【SS】姫乃「今日4月17日は私たちの」曜「誕生日だね」エマ「二人ともおめでとう」【ラップ注意】
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4/17が曜の誕生日であると同時に姫乃の誕生日だということから思いついた話です
前半は姫乃側、後半は曜側
姫乃側と曜側は同じ時間のほぼ別のストーリーです かのん「今日の夕方なんですけど、そのお客さんからうちに電話があったみたいなんです」
かのん「『あたしは多分あの子ともう会えないから、何かあったら助けてあげて』って」
かのん「それで私たち、行ってきたんです」
かのん「……病院に」
姫乃「ああ、それでこんな時間に」
曜『…あるんだね、こんなこと』
曜『話すかどうか迷ったけど…この話には続きがあるんだ』
曜『話すよ。今度こそ全部』 【YOU SIDE】
〜4月17日 18:15〜
〜ホテルオハラ・外〜
曜(鞠莉ちゃんのヘリが空の向こうに消えていった、もう肉眼では確認できない)
曜「ふー!これで任務完了かな」
曜「じゃあ最後に決着をつけないとね…千歌ちゃん」
千歌「そうだね…って、どういうこと!?」 曜「行きたいところがあってね。千歌ちゃんには一緒に来てほしいんだ」
千歌「よくわからないけど、まあ…いいよ」
曜「そういえば千歌ちゃん?さっき使ってたマイクは?」
千歌「えーっと、実は持ってきてしまってまして…扱いに困ってます」
曜「それ、そのまま持っててもらってもいい?」
曜「さて、答え合わせだね」 〜4月17日 18:30〜
〜ホテルオハラ・プール〜
曜「ねえ、教えてほしいことがあるんだ」
曜(ホテルオハラにあるプール、季節柄まだ使われることはないだろう場所でじっと一点を見ていたその人に私は話しかけた)
偽メイド「何だい?」
偽メイド「まっ、ここにあたしがいることを何で気づいたのとか言いたいことはあるんだけどさ…」
偽メイド「答えてあげるよ?名探偵の渡辺曜ちゃん」
曜「何があなたをここまでさせたの?結局あなたは何も語らなかった」
曜「私たちが壊したって言ってたけど、どういうこと?」 偽メイド「そんなの聞いてどうするんだか」
曜「あなたに何があったか、私が知りたいだけだよ」
曜「私はさっき何人もの人から恨みの言葉を浴びせられた…」
曜「それはどれも痛かったけど、それだけだった。何十回、何百回やられようと耐えられると思った」
曜「でもね…たった一つ、そうじゃないのがあったんだ」
曜「最初にあなたが私に聞かせたラップ…あれはなんだったの?」
曜「あなたは開会宣言だって言ってた。でもそんな事務的なものじゃない…あのラップは他のどのラップよりも私の心に残った」 曜「あれは、何としても聞いてもらいたいあなた自身の言葉だったんじゃない?」
偽メイド「…いんや、そうでもないよ。確かにあたしが一番手をするつもりだったけど、あのラップはあの時どういうわけか即興で出てきちゃったのさ」
偽メイド「予想以上に千歌ちゃんが見事に騙されて舞い上がっちゃってたんかね」
千歌「言っとくけど、私…まだあなたのこと許してないよ」
千歌「…てか、たまに出てきてたけど本当の口調はそっちなんだね」
偽メイド「いえいえ、私は本来はおしとやかな淑女でございますよ…なんてね」
偽メイド「あたしがメイドの真似事なんてする日が来るとはね、似合わないことしちゃったもんだ」 曜「話を戻してもいいかな…」
曜「あれが即興なんだとしたら余計に私はあなたを知りたい。即興で出てくるくらいなんだからよっぽどなんでしょ?」
偽メイド「あー、やっぱり気づくんだね…はは」
偽メイド「なんであんな言葉使っちゃったんだろうね…」
千歌「えっと、ごめん…私、よくわからないので説明してもらっていい?」
曜「そうだね。千歌ちゃん、あの最初のラップ覚えてる?」 千歌「えーと、確か」
【偽メイド】
ご機嫌いかがです?さあメインイベント
暴挙と憎悪のデパートメント
面と向かって言ってみます?延々と
無駄にひねった死神(デス)への遺言(テスタメント)
綺麗事語りな口にぶち込む裁き
大切な高海は死へ踏み込む高み
間もなく昏倒コンクリートのたたき
5に10も無くご臨終で歯噛み
千歌「だっけ?」 曜「そう、このラップ…そのまま読むと、これからイベント始まるぞ、千歌ちゃんは落ちて死んじゃうぞ、ってことなんだけど」
曜「あの状況じゃ千歌ちゃんが落ちる前に"踏み込む"こともないし、あの場に"コンクリートのたたき"なんてない」
曜「落ちる前に踏み込んで、昏倒してる時にコンクリートのたたきが見える…普通なら飛び降り自殺とかそんなのなんだろうけど」
曜「私には別のものが見えたんだ」
曜「高みから落ちて死んじゃうかもしれない恐怖にたたきコンクリートの飛び込み台から踏み込んでいく…高飛び込みの景色が」
曜「飛び込み台については場所によってはコンクリートのたたきじゃないこともあるけどね」
千歌「んー、たしかにその時の状況と合ってなかったとは思うけど、それは曜ちゃんが高飛び込みやってるから高飛び込みが見えたんじゃない?」 曜「それだけじゃないんだ」
曜「えっと、"綺麗"事語りな"口"に"ぶち込む"ってのはさ…」
曜「lip clean entry……飛び込むときに飛沫が少なくなる技術…高飛び込みの用語、だよね?」
曜「それだけじゃないよ。ひねりとか、飛び込み台の高さの5mと10mとか、ところどころに高飛び込みの要素が入ってる」
曜「私の勘が間違ってないなら…あなたは少なくとも高飛び込みを知っているし、それなりに思い入れがある」
曜「だから、今こうしてプールに来て、高飛び込みの台を見ていた…もう二度と見られるかわからないから」 偽メイド「ははっ、鋭いね」
偽メイド「その通りだよ。私は高飛び込みを知ってる…やったことはないけど」
曜「話してください…」
偽メイド「私にはね、歳の離れた妹がいるんだ。あんたと同い年の…って言っても、親が死んでからは仕事仕事であんまり構ってやれなかったけど」
曜「構って…やれなかっ"た"?」
偽メイド「練習中の事故でね、ここ1年意識不明なんだ」
曜「練習中の事故…まさか」 偽メイド「うん、妹は高飛び込みの選手なんだ。曜ちゃんを見て高飛び込みをはじめた、よくある一般人の憧れってやつだよ」
偽メイド「曜ちゃんみたいな才能はないけど、それなりに努力して結果も出してた。1回だけど同じ大会に出たこともあるんだ」
曜「同じ大会に出てた…」
偽メイド「もし、妹の名前を言ったら思い出してもらえる?」
曜「……多分無理です」
偽メイド「だろうね。曜ちゃんみたいにみんなから注目されるような輝きはあの子には無いから」
偽メイド「だから人一倍努力してた毎日毎日」 偽メイド「でも、頑張りすぎたんだ。度を超えたトレーニングからの一種の気の緩みで、あの子は10mの高みにあるコンクリートの地面"から"落ちた」
偽メイド「私が珍しくあの子の練習を見に行っていたその日に、私の目の前でね」
偽メイド「あの子は文字通り命をかけて飛び込んでいたんだ…片手間で飛び込んでいたあんたと違って」
曜「違う…」
曜「片手間なんかじゃないよ!私は真剣に高飛び込みをしていたし、今だって真剣にやってる!ちゃんと結果だって出してる!」
偽メイド「真剣…?そんな言葉使ってほしくないね。アイドルごっこなんてやってる奴に」
偽メイド「いや、ごっこだろうとアイドル一本で全身全霊かけてやってるならそれでもいい」 偽メイド「あの子が命がけで追いつこうとしたあんたがスクールアイドルに手を出してるのを目にした時の私の気持ちがわかるか?」
偽メイド「結果だって出してる?それはつまりさ…」
偽メイド「あの子が目指したものはあんたにとって片手間で叶えられるんだって、そういうことだろ?」
偽メイド「なんでもかんでも少し努力すれば上手くいって、一度にたくさんのものに手を出してもそれ一つに全力を出している人に勝てる」
偽メイド「そんな人を目にして全力でがんばるけど、どうやっても追いつけない」
偽メイド「やるせないよね…」 曜「それは…」
千歌「曜ちゃん、わかったよ…なんでここに私を連れてきたのか」
千歌「この人と妹さんは私と同じものを見たんだ。太陽の強い輝きに目を焼かれて周りが見えなくなったんだ」
千歌「だから、救うためにはマイクが必要で、それを私に見てほしい…ってことだね?」
曜「メイドさん、私とバトルしてください…まだ私はあなたに言葉を伝えてない」ヒューン
偽メイド「はぁ…それは元々私のマイクなんだけど、いいよ」
偽メイド「どうなるにしろ、私が曜ちゃんに言葉をぶつけられる機会なんてもう無いんだろうからね」
偽メイド「じゃあ、いかせてもらうよ!」ヒューン 【偽メイド】
心変わりでコロコロ改装
あんたの気まぐれが生んだ愛憎
見捨てた夢のその代償
払う甲斐性あるかとあんたに問う ドオオオン
曜「くっ!!」
偽メイド「言わずともわかってるだろうけど、眠らせるなんて無粋な真似はしないよ」
偽メイド「あんたの全力を見せな、曜ちゃん」
曜「言われなくてもそのつもりだよ」
曜「私の覚悟をぶつけるまで!」 >>282
【曜】
見捨ててないし変えてないコロコロ
叶えたい夢が増えただけのこと
飛び込んだ以上は戻らない
怨まれようと払うものはない ドオオオオン
偽メイド「くっ!」
偽メイド「そんな程度で、あたしを止められると思ったら大間違いだよ」
偽メイド「あたしはあの子のためにも止まれないんだ」 >>284
【偽メイド】
考えろ自覚しろ選択の重さ
軽く動くメンタルは愚か
追いかけ届かず転落する者たち
その顛末なんて無視かクソガキ
あんたの才能をおもちゃにするな
周りの待望などゴミかクズか
背負った夢を見て見ぬ振り
無責任すぎだろその身の振り ドオオオン
曜「くっ!」
偽メイド「あんたの新しい夢とやらがどれだけの人間の運命を狂わせたか…わかってないわけじゃないでしょ?」
偽メイド「あの子が目を覚まして、高飛び込みもスクールアイドルもやるなんて言ってるあんたを見たら…どうなる?」
偽メイド「あんたは、あんたちAqoursは壊したんだ!あの子が追っていた夢も、帰ってくる目的も!」
千歌「勝手なこと言うな!」
曜「千歌ちゃん」 千歌「そんなの、曜ちゃんのせいじゃないだろ!」
偽メイド「だったらあなたのせいかな?千歌ちゃん」
千歌「…私?」
偽メイド「聞いたよ。スクールアイドルをはじめたのは千歌ちゃんがきっかけなんだって?」
偽メイド「ねえ、千歌ちゃんはさ…申し訳なく思わないの?曜ちゃんがAqoursにいることで運命が狂っちゃった人がいることを」
千歌「……」
千歌「まあ…思わないこともないよ。でも、それ以上に私は曜ちゃんとスクールアイドルをできることが嬉しい」
千歌「それに私の言いたいことはさっき存分に聞かせたはずだよ?」 偽メイド「そうだったね。無粋だった」
偽メイド「よかったね曜ちゃん。ここまで言ってくれる千歌ちゃんと一緒にスクールアイドルができて」
偽メイド「で、それで?スクールアイドルも飛び込みも頑張ってますと…」
偽メイド「…ねえ?あの子はそんな奴に追いつくために命をかけたの?」
曜「…あなたは私にどうしてほしいの?」
偽メイド「無いよ」
曜「無い?」 偽メイド「どうしてほしいとか、そんなのは無い」
偽メイド「そうだよ。これはただの行き場のない気持ちの八つ当たりだ」
偽メイド「だけどね。この行き場のない気持ちが今日まであたしを突き動かしてきたんだ」
曜「……言いたいことはわかったよ」
曜「でも、私は飛び込んだんだ。こういうことを言われるのを覚悟でスクールアイドルっていう新しい海へ」
曜「だから、貫き通すよ」 >>286
【曜】
あなたたちの苦悩は計り知れない
あなたたちを愚弄したかもしれない
でも私にもある引けない都合
私にだってある譲れない渇望
待望されて求められた理想像
はいそうですか聞けませんと応答
17になった私の衝動
自由な波を縛るなと豪語 ドオオオオン!!
偽メイド「くあっ!」
偽メイド「このっ!子供の分際で」
曜「私は子供で無責任なのかもしれないけど、誰かに生き方を指図なんてされたくない」
偽メイド「その認識が甘いんだよ」 >>291
【偽メイド】
あんたの自由を縛るなとかまったく
そんな言葉でするかよ納得
ガキの論理は身勝手だ結局
おねーさんがこれだけは言っとく
無計画な勝者が生むのはカオス
無自覚に敗者をこき下ろす
高みから笑顔で何人も落とす
その手で悲劇を巻き起こす ドオオオオオオン
曜「ぐぁっ!」
偽メイド「………私だってどうしたらいいかわからないよ。でも、確かなのはこの気持ちは自然に無くなったりはしない」
偽メイド「そして、あんたが苦しみの元凶なんだ」
曜「…そうだね、私のせいであなたや妹さんや何人もの人が傷ついた」
曜「私がスクールアイドルをやらなければ、何もしなければ、傷つかなかった人もいるんだろうね」
曜「だけど、私はスクールアイドルになったことを後悔していないよ。スクールアイドルになったからわかったことやできることがあるんだ」 偽メイド「後悔してないときたか…」
曜「…あのね」
曜「スクールアイドルはね、みんなが誰かの一番になれるかもしれないんだ。」
曜「まあ、順位がついちゃうこともあるけどさ…勝ち負けとか優劣とか超えて同じものを感じて、同じ景色を見られるかもしれない。それに気づいたんだ」
曜「私がこれに気づくために傷ついたり運命が狂っちゃった人がいるのはわかってる」
曜「だから、私はその人たちを救える人になりたいんだ」
曜「スクールアイドルとなって一回り成長した渡辺曜としてね」
曜「見せてあげる…これが、スクールアイドル渡辺曜だよ!」 >>293
【曜】
なってやる幸せ作るスクールアイドル
落ちゆく手すらも救うために取る
踏み出した足で証明してみせる
飛び込んだ心が目にもの見せる
やっぱりやっかみあるよね複雑
だったら笑ってリアルとぶつかる
痛み待つ水面に進路を取ろう
さあ、全速前進ヨーソロー ドオオオオオオン!!!
偽メイド「ああっ!」
曜「許してなんていう気はないよ。私がいなかったら少なくともあなたの妹さんは無事だった」
曜「私は多分、これからもだれかの人生をねじ曲げて、不幸にして、恨まれてを繰り返す」
曜「だったら、それ以上に幸せにしてみせる」
曜「私にできること全部やって、起こす不幸よりも幸せを増やす」
曜「もし、妹さんがスクールアイドルをやっている私を見ても絶望なんかさせない」 曜「勝ち負けとか挫折なんてどうでも良くなるくらい楽しませて幸せにしてみせる。それがAqoursの渡辺曜のステージだからね」
曜「これがあなたの八つ当たりに対する私の回答だよ」
偽メイド「…………」
偽メイド「そうか、じゃあ…せいぜい全力を尽くしなよ」
曜「メイドさん…」
偽メイド「いや、私はメイドじゃないんだからその呼ばれ方もどうかと思うけど」
偽メイド「ただの八つ当たりにそこまで答えてもらえたなら、私としては満足だよ」 偽メイド「…千歌ちゃんと曜ちゃんのラップを聞いて、ようやく気づいたよ」
偽メイド「私はね、今日あんたらに負けるずっと前に自分に負けてたんだ」
偽メイド「ごめんね…ひどいことして」
偽メイド「本当のこと言うとね、どっかで気づいてた…こんなことしても何にもならないし、誰かを恨むのは筋違いだって」
偽メイド「曜ちゃんに復讐するって集めたやつらのラップ聞いた時、はらわたが煮えくり返った」
偽メイド「私が言えたことじゃないんだけど、あんなの逆恨みですらない。赤ん坊の方がよっぽどうまく自分と向き合ってるよ」
偽メイド「あんな胸糞悪い言葉に無理やり拍手して、心にも無い賞賛して…私はなにやってたんだろうね」 偽メイド「あいつらの何倍も努力してたあの子の姿をあいつらに見せてやりたかったよ」
偽メイド「辛いとか苦しいとかあの子は一言も言わなかったんだ」
千歌「ねえ、これは不謹慎かもしれないんだけどさ…」
千歌「妹さんもあなたも曜ちゃんからもらったのは不幸だけじゃないんじゃない?」
偽メイド「…うん、そうだね」
偽メイド「あの子は輝いてたよ。努力して、いつか曜ちゃんと競える飛び込み選手になるんだって毎日必死に練習してた。飛び込みのことを語るあの子はキラキラしてた。とっても幸せそうだった」
偽メイド「私も幸せだった。それなのに忘れてたんだ。何のことはない、幸せを壊したのは私自身だったんだ」 偽メイド「ねえ、曜ちゃん…もしあの子が目を覚まして、また飛び込みを始めたら、私の代わりに見守ってやってくれないかな?」
曜「うん、いいよ」
偽メイド「そっか、ありがと…私の妹の名前はね…」
警官「おい、いたぞ!」
警官「犯人グループのリーダーを発見!至急確保!」
曜「そんな…」
偽メイド「ごめん…時間切れみたいだ」 曜(警官がメイドさんを取り囲み、犯人グループのリーダーは確保された。抵抗も全くしなかった)
警官「…ご協力、ありがとうございます」
曜「なんでここが…?」
警官「犯人の居場所に心当たりがありそうだったので後をつけさせてもらいました。マイク所持だと聞いていましたので、しばらく様子を見させてもらいましたが」
警官「もう、マイク使用の危険性も無さそうでしたので、確保に踏み切りました」
千歌「私たちを利用したってこと?」
曜「だったら聞いてたよね?あの人は…」
警官「身内の不幸からの怨恨で罪を犯した犯罪者、それ以上でも以下でもありませんよ」
警官「あなた方の荷物は見つかりましたので係員より受け取りください。詳しい事情の聴取は後日にします。ホテルへの宿泊も可能なようですので、本日はゆっくりお休みください」 【HIMENO SIDE】
〜4月17日 22:15〜
〜都内の公園〜
曜『これが、今日の事件のすべてだよ』
姫乃「そうでしたか…」
果林「なんか、こうきくと…やるせないわね」
エマ「あの人にはあの人の事情があったってことだもんね」
鞠莉「…そうですよね」 かのん「あの、今の話ではっきりわかりました」
かのん「間違いないです。私、その人も妹さんも知ってます」
璃奈『えっと…話してるとこ、ごめん』
璃奈『だましだましやってきたけど、そろそろ私のスマホが限界っぽい』
曜『ごめん…璃奈ちゃん』
姫乃(それから私と曜さんとかのんさんは互いの連絡先を交換して通話を終わらせた) 姫乃「果林さん、今日はありがとうございました」
果林「ずいぶんと遅れてしまったけどね」
エマ「姫乃ちゃんに会えてよかったよ」
姫乃「スイスは呼んでませんよ?」
エマ「んー、姫乃ちゃんのいじわる」
果林「あ…」
姫乃「どうかしました?」 果林「私とエマの荷物、まだ向こうじゃない?」
エマ「あー、そうだね」
果林「それに、こんな時間じゃ寮の門限が」
鞠莉「ふふふ…」
果林「あ…もしかして」
鞠莉「これはまたマリーのヘリが大活躍かしらね」 鞠莉「では、さっそく戻るわよ。寮の方にはマリーの方からなんやかんや言っておくわ」
果林「ちょっと!また乗るの!?」
鞠莉「天気も安定したしさっきほどじゃないわよ」
エマ「姫乃ちゃーん!またねー!」
姫乃(こうして、私の何もないようで以外と色々あった誕生日は幕を閉じました)
姫乃(そして…) 【epilogue】
〜5月4日 14:30〜
〜藤黄学園〜
姫乃「今日は私たちのライブに来てくださり、ありがとうございました!」
ワアアアアアアアア
………
………………
姫乃「今日のライブ、いつも以上のパフォーマンスができた気がします。これは…果林さんをも超えたかもしれません!」
曜「良いライブだったね。姫乃ちゃん」 姫乃「曜さん、沼津からありがとうございます」
かのん「えっと、お久しぶりです」
姫乃「かのんさんも、今日はありがとうございます」
曜「藤黄か…これはまた強敵を見つけちゃったかな」
姫乃「ナンバーワンアイドルさんからのお墨付きとは光栄です…って…あ」
曜「あー、まあ私の一強ってわけでもなかったってだけだよ」
曜「それに、今なんか燃えてるんだ。なんだかんだ私も一番がほしかったみたいだね」 姫乃「そのメンタルがスーパーアイドルの資質なんですかね」
曜「だったら姫乃ちゃんもだよ。エマさんから色々聞いてるよ」
姫乃「はは…スイ…エマさんにも困ったものです」
姫乃「で、行くんですよね今日」
姫乃「…しかし、曜さんとかのんさんはともかく私までご一緒して良いのでしょうか?」
曜「当たり前だよ。姫乃ちゃんが私たちをつないだんだよ。だったら一緒に来ないと」
かのん「では、行きましょうか」
姫乃「ええ、そうですね」 〜5月4日 16:00〜
〜都内病院〜
曜「あの日からずいぶんかかっちゃったな」
姫乃「事件の後も色々あったみたいですし、三人ともなれば意外と予定が合わないものです」
かのん「ここです」
姫乃(病室には陽の光を浴びて眠り続ける女の子、私と同い年でしたっけ)
姫乃(…とあと一人)
「ようやくご対面かね。っと、その子が綾小路姫乃ちゃんか」 姫乃「えと、もしかしてですがこの人は」
曜「あ、うん…あの事件の犯人グループのリーダーの」
小原家メイド「この度、正式に小原家のメイドとなりました。よろしくお願いします…なんてね」
小原家メイド「あ、そっかメイド服着てくればよかったか。これは失敗したなー」
姫乃「あの…この人、一応は犯罪者では?良いのですか?」
小原家メイド「あたしもさ…まあ、あの日に色々と決意を固めてたんだけどね」
小原家メイド「いやー、小原家の御令嬢…おっと、鞠莉様だった!鞠莉様も物好きだね。『ホテルオハラであれだけの事件を起こすとはただものじゃないでーす』とかでスカウトされたんだよ」 小原家メイド「でもって、全員に口裏合わさせてあの日の事件は鞠莉様の壮大なドッキリってことになりました」
小原家メイド「…というのが、あたしの聞いた話なんだけど、28人もその他諸々も揃いにも揃ってお人好しだね」
小原家メイド「しかも、それを言い出したのは曜ちゃんと千歌ちゃんらしいじゃんか?被害者筆頭がどういう風の吹き回しさ」
曜「私にできることを全部やるって言ったはずだけど?」
曜「私はあなたを助けたいと思ったから助けた。あなたの言う軽い気持ちのガキの身勝手だよ」
小原家メイド「まっ、おかげで淡島なんて辺鄙なところに住むことになったけど、私はこうして無事でいられるわけだ。いつもじゃないけど、こうして見舞いにも来れるしね」 小原家メイド「あたしのやったことが帳消しになるとは思わない、どんな形でもいいから返していくよ。この子に顔向けできるようにね」
姫乃「なるほど、まるく収まって良かった…のですよねきっと」
姫乃「それにしても曜さん、かのんさん…私はこのことを今初めてきいたのですが?」
曜「あはは…なんのことやら」
かのん「まあ、細かいことは気にせずに」
小原家メイド「さて、あたしの計画を阻んだ姫乃ちゃんの顔も見られたことだし、そろそろ帰るよ」
小原家メイド「あ、かのんちゃん。気が向いたらまたカフェ行くね。マンマルにも会いたいし」
かのん「うん、お待ちしております」 姫乃「…行ってしまいましたね」
曜「うん」
曜「じゃあ…」
姫乃(曜さんが女の子の名前を呼んで手を取る)
曜「あなたのお姉さんは、やり方は悪かったかもしれないけどあなたのことを思って戦える強い人だよ」
曜「お姉さんも私も姫乃ちゃんもかのんちゃんも、みんなあなたが目覚めるのを待ってるから、だから帰ってきて」
曜「それでまた飛び込みで競って、私たちのライブにも来てほしい。あなたの知らないスクールアイドルとしての私も見て、そして好きになってほしい」 姫乃「大切な人を待つのは苦ではないですが、やはり待ち続けるのは疲れます。早く帰ってきてお姉さんを安心させて下さいね」
かのん「また姉妹でお店に来てください。とっておきのラテアート見せてあげます」
姫乃(彼女に言葉が届いたのか、それはわかりません)
姫乃(でも、今届かなくてもきっとその言葉に意味はあるのでしょう…言葉を伝えようとすることで起きる奇跡もあるのですから)
姫乃(私と曜さんの誕生日にはじまった騒動の話はこれで終わりです)
姫乃(これから何回誕生日を迎えることになるかはわからないけれど、そのたびにきっと私はこのことを思い出すのでしょう)
姫乃(願わくばその時に、この姉妹がまた幸せに笑い合えていてほしいとそう思います)
〜完〜 当初の予定とは随分と変わりましたが完結です
作り直しついでにいろいろいじった結果思わぬ長編になりましたが書ききれて良かったです
メイドさんについては当初はただの悪役だったのですが、書いてるうちに愛着が湧いてきてこんな結末になりました ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています