イレイナ「お酒を二口舐めただけで酔っ払う頬を微かに赤らめた可憐なこの魔女は誰でしょう?」
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イレイナ「そう、わらひれしゅ……」
イレイナ「酔っ払ってしまいまひた……。この国にくるまれ気が付きまへんでしたが私ってば下戸なのれしゅね」
イレイナ「いつまでも長居しているとまずいですひ、しょろそろ出ましょうかへ」
男A「よぅ、あの魔女とかどうよ?」ヒソヒソ
男B「おお! 悪くねぇ! 今夜のターゲットはあの子で決まりだな」ヒソヒソ
イレイナ「……」ポワポワ stand up! stand up! 立ち上がリーヨ イナズマチャレンジャー イレイナ「んっ、目が覚めました……」
イレイナ「私は、たしかこの未成年でも酒が飲める国に訪れてそれから……」
男A「よぉ、目が覚めたかい? 魔女さんよぉ」
男B「ゲヘヘ……魔女さんぐっすり寝ちまってて美味しい眺めだったぜ……」
イレイナ「誰ですか、あなた達……ここはどこですか……」
男A「クックック……眠剤入りの酒は美味しかったかい?」
イレイナ「……っ! 思い出しました。あなたはたしかあの店のオーナーで」
男B「それであんたをここに拉致したわけだ」
男A「いやぁ、なかなか骨だったぞ」 イレイナ「私をどうするつもりですか……」
男A「どうもこうも、よっ!」ドンッ
イレイナ「きゃ!」ドスン
男B「男に拉致されたわけだから、ヤることと言ったら一つだろ?」ベロリ
イレイナ「ひっ! 離してください! 離して、離して! こんな事してタダで済むと思ってるんですか!!」 男A「さて、問題です! 男二人に魔女が一人……何も起きないはずがなく、「お笑い芸人を組みたいなー」と言う儚い夢を抱いてる男は誰でしょう?」
男A・B「そう、俺らです!」
イレイナ「…………は?」
男A「いやぁ抜群だったよ魔女さん! この国に来たベッピンさんを一通り試験したんだが、みんな諦めモードでね。「もう好き放題にしていいよ」的な感じだから本気で嫌がる魔女さんを見て俺のセンサーが確信したよ。『この娘ならイケる』ってね」
イレイナ「どういう事でしょう?」
男B「僕ら、チンケな酒場を仕切ってるけどその実お笑いユニットを組みたくてね。まず一発ネタに「目覚めた女子に乱暴する男」のコントを思いついて……」
男A「俺らが望んでいた嫌がる少女に出会えたわけだ」
イレイナ「はぁ……」
男A「で、どうだい? 魔女さん。俺らと一緒に漫才する気はないかい?」
イレイナ「ないです」
男B「おう、そうと決まれば話ははやい! 早速明日の酒場でファーストコントをやろう」
イレイナ「ないって言ってるじゃないですか。というか明日って急すぎません?」 男A・B・イレイナ「ショートコント『乱暴される魔女』」
男A「ゲヘヘ、魔女狩りの時間だぜぇ……」
イレイナ「いやっ、どこよ!???? ここ???? 私なにされるの????? キャーヤメテェ……」
B「逃げ場はないぞ……?クックック」
イレイナ「キャー! ふん!」ドゴォ
A「ぐわぁっ! ぐふ……」
B「あ、兄貴!? このアマ!」
イレイナ「イヤァ! オラ!」ズドン
B「グヘ!?」
A・B「……」チーン
イレイナ「ナンカワカラナイケドタスカッタ!」
〜〜〜
A「リハーサルをやってみたけど、イレイナさん大根演技すぎだろ!?」
B「もっとあの時みたいに本気で怖がってよ!!」
イレイナ「そうは言ってもですね……。あの時は素で怖かったですし。やろうと思ってできるものでは……」
B「とにかく、やり直し! 発表は今夜だ、引き締めていこう!」 〜〜〜
A「だぁーダメダメ全然駄目! あのさぁイレイナさん! 本当に俺らとお笑いやる気ある?」
イレイナ「だからハナからやる気など……」
B「くっそぉ……あと4時間……どうすればいい……」
イレイナ「……そもそもAさんBさんはどうしてお笑いをやりたいと?」
A・B「…………」
イレイナ「きっかけを教えていただかないとやる気は出ませんよ」
A「……よし、時間ギリギリまでリハやるぜ!」
イレイナ「……」
〜〜〜
A「休憩だ。 一服してくる」ガチャ バタン
B「クッソー! どうすればいいんだ……」
イレイナ「Bさん、さっき私が問いかけした際、Aさんが複雑な表情をしていましたが一体……」
B「Aの奴……、数年前カミさんに逃げられたんだよ」 B「もともと僕らは酒場を営業してたわけじゃないんだ。僕とAは幼馴染で、お笑いで食っていくのが将来の夢だった」
「でも現実はそんなに甘くないってことを知ったね……。Aは結婚して子供もできたのに、お笑いに没頭するあまりカミさんと子供に逃げられ――」
「僕は僕でこの酒場を営業しながらお笑いのネタをダラダラ考える、鬱屈した日々を送っていた」
「現実は非常よな……。夢と笑顔を届ける芸人なのに、Aは家庭崩壊し、僕は夢を諦めきれず、でも追いもせず」
イレイナ「そんなになってまで、どうして酒場でコントをやりたいと?」
B「あいつの奥さんさ。今夜酒場に来るんだ。子供を連れてさ」
イレイナ「それって……」
B「子供さんが「どうしてもパパに会いたい!」って言い出したらしくてね。それで手荒なマネになってしまったが、あんたを仲間に引き入れたんだ。トリオユニットが僕らの芸風にふさわしいと思ってな」
イレイナ「あ、手荒って自覚はあったんですね」 B「そのことを聞いたAは本気になったね。カミさんと子供に自分がどんなにお笑いにマジなのか……お笑いの楽しさ、面白さとはなにか……そして自分が今でもどんなに家族を愛しているかを今夜のショートコントで証明したいって言ってるんだ」
B「イレイナさん、お願いだ。この際、今夜のコントがスベっても構わない。本気で演じてくれないか? 頼む、報酬ははずむよ」
イレイナ「報酬ははずむ……。わかりました。善処しましょう」 ナビゲーター「続きましてこの店のオーナー二人+魔女によるショートコントを披露してもらいます!」
子供「ねぇ! パパが出るやつじゃない?」
妻「えぇ、そうよ坊や」
妻(……あなた)
〜〜〜
A・B・イレイナ「ショートコント!『魔女も泣き出す』!」
男A「ゲヘヘ、魔女狩りの時間だぜぇ……」
イレイナ「どこですか!ここ! 私なにされるんですか? やめてくださいよ!」
B「逃げ場はないぞ……?ゲヘヘヘヘ」
イレイナ「いいやぁぁぁぁぁぁ ふん!」ドゴォ
A「ぐぎゃ! もっとぉ♡」
B「あ、兄貴!? このアマ!」
イレイナ「……オラ!」ズドン
B「グヘ!? ぁぁぁあん♡」
A・B「……」チーン
イレイナ「……えいっ」ゲシッ!
A・B「ああん♡」
イレイナ「とりゃ!」グシッ
A・B「いくぅ♡」
イレイナ「こんなのが良いんですか?」ゲシゲシゲシ
A・B「あああああああぁぁぁぁぁ♡」 〜〜〜
A・B・イレイナ「どうも、ありがとうございました」
A「お笑い志望のAと」
B「同じくBと」
イレイナ「通りすがりの魔女、イレイナです」
B「やっとこさで今夜コントお披露目することができました。即興で考えた本当に粗いコントでしたが、この中の一人でも誰かが笑ってくれたらいいな、と思います」
イレイナ「旅をしていてこの国に訪れたイレイナです。本当はお笑いなんてやっている場合ではなく次の国に急ぎたかったのですが、渋々、お二人の熱意に圧倒されてゲスト出演させていただきました」
A「最後になりますが、今夜来てくれた俺のかけがえのない宝物へ……。見ての通り、まだまだお寒いネタしかできない。でも俺は絶対おまえらを笑わすまで諦めないし、お前らの笑顔だけが俺の生き甲斐だ。離れ離れになってしまったが、今でもお前を、お前たちを愛している。ありがとう」 〜〜〜
子供「パパ!」
妻「あなた!」
B「ほら、呼んでるぞ。行けよA」
A「……っ」
イレイナ「あんなネタ披露しておいて、まだ迷ってるんですか? 芸人なんて爆笑されてナンボ、失笑されてナンボなんですから怯えてないでドンと行きましょうよ」
A「そうは言うがn――」
イレイナ・B「行け!」ドン
A「おわわっ」
子供「パパ!」
妻「あなた……」
A「……はは、や、やぁ……。どうだったかな?」
妻「100点満点中、10点ってところね」
子供「うん、シモネタでつまんなかった」
A「ぐぎ……」
B「ははは、言ったとおり、この二人を笑わせる目標ができたじゃないか?」
A「そうだな……。イレイナさん、なんとお礼を言ったらいいか」
イレイナ「えっ、報酬ははずむとBさんに言われたのでそりゃもちろん払ってもらいますよ?」
A「B……ウチの店が経営難ってこと知ってるよな?」
B「まぁいいじゃないの。新しい目標もできたことだし」
イレイナ「じゃ、さっそく払ってもらいますね」
子供「パパ!久々に会ったんだしあたしにもお小遣いちょうだい!」
A「ぐっ……」 あれから3ヶ月が経ちました。聞く話によるとあの国で出会ったAさんとBさんはその後、新しい女性と組み国を代表するお笑いユニットとなりつつあるみたいです。
……しかし、舞台の上に立った時の緊張感、観客に笑われた時の快感、そして見事コントをやり遂げた時のあの達成感、一体何なのでしょうか?
私はそのことについてずっとヤキモキしていて、そしてある夜一つの結論に辿り着きました。
〜〜〜
フラン「イレイナ、急に訪ねてきて何のようです?」
イレイナ「フラン先生。先生は私とお笑いコンビを組みたく……とかないですか?」
フラン「は?」
終わり せっかく書き上げたら板違いだろうが誤爆だろうが落とすな
やり遂げろ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています