ヴァンパイアハンターエマちゃん
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代行
注記事項
ssどころかスレ立ても初めてです
エマ主人公ですが暫く侑視点続きます 歩夢「ごめんねーかすみちゃん今私着替えてるんだー」
ニタニタ笑ったまま歩夢が答える。
カーテンの前でかすみちゃん達が立ち止まった。
かすみ「そうですか具合はどうですか?」
歩夢「もう大丈夫だよ。
練習終わっちゃった?」
かすみ「はい。
エマ先輩も用事があるからって練習を抜けてしまったので、今日はもう練習を切り上げました」
歩夢「そっかー残念。皆んなに悪いことしちゃったかな」
侑(ごめん!かすみちゃん、はやく帰って!)
私は身勝手に心の中で必死に祈る。 かすみ「気にしないで下さいよ!
かすみんも元気な歩夢先輩が一番大好きですから!」
健気な後輩を邪険に思っている自分が情けなくなる。
だけどこれで歩夢が話をまとめてくれれば切り抜けられる。
そう思った矢先のこと。
侑(歩夢、何して⁉︎)
歩夢がシャツの隙間に手を忍ばせ、胸を弄び始めた。
身体が急速に火照っていくのを感じる。
吸血行為は歩夢への医療なのだと今まで心に言い聞かせてきた。
けれどこれは違う。
淫らで、いやらしい、紛れもない性行為。
もし見られてもこの格好ではスキンシップという言い訳は通用しないだろう。
侑(お願いかすみちゃん!はやく帰って!)
そんなわたしの心を見透かし嘲笑うかのように、歩夢は反対側の肩に牙を突き刺した。 胸への刺激、吸血の快楽、場の背徳感で脳みそがぐしゃぐしゃきなる。
歩夢は器用にかすみちゃんとの他愛の会話を続けていたが、私は声をあげないようにするので精一杯だった。
かすみ「そういえば、侑先輩はここにいませんか?」
侑(!?)
歩夢「侑ちゃはねー」
嫌だ、歩夢。
こんなの誰にも見られたくない。
お願いだから余計なことはしないで。
歩夢「先に帰っちゃったよ」
緊張が解ける。
私の心の訴えが通じたのだろうか。
歩夢「ここにいるの、バレないようにしないとね♡」
侑「」ゾクッ
歩夢は私の耳元で囁いた。 かすみ「なんかいいましたー?」
歩夢「ううんなんでも」
かすみ「しかし困りましたねぇ。
エマ先輩に、侑先輩と歩夢先輩へ伝言を預かってたんですけど」
歩夢「じゃあ伝えておくよなんて言ってたの?」
かすみ「今日はエマ先輩の学生寮で宿泊するようにって……」
歩夢「何それ」
私を弄ぶ歩夢の指が止まる。
歩夢「いきなり泊まりに来いだなんておかしいと思う」
かすみ「まぁそれはかすみんもちょっと思いましたけど、すごく真剣だったので……」 歩夢が私に向き直る。
歩夢「もちろん行かないよね」
侑「それは……」
歩夢「今夜は血を吸わせてくれないの?
断って」
侑「……分かったよ」 かすみ「じゃあかすみん用事は済んだので帰りますねー」
歩夢「うん
来てくれてありがとう。
すごく元気付けられたよ!」
かすみ「きっと身体良くしてくださいね!
明日また会いましょう。
さよなら!」
かすみちゃんは部屋を出て行った。
部屋には私と歩夢と、カーテンの前のしずくちゃんだけが残された。
しずくちゃんはこちらの様子を伺っていたようだけど、かすみちゃんに呼ばれて後を追うことに決めたようだ。
しずく「歩夢さん、きっともっと良くなりますよ」
しずくちゃんは最後にそう言い残した。
何か含みがあるような言い方で不思議に思ったが、疑い過ぎも良くないだろう。
そのままなにも口を挟まず、しずくちゃんが退出するまで私は息を殺していた。 _____廊下
かすみ「意外だなぁ。
侑先輩、ずっと歩夢先輩に付き添ってると思ってたけど。
先帰っちゃったんだ」
しずく「……そういうこともあると思うよ」
かすみ「そうだけど、最近侑先輩も顔色悪いからしんぱいで……」
しずく「もしかしたら具合悪いから先帰ったもかもよ?」
しずくが窘めたが、かすみはあまり納得していないようだった。
かすみ「……例の噂どう思う?」
しずく「歩夢さんが変死事件を起こしてるっていう質の悪い噂?」
かすみ「そう。
普通に考えたら絶対にないよ。
でも最近歩夢先輩様子がおかしいし……。
今日だってまだ9月なのにマフラー巻いて、冬用の厚手のコート羽織ってるんだよ?
髪型だって可愛かったお団子やめて、ストレートにおろしてるし。
なんか雰囲気変わったって言うか、おかしいよ……」
しずく「かすみさんは疑ってるの?」
かすみ「そうなんじゃないよ。
ただ変なことに巻き込まれてるんじゃないかっておもって。
行方不明になった時のこと何も話してくれないし……」 しずく「気にしすぎなんじゃないかな?
人の噂も七十五日。
もうすこしすればいつも通りの同好会に戻れるよ」
かすみ「そんなものなのかなぁ。
最近エマ先輩も欠席が多いし、かすみんなんか寂しいよ」
しずく「そうだね……。
……また10人揃うようになったら同好会をあげて何かやってみようか?」
かすみ「何かって何を?」
しずく「……演劇とか?」
かすみ「それしず子がやりたいだけじゃん!
でぇもぉ〜アイドルだってドラマやったりするし結構ありかも!
かすみんの可愛さと演技で、しず子の役を食っちゃうよ〜」
しずく「かすみさんはハムか大根って感じだと思うよ」
かすみ「それほどでも〜。
ってそれ褒めてるの?」
しずく「……まぁかすみさんは何の役をやっても可愛いと思うよ」
かすみ「そう?
やっぱり世界一キュートなかすみんの可愛さで観客もメ・ロ・メ」
しずく「カット」
かすみ「なんで遮るのしず子〜」 とりあえず今日はここまでにします。
エマさんまだ出せなくてすみません。
今後もよろしくお願いします。 行方不明になって戻ってきたら人が変わってたら色んな意味で変な噂出ちゃいそう 予想外の伝言でいつのまにか歩夢は行為をやめていた。
侑「私もそろそろ帰るよ」
歩夢「……続きどうする?」
侑「どうせ家帰ったらまたやるんでしょ」
歩夢「じゃあ今したってかわらないんじゃない?」
侑「少しやすみたいんだよ」
乱れた服と髪をまとめる。
歩夢「一緒に帰ろう?」
侑「いや。途中で血を吸いたいって我儘言うじゃん」
フィジカルで抑え込まれないうちに荷物をまとめ、保健室の外へ出る。
「絶対帰ってきてね?」
不安げな歩夢の声がか細く後ろで聞えた。
(だったら、なんで何も説明してくれないの……)
自分の中で歩夢への不信がつのっていくのが感じられた。 ___帰り道
侑(気が重い)
歩夢が血を吸うときはいつもこうだ。行為中は私の身体に快楽を叩き込んで気分をハイにさせるが、終わった後は体が暗くどんよりと重くなる。今日はいつもより激しかったから、立ち眩みと眩暈が酷かった。もしかしたら貧血かもしれない。常備薬を飲んだがあまり効き目はなかった。正直バス停に向かうのさえ億劫だ。
(仕方ない。公園で休んでいこう)
私は近くの適当な公園のベンチに座った。
(なんだか眠くなってきちゃった。こんなところで眠るなんて彼方さんみたい)
吸血鬼になる時の歩夢は別人のようだった。
上原歩夢はもともと支配関係をたのしむような娘ではなかった。
血を吸うときは高圧的なのに、終わった後はいつもの彼女に戻ってくれる。
歩夢がいつもの性格に戻ってくれなかったら、先程も体よく抜け出すことはできなかっただろう
(歩夢、なんで何もいってくれないんだろう。そしたら私も納得できるのに。
吸血鬼の歩夢は歩夢なの?)
それを最後に、私は思考を手放した。 すみません修正します
___帰り道
侑(気が重い)
歩夢が血を吸うときはいつもこうだ。
行為中は私の身体に快楽を叩き込んで気分をハイにさせるが、終わった後は体が暗くどんよりと重くなる。
今日はいつもより激しかったから、立ち眩みと眩暈が酷かった。
もしかしたら貧血かもしれない。
常備薬を飲んだがあまり効き目はなかった。
正直バス停に向かうのさえ億劫だ。
(仕方ない。公園で休んでいこう)
私は近くの適当な公園のベンチに座った。
(なんだか眠くなってきちゃった。こんなところで眠るなんて彼方さんみたい)
吸血鬼になる時の歩夢は別人のようだった。
上原歩夢はもともと支配関係をたのしむような娘ではなかった。
血を吸うときは高圧的なのに、終わった後はいつもの彼女に戻ってくれる。
歩夢がいつもの性格に戻ってきてくれなかったら、先程も体よく抜け出すことはできなかっただろう
(歩夢、なんで何もいってくれないんだろう。そしたら私も納得できるのに
吸血鬼の歩夢は歩夢なの?)
それを最後に、私は思考を手放した。 刺激臭と異音で侑は目をさます。
日が落ち、あたりはすっかり夜だった。
己の睡眠を妨げたものの正体を見て、私は絶叫した。
刺激臭は人のはらわたを臭いだった。
異音は人の骨がかみ砕かれたものだった。
そして私の視界に映るのは、四足歩行の人間が同じ人間を食い散らかす光景だ。
急いでその場を逃げ出した。
だけどそれがまずかったのかもしれない。
化け物は私に気付き、四足で追いかけた。
人の構造は四足で走るのに適してない。
だから化け物の関節は不自然に曲がっており、走るたびに骨の折れるような不気味な音が後ろから聞こえた。
そしてその音が私の背中にだんだん近づいている。
(追いつかれる⁉)
ついに怪物は私をとらえ、押し倒し、私の肩をかみ砕いた。
想像を絶する痛みで絶叫した。
(いやだいやだしにたくない誰か助け_______!!!!!!)
一番美味しいのははらわたなのだろう。
怪物は私のお腹かみちぎり、何か細長いものをぶちまけた。
次にあばら骨と肺がもってかれ、胃と肝臓をもってかれる。
もはや意識すら遠くなったところで、かすかに近くから足音と短い詠唱が聞こえた。
「____Amen(エイメン)」 忙しくなりそうだったので、今日の分を今投稿しておきました。
次の投稿は21日になります。
よろしくお願いします。 続ききてた。ついにエマさん登場か。いつも吸われて貧血にならないのかと思ってたけどやっぱりなるよね。失血的な意味でもそろそろ危なそう 虹ヶ咲一、十字架のペンダントにキスするのが似合う女エマちゃん 「この世の道理に溶け込めぬ者よ、その娘から離れなさい」
朦朧と薄れていく意識の中、聞き覚えのある透き通った声がする。
瞳を向けると、都会の街には似合わぬ修道服を着た少女が一人。
「大罪を犯したるその異臭、その姿、到底看過できるものではありませんが、
大人しく引き下がるというのなら今宵ばかりは見逃しましょう」
四つ足人型の化け物は不思議そうに修道女を見つめていた。
「もう一度だけ警告します。
下がりなさい、外道。
私はこの国の救済者程寛容ではない。
二度の忠告を以ってなお聞き入れないのならその時は_____」
怪物が脂ぎった口元を歪めた。
不自然なことではない。
つまるところ彼にとって新鮮な美肉が、目の前にのこのこと現れたのだ。
「この舌端、神罰の地上代行として貴方の肉体の一切を打ち滅ぼすことになるでしょう」
そんなことはお構いなしに少女は毅然と言い放つ。
腐肉が襲い掛かるのはほぼ同時だった。 (あれ……エマさん……?)
