千砂都「そろそろバレンタインだけど」 恋「はい」
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千砂都「恋ちゃんは誰かにあげる予定とか、ある?」
恋「ありますよ」
千砂都「へえ〜、誰?」
恋「千砂都さん」
千砂都「私かあー、それはそれは」
恋「あとはかのんさんと可可さんとすみれさんと」
千砂都「うん」
恋「サヤさん。最後にチビですね」
千砂都「納得のラインナップだね」
恋「千砂都さんはどうなのですか?」
千砂都「私も恋ちゃんと似たような感じかなー」
恋「ですよね」
千砂都「ですです」 千砂都「せっかくのバレンタインだけど、特に力入れる必要もないかなっていう」
恋「意中の人にもそうなのですか?」
千砂都「いないからこんなこと言ってるんだってば」
恋「成程、そういうことでしたか」
千砂都「ねえ、分かってて聞いたでしょ」
恋「すみません、どうしても確認したかったものですから」
千砂都「そんなに?」
恋「ええ、だって私一人だけだと寂しい女みたいに思われて嫌じゃないですか」
千砂都「そこで同類を見つけるっていう発想がもう侘しいけどね……」
恋「なにか?」
千砂都「いいや、何も」 千砂都「でもさあ恋ちゃん」
恋「はい?」
千砂都「そんなこと言ったら友チョコで終わらせる子みんな寂しい女になっちゃうじゃん。恋ちゃんちょっと考えすぎだよ」
恋「そうでしょうか」
千砂都「もっと前向きに考えたら? あ、そういえばさ」
恋「どうかしましたか」
千砂都「いや、渡す人たちのことなんだけどさ、音楽科の人たちはいいのかなって」
恋「私ですか?」
千砂都「うん」
恋「そうですね……最初は皆さんにも贈ろうかとも考えていたのですが」
恋「流石にそこまで手を伸ばすと身が持ちませんので」
千砂都「あー、それもそうだねお金もかかっちゃうし」 恋「ですから、本当に渡したい人にだけ贈ろうかと思いまして」
千砂都「つまり、恋ちゃんにとって特別な人ってこと?」
恋「まあ、つめていくとそうなりますね」
千砂都「それって充分すぎる理由だと思うけどなあ、全然寂しくないじゃん」
恋「ふふっ、本当ですね」
千砂都「いや本当ですねって」
恋「もしかしたら私、ただ構ってもらいたかっただけなのかもしれません」
千砂都「構うって、私に?」
恋「こんなこと話せるの、千砂都さんくらいしかいませんから」
千砂都「まあうん、それはいいんだけどさ」
千砂都「構われかたが遠回しすぎてもはや寄り道だったよね。恋ちゃん」
恋「それはごめんなさい」クスクス
千砂都「なんだかなあ……」 千砂都「でも良かったね」
恋「はい?」
千砂都「充実したバレンタインになりそうで」
恋「千砂都さんは違うんですか?」
千砂都「あはは、最初はそんなつもり全然なかったんだけどね」
千砂都「でもさっきの話聞いてたら、なんかね」
千砂都「私恋ちゃんみたいにそんな深く考えてたわけじゃないしなーって」
恋「なんとなくでもいいと思いますが」
千砂都「それはね。ただ何となく引っかかっちゃって」
千砂都「本当に好きな人でも出来たら、少しは変わったかもしれないけど」
恋「構ってあげましょうか?」
千砂都「いいよ、もう間に合ってるから」
恋「そうですか、残念です」
ビュウゥゥゥ……
恋「風が強くなってきましたね」
千砂都「そうだね、それにちょっと寒くなってきたかも」
恋「そろそろ帰りますか?」
千砂都「んー、まだいっかな」
恋「そうですか」
ヒュウゥゥゥ…
千砂都「恋ちゃんは帰らないの?」
恋「私もまだいいかなって」
千砂都「あ、そう」 恋「あの、千砂都さん」
千砂都「ん?」
恋「一つ提案があるのですが、バレンタインの当日もこうして二人で会えませんか?」
千砂都「また唐突だね」
恋「話の流れにはちゃんと乗っていますよ?」
千砂都「それはそうだけども」
恋「駄目でしょうか」 千砂都「いいよ。多分やることないだろうし、二人で会うくらい」
恋「ありがとうございます」
千砂都「どういたしまして」
千砂都「……ね、一応聞くけどさ」
恋「はい」
千砂都「あー…ごめん、やっぱりいいや」
恋「いいんですか?」
千砂都「うん、無駄に期待とかしそうだから」
恋「何を?」
千砂都「色々と」
恋「私は期待してますけどね、千砂都さんに」
千砂都「あはは、恋ちゃんそれかなりプレッシャー」 千砂都「まあでも、アレだね」
恋「?」
千砂都「恋ちゃんのおかげで少し楽しみになってきたかも、14日」
恋「それはなによりです」
千砂都「ねえ、せっかくだから帰る前にちょっと寄り道していかない?」
恋「ええ、いいですよ」フフッ
千砂都「えっ、なにその笑い」
恋「いえ、やっぱり構ってほしかったのかなと」
千砂都「気が変わったんだよ、多分」
恋「お付き合いしますよ」
千砂都「それはどうも、お世話になります」
恋「いえいえこちらこそ」
……
…
それから数日後……
千砂都「……ねえ恋ちゃん」
恋「はい」
千砂都「終わったねー、バレンタイン」
恋「そうですね」
千砂都「なんだかんだでもう放課後だよ放課後」
恋「日も暮れてきましたしね」 千砂都「なんかさ」
恋「はい」
千砂都「予想通りって感じだったね」
恋「淡々と終わっていきましたね」
千砂都「私としてはもっとこう、何かあるかなーとか思ってたんだけど」
恋「でも告白した生徒だっていたじゃないですか」
千砂都「知り合いじゃないからいまいちね、あーでも」
千砂都「すみれちゃんと可可ちゃんのやつはちょっと面白かったなあ」
恋「あの二人らしいやり取りでしたね」
千砂都「ねー」 千砂都「あとあれ、かのんちゃんから貰ったチョコレートケーキ」
恋「とても美味しそうでしたよね」
恋「しかしまさか、お店の試作品を手渡してくるとは思いませんでしたが」
千砂都「案外その辺りちゃっかりしてるからね、かのんちゃんは」
恋「後で感想を送りましょうか」
千砂都「だねー」 千砂都「でさー、最後に恋ちゃんだけど」
恋「はい」
千砂都「私まだ貰ってないよね?」
恋「私も千砂都さんからまだ何も頂いていませんが」
千砂都「だって二人で会うって言うからさ」
恋「私も同じですよ」
千砂都「ふーん」
千砂都「ね、なにくれるの?」
恋「あなたのほうこそ、何を用意したんですか?」 千砂都「私は別に、手作りとかそういうのでもないし。市販のものだから」
千砂都「下手にハードル上げられても困るんだけど」
恋「私もそれで特別見繕ってきたわけではありませんし、お互い様です」
千砂都「じゃあ勿体ぶらなくてもよくないかな?」
恋「それはこちらの台詞です」
千砂都・恋「…………」
千砂都「…同時に出そうか」
恋「…ええそうしましょう」 千砂都「いくよ、せーのっ」
千砂都「はい」
恋「はい……これは、チョコレートですか?」
千砂都「バレンタインだしね、ストロベリーチョコホワイト」
恋「初めて聞きましたね」
千砂都「フリーズドライのいちごにホワイトチョコをコーティングしたものだよ。恋ちゃん好きそうかもなあーって思ったから」
恋「…高かったのでは?」
千砂都「自分で頂く分にはね、でも相手にあげるとなったらまあ普通じゃない?」
恋「気持ちは分からなくもありませんが……」
千砂都「じゃあ気持ちとして貰っておいてよ」
恋「はい、ありがたく頂きます」 千砂都「恋ちゃんのこれは……花、だよね?」
恋「ええ、ちなみに何の花か分かりますか?」
千砂都「えっと……自信ないけど、パンジー?」
恋「惜しいですね、この花はビオラというんですよ」
千砂都「へえ、ビオラかあ。知らなかったよ」
恋「色も千砂都さんのイメージカラーに合わせてピンクを選んできました」
千砂都「さすが、恋ちゃんはしっかりしてるねえ」
千砂都「でも、他の皆にはチョコレートだったのになんで私だけ?」
恋「たまにはそういった形の贈り物もいいかと思いまして」
千砂都「ふーん、そういうものかな」 千砂都「だけど、うん。色も形も綺麗だし私は好きだなビオラの花」
千砂都「バレンタインに花っていうのもそれはそれで恋ちゃんらしいしね」
恋「喜んでもらえてよかったです」
千砂都「ほんと、プレゼントにお花っていつぶりだろう」
千砂都「……花言葉」
恋「え?」
千砂都「ああいや、こういうのって大抵花言葉とセットで贈られたりするからさ。ちょっと気になって」
恋「ああ、そういうことでしたか」
恋「ピンクのビオラの花言葉は"信頼"らしいですよ」
千砂都「あはは、ますます恋ちゃんらしいや」 千砂都「そうだ、どうせならさ恋ちゃんもそれ一口食べてみてよ」
恋「はあ、ではお言葉に甘えてひとつ……」ガサッ
恋「…………」パクッ モグモグ
千砂都「どう? お味のほうは」
恋「そうですね……」
恋「とても甘酸っぱくて、好きになりそうですよ」
千砂都「なりそうじゃなくて、好きになってほしいんだけどなあ」
恋「ふふっ、それなら心配しなくても大丈夫ですよ」
千砂都「ならいいんだけど」 千砂都「あ、それとさ恋ちゃん、この後用事とかある?」
恋「いいえ、特にはありませんが」
千砂都「良かった、ちょっとこの花飾るの手伝ってほしくて」
恋「私にですか?」
千砂都「やっぱり貰ったからにはちゃんと見えるところに置いておきたいし、それに」
恋「それに?」
千砂都「花は味わうものじゃなくて、愛でるもの。だからね」ニコッ
恋「……」
千砂都「ね、一緒に来てよ恋ちゃん」 恋「…ええ、いいですよ」クスッ
千砂都「嬉しそうだね」
恋「それほどでもありませんよ?」
千砂都「どうだかなあ」
恋「嬉しいというよりは楽しみですので」
千砂都「……あ、そう」
恋「やられたって顔に書いてありますよ」
千砂都「見間違いだよ、きっと」
恋「かもしれませんね、あっ少し寄り道でもしていきますか?」
千砂都「いや、いいよ」
千砂都「もう間に合ってるから」 分かってると思うけどチビにチョコあげちゃダメだぞ恋ちゃん かのすみは爛れた感じなのにこの二人はなんか爽やかな感じ いつものちされん高級ナポリタン乙
やっぱ台詞回しとかやりとりの雰囲気めっちゃ好きだわ ビオラ(ピンク)の花言葉:
「私を想って」「少女の恋」「信頼」 「私を想って」の花言葉に対して出した答えが花は味わうものじゃなくて愛でるものなのか ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています