せつ菜「……本当は再選挙で負けたことも、納得できてないんです」

歩夢「……!」

せつ菜「確かに私は副会長たちに任せて、生徒会の事をおろそかにしていたかもしれません。けれど、手を抜いたなんてことは、一度も……」

せつ菜「それに生徒会長として、栞子さんのように明確な理念があったわけではありません。ですが……それで……それだけで……」

せつ菜「結局選挙では私は負けてしまいましたし、そこはもうどうあっても取り繕うことはできません。私が負けた。それはもう、一つの事実として呑み込めつつありました」

せつ菜「私の生徒会長をやる意味は、確かに私の一番大切なものを護るための道具だった、というのはある意味間違いではありません。しかし、もちろん手を抜いた記憶もないんです」

せつ菜「……ですが、最近の栞子さんを見ていると、とても、辛いんです。私……」

歩夢「つらい……そう、だよね。せつ菜ちゃんにとって、それって、辛いことだよね・……」

せつ菜「部活紹介の件は、本当に栞子さんに力を貸そうと思ったんです。だから副会長に呼びかけたんです。選挙に負けた事実も呑み込めつつあったから、です」

せつ菜「そうしたら、今度は……今まで憎んできたスクールアイドルを知るために、同好会に入る……。それって、あまりにも……あまりにも……」

歩夢「良いんだよ、せつ菜ちゃん。私しか聞いてないから。自分の思う言葉を、ぶつけて?」

せつ菜「……ムシが良すぎますよ、そんなの。愛さんの言葉が彼女に響き、彼女は過去の行いを悔いて自分から同好会にやってきた、それは褒められるべき行動かもしれませんが……」

せつ菜「今まで散々無駄だ無駄だと私の大好きを否定してきた彼女が、今までの事は間違っていたからスクールアイドルをやってみるなんて……」

せつ菜「私は、私には、身勝手にしか思えなくて……どうしても、彼女に上手く笑顔を浮かべることができないんです……」

歩夢「せつ菜ちゃんは……栞子ちゃんのこと、キライ?」

せつ菜「っ! そ、そんな、そんなことは……ただ……ただ……彼女とどう向き合えばいいのか、私の胸にくすぶるこの黒い感情をどうすればいいか、わからないんです……」

せつ菜「……軽蔑、しますよね……下級生にこんな、醜い感情を……」