歩夢「中庭の再会」
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SS、短編です
時系列的にはアニメ11話後のイメージしていただければ 歩夢「はぁ」
歩夢(ひとりぼっちで食べるご飯は美味しくない)
歩夢(いつもなら横に侑ちゃんがいたはずなのに)
歩夢「……侑ちゃん」
歩夢(数日前、私の我が儘が原因で侑ちゃんと喧嘩した)
歩夢(それ以降、気まずくて一度も顔を合わせられていない)
歩夢(当然、同好会へも行きたくなくて)
歩夢(他のみんなとも会いたくなくて)
歩夢(昼休みはこうやって、中庭の隅っこで一人、お弁当を食べている) 歩夢「はぁ〜」
歩夢(なにをやってるんだろう、私)
歩夢(早く謝って終わらせてしまえばいいのに)
歩夢(けどあの言葉は嘘じゃなくて、私の本心で)
歩夢(そんな簡単に消化できるようなものじゃない)
歩夢(だから……)
歩夢「あれ」
歩夢(人、気配?)
歩夢(誰か来る?) ??「にゃー」
歩夢(猫)
歩夢(この子は確かお散歩役員の)
歩夢「名前、なんだっけ」
歩夢(たまちゃん? しろちゃん?)
歩夢(ううん、そんなありきたりの名前じゃなくて)
歩夢(美味しそうな)
??「はんぺん、どこ行くの」
歩夢(そう、はんぺんちゃん) 歩夢「あっ」
歩夢(というか、この声)
??「……歩夢さん?」
歩夢(同好会のメンバーの一人)
歩夢「璃奈ちゃん……」
はんぺん「にゃー」
歩夢(この子は、璃奈ちゃんが大切にしてる子だもんね) 璃奈「えっと、久しぶり?」
歩夢「まだ一週間も経ってないよ」
璃奈「そうだっけ」
歩夢「うん」
歩夢(毎日、数えているから)
璃奈「歩夢さんは、お昼ご飯中?」
歩夢「そうだけど、璃奈ちゃんは?」
璃奈「私は、探してたの」
歩夢「はんぺんちゃんを?」
璃奈「……一応」
歩夢(一応?) 璃奈「ねえ、一緒にご飯、食べてもいい?」
歩夢「へっ?」
璃奈「歩夢さんと一緒に」
歩夢「う、うん」
歩夢(本当は気まずいけど)
歩夢(向こうから誘われているのに断るのも悪い、かな)
璃奈「お邪魔します」
歩夢(はんぺんちゃんを挟んで、私の隣に座る璃奈ちゃん) 璃奈「最近、元気?」
歩夢「う、うん」
璃奈「……嘘っぽい」
歩夢(うっ、流石にバレバレ)
はんぺん「にゃー」
璃奈「ほら、はんぺんも嘘だって言ってるよ」
はんぺん「にゃー」
歩夢(子猫にも見抜かれているのかな……) 歩夢「璃奈ちゃんの方はどう?」
璃奈「元気、じゃない」
歩夢「どうして?」
璃奈「侑さん、元気ない。だからみんな、元気じゃない」
歩夢「そっか……」
歩夢(当たり前だよね。急にいなくなって、迷惑かけて)
璃奈「それにね、歩夢さんがいなくて寂しいから」
歩夢「へっ」
璃奈「会いたかったの」
璃奈「今日、会えてよかった」
歩夢(……この子は、ときどきズルい) 璃奈「いただきます」
歩夢(そう言って璃奈ちゃんがカバンから取り出したのは、どこかで見たのことのあるゼリー飲料)
歩夢「ごはん、それだけ?」
璃奈「うん。今日はご飯を買いに行く時間がなくて」
歩夢(その割にはんぺんちゃんを探していたみたいだけど)
歩夢(どうしても会いたかったのかな)
歩夢「スクールアイドルフェスティバルの準備は順調?」
璃奈「いまいち、歩夢さんがいないと進まない」
歩夢「私は関係ないよ」
歩夢「できること、なにもなかったもん」 璃奈「でもね、侑さん、ずっと上の空だから」
歩夢(侑ちゃん……)
璃奈「二人に、なにがあったのか、私は知らないけど」
璃奈「侑さんのこと、気になる?」
歩夢「……」
歩夢(無言)
歩夢(でもうなずいてしまう)
璃奈「歩夢さんは、同好会に帰ってこないの?」
歩夢「それは……」
歩夢(この状況が続くなら)
歩夢(戻らないかも、しれない) 璃奈「みんな、心配してるよ」
歩夢「……」
璃奈「侑さんも、仲直りしたいって思ってる」
歩夢(嘘だ、そんなわけない)
歩夢(あんな酷いことをした私のことを、侑ちゃんは)
璃奈「私も、二人が元気じゃないと嫌だから、その……」
歩夢「……どっちでも、いいでしょ」
璃奈「歩夢、さん」
歩夢(語気が強まったのは自分でもわかった)
歩夢(だけどこれ以上、踏み込まれたくなかった) 歩夢「璃奈ちゃんはどうして、そんなに私のことを気にかけるの?」
璃奈「歩夢さんは大切な仲間、友達だから」
歩夢(即答されても、そんな風に言われても)
歩夢「私は、璃奈ちゃんのことを友達だなんて」
歩夢「仲間だなんて、思ったことないよ」
歩夢(私、最低なことを言っている)
歩夢「同好会のみんなは、侑ちゃんの仲間だけど」
歩夢「私の仲間じゃないから」
歩夢(今まで築いてきた絆を、全部無に帰してしまうような) 歩夢「別に私がいなくても、スクフェスは開催できるよね」
歩夢「困る人なんて、誰もいないよね」
歩夢(だけど止まらない)
歩夢(自暴自棄、自分の嫌な部分だけが噴き出してくる)
歩夢「勝手に友達、仲間なんて思わないで、放っておいてよ」
歩夢(嘘だ)
歩夢(璃奈ちゃんのことは大切な後輩だと思っているのに)
歩夢(他のみんなだって)
歩夢(みんな、だって……) 璃奈「……ねえ、一緒にクッキー食べない?」
歩夢(この状況で、なにを?)
歩夢「私はクッキーなんて――」
歩夢(璃奈ちゃんが取り出した袋を見て、言葉が止まる)
璃奈「焼き菓子同好会の友達に、歩夢さんのファンの子がいるの」
歩夢「……私の」
歩夢(前みたいに、同好会のみんなとセットじゃない)
歩夢(小さな袋の中に、いっぱいの私)
璃奈「その子に、歩夢さん、元気ない、凄く落ち込んでいるってお話したらね」
璃奈「これを渡してほしいって、頼まれたの」
歩夢(璃奈ちゃんの友達だからじゃなくて、私のために) 璃奈「歩夢さんから見えるファンは、侑さんだけかもしれないけど」
璃奈「これを作ってくれた友達だけじゃない」
璃奈「他にもいっぱい、歩夢さんのことを好きなファンの子はいるよ」
歩夢(璃奈ちゃんがクッキーを1つ、手に取る)
璃奈「私だってそう」
璃奈「歩夢さんにとっての私は、そんなに大切じゃないのかもしれないけど」
歩夢(璃奈ちゃんはそれを、小さく空いた私の口の中にやさしく入れる)
璃奈「それでも、私にとっての歩夢さんは大切な人だよ」
歩夢(口の中に、バターの柔らかい味が広がる) 璃奈「残り、受け取って」
歩夢(残ったクッキーが入った袋を渡される)
璃奈「私、そろそろ行かないと授業に遅れちゃうから」
歩夢(璃奈ちゃんは立ち上がり、自分に寄ってきた子猫の頭を撫でる)
璃奈「今度は缶詰、持ってくるね」
はんぺん「にゃー」
璃奈「歩夢さんも、また一緒に食べようね」
歩夢「……うん」
歩夢(酷い言葉、いっぱいぶつけたのに) 璃奈「バイバイ、歩夢さん」
歩夢(小さな手を、小さく振る控えめな後輩)
歩夢「バイバイ」
歩夢(私も小さく手を振り返す)
歩夢「……君のご主人様は、いい子だね」
歩夢(小さくなる背中を眺めながら、まだ傍にいてくれた子猫を撫でる)
はんぺん「にゃー」
歩夢(何かが劇的に変わったわけじゃない)
歩夢(強い決心がついたわけでもない)
歩夢(だけど璃奈ちゃんに心が少し救われた)
歩夢(それは確かだった) 乙
>>5
歩夢(同好会のメンバーの一人)
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