歩夢「愛だけに!!」
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11月くらいから覗きに来てなかったけどまだ続いてて嬉しい 歩夢「っ…」
…何が起こったのか、すぐに理解が追いつかなかった
けれど…その一言は、今の私にはとても非現実的に感じて
私の心臓はいとも簡単にぎゅっと締め付けられた
数秒間で、その言葉を頭が勝手に反芻して…そうしてやっと頭が理解する
理解して…より鼓動が高鳴るのも
顔が熱くなってきてるのも感じた
そっか、伝えたいことはこれだったんだ… …電話の時、一瞬過ぎった事ではあった
…けれど、愛ちゃんはこれまでそういう素振りなんて見せたこともなかったし
私の気持ちがそうだから…そう思考しちゃうだけなんだって
だから、そんなわけあるはずないって…私の決心が中途半端にならないように、余計なことを考えないようにしてた
でも、確かに愛ちゃんは今
私に向けてしっかりと好意を示した 少しでも考えていたことが、現実になるだなんて思わなかった
…今も、現実だと信じきれてない
好意を寄せていた人が…同じように好意を寄せてくれていただなんて、中々ある話じゃないし
…ひとまずなにか言わなくちゃ…そう思ったけどすぐに言葉は見つからなかった
…ただ胸の鼓動だけがうるさく鳴り響く
愛ちゃんは、眉を八の字にしたまま優しく微笑んで見つめてくる
…どこか切なげにも見えるその表情が耐え切れなくて、愛ちゃんの目を直視出来なかった 愛「ああ、ごめんごめんびっくりしたよね」
愛「今のはさ」
歩夢「…い…」
愛「…?」
歩夢「…今のは、そういうことなんだよね…」
愛「…」
歩夢「…そういう意味なんだよね」
愛「うん」 歩夢「……」
愛「ごめんね」
歩夢「…どうして謝るの」
愛「今伝えたことも、これから伝えることも、歩夢を困らせちゃうことだと思うから」
歩夢「……」
愛「…最初はね、ずっと伝えないつもりだったんだ」
愛「でも、やっぱり無理だった」
歩夢「…」 愛「夏のライブ…あったでしょ?」
愛「実はさ、あの時のステージで踊る歩夢の笑顔に引き込まれたんだ」
歩夢「え…」
愛「映像越しで見たんだけどね、それだけでも十分ってくらいに、愛さんには凄く輝いて見えたんだ」
愛「きっと誰もがつられて笑顔になっちゃうような…そんな笑顔だった」
愛「その前からも魅力のある子だとは勿論思ってたけど」
愛「でも、あの時の表情が頭から離れなくなるくらいに引き込まれて、それからは歩夢が気になるようになってた」
愛「ずっと、少しでも近付けたらいいなぁなんて、そう思うようになった」 愛「今思えば、あのステージ上で歌って踊る歩夢に、そう思っちゃうくらい見惚れて…惹かれてたんだなぁって思う」
愛「だから、普通にお節介ってのもあったと思うけど、ずっと歩夢のことほっとけなかったんだよね」
愛「歩夢が塞ぎ込んじゃった時さ…」
愛「もう歩夢のステージが見られなくなっちゃうんじゃないかって思って、いても立ってもいられなかったから」
歩夢「………」
愛「…それで、色々あって歩夢とよく行動するようになってからはずっと嬉しくてさ」
愛「正直、すごく幸せだった」 愛「歩夢のそばに居るだけで…自然と笑顔になったり、温かい気持ちになれたり」
愛「自然と心が癒されたり」
愛「特別な何かをしなくても、歩夢の存在だけでずっと満たされてて」
愛「勿論りなりーやみんなといる時間も大好き…けど、歩夢といる時間はもっと特別に感じたんだよね」
愛「…感じたことも無い幸福感があってさ」
愛「だからこのままただ一緒にいれればなって…歩夢の傍で笑顔を見ていたいなって思った」
愛「もし悲しい気持ちになった時は…一番に歩夢を支えたいって思ったし、一番に笑顔にしてやりたいって思った」
愛「…そう思うくらい、歩夢といる時間が愛おしく感じて、アタシの中で歩夢がすごく大きな存在になってたんだ」 愛「でも歩夢にとってそう思える相手って…やっぱりアタシじゃないし」
愛「きっとこんなアタシじゃダメなんだよなぁって思った…」
愛「それに、こんなこと歩夢に知られたら嫌われちゃうかもって思ったしね」
愛「何より困らせたり、悩ませたり傷付けちゃうことがすごく怖かったから」
愛「だから…こんな気持ち伝えても無駄なだけだって」
愛「伝えないまま友達でいよう、それだけでも十分嬉しいからって…気持ちに蓋をして、割り切るつもりだった」
愛「割り切って…上手く友達として接していけるって思ってた」 愛「けど、割り切るには気持ちが大きすぎたんだよね」
愛「りなりーとせっつーに言われたんだ、何もしないで簡単に自分で区切りつけちゃうのは、愛さんらしくないって」
愛「…言われてハッとなったよ」
愛「簡単に諦めちゃうのは、確かに嫌だなって」
愛「だから…歩夢にはこの気持ちだけでも伝えたいって…知って欲しいって思ったんだ」
愛「…知ってもらったところでどうしようもないんだけどさ」
愛「けど、知られないままの方が…」
愛「…きっと伝えないままの方がもっとこの先後悔して、どうしようもなくなるって思ったから」
愛「伝えることに意味があるんだって気付かされたから」 愛「……だから、今日勇気出して歩夢を呼んだんだ」
愛「ごめん、迷惑掛けちゃうのは分かってる」
愛「けど、ちゃんと伝えて自分の気持ちに区切りだけでも付けたかったんだ」
歩夢「…愛ちゃん」
愛「……気持ち悪いって思わせちゃうかもしれないけど」
愛「…これがアタシの気持ち」 歩夢「……気持ち悪くなんて、ないよ」
愛「……」
歩夢「きっと…色々悩ませて、辛い思いさせちゃってたよね…ごめんね」
愛「……そんなこと気にしなくていいよ」
歩夢「……」
歩夢「愛ちゃん…あのね」 歩夢「…正直、戸惑ってて上手く言葉がまとまらないけど…」
歩夢「愛ちゃんの気持ちはすごく伝わったし、素直に嬉しいって思う」
歩夢「ほんとに…嬉しい…」
歩夢「…私ね…」
愛「………」
歩夢「…私……」
愛「……歩夢?」
歩夢「……っ…」 答えは決まってたはずなのに
…愛ちゃんの言葉からは、どれだけ思い悩んでいたかが伝わった
どれだけ想ってくれていたかが伝わった
伝わってしまった…
だから、その答えを口にすることが出来なかった
侑ちゃんも大切だけど…やっぱり愛ちゃんも大切で…二人とも悲しむようなことなんかしたくないから
…私には、どっちも言えない… 歩夢「っ…ごめん……私…言えない……っ」
愛「………」
愛「…うんっ、分かってる」
愛「歩夢はやっぱり優しいね…」
歩夢「ぇっ…」
愛「ごめんね、こんなの答える方がもっと辛いもんね」
愛「まだ混乱してるだろうし…無理して答えなくていい」
愛「…結果はさ、ほら…分かってたしね」
歩夢「!…ちが…っ…」 愛「違くないよ、そうでしょ?」
歩夢「ぁっ…」
愛「…大丈夫だよ、歩夢が受け止めてくれたように、アタシもちゃんとさ、受け止めるから」
歩夢「……」
愛「ちゃんと受け止めて…終わりにするから」
愛「……」
愛「ね、歩夢」 愛「…今しか伝えられないし…全部伝えたいから言うね」
歩夢「へ…?」
愛「…ふぅ……」
愛「………」
愛「……アタシは…」
愛「…歩夢が、たまにお母さんっぽくなるところが好き」
歩夢「…!」 愛「ついイタズラしたくなっちゃうくらい純粋なところとか」
愛「…怒ってむくれた時の顔が可愛いいところとか」
愛「…心配になっちゃうくらいちょろいところも」
愛「すごく家庭的なところも」
愛「意外にリアクションがいいところも」
愛「人一倍努力家で、一生懸命で…」
愛「割と自分に負けず嫌いなところも」 愛「誰にでも優しいところも」
愛「大切な人の為に一生懸命悩んで、考えちゃうところも…」
愛「それから…ふとした時に、まるで花が咲くように笑うところが…めちゃくちゃ愛おしくて、大好き」
歩夢「……っ…」
愛「そんな歩夢にアタシは惹かれたんだ」
愛「…ほんとに、こんな気持ちになるまでわかんなかった」 愛「誰かに心奪われるってことがどんなものなのか…特別に想うってことがどんな事なのかって」
愛「きっとこの先も、ずっと分からないままだって思ってた」
愛「けど、歩夢といてそれが分かるようになったと思う」
愛「…分かるようになったんだ」
愛「横にいるだけで苦しくなるくらいに愛しいって…好きだなぁって思うこと」
愛「そう思うだけでも気持ちがやすらぐってこと」
愛「初恋の人がこの人で良かったなって思うこと…」 愛「だから、アタシに恋を教えてくれて…んーん、恋をさせてくれて」
愛「…ほんとにありがとう」
愛「……これで最後にするから言わせて」
愛「アタシは…歩夢が好き」
愛「もうどうしようもないくらいに…大好きだよ」 歩夢「…っ…!」
どうして…
どうしてそんなに…っ
歩夢「っ……愛ちゃん…」
愛「……ごめん、ごめんね」
愛「…ずっと強引で、勝手しちゃってほんとにごめん」
愛「安心できないかもだけど、次会うときはさ…いつも通りの愛さんだから」
歩夢「……っ…」 愛「………」
愛「…っ…ごめん、そろそろウチの手伝いあるから帰んなきゃ」
歩夢「…!」
愛「…聞いてくれてありがとね」
愛「それと、今日は楽しかった」
愛「……また部活でね、歩夢」
愛「ごめんね…」ボソ 歩夢「…ぁっ……」
愛「………」テク テク
捲し立てるようにそう言うと愛ちゃんは、私に背を向けて去っていく
歩夢「っ…待っ……!」スクッ
咄嗟にその背に向かって手を伸ばそうとした
けれど、呼び止めたところで…掛ける言葉がみつからなくて、すぐにその手を引っ込めた
私は愛ちゃんの背を見つめることしか出来なかった ────
─
愛「………」テク テク
ピタ
愛「……」
愛「っ…はぁぁ…」
愛「…ああぁ…もぉ…!…泣くな…泣くな…っ」ペチッ …伝えたいことは、全部ぶつけた
伝えることが出来た
けど…
やっぱり困らせちゃってたよなぁ
愛「……」
…正直、分かってはいた
歩夢にあんな顔をさせてしまうことくらい
伝えたって誰も笑顔になんかならないことくらい それに歩夢がまた、ストレスを抱えてしまうかもしれないのに…でも
それでも伝えたかった、知って欲しいって思った…
この気持ちは止められない所まできてたから
これは本当に…アタシの自己満足の為にしたことなんだ
だから…これからのことはちゃんと、自分で責任をとらなくちゃ
自分に出来ることを考えなきゃ
これから歩夢との間に起こることは全部、自分のせいなんだから
告白して終わりになんかしちゃいけない ──
公園
「……いた」
歩夢「………」
「あーゆむ」
歩夢「……」
侑「やっほ」ニコ
歩夢「……ゆうちゃん…」
侑「…買い物してたんだね」
歩夢「……うん」 歩夢「練習、終わったんだね」
侑「うん、ちょっと前にね」
歩夢「そっか…」
侑「うん」
歩夢「……」
侑「……」 歩夢「…」
侑「…ねぇ、あゆ…」
歩夢「侑ちゃん…」
侑「ん…?」
歩夢「私…さっきまで愛ちゃんと会ってたんだ…」
侑「……」 歩夢「電話で呼び出されて…一緒に買い物して…」
歩夢「それで…ここで…」
歩夢「この公園で言われたんだ、好きだって」
歩夢「友達としてのものじゃなくて…本気の好きだった…」
侑「…うん」
歩夢「…断るつもりだった」
歩夢「…でも…何も答えられなかった…」 侑「どうして?」
歩夢「…すごく真っ直ぐだったから…」
歩夢 「終始微笑んでて…でもどこか少し切なげで…それでも向けられる目は真っ直ぐで…」
歩夢「伝える言葉も全部、真っ直ぐだった…」
歩夢「だから、気持ちがすごく伝わって…それが嬉しくて」
歩夢「すごく嬉しくて…」
歩夢「そんな愛ちゃんを悲しい気持ちになんてさせたくなかった」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています