ランジュ「まずは手始めにあの金髪モノにしてヤるラ!」ピッ
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ガクッ
…………
階段を踏み外したような、ふわっとした鋭
い感覚に頭をカクカク震わせながら顔を上げる。
そのまま上を見上げると、時計の針はまもなく6時を示そうとしていた。
……………寝過ごした。 最近いろいろと問題が起きてかなり疲労していた上、今日の授業は6時間全て座りっぱなしだったのだ。
不幸か幸いか……まあ最悪いなのだが練習も無いので少しだけ睡眠をとってから帰ろうと考えていたのに。
……………兎に角急がなければ。昇降口が閉められてしまう。
うちの学校のセキュリティのうちでは気付かれないうちに閉め切られるということは無いだろうが、下校時刻を過ぎれば教師に怒られることは間違いないだろう。
鞄の把手を肩に置き、小走りで教室を飛び出す。
いざとなれば本気で走るが、まだ少しは余裕がある。
体力には自信があるが、誰も居ない廊下で疲労したって仕方が無い。 誰も居ない空間に、一定のリズムでタッタッと響く軽い足音は、なかなか気持ちの良いものだ。
ゴロゴロゴロ
ん?
立ち止まって窓を見る。
空はもう赤と紫に染まっているが、雲はひとつも見当たらない。
気の所為だ。やはり疲れている。はやく帰ろう。 リズムを速める
ズドーン
反射的に見た空には、やはり雲一つなかった。
ヤバイ
雷ではない別のなにか、近所で工事でもしているのかもしれない。
しかし自分の勘がそう言っていた。
ここにいてはヤバイ
震えて重くなっていく脚を気合いで持ち上げて、今持っている力を全て懸けて、文字通り全力で走る。 昇降口が見えてきた。
あとほんの15メートルだ。
安心して少しだけ速さを緩める。
疲れた。次に止まったらもう動けなくなるかもしれない。
家まで無事辿り着けるかすら危ういほどの強い心労感が身体にのしかかってくる。
だがあと少し、最後の力を振り絞ってフラフラしながら床を蹴る。 あと5メートルほど。
そこでおかしなことに気がついた。
昇降口に誰も居ない。
いつもなら3人ほどの当番の教師が、下校する生徒にさようならの声をかけていて、完全下校時刻ギリギリまで話声が聞こえてくる筈だ。
だが今日はなんの声もしない。音もしない。 思えば廊下の時点で人が全く居ないのはおかしなことだった。
この広い、学費だって高額なガッコウだ。
警備はしっかりとされている。
特に下校時刻直前なんて何人もの教師達が、この広い校内を隅々まで見廻るために過酷なカロウに耐えて毎日残っている。
ただ今日は日ではなかったのだろうか。
私以外誰一人コウナイに居ないようだ。 どんどん一歩が小さくなっていくが、それでもなんとか進む。
あと少し
「んむっ………!?」 口内に異物が詰められた。
感触と味からしてハンカチのような薄い布だ。
脊椎反射で振り向こうとすると、まず胸下を強く抱き締められ、次に頭を熊の手で下へ向けられた。
頭皮に刺さった爪は細長く、先が滑らかな放物線状に整えられていて、すぐに女性の指だとわかった。
かなり痛くて首が振れるが、すると余計に深く爪が突き刺さるので、頭を更に下に向け止める。 先程より遥かにヤバイ状況なのに何故か冷静に事を分析している。
自分で脳みそを使って考えているというよりは、真っ白になった脳へ、情報がトクトクと流れ込んでいくような感覚だ。
ポケットに入っている筈のスマホを手に取ろうと自由な指を動かすと誰か他の人物が来て手を掴まれた。
そして速やかに最後の手段を回収されてしまった。
急に全ての拘束が解かれる。 ああ……
自分の膝が地面に近づいて行くのが床の冷気でわかる。
一度止まったらもう動けない。
その考えはどうやら正解だったようだ。
残念ながらもうひとつ、なにやら不幸なお知らせがあるらしい。
力が抜かれていくのだ。 その力とは、たんに体力とか、瞬発力とか、それだけではない。
思考力、聴力、視力………
あらゆる力が頭のてっぺんにとんでって、そのまま消えてしまうみたいに抜かれていく。
そして、それが "抜けていっている" のではなく、 "抜かれていく" とはっきりと断言できるのは、"ハンカチ" から、ふわりと甘くて苦い、風に飛んで行くラベンダーのような香りがしたからだ。 ここにいたらヤバイ
どえやらこの予想まで当たっていた予想まで当たってしまったらしい。
アタシの勘はカンペキに当たるなー
なんて、ダジャレを考えている場合でもないのに。
そう考える思考力は、もう奪われてしまったようだ。
逃げなきゃなんて思ったってもう遅い。
雲ひとつない空を轟かせた雷に震わされた時点で、私の敗北はもう決まっていた。 ―――――――――
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再び目を覚ますとそこは学校の保健室だった。
ベッドから見える空はやっぱり雲一つない美しいあかむらさき。
悪い夢をみていたのか。 保健室に来た経緯は全く記憶に無いが、恐らく放課後机で寝ている途中に床に倒れでもしたのだろう。
ここまで運んできてくれた誰かにお礼が言いたいが、それは明日にしよう。
今日はもう疲れた。本当に疲れた。
実際は放課後からさっきまで寝ていただけだろうけど、まるで現実だったかの様に体力が消耗されている。身体が重い。耳鳴りまで鳴っている。
それに夢で感じだあの恐怖感は未だに脳にこびりついて離れない。
軽いトラウマができてしまった。
これから暫くはなにかある度にあの感覚がフラッシュバックするだろう。
最近は一緒下校することも減ってしまったが、りなりーに一緒に帰ってもらおう。歳下に頼りない姿をみせるのは少しばかり体面が悪いが、やはりりなりーが1番安心する。
今日は仕方が無いので1人でぶるぶる震えながら帰ることとなるが。 まあとりあえず早く家に帰りたい。
時間もかなり経っているだろうし家族も心配しているかもしれない。
だがしかし、勝手に帰る訳には行かないので、まずは保健室の先生を捜す。
保健室には居ないようだが、校内のどこかには居るだろう。
起き上がろうとするとガチャリとドアが開いて誰か入って来た。 まず目に入ったのは、プラスチックに似たツヤをもったピンク色の長い髪。腰に届くくらいだろうか。耳上辺りに輪っかのついた触角の様なものが作られてある。
次に視線を中央に向けると、キリリとつり上がった眉に、これまたキリッとした直線的な青い瞳。
間違いない。鐘嵐珠だ。アタシにたっぷりすぎる心労とストレスを与えてくれた張本人だ。2つの意味で。いや、根本的には何方も同じだろう。多分。 なるほど。
驚きや恐怖よりも納得という感情が先だった。
それと同時に寝起きとは思えないスピードで脳がフル回転した。
昼休みは強く言い過ぎたのだろうか。もう少し優しく言えば良かった。いやでも仕方が無い。あちらだって、むしろあちらの方がやり過ぎだろう。それとも今日に限った話ではなく、そもそも馴れ馴れしくし過ぎたのだろうか。アタシは距離が近いとよく言われる。良い意味でも悪い意味でも。同い年だからといって初対面から呼び捨てやあだ名で呼ぶのはこれからは控えようか。特にこの子は理事長の娘なのだからあまり礼儀知らずなことをするのは良くないだろう。こんな風になる。しかし立場によって態度を変えるというのは自分の理念に反する。いや、馴れ馴れしくされるのが嫌だという人は立場関係なくいるだろうからやはり初対面のうちはもう少し丁寧に接すこととしよう。
「おわっ」
ランジュが目の前に立っていた。 自分としてはものすごく長い時間考え込んでいる感覚だったが、ランジュはたった今ここに足を着いたようなので、ランジュの正体がカタツムリか亀でない限り、時間としてはほんの数秒だったのだろう。
咄嗟に敵から逃げようと身体を持ち上げるが、重くて動かない。
「宮下愛!」 急に名前を呼ばれて手と首がが少し反応した。
全く動けない訳ではないらしい。
「ふふっ……」
「顔を上げることすらできないみたいね。宮下愛。」
「イチバンメだからといって手間をかけて良かったわ。」
「どうだったかしら、さっき使ったオト?」
「雷が苦手だと聞いてアナタのために特注したのよ。」
「感想を聞かせて欲しいわ?」 一人でペラペラと喋っているが話を聞く気にもなれない。もうわかりきっている事を説明しているだけだし聞く必要もないだろう。
今日の昼休みまでの自分なら、自分からこんなにたくさん話してくれることを嬉しく思っただろうが、今は状況が全く違う。 はぁ…これからなにをされるのだろうか。少なくとも友だちになれそうな雰囲気では無いことはわかる。
まあ大方予想はついているが、気になるのは "誰もいない" というところだ。
ただの勧誘なら態々学校から生徒や教師を追い出して、小細工までして力を奪ったアタシを更に気絶させてまで……改めて酷いな……そこまでしないだろう。
既にもう5回程、勧誘されたがそのときもランジュの部室だったし、他の生徒も教師もいつも通りだった。
拷問でもされるのだろうか。
傷が残るのは辞めて頂きたい。活動に影響を与えるかもしれないからだ。
なんにせよ、同好会の為になんとしてでも耐えなければ。 今後の展開の考察を深めながら、ことの進展を待つ。
左から右へ流れていく話のなかで、ひとつ新しくわかったことがあった。
どうやらこの不愉快な耳鳴りは人工的なものらしい。
そしてこの音は、アタシの耳に入れられた耳栓の様な機械から流れているらしい。
全然気が付かなかった。教室で寝ていたときから付けられていたのでもう肌に馴染んだのだろう。 「ちょっと待ってなさい!」
やっと話が動きそうだ。
なにやらガチャガチャと音がしているのが気になるが、なにせ身体が重くて動かせないので眼球の可動範囲しか視界に入れられない。
仕方が無いので大人しく天井の黒点を見つめて待っている。
ああ、同好会の皆は大丈夫だろうか。1年生なんて特に心配だ。かすみんはあれでかなり強い子だから大丈夫だろうが、他の2人は心配だ。芯は通っているが気の強い先輩に迫られたら怯えてしまうかもしれない。 「じゃーん!!」
屈託のない笑顔をしたランジュが視界に飛び込んできた。
手に持っている物をみてみると、
…………………
マジか
その手に持っているのは、幼児の様な笑顔とは真反対なドン・キホーテの黒カーテンの向こう側に並べてある "そういう道具" であった。
別に "そういうコト" に詳しいという訳では無いが、16年間東京で普通教育を受けていれば嫌でも知ることになる。勿論黒カーテンを開けたことなんて一度だってない。 本格的にヤバイ展開になってきたぞ。今直ぐにでも逃げ出したいがあいにく身体が動かないので逃げようとするだけ無駄に体力を消耗するだけだ。
ただまあなにも抵抗しないのも受け入れているようなので目を合わせて睨みを効かせてみる。
「……???」
どうして自分が睨まれているのか見当もつかない……といった様子ではてなマークを浮かばすランジュ。
「…………あ!!」
なにかに気が付いたようだ。
といってもなにか気づかれる様な事はないのだが、気づいているのだから気づいたのだろう。
なんでアタシこんな状況で冷静にジッキョウなんてしてるんだろう。 「家族を心配してるのね!大丈夫よ。ちゃんと連絡をいれておいたわ!」
それは良かった。今日1番嬉しいお知らせだ。
「ふふっ…前置きが長くなったけど早速始めるわね。」
「楽しみだわ。準備が大変だった分、期待で胸がいっぱいよ。」
此方は全く楽しみではないし不安で胸がいっぱいだ。 「うっ!」
なんだこれ、
「いっ………ぁ……ぅぅ…」
今までとは比べ物にならない程の強い不快な音に呻き声が漏れる。
「ぁ…ぁ…ぁ…」
頭が痺れる。脳を構成している神経を、一本一本ピンセットで剥がされているようだ。 「もう少しの辛抱よ。がんばって!」
そう言われてからどのくらいの時が経ったのだろうか。数秒か、数分か、数十分だったのか。アタシには永遠に感じられた時間がやっと過ぎた。
音が止まった訳ではなく、少し低い音に変わっただけな上、まだ耳に不快感と痛みが残っているが、それでもだいぶ救いわれた。 「ふふふっ…いい感じね。」
ピッという音の後、また耳栓の音が変わった。
「んっ……ぁ……」
また声が漏れるが先程とは随分系統が違う。
「ん、ひ………やめ……」
お腹からフワフワとしたなにかが浮かび上がってきて、声となって空気中に放出される。
声を出しまいと口を閉じようとすればする程フワフワが大きくなっていく。 「ぃ……あっ……」
ピッ
「っ……はっ……」
ようやく解放された。
「はぁ…はぁ…」
息が上がる。 なんだこれは。
考えるより先に、太腿に冷たい手が触れられた
「ひっ…」
「あらディブシア…ごめんなさいね。ランジュの手は冷たいの。でもアナタの肌は温かいから、直ぐに温かくなるはずよ。」
ランジュはそう言いながら、無遠慮にスイスイとアタシの太腿を登っていく。 「や、やめて」
自分の声とは思えない程震えた声でそう言った。
「無問題ラ!すぐに……楽しくなるわ!」
問題しか無い。
「あっ…」
下着を手に掛けられ、かと思えば一瞬のうちに投げ捨てられた。 「ふふっ……やっぱりミアは天才ね。あんなにムリムリ言ってたのにちゃんとできてるじゃない。」
「これならすぐに始められるわ。」
ご機嫌そうにそう言いながら、ランジュはアタシのソコを撫でる。
「んふっ……ぁ…」
「楽しいわね。」
は?
「うんうんその目、いい感じよ。」 ランジュはそう言って、ニコニコしながら "ソレ" を手に取った。
身震いがした。
「やめて。おねがい。おねがいだから。」
アタシ懇願を後目にランジュの手にある
"ソレ" は着々と "ソコ" へ近づいて行く。
音も少しずつ高くなっていく。 「ぃ、ぁ…あ゛あ゛……あっ」
痛い。痛い痛い痛い。薄い薄い皮膚が擦れ、広げられ、ぐちゃぐちゃと掻き回される。今まで感じたことの無い痛みが全身を貫通する。それに耳からもキィキィと神経を刺激される。狂いそうだ。
「楽しい。楽しいわ。」
「…いっ……ぃ……りなりー……っあ…りなりーっ…」 気づけばりなりーの名前を口にしていた。
アタシはりなりーに恋愛的感情を持っているのかと訊かれれば、すぐには答えられない。
持っているのかもしれないし、持っていないかもにしれない。
ただ、アタシがりなりーに恋愛感情を持っていたと仮定しても、"これ" とは関係無いと言える。
これは多分防衛本能的な何かだ。
その分野の勉強をしている訳では無いので、本能がどうとかはよく分からないが、きっとこれは、敵から身を守る為の、産まれ持った本能なのだ。
人間は危険な目に会えば抵抗する。しかしアタシは今、抵抗しようにも、身体の中の可動範囲が限定されている状況にある。きっと、 "ソト" に出られなかった抵抗の力が、声として発散されたのだろう。
それがりなりーだった。りなりーで良かったっと言うべきか、選りにも選って、と言うべきか、その判断はとても困難だ。 「はぁぁ……はぁぁぁ…はぁぁぁっあっ…」
息が不規則になる。視界がぼんやりとしてきた。どこか別の世界に身体を沈められているみたいだ。
「愛。」
声だ。
ヘルツの高い電子音とクチュクチュという不愉快な自分のオトで占められたこの世界に、やっと人の声が届いた。
それだけで自分が一線から守られた。
「楽しいわね。」
楽しいのか?
いいや楽しくない。
楽しくない筈なのに、段々と確信が持てなくなっていく。 「チュッ…」
疑問のシャボン玉を割ったのは小さなリップ音だった。
口を塞がれて息が苦しい筈なのに、不思議と呼吸が安定する。
「ん、んっんぅ……んっ……んっ……んっ…」
呼吸と音の波がぴったり重なって、自分が音の中にいるように思えてくる。 柔らかい感触が離れたかと思えば、今度はフワフワとした柔らかいスポンジのようなものを充てがわれる。
「口を開けなさい。」
素直に従って口を開ける。
甘くて柔らかい物が舌を転がる。
久しぶりの糖分に頭をクラクラさせながら記憶を辿る。 ドーナツだ。
よく一緒に食べた。りなりーのお気に入りの焼きドーナツだった。
「りなりー」
今度は意識的に声に出していた。
しかし、なんだか "りなりー" を汚しているように思えて、すぐに "りなりー" から離れた。 「ふふふっ…もっと "楽しい物" をあげるわ。」
ランジュが何かを口に入れ、そのままアタシにふたたび口付けをした。
「……ふっ……んっ……………」
何かを入れられた。
これはチョコレートだ。
楽しい? 「んっ!……………」
薄くなってきたチョコレートから液体が滲み出てきた。
その味覚に染み込んでビリビリいうよるな感覚と思考を乱すドキドキから、これがピンク色のお酒だとわかった。
ピンク色かどうかはわからない。
でもきっとピンク色だ。
口の中身はまたすぐに空っぽになった。 ランジュ
ランジュ
「ランジュ」
何故だろうか。そのピンク色のツヤを求めてしまう。
「うふふっふふふふふっ……もうこれは要らないわね。」
"アタシ" を侵略していた "ソレ" がゆっくりと抜かれる。
「んっ…」
軽く声が漏れるが痛みはない。 「さて、もう1回コッチをあげるわね。」
「はい、いつもの。」
そういったランジュは半開きのアタシの唇に、自分のピンクをふわりと乗せる。
「あっ…」
またドーナツが入ってきた。
でも、今度はその塊は濡れている。そして大きかった。 「ぁ…………ぁ゛……」
みっしりとしたドーナツは、重力に従って下へ下へと沈み込み、息の逃げ道を完全に塞いでしまった。助けを呼ぼうにも声が出せず、喉から出る息を、塊に擦り付けて音を出すが、気づいてもらえない。
生理的な涙が零れた。
「あっ……ごめんなさい。」
それに気づいたランジュは、慌ててもう一度唇を重ねる。一瞬だけ、口角が上がったように見えた。アタシはフワフワ浮かぶ心の中から、一粒の怒りをみつけたが、すぐにランジュの甘噛みに噛み砕かれた。 ランジュが長い舌で、器用に塊を掬い取った。
髪が触れる。
見た目通りのツルツルとした髪の毛だった。
ランジュは唇を離すと、アタシのほんの3センチ程上で、もぐもぐと口を動かしていた。
もう何度目かの口付けが行われる。
さっきまで個体だった塊は、ランジュによって液体にされて、口内に擦り付けられた。
右頬に付けられた液体を舐めてみる。
ランジュの味だ。 アタシはもっともっとと舌で舐め取ろうとするが、ランジュの舌が、それを邪魔する。
ランジュはいつもこうだ。本気で意地悪している訳では無いとわかっているが、舌を伸ばしているのも満足な酸素を取り入られないのも、もうかなり辛い。
涙がポロポロと零れ落ちて耳をつたう。
ランジュはまだ辞めてくれない。
そればかりか首筋を爪で刺される。 痛い。
痛くて痛くて堪らない。
楽しい。
何故だろうか。ここにずっと居たいと思った。
もっと深く、そう心の中で願うと、本当に深く刺さった。
皮膚が剥がれて血が滲む。 反対の手で制服のボタンが外された。顔を合わせていて手元が見えない状態なのに、器用なものだ。
胸元を引っ掻かれる。
首筋に刺していた爪が抜かれ、胸元に置かれる。
そしてベッタリと血液の付いた指でなぞられた。
何度も何度も、何かを刷り込むかのように
ハートマークだ。 楽しい。
とても楽しい。
なんだろう、このトキメキは
「…ぷはっ…」
やっと呼吸が自由になった。身体が酸素を求めて大きく上下する。
めちゃくちゃ苦しい。苦しいのに、なんだか、 「楽しい」
楽しい。
それだけで胸がいっぱいになる。全部が見えなくなる。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
下を直し、ワイシャツのボタンをはめ、あかいリボンでアタシの首を強く絞めながらランジュが言った
「好きよ」。 今まで感じていた全ての "楽しい" が爆発する。
今まで記しをつけてきた脳が全部ぐちゃぐちゃに掻き回される。
「…あ………あ…………ランジュ……」
どうやら私は、もうランジュの虜になってしまったようだ。
震える手でランジュの髪を撫でる。 「楽しいわね。愛。」
「ランジュの後ろにいる愛は世界で一番輝いているわ。」
「きっとみんなを楽しくさせちゃうわね。」
「ランジュと一緒にいる愛はとても可愛いわ。」
「そうだわ愛。踊るときにはあの衣装を着て欲しいの。」
「だってあの衣装は "トクベツ" なんでしょ?ランジュと愛の "シルシ" にしましょう。」
「ねえ愛。アナタのお友達も、楽しくさせてあげたいわ。思わない?」
「もちろん!ランジュが喜んでくれるなら。」
そう笑ったアタシの顔は、その青い瞳にはどう写ったのだろうか。
顔が上げられなかった。
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