、間違えて緑化棟まで行っちゃっただけです……ね、千歌ちゃん」
千歌「うんうんうんうん。そうなんです、そうなんですよぉ!!」
山崎「は、早く席つけ……」
山崎「気づいてる奴は居ると思うけど、夏休みから白津先生が体調不良で学校に来れていません」
山崎「緑化に人が少なくなってしまうので、助っ人の先生をお呼びしました。先生、お願いします」
千歌「助っ人?」
東條「初めまして、東條です!よろしくお願いします!」ペコリ
千歌「いや若っ」
ダイヤ「しかも女性」
梨子「しかも可愛い」
千歌「農業高校には中々居ないよ……あのダイナマイトおっぱいの持ち主……」
ダイヤ「やめなさい」
千歌「はい」 東條「なんでも気軽に相談してなー、ウチはちゃんと教員免許持ってるから山崎先生より地位は上よ〜」
山崎「ちょっと」
千歌「あははははは!」
山崎「コラ高海コラ」
東條「それじゃあ表計算の例題やってくでー。それぞれの列の先頭の人はテキストを列の人数持ってってなー」
千歌「はい、ダイヤちゃんよろしくね〜」
ダイヤ「出席番号順で黒澤、桜内、高海、で並んでますからね……仕方ないです……」ガタッ
東條「今回は表計算2級の18やってくでー」
東條「セル1に名前入れるんよー」
東條「それじゃ始めるで。よーいっ、スタート!」ピッ --
休み時間
千歌「……ねぇ、最近おかしいと思わない?」
千歌「階段下に貼られた御札、トイレの怪奇現象、……色々おかしいよ」
梨子「……ねぇ、よっちゃんから聞いたんだけど……」
千歌「なーに!怖い!やめて!」
梨子「違う違う。ほら、緑化棟の更衣室の前にトイレあるじゃない?そのトイレの正面のシャワー室……」
梨子「あれ何年も使われてなくて鍵も閉まってるはずなのに、この間鍵が開いてたんだって」
ダイヤ「何故分かったのです?」
梨子「よっちゃん入ったって」
千歌「何で入っちゃうの……」
東條「あっ、御三方〜。廊下で何してるん?」
梨子「あ、東條先生」
ダイヤ「千歌さんが食堂でチキン買ったので、食べ終わるまで廊下で待ってたんです」
東條「なるほどなぁ。パソコン室は飲食禁止やし」
東條「それで、なんか興味深い話もしとったやろ?」ニマ
千歌「実は────、」 東條「ふむふむ。勝手に水が流れるトイレに、階段下の御札かぁ」
千歌「はい、怖くないですか?」
東條「確かに怖いけど、まだ何も見た訳じゃないんよな?」
ダイヤ「ま、まあ?」
東條「なら平気やって!水道もただの誤作動かもしれないし、御札も昔の人がふざけてそれっぽいのを貼ってるだけかもしれないよ?」
東條「そんなに気になるんやったら調べてみるのが一番良いと思うけどね。なんせ、今は情報の授業やし♪」
キーンコーンカーンコーン
東條「あ、チャイム鳴ってしまったわ。三人も早く席につきなね」
ちかダイりこ「「「……………………」」」 千歌「ちょっと調べてみよう」カタカタ…
ダイヤ「何ですの?そのサイトは……」
千歌「事故物件が分かるサイトだよ。もしかしたら浦の星も100年以上続いてるんだし、何かあるかも……」
千歌「──ぇ、で、出てきた……」
梨子「えっ……う、嘘でしょ……?」
ダイヤ「……な、何て書いてあるんですの……?」
千歌「教室で首吊り自殺……へ、平成25年だって……」ガタガタ
梨子「割と最近じゃない!?!?」
ダイヤ「ち、千歌さん!今すぐそのサイト閉じなさい!」
千歌「う、うん!」
ちかダイりこ「「「………………」」」
千歌「…………何も、見てないね」
東條「何してるん?」ヒョコッ
ちかダイりこ「「「と、東條先生!」」」ビクッッ
梨子「な、なんでもないんですなんでも!」サッ
ダイヤ「そ、そう!なんでもないんですの!」サッ
千歌「変なこと調べてないですからぁ!」サッ
東條「ふぅん?」
東條「(ま、生徒が何してるかは見れるんやけど。何か見ちゃいけないものでも見ちゃったんやな♪)」 --------
-----
---
デザイン科 実習被服室
矢澤「出来た人から────」
ルビィ「……よし……出来た」
曜「ルビィちゃんルビィちゃん、出来た?」トントン
ルビィ「うん、出来たよ。曜ちゃんは?」
曜「私も出来た」
曜「……ルビィちゃん、先生にバレないうちに衣装進めちゃおう」
ルビィ「…………うんっ」
ようルビ「「………………」」コソコソ
矢澤「あんた達ねぇ、さっきからなぁにコソコソやってんのよ。丸見えだって──」ヌッ
矢澤「……っ!」ハッ
矢澤「……それ……」 ルビィ「す、スクールアイドルの衣装です……」
曜「……すみません、授業中なのに……」ショモ
矢澤「スクールアイドル……へぇ、貴女達、スクールアイドルが好きなの?」
ルビィ「は、はいっ!……だいすき、です……」
曜「えへへ、先生、耳貸してください!」
矢澤「ん、なぁに?」スッ…
曜「私達、文化祭でスクールアイドルになるんです」コソッ
矢澤「!……そうなの?」
曜「はいっ!」ニパッ ルビィ「……まだ内緒なんですけど、衣装とか、曲とか……全部自分達で作ってるんですよ」
矢澤「全部、自分達で……」
矢澤「そっかぁ。凄いわね、貴女達」
曜「凄いですか!?」パアァッ
矢澤「ええ。……私も、アイドルを目指していた時期があったのよ。だからその気持ち分かるわ」
矢澤「応援してる。何かあったら言いなさいよ。生徒指導の絢瀬先生に虐められた〜とか」
矢澤「……それから……レッスンのこととか……」ポソッ
矢澤「な、なぁんて。取り敢えず授業中はしまっときなさいよ。休み時間なら幾らでもしていいから」 曜「……あの、先生!」
曜「衣装も、レッスンも、どっちもよろしくお願いしますね!」
矢澤「……ええ。任せなさい」ニッ
矢澤「はーい、キリのいいところまで行った人から休み時間にしていいわよー!」
ルビィ「……矢澤先生、あんまり怖い人じゃなかったね」
曜「そうだねぇ。先生、何だか夢を見てる子どもみたいで、可愛かったねぇ」
ルビィ「うんっ。……矢澤先生の為にも、良いもの作りたいね」
曜「うんっ!頑張ろうルビィちゃん!」
曜「あ、ルビィちゃんとがんばる……がんばるルビィちゃん……」ポソポソ
曜「頑張ルビィ!なんつって!」
ルビィ「………………え?」
矢澤「渡辺」
曜「は、はぁい。すみませ〜ん……」 --------
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--
一週間後
緑化科 教室
ドタドタドタドタ
バンッッ
千歌「遂に、遂に出たよ!文化祭ステージ発表の詳細が!」
千歌「私はこの日を待ち続けてたよ……待ち続けてかれこれ4ヶ月!こんなに仕上げてきたんだもんね!!」
梨子「お、落ち着いて千歌ちゃん……」
ダイヤ「ええっと……1組5分以内。衣装製作、購入は禁止……」
ちかダイりこ「「「」」」 千歌「えっ!?衣装作っちゃダメなの!?」
ダイヤ「恐らく金銭面でのトラブルが起こる可能性が高いから、らしいですわ」
梨子「ど、どうするの?曜ちゃん達、作り始めてるんでしょ?」
千歌「ば、バレなきゃ何とかなるよ。私が言い訳考えておくから」
ダイヤ「千歌さん、ここ。グループ名の記載がありますわ」トントン
千歌「……名前……名前かぁ……」
梨子「パンフレットに載るって言ってたし、変な名前にはしちゃダメよ?」
千歌「分かってるって。んー……農業高校っぽいのがいいよね……」
千歌「あっ!こういうのはどう!?作物を育てながら、自分達も育っていく……『Glow up!』とか!」
ダイヤ「却下」
梨子「ごめん、無し」
千歌「なんで!?」 ダイヤ「それはなんと言うか……」
梨子「あまりにも、ダサくて……」
千歌「じゃあ二人が考えてよー!」
ダイヤ「メンバーは九人居るのですからわざわざ私達だけで決める必要はないでしょう?」
千歌「ああ、そうだった。あ、見て。担当の先生の名前だって」
梨子「顧問みたいな人ってこと……?」
ダイヤ「ええ、恐らく……どうします?」
梨子「それなら話しやすいし、山崎先せ──」
ダイヤ「却下」
千歌「ごめん、絶対嫌」
梨子「なんで!?」 千歌「練習見て欲しいし、どうせなら農業の先生じゃない人が良いな……ということで、残業山崎は却下で」
ダイヤ「千歌さん、珍しく妥当な判断ですわ」
梨子「そんなに嫌?」
千歌「まあ……ちょっとね」
ダイヤ「それなら国語科の小泉先生はどうでしょうか。小泉先生、確か今流行りのスクールアイドル、好きでしたよね」
千歌「確かに!それいい!早速勧誘しに行かなくちゃ!」 ----
小泉「スクールアイドルの、顧問?」
千歌「はい!先生、確かスクールアイドルとか好きって言ってましたよね!」
小泉「あ、あんまり大きな声で言わないで?……恥ずかしいし……その、なんか犯罪臭が漂っちゃうから……」
梨子「それで、先生……その、どうですか?」
小泉「…………うん、良いんじゃないかな。スクールアイドル」
小泉「高海さん達が踊ってるところ、私も見たいし応援させて欲しいな」
千歌「〜〜っ!!せんせーっ!!」ギュー!
小泉「わわっ!?く、苦しいよ〜っ!」アワアワ 千歌「ええっと、それじゃ小泉先生の印鑑と、担任の印鑑と……それから……」
千歌「せ、生徒指導の絢瀬先生の印鑑……っ!」
梨子「絢瀬先生って、この間の?」
ダイヤ「そうですね、あの美人の絢瀬先生ですわ」
小泉「それに高海さん、その前にグループ名考えないといけないですからね」
千歌「ああそうだった……先生は何か案ありますか……?」
小泉「う、うーん……そうだなぁ……」 小泉「……高海さん達が考えた名前なら、どんなグループ名でも素敵だと思うよ」
梨子「先生……」
ダイヤ「それって……」
千歌「面倒臭かっただけですよね……?」ジト
小泉「ち、違うよ!私も考えようとしたけど!」アワアワ
小泉「取り敢えず、メンバー皆で話し合ってみてね」 小泉「それから……この衣装っていうのは……?」
小泉「衣装は購入、制作禁止のはずだけど……」
千歌「先生っ!何とかなりませんかねぇ!?」
小泉「私に押し付けるの!?」
小泉「う、うん……じゃあ、絢瀬先生には納得してもらえる形で私も動いてみるね」
千歌「ありがとうございます!早くて今日の放課後、絢瀬先生に判子貰いにくるんで、その時よろしくお願いしますね!」
千歌「行こ!梨子ちゃんダイヤちゃん!」タッ
梨子「あっ、待ってよ千歌ちゃん!」タッ
ダイヤ「小泉先生、失礼しました」ペコリ
ダイヤ「こら二人とも!廊下は走るんじゃありませんわ!」タッ
千歌「ダイヤちゃんだって走ってるくせに〜!」タッ
小泉「………………い、行っちゃった……」
小泉「相変わらず元気だなぁ、高海さん」クスッ -------
-----
---
昼休み
浦の星農業高校 体育館裏 階段
果南「ほう、グループ名」
千歌「そうなの。何か案あったりする?」
曜「制服少女隊とか!?」
梨子「衣装は制服じゃないでしょ……あ、千歌ちゃん、この事も言わないと……」
千歌「ああそうだった……実は今朝知ったんだけど、衣装の制作と購入は禁止だったみたいで……」
ルビィ「えっ……ど、どうするんですか……?」
花丸「ルビィちゃん達、頑張ってたのに……」
千歌「うん。だから私が最強の言い訳を考えて、生徒指導部の絢瀬先生に勝負しようと思う。だから絶対納得してもらえる言い訳を考えてるとこ!」
善子「……ま、衣装に関しては千歌に任せて大丈夫そうだけど……問題はグループ名ね」 ダイヤ「何か良い案はありますでしょうか……」
ルビィ「うーん……普通に浦の星スクールアイドルとかは?」
花丸「流石にそれはちょっと……」
曜「あ!じゃあじゃあ、UAGとか!?」
ダイヤ「何ですかそれ」
果南「どっから出てきたのさ。UAGは」
梨子「もしかして……Uが浦の星、Aが農業高校っていうことで、AgricultureのA。Gが、Girls?」
曜「梨子先輩大正解!!」ビシッ
千歌「いくらなんでもダサすぎるよ!DAIGOもビックリだよそれ!」 善子「どうします?鞠莉先輩」
鞠莉「んー」
善子「そんな一人だけ木に登ってご飯食べてますけど、ちゃんと話聞いてます〜?」
鞠莉「…………海」
善子「海ぃ?」
鞠莉「……うん、ここから海が綺麗に見えるの。だから、海に関することを入れたい」
千歌「うーん……海……海……みず……」 千歌「アクア!アクアは!?」
果南「アクア?」
梨子「そ、そのまんまね……」
ダイヤ「アクア、ですか……」
ルビィ「そ、それならっ……!」メモメモ…
ルビィ「こ、こういう表記はどうかなぁ?」コテ
花丸「『Aqours』……?」
曜「良いじゃん良いじゃん!!」
善子「私も賛成」
鞠莉「うん、いいと思う」
ルビィ「えへへ……」
千歌「それじゃあグループ名はAqoursに決定!」カキカキ…
千歌「放課後、私と梨子ちゃんとダイヤちゃんで絢瀬先生に提出してくるから、皆期待してて!」 -------
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--
放課後
職員室
コンコンコンッ
ガララッ
千歌「し、失礼しま〜す…………」
千歌「あのぉ、絢瀬先生はいらっしゃいますかぁ」ニコォ…
園田「あら。高海さん、こんにちは」
千歌「あ!園田先生!この間部活サボってごめんなさい」
園田「私は構いませんが……そろそろ顔を出さないと文化祭の作品が間に合わないので気を付けてくださいね」
千歌「はぁい」
梨子「あ、あの人は……?」コソッ
ダイヤ「国語科の園田先生ですわ。それに、千歌さんの所属している書道部の顧問です」コソッ
梨子「なるほど……凄い美人さんね……」 園田「それで……絢瀬先生に用事でしたね。何か悪いことでもしたのですか?」
千歌「い、いえそんな!チカは何も……!」
絢瀬「あの、何か?」ヌッ
園田「ああ。絢瀬先生。高海さんが用事がある
と」
絢瀬「…………」チラッ
千歌「…………」アワアワ
絢瀬「……文化祭の有志の紙ね。良いわ、こっちにおいで」
千歌「は、はいっ……失礼します」 --
絢瀬「ふむ……スクールアイドル」
千歌「は、はい。最近流行ってますよね。それを私達もやりたくて」
絢瀬「曲は?」
千歌「皆で協力して、一から作っています」
絢瀬「皆というのは、ここに書かれた人達で?」
千歌「はい」
絢瀬「……ふぅん。この九人は学年も学科も違うみたいだけど、それはどうして?」
千歌「浦の星で全学年揃うのは今年で最後になると思うんですけど、その大事な年にバラバラの皆が力を合わせて、何かひとつのことをやり遂げたいと思い、結成しました!」
千歌「(よし!掴みは完璧でしょこれ!)」グッ 絢瀬「なるほど……それで、ひとつ気になったんだけど──」
千歌「…………」ゴクリ
絢瀬「この衣装、というのは?」トントン
千歌「(や、やっぱり来たぁ……)」
ダイりこ「………………」ゴクリ
絢瀬「衣装は購入禁止、制作禁止と書いてあったでしょ?」
千歌「い、いえ!買ったり、作ったのではなくて……」
千歌「わ、私!趣味でコスプレするんです!!!」バーン!
ダイりこ「「…………は?」」 千歌「ほっっっんとにコスプレが大好きで!!!今流行りのスクールアイドル!?それに憧れて自分で衣装作っちゃったりなんかしてて!!!」
千歌「た、たまたま九つあったからそれを皆に貸してあげようかなぁみたいな!!!!」
千歌「いいですよね!?ねっ!?!?」
絢瀬「………………」
絢瀬「(絶対嘘としか思えないけど……)」チラッ
小泉「………………」アワアワ ハラハラ
絢瀬「…………はぁ……」
絢瀬「あのね、高海さん。よく聞いて」
千歌「は、はい……」
千歌「(やっぱりダメかな……ごめん曜ちゃん、ルビィちゃん……)」ショモ 絢瀬「貴女がこの学校の為にと思って活動を始めてくれたことは、とても誇りに思うわ。楽曲制作や……衣装の制作を行った貴女の行動力はとても素晴らしいと思う」
絢瀬「でもね、衣装を作ったことを他の生徒……特に、デザイン科の生徒に知られてしまうと『私達も衣装作れたよね。作れるなら作りたかったよね』と思われてしまうかもしれない」
絢瀬「ズルをしているわけではないけど、そう思われてしまうことだってある」
千歌「…………はい」
絢瀬「……今回は、特別に高海さんのグループの衣装は、高海さんの所有物だった。ということにしておきます」
ダイりこ「「えっ」」
千歌「えっ!?」 絢瀬「他の生徒に何か言われたら、私が何とかしておきます。その為にも保護者の方に印鑑を貰ったりすることがあるかもしれないけど、それは仕方ないことだと思って」
千歌「わ、わかりました!」
絢瀬「………………そういうことで、」ポンッ
絢瀬「この書類はもう私に提出するということでいい?」
千歌「はい!ありがとうございます!」
絢瀬「……ええ、高海さん達の……Aqoursの活躍を期待してるわ」フッ
千歌「〜っ!」パアァッ
千歌「はい!」 ----
浦の星農業高校 体育館裏
果南「え!?そんな理由で承諾してもらったの!?」
千歌「そんな理由とか言わないでよ!」
梨子「でも優しい人で良かったね、絢瀬先生」
千歌「うん!」
ダイヤ「本当に……今回は絢瀬先生に救われましたね」
花丸「遅れてすみませ〜んっ……」タッ
曜「あ!花丸ちゃん来た!」
善子「実習?」
花丸「はいぃ……畑仕事が思った以上に長引いちゃって……」
鞠莉「それは大変だったわね。お疲れ様」
花丸「ありがとうございます……っ」ペコリ ルビィ「これで全員揃いましたね」
果南「そうだね。じゃ、練習始めようか」
千歌「行けそう?」
善子「……うん、今なら誰も居ないんじゃない?」
千歌「じゃあ早速スマホで音源流して練習始め──」
矢澤「あ」
千歌「あっっっ」 曜「矢澤先生!」パアァッ
曜「もしかして練習見に来てくれたんですか!?」ギューッ
矢澤「違うわよ、もう帰ろうと思ってたの」
曜「えーっ!そんなこと言わずに!」グイグイ
曜「ルビィちゃんも矢澤先生に練習見てもらいたいよね!」
ルビィ「う、うんっ。……ダメですか、先生……」
矢澤「うっ……し、仕方ないわねーっ!」フンスッ
鞠莉「…………なんかあの先生丸くなってない?」コソッ
善子「ですね」コソッ
矢澤「ふんっ、渡辺と黒澤だけ特別よ」
ダイヤ「えっ?」
矢澤「ああ、あんたも黒澤か……」
矢澤「妹!黒澤妹だけよ!」
ルビィ「く、黒澤妹ならルビィって呼んで欲しいですけど……」
矢澤「ルビィ黒澤」
ルビィ「なんか嫌だなぁそれ……」 曜「それで、本当に練習見てくれるんですか!?」
矢澤「………………」チラッ
ルビィ「……」ウルウル
曜「……!」キラキラ
矢澤「はぁ……全く……」
矢澤「こっそりスマホ使うならまずこの場所は辞めなさい。色々な先生が車停めてたりするし、生徒の出入りも激しい。簡単に見つかるわよ」
千歌「それじゃ何処ならいいって言うんですかーっ!」
矢澤「あんた、そんなことも分かんないの?」
千歌「ご、ごめんなさぁい……」
矢澤「……もう……案内するから着いてきて。ついでに練習も見てあげるわよ」
曜「!」パアァッ
曜「先生!大好きーっ!」ギューッ
矢澤「こら曜!離れなさいよ!」 ----
果南「もーっ、酷いよあの先生。『あんた仕切ってるくせにダンス下手すぎ!』だって」
鞠莉「でも直ぐ上達してたじゃない」
果南「そうだけどさぁ!」
花丸「フォーメーションとかしっかり見てくれたから、バランスもバッチリずら」
曜「矢澤先生優しくて良かったね!」
ルビィ「うんっ、練習はちょっと厳しかったけど……」 ダイヤ「それにしてもフォーメーションを千歌さんセンターからダブルセンターにしたのが驚きでしたね」
梨子「うんうん…まさか私に来るとは……」
果南「矢澤先生に梨子ちゃんゴリ押しして良かったぁ」
鞠莉「あれはやり過ぎだけど」
千歌「今日は何だか……濃い一日だったね」
ダイヤ「……疲れましたか?」
千歌「ううん、楽しかった!」ニッ
ダイヤ「……ええ」クスッ ---------
------
---
十月
東條「手袋した人から鎌持ってハウス入ってなー」
千歌「東條せんせー!あのね、チカねー」
梨子「千歌ちゃん、余所見してると電気柵に当たっちゃうよ」
千歌「ぅわ、ほんとだ危ない……」
東條「高海さん、その電線触ってみな」
千歌「えー!怖いですよ!興味あるけど!」
千歌「…………」スッ…
千歌「!!!」バチンッッ
千歌「ぎゃははははは!!!!!なにこれおもしろーい!!!」バチン! バチン!
ダイヤ「何やってるんです……」
梨子「痛くないの!?」
東條「黒澤さん、桜内さん。これがバカっていうんよ」 梨子「大丈夫なんですかこれ?」
ダイヤ「ウチの電気柵はあまり強い電気を流していないから大丈夫ですよ」
ダイヤ「指を近付けてもこう……」バチンッ!
ダイヤ「少し指が弾かれるくらいですわ」
梨子「へぇ……意外と大丈夫なのね」
東條「ビックリしたやろ?」
梨子「本当ですよ。千歌ちゃんビリビリになって骨見えちゃうかと思いました」
東條「な、なんか表現が古いなぁ」 >東條「黒澤さん、桜内さん。これがバカっていうんよ」
こういう先生いるわ 東條「まあいいか、今日はブドウハウスの後片付けをするよー。雑草を鎌で刈ったり、落ちてるブドウの葉っぱを皆で集めてゴミバックに入れてな」
千歌「東條せんせー、東條せんせー!」クイクイ
東條「もー、高海ちゃんなぁに?」
千歌「えへへぇ、なんでもない」
梨子「千歌ちゃん、先生困ってるでしょ?」
ダイヤ「すみません先生。農業高校は若い女性の先生が少ないですから、東條先生が緑化に来てくれて千歌さんは嬉しいんですわ」
東條「そんなん言っても絢瀬先生とかは若いやろ?」
千歌「違うのー!チカは緑化に若い先生が居ないことが問題だって言ってるの!」
東條「山崎先生も十分若いやん」
千歌「ノーカンでしょあの人は!!」 梨子「それにしても……昨日雨だったからハウスの中が、ちょっと……」
千歌「ね、じめじめしててなんか臭いよね」
ダイヤ「多分この落ちてる葉にも原因はあるかと……」
ダイヤ「あ、千歌さん。カタツムリ居ますよ」
千歌「あー!ほんとだ!かわいー!」
ダイヤ「梨子さんもカタツムリ見ますか──」
梨子「…………」ジリッ…
ダイヤ「ああ、そういえば苦手でしたね、虫」
梨子「もう浦の星に来て半年経ったけど……虫だけはホント無理」
千歌「そんなんじゃ農家として生きていけないよー?」
梨子「別に農家目指してるわけじゃないから!」 ----
昼休み
千歌「お昼ここでいい?」
梨子「いいわよ」
ダイヤ「更衣室は三年生がご飯食べてましたし……こっちの方が風もあっていいかもしれませんね」
千歌「だねぇ」
善子「やっほー千歌、梨子、ダイヤ」フリフリ
千歌「あれ、善子ちゃんじゃん!」
梨子「善子ちゃんも実習終わり?」
善子「そ。緑化はもうあんた達以外居ないの?」
ダイヤ「ええ。皆さん速攻更衣室に行きましたわ」
善子「なるほどね。まぁ、丁度良かったわ」
千歌「なんかくれるの?」
善子「ウチの学科で作ったスイカ。今鞠莉先輩と先生が切って来てるから待ってて」
梨子「スイカなんて作ってたんだ」
ダイヤ「時期はもう過ぎていそうですけど……」
善子「いいのいいの。気にしないで食べて」 オーイ!
善子「あ、ほら来たわよ」
オーイ! ヨシコチャーン! スイカキッテキタヨー!
梨子「あれ先生?」
ダイヤ「ええ。畜産科の星空先生ですわね」
星空「お待たせ善子ちゃん!それに緑化科の三人!」
鞠莉「あら、三人だけ?」
ダイヤ「他の皆さんはもう教室に帰ってしまって……」
鞠莉「なるほど。まあ大きいスイカでもないしこのくらいが丁度良いわね」
千歌「善子ちゃんと似たようなこと言ってる」
星空「ほら、おっきめに切ってきたんだ!食べて食べて!」>ω</ 🍉
ちかダイりこ「「「ありがとうございます」」」
善子「いただきまーす」シャクッ…
鞠莉「ん、おいしい」シャクッ
千歌「んーっ!美味しい!先生、これ美味しいです!」
星空「ほんと!?やったー!先生頑張ったんだぁ!」
梨子「……うん、甘いね」モグモグ
ダイヤ「意外と十月でも美味しく食べられるんですね」モグモグ 星空「畜産科皆で心を込めて作ったスイカだもん。美味しく無いわけないよね!」
千歌「でも何でこの時期にスイカが出来たんです?収穫時期ってもっとほら、七月とか八月じゃなかったっけ?」
鞠莉「ああ、星空先生が時期を間違えて種植えてね」
善子「絶対誰も夏に間に合うとは思ってなくて、案の定このザマよ」
星空「い、言わないでよぉ!美味しく食べれたんだしいいでしょ!?ねっ!?」
ダイヤ「おっちょこちょいなのですね、星空先生」
梨子「ちょっと可愛い……」
星空「やーめーてーよーっ!恥ずかしいよーっ!」 千歌「せんせー、種……」モゴ…
星空「えっ!?種!?えっと……えっとぉ……の、飲んじゃって!?」
善子「いや無理でしょ」
千歌「んっ……」ゴクッ
善子「コラ!種を飲むなあんたは!」ユサユサ
鞠莉「お腹で芽が生えて鼻からツル出てくるわよ」
千歌「やだ!なんで飲んじゃったんだろ!!」
梨子「東條先生か山崎先生から袋貰ってくる?」
ダイヤ「……いえ、そこら辺に飛ばしましょう」
ちかよしりこまり「「「「!?!?」」」」 善子「どうしたのダイヤ!?あんたがそんなこと言うなんて!!」
梨子「飛ばすって!?ぷぷぷーって飛ばすの!?」
千歌「えー!チカやりたい!」
鞠莉「辺り一面スイカ畑になるわよ」
星空「まあでも飲み込むよりはいいかもだし?誰が一番遠くまで飛ばせるか競走だーっ!」 ---
五時間目
開始十五分経過
星空「すみませんでした」
ちかダイりこ「「「…………」」」
小泉「え、えっと……」
善子「なんで私達まで…………」コソッ
鞠莉「星空先生が一緒に謝りに行くからーって止められたからでしょ」コソッ
小泉「何してたんですか……?」
星空「ごめん!ほっっんとにごめん!!わたしが皆を止めてスイカの種飛ばし競走してたの!!!」
小泉「星空先生……」
星空「ごめん!ほんとにごめん!代わりに謝るからこの子達は怒らないであげて!」
小泉「わ、分かったけど……もうしちゃダメですよ?」
星空「はぁい……」
小泉「それに皆も、ちゃんと自分で時間を見て行動すること。先生の言ってるとこが全てでは無いですからね」
ちかダイりこ「「「はい……」」」
小泉「それじゃあ高海さん達は大丈夫だから。その子達のところにちゃんと謝りに行くんだよ?」
星空「分かってるよ。またね」フリフリ
小泉「……うん」フリフリ 星空「行こ。善子ちゃん鞠莉ちゃん」
よしまり「「はーい」」
星空「二人は五時間目の教科なに?数学とか?」
善子「あ、いえ。二、三年合同で世界史です」
鞠莉「社会科教室で絢瀬先生の教科です」
星空「」
星空「ねぇまって嘘でしょ?絢瀬先生?しかも善子ちゃんも鞠莉ちゃんも?なんで二、三年合同で世界史やってるの?」汗ダラダラ
善子「うちの学校人数少ないので」
鞠莉「というか実習も基本的には学年で合同じゃないですか」
星空「……ねぇ、やっぱり今から畜産棟戻──」
よしまり「「戻らないです」」
星空「だよねぇ……」 星空「……はぁ……しょうがない……先生の所為だもんね……謝りに行かなきゃだもんね……」ズーン
鞠莉「嫌いなんです?絢瀬先生のこと」
星空「嫌いって言うか……ちょっと怖い……」
絢瀬「どんなところが怖いんです?」
星空「なんと言うか、威圧感?みたいの感じるし、生徒指導の先生ってあんまりいい思い出ないから先生から距離を置いちゃうというか……というか絢瀬先生と先生って、普通教科と農業の専門教科だから関わりないし……」
絢瀬「ふぅん?」
星空「ひぃっ!?絢瀬先生!?!?」
星空「(助けて二人とも!)」バッ
よしまり「「(ご愁傷さまです)」」スンッ
星空「(酷いよ二人とも!)」ガーン
絢瀬「遅れた理由、きちんと聞かせてもらってもいいかしら?星空先生」ニコ
星空「あ、あははは……」 --------
-----
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一週間後
千歌「ふんふんふーん♪」
ダイヤ「今日は何だか機嫌がいいですね」
千歌「うん!だって今日はお芋掘りの日だよ!嬉しいよ〜!」
梨子「幼稚園の子が来るんだっけ」
千歌「そうそう!」
ダイヤ「梨子さんは小さい子は得意ですか?」
梨子「うーん……あんまり?どうしたらいいのか分かんなくなっちゃうから、ちょっと不安かも……」
千歌「大丈夫大丈夫!きっと皆いい子だよ!」
梨子「そうだといいけど……」 東條「ほら実習始めるよ〜」
ちかダイりこ「「「はぁい」」」
東條「今日は皆も知ってると思うけど、幼稚園の子どもたちがウチにやってきて、お芋掘りをします」
東條「まだ年少さんのちっちゃい子ばかりだから後ろを見ないで下がったりすると、子どもを転ばせてしまうことがあるかもしれません。そこは気をつけるように」
東條「それから、子どもたちが来るまで30分くらい時間があるので、最初に皆でスコップを使って、おいもさんをある程度掘り出します」
東條「どうして掘り出すのかっていうと、今は土が硬い状態なのでその土を解したり、畑に今どのくらいの量、大きさのおいもさんがあるのか確認するためです」
東條「だからスコップを入れる時はおいもさんを傷つけないよう慎重にお願いします」
東條「ということで、皆スコップ持って〜。おいもさんチェックするよ〜」 千歌「よっと!」ザッ
ガッ!
千歌「あ、やば」
ダイヤ「千歌さん、今おいも切ったでしょう?」
千歌「いやいやいや見ないと分かんないから!?」
梨子「きゃあああっ!!!」
ダイヤ「梨子さん!どうしました!?」ダッ
梨子「みみみみみ見て気持ち悪い虫!これ何とかして!!!!」🫵
千歌「あー、これ右向け左向けだよー」
梨子「何その名前!?」
ダイヤ「これはスズメガの蛹ですね」
🐛「」クネクネ
梨子「ねぇこれほんと気持ち悪い何とかして千歌ちゃん」
千歌「何で名指しなの???」
千歌「まあいっか。手袋付けてたら何でも触れるもんね〜♪」ヒョイッ
梨子「ぎゃああああああああっ!!!」ダッ
千歌「やめてチカから離れていかないで」 途中ですみません、質問なんですけどごちゃんねるで動画を貼付するとしたらどういう方法があるのでしょうか? 5ch自体に動画を貼り付ける機能はないため
youtube、twitter等にアップロードし、そのリンクを貼るのが一般的かと思います 千歌「でもこれ不思議じゃない?サナギって中身ドロドロなんでしょ?何で動いてるんだろうこれ」
ダイヤ「さぁ?」
梨子「ほんとやめてそんなこと考えないで」
千歌「………………」✂ スッ…
ダイヤ「コラ!流石によしなさい!」
千歌「はぁい」
東條「ほらそこ三人、ふざけてないではよ進めんと園児来てしまうよ」
ちかダイ「「はい」」
梨子「……私サツマイモ圃場の実習ダメかも……」 --
三十分後
ブロロロロロ…
東條「おっ、良い時間に来た」
千歌「わー!かわいー!手振ってるよ!手振ってる!」ブンブン
ダイヤ「落ち着きなさい。可笑しい人だと思われますわよ」
梨子「ええっと……人、人、人……」スッスッ…
ダイヤ「そこまで緊張してるんですの……?」 「こんにちは〜」トテトテ
東條「……あれ、もしかして……ことりちゃん?」
南「あっ、先輩!高校ぶりですね!」
東條「見ない間に大人っぽくなったなぁ、保育士さんになったんや。すっごく似合ってるよ」
南「ありがとうございますっ、先輩こそ浦の星に勤務していたんですね!」
東條「ウチの学校は割と音ノ木出身の先生多いよ。絢瀬先生とか矢澤先生とか……あとは小泉先生と星空先生と、養護教諭の西木野先生も音ノ木だったかな」
南「同窓会か何かですか?」
東條「ウチも最近ここに赴任したんやけど毎日楽しいよ」
ダイヤ「先生、知り合いですか?」
東條「うん、高校一緒だったんよ。えーっと……園芸科の高坂先生と国語科の園田先生分かるやろ?その先生達の幼馴染や」
ちかダイりこ「「「高坂先生と園田先生の幼馴染!?」」」 千歌「てか高坂先生と園田先生、幼馴染だったんだ!?」
南「よろしくお願いしますね」ニコ
千歌「か、可愛い……!」キュン
南「そろそろ園児達がやってくると思うので、転ばないように見ててあげてください」
ちかダイりこ「「「はい」」」
👧「わーっ!」ドテドテ
千歌「早速走ってるし!?」
梨子「ああほらダメよ、走っちゃケガするでしょ?」
👧「やだ!」ドテドテ
梨子「あっ……そう……」ズーン
千歌「諦めんの早っ」 🧒「せんせぇ、みてぇ」
ダイヤ「あら、綺麗な石拾ったんですか?」スッ…
🧒「せんせぇにあげる」
ダイヤ「ありがとうございます、大事にしますね」ニコ
南「ひまわり組の皆〜、ここに並ぶよ〜」
👧🧒「「はぁーい」」
南「全員並んでるかな〜?……うん、全員揃ったね」
東條「じゃあ始めよっか」
南「そうですね」コク 南「はじめまして、浦の星農業高校緑化科の皆さん。サンシャイン幼稚園のひまわり組です。よろしくお願いします〜」
ダイヤ「サンシャイン幼稚園のひまわり組の皆さん、こんにちは〜」
ダイヤ「今からお姉さん達とおいもを掘るんですけど、その説明をするので静かーに聞いてくださいね〜」
千歌「なんかダイヤちゃん可愛くない?」コソッ
梨子「言いたいことは分かるわよ」コソッ ごめんなさい、今日もおサボりします。
明日一気に投下する予定です ダイヤ「このくらいの大きさの茎が土に埋まってます」👊
ダイヤ「土を掘ってから、よいしょっと抜くと、おいもさんが出てきますよ〜」
ダイヤ「おっきいおいもさんも隠れているので、お姉さん達と一緒においもさんを掘りましょうね〜」
ダイヤ「それでは皆さん、早速おいもさんを掘りましょう〜!立ってくださーい!」
園児たち「はーい!」
千歌「ダイヤちゃんすごい!」👏
梨子「子ども相手にあんなこと出来るなんて」👏
ダイヤ「私はルビィが居ますから」
梨子「る、ルビィちゃんってもう高校生よね……??」
千歌「ルビィちゃん可愛いよね〜!」
梨子「いや可愛いけど」 👧「せんせー、いっしょにほろー」トテトテ
千歌「お!よっしゃ!お姉さんに任せて〜っ!」💪
千歌「えっと……あ!ほらここに茎があるでしょ?」
千歌「土さんをこう……優しくやさしく退かして、おいもを探すの!」サッサッ…
千歌「できる?」
👧「うん!」ザッザッ…
千歌「すごいすごい!上手だよ!」👏
梨子「……千歌ちゃんも案外子どもと関わるのが上手いのよね……」 👦「…………」ポツン
梨子「あっ、大丈夫?一緒においも取りに行こっか」スッ…
👦「……」コク ギュッ
梨子「!」
梨子「(手出したら握ってきた……なに、可愛いんだけど……っ)」
梨子「あ、ほら。ここにおいもさんあるでしょ?掘ってごらん」
👦「…………」ザッザッ…
梨子「(……っふふ、可愛いな)」
👦「せんせぇ」
梨子「ん?どうしたの?おいもさん見つけた?」
👦「……むし」🐛ウネウネ
梨子「ミ°ッッッッッッッッ」 ダイヤ「あら、虫を見つけたんですか?」ヒョコッ
👦「うん、むし」
ダイヤ「虫さんもおいもさんが好きなんですね。虫さんの為においもさんを探してみましょうか」
👦「わかった」ザッザッ…
梨子「ありがとう……ダイヤちゃんありがとう……」ポロポロ
ダイヤ「いえ、苦手なら仕方ないですわ。梨子さん、この子をお願いできますか?」
🧒「……」ポツン
梨子「うん、分かった。こっちおいで」 🧒「……あのね、おいもほってね、おうちでたべるの」
梨子「おいも食べるの?いいね、家族みんなで食べるの?」
🧒「うん、おかあさんがね、おいもすきなの」
梨子「じゃあお母さんが喜ぶようにたくさんおいも掘らないとだね」
🧒「うん」
東條「……意外に皆子どもの扱い上手いですね」
山崎「意外と何でも出来ますからね、あいつら」 ---
保育者「ひまわり組のみなさーん、お写真撮りますよー!こっちに並んでくださーい!」
園児「はーい!」
南「……あれっ、もうおいも無さそう?」
梨子「は、はい……この二列だと、もう……」
南「…………」ムムム…
南「今のうちに埋めちゃえ!」ザッザッ
梨子「えっ、それ、さっきあの子達が掘ってた……」
南「うんっ、大丈夫だよ。どんなおいも掘ったかなんて覚えてないからね。どんどん埋めちゃって!ほら、生徒さんも!」ザッザッ
梨子「は、はいっ……!」ザッザッ
千歌「ほう……流石東條先生とか高坂先生とかと面識があったーって感じの大胆さだね」コソッ
ダイヤ「そうですね……真逆のタイプだと思っていましたが、意外と似ているのかもしれません」コソッ
梨子「二人も手伝ってよーっ!」ザッザッ ------
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放課後
緑化棟 緑化教室
梨子「あー……つかれた……小さい子って可愛いけど疲れるわね……」グデッ
千歌「そう?私は楽しかったけどなー」
梨子「千歌ちゃんはだってほら……良い意味で小さい子と意気投合出来てたじゃない。ダイヤちゃんは?疲れなかった?」
ダイヤ「いえ、私はルビィが居ますから」
梨子「ルビィちゃんって赤ちゃんだったっけ??」 ガラララッ
曜「あー!居た!千歌ちゃん、梨子先輩、ダイヤ先輩!実習お疲れ様でーす!」
ルビィ「ジュース買ってきましたよ!」
千歌「わー!よーちゃん、ルビィちゃん!ありがとう!」
梨子「ああ……かわいい……やっぱり一個下くらいが一番可愛いわね……」
ダイヤ「あまり歳が離れ過ぎていると難しいですよね……」
ルビィ「それにしてもこう集まるのって久しぶりですね」
梨子「言われてみれば……練習も週末しか出来てないし、あんまり会えてなかったね」
ルビィ「ルビィ、先輩達に会いたかったので会えて嬉しいです」ニコ
梨子「!ルビィちゃん……」
梨子「最初はあんなにオドオドしてたのに……こんなに大きくなっちゃって……」ギュッ…
ルビィ「???り、梨子先輩??」
千歌「あー気にしないで?梨子ちゃん今おかしいから」 ガラララッ
花丸「お疲れ様です」
果南「やっほー!」
千歌「えっ花丸ちゃんに果南ちゃんまで!」
果南「さっきマルと会ってさ、緑化教室に行くって言うから着いてきたんだ」
果南「何だかんだこの時期忙しくて中々集まれてないしね。生徒会選挙ももう直ぐだし、文化祭の準備とかテストとか。あ、あとクラスマッチもあるか」
花丸「そういえば……ダイヤ先輩、生徒会長に立候補してるって本当ですか?」
ダイヤ「ええ、残された時間が限られている浦の星を皆さんが楽しく通えるような学校にしたいと考えていますから」
曜「はへー、すごいなぁ」
梨子「曜ちゃんも副会長とか立候補してみたら?」
曜「いやいや!私は向いてないですよー!」 千歌「善子ちゃんも農ク会長立候補してるって言ってたなぁ。現農ク会長の鞠莉先輩と原稿作ってるって聞いたよ」
果南「あ、そうなの?善子ちゃんって自分から進んで何かやるタイプじゃないと思ってた」
千歌「善子ちゃんって鞠莉先輩のこと大好きだからさ。ずっと二人で同好会とかやって来てるから、やっぱり鞠莉先輩の仕事は自分が引き継ごうとしてるのかな」
ダイヤ「善子さんと鞠莉先輩、元々親しいと思っていましたが、善子さんがそんなこと思っていたなんて……」
梨子「意外ときちんとしてるわよね、善子ちゃん」
果南「うんうん、鞠莉の相棒にピッタリ!って感じだよね」
曜「でも鞠莉先輩が卒業しちゃったら善子先輩、どうなっちゃうんだろう……」 千歌「案外、何にもならないと思うよ」
千歌「善子ちゃんは寂しがり屋さんで怖がりな真面目さんだけど、鞠莉先輩が卒業して今までの仕事を放り出したりすることは絶対ないと思う」
曜「千歌ちゃん……善子先輩のことならなんでも知ってるんだね!」
千歌「もっちろん!チカは善子ちゃんの大親友だからね!」エッヘン
ガラララッ
鞠莉「お、居た居た」
果南「あれ、鞠莉じゃん。どうしたの?」
鞠莉「野菜。取りすぎたから皆にお裾分けに来たのよ。どうせ緑化教室に集まってるだろうと思ってね」
ルビィ「す、凄い、なんでも知ってるんだぁ……」 鞠莉「ま、凄いのは私じゃなくて善子だけど」
善子「ちょっと!なんで言うんです!」
花丸「!善子先輩……!」パアッ
梨子「もしかしてずっと居たの!?」
善子「ふんっ、千歌達が芋堀実習してるの見てたから。実習で疲れてる時は大体緑化教室でダラダラしてんでしょ。分かんのよ、千歌のことくらい」
曜「大親友だからですか?」ニンマリ
善子「……そうよ。私は千歌の大親友だから」
千歌「あ、ぇ……」
千歌「な、なんか照れ臭いなぁ……」アワアワ
善子「何であんたが照れんのよ!」
千歌「だ、だってぇ!」
果南「おっ、丁度全員揃ったし久々に週末以外の練習しちゃう?」
花丸「オラ、今日制服しかないですけど……」
果南「いいじゃんいいじゃん。どうせ本番はスカートなんだから、今スカートで踊ってどんな感じか見てみよ!」
果南「それじゃ、皆あと一ヶ月練習頑張ろ〜!」
「「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」」 ---------
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数日後
クラスマッチ当日
浦の星農業高校 グラウンド
ダイヤ「今年も学年合同クラス対抗ドッジボールですか……」ゲッソリ
梨子「ダイヤちゃん、ドッジボール嫌い?」
ダイヤ「いえ、ドッジボール自体はそんなことないのですが……去年、三年生と対戦した際に全滅してしまいまして」
梨子「うっっわ……容赦ないわね三年生……」
ダイヤ「しかも私は最後まで残ってしまって……」
梨子「最悪じゃない。トラウマよそれ」
ダイヤ「なのでクラスマッチのドッジボールはあまり……」
梨子「今年の三年生も強そうだもんね。果南先輩とか特に」 千歌「ごめんお待たせ〜!」タッタッ
梨子「あ、おかえり千歌ちゃん。水筒あった?」
千歌「うん、ロッカーに置きっぱなしだった」
ダイヤ「気をつけなさいよ?」
千歌「はぁい。あ!もう一試合目の整列だって!早く行こ!」タッ
ダイヤ「一試合目って何処でしたっけ?」
梨子「えっと……確か同じ二年生だったんだけど……」キョロキョロ
梨子「あっ」
善子「げっ」
千歌「あー!善子ちゃんじゃん!第一回戦目から善子ちゃんと一緒なんて嬉しいな〜!」ブンブン
善子「最っ悪!よりによって緑化!?」
千歌「善子ちゃん、チカからの愛受け取ってね……♡」
善子「やかましい」 梨子「敵同士なの寂しいな……」
ダイヤ「そうですね、同じチームでしたらもっと楽しくドッジボールが出来たと思うのですが……」
善子「良いじゃない、敵同士でも。ずっと味方同士よりは面白くなるんだしね」
ピピーッ!
「これより動物科対緑化の対戦を始めます。気をつけ、礼」
「お願いしまーす」
千歌「よーっし!チカ頑張っちゃうぞ〜!」
梨子「…………」ズーン
千歌「あれどうしたの梨子ちゃん」
梨子「外野じゃんけん負けた……私はもう駄目かも……」
ダイヤ「わ、私が盾になりますから……そんな顔しないでください」
千歌「そーだよ!チカ達が守ってあげるからね!」 クラスメイト「あ、ダイヤちゃん、ジャンプボール頼んでもいい?」
ダイヤ「ええ、分かりました」
善子「!あんたがジャンプボール?」
ダイヤ「あら、善子さんでしたか」
善子「強制的によ。ダイヤは身長?」
ダイヤ「そうみたいですね」
善子「ふーん……まあ、負けないわよ」スッ…
ダイヤ「私こそ」スッ…
体育委員「……」ポイ(ノ˙˙)ノ⌒🏐
善子「!」バッ ダイヤ「!」バッ 善子「(……っく……やっぱり身長の高いダイヤには敵わない……っ)」
ダイヤ「(黒澤家にふさわしいのは、常に勝利のみ……!)」ボッ
千歌「やった!ダイヤちゃんナイス!」
千歌「おりゃーっ!」ブンッ
善子「うわっ!?なんで私に投げんのよ!?」バッ
千歌「善子ちゃんのことが大好きだからだよ……♡」
善子「やかましい」 善子「てりゃ!」ブンッ
むつ「うわっ!」ボコォッ
千歌「あー!むっちゃーん!」
むつ「ごめん千歌、当たっちゃった」
千歌「いいよいいよ!その代わりすぐ戻ってきてね、なぁんて!」ゲラゲラ
ダイヤ「ボールは何処行きました?」
梨子「あ、動物科の方に転がってっちゃったみたい」
千歌「ほんとだ。おーい!ボールもら──」
モブ「!」(っ'-')╮=͟͟͞͞🏐
ボコォッ!!
千歌「──〜〜っ!?!?」ズキズキ 千歌「いっ、……たぁ……っ!?」ギュッ
梨子「ち、千歌ちゃん大丈夫!?」
千歌「う、うん……ちょっとボール当たって突き指しちゃっただけだから……」アハハ…
ダイヤ「当たったチームからのボールというルールでしたでしょう?きちんとルールを把握してくださいね」
モブ「わ、分かりました……ごめんなさい」
千歌「う、ううん!大丈夫大丈夫!へっちゃらだから気にしないで!」
千歌「あ、ダイヤちゃん次投げていーよ!」
ダイヤ「えっ?……ありがとうございます」
千歌「(……とは言ったものの──)」
千歌「…………」ズキン ズキン
千歌「(めちゃくちゃ痛い〜〜〜〜っ!!!)」😫 千歌「(嘘!?突き指ってこんなに痛かったっけ!?というかこれ突き指!?骨折れてんじゃないの!?!?)」
千歌「(文化祭まであと少ししか時間無いのに、こんな時に怪我なんて出来ないよ……)」
モブ「!」ブンッ
千歌「(!……やば、当たるっ……!)」サッ…
千歌「(ダメだ、痛みで手に力入んなくて──)」ズキズキ
千歌「ぅあっ!?」ボコッ
ダイヤ「!……千歌さん、大丈夫ですの?」
千歌「あ、あっははぁ。当たっちゃったぁ。ちょっと外野行ってくるねぇ」
千歌「(ど、どうしよう……指、痛過ぎる……今までしてきた突き指より痛みが酷い気がする……っ、やっぱり骨折!?!?)」ズキズキ
千歌「(い、痛い……痛いよぉ……)」ズキズキ 梨子「!」ハッ
梨子「ダイヤちゃん、見て。千歌ちゃん……指抑えてしゃがみこんでるわ」
ダイヤ「そんなに酷い怪我なんですの!?早く保健室へ連れていかないと……」
よしみ「千歌ー!パース!」
千歌「えっ」
千歌「(このタイミングで!?)」
千歌「よ、よっと……」ポッ
千歌「〜〜っ……っい、たぁ……」ズキッ
千歌「へ、へいパース!」ブンッ
千歌「(ああああこれ以上は無理ほんとに死んじゃう指折れちゃうぅ〜……)」ズキズキ ピピー!
善子「(……千歌、突き指……?)」
善子「(それにしては相当痛そうだったけど、まさか骨折?)」
善子「(取り敢えずこの試合が終わったら速攻保健室に連れて──)」
モブA「善子ちゃん!ウチのチーム勝ったんじゃない!?」ギュッ
善子「えっ!?あ、そ、そうなの?」
モブB「善子ちゃんいっぱいボールキャッチしてたもんね!」
モブA「うんうん!善子ちゃんカッコ良かったもん!」
モブB「勝てたの絶対善子ちゃんのお陰だよ!」
「整列してくださーい」
モブA「あ!行こう善子ちゃん!」タッ
善子「ええ」タッ 「16対12で、動物科の勝利です。気をつけ、礼」
「ありがとうございましたー」
善子「千歌──」
モブA「善子ちゃん!あっちで同好会の先輩試合してるみたいだよ!一緒に見に行こうよ!」
善子「ぇ、いや、私は──」
モブB「行こいこ〜!」ギュッ
善子「……え、ええ……」
善子「(あと三週間足らずで文化祭本番だし、骨折だったら絶対間に合わないわよね……)」
善子「(……大丈夫かしら、千歌……)」 梨子「千歌ちゃん!」タッ
ダイヤ「指!大丈夫ですの!?」タッ
千歌「あ、あはは……これ相当痛いや……」
梨子「……少し腫れてきてるわよ……」スッ…
千歌「痛っ……!あ、あんまり触らないで!?お願い!!」涙目
ダイヤ「もう……重症ではないですか!保健室行きますわよ」
千歌「うぅ……まだ一試合目なのにぃ……」 ----
保健室
西木野「あら。熱中症以来ね」
千歌「その節はどうもぉ〜」ペコ
千歌「って違う!!!突き指!!突き指したんです!!!」
西木野「突き指ねぇ。いつどこで、どんな感じで?」
千歌「えーっと……10分前くらいに、グラウンドでドッチボールしてて……」
ダイヤ「ドッジボールのルールを勘違いしていた生徒に至近距離からボールを投げられてしまい、そのまま指に当たったようですわ」
梨子「その後も指を抑えてしゃがみこんだりしていて……多分、こんなヘラヘラしてますけど相当痛いんだと思います……」
西木野「……なるほど。ここ、痛い?」グッ
千歌「ぎゃあああっ!!痛い!痛いです!!!絶対骨折ですこれ!!」
西木野「んー、全く大袈裟ね……」 西木野「いい?保健室はあくまで可能性しか分からないの。私が貴女の指を見て、折れてます〜とは判断出来ない。養護教諭って、そういう仕事なのよ」
西木野「だから取り敢えず固定したり、氷を渡したりとか、そういう処置しか出来ない。今すぐ病院に行ってもいいけど……どうする?」
千歌「……いえ、クラスマッチやりたいです」
ダイりこ「「何で!?」」
千歌「だってドッチボール楽しいんだもーん!」
西木野「大馬鹿者ね……ほら、指出して」
西木野「……貴女、このまま試合に出て、指悪化しましたーって言われても自己責任だからね」
千歌「は、はぁい……」
西木野「折れてる可能性があるから、ちゃんとクラスマッチが終わったら病院に行くこと。あと今日はあんまりボールは触っちゃダメよ。トドメ刺されるわよ、分かった?」
千歌「わかりました」
西木野「…………」ジイィッ…
千歌「いや疑わないでくださいよ!?私だってここまで痛かったらボール触らないしちゃんと病院行きますから!!?」 西木野「あなた、テンション上がったら何でもしちゃいそうで怖いのよね。絶対次の試合でボール投げるわよ」
ダイヤ「ああ……分かります、千歌さんならやりかねないですわ……」
梨子「うんうん……ダメって言ってもヘラヘラしてボール投げてそう……」
千歌「やめてよ!?確かに今ヘラヘラしてるかもしれないけど相当痛いよこれ!?絶対骨折れてるよこれ!?!?」
西木野「折れてないことを願ってるわ。ほら、もうすぐ次の試合でしょ?ちゃんと見守ってあげて」
ダイヤ「分かりました、西木野先生ありがとうございます。千歌さんのことは私達に任せてください」
西木野「ん。あ、あと氷溶けてきたらちゃんと保健室で替えの氷貰いに来なさいよ」
千歌「はぁーい。じゃあね先生!」ブンブン
西木野「はいはい、またね。そんな腕振ってたらそっちの指も折れるわよ」
梨子「いやそれだと骨脆すぎません??」 _T_i_k_T_o_k_ _l_i_t_e_(←迷惑でしたらこちらをNGしてください)
家族にも教えて、追加で4000円分×人数を入手できます!
https://i.imgur.com/cT2XIAA.jpg すみませんもう少し書き溜めたいので今日もおサボりさせてください! ----
浦の星農業高校グラウンド
善子「千歌!」タッ
千歌「あ!善子ちゃん!見てみてー!テーピングしてもらったんだー!」
善子「大丈夫だったの!?もう帰る?病院行くの?」
千歌「ううん、一応クラスマッチ最後までさせてもらうことになった!」
善子「バカじゃないの??」
千歌「あ!そういえばあっちで鞠莉先輩と果南ちゃんが戦ってるんだよね!見に行こ!」タッ
善子「あっ!?もう……」タッ -
ザッ……
果南「……鞠莉、こんな所で争うことになるなんてね」
鞠莉「い、いや別に私は争うつもりとか無いし……というかこれ、ただのクラスマッチでしょ?何そんなに本気になってるのよ……」
果南「関係無いよ!私はどうしても動物科に負けたくないの!」
鞠莉「なんでよ?」
果南「動物科って……動物も居るし、野菜もお米も作ってるし……卵も堆肥も販売してるじゃん!!浦農の経済力は動物科が補ってるようなものだし、私は園芸科として許せないの!」
果南「千歌から聞いたよ……校外学習、緑化と動物科でバスの大きさが全然違ったって……」
鞠莉「いや、まあ……緑化は何売ってるのか分からないし……」
果南「だからって同じ20人くらいなのに緑化だけぎゅうぎゅうに詰まって乗るのは可笑しいんじゃない!?そっちは修学旅行ですかーみたいな大きさのバス乗ってさぁ!」
鞠莉「良いから早くボール投げなさいよ」 ピピー!
体育委員「あの、時間稼ぎはちょっと……」
果南「あ、すいません……」
鞠莉「ほら、貰うわよボール」
果南「覚えときなよ」
鞠莉「何でよ。さ、投げるわよ」スッ…
梨子「ま、鞠莉先輩、がんばれーっ」
ダイヤ「鞠莉先輩、頑張ってくださーい」
鞠莉「あら、可愛い子からのエール貰っちゃった」
果南「ふざけるなあああああああっ!!私よりも先に梨子ちゃんからエール貰ってて許せないよ!!」
鞠莉「もう!いい加減にして果南!」バッ!
果南「ぐはぁっ!!」ボコォッ!
鞠莉「…………果南……」
果南「…………い、いやー、流石動物科だねっ」
鞠莉「やかましいわ」 ---
一方その頃…
花丸「ルビィちゃん……覚悟するずらぁ!」バッ!
ルビィ「ひいぃっ!?」涙目
曜「大丈夫!ルビィちゃんは私が守る!」バッ!
花丸「曜ちゃん……負けないずらよぉ!てりゃ!」ブンッ
ヘロヘロヘロ…
曜「あ、転がってきた……」ヒョイ
曜「はい!ルビィちゃん投げてみて!」
ルビィ「ええぇっ!?るるるるルビィは無理だよぉ……っ!」ウユウユ
クラスメイト「(何この癒し空間)」 -------
-----
--
帰宅後…
整形外科
看護師「じゃあレントゲンの結果が出るまで待っててくださいね」
千歌「はぁい……」
千歌「(折れてませんように折れてませんように折れてませんように…………)」
千歌「(もしも折れてたら……私は全校の皆の前で包帯ぐるぐる巻きで出ないといけなくなるんだ……)」
千歌「(文化祭だけじゃない。実習だって絶対不便になるし、文化祭で販売する用の苔玉作ってる課題研究は足を引っ張ることになる……)」
千歌「(折れてたら、どうしよう……)」
看護師「高海さーん、高海千歌さーん」
千歌「は、はぁい!」タッ 医師「レントゲンを見る限り、骨に異常は無さそうですね」
千歌「よ、良かったぁ……中学生の時身長伸ばそうとして牛乳いっぱい飲んでてほんと良かった……」ホッ
医師「少し、触って見てみましょうか」スッ…
千歌「は、はい……」スッ…
医師「これ。痛いですか?」グリグリ
千歌「痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!やめて!やめてええええぇっ!!!」ガタッ
看護師「だ、大丈夫!?そんなに痛かった?」
千歌「はい!とっても!!!」涙目
医師「靭帯損傷しているかもしれませんね」
千歌「えっ靭帯損傷??」 医師「はい、固定しましょうか」
千歌「えっ」
千歌「あ、あのぉ……固定って、大体何週間くらい……」
医師「最低三週間ですね」
千歌「三週間!?」
看護師「何かあるんですか?」
千歌「……あの、三週間後に文化祭があるんです。そこで全校の前でダンスを踊ったりするんですけど……」
医師「包帯で出るしかないですね」
千歌「」 ------
LINEグループ:Aqours(9)
千歌:動物科、優勝おめでとうございます!!
果南:👏( ˘ω˘ )
曜:よくやった
千歌:あ、違う。言いたかったのこれじゃない
千歌:ごめんなさい。今日のクラスマッチで左手の薬指を怪我してしまい、三週間ほど固定することになりました。文化祭に間に合うかは分かりません……😭
鞠莉:包帯ぐるぐる巻きセンター
鞠莉:大丈夫?骨折?
千歌:靭帯損傷かもって。今の私より、指が左右にぐにゃんぐにゃん動いてると手術レベルらしいです
善子:やば。千歌の指、手術直前ってこと?
千歌:そうみたい。危なかった。というかめちゃくちゃ痛かった 果南:当たったの見てたよ。痛そうだった
千歌:あのね。当たった時も痛かったけど、一番痛かったのは診察の時
千歌:お医者さん私の指、ぐりぐり動かすから痛過ぎて泣いた
善子:ヒェッ……
曜:千歌ちゃん大丈夫?
千歌:大丈夫ではないけど大丈夫
千歌:画像
善子:グロ 中々更新出来ずすみません。今夜遅い時間になってしまいますが必ず更新します! --------
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二週間後
緑化棟
授業:課題研究
千歌「んぐぐぐっ……伸びろ、伸びろぉ……」ギチギチ
梨子「……千歌ちゃん、やっぱり無理しない方が……」
千歌「よーし、こんだけ伸ばして左手だけビニール手袋してれば、包帯してても苔玉作れるでしょ!」ノビノビ…
ダイヤ「いくらなんでも伸ばしすぎでは?」
千歌「いけるいける。せんせーっ!チカもやりますー!」
山崎「大丈夫か、そんな指で」
千歌「だって私がやらないと文化祭まで間に合わないじゃないですか。まだ15個くらい作らないと行けないんですよね。あと一週間も無いのに」
山崎「……無理すんなよ」
千歌「はーい!」
千歌「そうだ!梨子ちゃんダイヤちゃん!誰が一番早くて上手く作れるか競走しよー!」
ダイヤ「大丈夫です?そんな指で」
千歌「もう!大丈夫だってば!」 山崎「ほら、やるならちゃっちゃとしちゃえ。測っとくから。よーい、どん」
梨子「(ウチの課題研究の苔玉は、まずお椀に25cm×25cmの大きさで切った麻布を敷いて……)」
ダイヤ「(苗から外した植物に付いている土を綺麗に落としてから根を露出させて)」
千歌「(敷いた麻布に軽く赤玉土と培養土を混ぜた土をかけて、根を露出させた植物を真ん中に入れる)」
梨子「(おにぎりみたいに優しく麻布で包み込みながら周りに土を被せて、円を描くように天糸を巻き付けて麻布を固定し、形を整える)」
ダイヤ「(次にバケツで水に浸しておいたミズゴケを取り、麻布を覆うようにミズゴケを貼る。再度天糸を巻き付け、ミズゴケを固定させたら完成ですわ!)」
千歌作苔玉:怪我のハンデもある為、形は少し崩れてしまっているが、初期に比べればだいぶ上手くなった。
梨子作苔玉:お手本のような丸さと大きさ。千歌やダイヤに比べると目立つところは少ないが、商品として何処か目を引く。
ダイヤ作苔玉:職人。もういっそその道に行くべき。 千歌「皆5分以内には作れるようになったね……!」
梨子「千歌ちゃん、その指でも5分以内に作れるなんて凄いわね……」
千歌「コツを掴んだら結構早く作れるようになったからね!指怪我してなければ3分くらいで作れると思うよ!」
ダイヤ「千歌さんもだいぶ上手くなりましたしね。前まではあんなに巨大な苔玉を作っていたのに」
千歌「これはほら、努力の成果じゃん?」
山崎「……よし、あと4個ずつだな。このペースなら今日中に終わりそうで良かったな」
千歌「苔玉は、ですけどね。あと一週間で箱庭も作らないとです」 ダイヤ「でもまだ箱庭で良かったですわ。展示するのが校舎前で造る枯山水式庭園だったら絶対間に合いませんでしたし」
梨子「白津先生、体調不良〜ってなってからまだ戻ってきて無いもんね……」
千歌「でもいいの?ダイヤちゃん、枯山水見て造園に興味持ったんでしょ?やっぱり造りたくなかった?」
ダイヤ「良いのですわ。その代わり、箱庭のテーマは枯山水式庭園にしましょう!」
千歌「おー!いいねいいね!絶対楽しい!!」
梨子「私も賛成。三人で一つの小さな庭園を造るなんてワクワクするね」
山崎「お前ら、話さんでちゃっちゃかやり」
ちかダイりこ「「「はーい」」」 どうしよう、今日更新しようと思ってたんですけど次スレ立ててからの方がいいですかね? このスレッドは1000を超えました。
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