OP侑ちゃん「いこう 明日へ……ねぇ……」
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いつのことだったろうか。
誰が書いたのかも忘れたこの歌詞に
耳を傾けながら、こんな風に空を見上げてた気がする。
明日と言うのは、今のこの世界の事だろうか。あの日この歌を歌った誰かは
今日も明日に想いを馳せて歌っているのだろうか。
もっとも、上も下もただひたすらに青いだけしか取り柄のないこの世界では、歌なんてこの趣味の悪い群青に溶け込んで直ぐに消えてしまう。
私がこの歌を聴くことはもう二度と無いだろう。 代わり映えのしない空の色を眺めて首が痛くなるのはひたすらに無意味な気がして、だらんと首を下ろす。
身体を動かした反動で生まれる水の
波紋の無感情さにウンザリして、何を思い出したかったのかどうでも良く
なる。
「侑ちゃーん!」
しかし、この世界が無意味なものだとは思わない。たった一つ、私は今でも守る意味のあるモノを確かに持っているのだった。
「……歩夢」
たった一つ、この娘の笑顔だけは。 「侑ちゃん、見てコレ! あったよ食料」
「お、ありがとー………えっ!?鯖味噌!スパムもある!………フルーツポンチだ!!凄いよ歩夢!!いつも歩夢の番の時はスッゴいものが一つは入ってるけど、今回は過去さいっこーじゃん!」
「ううん、こんなのたまたまだよ、
むしろ私にはこんな事しか出来ないから、侑ちゃんにはなるべく良いもの食べて欲しいんだ…」 「なに言ってんの、歩夢。歩夢がいてくれるから私はこうやって」
ヒトでいられるんだ。
「ん?私がいるから…何?」
「歩夢がいるからー…視力が下がらないで済むんだよ~!ずっと見てても飽きないもん!」
「もーっ////侑ちゃんっ!////
くっついたら汚いよ?ほら、そろそろ移動しないとっ!」
「うーん、もうちょっとだけ補給させてー」
「だーめっ、もうここに来てから半月だよ?そろそろ安全じゃないんだから」
「はーい………ショボン」 恒例のイチャイチャタイムも程々に、
僅かな荷物を抱え、二人で缶詰を分け合いながら歩き出す。くるぶしが常に水に使っている感覚にも慣れた。
靴を用意しなくなったのは気楽でいいかも知れない。
「次の家、どこにするの?」
「そうだね~、取り敢えず2時間ぐらい行ってみよっか」
歩夢は拠点の事を家という。
こういうフワフワしたところが私の真っ黒に染まりそうな心を崖際で留めてくれている。
まあ、どこまで行っても水平線しかないこの世界では、元がどんな場所でも変わらないのだが。
考えるのは、歩夢が食料調達当番になった時の負担を少しでも減らしてあげることくらいだが、食料確保において好条件な立地はない。
私達が食べているのは、完水没地帯から流れてくる僅かな食べ物達。きっと逃げ遅れた人たちの最後の希望だったであろう食料。
潮が満ち一瞬水位が一上がる時間帯。
何も取れなければ明日は無いと一心不乱になって死者の残り物を漁る私達にはハイエナという言葉が似合うだろうか。
歩夢にそんな事を言う奴がいたら許さないけれど。 宣言通り2時間ほど来て、今日の移動は取り敢えずここまで。頑張り過ぎた時もあったが、食料も温存したいし、ちゃんとした睡眠も取れない今の世界では、毎日一歩一歩が大事だよと教わった。
それに、やるべき事はまだある。
────水の波紋が激しくなり、激しく舞う水泡一つ一つが纏まり形生き物のを取っていく。
「歩夢、下がって。」
「うん…」 申し訳無さそうに肩をすくめる歩むに一言暇も与えてくれず、めでたくない事に今しがた誕生した水の異形は、やんちゃな事にいきなり私の命に手を伸ばす。
このタイプの初撃は大体が単純に右腕を振り回すだけだ。見飽きた。しゃがみの体制。しかし足は強く踏ん張り、
向こうが引き戻す前に一太刀で手癖の悪い腕を一本貰い受ける。
こんな姿でも痛覚はあるらしく、いかにもな悲鳴を上げる。生き物の真似事を。人間の真似事を。今すぐこの世から消えてくれ。右脇腹から左肩に掛けて袈裟斬り。対象を物言わぬ水に返す。
「歩夢、大丈夫?」 なんか方向性が定まらない
誤字ごめんなさい🙏
ちょっと風呂入ってくるわ 私が「大丈夫?」と聞くと、
歩夢は決まって「………うんっ!ありがとう侑ちゃん」と笑いかけてくれる。
膝が笑っているのを隠す為に足をピタッと閉じ、ビグビク震えてる手が見えないように背中で組んで、そして精一杯の笑顔で。
歩夢に危害を加えようとする敵を好きな訳がない。二度と顔を出すなといつも考えている。だけど、私はこの歩夢の仕草がどうしても好きなんだ。
その後歩夢は「いつもゴメンね」なんて言おうとするが、そんなの絶対に言わせない。私が歩夢の為にする行動は全てが私の存在理由なんだ。たとえ相手が歩夢でも、私という人間の意味を否定されるのは嫌だ。
これから私は、歩夢の震えがピッタリ止まるまで抱きしめてあげなければならない。
しかしその日の私はそんな事を考える暇もなく剣を振るっていた。
敵は倒したハズなのに、さっきより何倍も強く握って、何倍も殺意を込めて振るっていた。 「歩夢!歩夢!うあああああああああああ!!!!!クッソ…!!返せよ!!!なんで!!!歩夢!!!!!」
さっきのモノとは比較にならない
体躯。最早人の姿を保ってすらいない。「怪物」という言葉の持つ絶望感を凝縮して練り固められたその姿は
剣を振る私の絶望を一秒毎に濃くする。怪物は意味もなく生やし腐った細くミミズのような腕たちで歩夢を拘束し、卑しく歩夢の全てを絡め取ろうと迫る。
「いやああああああああああああ」
悲鳴。歩夢の悲鳴。歩夢が…泣いている。
「あああ…ああ…ああああああ…………」
黒い。アレルギーになるかと言うほど青かった世界がベタ塗りのように黒い。もういっそこのまま真っ黒に私を終わらせてくれ。私の歩夢が果てる姿だけは見せないでくれ。
私が持っているものを全て差し出すから、歩夢だけは…助けてやって下さい………!
恐らく人生最後の言葉。
私がこの世界で最も嫌いな言葉。
これに縋るものは最悪なこの世界の中で最低の弱者だ。例えば今の私の様な奴だろう。
「神様…………。」
やっぱりこの言葉は嫌いだ。もう真っ黒な世界で自分の無意味さをせせら笑う。その時だった。
──────────────────────────────────「…………スカーレットストーム……!」 >>28
今考えながら書いてるから話があっちこっち行ってるんやスマン 奇跡は使い切ったと思っていた。
あの日歩夢と一緒に生き残って、ここまで一緒に歩いてこれた。こんな世界で、歩夢が毎日笑いかけてくれる。
人生の中で奇跡が起きる回数が決まっているなら、私の貯金はとっくに底を付いていて、一緒に来てくれた歩夢の分まで無駄使いしているんじゃ無いかと、そのせいで歩夢までこんな目にあったんだと、そんなどうしようもないバカを呪う事だけに残り数秒の人生を使おうと思っていた。
そんなどうしようもない絶望は一瞬で灰になった。
炎。ひたすらに真っ赤な炎。あの日すべからく青に染められた世界をたった一人で覆すかのような赤。最早牧歌的ですらあった永遠の絶望感を焼き尽くし
本当の世界を取り戻さんと牙を向く憤怒の烈火。歩夢を捉えていた怪物は瞬きする間に影も形も失せ、火炎の担い手が涙を流す姫をそっと抱き寄せる。
救世主は振り返りへたる私に問う。
「大丈夫でしたか?」 命の恩人には本当に申し訳無いが、その時の私の頭の中には歩夢しか無かった。焦って恩人の腕から歩夢をひったくりひたすら呼びかける。
「歩夢!歩夢!歩夢!」
返事が無い。大丈夫だよ侑ちゃん
と言ってくれない。手遅れだったのだろうか。その時は本当に──……
「安心してください。気を失っているだけですよ。」
ハッとして歩夢の胸に顔を当て、心臓の鼓動を確認する。確かに歩夢の命はしっかりと一回一回刻まれていた。
テンパり過ぎだ。我ながら情けない。
やっと正気に戻り、目の前でやれやれと微笑む人物のしてくれた事をやっと
思い出す。
「あ…えっと…ありがとうごさいます…
本当に…私…もうダメかもって…歩夢がいなくなったら私も死ぬしかないじゃんって…だからホントに…ありがとう……」
「いいえ!私は当然の事をしたまで!!怪我が無くて良かったです!!あ!!でも貴方はボロボロですね!!大丈夫ですか!!どこか痛いですか!!
あ!!でも私救命道具持ってません!!
すみません!!!!」
どうやら性格も炎のような人らしい。
というかちょっと…いや大分暑苦しい。
「あー…えと…私は大丈夫!ちょっと吹っ飛ばされただけだし、それにすぐ助けに来てくれたから…!あ、そう言えば名前きいてなかっt」
「優木せつ菜です!!!!!」
「…あ、そうなんだ。改めて本当にありがとうせつ菜ちゃn」
「書き方は!!優!!木!!せつ!!菜!!です!!!」
「そう…なんだ…私は高咲 侑。
本当にありがとうせつ菜ちゃん。
この恩は一生忘れないよ。」
「………恩、ですか…。それは忘れて
下さった方が良いかもしれません。」
紅蓮に燃えていた優木せつ菜女史は、
急にツマミを弱火の方にギュッと絞られたかのように弱々しくなってしまった。 >>32
そうなんだ
なんか続き思い付かんから寝よっかな 文章上手だな、楽しみにしとるで
話の大まかな筋を一度決めておくのと、実際に文章を打つのは完全に別の作業として行ったほうが良い気がする
自分の場合この二つを並行させるのは、驚くほどしんどい
一度体を休めながら、話の持っていき方をきちんと考えるのもアリやな >>35
ありがとう
考えてみます
昼くらいからまた書くと思う 「私に…そんな資格なんてありません…私は誓いを破りました。そんな最低な人間が、人からのご恩を貰うなんて相応しくない。出来るだけ早く、私の事なんて忘れて下さい。 」
そんなこと出来るハズがない。
これからの私の人生全ては、さっきこの娘が与えてくれたものだ。1日だって忘れてやるものか。
「ううん、忘れないよ。だってせつ菜ちゃんのお影で私今ここに立ってるんだもん。そんな恥知らずな事出来るワケない。」
「……っ!…そうですか……でも、もう会う事は無いでしょう。どうやら貴方にも力はあるようですし、なんとか生き残ってくれる事、祈っています。では。」 嵐のように現れた彼女は、炎が燃え尽きる様に弱々しく、しかし正義の種火だけは確かに残したまま振り返らず去って行った。
「ん……侑…ちゃん……?」
どうやら私のお姫様がお目覚めの様だ。
「…歩夢ー………なんともないー?」
歩夢を腕の中に抱えたまま、頬を擦り髪を撫でる。私と歩夢と。この世界にまだ二人で居られる事を少し暖かい体温でゆっくり確認する。
「ちょっ…くすぐったいよ、侑ちゃんっ……/////」
「……そうだ、あの人は?」
「あの人?せつ菜ちゃんなら、もう行っちゃったよ。」
「そっか。気を失う前、一瞬顔が見えたんだ。うおおおおって向かってきて、そこからは覚えて無いんだけど。
多分、あの人が助けてくれたのかなって。」
「……………うん。そうだよ。優木せつ菜ちゃん。私達の命の恩人だね。」
無力な私とは違って。
「うんっ!また会えたらお礼、言わなきゃ。それにあの姿、一瞬だけだったけど、何というか…」
「ん?なんか引っかかる?」
「うーん…何というか…カッコよかった?いや、綺麗だった、というか…」
凛々しく立ち向かう後ろ姿。大丈夫ですか?と問う笑顔。絶望の色に反逆する炎。思い返すと、怪物が焼き尽くされる瞬間、私もそんな事を感じていた。確かに彼女は………
「うん…スゴかった、よね………。」
助けてもらった恩だけじゃ無い。
彼女対するこの感情。あの炎を分けてもらったかのように私の心にも灯っているキモチ。あの日より前の世界でも持ったことのない正体不明な何かに激しく心が振り乱されている。
これはなんだろう。多分、世界がこうなる前だったのなら、何か言語化出来たのかもしれないけれど。
このキモチを知ったのなら、ただ青いだけのこの世界は変えられるんじゃないかと。
私が剣を作るこの力。せつ菜ちゃんの炎を産むこの力。この不思議な力が関係しているのだろうか。
「歩夢…。」
「うん?」
「私も………………いや、やっぱり何でもない。」
「……そっか。じゃあ…そろそろ休もっか。」
私は何を口走ろうとしたのだろうか。
それは私なんかの身には余るモノだ。
私の人生の意味は変わらない。
この娘を守る。それだけが私に与えられた役目だ。 こんな世界にも朝日は昇る。
何回朝が来ようがこの世界が変化しないことはコッチもいい加減分かりきっている。意味の無いことはそろそろやめたらどうだろうかと一言言ってやりたいが、朝日に照らされて少しオレンジがかったこの寝顔が好きなので、今日のところは文句を言わないでやろうと思う。
まただ。おかしい。私は明らかにおかしくなっている。命を助けられてから数日。
私はふとした瞬間に、歩夢以外の顔を思い浮かるようになった。
消えない火が、毎日何かを訴えかけてくる。やめてくれ。私にそんな暇は無いんだ。私に歩夢以外の意味なんていらない。
「侑ちゃん……私、話したいことがあって……」
歩夢が私に何か切り出す時は、決まって私の事を気遣ってくれる時だ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています