【SS】しずくとマイクのエゴ
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2期が始まってしまい世界観おかしくなるので供養します
かすみ「歩夢先輩って侑先輩と付き合ってますよね?」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1632053131/
一応この続きです 「じゃ、じゃあまた明日!」
「あ、あの!かすみさん!少しだけ時間を…」
「…///」コクリ
「?」
「え?!じゃあ…」
「私…かすみさんのこと、好きです」
「えへへ…嬉しい…」
「え…?」
「かすみんとずっと一緒にいてくれませんか?」
「私と付き合ってくれませんか?」
「だから…」
「これからもずっと一緒にいたいです」
「私、ずっと好きでした」
「2人きりでお買い物したり、2人きりでご飯を食べたりしたいです」
ドキドキ…
「…ごめんなさい」
「かすみさん?」
「え……」
「ええっと…」
「か、かすみん…他に…」
「すぅー…はぁー…」
「そっか…本当の気持ちを言ってくれて…ありが
かすみ「うわぁ!!」
かすみ「はぁ…はぁ…」
かすみ「もう…ぐちゃぐちゃ…」
かすみ「制服のまま寝ちゃったし…はぁ」
かすみ「かすみんのかわいい…」
かすみ「…最低」 ───
──
結局私って好きだったのかな。
もちろんあの人も好き。その気持ちは変わらない。
でも私を好きでいてくれる人も好きだっていうことを知らなかった。
あんなこと言われるまでそんなこと頭の中になかったけどさ。
同じくらい大好き。
結局1つは捨ててしまった。
あのじめっとした笑顔、嘘ってすぐわかるのに。
素直に悲しいって言ってくれた方がどんなに気が楽だったんだろう。
この罪悪感を引っ張ったままお付き合いしなくちゃいけないのかな。
かすみ「でも、かすみんは自分の気持ちを大事にしただけなんだから…………」
そう言い聞かせて、今はこの罪悪感から逃げることしかできない。
最低!ほんとにありえないよ!
…って言っても、もう過ぎちゃったことは変えられないけどさ。
かすみ「こんにちはー」 侑「あ、かすみちゃん!」
歩夢「今日はみんな早いね」
果林「あら?かすみちゃん、今日はヘアピンつけてきてないの?」
かすみ「あれ?あ、ほんとだ…」
侑「かすみちゃんがそういうを忘れるって珍しいね」
かすみ「今日は寝坊しちゃって…」
せつ菜「また寝坊ですか?肌が荒れてしまいますよ?」
かすみ「わ、わかってますよ」 しずく「…」
彼方「しずくちゃん?どこ行く」
しずく「演劇部の活動があるのを忘れてしまって、今から行かなくちゃ行けないんです」
侑「え?でも今日はこっちで練習するって」
しずく「ごめんなさい、今日は」
かすみ「し、しず」
しずく「ごめんなさい」
待って。なんて言えなかった。
ぱたりとドアが閉まった後、しず子と深い溝ができちゃった気がした。 エマ「絶対今の嘘だよね…?」
果林「そうね…顔が真っ赤になってたし…」
侑「かすみちゃん…?」
かすみ「は、はい」
侑「…ごめん、なんでもないや」
果林「あら、かすみちゃん、何か知ってるの?」
かすみ「ふえっ?!」
果林「しずくちゃんが出て行ってから体が震えてるわよ」
かすみ「あ、えーっと…」
璃奈「喧嘩しちゃったの?」
かすみ「そういう訳じゃないんだけどね?」 愛「ん?どゆこと?」
かすみ「しず子の許可が必要かなぁーって…」
エマ「許可?」
かすみ「許可っていうか、かすみんから言えることなのかなー…みたいな」
果林「何よそれ、はっきり言いなさいよ」
かすみ「うぅ…でも…」
愛「じゃあ愛さんが聞いてこよっか?」
かすみ「先輩がですか?!」
愛「別に大丈夫っしょ?しずくのためにもね」
かすみ「まぁしず子が話せるなら…それでいいかもです」
果林「愛が行くなら私も行こうかしら」
璃奈「私も行くっ」
せつ菜「私も…しずくさんが心配なので」
彼方「私も心配だから行こうかな〜」
エマ「あんまり大人数で行っちゃうとプレッシャーになっちゃうから私はここにいるね」
侑「じゃあ私と歩夢もここに残るね」
侑「かすみちゃんもね」
かすみ「はい…」 ───
──
侑「しずくちゃんと何があったの?」
かすみ「…………」
歩夢「かすみちゃん?」
かすみ「かすみんから話せません」
かすみ「かすみんが言う権利がないです」
エマ「権利?言えない理由があるってこと?」
かすみ「うまく言葉にはできないですけど…しず子が私のためにくれた精一杯の感情なんです」
かすみ「かすみんが勝手にバラしたりはできません」
かすみ「それだけは嫌です、しず子の気持ちを弄ぶことは絶対やです」
侑「だから果林さんに言い寄られた時も言わなかったの?」
かすみ「まあ…はい…すごく怖かったですけど」
エマ「かすみちゃんも果林ちゃんも声が震えてたね」
エマ「果林ちゃんもそれだけしずくちゃんのこと心配してるってことだから許してあげて?」
かすみ「元々かすみんが悪いので別に大丈夫です」
侑「じゃあ愛ちゃん達が帰ってくるまで待とっか」
かすみ「ごめんなさい」
侑「かすみちゃんが謝ることじゃないよ」
侑「かすみちゃんって本当に優しい子なんだね」
かすみ「…かすみんなんて最低ですよ」
エマ「全然最低なんかじゃないよ」
エマ「しずくちゃんと何があったかはよくわからないけど、しずくちゃんの気持ちを考えられてるんだから優しい子だよかすみちゃんは」
そんなわけない。
優しかったら振るわけないんだから。 ───
──
私の得意な外面を作れていたはずなのに!
なんで感情がとまらなくなっちゃうの?!
もう断られたんだから、もう切り替えないとダメなんだってば!
しずく「はあ…」
愛「おーい!しずくー!」
しずく「あ、愛さん?!」
しずく「私、これから演劇」
果林「あんなに顔真っ赤にしてどうやって演劇の練習するのよ」
しずく「それは…」
璃奈「かすみちゃんと何かあったの?」 しずく「ううん、大丈夫だよ本当に」
そうそう。みんなに心配させないような表情で
璃奈「絶対嘘」
しずく「本当だってば」
せつ菜「何か私たちにできることがあれば…」
しずく「心配しないでください、大丈夫ですから」
璃奈「大丈夫だったら部室から出ない」
本当になんでもないから。
しずく「もう大丈夫だから」
しずく「今日は…今日だけは…もうやめて…ください…」
彼方「そんなに涙流してまで頑張らなくてもいいんだよ?」
しずく「本当に大丈夫ですって」
彼方「本当に〜?」 しずく「…」
璃奈「声、すごく震えてる」
しずく「うん…うん…」
しずく「あはは…恥ずかしいですね…人前で涙なんて」
愛「悲しいことあったら抱え込んじゃダメだぞっ!」
しずく「そんな…抱きつかれちゃったら気持ちが抑えられなく…」
彼方「よしよし、頑張った頑張った」
しずく「はい…本当に…ごめんなさい…ごめんなさい…」
愛「落ち着くまで私の中で泣いていいよ」
璃奈「喧嘩したの?」
しずく「好きだったのに…好きなのに…」 頭がやめてって言ってるのに言うことを聞いてくれない。
こんなこと言いたくなかったのに。
果林&愛&璃奈「…!」
せつ菜「…………え」
果林「だった…?」
愛「かすみんなんで…!」
愛「アタシ、かすみんのとこ」
果林「だめよ愛、今かすみちゃんに問い詰めても何も進歩しないわ」
しずく「いいんです」
しずく「私が好きでもかすみさんがそうではなかったというだけですので」
愛「でも…」
しずく「本当に大丈夫ですよ」
しずく「落ち着きたいので少しだけ1人にしてくれませんか?」
果林「分かったわ。璃奈ちゃん、愛、戻るわよ」
愛「うん…愛さんはいつでも相談に乗るからね!」 しずく「ありがとうございます」
彼方「…………」
果林「ほら、彼方も撫でてないで戻るわよ」
彼方「しずくちゃん、いつでも頼ってね…」
しずく「ありがとうございます、本当に」
璃奈「………」
果林「璃奈ちゃん?どうしたの?」
璃奈「…しずくちゃん」
しずく「どうしたの?」
璃奈「…なんでもない」
璃奈「私たちがいるから、大丈夫」
しずく「うん、ありがとう」 ───
──
かすみ「結局しず子来なかったし…」
せつ菜「かすみさん」
かすみ「あ、先輩」
せつ菜「帰る前に少しだけ生徒会室によってもいいですか?」
かすみ「いいですよ」
せつ菜「ありがとうございます」
せつ菜「一応まだ隠さなきゃいけないので…右の髪を編んでくれませんか?」
かすみ「は、はい」
せつ菜「そんな緊張しなくても…ありがとうございます」
かすみ「かすみん上手くできるか心配で…」
せつ菜「かすみさんもやってみませんか?」
かすみ「わ、私もですか?!ちょっと編むには短い気がしますけど…」
せつ菜「ふふっ、そうですね」
菜々「じゃあもう少し伸びたら編んであげますね」 かすみ「あ、ありがとう…ございます…///」
菜々「じゃあ行きましょうか」
菜々「あ、その前に」
菜々「はいっ」
かすみ「なんですか?急に手を…」
菜々「繋がないんですか?手」
かすみ「あ、あぁ!はい!繋ぎます繋ぎます!」
菜々「意外とかすみさんの手って冷たいんですね」
かすみ「せつ…先輩の手、すごくあったかいです」
菜々「手が冷たい人ってすごく優しいって聞きますよ?」 かすみ「…そんなことないですよ」
かすみ「かすみんは手があったかい人は心もあったかいって聞いたことありますし」
菜々「そんなに謙遜しなくてもいいんですよ」
菜々「かすみさんは優しいって私が保証し続けますからね」
かすみ「し続けるって…まぁ嬉しいですけど」
かすみ「そんなこと言ってたら着いちゃったじゃないですか」
菜々「お話ししてるとやっぱりあっという間ですね」
かすみ「何か忘れ物とかしちゃったんですか?」
菜々「ちょうど2人きりでお話しする空間が欲しかったんです」
かすみ「2人で?」
菜々「はい」
菜々「…………」
菜々「…なるべくしずくさんの気持ちを尊重したいのでここに来ました」 かすみ「…!」
菜々「ここなら誰にも聞こえないですし、しずくさんの気持ちは既に2人とも共有できてますしね」
かすみ「…なんの話をするんですか」
菜々「そんな身構えないでください」
菜々「できるだけリラックスしながらお話ししたいんです」
菜々「しずくさんは…かすみさんのことが好きだったんですね」
菜々「恐らくしずくさんがかすみさんに告白したんですよね?」
かすみ「…はい」
菜々「どうして断ったのか、教えていただけませんか?」
かすみ「私がせつ菜先輩のこと、好きだったからです」
かすみ「侑先輩と歩夢先輩には『自分の気持ちを大事にして』って言われたので…」
かすみ「断ったことが正解なのかはよくわかりませんけど、やっぱり先輩のことが好きだったので」
菜々「…ありがとうございます」
菜々「私もかすみさんのこと好きですよ」
かすみ「はい…//」
菜々「私がかすみさんのことが好きだからこそ…かすみさんが私のことを好きでいてくれるからこそ、お願いしたいことがあります」
かすみ「お願いしたいことですか?」 菜々「はい」
菜々「私たち、別れましょう」
先輩の夕日みたいな優しい笑顔、本当に素敵だなあ。
かすみ「はい」
え?
かすみ「えっ…?」
菜々「かすみさんが私のことを好きだと思ってくれるからこそです」
かすみ「待ってください、意味が…」
菜々「いきなりで本当に申し訳ありません」
かすみ「本当ですよ!意味がわからないです!」
菜々「ちゃんと訳を説明しますから」 かすみ「…冗談じゃないんですよね」
菜々「…」
菜々「はい、本当にごめんなさい」
かすみ「…どういう理由なんですか」
菜々「まず大前提として、私はかすみさんのことが好きなんです、大好きです」
菜々「それを加味した上でお話を聞いてください」
菜々「私は、皆んなが幸せそうに笑っている姿を見るのが大好きなんです」
知ってる。それが少し暴走しちゃうのもね。
そこも含めて好きになったんだから。
菜々「同好会の皆さんには特に、です」
菜々「もちろんしずくさんも例外ではありません」
かすみ「待ってくださいよ、それじゃあしず子が幸せになるためにこの話をしてるってことですか?」 菜々「はい」
菜々「私たちが別れれば関係がもとに戻るんですから」
かすみ「確かに私もしず子が笑顔になって欲しいです!」
かすみ「でもそれはかすみんの好きって気持ちを…!」
菜々「そうですよね、かすみさんの大好きを蔑ろにしたくはありません」
菜々「でもそれ以上に…私は悲しんでいる人を横目に幸せになりたくないんです」
菜々「この決断で逆にかすみさんを悲しませてしまうのは分かっています」
菜々「でもかすみさんが私を好きでいてくれる、私がかすみさんを好きでいる、という事実だけで私は凄く幸せなんです」
菜々「本当に、心の底から幸せなんです」
菜々「なので…」
菜々「私のわがままを、聞いてくれますか?」
かすみ「…」
かすみ「…………」
かすみ「…………………………………………」
何を言っても聞かないだろーなー。この人は。 かすみ「…わかりました」
かすみ「ほんっと先輩って優しいですよね」
菜々「本当に…ありがとうございます」
かすみ「そのかわり約束して欲しいことがあります」
菜々「かすみさんのお願いならなんでも聞きますよ」
かすみ「髪が伸びたら…かすみんの髪、編んでくださいね」
菜々「もちろんです」
かすみ「あと!」
菜々「あと?」
かすみ「少しだけで良いので今日は一緒に帰りたいです」
菜々「いいですよ」
菜々「じゃあ早速行きましょう!」
そんな真夏の太陽だと言わんばかりの笑顔も好き。
好きなんですよ。かすみんは。 ───
──
恋人と話すことってなんだろう。
普通は何か話題を振るべき…だと思うけど、やっぱりこれでいい。
この1秒1秒を大切に感じたい。本当に幸せだから。
かすみさんも同じ気持ちだったらいいな。
これで最後だから。
かすみ「えへへ…」
菜々「どうかされました?」
かすみ「先輩の手、やっぱりあったかいです」
菜々「かすみさんの手も暖かいですよ」
かすみ「さっきは冷たいって言ってたじゃないですか」
菜々「なんか嘘ついてるみたいですね」
菜々「でも本当のことですからね?」
かすみ「先輩に限って嘘つくわけないですもんね」
菜々「じゃあ人生で一番最初の嘘、かすみさんにあげましょうか?」
かすみ「なんですかそれ…第一、ファンのみんなに嘘をついてるじゃないですか」 菜々「どういうことですか?」
かすみ「生徒会長だっていうことを隠しながらスクールアイドルやってるじゃないですか」
菜々「あ、確かにそうでした…」
菜々「じゃあかすみさんのためだけの嘘をついてあげます」
かすみ「先輩にできるんですか〜?」
菜々「わ、分かりました」
菜々「…行きますよ?」
菜々「か、かすみさんのことなんかき…き…」
かすみ「き?」
菜々「近所に…いて欲しいです」
かすみ「…それ嘘だったら」
菜々「ああ!やっぱり今のは無しでお願いします!」
菜々「もう!かすみさんは意地悪なんですから!」
かすみ「えー…これかすみんが悪いんですか?」 菜々「そうです!かすみさんが悪いんです!」
かすみ「せんぱーい、せつ菜先輩が出てますよー」
菜々「あっ!」
菜々「もう…かすみさんが…」
かすみ「かすみさんがなんですかー?」
菜々「もう…なんでもありません」
菜々「…それにしても、楽しい時間ってあっという間に過ぎるんですね」
かすみ「どういうことですか?」
かすみ「…あっ」
かすみ「…先輩の家ってここでしたっけ」
菜々「そういうことです」
菜々「でもまた明日会えますから」
かすみ「もっとお話ししたいです」
かすみ「だめですか?」
かすみ「こうやって一緒に帰れるのって最後になっちゃうんですよね」
かすみ「もう少しだけ歩きませんか?」
菜々「…そうですね」
菜々「私もまだかすみさんと繋ぎたいですしね」
かすみ「えへへ…じゃあいきましょっ」 ───
──
しずく「はぁ…はぁ…」
しずく「はぁ…はぁ…」
部長「ちょっとしずくー?」
しずく「はぁ…はぁ…」
『ごめんなさい』
え──────
ぱりん、と私の何かが割れていく。
また行き過ぎちゃったのかな。
一人で突っ走って、何も見えなくなって。
それを友情だと理解できてなくて。
『ごめんなさい、本当に』
もしかしたらダメかもとは思っていたけど本当に断られるとは思わなかった。なぜか大丈夫、できるって思っていた。
『いいの、大丈夫』
『ありがとう、すっきりしたよ』
しずく「はぁ…はぁ…!」
明日からどんな顔をしてかすみさんに会いに行けばいいんだろう。
これからも親友として接していきたい。
でも親友って何だろう。
かすみさんは親友って思ってくれてるのかな。
もしかしたら私を勇気付けるための嘘だったのかな。
そんないらない妄想までしてしまう。
いや、もしかしたら しずく「はあ…はあ……」
しずく「…っ!」
ほん…とう……に…………
私の好きな人が遠くに見えた。
遠くからでもその綺麗な髪色のおかげでよく分かる。
隣に人がいた。
綺麗な黒い髪。
私よりも圧倒的に端麗で、魅力的で、かっこいい。
かすみさんの隣が一番似合う人が、彼女の隣にいた。
しずく「あはは…私が敵うわけないか」
しずく「すぅ───…はぁーーー…」
しずく「よし、お稽古の準備しなきゃだぞしずくっ」
こぼれ落ちた涙を、汗で誤魔化せるといいな。
掴もうとした夢にさよならをしないと。
かすみさんとせつ菜さんが幸せになれますように。 部長「おーい!しずくー!」
しずく「!!」
しずく「ぶ、部長?どうかされましたか?」
部長「どうかされましたかって…校庭何周走ってるの…」
しずく「あー…2周くらいですか?」
部長「もう4週目だよ…」
部長「いきなりこっち来てランニング参加するんだから…同好会はどうしたの?」
しずく「今日は演劇部でお稽古したいなって気分だったので」
部長「何かあった?」
しずく「いえ、本当に気分ですよ」
しずく「私にもそういう日があるんですよ?」
しずく「充分走りましたし早速お稽古しましょう!」
しずく「次の劇も私が主役をとりますからねっ!」
部長「その意気やよしっ!ほら、みんなも行くよー!」
部長「……同好会の部長に相談しておこうか」 ───
──
かすみ「…流石に暗くなってきちゃいましたね」
菜々「…少し寒くなってきましたしね」
かすみ「最後にあそこの公園寄りましょ?」
菜々「豊洲ぐるり公園でしたっけ?」
かすみ「そうですそうです」
かすみ「…最後に聞きたいんですけど」
菜々「?いいですよ」
かすみ「ほんの2日でしたけどかすみんと付き合って楽しかったですか?」 菜々「楽しい…楽しいわけじゃなかったですね」
かすみ「…どういうことですか?」
菜々「楽しい、ではなく幸せ、でしたよ」
菜々「とてもいい経験をさせていただきました」
かすみ「うわぁ…心臓に悪い嘘つかないでくださいよ」
菜々「今の嘘ついたことになるんですか?」
かすみ「なりますよぉ!も〜!ちょっと変なこと考えちゃったじゃないですかー!」
菜々「かすみさんに嘘をつけてよかったです」
かすみ「そんな笑顔向けられたら怒るに怒れないじゃないですか…」
かすみ「もう…今日のところは水に流してあげます」
菜々「ふふっ…ありがとうございます」 菜々「それにしてもレインボーブリッジ、綺麗ですね…」
かすみ「先輩の方が綺麗ですよ」
菜々「これ以上褒めてたら私の手が熱くなっちゃいますよ?」
かすみ「かすみんの手が火傷するくらいですか?」
菜々「そうかもしれませんね」
かすみ「じゃあやってみますねっ」
菜々「ここでですか?!」
かすみ「いきますよ〜?」
かすみ「先輩は〜かすみんより可愛くて〜どんな髪型でも似合ってて〜」
菜々「本当に言うんですね…」
かすみ「元気いっぱいで〜ちょっと抜けてるところがあって、でもそこが可愛くて〜」
菜々「恥ずかしいですね…だけど嬉しいですよ」 かすみ「スクールアイドルが大好きで、同好会を作ってくれて〜」
かすみ「かすみんを大切にしてくれて〜…すっごく頭が良くて〜…」
かすみ「お…思いやりがあって…」
かすみ「まだ別れたくないって思わせるような人で…」
かすみ「ほ、他の人のために、辛いことを率先してできる人で…」
かすみ「あはは…だめですね…先輩には泣き顔は見せたくなかったんですけどね」
菜々「そんなかすみさんも好きですよ」
かすみ「なら…どうして…」
かすみ「やっぱり納得できないです…」
かすみ「そんなにかすみんのことが好きなら!どうして…」
かすみ「私といると幸せだって言ってくれたじゃないですか!先輩だって幸せになる権利があるんです!」
かすみ「…もしかして、私以上に一緒にいて幸せな人が」
菜々「それは違いますっ!」
菜々「私は本当にかすみさんが好きなんです!」
菜々「誰にも待っていない可愛さを持っていますしいつも見せてくれる笑顔はとても素敵ですし」
かすみ「それなら証明してください!私が大好きだってことを!」
かすみ「…かすみんにキスしたら……先輩の考えを尊重しますから!」 かすみ「目を瞑って10秒だけ待ちますから」
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あぁ…柔らかい…
もう、なんで涙なんか流してるんですか?
一生このままでいたいのはかすみんの方なんですからね。 かすみ「なんで先輩が泣いてるんですか…」
菜々「ごめんなさい、かすみさんの気持ちを考えたら…」
かすみ「なんですか今更…これが正解じゃなかったらかすみんぷんぷんですからね」
菜々「正解でもそうでなくても私はあなたのことが大好きですよ」
かすみ「それは私もです」
菜々「それは良かった…」
菜々「では私はここで」
菜々「そろそろお母さんに怒られてしまうので」
かすみ「分かりました」
かすみ「また来週の同好会で会いましょ!」
菜々「はい!」 菜々「……」
菜々「…あの、かすみさん」
かすみ「どうかしました?」
菜々「私の手を両手で包んでくれませんか?」
かすみ「いいですよ」
菜々「ふふっ…やっぱり優しいですよ、かすみさんは」
菜々「…では!」
かすみ「あ…まっ…」
かすみ「…………」
かすみ「手、冷たくなってきちゃった…」
かすみ「暖めてくださいよ…」 ───
──
しずくさんがかすみさんのことを好きなのは薄々勘づいてはいた。
スクールアイドルフェスティバルあたりからかすみさんに視線が行くことが多かったから。
常に彼女の中心にはかすみさんがいるような、そんなオーラを出していた。
…それに気づいていたのにかすみさんの告白を受け入れてしまったのだ。本当に馬鹿としか言いようがない。
確かにあの時は舞い上がってしまったのだ。
私の大切にしている仲間からの告白なんて、信じられなかったし本当に最高の気分だった。
だからこそ、私はあの選択をとった。
最高の気分になるのは私ではないんだ。
菜々「ただいま」
母「遅かったじゃない、どうかしたの?」
菜々「少し野暮用が」
母「あら?あなた目が真っ赤じゃない」
菜々「え?」
母「何かあったの…?」
菜々「いや!なんでもない!」
菜々「本当になんでもないから」
菜々「少しだけ寒かっただけ」
私にとっては正解でも不正解でもある。何か不思議な感情に囚われる。
かすみさんにとっては不正解なんだろう。それは当たり前。
しずく『好きなのに…好きだったのに…』
でも…あんな悔しい、悲しい表情を見ていたら…私は…。
あの2人は幸せにならなくちゃいけない人たちなんだから。
ピロン
菜々「あれ?」
菜々「しずくさん?」
しずく<明日、ヴィーナスフォートに行きませんか?> ───
──
しずく「ごめんなさい、急に呼び出してしまって…」
せつ菜「気にしないでください、今日は特に予定もなかったので」
せつ菜「今日はどうされたんですか?」
しずく「実は日頃からお世話になっているせつ菜さんに何か物でお返ししたいなって思いまして…」
せつ菜「私にですか?!すごく嬉しいです!」
せつ菜「でも私はあまりしずくさんのために何かをできている訳ではないと思いますが…」
しずく「そんなことないですよ」
しずく「せつ菜さんが知らず知らずのうちに助けてるんです」
しずく「それこそ影のヒーローって感じです!」
せつ菜「おお!なんかかっこよくていいですね!」
しずく「では今度のライブで影のヒーロー×ヒロインみたいなのやってみませんか?」 せつ菜「いいですね!是非やりましょう!!」
しずく「『漆黒のコートと帽子に身を包んだ影の英雄が今、1人の乙女を守るために暗躍するっ!』とかどうですか?!」
せつ菜「なんですかその展開!絶対面白いですよ!!英国紳士っぽく振る舞うのとアメコミらしさを全開にだすの、どちらがいいと思いますか?!」
しずく「あははっ!ノリノリですねせつ菜さん!」
せつ菜「ご、ごめんなさい…つい…///」
しずく「でもせつ菜さんらしくて素敵です」
せつ菜「本来の目的を忘れかけてしまうほどに熱くなってしまうのはなんとかしたいですね…」
しずく「私だってそうですよ?」
しずく「でもそれくらい熱くなれる物が身近にある方が楽しいですし幸せです」
しずく「あ、着きました!」 せつ菜「…ふふ」
しずく「?どうかされました?」
せつ菜「いえ、なんでもないですよ」
せつ菜「というか私へのプレゼントなのに私が一緒にいていいんですか?」
しずく「別にサプライズって訳ではありませんから」
しずく「それに一緒に過ごす時間も楽しくさせられればなって思って」
せつ菜「しずくさんらしいですね」
しずく「あ、でもプレゼントは私に選ばせてください」
せつ菜「もちろんです!しずくさんのプレゼントなんて嬉しすぎます!」
しずく「えへへ…ちょっと恥ずかしいですよ」
しずく「じゃあ早速買ってきますね!」
せつ菜「はい、行ってらっしゃい!」
かすみさんが好きになる理由、なんとなくわかる気がするよ。
私もあの笑顔があれば…
…違うよね。今日はその気持ちとお別れするために来たんだから。
せつ菜「…………」
せつ菜「すみません」
店員「何かお探しですか?」
せつ菜「何かものを書けるスペース、ありますか?」 ———
——
喜んでくれるかな。
もしかしたら怒られちゃうかな。
どちらにせよ私はこのくらいしかできない。
そもそもこんなにも楽しい時間の中でもかすみさんのことを想像すること自体がきっとおかしいんだ。
しずく「お待たせしました」
しずく「では…」
しずく「せつ菜さん、いつもありがとうございます!」
しずく「これからもよろしくお願いしますね!」
せつ菜「本当にありがとうございます!こちらこそよろしくお願いします!」
せつ菜「それで…私からもお礼がしたいんです」
しずく「そんな!いいですよ、私がお礼したかったからしただけで見返りなんて求めていません」
せつ菜「簡単なものなので受け取って欲しいです」
しずく「これは…なんですか?」
しずく「開けてもいいですか?」
せつ菜「あ!今はちょっと…家に帰ってからでいいですか?」
しずく「楽しみにしておきますね」
せつ菜「今度はどこに行きます?」
しずく「そうですね…」
しずく「せつ菜さんは何かありますか?」
せつ菜「私ですか?」
せつ菜「そうですね…結構お腹が空いてしまいました…」
しずく「せつ菜さんって甘いもの食べられますか?」
せつ菜「むしろ好きな方ですね!」
しずく「すごく美味しいお店知ってるので行きませんか?」
せつ菜「もちろんです!」 ───
──
せつ菜「……」
しずく「…………」
せつ菜「…あと…一口でしょうか…」
しずく「マウンテンパンケーキ、2人で食べようとしたの結構無謀でしたね…」
せつ菜「で、でも美味しいです!」
せつ菜「では最後の一口…」
せつ菜「…だめです、フォークを手に取るのが限界です…口に運べません…」
しずく「そのフォーク貸してください」
せつ菜「?どうぞ」
しずく「ありがとうございます」
しずく「はい、あーん」 せつ菜「?!しししししずくさん??!!」
しずく「私が口まで運んであげますよ?」
せつ菜「ええ?!ええ?!!」
せつ菜「いやそのでも、ええっと…間というか…時期というか…」
しずく「むぅ…」
せつ菜「ほっぺ膨らませながら見ないでください!」
しずく「せつ菜さんって意外とそう言うところあるんですね」
せつ菜「わ、分かりました!食べますよ!」
せつ菜「いただきます」
しずく「…ふふ」
しずく「どうですか?」
せつ菜「ただただ恥ずかしいです…///」
せつ菜「そういうのは…!まぁいいです」
せつ菜「ごちそうさまでした!」
しずく「ごちそうさまでした!」
せつ菜「次は…って、もう陽が落ちる時間ですね」
せつ菜「しずくさんのお家は神奈川なんですよね」
せつ菜「そろそろお開きにしましょうか」
しずく「そうですね…あっという間でした」
しずく「また遊びに行きませんか?」
せつ菜「もちろんです!」
しずく「いきなり誘ってしまってごめんなさい、次からは事前に連絡しますね」
せつ菜「そんなにかしこまらなくても…親友なんですから」
せつ菜「今度は私から誘っちゃいますよ?」
しずく「あははっ!せつ菜さんならいきなり誘われても絶対行きますね!」
せつ菜「今度は鎌倉とか紹介してほしいです!」
しずく「是非是非!」
しずく「ではまた明日!」
せつ菜「はい!」
せつ菜さんには悪いことしちゃったかな。かすみさんに見立ててたなんて口が裂けても言えないや。
かすみさんと一緒にやりたかったこと、もっとあったけれど…。
私の物語はこれでおしまい。これからはかすみさんとせつ菜さんの物語だよね。
しずく「…よし」
しずく「2人が幸せになれますように…」 ───
──
私の思い、届いたかな。
ちょっと殴り書きになってしまったのは仕方ない。
菜々「それにしても、プレゼントかぁ…」
菜々「2年生になってから、本当に人に与えられてばかり…」
菜々「ふふ」
菜々「ありがとう」
ガサガサと紙袋をの中を覗く。 菜々「わあ!素敵なマフ……ラ…………」
オレンジのマフラーが入っていた。
『かすみさんにはせつ菜さんしかいません。どうかお幸せに。』
小さいけれどとても凛々しい文章。心なしか少しだけ「幸」が滲んでいるように見える。
菜々「…え」
菜々「…なんで」
ああ。そうか。
彼女自身が恋心との訣別をしていたのに、私がまた引っ掻き回した。
私が2人を不幸にしてしまった。また。
菜々「あ、あぁ…」
菜々「ごめんなさい…ごめんなさい…」
ピロンピロンと着信音が鳴る。
菜々「もしもし…」
しずく「なにをしてるんですか!!!」
菜々「な、なにって…」
しずく「かすみさんを幸せにできるのはあなたしかいないんです!!!」
菜々「そ、それは違います」
しずく「ちが…!違くないですよ…!」
しずく「…私のことはいいですから」
しずく「…では」
菜々「……」
菜々「私、何してるんだろう…」
つー。つー。
ビジートーンが私の心をこれでもかと締め付けた。 ───
──
しっかりと私の声で伝えようか、スマホから伝えるか迷ったのですが…今日のしずくさんの綺麗な笑顔を見て、良い雰囲気のまま今日は別れたい。そう思ったので手紙として気持ちを伝えさせていただきます。
結論から言います。私とかすみさんは分かれました。
かすみさんが嫌いというわけではありません。彼女の素敵な笑顔や自らの理想の可愛いを求める姿を見ていると、私もしずくさんと同じ感情を抱かずにはいられませんでした。
同好会が私のせいで一時活動休止になってしまった時、真っ先に侑さん、歩夢さんの元に集まってくれたのはしずくさんとかすみさんだと聞いています。
侑さんのおかげで同好会は発足当時以上の勢いで活動を進めています。しかしそこまでに至るまでにかすみさん、しずくさんが盛り上げてくれたからです。本当に感謝しています。
その恩返し…と言っては語弊がありますが、私はしずくさん達に幸せになってほしいのです。
あなた方2人は幸せにならなければいけない人たちなのです。
私の好き以上にしずくさんの好きが大切にされてほしい。
しかし、それではかすみさんの気持ちが浮かばれない、しずくさんならきっとそう思うはずです。あなたは優しい心を持っているので。
その点に関しては私も罪悪感で胸がいっぱいでした。私を好きでいてくれる人はこの世界中でかすみさんだけしかいないのかもしれません。その心を裏切ってしまうのは非常に心が苦しくなりました。
しかしそれ以上に、私はしずくさんに幸せになって欲しかったのです。しずくさんのその気持ちが悲しいまま終わること…幸せではない人の横で幸せそうにかすみさんの手を取る私が許せなかったのです。
かすみさんも私の考えを理解してくれました。今思えば本当に申し訳ないことをしてしまいました。
でも、優しいですよね。本当に。
かすみさんもあなたを振ったことに対して罪悪感があったようです。同好会の部室でしずくさんがいない時、とても心配そうな顔をしていましたから。彼女はしずくさんのことを親友としてみてくれています。
だから…
もう一度しずくさんの気持ちを伝えてみませんか。
私の幸せはあなた方2人の幸せです。本当に、心の底からしずくさんには幸せになってほしい。
応援しています。どうかかすみさんとの記憶を沢山重ねていってください。
親友へ。 ───
──
侑「えー?!別れちゃったの?!」
かすみ「声が大きいですぅ!」
侑「《やりましたよ先輩!》って連絡くれたばっかりだったのに…」
かすみ「うう…でも仕方ないんです」
侑「もしかしてもう喧嘩しちゃったとか?」
かすみ「いえいえ!むしろ円満というかなんというか…」
歩夢「2日で別れたのに円満?」
かすみ「はい、一応笑顔で別れたので」
侑「ということはしずくちゃんではないんだね」
かすみ「まあ…しず子ではないですけど…」 かすみ「というかなんで知ってるんですか?!?!」
侑「演劇部の部長さんから『しずくがなんか変だよ、何かあったの?』って連絡きたんだよね」
侑「しかもしずくちゃんが部室から出て行った時、なんかかすみちゃんが怯えてたし」
侑「もしかしたらしずくちゃんと付き合ってたけど喧嘩別れしちゃったのかなーって」
侑「でもそういうことじゃないんだね」
かすみ「すごいですね…探偵になれるんじゃないんですか?」 侑「そう?じゃあ探偵として解決しないとねっ」
かすみ「侑探偵、私はどうすればいいですか?」
侑「うーーーーーーーーーーーーーん」
侑「歩夢はどう思う?」
歩夢「とりあえず…えーっと、かすみちゃんが付き合ってた子って誰のことなの?」
歩夢「教えてもらえたら私たちも解決しやすくなると思うけど」
侑「あ、そうそう!それ聞きたかったんだよね!」
侑「メッセでも《誰とは言いませんからね!》って言われちゃったし…」
歩夢「やっぱり教えられない?」
かすみ「…………」
かすみ「…隠してても意味ないですよね」 侑「それはかすみちゃん次第だよ」
侑「せっかく好きな人を隠しながら相談してたのに今更出すのもなって考えるのも良いし、私たちを頼って教えてもらってもいいよ」
かすみ「あの時は恥ずかしいから言えなかっただけなんです」
かすみ「そんな変なプライドのせいで仲直りが遅くなるなんて最低ですよね」
かすみ「…私が好きな人はせつ菜先輩だったんです」
侑「そうなんだね」
かすみ「せつ菜先輩はかすみんが好きな人の為に別れたいって…」
歩夢「他にかすみちゃんが好きな人がいるってこと?」
かすみ「そうです」
歩夢「…ちょっと納得したかも」
歩夢「他の子の幸せを願うってせつ菜ちゃんっぽいよね」
かすみ「せっかく教えたんですし探偵さんは絶対解決しなきゃダメですよ!」
侑「出来る限りのことはするけどかすみちゃん次第なことは忘れないでね?」
かすみ「はい、それはわかってます」 侑「じゃあ早速捜査を開始します!」
歩夢「シャーロック侑ちゃん、頑張って!」
侑「アユム・ワトソンくんもサポートよろしくね!」
歩夢「私が助手だなんて…サポートできるかな…」
侑「いてくれるだけで頭が冴えるから大丈夫!」
かすみ「依頼主の前でイチャイチャしないでください!」
侑「あははーごめんね」
侑「じゃあ何個か質問するね」
侑「かすみちゃんはせつ菜ちゃんの考えに納得できてないんだよね?」 かすみ「うーーん…正直よくわからないです…」
かすみ「もちろん振られちゃったことはすごく悲しいですけど、先輩がこれからも好きって言ってくれたのでそれはそれですごく嬉しいというか…」
侑「好きって気持ちで十分ってせつ菜ちゃんは思ったんだね」
歩夢「それでも2人は別れちゃったんだね…」
かすみ「『わがままを聞いてくれますか?』って言われたら断れませんよ…」
侑「まあ起きちゃったことは今更変えられないよ」
侑「せつ菜ちゃんとはこれからどうしたいの?」
かすみ「んー…」
侑「やり直したい?」
かすみ「…あの子の気持ちを思うと、今からやり直しても後ろめたさがあります」 侑「なるほどね」
侑「『あの子』ってしずくちゃんのことかな?」
かすみ「…誰にも言わないって、約束してくれますか?」
かすみ「しず子のくれた精一杯の気持ちは大切にしたいので、かすみん以外に知れ渡ってほしくないんです」
侑「うん、約束」
歩夢「絶対言わないから大丈夫だよ」
歩夢「まずはしずくちゃんとの関係を直すのが先なのかな?」
かすみ「そうですね」
かすみ「しず子とは変な感じで別れたままなので友達としてまた接したいです」 歩夢「でもせつ菜ちゃんはしずくちゃんとかすみちゃん2人が幸せになって欲しいって思ってるんだよね?」
かすみ「はい…」
侑「かすみちゃんはさ、しずくちゃんのこと、好き?」
かすみ「…それはあれですよね」
侑「うん、恋愛対象として」
かすみ「……」
かすみ「わかりません」
かすみ「本当にわからないんです」
かすみ「せつ菜先輩のことは好きです、この気持ちは変わらないと思います」
かすみ「だけどしず子に好きって言われた時、しず子と一緒にいたら絶対幸せなんだろーなーとも思っちゃったんです」
かすみ「…これって好きっていう気持ちなんですか?」 侑「うーん…」
歩夢「私はその気持ちも好きの形だと思う」
歩夢「突き詰めたらそれも好きって気持ちじゃないかな?」
歩夢「友達と一緒にいて『楽しい』じゃなくて『幸せ』って考えるのはかすみちゃんが心のどこかでしずくちゃんを気に掛けてたんじゃないかな」
かすみ「そういうものなんですか…」
歩夢「じゃあもし私とずーーーーっと一緒にいるってなったら幸せ?」
かすみ「え?!えぇっと…」
歩夢「大丈夫だよ、正直に答えて欲しいな」 かすみ「多分一緒にお料理したり、お出かけしたりするのはすごく楽しそうです」
かすみ「でもせつ菜先輩とかしず子と同じくらいかって言われると…」
かすみ「ごめんなさい…あんまりいい言葉が見つからなくて」
歩夢「ううん、全然大丈夫」
歩夢「正直に答えてくれてありがとう」
歩夢「でもこれでちょっとはわかったかな?」
かすみ「私がしず子のことが好きなこと、ですか?」
歩夢「うん!」
かすみ「…ほんのちょっとだけわかった気がします」
かすみ「まだまだそんな実感がなくて」 歩夢「人から言われただけじゃなかなか実感が湧かないよね」
歩夢「ゆっくりでいいから自分で自覚することって大事だよ」
侑「歩夢…すごーい…」
歩夢「えへへ…」
侑「じゃあそのことはかすみちゃんが追々解決していくとして…」
侑「次はしずくちゃんとまた仲良くしたいって悩みを解決しなきゃね」
かすみ「そうですね」 侑「仲直りって言ってもかすみちゃんは別に悪いことしたわけじゃないと思うんだけどなー」
かすみ「…しず子にとっては悪いことですよ」
侑「もちろんその結果はしずくちゃんにとって欲しいものじゃなかったとは思うよ」
侑「でもしずくちゃんの気持ちに応えてあげたっていう行為自体は悪いことじゃなくない?」
侑「そのまま答えを有耶無耶にしてせつ菜ちゃんと付き合う方がよっぽど悪いことだよ」
かすみ「そんなことはしませんよぉ!それだけはだめですよ」
侑「そう!そこそこ!」
侑「その時点でかすみちゃんはなるべくしずくちゃんが傷つかないような行動をしたってことじゃないかな?」 かすみ「でもそれにしず子と仲直りするヒントなんてあります?自分の気持ちを正直に伝えるって当たり前のことじゃないですか」
侑「まあそういう捉え方もあるかもしれないけど…」
侑「かすみちゃんの行動は無意識に『相手の気持ちをちゃんと考えられる』っていうことなのかなーって思ったよ!」
侑「私はよく1人で突っ走っちゃうタイプだからさ、そういうのはすっごくかっこいいと思うしかすみちゃんの長所だよ!」
かすみ「ポジティブすぎません?」
かすみ「第一同好会が活動休止になっちゃったのはかすみんがせつ菜先輩の気持ちを考えられなかったのがいけなかったんですし…」
歩夢「その出来事があったから相手の気持ちを考えられるかすみちゃんになれたんじゃないかな?」
侑「きっとそうだよ!かすみちゃんは自分が思ってる以上に成長してるんだと思う!」 かすみ「お二人に言われると…えへへ」
かすみ「そんな気がしてきました」
侑「人の気持ちを考えられるいつも通りのかすみんならきっと大丈夫」
かすみ「いつも通り…」
歩夢「いつも通りしずくちゃんに話しかけていつも通りお出かけに誘ったり一緒に帰ったりすればいいんじゃないかな?」
かすみ「…少し怖いです」
歩夢「拒絶されちゃうかもってこと?」
かすみ「はい、かすみんにそんな権利あるのかなって」
歩夢「でも仲良くなれなかったらせつ菜ちゃんの願いが叶わなくなっちゃうんじゃないかな」
侑「せつ菜ちゃんのことを想うなら頑張らないといけないよ?」
侑「かすみちゃんのためにも、大好きな人の為にも、親友の為にも、ね?」
かすみ「……はい」
かすみ「悩んでるのは私だけじゃないですもんね」
かすみ「明日の同好会で仲直りできるといいなあ…」 他に好きな人がいるからごめんなさいというのはよくあることだしねえ ───
──
これからかすみさんにどう接していけばいいんだろう。
かすみさんにとっては『せつ菜さんとの関係を壊してしまった人』か…。
嫌だなあ。こんなとこになるならしなければよかった。
しずく「…………」
かすみさんの笑顔ってどんな顔だったっかな。
心の底から私に笑いかけてくれてたのかな。
もしかしたら私がかすみさんのためにやってたことって本当にかすみさんのためだったのかな。
迷惑だったよね。きっと。 璃奈「しずくちゃん、大丈夫?」
しずく「ん?大丈夫だよ」
璃奈「嘘はやめて」
しずく「あはは…」
しずく「…ちょっと疲れちゃったかな」
璃奈「ちゃんと寝れた?」
しずく「あんまり」
璃奈「じゃあ私のここ、使って」
しずく「さ、流石に膝枕は恥ずかしいよ…//」
璃奈「彼方さんは幸せそうにしてるよ」
璃奈「もしかしたらしずくちゃんも元気になれるかも」
しずく「うん…」
しずく「じゃあちょっとだけ」
璃奈「うん」 璃奈「辛かったら、話さないとダメ」
しずく「うん」
璃奈「私を頼ってほしい」
しずく「うん」
璃奈「…………」
しずく「かすみさんとせつ菜さんが付き合ってたの、知ってる?」
璃奈「そうなんだ…知らなかった」
しずく「でも別れちゃったんだって」
璃奈「急だね」
しずく「うん」
しずく「別れちゃった原因を作ったのは私なんだけどね」 璃奈「え?」
しずく「せつ菜さんってばすごく優しいんだよ?」
しずく「『私に幸せになって欲しいからかすみさんと別れた』って」
しずく「ねえ璃奈さん、私、どうすればいいかな?」
しずく「かすみさんにも嫌われちゃうし、せつ菜さんには気を遣わせちゃうし」
しずく「璃奈さんとか果林さんにも心配かけちゃったし」
しずく「どうすればいいかな」 璃奈「どうすれば…………」
しずく「…」
しずく「あはは…」
しずく「ごめんね、変なこと聞いちゃって」
しずく「もう少しだけこのままでいていい?」
璃奈「うん、何時間でもいいよ」
しずく「ありがとう…」 ───
──
璃奈「…………」
「どう?」
璃奈「寝てる」
璃奈「すごく疲れてた」
愛「まあそうだよね…」
愛「りなりーは何かアドバイスできた?」
璃奈「…全然」
愛「そっか」
璃奈「人の気持ちを考えて、その人のために行動するなんてこと、私にはできない」
璃奈「だからあの時も、私は逃げちゃった」 愛「あの時?」
璃奈「しずくちゃんが悩んでた時に、かすみちゃんだけに任せちゃって…」
璃奈「私は何もできないって思って、逃げちゃった」
璃奈「ボードで隠しちゃった」
璃奈「あの日からしずくちゃんとかすみちゃんってすごく仲が良くなった気がするし、今思うとあれがきっかけだっなのかなって」
璃奈「私も行ってあげればこんなことにならなかったのかな」
愛「それは反省しちゃいけないよ?好きになる気持ちは全然悪いことじゃないしね」
愛「というかそれでりなりーは1人で解決したいって思ってたの?」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています