千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
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千砂都「一セットでいい?」
可可「いえ、二つお願いします」
千砂都「二つ?」
可可「千砂都も一緒食べませんか?」
千砂都「あはは、それは駄目だよ。私はバイト中だから」
可可「そうですか……」
千砂都「じゃあ一個でいいかな、なんかおまけはするよ」
可可「あ、ありがとうございます」 可可「相変わらず、器用に焼くですね」
千砂都「そう?」
可可「さらに上手になっています、修行の成果ですね」
千砂都「かもね」
千砂都(微妙に気まずい空気)
千砂都(気をつかってくれるクゥクゥちゃんと、そっけない私)
千砂都(私たちまで、ギクシャクしてしまっているみたいで) 可可「来る前、一応かのんも誘ったのですよ」
可可「だけど、今日はどうしても来られないと言われて」
可可「もしかして可可、かのんに嫌われてしまったのでしょうか……」
千砂都「そんなことはないと思うよ」
千砂都(かのんちゃんはそんな子じゃない)
千砂都(クゥクゥちゃんを嫌うなんてあり得ない)
千砂都(そのぐらいで煙たがられるようなら、私なんてしょっちゅう)
千砂都(私、なんて……) 可可「千砂都?」
千砂都「……はい、たこ焼き」
可可「わっ、いっぱい」
千砂都「おまけしておいたから、今日は帰って」
千砂都「私を一人にしてくれるかな」
可可「……ごめんなさい、しつこくて」
千砂都「ううん、心配してくれるのはありがたいよ」
千砂都「だけど、今日は話したい気分じゃないんだ」
千砂都「明日になったらいつもの私に戻るからさ」
可可「……わかりました」 千砂都(去っていくクゥクゥちゃんの背中は、どこか寂しそう)
千砂都(私はまた一人になってしまった)
千砂都(嬉しかったのに、もう少し一緒に居たかったのに)
千砂都(かのんちゃんの話をする気分じゃない)
千砂都(私とクゥクゥちゃんは、かのんちゃんを好きであるということ)
千砂都(それによって繋がっている)
千砂都(かのんちゃんがいないと、成立しない関係)
千砂都「……馬鹿みたいだ、私」 千砂都「クゥクゥちゃん」
千砂都(大切なのに)
千砂都「かのんちゃん」
千砂都(大好きなのに)
かのん「よ、呼んだ?」
千砂都「えっ」
千砂都(目の前には)
千砂都(紛れもない、かのんちゃんの姿) 遅くなって申し訳ないです、長期間の保守ありがとうございました。
近いうちに最後まで書いて投稿できるかなと思っています、もう少しだけお付き合いください。 ありがとうございます!
続きも楽しみにしていますが、くれぐれも無理の無いペースで。 あんなの見たのに表向き普通に接してくれる3人がすごい かのん「う、ういーっす」
千砂都「かのんちゃん……?」
かのん「ちぃちゃん、久しぶり」
千砂都「久しぶりって、さっき学校で一緒に居たよね」
かのん「うん、でもさ」
かのん「久しぶりかな、って」
千砂都「かも、ね」 千砂都「作曲は済んだの?」
かのん「まあ、一応」
千砂都「クゥクゥちゃんとすれ違いだったね、残念」
かのん「知ってるよ、去り際までこっそりみていたから」
千砂都(見ていた?)
千砂都「それなら、声をかけてくれればよかったのに」
かのん「うん」
千砂都「クゥクゥちゃん、可哀想だよ。かのんちゃんにフラれたこと残念がってたし」
かのん「知ってる。だからお詫びも埋め合わせもちゃんとするつもり」 かのん「だけどね、今日はちぃちゃんと二人で話したいことがあったの」
千砂都「私と?」
かのん「うん」
千砂都(やっぱり、かのんちゃんは)
かのん「ちぃちゃん、最近元気ないよね」
千砂都「そ、そんなことないよ」
かのん「クゥクゥちゃんと、何かあった?」
千砂都「…………」
千砂都(私たちの事を、何か……) かのん「見ちゃったんだ、私」
千砂都「見た?」
かのん「二人がその、部室でしていたの」
千砂都「えっ」
千砂都(ある程度の覚悟はしていた)
千砂都(実際、私は不自然な行動を取っていたし、感づかれていてもおかしくはないと)
千砂都(だけど、そこは予想外だし)
千砂都(絶対に、見られたくなかった部分で) 千砂都「……その、それはいつ見たの?」
かのん「割と最近、だけど」
千砂都(最近、でも部室では)
千砂都(気をつけていたはず、かのんちゃんに見つかるようなことは――)
『クゥクゥちゃんのコスプレをしたかのんちゃんって設定で――』
『気のせいだって、ドアも開いていないし――』
千砂都「あっ」
千砂都(あの時、もしかして学校へ、部室へ戻ってきていた?) かのん「二人は恋人、みたいな感じなのかな」
千砂都(かのんちゃんは、私がクゥクゥちゃんにしている事を知らない)
千砂都(たまたまクゥクゥちゃんがかのんちゃんにならずに行為をしていた姿しか見ていない)
かのん「水臭いよ、幼馴染なんだから」
千砂都(だから、かのんちゃんからみた私たちの関係は)
かのん「クゥクゥちゃんのことが好きだったなら、教えてくれればよかったのに」
千砂都「そ、それは」
千砂都(違うよ) かのん「ごめんね、最初は幼馴染と友達がって複雑な気持ちになって」
かのん「気づいた後も、なかなか言い出せなくて」
千砂都(間違った認識が、かのんちゃんの中で確信になっている)
かのん「大好きな二人の関係にさ、ジェラシー的なものを感じていたのかな」
千砂都(待って、待ってよ)
かのん「でも、すみれちゃんや恋ちゃんに相談するうちに気持ちを整理出来てさ」
かのん「二人がそういう関係だとしても、ちゃんと受け入れられるつもりだから――」
千砂都「違うよ!」
千砂都(自分でも信じられないぐらい、大きな声が出た) かのん「ち、ちぃちゃん」
千砂都(わからない)
千砂都(私が一番好きなのは、かのんちゃん、だよね)
千砂都(かのんちゃんは私の全てで、憧れで、ヒーローで、大好きで)
千砂都(だけど、今はクゥクゥちゃんの事も頭に浮かんで)
千砂都(それでもここで、かのんちゃんの言葉を否定したくて)
千砂都(もう、なんだか)
千砂都(駄目、わからない) 千砂都「私はクゥクゥちゃんのことを好きなわけじゃない」
千砂都(違うのに)
千砂都「クゥクゥちゃんのことは、好きとかじゃなくて」
千砂都(好きなのに)
千砂都「私が好きなのは」
千砂都(言葉が、止まらない)
千砂都「私が、好きなのは」
かのん「…………」
千砂都(好き、なのは)
千砂都「クゥクゥちゃんじゃなくて――」 ドサッ
千砂都(何かが地面に落ちる音)
かのん「あっ」
千砂都「なっ」
千砂都(なんで)
可可「…………千砂都」
千砂都(呆然とした顔で、遠くから私たちを眺めるクゥクゥちゃん)
かのん「く、クゥクゥちゃん」
可可「あ、あの、可可は、やっぱり、千砂都を、一人にできない、と、思って」
千砂都(身体、震えている。目には涙が溜まっている)
千砂都(私はすぐに理解した)
千砂都(私が、私の言葉が、この子を深く傷つけたこと) 可可「っ」ダッ
千砂都「あっ……」
千砂都(走り去るクゥクゥちゃん)
かのん「待って!」
千砂都(追いかけるかのんちゃん)
千砂都「……………………」
千砂都(私は二人の背中を見送ることしかできなくて)
千砂都(地面にはクゥクゥちゃんの落とした、たこ焼きの残骸だけが転がっていた) ◆
可可「はぁ、はぁ」
可可(息、苦しい)
可可(ただ無意識)
可可(振り払うように、ひたすら走って、走って)
可可(ここがどこなのかさえ、わからない)
可可(泣いていたせいで顔もぐちゃぐちゃで)
可可(走り続けていたせいで、喉もカラカラで) 可可「……限界、です」
可可(地面に倒れ込む)
可可(汚いけど、動けない)
可可(どうしても千砂都を放っておけなくて)
可可(せめて一緒に居ようと、戻って)
可可(ショックでした)
可可(理解していたはずなのに)
可可(千砂都が好きなのはかのんで、可可じゃない)
可可(愛情を注いでくれるのは、かのんになった可可だって)
可可(可可の事は、別に好きでもないって) 可可「っ」
可可(駄目、また泣いちゃいそうに)
かのん「クゥクゥちゃん!」
可可「かのん……」
可可(追いかけてきてくれたですか)
かのん「だ、大丈夫?」
可可「……ごめんなさい、私」
可可「二人が、真剣な話をしていたのに」 かのん「そんなの関係ないよ」
かのん「ごめんね、気づけなくて」
かのん「事情も知らないのに引っ掻き回して」
かのん「ちぃちゃんに、あんな事を言わせて」
かのん「本当に、ごめん」ギュッ
可可(温かい、です)
可可(かのんはいつだってヒーローで)
可可(可可は、やっぱりかのんの事が大好きで) 可可(だからこそ苦しいむ)
可可(この人に手が届かない事)
可可(少し理解できてしまう、千砂都の気持ち)
かのん「……二人に、何があったの?」
かのん「私、力になりたい」
かのん「クゥクゥちゃんが困っているなら、助けてあげたい」
かのん「だから、教えて」 可可(どこまで教えてしまっていいのか、わからない)
可可(下手をすると、千砂都の十年以上の秘密を壊してしまうかもしれない)
可可(だけど、かのんを前にすると抗えない)
可可(楽になれる、日本に来たばかりの頃のように救ってくれる)
可可(私だけではなく、千砂都も含めて)
可可(そう、思えてしまうから)
可可「……絶対に、他の人には内緒ですよ」
かのん「うん」 ―――
――
―
かのん「そんなことが……」
可可(話してしまいました)
可可(私と千砂都がしていたこと)
可可(千砂都の好きな人がかのんという部分と)
可可(かのんのコスプレをしていたという事実を隠して)
可可(全部、話してしまいました) かのん「好きな人の代わりに、クゥクゥちゃんを……」
可可(怒っている。あのかのんが、千砂都に対して)
可可「違うんです、可可が悪いんです」
かのん「そんなわけないじゃん!」
かのん「そんなことに、クゥクゥちゃんを利用して!」
かのん「あり得ないよ!」
可可(かのんはいい人です)
可可(幼馴染相手とか、どちらが大切とか)
可可(そんなこと関係なしに、本気で怒ってくれる) 可可「かのん、聞いて」
かのん「でも!」
可可「聞いてください」
かのん「……うん」
可可「確かに最初は流されて受け入れてしまっただけでした」
可可「断れなかっただけ、複雑な気持ちがあったことも否定はしません」
可可「でも次第に」
可可「千砂都が可哀想になってきて」 可可(だって、出会ったばかりの可可でもかのんの事を考えると苦しいのに)
可可(ここまでの想いをずっと秘めていたなんて)
可可「母性、というか。放っておけないというか」
可可「この人を支えてあげないと、そう思えてきて」
可可「好きになってしまったんです」
可可「二人で身体を重ねていく内に、どんどん千砂都の事を」
かのん「クゥクゥちゃん……」 可可「でも、千砂都は他の人のことが好きで」
可可「どれだけ頑張っても、その人の代わりにしかなれなくて」
可可(それを、今日はっきりと知ってしまって)
可可「だから、だから……」
かのん「苦しかったんだね」
可可「……はい」
かのん「クゥクゥちゃんはいい子だから、余計に苦しんでいた」
かのん「私がもっと早く気づいていたら、クゥクゥちゃんを苦しめずに済んだのに」 可可「違いますよ、可可はそんないい子じゃないです」
可可「はっきり言い過ぎて、特にすみれにはつい強く当たってしまいますし」
可可「運動では足を引っ張る癖に妙に強気で、全然成長しなくて」
可可「今だって千砂都を困らせて、かのんの事だって」
かのん「そんなこと、言わないで」
可可「かのん……」
かのん「自分を悪く言わないでよ」 可可(かのんが、泣いている)
可可(可可も泣いてしまった)
可可(千砂都もきっと、一人で泣いている)
可可(いやです、こんなの)
可可(みんなが苦しむなんて、嫌です)
かのん「伝えるべきだよ、クゥクゥちゃんの気持ち」
かのん「ちぃちゃんに伝えないと、きっと後悔する」
可可「……そうですね」
可可(ここで逃げたら駄目です)
可可(逃げたらきっと、大好きな人『たち』がもっと苦しむことになる)
可可(だから、可可は……) すげえイイところで追いついてしまった…
展開はベタだけど心情描写が上手いから面白い
最終章も期待 苦しくて痛くて辛い。だがそれがいい
スバラシイ百合恋愛模様… 《5》
千砂都「あー」
千砂都(最悪の目覚め)
千砂都(昨日、どうやってバイト先から帰ったんだっけ)
千砂都(混乱して、全然覚えていない)
千砂都(確認するのも怖いな、色々……) 千砂都(そんなことより)
千砂都(いや、仕事にそんな事とか言っちゃいけないのはわかっているけど)
千砂都「クゥクゥちゃん……」
千砂都(なんて謝ればいいんだろう)
千砂都(私は最低な事をした)
千砂都(かのんちゃんの方が好きとかならまだしも)
千砂都(好きじゃないとか、あんなの)
千砂都(嫌いだ、そう言ってしまったみたいで) 千砂都「あれは本心じゃない」
千砂都(パニックになって、思ってもない言葉を口走ってしまっただけ)
千砂都(そう言って信じてもらえれば、どれだけ楽か)
千砂都(昨日の私の行動は、最悪の連続)
千砂都(クゥクゥちゃんを泣かせて、かのんちゃんを困らせて)
千砂都(バイトはたぶん途中で投げ出して)
千砂都(むしろ心のモヤを増やしただけ)
千砂都(馬鹿だな、私) 千砂都「……学校いかないと」
千砂都(こういう日に限って朝練)
千砂都(早々に、二人に顔を合わせなきゃならない)
千砂都(まずはクゥクゥちゃんに会って、謝らないと)
千砂都(かのんちゃんには上手い事言って、昨日の事を誤魔化して)
千砂都(そうすれば今までどおり)
千砂都(……今までと同じで、いいのかな)
千砂都(そりゃ、同じに戻れたら上出来なんだけど)
千砂都(ギクシャクした感じは変わらないだろうし)
千砂都(なんかだかな……) ◆
千砂都「いってきます!」
千砂都(しまった、考え過ぎて遅刻だ)
千砂都(急がないと――)
可可「遅いですよ、千砂都」
千砂都「く、クゥクゥちゃん?」
可可「おはようです」
千砂都「お、おはよう」
千砂都「もしかして、待っていてくれた?」
可可「はい、話したいことがあったので」 千砂都「やっぱり、昨日の事?」
可可「まあ、そうですね」
可可「本当は登校しながら話をするつもりだったのですが」
千砂都「ご、ごめん、時間」
可可「いえ、伝えておかなかった可可も悪いので」
千砂都「……」
可可「もう、朝練には間に合わないですね」
千砂都「そ、そうだね」 可可「急げば途中からは参加できるかもですけど、学校へ着く前にどうしても話したいことがあるので」
可可「今日は二人で休むと連絡を入れてしまいました、ごめんなさい」
千砂都「……いや、私の方こそ、ごめん」
可可「だからいいですよ、可可にも――」
千砂都「そうじゃなくて、昨日の事」
可可「ああ、その事ですか」
千砂都(クゥクゥちゃんは、何でもないことのように言う)
可可「可可の方こそごめんなさいです、せっかくのたこ焼きを駄目にしてしまって」
千砂都(そんなこと、謝らないでよ) 千砂都「……酷いこと、言ったのに」
千砂都(傷ついていなかったわけがないのに)
可可「全部が本心じゃないことぐらい、可可にも分かります」
可可「だいたい、千砂都のかのんへの愛の重さは百も承知ですよ」
可可「かのんウォッチング仲間として、誰よりも近くで体感してきたのですから」
可可「いちいち気にしていたらやってられないです」
千砂都「……そっか」
千砂都(この子の言葉も、本心だとは思わない)
千砂都(だけど、強いな。根がいつまでも弱虫な私とは大違い) 可可「もう無理に隠す必要はないのではないですか?」
千砂都「へっ?」
可可「本当は、言いたいんでしょう」
可可「綺麗事や理想を抜きにして、かのんに本当の事を言いたいんでしょう」
可可「だからこそ、昨日の千砂都はそれを告げてしまいそうになった」
千砂都「……」
可可「全部隠して、今の関係を無理して続ける方がよっぽどかのんへの負担になってしまいます」
可可「千砂都のかのんへの気持ちは隠しましたが、昨日話してしまいました」
可可「千砂都には好きな人がいること、可可との関係はあくまで代わりだということ」
可可「かのんはおそらく、千砂都の気持ちにも少しは気づいているんだと思います」 可可「加担してしまった私が言えることではないかもですが」
可可「結局、千砂都は言い訳を重ね、関係が終わることが怖がって逃げているだけです」
可可「言えばいいじゃないですか、好きな気持ちを隠してないで」
可可「かのんに、好きだと」
可可「キスして、抱き合って、セックスしたいんでしょう」
可可「ずっとずっと、かのんの一番近くにいたいんでしょう」
可可「千砂都が欲しいのは、可可が演じるかのんじゃない」
可可「本物のかのん、ですよね」
千砂都「それは……」 可可「今日の放課後、かのんに千砂都と二人で話してくれるように頼んであります」
可可「無理をする必要はありません」
可可「だけど、可可はこれ以上千砂都に苦しんでほしくはないです」
千砂都「でもさ、クゥクゥちゃんもかのんちゃんの事が好きなんじゃないの?」
千砂都「いいの、そんな風に私の背中を押して」
可可「好きですよ、大好きです」
可可「だけど千砂都のかのんへの気持ちとは少し違います」
可可「二人が恋人になっても素直に祝福できる。そんな種類の好きです」
千砂都(……そんなわけ、ないのに) 千砂都「……わかった」
可可「じゃあ」
千砂都「私、かのんちゃんに話すよ」
千砂都「自分の気持ち、全部」
可可「千砂都!」
千砂都「クゥクゥちゃんの言うとおり」
千砂都「このまま逃げ続けるのは、よくないと思うから」 可可「頑張ってくださいね」
千砂都「うん」
可可「結果だけ、ちゃんと教えてください」
可可「一人で抱え込もうとしないでくださいね」
可可「もし駄目でも、しばらくは今まで見たいに可可がかのんの代わりになってあげますから」
可可「本物に比べれば意味なんてないかもしれないですけど、少しは気持ちも楽になりますよね」
千砂都「ありがとう、クゥクゥちゃん」 千砂都(放課後……)
千砂都(かのんちゃんと私が話をすべき場所)
千砂都(気持ちを伝えるのに相応しい場所は、やっぱり)
千砂都(『かのんちゃんへ』と)
千砂都「ねえ、クゥクゥちゃんも一緒に来てくれない?」
可可「ふぇ?」
千砂都「出てこなくていいからさ、影で見守っていてほしいんだ」
『放課後、昔よく遊んだ公園へ来てくれる?』 ◆
千砂都「かのんちゃん、まだかな」
千砂都(少し用事を済ませてから行きたいというかのんちゃんを)
千砂都(小さい頃、よく乗ったブランコに揺られて待つ)
千砂都(黄昏時、綺麗な空)
千砂都(昔、かのんちゃんと二人でよくこの時間まで遊んでいたっけ)
千砂都(最初は人がちらほらいたけど、夕やけこやけの音楽と共に、子どもたちは帰り始めて)
千砂都(私は昔みたいに、ひとりぼっち)
千砂都(この公園内での自分以外の登場人物は、かのんちゃんだけだったな) 千砂都(目を瞑って振り返ると、蘇る記憶)
千砂都(子どもの頃の二人)
千砂都(小学生の時の二人)
千砂都(中学生の時の二人)
千砂都(そしていま、高校生の――)
トントン
千砂都(肩を軽く叩かれる)
千砂都(目を開かなくても、相手は分かるよ) 千砂都「かのんちゃん」
かのん「ちぃちゃん、さっきぶり」
千砂都(良かった、ちゃんと来てくれた)
かのん「ごめんね、待った?」
千砂都「うーん、少しだけ」
かのん「良かった、帰っちゃったか少し心配だったから」
千砂都「帰らないよ、自分からお願いしたことだし」
千砂都「なにより、かのんちゃんとの約束だもん」
千砂都「私はいくらでも待つよ」
かのん「あはは、それはそれで困るよ」 千砂都「ありがとね、今日は」
かのん「私の方こそ、ちゃんと話したかったから」
千砂都「……だよね」
かのん「クゥクゥちゃんと、話したんだよね」
千砂都「うん。昨日の事も謝って、たぶん許してもらえたと思う」
かのん「そっか、よかった」
かのん「二人があのまま、仲違いしたら嫌だったもん」
千砂都「ごめんね、心配かけて」 かのん「ねえ、ちぃちゃん」
千砂都「うん」
かのん「今日、ちぃちゃんが話したいことって、昨日の続きだよね」
千砂都「そうなるかな」
かのん「わかった、だったら一つだけ」
かのん「話す前に教えてほしいことがあるの」
千砂都「教えてほしい事?」 かのん「ちぃちゃんは、クゥクゥちゃんのこと、どう思っているの?」
千砂都「どう?」
かのん「勝手に申し訳ないけど、何となく話は聞いたよ」
かのん「好きだから、あんな事をしたの?」
かのん「それとも、他の人の代わりに利用していただけなの?」
かのん「それを知らないと、私はちぃちゃんと前を向いて話すことができない」
千砂都(……やっぱり、かのんちゃんは) 千砂都「最初は、利用していた側面がない、とは言えない」
千砂都「でもクゥクゥちゃんの事を好きじゃなきゃあんな事はやらない」
千砂都「私はちゃんと、クゥクゥちゃんの事が好き」
かのん「うん」
千砂都「だけど他に大切な人もいる」
千砂都「ずっと、想い続けてきた相手がいる」
千砂都「それも、事実」
かのん「そっか……」
千砂都「これじゃあ、答えとしては駄目かな?」
かのん「そんなことはない」
かのん「十分だよ、ありがとう」 千砂都「じゃあ、私の話をしてもいいかな」
かのん「う、うん」
千砂都(緊張感が漂う)
千砂都(こんなシーン、ずっと思い描いていた)
千砂都(小さい頃から、想像の世界で)
千砂都(相手は決まってかのんちゃんで)
千砂都「あの、ね」
千砂都(情けない私は、なかなか言い出すことができず) 千砂都「私、ね」
千砂都(言葉にしてしまえば、たった二文字)
千砂都「その、ね」
千砂都(だけど重い、その言葉を口に出せずに)
かのん「……ちぃちゃんは」
千砂都(だからいつも助けてくれるの)
かのん「ちぃちゃんは、私にしてほしいことはない?」
かのん「なんでも受け入れる。私にできることなら、なんでもする」
かのん「大切な幼馴染の為なら、どんなことでもできるよ」
千砂都(想像の世界と一緒だ)
千砂都(こうやっていつもどおり。私を引っ張ってくれる)
千砂都(大切な人、大好きな人) 千砂都「……かのんちゃんには」
かのん「うん」
千砂都(きっと、最後のチャンスだ)
千砂都(ここで好きと言えば受け入れてくれるかもしれない)
千砂都(幼い頃から秘め続けていた願いが成就するかもしれない)
千砂都(夢の世界でしかみたことのなかった、幸せな世界へ辿りつけるのかもしれない)
千砂都(でも) 千砂都「私にとってのかのんちゃんは、世界で一番の人」
千砂都「格好いい、永遠の、私のヒーロー」
千砂都「だから」
千砂都(これを言った時点で、終わる)
千砂都(叶わない夢は、夢でさえなくなってしまう)
千砂都(怖い、この決断を後悔するかもしれない、けど)
可可(……………)
千砂都(視界の隅、物陰のクゥクゥちゃんが目に入る)
千砂都(それで、覚悟は決まった) 千砂都「かのんちゃんにはこのまま、まっすぐに羽ばたいてほしい」
千砂都「高く高く、誰の手も届かないような場所まで、辿りついてほしい」
千砂都「そうして、私たちを連れて行ってほしい。知らない世界へ」
千砂都(私はそれを支える裏方、もしくは観客)
千砂都(直接触れてはならない、それもまた、私が思い続けていた事)
かのん「ちぃちゃんは、それでいいの?」
千砂都「うん」
かのん「そっか、分かったよ」
千砂都(最初は少しの困惑、だけどすぐに何かを悟ったように頷く)
千砂都(理解してくれたんだろうな、きっと)
千砂都(やっぱりかのんちゃんは、最高の幼馴染だよ) かのん「よし、ちぃちゃんの本音も聞けてすっきりした」
千砂都「うん、よかった」
かのん「ちぃちゃんがこれ以上話すことがないなら、私は帰るよ」
かのん「外、暗くなってきたし。ちょっといい曲のアイディアが浮かんでさ」
千砂都「わかった」
かのん「ちぃちゃんはどうする?」
千砂都「私はもう少し、ここに残ろうかな」
かのん「そっか、じゃあバイバイだね」
千砂都「うん、バイバイ」
かのん「また明日、学校でね」タタッ 千砂都(元気に走り去っていくかのんちゃん)
可可「いいんですか、あれで」
千砂都(入れ替わるように、姿を表すクゥクゥちゃん)
千砂都「うん、いいんだよ」
可可「結局、逃げちゃったんですね」
可可「それはそれで、やさしい千砂都らしいのでしょうか」
千砂都「違うよ、本心からこれでいいと思っちゃったんだ」
千砂都(かのんちゃんへの私の感情は、これで) 可可「……千砂都には、もう少し自分を大切にしてもらいたいです」
千砂都(私のセリフだよ、それは)
可可「本当に、仕方のない人」
千砂都(やさしく抱きしめてくれる)
千砂都(何かを勘違いしたまま、それもそれでクゥクゥちゃんらしい)
千砂都(言わなきゃ伝わらない事)
千砂都(いっぱい、いっぱい、あるんだね) 可可「千砂都はすぐに溜め込んじゃうので、可可が傍にいて支えてあげます」
千砂都「……じゃあさ、さっそく甘えてもいいかな」
可可「もちろんですよ」
千砂都「クゥクゥちゃんの家、行ってもいい?」
可可「はい、大歓迎です」
可可「今日のかのんのコスプレは何にします?」
可可「大出血サービスで、どんなことでも応えてみせますよ!」
千砂都「うーん、そうだな」 千砂都(最初は違った、それは確か)
千砂都(だけどある日から、それが変わって)
千砂都(心のどこかでは気づいていたんだ)
千砂都(私が求めていたのは、仮初のかのんちゃんじゃなくて)
千砂都「コスプレじゃない、生身のクゥクゥちゃんがいいな」
可可「また可可のコスプレをしたかのんですか。千砂都も変わった趣味をしていますね」
千砂都「あはは、そうだね」
千砂都(その裏側にいた、君のことだって) 以上です
思いのほか時間が取れずご迷惑をおかけしましたが、完結まで辿りつけたのはみなさんのおかげです。
久しぶりにSSを書けて楽しかったので、また気が向いたら何かを書きたいと思います。
最後までお付き合いいただいた方、途中で保守などしてくださった方、本当にありがとうございました。 お疲れ様でした
可可がいい子で報われて良かった
素敵な作品をありがとう 台本調だけど少し地の文もあって良かった
ちーちゃんに感情移入しすぎて苦しかったけど楽しかったよ おつ!面白かった
ちぃちゃんのエゴで振り回す感じが青春って感じでとてもよかった かのんちゃんからちぃちゃんへの好きの種類はどういう好きだったのかな 完結乙
お話としては綺麗にまとまっていて良かった
でも最後の選択肢でかのんを選んで更に泥沼にハマっていく世界線も見てみたいなと思ったり 乙
ドロドロなはずなのにどこか爽やかさを感じるお話だった 最後の最後にかのんへの想いを押し殺して(しまったように見えて)しまうのが千砂都らしいなと
全てが報われず救われないからこその良き三角関係エンド、乙。つらい! イチャイチャかのちぃばっか読んでたから凄い心揺さぶられたssでした!
でも面白かった…
おつおつ! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています