歩夢「触れる指先、歪む愛」
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何かが変わることに対する不安。
それで決着はついたけれど……。
それはそれで別として侑ちゃんとお付き合いすることになりました。
侑「……っと!」
歩夢「あ……ごめんね?」
侑「ううん、大丈夫だよ」
侑「なんだか変だね、私達」
歩夢「うん、変かも」
歩夢「手ぐらい、いつも繋いでたのにね」
侑「そうなんだよね、でもなんか、さ」
歩夢「うん?」 侑「ううん、歩夢がこうして隣にいてくれて嬉しいなって」
歩夢「へ?も、もうっ!侑ちゃん恥ずかしいよ……」
侑「いいじゃんいいじゃん、素直な気持ちなんだから」
歩夢「うん……私も、嬉しい」
歩夢「好きだよ、侑ちゃん」
侑「うん、私も歩夢のこと大好きだよ」
そう言って笑う侑ちゃんがとても愛おしい。
触れる指先、それだけで幸せだった。
そのはずなのに……。 ――
侑「うん、それでね?」
侑「違うよー、そんなことないってば!」
歩夢「ん……?」
歩夢「侑ちゃんの声……?」
歩夢「気のせいかな……」
歩夢「ううん……
歩夢「……また、か」
歩夢「侑ちゃん、おはよう」
侑「あ、歩夢が起きたからもう切るね?」
侑「うん、また学校でね?はーい、ばいばい」 侑「おはよ、歩夢」
侑「ごめんね、起こしちゃった?」
歩夢「……ううん、そんなことないよ?」
歩夢「流石に中まではっきり聞こえたりしないよ」
侑「そっか、良かった」
歩夢「侑ちゃん最近早起きさんだね」
侑「うん!いつまでも歩夢に頼っていられないからね!」
侑「ちゃんと、朝起きられるようにならないと」
歩夢「……そっか、それはそれで寂しいな」 歩夢「本当に1人で起きられてるの?」
侑「なにー、歩夢疑ってるなー!」
侑「ちゃんと自分で起きてるよ、お母さんに起こしてもらってるとかじゃないから」
歩夢「そっちじゃないんだけどな……」ボソ
侑「ん?」
歩夢「ううん、それよりさっきのは音楽科の子?」
侑「そうだよ、転科した私に親切にしてくれて、仲良くなったんだ!」
歩夢「毎朝電話するために早起きしてるの?」
侑「え?違うよー」 侑「なんだか最近やる気に満ち溢れてるんだ!」
侑「やっぱり音楽科の子ってすごくってさ」
侑「もう結構経ったけど、少しでも追いついて追い越したいからね!」
侑「だから、ちょっとだけ早く起きて音楽の本読んだり」
歩夢「ふーん、そうなんだ」
歩夢「侑ちゃん頑張り屋さんだね」
侑「歩夢や他のみんなに負けてられないからね」
歩夢「うん、私も侑ちゃんに負けないように頑張るね」 侑「ふふっ、受けてたつよ!!」
侑「じゃ、1時間後またね!」
歩夢「うん、早く起きたからってその分のんびりして遅れないでよね」
侑「大丈夫だって!たぶん……」
歩夢「侑ちゃん?」
侑「じょーだん、じょーだん!」
侑「歩夢と一緒に学校行きたいからね」
歩夢「……うん、私も」
侑「じゃ、遅れないためにも名残惜しいけど、またね」
歩夢「うん、また後で」 ――
侑「あーゆむ!おはよ」
歩夢「おはよう、侑ちゃん」
侑「じゃ、行こっか」
侑「はい、手」
歩夢「うん!」
侑「さすがにもう手を繋ぐのは慣れた……というか戻ったというか」
歩夢「でも、やっぱり私はドキドキするよ?」
侑「むぅ、そう言われちゃうと、私がドキドキしてないみたいじゃんかー」
侑「私だって、歩夢に触れるといつだってドキドキしちゃうよ」
歩夢「ふふっ、そっか良かった」
侑「もちろん、手……だけじゃなくてね?」
歩夢「も、もぅ!侑ちゃん!!」 侑「ごめんごめん、ほら歩夢、おはようのチューは?」
歩夢「こんなとこでするわけないでしょ!」
侑「ここ、じゃなかったらいいんだ?」
歩夢「侑ちゃん!!怒るよ!」
侑「ふふっ、ごめんね?歩夢」
侑「歩夢が可愛いからついからかっちゃいたくなるんだよ」
侑「いつだって、ね?」
歩夢「もう知らない!」
侑「あ、歩夢待ってよー!ごめんってば!」
侑ちゃんを置いて歩き出す。
大体、侑ちゃんだって、その……うん。
その時は可愛い顔するくせに。 侑「歩夢!」
歩夢「ん?」
侑「どしたの?顔、赤いよ」
歩夢「別になんでもないっ!」
侑「それならいいんだけど……体調悪かったらすぐ言ってね?」
歩夢「うん、ありがとう」
侑「そう、それで!」
侑「私今日帰りちょっと音楽室で用事あるから先に帰ってもいいよ」
歩夢「時間かかるの?」
侑「うーん、そっちの練習終わって少しだと思うけど……」
侑「だから、同好会自体も途中で抜けることになると思う」
歩夢「そっか、それなら私待ってるよ?」 侑「でも……」
歩夢「少しだけなんでしょ?」
侑「うん、じゃあお願いしようかな?」
歩夢「じゃあ、同好会終わったらそっち迎えに行くね」
歩夢「外で少しだけ待ってるよ」
侑「分かった!ありがとね歩夢」
歩夢「ううん、私も侑ちゃんと帰りたいし」
侑「私も私も!」 ――
音楽室
侑「うん、ありがとう大好き!」
侑「え?本心だよー」
侑「でも、中々難しいな、やっぱり」
侑「もちろん頑張るよ!」
侑「貴女もいるしね」
侑「あ、ちょっと……」
侑「……ゴミ、ついてた」ニコッ
同好会の練習が終わって、侑ちゃんを迎えに行った私に待っていたのは……。
大好き?ハグ?キス?
侑ちゃんのことだもん、きっと勘違い。 角度でそう見えてしまっただけ。
そう信じてる。
だけど、心が、ざわつく。
侑「あ、歩夢ー!」
歩夢「え?ゆ、うちゃん?」
侑「私もちょうど終わったんだー」
歩夢「へ?あ、そうなんだ」
歩夢「あれ、お友達は?」
侑「うん、もうちょっとだけ練習するんだって、奥の方行っちゃった」
歩夢「そ、そっか」
侑「ん?どうしたの?」
歩夢「ううん、なんでもないよ」 侑「そう?」
歩夢「仲、いいんだね」
侑「ふふ、まぁね!」
侑「やっぱり、転科がないことはないとはいえ、珍しいのは珍しいからね」
侑「みんな気さくに話しかけてくれるし、教えてってお願いしたら、優しく教えてくれるし」
歩夢「侑ちゃんの魅力だね」
侑「そうかな?」
侑「照れちゃうじゃん」
歩夢「昔からお友達作るの上手だったもんね」 侑「どうだろ、やっぱり歩夢がそばにいてくれたからってのもあるかなぁ?」
侑「なにがあっても、歩夢だけはいつも一緒だって、ね」
歩夢「これからも、そう……だよね?」
侑「ふふ、当たり前じゃん!」
侑「私が離さないよ!」
侑「そう、なにがあってもね」
歩夢「それなら、良かった」
本当に安心していいのかな。
侑ちゃんがそう言ってくれて嬉しい。
きっと大丈夫。 色んな感情がごちゃ混ぜになりながら、そんなのは心の底に押し付けて。
他愛もない話をして、今日はお別れの時間。
歩夢「明日はお休みだけど、朝から練習だからね?」
侑「もちろん分かってるよ」
侑「それじゃ、」
歩夢「あ、侑ちゃん!」
侑「ん?どうしたの?」
歩夢「……ううん、なんでもない」
侑「そう?それならいいけど……」
歩夢「大丈夫だよ、何言うか忘れちゃった」
侑「歩夢ボケるにはまだ早いよ?」 歩夢「きっと、大したことじゃないんだよ」
侑「ま、思い出したら教えてよ」
歩夢「うん、それじゃあまた明日」
侑「うん、また明日、ばいばい」
歩夢「ばいばい」
歩夢「…………」
歩夢「本当は聞きたかった、教えて欲しかった」
歩夢「いけないことなかったよって」
パタリと閉まる静かな冷たいドア。
分厚い壁の向こう側にいる貴女への愛を、貴女からの愛を……
歩夢「疑いたくなんてないよ……」 ――
翌日
歩夢「え?体調が悪い?」
侑「うん……大したことはないんだけど……」
侑「みんなに移したら悪いし今日はお休みするね」
歩夢「そっか……ほんとは看病してあげたいけど……」
侑「ダメダメ!歩夢はスクールアイドル頑張ってもらわないと!」
侑「歩夢とみんなが頑張ってくれるのが一番の薬なんだから!」
歩夢「分かった、それじゃ、帰ってきた時また見に行くね」
侑「うん、寝てたりしたらごめんね」
歩夢「うん……じゃあお大事にね?」
歩夢「行ってきます」
侑「はーい、行ってらっしゃい」
短い通話が切れた後、どこか少しホッとして。
だって、体調が悪いなら誰とも会えないよね。 歩夢のこういう不安になっちゃう部分はなかなか変わらなさそう。信じる信じないじゃなくて ・
・
・
prrrrr!prrrrr!
歩夢「侑ちゃん寝ちゃってるのかな?」
歩夢「起きたら電話、かかってくるよね」
歩夢「せっかくのいい天気だったんだけどなぁ……」
歩夢「お出かけできれば嬉しかったんだけど」
歩夢「たまにはお家でのんびりもいいよね」
なんて、ひとりごと言いながら、ベランダへ出る。
きっと暖かそうな日差しに誘われたんだ。
出なければ何もなかったのかな。
とぼけた声を出しながら体を上に伸ばす。
なにかが、聞こえる。 侑「えー、もう帰っちゃうのー!」
侑「まだ大丈夫だよ!」
歩夢「…………え」
聞こえた。
侑ちゃんの声。それともうひとつ。
くらりと視界が歪む。
咄嗟に掴んだ金属の柵がひどく冷たい。
こんなにもいい天気なのに。 歩夢「……どういうこと?」
歩夢「嘘だよ、嘘」
歩夢「そんなの……」
歩夢「…………」
歩夢「確かめなくちゃ」
歩夢「そうだよね」
歩夢「だって、侑ちゃんのこと好きなのは私だもん」
歩夢「侑ちゃんも私のこと、好きだって言ってくれるもん」
歩夢「今、行くね、侑ちゃん」
歩夢「鍵、くれたもんね」
歩夢「必要だもんね?」
鍵を持って自室を出る。
隣の家のドアの前、鍵を差し込む。 歩夢「ごめんね」
歩夢「おじゃまします」
歩夢「なにもなければ、帰るから」
歩夢「きっとお見舞いに……」
侑ちゃんの部屋のドアの前、耳を澄ます。
僅かに開いた隙間から目を凝らす。
心が歪む。背徳感が心に響く。
侑ちゃん。
其れは私じゃないよ。 侑「そっかぁ、じゃあしょうがないかぁ……」
侑「今日は朝からありがとうね」
侑「いっぱい教えてもらって嬉しかったよ!」
侑「え?本当だってば!」
侑「また、お願いしようかなー」
侑「ほらほら、感謝のハグっ!」
侑「なんてね?」
侑「下まで送るよ」
侑「えぇ?そう?それなら……」
侑「本当に今日はありがとうね、貴女の色んな顔も見れて楽しかったかも」
侑「じゃあね!バイバーイ」
どうしたらいいのかな。
どうしよう。
違う部屋に隠れて、ドアにもたれてしゃがみ込む。 多分友達を部屋に上げただけみたいな感覚なんだろうけどね。同性の場合はその辺が難しそう 電話が鳴る。
震えた手で電話を取り出す。
出れないよ。
歩夢「だって……そっちからは繋がってないんだから」
歩夢「繋がりは一方通行の想いだったんだから」
歩夢「そう、断線寸前の片道だけ」 ラブライブだと同性だからピンとこないけど
リアルに置き換えるなら異性と仲良くしてるのと同じなのかな ――
侑「…………」
侑「ふふっ、歩夢から電話あったんだ」
侑「どうだったかな?」
侑「楽しみだな」
prrrrr!prrrrr!
侑「あれ?」
侑「出ない、かな?」
ノックの音が響く。
歩夢かな? 歩夢「…………」
侑「歩夢、早かったね」
歩夢「うん」
侑「どうしたの?」
歩夢「ごめんね、私隣にいたんだ」
侑「隣?」
侑「元々家は隣じゃん?」
歩夢「侑ちゃんのお家にいたの」
歩夢「だから、早かったの」 歩夢「ねぇ、侑ちゃん」
歩夢「私にとってね、侑ちゃんってこの世にたった1人のかけがえのない大切な人なの」
歩夢「私にとっては唯一無二の人なの」
侑「歩夢?私だって、歩夢は……」
歩夢「嘘」
歩夢「ねぇ、私のこの気持ちは……」
歩夢「私の侑ちゃんへの愛はどこへやればいいの!?」
歩夢「侑ちゃんが好きだって止まらない想いは!」
歩夢「侑ちゃんが受け止めてくれないと!私……私はっ!」
歩夢「……っ!」
侑「ん……」
歩夢「……」 侑「大丈夫だよ、歩夢」
侑「歩夢こと大好きだよ」
侑「愛してる」
侑「いいよ、素直じゃなくたって、思うままに大嫌いだ、なんて言われても、私は歩夢を愛してるよ」
歩夢「嫌い……」
歩夢「私を裏切ろうとする侑ちゃんなんて嫌い」
侑「そっか」
侑「もっと歩夢の声を聞かせて?」
侑「もっと歩夢の顔を見せて?」
侑「どうして怒ってるの?」
侑「どうしてそんな悲しそうな表情しているの?」
侑「もっと歩夢を知りたいな」
侑「教えて?」 歩夢「私、侑ちゃんと付き合ってるんだよね?」
侑「うん、そうだね」
歩夢「侑ちゃんは私が嫌いになったの?」
侑「ううん、ずっと言ってるでしょ?」
侑「大好きだよ」
歩夢「じゃあ、どうして他の人に触るの?」
歩夢「好きって言えるの?」
侑「他の人好きになったらいけない?」
歩夢「ダメ」
侑「歩夢のことが一番大好きだよ?」
侑「別に恋愛ってわけじゃない」
侑「そう、友愛とか」
侑「愛って色々あるでしょ?」 侑「うん、私が恋してるのは歩夢だし、愛してるのも歩夢だよ」
侑「歩夢は?」
歩夢「好き」
歩夢「でも、どうしたらいいかわかんないよ」
侑「そっかそっか」
侑「いいよ、大丈夫」
侑「うん、大丈夫だよ、私が愛を注いであげる」
侑「ほら、私を愛してるって言えないでしょ?」
侑「そこ、塞いで、注いであげる」
歩夢「んっ……」 侑「大丈夫、私は歩夢のこと大好きだよ、愛してるから」
侑「他の声なんて聞かなくていいんだよ」
侑「他のものなんて見なくていい」
侑「耳を塞いで、目を閉じて」
侑「私が全部全部、塞いであげるからね?」
侑「愛を、注いであげる」
歩夢「うん、ごめんね……」
歩夢「嫌いにならないでね?私のこと捨てないで……」
侑「ふふっ、私にしか歩夢は愛せないよ」
侑「他の誰も歩夢を愛することなんてできないんだから」
侑「誰もできないよ」
侑「ここは歩夢と私だけの世界だよ」 侑「誰にもできないような愛し方で歩夢を満たしてあげる」
侑「絶対に他の誰にも歩夢には触れさせないよ」
歩夢「侑、ちゃ……」
侑「歩夢、私の愛を受け止めてね」
歩夢「……っ」
歩夢「うん……侑ちゃん、大好きだよ」
歩夢「愛してる」
侑「沈んでいこう、堕ちていこう、一緒に」
侑「もっと、歩夢を見せて?」
侑「歩夢は私のお姫様だよ、たとえ世界が壊れても、ね」
侑「だから……」
その表情で、その身体で、その啼き方で……。
私を満たしてね。
指先で触れるそのすべてが愛おしい。 おしまい。
コメントくださった方ありがとうございました。
とても嬉しかったです。
連投規制対策で投稿遅くなってしまいました。
グダグダに感じたら申し訳ないです。 おつでした。こういう雰囲気のもすごく好きだ。連投規制はクッキーを削除すると解除されると見たことある 落とされてく側の心情描写見ながらってのが新鮮だったわ
おつおつ 二人ともどこか壊れてる感じが良い
🌸cメ*˶ˆ ᴗ ˆ˵リ 乙だよ! @cメ*˶˘ ᴗ ˘˵リ ……こういうのもいいかな? 乙 終盤の会話の応酬にこっちまで引きずり込まれそうになりました
この侑ちゃんすごく魅力的 >>69
ありがとうございます。
そうなんですね!
教えて頂きありがとうございます! このほんのりダークな感じ良いね
基本イチャイチャとかギャグが多いけどこういうのも大好き おつです
歩夢もそうだけど侑ちゃんからの嫉妬もあったおかげでこういう共依存もあり得るゆうぽむほんと好きだわ 実は侑ちゃんの方が独占欲が強いのがめちゃくちゃ好き
幼馴染の2人だけの箱庭は最高...... 歩夢を依存させたのは侑ちゃんの方で侑ちゃんの方がやべー感じだったってことか……こういうのも好き
おつです! ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています