穂乃果「シンクロニシティ?」
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「はぁ……ことりはすぐ早とちりするんですから…」
「ご、ごめんね。だってUちゃんとあんまり遊べなくなるのかなって思ったら、つい…」
「私があなた達を蔑ろにするわけないでしょう」
「Uちゃん…」
やっぱりUちゃんは優しいです。
でも、たった一つのヘアピンで勝手に勘違いして落ち込んでーーーことりはいつになったら幼馴染離れできるのでしょうか。少し心配になりました。 「あと、そのヘアピンは捨ててください」
Uちゃんの発言に、は思わず耳を疑います。
「ええっ?す、捨てるなんていいの?それに、誰のでもないってどういうこと?」
「………少々、現実味に欠けるのですが、」
Uちゃんは眉間にシワを寄せて、なんだか難しい顔をしているけど、そんな表情も素敵です♪
じっと続きを待っていると、Uちゃんはゆっくり口を開きました。
「ーーーー高校に入った直後から、部屋の中でヘアピンが湧くようになったんです」
「初めは、Hかことりのモノだと思っていたのですが、余りに回数が多いので気味が悪くなって捨ててしまったんです」
「でも何度捨てても、気づくと必ずヘアピンが落ちているんです」 Uちゃんの話は、たしかに現実離れしていました。
ヘアピンが湧くだなんて、聞いたこともありません。
私が突然のオカルト話に戸惑っていると…
「ことり、ゴミ箱を見てみてください」
「ーーーえ??う、うん…」
言われた通りにUちゃんの部屋のゴミ箱を覗いてみるとーーー
「ひっ…!」
そこにはおびただしい数の黒いヘアピンが入っていました。
「ど、どういうことなの…?」
「毎日どれだけ念入りに掃除をしても、必ず見つかるんです。面倒なので、今は見つけ次第ゴミ箱に投げ入れています」
「えぇ……」
この謎の怪奇現象にもびっくりだけど、Uちゃんの順応力にもびっくりだよぉ… 「でもこのヘアピン、Uちゃんのお部屋以外では見つからないんだよね?」
「ええ。どうやらヘアピンが湧くのは私の部屋だけみたいです」
困った、というよりはもはや辟易している様子のUちゃんに思わず苦笑いが漏れます。
私だったら怖くなって、一人で部屋にいられないかもしれない。
改めて、Uちゃんはすごいなぁと思いました。 「お邪魔しま〜す」
「おっじゃましまーす!」
「二人とも、いらっしゃい」
あれから一年経ちますが、Uちゃんの部屋はすっかり元通りになりました。
もうあの大量のヘアピンを見なくて済むと思うと、心底ホッとします。
ーーーもしかしてあれは、Uちゃんに惚れちゃった幽霊さんの仕業だったのかも?
そう思うと、少しだけ、ほんのちょっとだけ可愛く思えます。
でも一番問題なのは……
Uちゃんったら、お部屋が元に戻ったことを教えてくれなかったんです!
Uちゃんは「心配をかけたくなかったから」なんて言っていましたが、ことりと後から事情を知ったHちゃんはカンカンでした。
私たちスーパー幼馴染に隠し事は不要なのです♪
終わり ホラーというわりに最新2話以外ホラーみがないのはな……別にいいけど
盛り上がりに欠けるからもう少し山場作った方がいいかも このオムニバス形式のモヤモヤが最後の話で繋がるとか?
別にそうじゃなくても全然構わないけど >>78
それは俺も書いてて思った
基本題材の話通りに書いてるんだが、ヤマオチの部分を改変してみようと思う。技術的に難しいかもしれんがorz貴重な意見ありがとう >>79
すまん特には考えてない
もう少し構想ちゃんと練ってみるわ 好きに書いてくれていいんやで
萎縮して配慮したようなもの出されても困るし
俺が面白いと思うものはこれだ!ってぐらいで丁度いい
SSスレなんてそれでいいんだよ 穂乃果「留守電」
ウチのお店ね、穂乃果が一人で留守番してる時に限って、よく電話が鳴るんだ。
穂むらは古くからある老舗の和菓子屋だから、店内の電話は昔ながらの黒電話なんだ。
ジリリリーンっておっきい音が鳴るもんだから、近くにいたら思わず飛びあがっちゃうくらい。
電話機はレジに近い茶箪笥の上にあるんだけど、本当に音が大きいの。ニ階にいてもベルの音が聞こえるから参っちゃうよ。もう、何度昼寝を邪魔されたことやら… しかもね、穂乃果がお店まで降りてきて、受話器を取ろうとすると切れちゃうんだ。
ひどいと思わない!?
頑張って昼寝から起きてきたっていうのにさ!
でも不思議なのは、その悪戯電話は決まって穂乃果が一人の時にかかってくるんだ。
電話機の故障でもないし、お母さんや雪穂がいる時はかかってこないから信じてもらえないし…
あーんもうモヤモヤするよ! ーーーー
今日はお母さんもお父さんも出掛けてて居ないし、雪穂は塾で帰りが遅くなるから、穂乃果は一人ぼっちで店番です。
今の時期はそこまで忙しくもないし、お茶を啜りながらのんびり過ごしてたんだ。
ジリリリーン
穂乃果「うわっ」
電話が鳴ったのは、ちょうど日が暮れてきた夕方。
穂むらは店舗スペースが住居より一段低い土間になってるから、冬はすごく寒いんだよね。 穂乃果「もう、また〜?」
寒いからあんまり動きたくないんだけど、お客さんからの電話だったらいけないから、のそのそ電話機の前まで向かう。
穂乃果(……また悪戯だったらやだな〜)ガチャ
穂乃果「お電話ありがとうございます!穂むらです」
『…………』
受話器の向こうから聞こえるのは、沈黙。
穂乃果(またかぁ…)ハァ
いつもの悪戯電話みたい。
もう、こんな時までやめてほしいよね。 穂乃果(あれ?)
普段だったらすぐに切れるはずなんだけど、今日はずっと繋がったままだから、少し不思議に思ったの。もしかしたら、本当にお客さんなのかも。
穂乃果「もしもし?あの、ご用件は…」
『………』
受話器の向こうに気配はするけど、声は聞こえない。
穂乃果「あの〜、電話機の調子が悪いみたいなので、失礼します…」ガチャッ
穂乃果(あーあ、結局いつもと同じパターンかぁ…)
ため息をついて、ストーブの前に戻ろうと歩き出したところで
ジリリリーン
穂乃果「っ」
またベルが鳴る。 穂乃果(もう〜!!)ガチャ
穂乃果「もしもし、穂むらです」
『………』
やっぱり相手の声は聞こえない。
穂乃果「もしもし!!」
苛立ちまぎれに大きな声を出したら、受話器からザザッというノイズが聞こえてきた。
『……お姉ちゃん』
穂乃果「あれ、雪穂!?」 いつもと声が違う気がしたんだけど、穂乃果のことお姉ちゃんって呼ぶの、雪穂しかいないし…
もしかして、今までの全部雪穂の悪戯だったのかも!
そう思うと、怯えてたのが馬鹿らしくなっちゃった。
穂乃果「もう、悪戯はやめてよねー。そうだ、後で雪穂にもおかえししちゃうんだから!」
うひひ、お姉ちゃんを舐めたら痛い目みるぞ〜
でも、返事は返ってこない。
穂乃果「雪穂?」
『……もうすぐ帰る』
穂乃果「およ?今日は随分早いんだね」
『……もうすぐ帰るから』
穂乃果「わかったよ。ねえねえ、帰ってきたら店番変わってよ、お願い!」
『……帰るから、入れてね。お姉ちゃん』
穂乃果「…雪穂?」
雪穂、勉強の疲れで穂乃果の話全然聞いてないみたい。もう、世話が焼けるんだから。 穂乃果「それはもう聞いたってば。ていうか、雪穂だって家の鍵持ってるでしょ?」
そもそも、お店から上がってくればすぐなのに。
今日の雪穂、変なの。
そう思っていた時、お店の引き戸がガラガラと開く音がした。
穂乃果「い、いらっしゃいまーー」
海未「お邪魔します」
ことり「こんにちは〜」
雪穂「ただいま〜」
穂乃果「海未ちゃんことりちゃん!?雪穂も!?」
海未「途中で雪穂に会ったので、一緒に来たんです。最近は物騒ですから」
ことり「ふふ、雪穂ちゃんがね、穂乃果ちゃんの恥ずかしいエピソードをーーー」クスクス
雪穂「わー!わー!秘密って言ったじゃないですか!バラすの早すぎますよ!!」アセアセ なーんだ。お客さんかと思ったら全然違ったみたい。
穂乃果(ーーーーって、あれ?)
穂乃果は雪穂と電話をしてて、でも雪穂は目の前にいて…
うーん??パニックで頭がくらくらしちゃう。
海未「穂乃果…?」
雪穂「お姉ちゃん?」
ことり「あ、穂乃果ちゃん電話中だったんだ。ごめんね?」
みんな私が受話器を持って固まっているから、不思議そうな顔をしてる。
あれ、電話は… 穂乃果「ッ」
ハッとして、手に持っていた受話器をもう一度耳に当てた。
『ーーーから、おねえちゃん、もうスグカエルから、いれて、ね、イレテ、ネ』
電話の向こうで、声は早口に同じセリフを繰り返していた。
終わり 海未「よもつひらさか」
プシュー
海未「やっと着きましたね…」
朝のうちに東京を出たというのに、目的の駅に着く頃には既に日は高くなっていました。
降りる人もほとんどいない寂れた無人駅。
私は重厚なリュックを背負うと、早速歩き始めました。
海未「山頂アタックです!!」
園田海未、今年の夏最後の山登りです。 ーーー
海未(東京よりもかなり涼しいですね…)
まだまだ残暑が厳しい東京と比べて、ここでは既に秋の気配が漂っていました。
周辺が畑ばかりの一本道をしばらく歩き続けていると、林の方へと伸びるなだらかな坂道に出ました。登山口に繋がる道というのはここのことでしょう。事前にしっかりと地理を調べていたので、迷うことはありません。
海未「おや…」
地図で見た時は特に名前は書いていませんでしたが、坂の上り口に、石の道標のようなものが立っています。
海未(……『ひらさか』?) 私はそれに近づいてじっくりと見てみました。
所々苔の生えた石には、「ひらさか」と平仮名で刻まれていました。
海未(平らな坂で『ひらさか』でしょうか?)
なぜか妙に興味を惹かれた私は、しゃがみ込んでその石標をまじまじと眺めます。
海未(……しかし、その割には上にまだスペースがありますね…)
海未(まるで、長年の雨風によって風化したような…)
海未(なんと書いてあるのでしょうか…)
海未「ーーつ、ひらさか?」 顔を近づけ一生懸命読み取ろうとすると、辛うじて「つひらさか」とまで読むことができました。しかしそこから上は苔に覆われていて、読むことは叶いません。
海未(……つひらさか、つひらさか)
海未(どこかで聞いたことがあるような…)
木々の隙間から差し込む太陽が、私の頭皮をジリジリと焼いていきます。なんだかぼんやりする思考の中、私は魂が抜けたように石標を見つめていました。
海未「…!」ハッ
汗が顎をつたい、ぽたりと下に垂れたのにハッとして、慌てて立ち上がります。
海未(いけない、早く行かなければ…!) その瞬間。
海未「ーーー」フラッ
ぐらりと視界が傾き、景色が歪む。
思わず膝から崩れ落ち、その場にしゃがみこんでしまいます。水分は摂っているつもりでしたが、熱中症か貧血でも起こしてしまったようです。
海未「ーーーう、ぐ…」
海未(……園田海未、一生の不覚です)
普段から鍛えていても、こうも容易く人間は動けなくなるものなのですね。頭の中がぐるぐると掻き回されているような奇妙な感覚。おまけにむかむかと吐き気までが襲ってきます。
海未「うう……」グッタリ 「ーーーどうかされました?」
今日は帰った方がいいかもしれない、と諦めかけていると、頭上から優しい声がしました。
海未(……?)
ゆるゆると顔をあげると、目の前には一人の女性が立っていました。心配そうな表情でこちらを見つめています。
海未「ーーー少し、立ちくらみがしまして…」
人に見られているということを認識すると途端に恥ずかしくなって、すぐにでも立ち去りたくなりますが、体が思うように動きません。 「大丈夫ですか?」
海未「すみません、ありがとうございます…」
女性はかがみこんで私の背中を摩ってくれました。
そして、肩にかけていた上品な鞄から小ぶりな水筒を取り出すと、蓋をあけて私に差し出してきました。
「これ、まだ口をつけてないので飲んでください」
海未「しかし…」
「飲んでください」
私はおずおずと水筒を受け取ると、慎重に口を付けます。
水筒の水はなまぬるく、妙に甘い味がしました。 気づけば私はゴクゴクとはしたなく喉を鳴らして、水筒の中身を飲み干してしまったのです。こんなに喉が渇いているのに気づかないとは、恥ずかしい限りです。
女性に背中を摩られているうちに、私の気分はようやく良くなりました。
海未「ありがとうございます。もう、平気ですので」
「よかった。この先に御用ですか?」
海未「えぇ。この坂の先が登山コースの入り口と聞いたので」
「山ですか。山はいいですね」
海未「はい。特にこの時期は登りやすいので」
女性は目をキラキラさせて言いました。
「私もこの先に用事があるんです。せっかくなので、ご一緒しても?」
海未「ーーあ、えと、はい…」
「ふふ、ありがとう」
女性はにっこりと微笑んでいます。 海未(なぜでしょう……この人は、どこか懐かしい雰囲気がします)
海未(あぁ)
海未(ーーーことりや希に似ているんですね。おっとりとして、いつも笑顔でーー)
「お嬢さんのお名前は?」
海未「あ…」ハッ
海未「そ、園田海未と申します。先程はお世話になりました」
「ふふ。しっかりしていますね」
海未「いえ、そんな…」 褒められたことが恥ずかしくて、俯いてしまいます。私は何も言うことが出来ず、互いに沈黙したまま坂を上り続けます。正直言って、気まずいです。
海未「……長い坂ですね」
「そうですか?もう少し行くと、石の道標が見えてきますよ。そこが坂の終わりです」
海未「ーーー道標、ですか…」
海未(…そういえば)
海未「来る時にもあったような…」
「ええ」
私はふと、あの苔に覆われた石柱のことを思い出しました。
海未「あの、この坂はひらさか、というのですか?」
「あぁ。地元の人はみんなひらさかと呼びますよ」
「最も、本当の名前はよもつひらさか、というんですけど、長いのでね」
海未「ーーーよもつ、ひらさか…」 そう言われて、私はようやくこの坂の名前と、それにまつわる伝説を思い出しました。どうやら今日の私は察しが悪いようです。
黄泉比良坂。
下っていけば、黄泉の国へと至る坂。
古事記の中の話は、確かこうでした。
国造りの最中にイザナミが亡くなり、夫であるイザナギは黄泉の国まで降りていきます。
しかし、イザナミはその国の食べ物を口にしてしまっていたので、現世には帰れないというのです。 その後、夫に強く説得されたイザナミは黄泉の国の神と話をしに行きます。その間、絶対に私の姿を見てはいけないと夫に忠告を残して。
しかしその言いつけを破ったイザナギは、醜く腐った蛆だらけのイザナミの姿を見てしまいます。
怒ったイザナミは亡者の軍隊を引き連れて、黄泉比良坂の入り口までイザナギを追いかけます。かろうじて逃げ切ったイザナギは、坂の入り口を巨大な岩で塞いでしまったのでした。以来、生者の世界と死者の世界が二つに分かれたという話です。 海未「しかし、なぜここがそんな名前なのでしょう」
「………出るんですよ」
海未「え?」
女性は微笑みながら、かわいらしい声で言いました。
「亡者が、ね…」
海未「亡者…」
私がポカンとしていると、女性はクスクスと笑いました。 「そうだ」
海未「?」
女性はガサゴソと鞄を漁ると、銀紙に包まれた薄い長方形のものを取り出した。
「ガム、いかがですか?」
海未「!」
海未(……確か、伝説では)
私は本に書いてあった伝説を思い出しました。
『 黄泉の国のものを口に入れてはいけない。なぜなら、黄泉の国で飲食したは、そこの住人になってしまうから。』
海未(ーーー亡者から差し出されたものを飲み食いしてはいけない…) 目の前の女性はどう見ても実態のある人間だというのに、なぜか嫌な予感がしました。
海未「い、いえ。結構です」
「あら、私は亡者ではありませんよ?」
女性はクスクスと笑っています。
海未「そんな、疑ってなんて」
私は弁解をしようと慌てます。
「このガムには助けられました」
海未「ーーーえ?」
海未(助けられた、とは…) 「沢に落ちたんですよ、この間」
海未「それは……大丈夫でしたか?」
「ええ。なんともありませんでしたよ」
海未「はあ…」
海未(……何が言いたいのでしょう)
また二人の間に沈黙が訪れて、私は居心地の悪さに足を早めます。
「足が折れてましてね。あの時は本当に参ってしまいました」
海未「っ」 海未「でも、さっき、なんともなかったと…」
「両足を骨折したんですよ」
海未「え、いや、でもさっきは」
「いえ、両足を骨折したって言ったじゃないですか」
海未「………」
女性は微笑んでいます。
「困りましたよ。助けを待つ間、何も食べるものがないんですから。だから、このガムで凌いだんです」
海未「そ、れは…」 海未(……一体、この人は)
海未「…ッ」
私はハッしました。
周りが暗いのです。
坂を上り始めた頃は、太陽は天高くに輝いていたというのに。腕時計を見ると、針は駅に着いた時間のまま止まっていました。
海未「今、何時ですか」
「ーーーあら、すみません。私の腕時計は壊れているので…」
海未「……そうですか」 さっきから歩き続けているというのに、坂の終わりは一向に見えてきません。
海未(ーーーそういえば、坂の入り口で立ちくらみがしたとき…)
海未(ーーー私は、水を)
「もうすぐですよ」 冷や汗が止まりません。
私は違和感の正体を見つけました。
下りになっているのです。
上り続けていたはずの坂が、いつのまにかゆるやかな下りになっていました。
「もうすぐですから」
海未「………」
もはや何も見えない暗闇の中、隣から嬉しそうな声が響いています。
終わり >>118
今回は今邑彩さんの短編集から話をお借りしました
オリジナルではないということを表記しておきます >>121
海未ちゃんが連れてかれてことほのが助けにくるとかなら面白そうなんだがねwこれ以上は長編になってしまうので想像にお任せする ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています