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侑「その閉ざされた楽園で」2
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0004名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/14(日) 23:30:37.70ID:NA0scIAc
第2章 秩序-society-
 

12月〇×日 6:45p.m.

ブロロロ

かのん「みんな、今日はお疲れさま! 私たちいいライブができたと思う」

千砂都 「そうだね。結果は悔いが残るものだったけど、反省点も見つけられたし、次に活かせるいい経験が出来たんじゃないかな」

すみれ「そうねー。4位ってのはちょっとばかし納得出来ないったら出来ないけども」

可可「グソクムシはほっといてシュクハイをあげまショウ!」

すみれ「おいこら」

恋「ま、まあまあ」

サヤ「皆さん、一応レンタカーですので祝杯は程々にお願いしますね」フフ
0006名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/14(日) 23:32:39.68ID:NA0scIAc
かのん(いやぁ、でもまさか私たちがあんなすごいイベントに呼ばれるなんて……)ニヘラ

 自然と頬が緩んでしまう。
 ラブライブ!の東京大会を終え、新たな目標を定めた矢先に訪れたスクールアイドルフェスティバルというイベントへの誘い。

かのん(これって私たちの名前が他の県にも知れ渡ってたってことだよね? うわぁ、どうしよどうしよ! まあ、伊達に2位だった訳じゃないけどお?)クネクネ

かのん(でも、すごかったな。1位の学校……)

 ラブライブには出場していないソロ主体のグループで、虹なんとか同好会って言ってたっけ。

千砂都 「かのんちゃん嬉しそうだね」

かのん「うん。私、今すごくワクワクしてるんだ。サニーパッションだけじゃない。私たちの身近にもとんでもない人たちがいるんだって」

かのん「そう考えたらさ、なんだか燃えてきちゃって」

千砂都 「うんうん。なら、帰ったら反省会だね!」

かのん「え"っ!?」
0007名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/14(日) 23:34:41.52ID:NA0scIAc
恋「……」キョロキョロ

サヤ「お嬢様? どうしました?」

恋「あ、いえ。この辺りは交通量が少ないのでしょうか」

恋「結構離れていますが、前を走るバス以外には他の車両を見かけませんので、気になってしまって」

すみれ「走りやすくていいじゃない」

可可「この道は人気がないのデスカー?」

サヤ「ふふ、それはどうでしょうか。何分、私も初めて通る道ですから」

ブロロロ…

恋「サヤさん、トンネルが見えましたよ」

サヤ「おかしいですね。ナビにはこの道が最短ルートで設定されていましたが、トンネルの表記などは……」ピッピ

サヤ「型落ちのレンタカーですから、ナビも古いのでしょうか」ウーン
0009名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/14(日) 23:38:53.75ID:NA0scIAc
かのん(トンネルかぁ。前に通ったのいつだっけ)

 その深い深い大きな穴は、まるで私たちを飲み込まんとじっと獲物を待ち伏せる深海の狩人のようである。

かのん(なーんて。このフレーズ次の曲で使えないかな)

 そんなことを考えているうちに、サヤさんの運転するミニバンはゆっくりとトンネルの中に入って行った。

 今時珍しくなったオレンジ色の照明が視界を一気に変化させる。

かのん「豆電球ってこんな感じの色だったよね」

千砂都 「あはは、懐かしいね。小さい頃はずっと付けっぱで寝てたっけ」

かのん「ちぃちゃん、豆電球好きだったよねぇ」

千砂都 「だって、響きがまんまる〜って感じしない?」キラキラ

かのん「そ、そうだね」

パラ、パラ…カチ

可可「あ! 見マシタか!? 一瞬ライトが消えマシタ!」

すみれ「え、ごめん。見てなかった」っアイマスク

可可「ブフッ。なんですかソレ。グソクムシにはお似合いのマスクデスね」

すみれ「……うっさいわねぇ」
0011名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/14(日) 23:43:18.65ID:NA0scIAc
ズズ…カチ、カチ パラパラ

可可「また消えマシタ! ニッポンのトンネルの照明は付いたり消えたりするモノなんデスね〜」グイグイ

すみれ「ちょっ、もう! 大人しく寝かせなさいよ!」

ドッ…ド…ドッ ズズ

サヤ「お嬢様、皆さん…‥シートベルトはちゃんとしていますか」

恋「? はい」

千砂都 「……揺れた」

かのん「え? なにもーちぃちゃんたら。私そんな揺れるほどある? あっちゃう?」

千砂都 「かのんちゃん、シッ」

かのん「もがっ?」

すみれ「どうしたのよ、千砂都 ?」

ズン、ズン…ガタッン!

可可「今ナニカ踏みましたか!?」
0012名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/14(日) 23:46:18.51ID:NA0scIAc
千砂都 「っ、サヤさん! 一度停車させて下さい!」

すみれ「ちょっと何言ってるのよ!? トンネル内での停車は違反ったら違反よ!」

サヤ「私も嫌な予感はしておりましたっ。ですが!」

ドンドンドンツ…ドンッ!

サヤ「つぅ、!?」グッ!

キキィイイイ!!

恋「きゃあぁああ!?」

千砂都 「かのんちゃん!」

かのん「〜〜〜っ!?!?」

 なに? なに? なんなの!?
 地震!!?

 急ブレーキがかかる。車体がつんのめり、急激な衝撃が私たちを襲った。
 体重を支えられず、シートベルトに体が強く引っ掛かる。胸を締め付けられ、呼吸が一度止まったかと思うほどだ。

かのん「がはっ! げほっ、」

千砂都 「はぁ、はぁ。かのんちゃん、身を低くして頭を押さえて!」

千砂都 「みんなも! 早く!!」

すみれ「いっつぅ……な、なんなのよこれ」

可可「一体全体ナニゴトデスカ!?」

恋「あ、ぁあ、さ、サヤさ――――

――――ドッッン!!!!
0013名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/14(日) 23:50:43.18ID:NA0scIAc
――――

――――――――

・・・

ユサユサ

かのん(う、うぅ……ん。な、に?)

パチン、ペチン

かのん(ちょ、誰? 頬叩いてるの……もう、ゆっくり寝かせてよ)

千砂都 「かのんちゃん! 起きろ!」

かのん「――――えっ、ち、ちぃちゃん?」パチッ

千砂都 「っ」ガバッ

かのん「わっ?!」

 この匂い、感触。ちぃちゃんだ。
 私、どうしてちぃちゃんに抱きつかれてるの?

千砂都 「よかった」ギュウ

 耳元で囁かれた噛み締めるようなその一言で私は理解した。
 ここはトンネルの中だ。そして、車は止まっていた。

かのん「っあ!!? じ、じじ地震!! すごいっ、ゆれって、あの! わた、私、気絶s

千砂都 「かのんちゃん、深く息を吸って」ムギュ

かのん「ふぁ、ふぁい」

かのん(鼻摘まれた……)

千砂都 「はい。吐いてー吸ってー、もう一度……うん、おっけー。落ち着いた?」

かのん「ふぅー。う、うん、ごめんね。取り乱しちゃった」
0015名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/14(日) 23:56:47.53ID:NA0scIAc
 気を失ったのはこれで何回目だろう。
 また嬉しくない記録が更新されてしまった。

かのん(ああ、私ってほんと……情けないなぁ)

千砂都 「あのね、かのんちゃん」

恋「サヤさん! サヤさん!! しっかりして下さい!!」

 助手席に座る恋ちゃんの悲鳴が鼓膜を突く。

 恋、ちゃん……?

千砂都 「怖がらないで欲しいんだ。今がどうゆう状況なのか、知ることは勇気がいると思う」

 ちぃちゃんが私の手を握る。

 何を言って、今は恋ちゃんが

かのん「ね、ねえ……恋ちゃん? どうしたの?」

千砂都 「かのんちゃん」

かのん「サヤさんは? どうして動かないの? ねえ、寝てるの? 教えて」

千砂都 「かのんちゃん!」

かのん「なんでサヤさんは起きないの!?」
0017名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/15(月) 00:03:27.03ID:fUx7tva+
 気付けば、可可ちゃんとすみれちゃんが心配そうな目で私を見ていた。

可可「クゥクゥは無力デス。なにも、なにも出来ませんデシタ」グス

すみれ「……私たちに何が出来たって言うのよ。これ以上は自分が苦しいだけだわ」フイ

かのん「サヤさんに何が起きたの? 教えて、恋ちゃん」

 私は静止するちぃちゃんの手を振り払うと、ゆっくりと前部座席の方へ体を動かした。
 車内のルームランプで淡く照らされたサヤさんの姿がはっきりとその目に映る。

かのん「……あ、え?」

 ハンドルにはべっとり赤黒いモノが付着し、サヤさんはぐったりとその上に体重を預けていた。
 見れば、フロントガラスにはヒビが入っており、それはちょうどサヤさんの頭が――――

かのん「ひ、ひぃいいいい!?」ガタガタッ

すみれ「っ、このバカ!」

かのん「あ、はっ、ひ、ひっひ」ゼェゼェ

可可「かのん!! しっかりするのデス!」
0018名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/15(月) 00:10:30.46ID:fUx7tva+
 ああ、ダメだ私。さっきちぃちゃんに言われたばっかなのに。
 怖くて、足がすくんで、体が震えて仕方ない。

かのん(こ、呼吸が……でき、なっ)ハッハッ

恋「かのんさん!?」

かのん「ち、ちひちゃっ、たすけ

――――パン!

かのん「っ、!?」

すみれ「ちょ、千砂都、あんたなにしてっ?」

千砂都 「落ち着いて――――いい? 今かのんちゃんが泣き喚いたって何にもならないんだよ。イタズラにみんなを怖がらせるだけ」

かのん「っ、っ」コク、コク

千砂都 「大丈夫。かのんちゃんはやれば出来る子なんだから」ニコ

可可「千砂都 ……?」
0019名無しで叶える物語(光)
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2022/08/15(月) 00:11:23.68ID:gE7zOysU
ぬしに荒らされるよ
0020名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/15(月) 00:20:08.85ID:fUx7tva+
千砂都 「恋ちゃん、サヤさんを起こせる?」

恋「! は、はい! やってみます!」

千砂都 「すみれちゃんも手伝ってあげて。起こしたら座席を倒して、なるべく水平に……うん、ありがとう」

かのん「……」ヒリヒリ

 ちぃちゃんに叩かれた頬がジンジンと熱を発する。
 気付けば呼吸もすっかりと落ち着いていた。

 テキパキと指示を出すちぃちゃん。
 その姿はあんまりにも眩し過ぎて、

可可「かのん、大丈夫デスカ? 千砂都はやりすぎデス」

千砂都 「可可ちゃん。タオル持ってないかな?」

可可「あひぇ!? も、持ってマス!」

恋「ああ、サヤさん、こんなに血がっ」

かのん「……」

 ――――私にも何か手伝えることはある?

 そんな言葉すら出てこなかった。
0021名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/15(月) 00:28:55.71ID:fUx7tva+
寝落ちしそうなので、明日にします。
何スレで落ちるんでしたっけ
0025名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/15(月) 00:32:01.50ID:fUx7tva+
ありがとうございます。
長編になる予定なのでスレを分割しましたけど、場合によってはそのまま続けます
0026名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/08/15(月) 00:35:28.31ID:7NSejt8O
1スレで足りないならそれこそ分割するのは微妙かと
前スレのペースで分割したら30スレとか必要になっちゃうよ
0027名無しで叶える物語(たこやき)
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2022/08/15(月) 01:05:29.05ID:8wUNQYrg
せめて100とか200とか伸びてからそこは心配しては
0029名無しで叶える物語(らっかせい)
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2022/08/15(月) 03:55:16.88ID:KiSSO79B
面白い
0035名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/16(火) 23:02:51.73ID:vFw+m0Zq
・・・

可可「あのぅ、サヤさんは無事なのデスカ?」

すみれ「……多分。頭をガラスに強くぶつけたんだと思うけど、この出血の量だと何とも」

千砂都 「分からないけど、やれるだけのことはやったよ。早く病院に連れて行かないと」

恋「駄目です。け、携帯が繋がりません!!」

すみれ「へ? 何言って……嘘でしょ。なんで、なんで圏外なのよ!?」

千砂都 「本当だ。かのんちゃんのもだめ?」

 そう言われて、慌てて自分のスマホを探す。
 あの時の衝撃で座席の下に落ちてしまったみたいだ。

かのん(私、今酷い顔してる)

 スマホの画面に反射して映るその顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。

かのん(圏外だ……)

 私は首を横に振った。
0036名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/16(火) 23:05:00.48ID:vFw+m0Zq
千砂都 「そっか。可可ちゃんのもだめみたいだし、困ったね」

すみれ「……どうするの? いっそ誰かが運転してトンネル抜ける?」

可可「何言ってるんデスカ!? クゥクゥたち運転免許持ってないデスよ!!」

すみれ「真面目か! いい? サヤさんは危険な状態なの。悠長になんかしてられないのよ」

千砂都 「うん。いいアイデアだと思う」

可可「千砂都 !?」

恋「待って下さい。ここはまだ入り口からさほど離れていないはずです。一旦、歩いてトンネルの外に出るべきです」

恋「外に出れば電波も届くはず」

すみれ「まあ、それが一番確実よね。この道を通る車に助けを求めることもできるし」

かのん「で、でもすごく暗いよ。危ないんじゃ」

 私は窓の外を指差す。
 元々、等間隔で設置されていた照明の光はただでさえ見通しも悪く、光量も弱く感じられた。

 きっと相当古いトンネル。それが今では、地震の影響か付近の照明はほとんど機能していなかった。
0037名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/16(火) 23:10:14.62ID:vFw+m0Zq
すみれ「スマホのライトでなんとかなるわ。完全に真っ暗って訳じゃないし」

かのん「で、でもぉ」

すみれ「ああもう。私が行くからそんな心配そうな顔しないでったら。仮にもリーダーなんだからシャキッとしなさいよ」

かのん「……ごめん」

恋「私も言い出しっぺですから。お供させていただきます」

可可「クゥクゥにも行かせてクダサイ! すみれとレンレンだけでは心配デス!」

すみれ「それはこっちのセリフ。あと恋はサヤさんの傍にいてあげなさい。起きた時に親しんだ人の姿が見えないと悲しむわ」

 すみれちゃん、すごいな。そんなかっこいいこと、すらすら言えるんだもん。
 私なんて肩書だけのへっぽこリーダーだ。

千砂都 「そうだね。恋ちゃんはここにいて。私が行くから」

かのん「……え? なんで? ちぃちゃんはここにいてくれるんじゃないの!?」ガシ
0038名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/16(火) 23:16:00.55ID:vFw+m0Zq
千砂都「かのんちゃん、痛い」

すみれ「ちょっと。こんな時にまた揉め事? 一刻を争う事態なのよ」

かのん「ねえ、ねえっ。ここにいよう? 恋ちゃんと一緒にサヤさんの看護しようよ!」

千砂都「かのんちゃん……私の知ってるかのんちゃんはそんなこと言わない」

かのん「へ?」

千砂都「あの時のかのんちゃんはいつだって私のヒーローだった。私の心を震えさせてくれた」

千砂都 「今のかのんちゃんはただの泣き虫だよ。昔のかのんちゃんなら、私が行くって言ったら代わりに行ってくれるぐらいはしてくれたはずだよ」

かのん「何、言ってるの……ちぃちゃん?」

千砂都「かのんちゃんはLiellaのリーダーで、ヒーローで、強い子なんだ。だから決めて」

かのん「決めてって……」
 

千砂都 「かのんちゃん、どうする?」
0039名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/16(火) 23:24:05.81ID:vFw+m0Zq
・・・

ザリ、ザリ

すみれ「アンタおっちょこちょいなんだから、足元気をつけなさいよ」

可可「すみれこそ転ばないようにしっかりクゥクゥの後ろをついてくるのデスよ! かのんはクゥクゥと手を繋ぎまショウネっ」

 薄暗いトンネルの中を、3つの光がゆっくりとした速度で移動する。
 遠目に見れば、暗闇の中に浮かぶホタルの光のように映ったであろう。

かのん「うぅ、なんで私がぁ……」グズグズ

 あの時って何? いつのこと?
 訳分かんない。ちぃちゃんは私に何を期待してたの? 何を求めているの?

 ちぃちゃんの言葉が、時々分からなくなる。

かのん『じゃ、じゃあ私が行っちゃおっかなぁ〜……なんて』

 結局、あの後彼女のえも言われぬ迫力に圧された私は逃げるようにその場を後にしたのだった。

 これは昔からの悪いクセ。やりたくないのに、前に出たくないのに。誰かの期待が、誰かへの脅迫に変わるのだ。
0040名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/16(火) 23:31:01.23ID:vFw+m0Zq
可可「ヨシヨシ。千砂都はかのんに強くあって欲しいのデスよ」

すみれ「でも、確かに変よねぇ。千砂都ってかのんのこと絶対的に盲信してるって感じだし。そんな突き放すようなこと」

可可「すみれには人の機微が分からないのデスカ」

すみれ「? どういう意味よ」

可可「解釈違いデス。千砂都は鬼の子デス。クゥクゥの国にこんなことわざがありマス」

かのん「ちょっと、2人とも。そんな教育方針の違いみたいなこと言わないでよ……」

可可「百尺竿头、更进一步。優れた成果を上げていても、それに満足せずひきつづあぃえ!?」ガツンッ

かのん「可可ちゃん!? 大丈夫!?」

可可「ナニカにツマズキました……这很危险!」

すみれ「ちょっと、こんな所で怪我でもしたらシャレにならないわよ」

 地面にライトを向ける。

かのん(なんで、なんでこんなに荒れてるの……!?)

 可視化された塵や埃の量もさることながら、周囲には大小様々な岩石が散乱していた。
 それは先に進むにつれ、より酷くなっていくようだ。
0041名無しで叶える物語(茸)
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2022/08/16(火) 23:32:32.47ID:1bjOlI+f
期待
0042名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/16(火) 23:42:28.63ID:vFw+m0Zq
すみれ「……慎重に進みましょう」

かのん「う、うん。私と可可ちゃんで地面照らすから、すみれちゃんは前をお願い」

ガラ …ジャリ ジャリ

 整備された道路の上を歩いていたはずなのに、いつからか砂利道を歩いているような感触。
 時々、何か硬いものを蹴り上げる。

可可「けほっ、けほ」

かのん「可可ちゃん、口元何かで覆った方がいいよ」

 空気も悪い。そして暗い。暗過ぎる。
 入り口に近づくほど周囲がより黒く染まっていくようだ。

すみれ「2人とも、最悪の事態を想定しといた方がいいわよ」

かのん「……え?」

すみれ「おかしいのよ。外に近付いているのなら、こんなに真っ暗ってことはないでしょ。そろそろ外の明かりが見えてきてもいい頃じゃない」

かのん「そ、そうかな。だって、時計を見てよ。もう7時だよ。外は暗くなってるから……」

すみれ「だとしてもよ。こんなに暗いのは変。どんどん暗闇の中に飲み込まれていってる気さえするわ」
0043名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/16(火) 23:52:20.38ID:vFw+m0Zq
可可「風も全くありまセン。暑い……苦しいデス」ハアハア

 粘りつくような湿気と熱。空気もまともに吸えないほど悪くなっていく。

かのん「……」フゥ、フゥ

 この辺りやばい。

 ひび割れ、砕けたアスファルト。迫り上がった道路は至る所に段差を作り、未舗装の山道を想起させた。

かのん(こんなの、まともに歩けない……!)

 そこまで大きな地震だったのなら、どうして自分たちは五体満足で歩けているんだろう。
 一生分の運をここで使い切ってしまったと言われても納得できてしまう。

すみれ「げほっ、ごほっごほ……っ、これ以上は流石にやばいったらやばいわね」

かのん(空気が薄く感じる……多分、無意識に汚れた空気を吸わないようにしているってのもあるんだろうけど)

 土埃とガスで痛む目を擦りながら、私たちは何かに取り憑かれたかのように歩みを進める。

 200メートルは歩いただろうか?
 実際にはたいした距離も進んでいなかったのかも知れない。
0044名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/17(水) 00:01:25.33ID:/8m+nuYd
可可「……あ」

 少し先を歩いていた可可ちゃんが足を止める。

可可「あ、え? どうして、ここに壁があるのデスカ……?」

 ついに私たちは辿り着いた。

かのん「ああ、そんな」

 見上げるほどに積み上げられた石の壁。
 それは完全にトンネルの入り口を塞いでいた。

すみれ「ウソでしょ? まさか、本当に……ぁあああ!!」ダンダンッ!

 すみれちゃんの嗚咽と悲鳴を含んだ絶叫が周囲に木霊する。
 悔しそうに地団駄を踏む彼女の姿を、私は黙って見ることしかできなかった。

かのん「可可ちゃん、どこかに隙間がないか探そう? 大丈夫だよ、きっと出れるよ」

 声も、視界も、震えていた。
 すぐに、隙間の向こうにも同じ景色が広がっているのが分かった。

 この瓦礫の山はどれほどの厚みがあるのか。想像もつかなかった。

かのん「はあ、はあ、っ、ふう、ふぅ」

 何かに縋るように、闇雲に光を走らせる。

 トンネルの壁には無数の亀裂。半分崩落した天井を支えているのは、皮肉にも積み上げられた瓦礫の山。

 新たな情報が目に入るたびに、絶望が私たちを侵食していく。
0045名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/17(水) 00:19:25.94ID:/8m+nuYd
かのん(こんなの、いつ崩落してもおかしくないっ)

可可「――――ゲホッ! ゴホっ、っ、ごほ」

かのん「可可ちゃん!」

 突然、可可ちゃんが喉を押さえて蹲る。

可可「我…不再想要、它了。我想…回家! 我想、回家‼︎」ゴホッゴホッ

かのん「げほっ、げほ、っなに? 聞き取れない!」

すみれ「ふざっけ、るな! 開けなさい! 開けなさいよ!!」ダンダンッ

かのん「すみれちゃんっ! そんなことしても!」

 だめだ。2人ともパニックになってる。
 ここで私まで取り乱してしまったら、今度こそ終わりだ。
 

千砂都 『あの時のかのんちゃんはいつだって私のヒーローだった』
 

かのん(ちぃちゃん……そうだ。私はリーダーなんだ。この、Liellaの、みんなの!)

 なるんだ。
 みんなの理想のリーダーに。

ブゥウウーン

かのん「? 蝿の、音……?」
0046名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/17(水) 00:29:48.95ID:/8m+nuYd
書き溜めて2日おきくらいに投稿していきます
(途中で別スレ移行するかも)

8月中には完結させます
0047名無しで叶える物語(SIM)
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2022/08/17(水) 00:32:35.68ID:0EOm+A+3
乙 めっちゃ楽しみ
何か分けたい理由があるならいいが2日ぐらいならスレ保守されると思う
0056名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/21(日) 00:18:52.63ID:mzXUKMNK
・・・

 こんなトンネルの中でも、虫は湧くのだろう。
 しかし、今はそんなことに気を掛けている場合ではなかった。

かのん「2人とも! 一旦みんなのところに戻ろう!?」

すみれ「どこかに隙間、隙間……何かあるはずよ」ブツブツ

可可「こんなガレキ、クゥクゥが全部取っ払って……っ、ふぬぐぅうう!」プルプル

かのん「〜っ」

かのん「ねえ、聞いてよ!!」

かのん「おーい!!」

すみれ「っ、な、何よ!?」

可可「か、かのん?」

かのん「……」ムゥ

すみれ「っ、……悪かったわよ。ちょっと頭に血が上っちゃって」
0057名無しで叶える物語(はんぺん)
垢版 |
2022/08/21(日) 00:20:11.01ID:mzXUKMNK
かのん「この、分からず屋どもー!!」

――――ゴチンッゴチンッ

すみれ「ぎゃら!?」

可可「アイヨ!?」
 

かのん「……いたい」グス

すみれ「……」

可可「……」

すみれ「待って、私たちなんで頭突きされたの。今の話聞く流れだったわよね」

可可「かのん、オデコ大丈夫デスカ?」サスサス

かのん「だって、そういう場面だったじゃん」

すみれ「あなたが1番ダメージ受けてるじゃない……」

かのん(頭突きってする方はそんなに痛くないのかと思ってた……)

 リーダーっぽいことしなきゃって考えた結果、何故か頭突きという選択肢が浮かんでしまった。先週見たヤンキー映画の影響だろうか。
0058名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/21(日) 00:24:40.81ID:mzXUKMNK
すみれ「……はあ、まあいいわ。おかげでちょっと頭冷えた。ありがと」

可可「……クゥクゥもです」シュン

かのん「こんな所にずっといたら倒れちゃうよ。スマホのバッテリーだって長くは持たないし」

すみれ「確かに、そうね。一度千砂都たちの所に戻りましょう」

 よかった。2人とも冷静になってくれたみたい。
 
かのん(少しはリーダーらしいところ、見せられたかな)

・・・

カランカラン…ジャリ、ジャリ

すみれ「2人とも、ちょっといい?」

かのん「ん、?」

可可「なんデスカ?」

すみれ「ちょっと今の状況をまとめてみたんだけど……2人にも確認しておこうと思って」

 さっきからライト照らさずにスマホ弄ってたのは、そういうことだったんだ。
 すみれちゃんらしいマメさというか何というか。
0060名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/21(日) 00:31:16.98ID:mzXUKMNK
すみれ「結論から言うと、入り口から出るのは正直言ってムリ」

かのん「っ」

 突きつけられたその言葉に、足元がふらつくような感覚を覚える。

可可「そ、そんなコトはっ」

すみれ「アンタも見たでしょ? 人の手であの瓦礫を退かすのは不可能よ。無理に動かせば落石の危険もある」

すみれ「ただ、あんだけ積み重なってるおかげでトンネル自体の崩落が防げているのも事実だと思うの」

かのん「でもそんな都合のいいことがあるのかな。出口だけ塞がれてるって、あんな量の瓦礫はどこからきたの?」

すみれ「そりゃあ山腹に造られてるんだから、土砂やら何やらが斜面崩壊ってやつじゃない?」

 そう言うと、すみれちゃんはスマホの画面を私たちに見せた。
 そこに開かれていたメモ帳アプリには、すみれちゃんが気になったこと、発見したものなどが箇条書きで事細かに記されていた。

すみれ「入り口に近づくほど、排気ガスや土埃、熱気が酷く濃くなっていく。目も開けられないほどにね」

可可「あとスゴク息苦しかったデス」
0062名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/21(日) 00:35:02.80ID:mzXUKMNK
すみれ「ええ。まともに息を吸える場所じゃないわ。ただでさえトンネル内は空気が悪いってのに」

かのん「入り口付近は照明も落ちてるから真っ暗だし、足場も悪いから、行動するには明かりが必要不可欠だよ」

かのん(このスマホは命綱だ。もしバッテリーがなくなったら……)ゾッ

かのん「……」スッ

可可「かのん? なぜ、明かりを消したのデスカ?」

かのん「……え? あ、ご、ごめんっ」

 無意識だった。
 ライトを消したことに、疑問も抵抗も全く感じなかった。

かのん(何やってるんだ私。大丈夫、まだバッテリーは持つ……それに、私のが使えなくなってもちぃちゃんたちのがある)ハァハァ

 ああ、苦しい。自らの寿命を削っている気分だった。

すみれ「……圏外のままか。外に近づいてもだめだったってことは、相当大規模な地震だったのかしら。電波塔か回線がイカれたってこと?」ウーン

可可「これからどうするのデスカ……?」

すみれ「ん、一先ずは車に戻ってから千砂都たちの意見を聞くわ。サヤさんの容態次第では早急に手を打つ必要もある」

すみれ「まあ、入り口があんな惨状だった以上、出口に向かう他道はないんだけど。問題は距離よね」
0063名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/21(日) 01:00:05.98ID:mzXUKMNK
可可「クゥクゥたちの車がある場所から、入り口まで200mはあったと思いマス」

すみれ「そんなあった? せいぜい100mちょっとじゃない?」

可可「かのんはどう思いマスカ?」

かのん「え? ああ、可可ちゃんと同じくらいかな……あ、すみれちゃんの意見も間違ってないと思う」アハハ

すみれ「なによそれ。どっちつかずね。暗いから感覚もおかしくなってるのかしら」
 

可可「――――あ、車が見えマシタ!」

すみれ「ここら辺も暗いったら暗いけど、まだ生きてる照明がある分恵まれてるわね」

かのん(よかった。無事に戻ってこれたんだ……)

 ただ、突きつけなければならない。
 残酷な真実を。

・・・

千砂都「お帰り! かのんちゃんよく頑張ったね」

かのん「う"ぅ、ぢぃちゃあん!」ダキッ

すみれ「はじめてのおつかいかっ。もう、サヤさんの容態は?」
0074名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/25(木) 23:21:07.60ID:ljslpftp
千砂都「それが」

恋「はい、大丈夫です。今は眠っているだけですから」ニコ

千砂都「恋ちゃん……」

可可「……」

可可「あの、レンレン」

すみれ「……」ツネリ

可可「痛!? な、なにするんデスカ!?」

すみれ「いいから。ちょっと口閉じてなさい」シッ

恋「それで、どうでしたか」

すみれ「っ、ああ、そのことなんだけど……」

 すみれちゃんがメモ帳を見せながら、事情を簡潔に説明する。
 2人ともある程度は覚悟していたのか、特別取り乱すようなことはなかった。
 ちぃちゃんはともかく、恋ちゃんまでどこか涼しいような顔をしているのは気のせいだろうか?
0075名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/25(木) 23:23:15.58ID:ljslpftp
千砂都「どうしても無理そうだった?」

すみれ「ええ。見てくれば分かると思うけど、人の手であの瓦礫をどうこうするのはスーパーヒーローでもない限り無理ったら無理ね」

可可「すみれの言う通りデス。それに、クゥクゥはあそこにはもう近寄りたくありません」

恋「話を聞く限り、あまり長居できるような環境ではなさそうですね」

かのん「うん。だから、出口に行ってみようと思う」

千砂都「出口に賭けるしかないってことだね」

すみれ「そう。で、流石にここから歩いて向かうのはしんどいってことで」

すみれ「サヤさんのこともあるし、車が動くなら私たちの誰かが運転して出口まで行こうって。少し前に話したでしょ」

千砂都「それなんだけどね……」チラ

 ちぃちゃんが目を向けた方には、横たわるサヤさんの姿。
 車を運転するには、彼女を動かさなければならない。
0077名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/25(木) 23:31:24.57ID:ljslpftp
 でも、誰もがあえて彼女から目を逸らしてした。見て見ぬ振りをしていた。
 恋ちゃんのどこか異様な雰囲気に気圧されていたのかも知れない。

千砂都「恋ちゃん、サヤさんなんだけど。ちょっと場所を変えてもいいかな?」

恋「どうしてですか?」

千砂都「あ、いや。あのね、車が動くか確認したいんだ。サヤさんは後部座席に寝かせてあげた方がいいと思うよ。ゆとりもあるし」

恋「ああ、それは確かに。ですが、サヤさんを起こしてしまうのも悪いですし……」

恋「それに、この狭い車内でどう移動させるのですか?」

すみれ「そ、それは座席をこう倒して、ね? 可可と私でサヤさんを抱えて」

かのん(なんだろう、この嫌な感じ)

 誰もが慎重に言葉を選んでいる節があった。
 恋ちゃんの言動に感じる違和感は、サヤさんの顔全体を覆うようにかけられたタオルが物語っていたからだ。
0078名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/25(木) 23:37:32.94ID:ljslpftp
可可「……レンレン、どうしてサヤさんの顔にタオルをかけているのデスカ。それではサヤさんが苦しそうデス」

かのん(あ、可可ちゃん。言っちゃった)

すみれ「ちょっと、可可!」

可可「何故誰も何も言わないのデスカ? レンレンさっきからおかしいデス! アレが怪我人にすることなんデスカ!?」ビシッ

恋「どこか、変でしょうか?」

可可「どこかって、ち、千砂都!」

千砂都「えーっと、うん。今その話は置いておこっか」

可可「千砂都!?」

すみれ「……打ち覆いって言うのよ、それ。縁起でもない話だけど、もし冗談でやってるんだったら笑えないわよ。理由があるなら説明して」

千砂都「すみれちゃん、ちょっと」

恋「他ならぬサヤさんの頼みですが、それがどうかしましたか?」
0079名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/25(木) 23:47:48.54ID:ljslpftp
すみれ「――――は?」

かのん「え、サヤさん目覚ましたの?」

千砂都「それは、えっと、あのね」

すみれ「本当に眠ってるだけ? 見た目よりも軽傷だったってこと?」

可可「レンレン! どうなんデスカ!」

恋「どうと言われましても、言葉通りですが」

すみれ「ああ、もうっ。なにこの噛み合ってない感じ……」

可可「字面上地! ? “我的话不够!”」

すみれ「アンタもアンタでややこしくするな!」

ギャイギャイ

千砂都『かのんちゃん』クチパク

かのん(ちぃちゃん?)
0080名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/25(木) 23:50:16.99ID:ljslpftp
千砂都「――――ごめん! 私ちょっとお花摘み行ってくる」パン!

すみれ「こんなときに!? っても、ここトイレなんて……あー、そう。行ってらっしゃい」

千砂都「あはは、そういうことです」

すみれ「……これ、必要だったら」ボソっポケットティッシュ

千砂都「あ、ありがとう」

かのん(なんだ、ちぃちゃんトイレ行きたかったのか。わざわざ私に目配せなんて可愛ところあるじゃん)

千砂都「じゃ、かのんちゃん行こっか」

かのん「うんうん……え?」

・・・

かのん「ちょ、ちょっとちょっと突然どうしたの? 私別に催してないんだけど?!」ボソボソ

かのん「すみれちゃんに生暖かい目で見られちゃったじゃん!」

千砂都「私もだよっ! 恋ちゃんのことでちょっと話したいことがあったから」

かのん「何か知ってるの?」

千砂都「……ここら辺ならいっか」
0081名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/25(木) 23:56:42.46ID:ljslpftp
 ミニバンから数メートル離れた場所まで移動した私たちは、脇にある段差に腰を下ろした。
 空気も変わらず悪く、照明もほとんど機能していないため隣に座るちいちゃんの顔ですら朧気だ。

千砂都「知ってるっていうか、かのんちゃんたちが出てった後、暫くは普通だったんだ」

千砂都「でも、途中からどこか会話が噛み合わない気がしてね。私と話が終わった後も恋ちゃんずっと喋り続けてて」

かのん「どういうこと?」

千砂都「……サヤさんとね、ずっと何か話してるみたいなんだ」

かのん「え」ゾク

千砂都「最初は独り言かと思った。でも、違った」

千砂都「ニコニコしながらサヤさんの顔にタオルをかけて、お休みなさいって。それを止めようとするとすごく怒るの」

スマホのライトで照らされたちぃちゃんの顔は、今まで見たこともないような戸惑いと恐怖に彩られていた。
 流石のちぃちゃんも相当参っているみたいで、心なしかやつれているようにも見える。

 私もすでに体中を鳥肌が駆け巡っていた。
0083名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/26(金) 00:01:29.75ID:4VBi11Zw
かのん「で、でもさ。それを私に言われてもどうすればいいのかなぁ、って……」

千砂都「ごめんね。かのんちゃんなら何とかしてくれるんじゃないかって思って。すみれちゃんも不審に思ってるし、何か起こる前に対策を打たないと」

かのん「っ」

 またそれだ。私ってそんなにすごい人? ちぃいちゃんは澁谷かのんを過大評価しすぎなんじゃない?

かのん「……取り敢えずさ、あの2人にもそれとなく伝えて暫くは様子見でいいんじゃないかな」

千砂都「だね。私たちも今それどころじゃないし」

かのん「うん……そろそろ戻ろっか。あんまり遅いと変な勘違いされちゃうし」

千砂都「えー、なにそれ。変なかのんちゃん」クス

<ア、チョットサキイッテテ
<エ"、チィチャンマサカ
0084名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/26(金) 00:03:16.31ID:4VBi11Zw
・・・

千砂都「ただいまー」ガチャ

すみれ「遅かったわね。どんだけ遠くまで行ってたのよ。それとも」

かのん「わあ!? 違うから! そっちじゃないから!」

すみれ「はいはい」

千砂都「恋ちゃんの様子は?」コソコソ

可可「はい。サヤさんに近付かなければ……レンレンは一体どうしたのデショウ。クゥクゥ少し怖いデス」コソコソ

千砂都「かのんちゃん」

 ああ、そんな目で見ないでよ。

かのん「ねえ、恋ちゃん」

恋「なんでしょうか?」

かのん「車動かす動かさないの話ってどうなったの、かな?」

恋「そのことですが、サヤさんが起きるまで車内で待機ということで落ち着きました」
0085名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/26(金) 00:07:52.37ID:4VBi11Zw
かのん「え、そうなの……?」

すみれ「……」フイ

 すみれちゃんはまだ納得していない様子だったけど、下手に動くといつ恋ちゃんの逆鱗に触れるか分かったものではない。
 触らぬ神に祟りなし。

 彼女はそう判断したのだろう。

かのん「あ、ならさ、車のキーは抜いておいた方がいいと思うな。インロックの危険もあるし」

かのん「万が一ってことでね?」

 そう言い、車のキーを抜こうと私は身を乗り出した。
 真下には横たわるサヤさん。少し体を動かせば、触れてしまう距離。

 誰かの息を呑む音が聞こえた気がした。
 

恋「触らないでください!!!」
 

かのん「!? あっ」グラ

 思わず耳を塞ぎたくなるほどの大声。それが恋ちゃんから発せられたものだと気付いたのは、彼女に襟首を掴まれ無理やり方向転換させられた後だった。
0086名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/26(金) 00:11:47.15ID:4VBi11Zw
かのん(恋ちゃん!!? どこにこんな力がっ)

恋「ふぅ、ふぅっ……」ギュウ

 恋ちゃんの手は真っ赤だった。こびり付いた血はまだ完全に乾ききってはいないのか、車内の明かりを反射しててらてらと光る。
 服が血で汚れたとか、顔が近いとかそんなどうでもいい情報(こと)が頭の片隅に浮かんでは消えていく。

すみれ「恋!! アンタなにやってんの!?」

可可「レンレン!!」

かのん「れ、恋ちゃん、痛いよ。ちょ、っと離してっ――――っ?!」

 闇雲に首を振った視界の行方は、とある一点で固定された。
 衝撃で捲れたタオルの下から覗いたその顔は、げっそりと頬こけ、土気色に変色し、今にも腐り落ちてしまいそうな泥人形のようで――――

かのん「――――っつ、おぇ」ガバッ

 サヤさんは、もう
0088名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/26(金) 00:15:57.05ID:4VBi11Zw
恋「お願い、します 何も……言わないで……」

 恋ちゃんの手の力が弱まる。
 俯いて表情は見えないが、苦しそうに、蚊の鳴くような声で、一言一言を絞り出すように……そう呟いた。

かのん「恋、ちゃん……」

 恋ちゃんはサヤさんの顔を隠したんだ。見たくないものに蓋をして、都合のいい夢を見ようとした。
 それが今となっては無意識だったのか、意図的にだったのかは誰にも分からない。
 

千砂都「ねえ、なにしてるの? その手、離しなよ」ガシ

恋「いたっ」

千砂都「恋ちゃん、今自分が何したか分かってる?」グググ

かのん「ちぃちゃん! やめて!!」

千砂都「なんで? だめだよかのんちゃん。こういう時はしっかり言わないと」

すみれ「そうよ。理由はどうあれ、今の態度は見過ごせないわ」

可可「手を出したらダメデスよ! レンレン!」
0089名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/26(金) 00:22:42.23ID:4VBi11Zw
かのん「もう! いいからみんな黙って!!」

かのん「恋ちゃんの気持ちも考えてあげてよ!」

恋「かのんさん……すみません。わたし、ほんとうに、ぐす、ぅ、えぐ」ポロポロ

かのん「いいの。私の方こそ、ごめんね。つらいよね、苦しいよね」ナデナデ
 

かのん「ちぃちゃん。タオル、かけなおしてあげて。ずれちゃってるから」

千砂都「……」

千砂都「うん」

 サヤさんの顔が再び完全に覆われた。
 こうして顔を隠せば、確かに彼女は安らかに眠っているようにも見える。

恋「ひっ、ぇぐ、う、ふえぇええん……っ」

 私の胸に顔を預け、肩を震わせ恋ちゃんは泣いた。
 誰も口を開こうとはしなかった。ただ、黙って事の成り行きを見守った。

かのん「……」ナデナデ

 痛ましい彼女の嗚咽は、いつまでも車内に響いていた。
0099名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/30(火) 00:48:25.00ID:xBptjKiC
・・・

かのん「みんな、準備できた?」

すみれ「ええ。水と、少ないけど食料も入れてっと。替えの服は……まあ、少し汗臭いけど贅沢は言えないわね」

千砂都「思ったより荷物多くなっちゃったね」

かのん「うん。でも、ここから出口まで歩いて向かうなら用心するに越したことはないよ。本当はもっと軽装が良かったんだけど」

すみれ「日頃鍛えているからこのぐらいは余裕ったら余裕よ。むしろ、良い運動になると思って乗り切りましょう」

可可「サヤさんを、置いていくのデスカ?」

恋「……はい。サヤさんも、行ってこいって……そう言ってくれましたから」

かのん「恋ちゃん、無理しないでね」

すみれ「つらくなったら周りを見なさい。私たちが絶対に傍にいる。恋、あなたをもう1人にはしないわ」
0100名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/30(火) 00:49:16.75ID:xBptjKiC
恋「皆さん……うう、ぐすっ」

 サヤさんがどうなったのか、可可ちゃんとすみれちゃんは直接、彼女の顔を見たわけではない。
 でも、2人ももう分かっているんだと思う。

可可「すみれがレンレン泣かせマシタ」

すみれ「いやなんでよ」

 この異常な空間の中では、人の死すらも日常の一部として取り込まれてしまうような気がした。

かのん(……いや、それは外の世界でも同じ)

 ニュースで流れる人の死は、驚くほど何気なく簡潔に伝えられ、自分とは関係ない世界の出来事として処理されてしまう。
 今私たちがこんな状況に陥っているこの瞬間にも、外の世界ではゆっくりと変わらない速度で時が進んでいるのだ。

かのん(何も考えるな。サヤさんのことも、外のことも。今は目の前の問題だけに集中するんだ!)

 心を保つには、嫌なことから目を瞑ればいい。
 そうだ。いつだって私は、そうしてきたんじゃないか。
0101名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/30(火) 00:51:36.73ID:xBptjKiC
すみれ「……そろそろ行きましょう」ガチャ

かのん(こんなところで死にたくない。私は絶対に生きて帰ってやる)グッ

恋「サヤさん……必ず、迎えに戻ります」ボソ

・・・

ジャリ、ジャリ…

かのん「やっぱり、本当によかったのかな。車使わなくて」

すみれ「いいのよ。よくよく考えれば、道路に瓦礫が散らばってたりでまともに走れる保証もないし。歩いて何時間もかかるような距離じゃないでしょ」

すみれ「無理に動かそうとして、二次災害でも起こしたら目も当てられないわ」

かのん「それもそうだね…….」

かのん(運転とか絶対ムリ)
 

千砂都「みんな、スマホの電波はどう?」

すみれ「……だめね」

可可「クゥクゥのも繋がりマセン」

かのん(私のも同じか。バッテリーの残量は残り61%……っ)
0102名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/30(火) 01:00:35.86ID:xBptjKiC
千砂都「どうせ圏外なら、スマホは低電力モードにするか、いっそ電源を切っておいてもいいと思う。今はバッテリーを節約しないと」

すみれ「私、モバイルバッテリー持ってきてるわよ。いざとなったら貸してあげるから」

かのん「本当!? 流石すみれちゃん! 頼りになるっ」

千砂都「あー、その手があったか。私も持ってくればよかったな」

可可「クゥクゥも持ってます! 外出する時は予備のバッテリーの一つや二つ、持っていくのが基本デスよ」ドヤァ

恋「だからと言って、無闇にバッテリーを消耗させるようなことがあってはいけません。もしもの備えとして、ここは千砂都さんの意見に従いましょう」

すみれ「まあ、そうね。そんな容量もあるわけじゃないし、安物だし。まあ、その場凌ぎの奥の手ってことで覚えておいて」

かのん(う、そうだよね。それがあるから絶対に安心ってわけじゃないよね……電源切っとこう)スッ
0103名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/08/30(火) 01:07:04.50ID:xBptjKiC
ジャリ、ジャリ…カツン

かのん「ねえ、私たち以外にも誰かいると思う?」

千砂都「これだけ長いトンネルだし、私たちだけしかいない方が不自然だよ」

恋「距離はありましたが、前を走っていたバスが1台いたはずです。トンネルを抜けきっていなければ、その内会えるかと」

すみれ「ええ。そろそろ照明以外の光が一つや二つ見えてきてもいい頃だわ」

かのん「さっきよりは明るくなったけど、まだ見通し悪いね」

千砂都「オレンジの光ってのも影響あるんだと思うよ。こうしてまばらに点いてる分、余計に薄暗い印象を与えてるんじゃないかな」

すみれ「……可可、ちょっとそこの壁ライトで照らしてみて」

可可「一体どうしたんデスカ? 何か虫でも見つけました? グソクムシは山にはいないデスよ」

すみれ「もう、そう言うのはいいからそこ照らして」

可可「壁なんて見ても何かあるとは思えま……ヒェ!?」

かのん「どうしたの?」

かのん「え、……なに、これ」

 壁には何かを強く押しつけて引き摺ったような跡が続いていた。その跡を追うようにして光と目線を向けた先には……
0110名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/01(木) 23:17:41.65ID:X68c7w43
可可「――――あ! か、かのん、アレ! 見てっ、あそこデス! 很轻! 车! “大车!” !」

かのん「え、な、なに? あそこって……あ!!」

かのん「ち、ちぃちゃんっ」グイグイ

千砂都「う、うん、見えてるよ」

すみれ「変だと思ったのよ。ここまで歩いてきた感じ、中央付近の環境は比較的安全に思えた。でも、ここら辺の道路は妙に荒れてるっていうか」

すみれ「タイヤの跡?みたいなのが地面に付着しているの。
これって急ブレーキしたり、強い力が働かないと付かないでしょ?」

かのん「全然気付かなかった……」

 こんな時でも、すみれちゃんは周りを冷静に観察していたんだ。
 いや、こんな時だからこそなのかな。

かのん「夢じゃないよね? 幻とか、蜃気楼とか」

すみれ「素直に喜んじゃいけない場面なんだろうけどね。バスってことは結構な人数が乗ってるんじゃないかしら」
0111名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/01(木) 23:31:58.81ID:X68c7w43
 トンネルの壁面を削るような跡の終着点。
 それは数十メートル先にある、白色の光をぼんやりと灯す巨大な車体まで続いていた。

 藁にも縋る思いで、私たちは誰ともなく駆け出した。
 地獄に垂らされた1本の蜘蛛の糸を、必死に手繰り寄せようと。バスがそう至ったまでの経緯をあえて無視して。
 

かのん「ねえ! ほら見てよ。よかったぁ! 私たち以外にもいたんだっ」

 見える。私たち以外の人の姿が、窓ガラスの向こうに!

すみれ「だから言ったじゃない。私たちだけなんて、ありえないったらありえないのよ」

かのん「うう……こわ"がっだよぉお"お"」

 人が増えた安心感からか、熱いものが込み上げてくる感覚。これほどまでに心揺さぶられる瞬間が今までにあっただろうか。

千砂都「おー、よしよし」

可可「这很有帮助ァ! ミナサン一先ず安心デスね!」

恋「そうですね。本当、一時はどうなることかと……」

 これで一先ず安心。助かるかも知れない。
 私たちはもう助かった気でいたんだと思う。
0112名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/01(木) 23:34:42.83ID:X68c7w43
コンコン

かのん「あのー、す、すすすみましぇん!」

 か、噛んじゃった。恥ずかしいっ。

「すみませんが、あなた方はもしかして……」

かのん(あれ、この人たちってもしかして……)

 私たちを出迎えたのは同じ高校生と思われる少女たち。
 知っている。私たちは彼女たちを知っている。

かのん「あ、えって、とかのんです!」

「とかのん?」

 違う違う! 何言ってるんだ私はっ。口が上手く回らない。

かのん「かのんです! し、し澁谷かのんと申します!」

「かのん……? あっ」

 一目見てすぐに分かった。
 だって、彼女たちは今日あんなにも輝いていたのだから。

「スクール、アイドルの……」

 そのバスに乗っていたのは、合同ライブ主催校の1つで、見事優勝に輝いたグループ。

かのん「え? あ、はい! スクールアイドルグループ『Liella』って言ったら伝わりますかっ?」

 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会。

かのん「あ、皆さんのことはも、勿論っ知ってます! こ、こんな状況ですけど、嬉しいです! 会えて!」ニコ

 こうして、私たちは出会った。
 この出会いは運命? それとも奇跡?

 多分違う。

 神様のいたずらは こんなにも不条理で残酷なのだと
 この時の私は まだ 知る由もなかったのだ

「……うん! 私も、会えて嬉しい」

ブゥゥーン…

 どこからか、蝿の羽音が聞こえた気がした。
0113名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/01(木) 23:40:26.89ID:X68c7w43
8月中の完結(大嘘)
全4〜5章で完結すると思います。それまで、どうかお付き合いいただけたら幸いです。
0126名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/06(火) 23:43:59.35ID:cUNf0orT
・・・

 スクールアイドルグループ『Liella!』と、私たち虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は運命的な邂逅を果たした。
 それが皮肉にも、私たちをさらなる絶望へと突き落とすことになるとは誰が予想できただろう?

侑「いやぁ、まさかこんな偶然があるとはね……」

歩夢「う、うん。驚いちゃった」

彼方「本当にLiellaのみんなだ〜。よろしくねえ」フリフリ

ミア「It's just unbelievable! あまり嬉しくない偶然だよ」

エマ「汗すごいよ。顔も汚れてる、これで拭いて。のど渇いてない? お水あるよ」ハイ

可可「ありがとうござぃマス!! んく、んぐ」

栞子「あなたも。その手、これで拭いて下さい」っウェットティッシュ

恋「っ、すみません」サッ

栞子「……」
0127名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/06(火) 23:45:43.62ID:cUNf0orT
侑「えっと、平安名すみれちゃん……すみれちゃんて呼んでもいい?」

すみれ「……別に構いません」

侑「あ、私のことは侑って呼んで。先輩とか後輩とか気にしなくていいからね」

すみれ「いえ。侑先輩と呼ばせていただきます」

侑(うーん、結構礼儀正しいと言うか堅い子なのかな。ライブで見た時と大分印象違うなぁ)

可可「グソクムシがネコ被ってマス」ププ

すみれ「可可ぁ!!」

侑「あ、あはは。……ねえ、何があったのか聞いてもいい? 入り口じゃなくてここまで歩いてきたのはどうして?」

 簡単な自己紹介を終え、和やかな空気もつかの間、車内には一転して陰鬱な空気が漂った。

かのん「それは、その……」

 彼女たちの反応を見れば、とても素直に喜べるような状況ではないのは明白だ。

かすみ「運転手さんとか大人の人は一緒じゃないんですか?」

千砂都「そちらこそ、運転手はいないんですか? 同好会の皆さんも何人か足りないように見えます」

かのん「ち、ちぃちゃんっ」
0128名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/06(火) 23:48:35.38ID:cUNf0orT
侑「ここにいない3人には出口がどうなっているか見に行ってもらってるんだ。運転手さんも、そこにいると思う」

千砂都「同行してるってことですか?」

侑「えっと、それは違くて。凄い衝撃があったでしょ? それでバスはこの有り様。運転手は気が付いたらどこにもいなくなっててね」

可可「どこに行ったのデスカ?」

侑「……分からない。でも、多分トンネルを抜けようとしてると思うから。この道の先に必ずいる。いるはずだよ」

すみれ「そう。なるほど、ね。大体分かったわ」

かのん「え、すみれちゃん分かったの?」

すみれ「ここもあまり良い状況じゃないってこと。ですよね?」

 すみれちゃんの言う通りだ。察しのいい子なのか、バスの惨状と運転席の血痕を見てピンときたのかも知れない。

侑「ごめんね。助けを求めて来たんだろうけど、助けが欲しいのはこっちも同じなんだ」
0129名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/06(火) 23:51:36.53ID:cUNf0orT
歩夢「で、でもこうして出会えたんだし、みんなで強力すればきっと何とかなるよ」

せつ菜「はい! 人が増えるのは純粋に喜ばしいですし、全く知らない仲ではないということがどれだけ心強いことか」

彼方「そうだねぇ。このままお喋りしてたら案外すぐに救助が来るかも〜、なんて」

栞子「いえ。水を差すようで悪いですが、そう喜んでばかりはいられません」

璃奈「……っ」

しずく「璃奈さん、大丈夫? 汗ひどいよ」フキフキ

かすみ「やっぱり相当痛いんじゃ……」

璃奈「へい、き。気にしないで」

ミア「……チッ、おい栞子。本当にその巻き方で合ってるのか? 璃奈が苦しんでるじゃないか!」

栞子「ですから、私のやり方では応急処置が手一杯なんです。痛み止めもありませんし、力不足なのは分かっていますっ」
0130名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/06(火) 23:57:46.99ID:cUNf0orT
彼方「栞子ちゃんを責めるのはちょっと違うなって思うよ。ただ見てることしかできないことがどれだけ辛いか、私たちだって十分に痛感してるから」

エマ「心配する気持ちも分かるけど、こんな時こそ仲良くしなきゃだよ」

ミア「そんなのボクだって理解してるつもりさ。……不甲斐ない自分にイラついてるんだ」プイ

侑(ミアちゃんは璃奈ちゃんの隣に座っていたから、誰よりもその責任を強く感じてるんだ)

かのん「あの、だ、大丈夫なんですか? 高咲さ、侑さんも頭に包帯巻いてますけど」

侑「私は大したことないよ。それより」

歩夢「大したことあるよ。侑ちゃんも本当なら横になってて欲しいもん」

侑「歩夢っ。本当に平気なんだって。ちょっと切っちゃっただけって言ったじゃん」

 ああ、もう。ここでも言い争ってたらLiellaのみんなにどんな目で見られるか。先輩の私たちがしっかりしないといけないのに。

かのん「……私たち、ここにいてもいいんですかね」
0132名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/07(水) 00:28:39.66ID:cg53IGXO
侑「え、どうして? 空いてる座席も結構あるし、ここにいてもいいんだよ。やっぱり不安にさせちゃったかな……ごめんね」

歩夢「うう、ごめんなさい。私、侑ちゃんが本当に心配で心配で」

千砂都「その気持ち分かります。大切な人なんですよね」

歩夢「ふぇ!? あ、いやその、侑ちゃんは幼馴染でずっと一緒で、って、ど、どうして?!」カァア

千砂都「見れば分かりますって。ね、かのんちゃん」

かのん「え、うん。そうだね……そうかも」

侑「2人も幼馴染なんだね。うん。じゃ、話を戻すけどいいかな。かのんちゃんたちのこと、教えて欲しい」

侑「あ、幼馴染のエピソードはここを出てからゆっくり聞かせて」ニコ

千砂都「うぃっす」ビシ

かのん「ちぃちゃん!?」

栞子「幼馴染のなんたらはそこまでにして下さい」ハァ
0133名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/07(水) 00:49:33.61ID:cg53IGXO
栞子「あなたたちがここに来るまでの経緯には大体察しがついていますので、先に言わせて下さい」
 

栞子「その服の汚れは、血ですか?」
 

 それは、かのんちゃんの胸元に付着していた赤黒い汚れを指しての言葉だった。

かのん「……これは」ギュ

 ただの汚れ。
 ここではそんな誤魔化しが効かないことくらい、彼女も分かっているのだろう。
 その目は縋るように千砂都ちゃんに向けられ、

千砂都「……」フルフル

 千砂都ちゃんはただ何も言わず首を振った。
 栞子ちゃんは尚も続ける。

栞子「葉月恋さんでしたか、あなたの手も同様に赤い何かで汚れていましたね」

恋「……」

栞子「包み隠さず話してくれませんか? 私たちと一緒に行動するのでしたら、お互いの境遇はハッキリさせておくべきです」

栞子「こんな状況で、隣に座る仲間でさえ信じられなくなったら、きっと私たちはそこで人ではいられなくなる」

栞子「お願いします。隠し事はなしにしましょう」
0138名無しで叶える物語(たこやき)
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2022/09/08(木) 21:53:36.86ID:E3XJPUD5
蝿の王買ってしまったよ
0148名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/12(月) 23:51:13.74ID:f0zYQviR
かのん「……っ」

 栞子ちゃんの言葉に、かのんちゃんは無言でかぶりを振った。明らかに逡巡している様子だった。

せつ菜「どなたか負傷しているのなら教えて下さい。私たちが力になります!」

歩夢「うん。私たちにできることなら何でもするよ」 

恋「……」

栞子「何故、あなたたちは5人だけでここに来たのですか? 少なくとも、1人は大人がいるはず。車内で待機を?」

すみれ「恋、話すべきよ。隠し事は良くないわ……辛いなら私から」

恋「1人、います。サヤさんという、私の家で身の周りの世話をしてくれている人です」

かすみ「家政婦さん、ですか?」

恋「ふふ。間違ってはいませんが、もっと…….そう。家族のような方だと思っています」

 恋ちゃんは自身の両手を見つめる。
 その赤く染まった手を見て、一体何を思うのだろう。
0149名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/12(月) 23:53:02.48ID:f0zYQviR
侑「そうなんだ。恋ちゃんはお嬢様なんだね。上品で気品があって、見た通りだったみたい」ニコ

恋「……ありがとうございます」フッ

 その笑みはどこまでも儚げで、表情からは感情が消え失せているようにも見えた。
 尚も、彼女は続ける。

恋「私たちの乗っていたバンに、サヤさんはいます。ここにいないのは、満足に動ける状態ではないからです」

歩夢「その血と、関係あるの……?」

恋「……」

恋「そうだと言ったら、どうしますか」

かのん「っ、恋ちゃん」

恋「かのんさんの服の血も、私のこの手の血も、この5人のものではありません。これで満足ですか?」

 これ以上余計な詮索はするな。その目はそう訴えていた。
0150名無しで叶える物語(はんぺん)
垢版 |
2022/09/12(月) 23:57:43.32ID:f0zYQviR
侑「……そっか。うん、分かったよ」

 サヤさんが今ここにいない理由は、その大量の荷物がそのまま答えなんだ。

侑(恋ちゃんたちは前に進むことを選んだ……)

かすみ「それってヤバいんじゃないですか!? 怪我してるなら助けに戻るbもぐぁっ

しずく「かすみさん、しっ」ガバ

しずく「空気読んでっ」

かすみ「――――ぷはっ。え? え?」

エマ「ねえ、栞子ちゃん。サヤさんて人は……」

栞子「推して知るべし、ですか」

歩夢「……」ギュウ

侑「歩夢」

 ここに大人はいない。頼れるのは、まだ幼い自分たちだけ。
0151名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/13(火) 00:00:17.54ID:lSbzfqqH
侑(……まいったなぁ、これ)

 じわじわと、しかし確実に心を蝕む不安と恐怖。
 近い未来、いつか、どこかで誰かが押し潰されてしまう気がした。それは時間の問題だと。

 ドクン、ドクンドクン

 胸の鼓動が伝えていた。

・・・

 割れた窓から侵入するガスと埃の臭いに、蒸し蒸しとした不快な熱気が車内を支配する。

 口を開くのも億劫で、いっそ沈黙の方が心地良いとすら感じてしまいそうだ。

ミア「それで? 話はまだ終わっていないぞ。当然入り口は見て来たんだろ」

 苛立だしげな口調で、ミアちゃんが目線を向けた先はかのんちゃんだ。
 彼女は体を縮こませ、視線をあちこちに彷徨わせながらも話し始めた。
0152名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/13(火) 00:04:32.51ID:lSbzfqqH
かのん「えっと、あの。み、見てきましたっ。だけど、でも……だめでした。瓦礫で、完全に塞がれてて……」

侑「え、瓦礫……?」

 ヒュッと、風の金切り音のような短く鋭い悲鳴がどこからか聞こえた気がした。
 かのんちゃんの口から語られたのは、誰もが恐れていた最悪の事態そのものだったから。

侑(わざわざこんな量の荷物を持ってここまで来たんだ。そんなの、予測できたじゃないか……)

かのん「退かそうとはしたんです。なんとか、こうして……っ、でもあんなに、山みたいになってたら」

ミア「オイオイ。冗談だろう? 塞がれていたって、そんなバカな話が……」

彼方「か、彼方ちゃんたちで何とかならないかな? みんなで、こ、こう力を合わせればっ。ねっ? ね?」

エマ「ぇ、あぅ。う、うん。そうだよ、きっと大丈夫だよ」

かのん「退かすのは無理、絶対むり。入り口からは出られない……あっちはだめ、だめ」ブルブル

可可「かのん、大丈夫デスよ。怖くない、怖くない」ヨシヨシ
0153名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/13(火) 00:09:20.74ID:lSbzfqqH
歩夢「私たち閉じ込められたの? ねえ、どうしよう。侑ちゃん、私」

侑「ううん。そんなことない。歩夢、深呼吸」

 こんな時どうする? 出口はだめ、本当?
 実際にこの目で見ないと判断できない……いや、かのんちゃんたちのこの反応は――――

侑(待て、落ち着くのは私もだ)スゥ、フー、ハー

かすみ「ど、どうするの!? かすみんたちで瓦礫を退かすのはっ?」

しずく「私たちで瓦礫をどうこうできると思う? 下手に動かして落石にでも巻き込まれたらどうするの」

かすみ「分かんないよそんなの! この目で見ないと無理だって言えないじゃん!!」

しずく「それは、かのんさんたちもああ言って」

ミア「かすみの言う通りだ。そんなの実際に見なきゃ分かんないだろう! それともなんだ、彼女たちの言葉を黙って聞き入れろとでも言うつもりか?」ビシッ!

千砂都「じゃあ行ってくればいいじゃないですか。結構な距離ありますよ? 行けますか、1人で」

ミア「なんだとっ、you piss m

彼方「わぁ! す、ストップストップ!!」

エマ「ケンカはだめだよ2人とも!」
0155名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/09/13(火) 12:51:33.36ID:+HomVdSa
このSSに薫子いたっけ
0165名無しで叶える物語(光)
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2022/09/18(日) 08:55:31.03ID:+tFC6Y77
0168名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/09/19(月) 13:55:26.54ID:mSaRobL5
支援
0172名無しで叶える物語(光)
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2022/09/21(水) 11:23:10.35ID:+4tE4x7f
期待
0173名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/09/21(水) 21:58:25.32ID:WdF4MZ03
0174名無しで叶える物語(光)
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2022/09/22(木) 09:39:30.22ID:DrI+64vw
0175名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/22(木) 23:52:04.30ID:pmn+9v4o
璃奈「ミアちゃん、だめ」ギュ

ミア「ハァ、ハァ……っ」

千砂都「私も、実際にこの目で見てきたわけじゃありません。入り口を見に行ったのはかのんちゃん、可可ちゃん、すみれちゃんの3人ですから」

ミア「はあ?」

侑「みんな落ち着いてよ! 多分、人手が足りてもどうにかなるようなものじゃないんだと思う。そうでしょ?」

かのん「……」コクリ

すみれ「あの瓦礫の山は動かせない。だから、私たちは出口まで歩こうって決めたのよ」

恋「一刻も早く助けを呼ばなければ、ここまできた意味がありません。救助を待つ時間は、私にはありませんから」

栞子「気持ちは分かりますが、もう少しだけここで待っていてください。そろそろ、ランジュたちが戻ってくるはずです……」フゥ

 栞子ちゃんは目頭を抑え、座席に深く座り込んだ。
 それが不毛な話し合いの終わりとでも言うように、誰もが口を閉ざす。
0176名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/23(金) 00:00:02.93ID:9/NZGaL2
「……」

 暫く、無言の時間が続いた。

 聞こえてくるのは誰かの荒い息遣い。カリカリと何かを引っ掻くような音。不規則に床を鳴らす足音。
 
 ただ無力に過ごすだけの時間が、どうしてこれほどまでに心をざわつかせる。
 獄中で判決を待つ罪人は、日夜こんな気持ちで過ごしているのだろうか。

侑「…………あ」

 不意に、トンネルの前方でぼんやりと小さな明かりがチラついた。

侑「戻ってきた」

 その光はトンネルの照明と混じり合い、やがて3人の姿をハッキリと映し出す。
 私たちは誰ともなく立ち上がると、バスの乗車口を開け3人を迎え入れた。
 


――――ガタン

ランジュ「……」フゥフゥ

愛「……」ハァハァ

果林「……」ゼェゼェ

 煤汚れた顔に、見て分かるほど大量の汗を額に滲ませ、肩で荒く息をする。
 普段の3人からは想像もつかないほどの苦悩の色をその顔に浮かべていた。
0177名無しで叶える物語(はんぺん)
垢版 |
2022/09/23(金) 00:03:13.78ID:9/NZGaL2
侑「一体、どうしたの。何かあった……?」

 そんなの、分かりきっている。尋常じゃないナニかがあったのは確かだったのに、知らないふりをして間抜けな質問をした。

愛「……うん。ダメだった!」

侑「だめ、え?」

かすみ「だ、だめってなんですか? 何がだめなんですか?」

エマ「果林ちゃん……?」

果林「出口からは出られない。そう言うことよ」

せつ菜「冗談で言っているわけではないですよね? すみません。あまりにもあっけらかんとした言い方だったものですから」

愛「ごめんね、せっつー。もう向こうで散々喚き散らしちゃったんだよね。なんで、どうしてって」

愛「みんなにはさ、あんなアタシ見られたくないから」

 そう言ってぎこちなく笑う愛ちゃんの目元は、煤ではない擦った様な化粧汚れが見られ、普段の快活な印象は見る影もない。
0178名無しで叶える物語(光)
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2022/09/23(金) 00:09:01.53ID:SPC4nD+R
退路が無くなっちゃったか…精神的にも辛いな
0179名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/23(金) 00:09:54.25ID:9/NZGaL2
栞子「そう、ですか。これは不味い事態になりましたね」

ランジュ「……無問題ラ」ガタ

ミア「おい、どこ行くんだ?」

ランジュ「我不能退缩。今直ぐ入り口へ向かうわ」

侑「ちょ、ちょっと待っ「あの! 待ってください!!」

 上擦った声が響く。その声の主はかのんちゃんだった。

果林「……誰?」

愛「あ、『Liella!』の子たちじゃん! え、一体どういうこと?」

侑「えっと、それはね――――」

 3人にこれまでの経緯を簡潔に伝える。
 

愛「……そっか。アタシたちの後ろを走ってたんだ。すっごい偶然だ」

愛「こんな状況じゃなければ、素直に喜べたんだけど」

ランジュ「ふーん。で、あなたたちがここにいるのはどうして?」
0180名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/23(金) 00:16:50.58ID:9/NZGaL2
かのん「あ、あのっ。私たち入り口の方から来ました、それで「もういいわ」――――え?」

ランジュ「ああ、そういうことね……」ハァ

愛「っ」

 ランジュちゃんは何かを悟ったのか、かのんちゃんの話を途中で切ると天を仰いだ。
 愛ちゃんも目頭を押さえ、俯く。

果林「ねえ、教えて。入り口はどうだったの?」

かのん「入り口も塞がれていました」

かのん「瓦礫が山みたいに積み重なっていて、人の手じゃどうしようもない有り様で」

歩夢「出口も……そんな感じなの?」

ランジュ「言葉が足りなかったわね。多分、その子たちが見てきたのと同じような状態だと思うわ」

 ランジュちゃんはひらひらと手を振る。
 その手は爪の先まで土や泥で汚れており、彼女も自ら瓦礫をどうにかしようとしたのだろう。
0181名無しで叶える物語(光)
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2022/09/23(金) 00:24:13.07ID:SPC4nD+R
このランジュちゃん、頼りになりそう。
0182名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/23(金) 00:31:36.25ID:9/NZGaL2
彼方「ねえ、運転手さんは? 一緒じゃないみたいだけどぉ……」

果林「……」

果林「見つけられなかったわ」

エマ「え? どういうこと?」

愛「分からない。愛さんたちも探したんだけど、奥の方はもう真っ暗だったし、呼び掛けにも反応はなかったんだ」

しずく「あの、一本道ですよね? 出口の方に向かったのならどこかで鉢合わせるはずですが」

 運転手がいない?
 ランジュちゃんは、バスから運転手が降りるのを見たと言っていた。仮に、来た道を戻っていたとしても、かのんちゃんたちが見つけているはずだ。血痕があれば尚更。この辺りも完全な暗闇というわけではない。なのに、

侑(3人もいたのに……見つけられなかった? まさか神隠しにでもあったなんて言うはずもない)
 
 それじゃあ、一体どこに消えたというのだ。

ランジュ「ごめんなさい。アタシたちも隅々まで探したわけじゃないの。横に広いから、どこかで見落としたのかも知れない」

歩夢「見落としたって、そんな物みたいな……」

せつ菜「ランジュさんの話ですと、運転手さんは重症なんですよね? どこかで動けなくなって寝たきりなんてことは」
0183名無しで叶える物語(はんぺん)
垢版 |
2022/09/23(金) 00:39:30.10ID:9/NZGaL2
かすみ「な、ならもう一度探しに行くべきなんじゃないですか? かすみんはあまり力になれないと思いますけど……」

愛「いや。それは……止めた方がいい、かな」

璃奈「どうして? 愛さんらしくない」

愛「違うよ、りなりー。一旦アタシたちの現状を整理しようってこと。出口は塞がれていて、奥に行くほど真っ暗で明かりは必須。そんな状況でまともに人を探すのは危険」

愛「空気も悪いし、あの中を大の大人1人担いで行くのはリスクが大き過ぎる。最悪共倒れなんてことになったら笑えない」

彼方「それどういう意味? それってさ、見殺しにするって言ってるのと同じじゃないの……?」

果林「違うわ! 後はもう救助隊に任せればいい。私たちは無理にここから動く必要はないのよ」

エマ「果林ちゃんたち、言ってることめちゃくちゃだよ」

果林「エマ、あなたも行って見てきたら? そうしたら分かるk」

ランジュ「果林!」

果林「っ、なんでもないわ。ごめんなさい」
0184名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/23(金) 00:48:19.97ID:9/NZGaL2
侑(果林さん……?)

 ここに戻ってきてからの3人はどこかおかしかった。
 何かを隠しているのは明白だったけど、そんな邪推を誰もに抱かせるほど分かりやすい態度。
 隠す気はなく、無理やり誤魔化し押し通すつもりなのか。
 
侑(一体何があったの? 何を見たの?)
 

愛「あ、そうだ! Liellaの子たちさ、名前教えてよ。自己紹介しよ!」

かすみ「このタイミングでですかぁ!? 自己紹介ならさっきやっちゃいましたよ」

せつ菜「あの、それよりまだ聞きたいことが」

愛「いいじゃんいいじゃん。こんな時だからこそ、助けが来るまでどれだけ仲良くなれるかだよかすかす!」

愛「それじゃあ、キミから!」

かのん「え? あ、はい。澁谷です……澁谷かのん」

愛「アタシは宮下愛! 愛さんでも愛ちゃんでもアイアイでも何でもこい! てなわけでよろしくね!」

可可「なんですかこのヒト。グイグイくるデス」ヒキ

すみれ「……アンタも人のこと言えないけどね」

 かのんちゃんたちが若干引き気味になるほどの異様なテンションの高さ。
 普段の愛ちゃんならともかく、今この状況下での正しい振る舞い方とは到底思えなかった。
0186名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/09/23(金) 01:16:08.90ID:9/NZGaL2
愛「ふむふむ……よし、決めた! レンレン! ちさっち! すみすみ! クウちゃん! そしてかのっちだ!」ビシッ

かのん「かのっち、かのっちかぁ」ケッコウイイカモ

千砂都「ちさっち……ならいっか」ボソ

恋「レンレン……」

可可「フフン。残念ですが、レンレンの名付け親はクゥクゥデス!」

すみれ「そこ張り合ってどーすんのよ」

愛「あはは。被っちゃったみたい」
 

彼方「……」

彼方「あのさ、愛ちゃん」

愛「ん? どったのカナちゃん」

彼方「ちょっとおかしくないかな〜……それとも、彼方ちゃんたちが間違ってる? ランジュちゃんも果林ちゃんも、まともに会話しようとしてないよねぇ」ジト

ランジュ「彼方、それはね」

しずく「わたしも同意見です。とても楽観視できる状況じゃないのは誰だって理解しているはず。なのに、どうしてそこまで明るく振る舞えるんですか?」

しずく「わたしは怖いです。手だってほら、こんなに震えて……情けないですよね」プルプル
0187名無しで叶える物語(光)
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2022/09/23(金) 11:08:55.26ID:kCDmg/n/
正常性バイアスというのがあるから、意外と落ち着いていたり、現状にとって適切ではない言動や行動をとっても不思議ではないかも。
愛ちゃん達は、何を見てきたんだろうか。
0189名無しで叶える物語(光)
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2022/09/24(土) 13:33:18.97ID:qJLzukmg
支援
0192名無しで叶える物語(光)
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2022/09/26(月) 04:38:31.98ID:pql8wJgF
0193名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/09/26(月) 15:37:10.49ID:sdxFA4Wb
ここから蝿の王みたいなクローズドサークル×サバイバルにどう持ってくのか

今のとこらホラーやな
0195名無しで叶える物語(庭)
垢版 |
2022/09/27(火) 10:12:44.12ID:tApMDzv+
楽しみ
0196名無しで叶える物語(庭)
垢版 |
2022/09/27(火) 13:35:25.63ID:tApMDzv+
0206名無しで叶える物語(光)
垢版 |
2022/10/02(日) 12:54:20.48ID:QDzv9+S1
0211名無しで叶える物語(しうまい)
垢版 |
2022/10/04(火) 19:38:10.11ID:KCW4YEYr
0232名無しで叶える物語(しうまい)
垢版 |
2022/10/15(土) 13:13:46.12ID:5cL4daEO
0245名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/10/21(金) 20:30:56.72ID:0rUkXiq5
0249名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/10/23(日) 21:59:35.52ID:LyzZhwGr
0253名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/10/25(火) 20:30:31.75ID:c/4HgAE+
諸事情でしばらく更新できていませんでした。
明日からまた再開します。まだ見に来てくれている人ありがとうございます。
0258名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/10/26(水) 18:33:29.95ID:gRRvRgm/
期待
0259名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/10/26(水) 23:39:19.61ID:jMlQfi0h
かすみ「しず子!」ギュウ

かすみ「かすみんだって、私だって怖いよぉ! 早くお家に帰りたい……!」

愛「……っ」

愛「別に愛さんだってそこまでお気楽でも楽観主義者でもないよ。こう言うこと、あまり口に出すもんじゃないけどさ」

愛「アタシたちは閉じ込められた。出入り口は瓦礫で塞がれていて、少なくとも内側から人の手でどうこうできるものじゃない」

愛「……て、それはもういいか。それより、今ここでアタシたちにできることをしようよ」

エマ「できること?」

愛「ほら、スマホは圏外で使えなくてもさ、今の状況、被害の規模詳細をメモアプリやカメラに記録しておけば後で役に立つかもでしょ?」

ランジュ「对。ただ助けを待つだけの時間をもっと有効に使うべきよ」

歩夢「……ランジュちゃん言ってたよね。いつまた次の揺れが起こるか分からない、運転手をみ、見殺しにできないって」
0260名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/10/26(水) 23:40:51.85ID:jMlQfi0h
ランジュ「ええ、言った。でもね、歩夢……アタシたちはまだ子供。一介の学生に過ぎない。身の丈に合わない行動は己を滅ぼすわ」

愛「トンネルが崩落するほどの大きな揺れだったんだし、今まさに外で救助活動が行われている可能性だってゼロじゃないって!」

栞子「本当にそう言えますか?」

栞子「外の被害状況によっては、直ぐに助けが来れないかも知れない。スマホの使えない私たちにそれを確認する方法は
ありません」

侑(確かに、そうだ。外がどうなっているか、今の私たちに確認する術はないんだ。もしかしたら、都市部ではもっと……)

 いや、やめよう。自分で自分を追い込んでどうする。

果林「トンネルの崩落事故なんて、それこそ最優先でどうにかすべきレベルでしょう」

栞子「いえ、一概にそうとは言えません。例えば」

ランジュ「何? 栞子、あなたさっきから何が言いたいの?イタズラに人を怖がらせているだけじゃない」
0261名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/10/26(水) 23:48:32.27ID:jMlQfi0h
栞子「すみません。ただ、私は事実を」

ランジュ「今、それは、口に出してまで言うこと?」

 誰もが怯えと恐怖を瞳に浮かべていた。そんなやり場のない感情の矛先は、栞子ちゃんを真っ直ぐと射抜く。

栞子「ぁ……」

侑「……」フイ

 縋るような彼女の視線から逃げるように顔を逸らす。
 何も言えなかった。必ずしも、正しい情報を伝えることが正解ではないというのは分かっていたから。

栞子「すみません、そんなつもりでは……っ、すみません、本当に」

ランジュ「いいのよ。別に栞子を責めたいわけじゃないの。――――みんなも! 言いたいことはあるでしょうけど、今はアタシたちの言うことを聞いて欲しい」

ミア「ハァ? なんなんだよ一体……」ブツブツ

侑「あのー、ランジュちゃん」

ランジュ「何?」

侑「流石に色々と端折り過ぎてるんじゃないかな。ランジュちゃんたちが何を見てきたのか。今何を考えているのか……みんなそれを聞きたいはずだよ」
0262名無しで叶える物語(はんぺん)
垢版 |
2022/10/26(水) 23:52:05.65ID:jMlQfi0h
ランジュ「侑、言い争いはしたくないの。分かって?」

侑「いや、だからさ。言い争いって、」

歩夢「侑ちゃんっ」ギュウ

侑「歩夢?」

歩夢「今はだめ。大人しくしてよう……嫌な予感がするの」ボソボソ

 歩夢の感じ取った違和感は、他の何人かも気付いていたようで、見渡せば誰もが分かりやすく私を目で牽制していた。

 みんな、不用意に発言するのを恐れているようだった。

かのん「でも、不思議」ポツリ

ランジュ「不思議って?」

かのん「あ、いえ、こんなに長いトンネルなのに私たち以外の車両が走っていないなんてなぁ……って」

愛「確かに、それは思ったけどねー。流石に偶然だよ」

愛「偶々、あの時間帯にアタシたちだけがあの道路付近を走行していた。それだけの話」

かのん「で、ですよねー」エヘヘ
0263名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/10/26(水) 23:58:28.35ID:jMlQfi0h
すみれ「私たちのような遭難者が他にいなくてよかった。そう考えましょう」

千砂都「そうだね。見方を変えれば、人が多ければ多いほどもっとパニックになっていたと思う」

恋「もし、小さい子どもや赤ん坊がこの場にいたらと思うと……ゾッとしますね」

可可「これだけのメンバーが集まっているんデス。きっとなんとかなります!」

ランジュ「だといいわね。そんな甘くはないでしょうけど」

可可「アァ!?」

可可「ずっと気になっていましたけど、あなた中国の人デスネ」

ランジュ「……」ピク

可可「出身はどこデスカ! クゥクゥは――――」

かのん「可可ちゃんっ!」ストップ

エマ「ランジュちゃんもだめだよ! そんな突っかかるようなことしちゃ」

ランジュ「別に。ただ同郷のよしみで教えてあげただけよ。現実は甘くないって」
0264名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/10/27(木) 00:00:49.66ID:zgE0yEp6
可可「他突然模仿的霸道态度让我不由得恼火……真是个让气氛变得更糟的天才」ブツブツ

かのん「なに?! よく分かんないけどすっごく悪いこと言ってそう!」ヒィイ

ランジュ「わお。ミア聞いた? あの子すごい口悪いわ」

ミア「ハァ、こんなところで仲間割れなんてごめんだぞ」

ランジュ「まさか。ランジュはもっと仲良くしたいと思ってるの。アナタもそうでしょ? 很高兴认识你」

可可「……我也很高兴」プイ
 

歩夢「大丈夫かな?」コソコソ

侑「う、うん。突然喧嘩腰になるもんだから何かあるのかと思ったけど、この様子なら大丈夫なんじゃない?」コソコソ
 

愛「そろそろ話を進めよっか」

愛「みんな、スマホのバッテリー残量はどう?」

彼方「バッテリー?」

愛「そ。今は圏外で殆どの機能が使えないけど、これが命綱だってことに変わりはないし。無駄遣いしないように低電力モードにしておくか、いっそ電源を落としちゃってもいいと思う」
0265名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/10/27(木) 00:10:12.87ID:zgE0yEp6
 愛ちゃんの言葉を皮切りに、みんな一斉に自分のスマホを取り出した。
 画面を見つめ、不安そうに眉を顰める人もいれば、安堵のため息をつく人もいた。

 悲しきことに私は前者である。

侑(スクールアイドルフェスティバルで各所と頻繁に連絡を取り合っていたらそりゃそうなるよね)

 右に左に上に下に、スマホを片手に大忙しだったのだ。既にバッテリーの残量は30を切っていた。

歩夢「侑ちゃん、いざとなったら私のがあるから。心配しないで」

侑「ありがとう。でも、いつ電波が戻るか分からないから、電源は付けたままにしとく」

 電源を切ると、本当に外界から遮断されてしまうようでどうにも踏み切ることができなかった。

かすみ「うわぁああん! かすみんもう真っ赤です!」

しずく「もう。散々自撮りしてるからだよ」

璃奈「予備のバッテリー持ってるから、貸してあげる」
0266名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/10/27(木) 00:21:49.68ID:zgE0yEp6
かすみ「りな子ー!!」

ミア「長旅なんだ。それぐらい用意しておくべきだろ」

かすみ「ふ、ふんっ。ミア子のは使ってあげないんだから!」

ミア「Huh? なんでボクから貸してあげたいみたいになるんだよ」

果林「Liellaの子たちは?」

かのん「あ、はい。ここに来る前にちぃちゃんが言ってくれたので、電源は切っています」

すみれ「私もモバイルバッテリー持ってますから、ある程度は」

可可「クゥクゥもデス」

恋「私は大丈夫です」

千砂都「私も平気だYO」

かのん「え、何そのテンション」
0268名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/10/27(木) 20:32:38.03ID:rTAF0B1p
0271名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/10/28(金) 23:02:00.58ID:xg9W4eJX
0275名無しで叶える物語(光)
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2022/10/30(日) 23:32:22.71ID:z6IcXnm3
0277名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/10/31(月) 20:02:59.57ID:kWcDi10c
0281名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/11/02(水) 13:32:19.89ID:bqP2GjuA
0288名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/05(土) 23:27:02.77ID:fskD1FCB
ランジュ「……」

 ランジュちゃんは何かを思案するように眉を寄せ、暫し逡巡した後、

ランジュ「それじゃ、バッテリー出して?」

 そう告げたのだった。

――――
――――――――

ランジュ「ヤー、イー、サー……意外とあるものね」フムフム

 通路に乱雑に置かれたモバイルバッテリーを見下ろしながら、ランジュちゃんは満足気に顎を撫でた。

すみれ「……」イジイジ

可可「……」プクゥ

ミア「……」ジロ

璃奈「……」

 どこか息苦しい沈黙が流れる。それは、決してここが閉鎖されたトンネル内というだけの理由ではなかった。
 ランジュちゃんの放つ威圧感に、半ば強制的に受け渡すを得ない状況だったのだ。
0289名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/05(土) 23:28:10.78ID:fskD1FCB
歩夢「ちょっと横暴だよね……」ボソ

 歩夢の呟きに内心で同調する。

愛「納得いかない人もいると思うけど、これもみんなのためなんだ。共有できるものは共有する。これ以上の混乱を防ぐためにも、今のアタシたちは規則に則って行動していかなきゃ」

彼方「規則……って?」

愛「ここでいつ来るかも分からない救助を待つにしても、集団で生活していくにはルールが必要ってことだよ。カナちゃん」

かすみ「あのぉ、規則でもルールでもいいんですけど、具体的には何をどうするんですか?」

愛「そうだね。例えばこのバッテリー。これはみんなで使う共有財産として管理しようかなって」

 勝手に他人の物を共有財産にするという発言には、誰もが引っ掛かりを覚えたけど、

侑(愛ちゃんにランジュちゃんも自分のバッテリーを出してるから……私たちは何も言えないんだよね)
0290名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/05(土) 23:31:13.89ID:fskD1FCB
ランジュ「バッテリー残量が少ない人から優先で充電するわ。あまり長時間は無理だけれど、少しは足しになるはずよ」

 ただで使わせてもらう身としては、多少の居心地の悪さを感じながらもスマホを手渡す。

愛「りなりー、ごめんね。でも3つも持ってるなんてありがたいよ」

璃奈「これくらいでしかみんなの役に立てないから、大丈夫。どんどん使って」

果林「無理しなくていいのよ。ほら、ここに横になって」ポンポン

璃奈「う、ん……ごめん」ハァハァ

愛「……っ」

 さっきの愛ちゃんの発言が、一体どれだけここにいることを見越してのことだったのか。
 彼女自身も痛いほど理解しているはずだろう。

 ――――ズキッ

侑(っう)

 再発したこめかみの痛みに眉を顰める。
0292名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/05(土) 23:35:42.72ID:fskD1FCB
歩夢「けほっ、けほ」

 空気も悪い。いくら車内にいようと換気設備はとうに機能しておらず、トンネル内の汚染された空気が充満するのもそう遠くない未来。

 私たちにあまり時間が残されていないのは明らかだ。

侑(だからと言って、現状を打破できるような策があるかというと……)

愛「寝床は後方の座席を回転させて倒せば十分な広さになるね。汗吸っちゃってるけど、タオルを毛布代わりにもできるし」

せつ菜「休む分には自分の座席で十分そうです。そちらは璃奈さんや侑さん、体調の優れない人が使うようにしましょう」

栞子「割れた窓は日除けを下ろしておいてください。必要ならテープでひびを補強することも忘れずに」

 今の愛ちゃんたちの行動が最善手なのだろう。

しずく「あの、話の腰を折るようで悪いんですけど。このような集団の中でルールという物を設定するのなら、どうしてもリーダーという存在が不可欠ではないでしょうか」

しずく「こんな時に不謹慎ですみません。ただ、誰かまとめる人が必要ではないかと」

エマ「なら、そのままランジュちゃんとか愛ちゃんがやればいいんじゃないかなあ」
0293名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/05(土) 23:37:35.28ID:fskD1FCB
愛「もちろん、言い出しっぺの愛さんたちがやるのもいいけど、なんならリーダーは別で決めてもいいって思ってる」

愛「最年長の3年生でもいいし、この際、部長のかすかすでも!」

かすみ「うえ!? か、かすみんにはちょっと荷が重いです……あと、かすかすじゃなくてかすみんです」

歩夢「うーん、リーダーなら侑ちゃんがなればいいんじゃない?」

侑「歩夢?」

せつ菜「いいですね! 侑さんなら大賛成です」

かすみ「かすみんも侑先輩がいいです」

侑「せつ菜ちゃん? かすみちゃん?」

果林「まあ、異論はないわね この同好会はこれまで侑を中心に回ってきたようなものだもの」

彼方「でもでも、侑ちゃん頭怪我してるし……あんまり気を張らせない方がいいよ」
0294名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/05(土) 23:43:21.81ID:fskD1FCB
愛「当然ゆうゆ1人に全てを任せるつもりはないよ。重点はリーダーっていう役割の存在。しずくの言う通り、集団をまとめるのには必要不可欠だからね」

ミア「ベイビーちゃんが? ランジュか栞子にやらせればいいだろ」

栞子「いえ、確かに侑さん以上の適任は他に見当たりません」

ランジュ「ランジュもいいわ。誰も名乗り出なかったらやるつもりだったし、みんなが侑を推すのなら反対する理由もないもの」

 ランジュちゃんや栞子ちゃんにまでそう言われたら、嬉しい反面断りづらいな。

歩夢「……ごめんね。頭の怪我もあるし、断りたかったら断っていいんだよ。ただ、私は侑ちゃんがいい」

歩夢「侑ちゃんとなら、どんな未来だって……」ボソ

侑「……歩夢」

愛「Liellaの子たちも異論はない?」

恋「はい。私たちそもそも1年生ですし、そんな誰かをまとめるなんてまだ……」

すみれ「突然押しかけたようなものだしね。従うったら従うわ」
0295名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/06(日) 00:05:29.18ID:lqj+1qak
可可「待ってクダサイ、ここにかのんがいます!!」ビシ

かのん「ん、え"っ?」ビクッ

可可「かのんならきっとみんなをひとつにまとめて、ここから無事にセイカンさせマス!」

かのん「根拠は? ねえ根拠を教えて具体的に」

可可「スバラシイコエノヒトデス!」

かのん「はぁぁあ!?」

千砂都「かのんちゃんは私たちのリーダーだからね」

すみれ「まあ、私たちの中でって言ったらかのんでしょうけど」

かのん「生徒会長の恋ちゃんがいるじゃん!」

愛「あはは。じゃ、投票でもする?」
 

 どうしてこうなったのか、私とかのんちゃんが候補に挙がり、

侑「よ、よろしくお願いします……?」

かのん「やめて……頼むからやめて、目立たせないでぇ……」ウツムキ

 この場の誰もが分かり切った投票が行われた。
 結果は13:2で私、高咲侑がリーダーとして選出され、投票の間、生まれたての小鹿のように膝を震わすかのんちゃんが不憫だったのは言うまでもない。

 ちなみに、かのんちゃんに票を入れていたのは可可ちゃんと千砂都ちゃんだった。
0296名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/06(日) 00:54:53.22ID:lqj+1qak
愛「私たちのリーダーはゆうゆに決定。かのっちたちも意見があったら遠慮なく言っちゃっていいからね」

かのん「は、はい」ホッ

可可「どーしてかのんじゃないんデスカ!」

すみれ「逆にどうしてそこまでこだわるのよ。リーダーだからって好き放題できるわけじゃないっての」

ランジュ「みんな、ここからが本題よ」スク

 パチンと手を叩き、再び注目を集める。
 成り行きでリーダーになったとはいえ、話を進めるのは強い発言権を有しているランジュちゃんたちだ。

ランジュ「問題点は山積み。それらを解決するために、まずは規則を作るの。助けが来るまで、この狭いコミュニティの中で正しい秩序の中生活するために必要な規則(ルール)を」

 生活する。それは決して大袈裟に言っているのではなく、最悪を見越した上での発言。

 救助が来るのは数時間後か、数日後か、今まさに瓦礫の撤去活動中なのか。なら、どれくらいかかる。下手したらトンネルが崩れるかも知れない。きっと慎重にならざるを得ない。1日では終わらないだろう。

侑(ここが私たちの世界(国)になる)

 大人はいない
 生きるために、知恵を、力を、振るわなければ

歩夢「……」ギュウ

侑「生き残ろう。みんなで」ギュウ

 こうして、私たちの長い長い戦いが始まった。
 

ピ…ピ6:45p.m. ―7:20p.m――8:0000??玲律縲?6??5p.m. ――――ピピピピ…カチ
――――――――ブゥーン、ゥゥン

to be continued
0297名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/06(日) 00:57:36.56ID:lqj+1qak
続けて第3章。
4、最終章は場合によって別スレでやります。
0303名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/11/08(火) 17:34:59.94ID:hoorfaNE
結局ランジュ達は何を見たんやろ
0305名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/11/09(水) 19:32:07.27ID:XsrDjuHA
0311名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/12(土) 23:26:54.47ID:jSnW87Tq
第3章 社会-order-
 

侑「うーん」

 膝の上に広げたノートを睨みながら、首を捻る。
――――
――――
 【問題点】
・室内灯
 バスのエンジンが切れている以上、どこかで電力の供給が途絶える→トンネルの照明もいつまで保つか、見当も付かない……

・車内の空気
 17人もの人間がこの狭い空間で、ただでさえ空気も悪い中十分な換気もできずにいる状況。一部、窓を開放しているとはいえ排気ガスの侵入が懸念点(閉め切ることによる酸素不足、二酸化炭素過多にも注意?)

・気温
 幸い、車内は人が大勢いることもあってか暖かい……が、エンジンがかけられない(そもそも運転席はぐちゃぐちゃで、鍵も運転手が持っていってしまったのか見当たらない)=暖房機能が使えない=季節は冬=冷え込むのは必須

 トンネル内はムワムワ?モワモワ?した熱気を感じるほど蒸し暑いけど「空調が機能していない前提で語るならば、数時間後には巨大な冷蔵庫に早変わりです」by栞子、らしい

※まともな防寒対策がないことだけはここに記載しておく
0312名無しで叶える物語(はんぺん)
垢版 |
2022/11/12(土) 23:28:42.87ID:jSnW87Tq
――――
――――パタン

侑「はぁ〜」グテ

 ノートを閉じ、座席に深くもたれかかる。
 こうして改めて書き記せば、自分たちがどれだけ絶望的な状況にいるのかが浮き彫りになるようで眩暈を覚える。

歩夢「侑ちゃんそんなもたれかかったら腰に悪いよ。頭は大丈夫? 喉乾いてない?」

侑「あはは……平気だよ。それに飲み水は貴重なんだから大事に使わないと」

 リーダーを決めた後、私たちはそれぞれが定位置に戻り思い思いの時を過ごしていた。
 今後どうなるか、どうするかという不安の声はあちこちから聞こえてくるのだが。

侑「……」

彼方『彼方ちゃん怒ってるんだよ〜。侑ちゃんならもっと突っ込んでくれると思ったんだけど』

彼方『私、ランジュちゃんたちのこと、疑ってる』

 みんなが席に戻る中、彼方さんから言われた言葉が頭の中で反芻される。
0313名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/12(土) 23:31:00.85ID:jSnW87Tq
 私だって有耶無耶にしたいわけじゃない。運転手を探しに行きたい。トンネルの出口と入り口がどう塞がれているのかこの目で確認したい。

 彼方さんがランジュちゃんたちに感じている不信感は、説明、情報の伝達不足からくるものだろう。
 実際に惨状を目にして来たランジュちゃんたちと私たちとでは、危機感に対する温度差が違うのは当然だ。

ランジュ「侑、ちょっといい?」

侑「うひ!?」ビクッ

歩夢「侑ちゃん!? 頭痛むの!?」

 件の本人の登場に腰が浮く。
 ランジュちゃんは不思議そうに首を傾げると、何事もなかったかのように話を進めた。その後ろには栞子ちゃんもいる。

ランジュ「さっき栞子と話し合ったんだけどね、侑にも共有しておこうと思って」

 そう言い、スマホをこちらに向ける。

侑「え、なに……これ地図?」
0314名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/12(土) 23:33:20.42ID:jSnW87Tq
栞子「そう大層なものではありません。このトンネル内での私たちの現在地、そこから出口入り口までの道筋を簡潔かつ大雑把に記したものです」

出口(封鎖)←―――(0.8)――――バス(現在地)――(0.4)―→ミニバン――(0.2)――→入り口(封鎖)

栞子「粗末なものですが、大まかな距離感を把握してもらえればと」

侑「この数字って、0.8は800メートルってこと?」

ランジュ「ええ。正確ではないけれど、実際に歩いて戻ってきた体感としてはそのくらいってことよ」

歩夢「これ本当なら、気軽に行って戻れる距離じゃないね……」

ランジュ「そういうこと。ただ勘違いして欲しくないのは、この数字はあくまで瓦礫で進めないところまでの仮数値。どのくらい深く崩れているかは見当もつかないわ」

侑「そっ、か」

栞子「トンネルの全長は1.4から大幅に見積もって1.9kmまでの長さがあると考えていいでしょう」

 1.4km、やっぱり結構長いトンネルなんだ。
0315名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/12(土) 23:34:56.65ID:jSnW87Tq
栞子「それとは別に確認しておきたいことも。侑さん、少し外に出ませんか」

侑「うん? いいけど……」

かすみ「侑先輩? どこ行くんですか」

侑「ちょっと外に、ね。すぐ戻るから」

彼方「……」ジト

 歩夢を連れて、彼方さんの視線から逃げるようにバスから出る。
 

侑「……」ガタン

 トンネル内で道路に足をつけるのは変な感じだ。
 こんなことがなければ一生体験することはなかっただろう。

侑「うっ、えっぅ」

歩夢「げほっ、ごほ」

 開放感を感じたのも束の間、強烈な臭気に咳き込む。
0316名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/12(土) 23:38:00.94ID:jSnW87Tq
ランジュ「マスク……って、遅かったわね」

侑「だ、大丈夫。このぐらいなら我慢できるレベル」

歩夢「ん、あれ、ランジュちゃんそのサングラス……」

ランジュ「ええ。さっき思い出してね」クイ

 得意気にサングラスを指で押し上げる。

栞子「これは、思ったより強烈ですね」コホ

 最後に降りて来た栞子ちゃんは、苦虫を噛み潰したような顔で周囲を一瞥する。

ランジュ「あら、この辺りはまだ全然マシよ。少し歩けばもっと酷くなる」

 顔を顰め、ランジュちゃんはトンネルの奥を指差した。

ランジュ「呼吸はしづらいし、真っ暗。ガスで目も開けられない」

 このサングラスで目を守れるかと思ったけど、暗いところじゃ役に立たないわね。そう続けて、彼女は自嘲気味に笑む。
0328名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/19(土) 00:57:24.30ID:x+t2Uo2R
侑「それで、どうして外に?」

 あんまり長居したくないんだけど……

栞子「見て分かる通り、私たちのいる中央付近の照明はまだ生きています」 

 スマホに目を通しながら、栞子ちゃんは続ける。

栞子「ですが、消えかかっているものもあれば元から点いていなかったものもあるでしょう」

歩夢「そうだね。揺れでだめになっちゃったものも含めたらこの薄暗さも納得かな」

 電球色を彷彿とさせるオレンジの光は目に優しいと言えば聞こえはいいが、今の状況では只々薄暗く気が滅入るような印象を与えてくる。

 ただ、それだけなら車内で散々話した内容だ。

侑「照明の寿命を心配しろってこと……?」

 バスとトンネルの明かりが全て消えたらと思うと、背筋が凍る。
0329名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/19(土) 01:01:48.45ID:x+t2Uo2R
栞子「LEDではないのと、揺れの影響がどこまで被害をもたらすのかは分かりません。しかしトンネルの照明に関しては、今点灯しているものは当面大丈夫だろうと言うのが私とランジュの見解です」

ランジュ「聞きたいのはそこじゃないわよね。侑、来て」

侑「ここから離れていいの?」

ランジュ「少し歩くだけ」

ランジュ「あ、歩夢と栞子はそこで待ってて」ヒラヒラ

歩夢「え、だめっ」

 着いて行こうとする歩夢をどうにか説得した後、ランジュちゃんは私の手を取るとトンネルの奥へ歩き出した。
 

ランジュ「……」スタスタ

侑「けほっ、あの? ら、ランジュちゃん? もう随分歩いたと思うけど」

 暗い。数十メートル、いや数百メートル先は暗闇で前が見えないかと思えば、オレンジの頼りない光が照らす空間もある。

ランジュ「この辺りはまだ光がある。昼と夜が交互に訪れてるみたいでしょ。不思議よね」

 まるで外の世界みたいじゃない?

 顔は見えないけど、ランジュちゃんは笑っている気がした。
0330名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/19(土) 01:03:49.64ID:x+t2Uo2R
ランジュ「着いたわ」

 バスから200メートルは歩いただろうか。
 ランジュちゃんが足を止めた場所は、ちょうど照明の光が当たらない暗闇地点。
 ライトを使わないと細部まで見通せないが、何か特筆すべき点があると言うわけでもない。

ランジュ「見て。ほら、あれ」

 そう言って、ランジュちゃんはスマホのライトを天井に向けた。
 私もつられてその光を追う。

侑「あれ?」

 そこにあったのは天井から吊るされた大きな筒のようなもの。光量の関係ではっきりとした全容は窺えないが、空気清浄機かなにかだろうか?

ランジュ「出口を見に行った時にね、見つけたの。愛が言うには送風機(ジェットファン)だって」

侑「これ、稼働してるの?」

ランジュ「どうかしら。音はしてるみたいだけど」

 確かに耳をすませば、ゴォオオ……と微かな振動のような音が聞こえてくる。
0331名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/19(土) 01:04:31.31ID:x+t2Uo2R
侑「こんなに静かなものなの。ここまで近付かないと聞こえないって……」

 トンネル内の空気の循環を目的としたこの機械も、これでは精々微弱な風を起こすだけでこの広く長いトンネルを喚起しきれるとは思えない。

ランジュ「古いモデルなんじゃない? それか普段からロクな整備もされていなかったとか」

 あの「揺れ」で機械に不具合が生じたと言われたらそれまでだけど、ランジュちゃんの説もあながち間違ってはいないのかも知れない。

 どちらにせよ、これでは空気の問題を解決――――

侑「……あ、ちょっと待って。この手のファンてさ、1台だけじゃなくて数百メートルおきに設置されてるもんじゃない?」

 愛ちゃんがいたら「もんじゃだけに!」なんてお決まりの台詞を語尾に付けていただろうな。

 そんなどうでもいいことを思いながら、ランジュちゃんの返答を待つ。
0332名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/19(土) 01:05:17.06ID:x+t2Uo2R
ランジュ「そうだとしても、出入り口が塞がれているんだから新鮮な空気なんて入ってこないわ」

侑「あ、そうか。そうだよね……」

 当たり前のことを失念していた。

ランジュ「それに、ここからさらに200メートルほど先で同じ物を見つけているの。それも動いてはいたけど」

侑「それは、素直に喜んでいいのかな」

ランジュ「どうかしら。瓦礫に僅かな隙間でもあれば少しは違うんでしょうけど、これじゃ汚れた空気を循環してくれる有難迷惑な機械ってことになるわね」

ランジュ「まあ、何もないよりはマシなんじゃない」

 新鮮な空気は入ってこない。
 限られた資源をただ消費することしかできないのだ。

侑「……」ゴク

 死神の鎌がゆっくりと喉元に迫って来るような気がして、カラカラになった喉を潤そうと生唾を飲んだ。
0333名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/19(土) 01:07:37.34ID:x+t2Uo2R
ランジュ「それと、バスから大体400メートルかしら。そこから先はもうずっと暗闇が続いてて、ライトで照らさないと何も見えなくて」

ランジュ「そこで大きな機械の残骸を見つけてね」

侑「あ、それってこのファン?」

ランジュ「そう。揺れで落下したやつ。入り口の方はどうか分からないけど、こっちでまともに動いているのは2箇所だけ」

ランジュ「それを踏まえて、あえて問題提起をするのならば『密閉空間で起こる酸素不足』これをどう回避するか」

 救助が来るよりも排気ガス等で身体を壊し、酸欠で息絶える方が早い。
 ランジュちゃんはそう考えている。

ランジュ「それを侑、あなたからみんなに提起するのよ」

侑「え?」

ランジュ「えって……仮にもリーダーでしょう?」

 リーダーとしての責務を果たせ。暗にそう言われている気がした。
0334名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/19(土) 01:08:15.47ID:x+t2Uo2R
侑「そうだけど、でも……それを言いたかったからここまで来たの?」

 わざわざ2人きりになってまで。

ランジュ「別にそんなつもりはないわ。このファンを見せたかったのは事実だし、侑にはもっと知ってもらわないと」

ランジュ「これからアタシの言いたいことは侑に言ってもらおうと思ってるから」

侑「は? え、私に? な、なんで」

ランジュ「だって、ほら。アタシ、あんまりよく思われてないみたいだし……特に彼方には」

 ランジュちゃんはバツが悪そうにぼやいた。

侑「……知ってたんだ」

ランジュ「そりゃ気付くわよ。あんなに睨まれちゃ」

ランジュ「彼方ったら分かりやすいわ。ランジュのこと親の仇のような目で見るんだもの」

 思い当たる節はある。何かを隠してるような態度に物言い。ランジュちゃんも自覚はしているらしい。
0335名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/19(土) 01:18:18.05ID:x+t2Uo2R
ランジュ「だから、ね。お願い。みんなあなたの頼みなら素直に聞くでしょ?」

侑「買い被りすぎだよ、私はそんなすごくない」

ランジュ「自分を安く見すぎよ」

侑「傀儡政権でもするつもり?」

ランジュ「ふふ。面白いこと言うのね。アタシがリーダーの座を譲ったのは、自分が裏から組織を動かすためだったって?」

侑「……ごめん。冗談」

 空気がピリつくのを感じ、私は咄嗟に矛を収めた。
 らしくもない。ランジュちゃんと今更言い合ったってなんの意味もないのに。無駄な時間だ。

ランジュ「……」フゥ

ランジュ「そろそろ戻りましょう。あんまり遅いと心配されちゃうわ」

侑「うん、そうだね」

 来た道を戻るランジュちゃんの背中に、私は例えて言いようのない何かを感じていた。
0337名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/11/19(土) 15:55:31.60ID:hSgbZ/aI
支援
0340名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/11/20(日) 22:29:07.02ID:oy+j4V5B
0349名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/11/25(金) 19:55:25.33ID:pOykQi7b
0360名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/30(水) 23:31:37.47ID:rbFxgZcV
バス車内

侑「――――と言うわけなんだけど。入り口の方はどうかな。かのんちゃんたち、何か情報はない?」

かのん「あ、えーと……送風機でしたっけ。上気にする余裕もなかったから何とも。あったっけ?」

千砂都「等間隔で設置されているはずだから、出口の方にあったのならこっちにもあるはずだよ」

恋「微かにですが、振動のような音が響いていたような」

すみれ「環境音だと思っていたけど、そう思うと確かにそれっぽいわね」

可可「地面にはそれらしきモノは落ちていなかったデスよ」

ランジュ「そうなると、入り口方面のものは正常に作動しているのかしら……」

愛「だとしても、元々が大した整備もされてない粗悪品くさいしねー」
0361名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/30(水) 23:37:18.63ID:rbFxgZcV
歩夢「どうして分かるの?」

愛「んーと、まず音が弱い。本来トンネルに設置されてる送風機ってもっとバカでかい音がするはずなんだよね。すぐ真下まで近付かないと聞こえないっておかしいでしょ」

彼方「低騒音のタイプなんじゃないの?」

愛「いやぁ、愛さんそれはないと思うな。低騒音だとしてもあれはないって。絶対どっか故障してる」

栞子「電力の供給が途絶えて、十分な動力が確保できていない可能性も考えられます」

愛「それだ!」ビシ

侑(うーん)

 微風ながらも人工的な空気の流れがあるのは確かだろう。
 しかし、一介の女子高生である私たちに酸素不足の問題なんてどうにかできるものでもなく。

ミア「なあ、本当にあるのか? こんな広いトンネル内で酸素不足なんて」

せつ菜「出入り口が塞がれているんです。時間の問題だと思いますよ」

ミア「それは何日、何週間後って話だろう」

エマ「どこかに隙間くらいはあるんじゃないかな」

果林「隙間なんてあるようには見えなかったわ。全体をくまなく調べたわけではないけど……」
0362名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/30(水) 23:39:52.82ID:rbFxgZcV
愛「スモッグが特に酷かったからね。ライトで照らすとすっごいよ。ライブ会場のスポットライトみたいでキラキラと粒子が舞っててさ」

愛「あ、そんな綺麗なもんじゃなかったけどね。もんじゃだけに。あそこにはいれて3分かな。いや、もっと短いかも」

恋「? なぜ突然もんじゃなどと……?」

彼方「スルーしていいんだぜ〜、恋ちゃん」
 

可可「クゥクゥたちは割と平気でしたよね?」

かのん「え、そうかな? 割と苦しかったと思うけど」

すみれ「暫く立ち止まって話す余裕はあったわ。視界を覆うようなスモッグもなかったし」

ランジュ「へえ。ランジュたちの方とは大分環境に差があるみたいね」

すみれ「ええ、まあ。それとこっちは指を入れられるくらいの隙間なら何箇所もあったけど、その向こうも瓦礫で塞がれていてお手上げって状況ですね」
0363名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/30(水) 23:43:34.77ID:rbFxgZcV
栞子「なるほど。しかし気になるのは、出口と入り口でこれほど環境に差が出るとは。磁場の影響か、空気の流れが強制的に止められたことによる気象現象、揺れで地下地盤が浮き上がり天然ガスが……」ブツブツ

恋「ファンの故障が影響して、汚れた空気が奥の方で溜まってしまっているのではないでしょうか?」

愛「あー、風の向きが入り口から出口にかけて流れるようになっているなら当然か。考えてみたらそりゃそうだ」

せつ菜「封鎖されていて空気の逃げ道がないせいで、時間が経てば経つほど酷くなる一方ってわけですか」

栞子「……」

ミア「考えすぎたな」

彼方「針の筵に座る思いだねぇ」チラ

ランジュ「〜〜〜」
愛「〜〜〜」

エマ「はりのむしろ?」

璃奈「苦しくて辛くて、少しも安心できない状態のこと」

果林「璃奈っ、横になってないとだめじゃない」
0364名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/30(水) 23:48:22.09ID:rbFxgZcV
侑「……」

 状況は悪くなるばかり。そんな中で私に何ができる?
 仮にもリーダーになった身でありながら、目の前で繰り広げられる議論に耳を傾けることしかできていない。

 話を主導するような発言力も、妙案を出すような発想力もランジュちゃんに劣っている。

侑「ふ、う」ズキ、ズキ

 時々、ふと思い出したかのように熱と痛みを発するこめかみを軽く抑える。

歩夢「まだ、痛むんだね」スッ

侑「うん、少し」

 歩夢の手が私の頬を包むように触れる。

歩夢「心配だよ。私ずっと、心がはち切れそうなくらい……痛い」

歩夢「ここに閉じ込められている状況より、侑ちゃんを失うことの方がずっと、ずっと」

 こわい

 そう歩夢は呟いた。

侑「ごめん。でも、今は話を聞かないと」
0365名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/30(水) 23:50:37.59ID:rbFxgZcV
 歩夢の気持ちは痛いほど理解できる。
 私だってもし歩夢に何かあったらと思うと、気が気ではない。

 自分で良かった。
 きっと歩夢は反対のことを考えているんだろう。

侑「……」

 歩夢から視線を外し、私は他の面々の声に耳を傾けた。
 

かすみ「げほ、ごほっあ"ぁ。しず子ぉ、窓開いてないよね?」

しずく「開いてないよ。閉め切るわけにもいかないけど。元々の空気の悪さ、酸素の薄さを考慮したら、車内もとても安心できる状況じゃないからね」

しずく「この狭い車内で、これだけの人間が酸素を無碍に消費し続けている事実は無視できないし……」

エマ「そう言われると、確かに……ちょっと息苦しいかも」

かすみ「うう、怖いこと言うのやめてください……すぅー、はぁ、はぁ。ぜ、全然平気ですよぉ」

果林「こーら。あまりかすみちゃんを怖がらせちゃだめじゃない。ただの思い込みよ」

璃奈「対策を講じるなら、口を閉じるのが1番……だけど」

璃奈「それは身も蓋もない」フゥ、フゥ
0366名無しで叶える物語(はんぺん)
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2022/11/30(水) 23:56:32.31ID:rbFxgZcV
しずく「璃奈さん、汗すごい」フキフキ

璃奈「ん、ありがとう」

かすみ「やっぱり、痛いよね。顔も赤いし、喉乾いてない? かすみんにできることあったら何でも言って」

璃奈「うん、頼りにしてる」ニコ

璃奈「……っ」ズキン、ズキン
 

かのん「やっぱりさ、もう一度入り口まで戻ってみない? あの時は冷静じゃなかったけど、今なら外に続く隙間見つけられるかも」

すみれ「悪くないけど、今は無理よ」

かのん「え、なんで?」

すみれ「いい? ここは虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の 乗車しているバス。招かれたとはいえ、私たちは余所者。ここで勝手な行動をしたら同好会の皆さんに迷惑をかけるわ」

恋「先ほど決めたリーダーに意見を通したら良いのでは?」

かのん「そ、そっかぁ。だよね」チラ
0370名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/02(金) 20:07:46.05ID:0cVinVO6
きた
0372名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/04(日) 09:27:05.96ID:8nTz0QiS
落とすな
0381名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/09(金) 21:48:12.72ID:Mwdco+AU
0383名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/11(日) 00:11:18.38ID:VZAT/b2F
0391名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/15(木) 19:04:26.79ID:lFvlbBeF
期待
0392名無しで叶える物語(光)
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2022/12/16(金) 08:08:24.13ID:AVUJ5NC7
保守、
0393名無しで叶える物語(光)
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2022/12/16(金) 20:38:19.23ID:Qo5EJ1Nc
期待
0395名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/17(土) 21:44:13.65ID:NRqdwA62
保守。
0398名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/19(月) 19:10:38.26ID:4cmfEixX
期待
0403名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/22(木) 16:48:54.07ID:ZgAZ18aw
0407名無しで叶える物語(光)
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2022/12/24(土) 09:19:04.09ID:ggxM7tXd
待ち
0413名無しで叶える物語(しうまい)
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2022/12/27(火) 20:38:36.89ID:OPTSTDIM
待ち
0421名無しで叶える物語(光)
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2022/12/31(土) 19:52:35.31ID:JP8JynBs
0423名無しで叶える物語(しうまい)
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2023/01/01(日) 23:20:55.41ID:+kHgk08Y
まつ
0427名無しで叶える物語(光)
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2023/01/03(火) 23:25:26.58ID:HEkI1rQE
0429名無しで叶える物語(しうまい)
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2023/01/04(水) 21:14:39.68ID:p2riszuX
0431名無しで叶える物語(しうまい)
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2023/01/05(木) 19:17:36.76ID:fND0g5vz
期待
0433名無しで叶える物語(光)
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2023/01/06(金) 20:11:09.62ID:sv67chvR
0435名無しで叶える物語(光)
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2023/01/07(土) 11:55:00.82ID:4noRLd+x
0475名無しで叶える物語(しうまい)
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2023/01/28(土) 21:23:16.16ID:8GvY1nrW
0482名無しで叶える物語(しうまい)
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2023/02/01(水) 12:42:21.80ID:ZiqHXr9c
まつ
0556名無しで叶える物語(SB-Android)
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2023/03/16(木) 13:52:38.83ID:1pLtdeiW
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