透明感のある声、比較的短めの赤毛、美しい碧眼、柔らかい丸みのあるシルエット。
奇天烈な服装だが、外見的特徴は異邦からの友人と確かに一致している。
だがそれでも侑は目の前の光景が信じられない。
彼女が敬語で誰かに接しているところを初めて見た。
そもそも普段の彼女からは想像もつかない程冷たく、低い、敵意のある語勢。
記憶の中の聞くもの全ての心を癒すような可愛らしく、ゆったりとした声色とはどうしても結びつかなかった。
(なんで……?
逃げ……て……)
死にゆく体では、か細い吐息がこぼれるだけで言葉にならない。
醜い化け物がエマに襲い掛かる。
数秒後、肉塊に変わってしまう彼女を幻視して、侑は言葉にならない悲鳴を上げた。 「”天にまします我らの父よ”」
怪物が間抜けにこける。
「”ねがわくは御名をあがめさせたまえ。
御国を来たらせたまえ”」
気が付くと、怪物の左足首が光の粒子となってほどけていた。
「”みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ”」
今更、化け物は悲鳴をあげる。
「”我らの日用の糧を、今日も与えたまえ”」
一切の容赦なく少女の聖唱は、咎人の肉体を光に変換していく。
それは悪魔を火あぶりにする処刑のようだった。 「”我らに罪を犯す者を、我らが赦す如く、
我らの罪も赦したまえ”」
夜の魔物は無様にのたうち回る。
身体が消滅していく惨めさに耐えきれずに、憐れな食人鬼は泣き叫んだ。
彼は最後の力を振り絞り、忌まわしい詠唱の源を絶とうと最後の力を振り絞る。
「”我らを試みに合わせず、悪より救い出したまえ”」
鋭いかぎ爪はすんでのところで、エマの身体を傷つけるには至らなかった。
今度は指先からほつれて崩れ去ったからだ。
エマはそうなることが初めから分かっていたかのように、少しも動くことはなかった。 「”世と力と栄とは、限りなく汝の物なればなり”」
既に身体の八割を失った化け物は、少女の足元で蹲るしかなかった。
それは己の罪を深く恥じ入る罪人のようで____。
エマは片膝をつき、彼の頭に手を置いた。
子供を寝かしつけるように髪をそっと撫で、最後の聖句を詠う。
「”かくあれかし”」
彷徨える魂はゆりかごの安寧をとり戻したかの如く、瞼を閉じ、
光の束となって天に還っていった。
拳を振るう必要さえない。
彼女はいつもと変わらぬ優しさと、威力のある威厳でこの災厄を祓い終えた。
しんと静まる暗闇に、落ち着いた声音が余韻となって粉雪のようにとけていった。 彼女が唱えたのは主祈文、基督教のあらゆる宗派に伝わる基本にして最奥の聖言。
力ある聖職者が唱えた時、それは傷ついたものを癒す薬となり、
恐怖の魔物を打ち倒す礫になるという。
エマ・ヴェルデは生まれつきこの言葉の効果を最大限に引き出せる天才だった。
十四歳の頃冬と春の変わり目に、彼女は吸血鬼達の根城に単身攻め入り、こう宣言したという。
「__気をつけて。
私の紡ぐ唱演は、死者にのみ厳しいの」
そうして彼女は一夜のうちに百を超える悪魔たちを皆殺しにした。
一切に流血なく、一つのカーテンも傷つけずに。 >>89
すみません。
このssもともと中二バトルものにするつもりで書きました。
型月とかヘルシングとかに影響受けまくりです。
注記事項に載せておくべきでした。
申し訳ありません。 吸血鬼ものという時点で既に厨二っぽくなるのは予想できるから別に気にしないでも 責められてるわけではないし謝らなくていいんだよ
仮に叩かれたとしても謝らなくていいんだけど ___虹ヶ咲学生寮
侑(ここは……?)
気が付くと、見知らぬ天井がそこにあった。
見知らぬベッドの上、柔らかな匂いが侑を包む。
侑(私、公園で寝ちゃってそれで……)
侑は体を震わせた。
先程まで異形に襲われ、死にかけていたのだ。
無理もあるまい
侑(私生きてるの……?)
臓物を食い散らかされたというのに、侑の身体には何の傷跡もなかった。
「あ、起きちゃったんだ。
大丈夫?どこも痛くない?」
侑「エマさん……?」
パジャマ姿のエマが部屋に入ってきた。
「うん。今は何ともないよ。だけど……」
聞きたいことは山ほどある。
しかし生臭い恐怖に侵されていた頭ではうまく舌が回らなかった。
「慌てなくても良いんだよ。
ここは私の部屋だから落ち着いて話そ?」 エマ「はい、これココア。
冷めないうちにどうぞ♪」
差し出されたココアをありがたく頂戴する。
甘くとろける深みと、温かさが侑の芯まで冷えた心に染みわたる。
エマ・ヴェルデという少女の牧歌的な優しさで、侑は思わず涙を流した。
エマ「うんうん。
怖かったね」
エマがそっと侑の背中をさする。
エマ「もう安心だよ。
大丈夫、大丈夫だからね」 侑「ごめんね、エマさん。
これ、ホントは自分で飲むつもりで淹れてきたんでしょ?」
エマ「そんなこと気にしなくて良いんだよ。
侑ちゃんが元気になってくれる方が私には大事だよ」
エマ「あ、そうだ。
制服は汚れちゃってたから私のパジャマにしかえておいたよ。
ちょっと大きいかもだけどそこはゆるしてね」
侑(天使だ……)
まるで母親と一緒にいるかのような安心感を侑は感じた。 侑「それであの化け物のことなんだけど……」
エマ「ああ、あれね。あれは吸血鬼。
……正確には成り損ないかな」
吸血鬼。
その非常識な単語で、かけがえのない幼馴染が脳裏に浮かんだ。
侑「……普通の吸血鬼とは違うの?」
エマ「あれはまだ成長段階なの。
吸血鬼になるにはね、まず他の吸血鬼に血を吸って殺される必要があるんだ。
で、その後もいきなり吸血鬼になれるわけじゃなくて、
まず土の中に三年くらい埋まってなくちゃいけないんだけど。
まぁそれはいいや」
エマ「色々あって死体を復活させるんだけど、土の中から蘇った死体はまず力の弱いゾンビになるんだ。
さっきの怪物はこのゾンビと呼ばれる状態だね」
エマ「で、そのゾンビがざっと10人位食べてようやく一人前の吸血鬼になれるってかんじ。
……どう?私の説明で分かったかな?」
侑「……だいたいは掴めたよ」 侑(歩夢は人殺しなんかしてないよね……?)
エマの説明と、歩夢の状況や発言にはそれなりに相違点がある。
まず歩夢が土の中に三年も埋まっていたということはあり得ない。
それは幼なじみである侑自身が証明出来ることだ。
また歩夢自身が人は殺していないと言っている。
彼女は吸血鬼になれる条件を満たしていない。
だが一方で動物を殺して食らっていたこと、人間とは思えない身体能力をしていたのは紛れもない事実だ。
それに歩夢の身体の死人のように冷たいこと。
あれはどう説明をつけるのか?
心の中でさえ否定しきれない自分がいることに、侑は苛立ちを感じる。
そのことが侑の心に重くのしかかった。
____”私に全てを捧げてみない?”
記憶の中で保健室の出来事が再生される。
侑(あの時歩夢は私をどうするつもりだったの……?
私を殺すつもりだったのかな……) 今日と明日は分量が少なめになります。
週末頑張るので、よろしくお願いします。 もしよろしければ見辛いレス、文章がおかしいレスを指摘してくださると幸いです。
あと個人のお願いなのですが、力を入れた82から87までの感想をいただけないでしょうか。
エマさんのキャラが崩れていないか気になります。 続ききてた。読んでて文章が明らかにおかしいという部分はないと思うし、行間を開けてすごく見やすくなってると思います。個人的には今日の更新部分くらいが見やすく感じました。開けすぎても見にくいし
バトルの部分は内容も表現も綺麗で良い意味ですごく厨二っぽいと思うので、このままの感じで突き抜けたらいいと思う
キャラに関しても慈愛に満ちてるけど底知れない感じがするというエマさんっぽさはすごく出てるかと
歩夢が平気で侑を傷付けたりするのも人外になってそこまでもう変わってしまったんだなと思えるし
拙い感想だけどこんな感じかなあ。最近SS荒らす人も増えてるから、もしそういうの来てもあまり気にせず自分の書きたいように書くのが一番だと思います 特に文章に問題はないと思う
続きを楽しみにしてます 地の文があるから情景とか感情とかわかりやすい!
聖唱もかっこよくて厨二心がくすぐられる!
エマちゃんって可愛い優しいママ〜ってイメージが強かったけどこのssはかっこいい一面もみれてとても良すぎる!
夜の都会に現れて悪しきものを倒す修道服姿の異国の少女ってだけでめっちゃいい!!
要領を得ない感想で申し訳ないけどこの先の展開もとっても楽しみです! 感想ありがとうございます。
長丁場になりそうですが、完結できるように頑張ります。
何か大きな設定の矛盾や、文章の間違いがあったら指摘してくれると嬉しいです。
よろしくお願いします。 侑「……私、内臓とか色んなところ食べられちゃってたよね?
エマさんが治してくれたの?」
エマ「まあね」
彼女はさらりと答えた。
侑「どうやって?」
エマ「私ね、うまれつきの体質みたいなんだけど聖書の一説を唱えたり、
賛美歌を歌ったりすると、傷ついた人を癒せるの」
侑「そんなそれこそ」
聖書に出てくる奇跡のようだと心で思った。 侑「……日本には何をしに来たの?」
口にした言葉が思いがけず敵意をふくんでいたことに、彼女は驚いた。
彼女は自己嫌悪に陥りながら、それでも仕方ないことだと思った。
この人は冗談のような奇跡を簡単に起こせて、あんなに恐ろしい化け物を軽く追い払ってしまう。
もし歩夢が本当に初めから化け物だったのなら、エマはどこかでそれを掴んで、倒すためにやってきたのかもしれない。
たとえ人の道から外れていようと歩夢は幼いころから絆を紡いできた親友だ。
いくら命の恩人だろうと、大切な友人だろうと、
彼女を殺すかもしれない要因を見過ごすわけにはいかなかった。
エマ「日本には本当にスクールアイドルをしに来たんだよ」
彼女は朗らかにほほ笑んだ。
侑「……ちょっと以外かも。
てっきり化け物退治に来たのかと」
エマ「まぁそう思うのも無理はないよね。
でも、私本当に人の心をぽかぽかにするアイドルになりたいんだ」
エマ「ちょっと昔話をしようか」
懐かしむように、それでいて少し寂しげにエマは目を伏せた。 エマ「私ね、こういう力を持ってるから小学校に上がる前に教会の人にスカウトされたの」
エマ「当時の私はすごく喜んだよ。
だってこの能力を使ってたくさんの人を癒して、幸せにできると思ったから。
だから二つ返事でそのスカウトを受けたよ」
でも、と彼女続ける。
声のトーンが一段落ちた気がした。
エマ「現実と理想にはちょっとギャップがあった。
神父さんは私の能力に癒す力よりも、化け物を倒す力を見出したみたい。
毎日毎日何かを殺す修行をさせられて、ある時から前線に送られるようになった」
エマ「皆を守るための仕事とはいえ、正直あんまりいい気はしなかったよ。
だって異形とは言え、そこにあるものを滅ぼすんだから。
私はこんなことをしたかったんじゃなかったのに、って何度も思った」
それはすごく辛かっただろうと、侑は胸が苦しくなった。
エマはそれほど深刻さを見せなかったが、この優しすぎる少女が歩む道のりとしてはあまりに険しすぎる。
人を慰める才能が、人殺しの道具に使われる現実に彼女は何度も傷ついた筈だ。
エマ「そんな時だよ」
彼女が目を輝かせる。
エマ「日本のスクールアイドルの動画を観たんだ♪
正直何言ってるのかも全然分からなかったけど、
一生懸命歌ってる彼女たちの姿が私のいつかの理想と重なって見えたの。
私もこんな風になりたいって思っちゃった」
エマ「14歳の頃だったかな、それなりの武勲を立ててね。
大司教猊下にお願したんだ。
『いつか一年だけ暇をください』ってね」
彼女の願いは四年後に聞き届けられることになる。
苦難に満ち溢れた道を乗り越え、エマはついに夢を掴んだのだ。 侑「エマさんは強いね」
嘘偽りない本心だった。
エマ「そんなことないよ」
侑「ううん。それは違うよ。
今日だって私達を守ろうとして、宿泊を勧めてくれたんだよね?
それに私の命を化け物から救ってくれた」
侑「私なんか、誰かの力になりたいのに、
思うようにいかなくてなんか嫌になっちゃうよ」
侑は力なく自嘲した。
歩夢が失踪してから、彼女は自分が何をどうしたらいいのかを見失っていた。
幼馴染の言いなりになっているだけの自分が、
この異国の少女と比べてちっぽけに見えて、慚愧が心に影を落とす。
エマ「自分を卑下しないで。
侑ちゃんも初めから、出会った時からずっと強かったよ」
エマ「私が侑ちゃんの命の恩人なら、あなたは私の夢の恩人なんだよ。
同好会がなくなっちゃったとき、私どうしたらいいのかわからなかったけど、
あなたが皆を集めてまた立ち上げてくれた。
失いかけた私の夢を叶えてくれた」
エマは侑をそっと抱きしめた。
エマ「だから自分で自分を傷つけないで。
私は侑ちゃんのことを尊敬してるから」 侑「……明日、歩夢とここにまた来てもいい?」
声を震わせながら、彼女は言った。
エマ「いいよ。
いつでも来て」
侑「……明日、歩夢と話し合うよ。
これまでのこと、これからのこと。
……迷惑かけちゃうかもだけど、エマさんなら信頼できるし、
導いてくれると思うから」
嗚呼、この人なら問答無用で歩夢を殺しにかかることはしない筈だ。
道を踏み外しかけている私達に、きっと人の道を授けてくれるだろう。
侑「だから、私たちを助けてくれる?」
エマ「期待に応えるね♪」
エマ「だから、今はもうおやすみ。
さっきまで眠ってたけど、まだ疲れが取れてないでしょ?
私が子守歌を歌ってあげる」
心地いい歌声が耳を慰める。
これは、確かモーツァルトの子守歌だろうか?
久方ぶりに身も心も休らいで、侑は深い眠りについた。 短いですがきりがいいのでここまでにします。
また明日よろしくお願いします。 乙楽しみ
胸を強調するどーおポーズ取るエマちゃんに巨大チェーンソー持ったエマちゃんはないかさすがに
>>50
マグロのように跳ねながら前進していくさまはまごうことなき果南 ____歩夢宅
(……侑ちゃん……まだ?)
ベッドの上で身を捩り、悶える。
シーツを両手で握りしめ、口で噛み、歩夢は己の吸血衝動と戦っていた。
(お願い…早く…早く帰ってきて……!)
同好会の練習の時でさえかかない量の汗を流し、荒い息遣いで喉元までせりあがる恐ろしい欲望を必死に抑えつけていた。
歩夢の変化に一番戸惑っていたのは、他ならぬ歩夢自身だ。
彼女は決して失踪時に起こった出来事を誰にも口外しなかった。
いや、話せなかったのである。
____失踪三日目のこと、歩夢は暗闇の中で目を覚ました。
体中を包む圧迫感。
それから逃れるように手足を掻いてもがいていると、しばらくして光が射した。
目を細め、周りを見渡すとそこが通学路に通り過ぎる少し大きめの公園であることに気が付いた。
自分が土の中に埋められていたことに気付くのにはそう時間がかからなかった。
(なんで、なんでこんなことされてるの……?)
その疑問と恐怖は突如として襲うとてつもない飢餓感でかき消された。
土の中から出るのに体力を消耗しただろうか、それとも__おそらく何日か食事にありついていないから?
そんな風に、冷静に頭を回して分析することさえ困難だった。
とにかく何かにありつきたい。
そう思って辺りを捜索していると、歩夢は一匹の捨て犬に出会った。
中型くらいの大きさのそれを、彼女は初めて生まれて初めて”美味しそう”だと感じた。
感じた時には既に行動に移していた。
冗談めいたスピードで、逃げられる前に取り押さえ、腸を食い破り中身を貪りつくした。
その犬は甲高い声で悲鳴をあげていたが、すぐに絶命した。
一通り味わいつくしたところで、彼女の理性が再び息を吹き返した。
(いや……私、何…してたの……?)
幸い人通りは少なく、彼女の蛮行はだれにも見られていなかったが、当たり前に罪悪感を覚えた。
生肉をじかに食らった不快感で、吐き気を催す。
苦しくなって胸を抑えた所で、ようやく歩夢は自分の心臓が動いていないことに気が付いた。 それからの一週間は悪夢だった。
一日一回は捨てられたペットの生き胆を食らわなければ、空腹感が収まらなかったからだ。
しかもそれが一日一回から、半日に一回へ。
半日に一回から、朝昼晩へとどんどん期間が短くなっていった。
そして食べるごとに、より大きく食べ応えのあるものを求めているのを理解し、いつか人襲ってしまうのではないかと恐怖した。
同時にもたらされた変化は異常空腹だけではなかった。
まず初めに瞳の色が変わった。
元々彼女は薄いトパーズ色をしていたが、それが緋色に変わった。
次に爪が、三番目に耳が細く尖り始め、最後に犬歯が鋭くなっていることに気が付いた。
鼓動がなくなっている時点で察していたが、どんどん人外じみた外見になっていく自分を歩夢は嫌悪した。
スクールアイドルだというのに、身体を服装で誤魔化し始めたのもこの時からだ。
彼女は何も言えなかった。
自分が既に生き物ではないこと、毎日毎日何かを殺して食べていることなど誰に相談出来よう?
家にいるときも、学校に居るときも彼女は孤独だった。
____あの日が来るまでは。 失踪より戻ってから一週間めのこと、歩夢はお台場を離れてどこか遠くへ行くことを決意した。
いつか飢餓感を抑えられなくなり、両親や同好会の仲間たち、そして幼馴染を傷つけてしまうことを恐れたからだ。
その日の晩、歩夢はマンションから飛び降りた。
誰にも見つからないことを祈っていたが、偶然にも侑に現場を見つかってしまった。
その場は一瞥もくれなかったが、歩夢はすぐに彼女の顔が見たくなった。
親にも負けない程の時間を共有した仲だ。
最後の別れを告げるくらいはしてもいいだろう。
歩夢は全ての事情を話し、侑に納得してもらうことをきめた。
(証拠があったほうがいいよね……)
彼女は近くにいた野良猫を殺して、その場で食べた。
もう動物を食べることに罪悪感を抱かなくなっていた。 (……結局、さよならなんて言えなかったよ)
あの日を最後に二度と合わないようにするべきだったのに。
それがお互いにとって一番だったのに。
歩夢は、侑に別れを告げることは出来なかった。
彼女を見つめるだけで、一緒に居たいと思う欲求のほうが勝ってしまったから。
”私は歩夢が勝手にいなくなっちゃう方が怖いんだよ……”
そう言って涙を流しながら抱きしめてくれた侑を突き放せなかった。
寧ろ永遠にこうしていたいとさえ思った。
ああ、そう永遠にだ。
だから彼女は、口走ってしまった。
”侑ちゃんの身体を私にちょうだい”
その時の吸血衝動が、畜生の生き血をすする時のそれとは違うことを、少し遅れて理解した。 侑への吸血は食欲と同時に、別のものを満たしてくれた。
____愛おしくてたまらない。
侑の血液を摂取する時の歩夢の感情を率直に表現するのに、これ以上最適な言葉はないだろう。
幼馴染の鮮血は今までみたどんな物よりも美しかった。
侑の血を吸われる度に快楽に呑まれ、嬌声を上げ、女らしくなる様を見て、歩夢は下腹部のあたりが熱くうずくのを感じた。
それは性感を連想させ、すぐにこの吸血行為が性行為の一種なのだと分かった。
恐らくこれは同族を増やすための行為で、全てを吸いつくした時対象は吸血鬼になる資格を得るのだと本能的に直感した。
また皮肉にも、強烈な欲情が生前この娘に抱いていた感情が淡い恋心だと気づかせた。
(こんなことで気付きたくなかったよ……)
やめなくてはと何度も心の中で、自分を戒めた。
しかし美肉に溺れた吸血鬼に、今更この乙女の身体を手放すことは出来なかった。
食欲と同じで、この劣情もすぐにエスカレートしていった。
自分の言いなりになっている幼馴染に支配欲が刺激され、彼女に対する欲求はどんどんサディスティックになっていった。
(ごめんね…侑ちゃん……。
本当にごめんね)
ベッドの上で蹲り、歯を食いしばりながら歩夢は懺悔した。 歩夢父「歩夢ーどうかしたのか?」
歩夢母「何か辛いことでもあるの?」
吸血衝動と戦っているうちに、知らず知らずに壁に体を大きくぶつけてしまったのだろうか?
歩夢の両親が娘の様子を不審に思い、部屋の外で声をかけた。
歩夢母「はいってもいい?」
今夜は侑の血液を吸っておらず、動物も食べていない。
今両親に会ってしまってはきっと______
(ダメ___!)
その言葉は声にならなかった。
次の瞬間、扉が開かれ生き物の臭いが歩夢の鼻孔をくすぐる。
抑制されていた獣性が覚醒した。 今日はここまでにします。
何故かパソコンから投稿出来なかったので、今夜はスマホから投稿しました。
見辛いところがあるかもなので指摘してくれると嬉しいです。
あとスレタイに反してエマさんがあんまり出てなくてすみません。
もっと構想を練っておくべきでした。 気になるところで終わった。もう完全に人間じゃないんだな 歩夢ちゃんが退治されないかハラハラする
幸せになって欲しい 身内であってもさすがに人間をやっちゃったら退治せざるを得ないだろうから続きが気になるね ____翌朝・日曜日・学生寮
侑「……昨日は本当にありがとう」
エマ「どういたしまして。
……それより、一人で歩夢ちゃんと話し合える?
私もついていこうか?」
侑「ううん、きっと大丈夫。
エマさんから勇気貰ったから。
それにいきなりエマさんが介入すると歩夢も警戒するかも。
……歩夢、あんまり今の自分の状況を話したがらないから」
エマ「そっか。
まぁ、下手に場を拗らせるより親友の侑ちゃんに説得して連れ来て貰った方が、
私としても気持ちが楽だよ」
でも、とエマは続けた。
エマ「身の危険を感じたら、すぐに連絡して。
それと15時を過ぎても侑ちゃんが来なかったら、私がそっちに向かう。
それでいいよね?」
侑「うん、それで大丈夫」
エマ「私はそれまで調べものに出かけてるけど、
侑ちゃんから連絡あったら最優先でかけつけるから。
だから頑張ってね!」
エマと侑は笑顔で別れた。 ___マンション
(歩夢、今どうしてるかな)
フロントを過ぎ、エレベータで上層階へ上って、廊下を少し遅めに歩いた。
それとは逆しまに、歩夢のマンションルームが近づくにつれて鼓動は速くなる。
紛れもなく侑は緊張していた。
(きっと今までみたいに皆と楽しく笑いあう、そんな日が戻ってくるよね?)
不安を抱きながらも、悲観はしなかった。
今の侑にはエマという強力な味方がいるからだ。
意外にも歩夢の身に何が起こっているのかは彼女も掴みかねているようで、
情報を欲しているようだった。
先のことがどうなるかは、侑にも彼女にも分からない。
それこそ神のみぞしるというところだろう。
しかし、それを何とかするために自分がいるのだと、侑は心に言い聞かせた。
私たちが行動するには、まず事をつまびらかにし、分析しなくてはならない。
手を誤らないためにも、冷静に、慎重にことを運ぶべきだ。
朝、学生寮を出る前にそのことをエマとも確認したはずだ。
やかましい動悸を抑えるように胸に手をあてる。
気付くと、もうとっくに自分の家の隣、すなわち歩夢の家の前に来ていた。
勇気と微かな希望を頼りに、深呼吸をしてインターホンを押す。
数分後、自分はあまりに遅かったのだと後悔することも知らずに。 中から返事はなかった。
しばらく待って、もう一度インターフォンを押しても結果は同じだった。
最近の歩夢は休日に出かけることはしなかったし、
比較的仕事で家を空けることの多いご両親も、日曜日は必ずほぼ家にいた筈だ。
悪寒が走る。
思わずドアノブに手をかけて回してみると、簡単に扉が開いた。
鍵はかかっていなかった。
玄関には家族全員分の靴があった。
家の中に誰もいない筈がない。
「……お邪魔します」
静寂だけが侑を出迎えた。
侑と歩夢は幼馴染で隣人という間柄、勝手にお互いの家を出入りすることがあったが、
それでもこうして挨拶をして返事がなかったことは一度もなかった。
引き返したほうがいい。
脳みそがそう警鐘をならしたが、侑はそれでもリビングへ進んだ。
愚かにも、未だ掴みかけた希望縋っていたからだ。
リビングに足を踏み入れる。
同時に目に映ったモノに、侑は絶句した。 それは二つあり、見知った顔していた。
リビングの奥にある歩夢の部屋の前で仲睦まじく転がっている。
歩夢の父と母だったものだ。
二人とも白目を剥き、凄まじい恐怖と絶望の形相をしていた。
口からは赤黒いものが固まっており、血のあぶくを吹き出しながら絶命したのは容易に想像できた。
首から下は皮膚が切り裂かれており、食い散らかされた臓物が血の華を咲かせていた。
人間であることを除けば、それはいつか歩夢が作った動物の死骸に似ていた。
「うっ…おぇ……」
たまらず侑は吐瀉物を吐き出した。
縋った願望が所詮夢物語でしかなかったことを侑は思い知らされた。
(歩夢はどこへ……?)
開かれた扉からは彼女の姿はうかがえなかった。
(歩夢、探さないと……)
来た道を引き返す。
とにかくここにはいたくなかった。 恐らく明日は日中に投稿できると思います。
しばらくお待ちください。 ついに人を殺めてしまったのかな。もう引き返すのは無理そう 来た道を引き返し、侑はマンションを出た。
目に浮かべ、全力で走りながら思いつく限りの場所を探し回る。
__分かってしまった。
歩夢の両親がああなったのは、歩夢が取り返しのつかない罪を犯してしまったのは自分のせいなのだと。
”絶対帰ってきてね?”
彼女は不安げに、か細いこえでそう言っていたではないか。
彼女は約束を守っていた。
幼馴染との約束通り、動物を殺すことはやめ、腸も食べなかった。
だから、先に約束を破ったのは侑のほう。
自分の血を与えるからと、自分から提案しておいて、保身で帰らなかった自分の責任だ。
(私、大馬鹿だ……)
悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。
そもそもこんな感情、歩夢が受けている痛みに比べれば屁でもない。
彼女は苦しかったはずだ。
いつまでも帰らない幼馴染を待って、飽くなき吸血欲に悶えていたはずだ。
ああ、今になって失踪から戻ってから、一週間一人で思いつめる彼女の姿が思い出される。
彼女の力になりたいと、守ってあげたいと、望むのなら一緒にいてあげたいとそう願っていたはずなのに。
昨日の夜、自分は一人勝手に安心して呑気に眠っていた。
それは結局、彼女を孤独の闇に見捨てたのと同じで……。
侑は奥歯を噛みしめる。
噛みしめすぎて、奥歯が砕けた。
けれど不思議と痛みは気にならない。
侑は全力で走り、手当たり次第に歩夢を探した。 ぽつり、ぽつりと雨が降ってきて、やがてざあざあという音に変わった。
そんなことは構わず探し続ける。
ある公園まで来て、呆と立ち尽くす落ち着いた赤い髪の女の子を見つけた。
「____歩夢」
「来ないで‼」
強い拒絶の意志。数メートル離れたところで侑は立ち止まる。
彼女が許すまでは近づけない。
無理に近づけば、きっと彼女の心は壊れてしまう。
そんな気がした。
「……なんで、ここにいるの?」
「歩夢を探しに来た」
まっすぐ歩夢を見つめる。
彼女は、震えながらうつ向いていた。
「こっちにおいで。そんな恰好じゃ風邪ひくよ」
彼女の服装はネグリジェで、裸足だった。
きっと両親をてにかけた後、我に返ってそのまま家を飛び出して来たのだろう。
そんな姿で秋雨に身を晒しては体が凍えてしまう。
「いいよ、気にしなくて。私、化け物だもん」
消え入りそうな声で、少し裏返りながら彼女は言った。
「歩夢」
「知ってるんでしょ⁉家のこと‼」
それでも声をかけようとする侑を遮って、歩夢は声を荒げた。
表をあげた彼女の顔には、雨粒とは別のしずくがながれ、目を赤くはらしていた。
「あんなことした私を探しにくるなんておかしいよ!
馬鹿じゃないの⁉
侑ちゃん、どうかしてるよ‼」
それ以上声をかけることは出来なかった。
「私のことはもう放っておいて」
再び歩夢はうつ向いた。
その姿は己を恥じる罪人のようで。
鋭い雨に打たれ、擦り剝けた足を晒している彼女がただただ憐れだった。 「……もしかしたら、歩夢は人間に戻れるかもよ」
無神経にそう言って、
「……人間に戻ってどうするの?」
当たり前のように、最後の希望が打ち砕かれた。
「私、人殺しちゃったんだよ?
しかも親を。こんな私に、今更人に戻れって言うの?」
歩夢の言う通りだ。
もう死んでしまった魂はこの世にもどらない。
例えこの先歩夢が人に戻ったとしても、彼女の両親は戻らない。
人であるからには人食いの大罪には耐えられない。
彼女の心を守るのならば、彼女は化け物でいるしかない。
皮肉にも怪物であるという理由が、彼女の行動を正当化していた。
侑は彼女を見据える。
打ちひしがれる彼女を見るのはただただ哀しくて、胸が痛んで、
「__いつだって私は、歩夢の隣にいるよ」
どうしても守ってあげないといけないと、侑はそう思った。
己の罪に震え上がる歩夢を、そっとだきしめた。 「あ」
突然の抱擁に、歩夢は目を丸くした。
「ダメだよ。こんなことしちゃ」
歩夢が押しのけようとする。
けれど侑は絶対に彼女を放そうとはしなかった。
「私、吸血鬼だよ?
人食いなんだよ。侑ちゃんのこと、傷つけちゃうよ?」
「そんなこと、気にしない。
歩夢は歩夢だから」
「私がきにするの!
もう侑ちゃんのこと傷付けたくないの!
侑ちゃんを殺しちゃうかもしれない自分が怖いの!」
泣きわめく彼女の頭に、片手を後ろに回す。
腰に回している方の腕にもう少しだけ力を込めた。
「もういいんだよ」
安心させるために、侑は耳元でそうささやいた。
こんなことダメなのに、と歩夢は涙を流す。
「……私、侑ちゃんのこと食べちゃうかもしれないんだよ」
「その時は、その時だよ」
「それだけじゃないよ。私、侑ちゃんのこと好きなの」
感極まって、歩夢の本心がただ溢れる。
「好きだから、血を吸って、
侑ちゃんを私と同じ化け物にしちゃうかもしれないんだよ?」
「私も、歩夢のことが大好きだよ」
その気持ちに応えるために、侑も嘘偽りのない本心を答えた。 展開は決まっているのですが、なかなか文章が思いつかず遅れてしまいました。
すみません。 __侑視点
「もういいのいいんだよ、歩夢」
子供をあやすように、同じ言葉を繰り返す。
この言葉で歩夢の心を少しでも安らぐよう、祈りながら。
このまま怪物でいても、人の道に戻っても彼女は孤独だ。
一人うつ向いたままでいる彼女を想像して、たまらなく悲しくなった。
こんな優しい子を独りぼっちにしたまま放っておくわけにはいかない。
自分に出来ることは、彼女に寄り添うこと。ただそれだけだ。
歩夢がいなくなってしまってからのことを思い出す。
彼女が不在の日常は色あせていて、戻ってくるまで一度も心が”ときめく”ことはなかった。
それからも歩夢のことばかり考えて、私がどうにかしてあげたくて……。
ああ、とっくに気が付いていた。
彼女は、私の心と身体の一部なんだと。
彼女の身体も、心も、守ってやりたいと。
彼女のことをこの世界のだれよりも好いていると。
嗚咽混じりに、彼女の息遣いが獣のように荒くなる。
両親の肉で満たされていた腹が、再び空いたのだろう。
それとも、私を同じ身体にしたいのか?
(ごめん、エマさん。約束守れなかったよ……)
私は首筋を歩夢に差し出した。 _____歩夢視点
幼馴染の瞳は虚空を見上げ、色を失う。
温かった彼女の体はどんどん冷たくなり、私の腕の中で力なく横たえた。
こんな私を大好きと言ってくれた少女、高咲侑ははこの場で果てた。
同時に、ここから全てが始まる。
彼女は吸血鬼として新生するのだ。
「ずっと、一緒にいようね」
己の魂に永遠を誓う。
今の私にはこの娘が全てだ。
復活の手順は知っていた。
血を吸って殺した後、土に埋めて時が来るのを待てば良い。
だがその方法では、侑に吸血鬼の適正がなかった場合、永久に土の下だ。
そんな不確実な方法はとれない。
眷属を確実に増やす方法。
それは自分がより力をつけ、相手に分け与えることだ。
では力をつけるにはどうすればいいか?
それも私は本能で悟っている。
すなわち、人をより多く食らえばいい。
大切なものを3つも手にかけた私にとって、他の命など最早瑣末ごとに過ぎない。
3つも、4つも、100も変わらないのだ。
幼馴染の、恋人の愛に報いるため、彼女は餌場に向かった。 やっぱりやっちゃってたのか。もう心まで完全に怪物になる前に、エマさんに終わりにしてもらうしか 明日早いので、今日は保守代わりに1レスだけします。
それと木曜日は多分更新できないので、代わりに保守してくれると嬉しいです。
次回から本格的にエマさんのターンになります。 ___その日、現代に最新の魔王が二人誕生する。
一人は●●●●●●●の__すなわち運命の戯れによって、もう一人は哀憐によって人の道を踏み外した。
浮かんではまた消える幻を、彼女たちは思った。
袖の雫と月桂が手のひらから零れ落ちる。
それは何処かの夢。
彼女たちは普通の少女として笑いあい、励ましあい、仲間たちと触れ合う。
後悔することはあっても、胸を張って堂々と生きる。
尊厳と光溢れる道を共に歩むそんな姿。
決して実らぬ描いた未来。
夜風にうな垂れ、叶わないと俯く。
____これからもよろしくね。
二人だけに届くつぶやきが、夜の闇に包まれ彷徨い行く。
ここにあるのは変わらぬ思い、永遠に報われぬ血と愛の仇花。
遥かなる時の果てまで、彼女たちは悲しき運命共同体(共犯者)であり続けるだろう。
時計仕掛けの舞台装置は狂々と廻る。
哄笑する朱い月の下、惨劇の第一幕が上がった。 ゆうぽむヴァンパイア化はプロローグにすぎないのか? ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています