そうよワタシは大女優…
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#1~開演~
しずく「あなたは……誰なの??」
???「ワタシはお前だ………」
しずく「あなたは……あなたは……」
しずく「誰……?」
ガバッ
しずく「………」
またこの夢だ。
この間の舞台の題材がちょうど"多重人格"の少女の物語だったからかな……
役に入り込み過ぎてるのかも。
私、桜坂しずくはスクールアイドル同好会と演劇部を兼部しているどこにでもいる高校1年生。
私にとって演じることは私自身の存在証明でもある。
だから、役が決まったらその役とどう向き合うのか生活から入り込むようにしている。
だが、私には一つだけ変わっている部分がある。
それは……無いのだ。 舞台で役を演じている私自身の記憶が。
セリフの合わせ。共演者との稽古。
この辺りはハッキリ覚えている。
だが……開演のブザーが鳴ると私は一度眠ったかのような状態に陥る。
意識が底に沈んでいるのか役に入り込み過ぎているのか。
気がつけばカーテンコールが起こっている。
不思議な感覚だ。
でも嫌な感覚では無い。
自分自身では無く、役としてその舞台に立っている。 女優冥利に尽きるって感じかな。
それで……
かすみ「しず子〜!!」
彼女に名前を呼ばれると胸がざわつく。
そんな感覚に気付いたのはいつだっただろうか。
しずく「かすみさん、何か用?」
かすみ「その言い方じゃ用が無いならしず子に話しかけちゃダメみたいじゃない……」
しずく「ごめんごめん、そうじゃなくて。」
かすみ「まあ心の広いかすみんだから!許してあげる!」ドヤァ
ドヤ顔を決める彼女に思わず笑ってしまう。 かすみ「ところで今日の部活なんだけど……」
話が全く入ってこない。
後で璃奈さんに聞かなくちゃ。
かすみ「ねえ、しず子聞いてる?」
しずく「うん。バッチリ!」
かすみ「まあいっか。じゃあまた後でね!」
駆け出して行く彼女の姿はまるで自分とは別の世界にいるような。
そんな……感覚に堕ちていった。
ねぇ……今日の私はどんな表情かな?
彼女は静かに微笑んだ。
#1~開演~ 終わり しずく「せつ菜さんの弱点……?」
かすみ「何かないかなあ……」
夏の暑さが本格的になってきたある日。
私はかすみさんからこんな相談を受けていた。
しずく「……料理くらい?」
かすみ「その話はやめて!!トラウマが……」
聞いたところによると以前、酷い目に遭ったことがあるらしい。
成績優秀、スポーツ万能なあの先輩にも苦手なものがあるんだと驚いたものだ。 かすみ「……しず子!聞いてるの?」
しずく「……聞いてるよ?」
かすみさんのほんのりピンクな頬が少し膨れている。
かすみ「ならいいんだけど…あれれ?まさかしず子、かすみんの可愛さにもしかして見蕩れてたのかな?」
しずく「そうだね、かすみさん。」ニコッ
かすみ「絶対心から思ってないじゃない〜!」
しずく「そんなことないよ、たぶん……」
かすみ「まあ、かすみんの広ーい心に免じて許してあげる!しず子は一応友達だしね……」
しずく「はいはい、優しいね、かすみさんは。」
かすみ「だからそうじゃなくて〜!!」
"友達"か……… 一番聞きたくない言葉かな、たぶん。
ガラッ
璃奈「二人で何の話してるの?」
かすみ「あっ、りな子ー!!聞いてよ、せつ菜先輩を倒す作戦会議をしてたの。」
璃奈「倒すって物騒……璃奈ちゃんボード (ドンビキ)」
かすみ「冗談だって〜、りな子ったら大袈裟なんだから……」
しずく「あ、なら璃奈さんの特製ドリンクでパワーアップすればいいんじゃない?」
かすみ「えっ……りな子の特製ドリ……」
璃奈「ちょうど一本手元にあるよ。」シュポンッ
かすみ「いや、飲まないからね……」 璃奈「そんな……私じゃ力になれない……?璃奈ちゃんボード (ウルウル)」
しずく「あーあ、璃奈さん泣かせちゃった…」
かすみ「泣いてるのボードなんじゃ……あー!もう飲めばいいんでしょ、飲めば!!」ゴクゴク
かすみ「うっ……」バタンッ
しずく「かすみさん!?」
璃奈「ちょっと刺激が強過ぎたかなあ…」
しずく「一体何を入れたの?」
璃奈「前回の体育祭ドリンクを改良して、パワーを漲るようにして更に飲みやすくしたんだけど……これはちょっと失敗かな……」
しずく「ちょっとじゃないのでは?」
璃奈「とりあえず、しばらく傍にいてあげてくれないかな。」
しずく「え、それなら璃奈さんも一緒に…」
璃奈「私は愛さんと一緒に帰るから。用事、無いんでしょ?」バチッ
しずく「……………」 しずく「じゃあそうするね。」
璃奈「ごゆっくり〜。」フリフリ
そう言って璃奈さんは去っていった。
しずく「ふう……」
気絶しているかすみさんと私のこの状況。
ドラマやアニメでこんなシーンありそうだ。
まあ、友達の作った栄養ドリンクで倒れるっていうとんでもない筋書きを書く脚本家なんてどこにもいないだろうけど…
それにしても……
サラッサラのショートヘアー。
長いまつ毛。プルプルな可愛い唇。
全部…… でも分かってるんだ、心の中では。
しずく「ねえ、かすみさん……」
しずく「あなたが好きなのは…誰なの?」
当然返事は無い。
しずく「起きないと…私、何するか分かんないよ?いいの?」
しずく「…………」
私は狡い女だ。 ガラッ
せつ菜「忘れ物をしたので取りに来ました!!!!」
せつ菜「同好会はお休みなのにお二人とも何をしてたんですか?」
しずく「えっと、ちょっと休憩ですね……かすみさんがちょうど寝てしまったので……」
せつ菜「なるほど!!それはお邪魔しちゃいましたね。」
しずく「い、いえ、そんな……」
せつ菜「じゃあ私は帰ります。また明日同好会で会いましょうね!」
そう言って彼女は風のように去っていった。 優木せつ菜さん。本名、中川菜々さん。
成績優秀、スポーツ万能。
優木せつ菜としての顔も中川菜々としての顔も信頼されており、私の尊敬する先輩だ。
彼女はいつも真っ直ぐで熱い。
そして……
かすみさんが好きな人。
最初はただ単にライバルとして見てるのかなって思ってた。
でも違った。 かすみさんは優木せつ菜を尊敬するアイドルとして見ていると共に、彼女のことが好きなのである。
そう気づいてしまった。
なぜなら、"私"がかすみさんをずっと見ていたからである。
彼女の視線はいつも優木せつ菜さんに向かっていた。
おそらくだけど、彼女自身もせつ菜さんへの想いが恋心だって気づいていない。
でも、私は二人がくっつくように応援したいと思っている。
だって……
私はかすみさんの"友達"だから。
#2しずく編1終わり もし見ている方がいらっしゃれば保守してもらえると助かります、夜には戻ってきます ID変わってると思いますが、帰宅したので再開します #3~かすみ編1~
私は昔から何の取り柄も無かった。
スポーツが出来る訳でも無く、勉強もからっきし。
頑張っても報われない自分に嫌気が差していた。
でも、昔からずっと言われていたことがある。
「かすみちゃんって本当に可愛いね〜。」
両親や親戚、近所の人にこう言われていた。
愛されていたんだと思う。
だから……
"可愛い"だけは譲りたくなかった。
その結果、私は小さい頃から仲の良い友達が少なかった。
当たり前だ。
自分で「かすみんが一番可愛いでしょ〜!」って言ってる女なんて痛いと思われても仕方が無い。
可愛くなるためならなんでもする。
けど何もしなくても自分よりも"綺麗"な女の子はやっぱりいて。
私は嫉妬した。 そんな時に出会ったのがスクールアイドルだった。
高校生なのにキラキラと可愛い衣装を着て、皆に可愛いと言われているスクールアイドルの煌めきに私は魅せられてしまった。
虹ヶ咲学園に入学し、スクールアイドルとして一番になる。それが私の目標だった。
意外なことにトップクラスの煌めきを放っている存在がすぐ傍に現れた。
せつ菜「中須かすみさん…かすみさんですね!これから一緒に頑張りましょうね!!!」ペカー
優木せつ菜先輩。
真っ直ぐで熱血系で、人を信じるって言葉がいかにも大好きなタイプ。
正直苦手。
可愛いとは少し違うけど、目標であり、この人を越えていかないと頂点には行けないと思った。 その日から私は彼女の一挙手一投足について研究することにした。
練習方法、取り組み、食事、パフォーマンス。
全てにおいて高水準だった。
何より彼女はスクールアイドルを愛し、ファンを愛し、「大好き」に真っ直ぐだった。
この人に勝てない。
なんて言ったらもう完全に立ち止まってしまう気がした。
絶対に負けられない。
いつも一歩先にいる彼女を目標に頑張ってきたら、ファンも少しずつだけど私を見てくれるようになってきた。
そして、なぜか彼女は私のイベントのいつも最前列で黄色のブレードを振っていた。
彼女はスクールアイドル自体が大好きらしいので、さまざまなスクールアイドルのライブによく姿を現れているそうだ。
菜々さんの姿だからファンには気づかれないらしいけど…… そして、今日もライブ終わりに楽屋まで来てくれたのである。
せつ菜「今日のライブも最高でした!!!かすみさんの曲はコールも沢山で自分の大好きを思いっきりぶつけられて最高です!!!」
かすみ「ありがとうございます…あれれ〜、せつ菜先輩は私のこと大好きなんですか?」ニヤッ
せつ菜「もちろん大好きですよ!!!!」
かすみ「そうですか……」
顔が熱い。私は何を期待した?
あなたは私の先輩で、私のライバルで、私の……
せつ菜「どうしました?顔が真っ赤ですけど、熱でもあるんですか!!!!!」ピトッ
かすみ「……!!!!!!」ボッ ああ………
私は先輩で私のライバルなあなたを……
せつ菜「今、冷えピタを買ってきますね!!」ダッ
かすみ「い、いらないですよ!!!!」
せつ菜「遠慮しなくてもいいですよ……」
かすみ「ほんとに大丈夫ですから!」
せつ菜「それなら良いんですけど……」シュン
ずるいなあ……
ねぇ、せつ菜先輩。 先輩の一番の"大好き"って一体何ですか?
#3~かすみ編1~終わり しずく「ねえ、かすみさんってせつ菜さんが好きだよね…」
璃奈「それは間違いない。本人が自覚してるかどうかは分からないけど。」
しずく「やっぱり璃奈さんも気付いてたの…」
璃奈「アレは結構バレバレじゃない?愛さんも『かすかす、せっつーのこと見過ぎじゃない?』って言ってたくらいだから。」
しずく「まあね……」
璃奈「それで、しずくちゃんはこのままでいいの??」
しずく「え?」
璃奈「いいの??」
しずく「いいも何も私は何も関係ないよ。」
璃奈「好きなんでしょ、かすみちゃんのこと。」 しずく「……………」ポッ
璃奈「まあかすみちゃんのこと言う割には私から見ると結構バレバレだったけど。」
しずく「そんなに!?」
璃奈「大丈夫。たぶん私しか気付いてないよ、からかっただけ。」
しずく「もう……やめてよね……」
璃奈「まあそれで、このまま黙って見てるつもりなの?」
しずく「黙ってって…せつ菜さんがかすみさんからの告白を受ければ全て解決する話なんだよ?それだけ。」
璃奈「素直じゃないなあ……」 しずく「私はあの二人をくっつけて、スクールアイドルと演劇に打ち込む。それで十分なんだよ……」
璃奈「ホントにいいの?」
しずく「いいも何もそれが最善…なんだから。仕方ないよ。」
璃奈「分かった、じゃあかすみちゃんに電話する。」
しずく「ちょっと!!!!」
璃奈「あっ、もしもしかすみちゃん。今から○○にあるカフェに来てくれない?うん。しずくちゃんと二人でいるから。じゃ、また後でね。」ピッ
しずく「璃奈さんっ!!!!」
璃奈「いいじゃない、すぐに来るって言ってたよ。」
しずく「でも……」
璃奈「そんなに言うならしずくちゃんがやってみればいいんじゃない?」
しずく「何を??」
璃奈「かすみちゃんとせつ菜さんがくっつくようなお手伝い。」 ~間~
かすみ「お待たせっ!りな子、いきなり忙しいかすみんを呼ぶなんて何か用なの?」
璃奈「うーん、用事って訳でも無いんだけど、まあとりあえずついでに呼んでおこうかなと。」
かすみ「ついでって何!?」
璃奈「まあそれはそうとして。」
しずく「そこは流すんだ。」
璃奈「まあね。」
璃奈「かすみちゃんっ!!」ガシッ
璃奈さんがかすみさんの手をいきなり握った。 かすみ「へ????なになになに????」
しずく「ちょっ、璃奈さん!!」
璃奈「単刀直入に聞くね、かすみちゃん。」
かすみ「なに?」
璃奈「かすみちゃん……せつ菜さんのことが好きだよね?」
かすみ「へ??」
しずく「私達、もうとっくに気づいてるよ。」
かすみ「えええええええええええ………」
璃奈「友達なんだから隠さなくてもいいんじゃないかな?」
かすみ「いやいや、せつ菜先輩はかすみんのライバルなんだよ!!そりゃあ、熱くてカッコイイかもしれないし、せつ菜先輩のことが好きな女の子はたくさんいるかもだけど……」
しずく「うーん……」
璃奈「ここまで隠し事が下手だと気の毒かも……」
かすみ「そんなに!?」ガーン しずく「まあ悪徳商法にすぐ騙されそうだよね……」
かすみ「かすみんはそこまでおバカじゃないよ!!」
璃奈「それだとしてもせつ菜さんのことは事実。そこを認めないと今日は帰らせないよ。」
しずく「ホントのことなんだから早く認めればいいのに……」
かすみ「あー!もう分かったよ!!かすみんはせつ菜先輩が好き!!これでいい……?」
二人「やっぱりそうなんだ!!!!」ニヤニヤ
璃奈「それで、どんな所が好きなの?」
しずく「いつから好きなの?」
かすみ「質問攻めなんてズルくない?」 しずく、璃奈「「いいから答えて!!」」
かすみ「うっ……好きな所は……いっぱいあるけど、カッコイイ所……とかかな。いつからってのは分かんないよ……」
璃奈「フムフム……熱いねぇ……青春って感じがするよ……」
かすみ「そういうりな子自身は愛先輩と最近どうなの?」
璃奈「普通かな。毎日楽しくやってる。」
かすみ「いいなぁ……」ボソッ
しずく「それで、想いを伝えたりしないの?」
かすみ「想いを……って告白ってこと!?」
璃奈「まあ、そうなるよね。」
かすみ「無理無理無理無理、絶対無理!!」
しずく「どうして?かすみさん、可愛いからチャンスあると思うけど……」
かすみ「そりゃあ、かすみんは可愛いよ。でも、それとこれとは話が別……」
しずく「そうかな?私がせつ菜さんならOKするけど……」 かすみ「へ?しず子ってばかすみんのことそんなに好きなの??」ニヤリ
しずく「そうだね、好きだよ。可愛くて。」
かすみ「しず子はすぐそうやってサラッと言っちゃうからからかい甲斐が無い……」
璃奈「とにかく、かすみちゃんが動かないと鈍感なせつ菜さんはいつまで経っても気づかないと思うよ。」
かすみ「それはそうかも……でも、このままでもいいかなって……」
しずく「ダメです!!そんなの良い訳が無い!!」
かすみ「しず子……どうしたの?そんなに怖い顔して……」
しずく「かすみさん、自分の気持ちを押さえるのって辛いんだよ……だから、ちゃんと伝えた方がいいと思う。」
璃奈「私もしずくちゃんの意見に賛成。」 かすみ「でも、どうやって……」
璃奈「そのために私たちがいるんだよ。」
しずく「私たちが二人の恋のキューピットになってあげる!」
かすみ「二人とも……それで、具体的には?」
璃奈「それなら私に一つ、とっておきのプランがある。」
しずく、かすみ「「プラン??」」
璃奈「それは……」
しずく、かすみ「「それは……??」」
璃奈「名付けて遊園地デート大作戦!!!」 ~間~
璃奈「それじゃあ、私はこっちだから。また明日ね。」フリフリ
しずく、かすみ「「うん、また明日ー。」」フリフリ
しずく「……それにしても、璃奈さん、あまりにもネーミングがそのまんま過ぎなかった?」
かすみ「確かに……りな子にしては珍しいかもね。でも、りな子ノリノリだった。」
しずく「新しいオモチャを見つけたみたいな良い顔してたよね……ボードだけど……」
かすみ「ああいう時のりな子は止められないよね……」
しずく「まあ、かすみさんは自分の気持ちをどう伝えるか遊園地デートまでシミュレーションするのが一番じゃないかな?」
かすみ「シミュレーション……なんかゲームみたいじゃない?」
しずく「そんなこと無いよ。演劇でも何でもその時のシチュエーションや情景をイメージして練習するのは大事でしょ?」
かすみ「確かに……スクールアイドルも言われてみればそうかもしれない……」 しずく「だから、少しでも努力するのが大切だと私は思うな。」
かすみ「しず子〜!!今日は優しい……」ガバッ
しずく「ちょっ……ここ電車ですよ!!」
かすみ「いいじゃん。かすみんとしず子の仲なんだからさあ……」
しずく「もう……」
ああ……顔に出ていないだろうか。
そんなに密着されたらかすみさんのいい匂いとかでクラクラしそうになっちゃう……
かすみ「どうしたの?しず子?」
しずく「いや、なんでも……って、私ここで乗り換えなきゃ!!」 かすみ「そうだったっけ?」
しずく「うん。じゃあまた明日。」
かすみ「また明日〜。」
プシュー
かすみさんを乗せた電車は走り去っていった。
ここで乗り換えなんて嘘。
乗り換える駅はあと3駅向こうだよ……
さすがに覚えて……無いよね。
かすみさんの瞳にはせつ菜さんしか映ってないんだから。
かすみさんの隣に"本当に"ふさわしいのは……
でも……私は……
#4~しずく編2~終わり #5~しずく編3~
せつ菜「かすみさん!見てください!!遊園地ですよ!!早く行きましょう!!」
かすみ「せ、せつ菜先輩……走らないでください……」
せつ菜「遊園地に来るなんて小学生の時以来です!今日は誘ってくれてありがとうございます!!」
かすみ「いえいえ。かすみんが行きたかったから先輩を誘ったんで。それよりも今日はせつ菜先輩に最高のエスコート期待してますからね!!」
せつ菜「もちろんです!!じゃあ、まずはアレに乗りましょう。」
かすみ「え……アレってまさか……」
せつ菜「はい!ジェットコースターです!!」
かすみ「ちょっとかすみん、最初からそういうのはちょっと……」
せつ菜「最初から全力で楽しまないと意味が無いですよ。さあ、行きましょう!!」グイッ
かすみ「ちょっ……手を引っ張らないでください〜!!」 ガサッ
しずく「二人とも……楽しそう……」
璃奈「うん。掴みはバッチリ。」
栞子「もしかして、このために私を呼んだんですか?」
璃奈「だって、栞子ちゃん。遊園地に行ったこと無いって言ってたでしょ?」
栞子「それは言いましたけど……これはストーキングでは……」
しずく「これは尾行だよ。セーフ。」
璃奈「私たち三人も二人を陰から見守りながら楽しむ。それなら問題無いでしょ?」
栞子「……今回だけですよ。」
しずく「それじゃあ、早く行きましょう!最初はやっぱりジェットコースターですね!お先に行ってますね!!」タッ
璃奈「しずくちゃん待って……」
栞子「……しずくさんは何か悩み事でもあるんですか?」
璃奈「栞子ちゃん、相変わらず鋭いね。」
栞子「この尾行をしている理由……にあたるものですよね。」 璃奈「うん。しずくちゃんはかすみちゃんのことが好きなの。」
栞子「ならどうしてこんなことを……彼女がかすみさんをデートに誘えば良かったんじゃ……」
璃奈「ねえ、栞子ちゃん。」
栞子「何ですか?」
璃奈「栞子ちゃんって誰かを好きになったことってある?」
栞子「無いですね……」
璃奈「理屈じゃないんだよ。だから……」
栞子「分かりました。今日は一緒に勉強させて貰います。」
璃奈「本当にありがとう。じゃあ行こう。まずは遊園地を楽しまなきゃ……」グイッ
栞子「えっ……璃奈さんも走るんですか!?」 ~間~
しずく「それにしても……」
璃奈「それにしても……」
栞子「楽しそうに見えますね。」
しずく「ジェットコースター、シアター、お化け屋敷。」
璃奈「ヒーローショーにコーヒーカップ。」
栞子「そして最後にこの観覧車……ですか。」
しずく「王道だよね。」 璃奈「まあ私としずくちゃんがデートプラン考えてあげたから当たり前といえば当たり前なんだけど。」
栞子「それにしても、私たちも結構楽しんでましたよね?」
しずく「うん!!シアターも良かったし……お化け屋敷の演技も素晴らしかった。あんな風に驚かしたら、人はびっくりするんだって勉強になったね!!」
璃奈「着眼点が異質過ぎない?まあジェットコースターで白目剥いてた栞子ちゃんは可愛かったけど。」
栞子「アレは忘れてください……恥ずかしい……」
しずく「あっ、もうすぐ頂上に到達するよ!」
綺麗……この眺めをかすみさんとせつ菜さんが二人きりで見たのだろうか。
羨ましいや。
でももう終わり。
観覧車は……どんどん下へ降りていく。 ~間~
観覧車を降りてすぐのベンチに二人はいた。
私たち三人は陰からその様子を見ていた。
栞子「ホントに大丈夫ですか……」
璃奈「こういうのは見とくべき。璃奈ちゃんボード (キラリン)」
しずく「璃奈さんって意外とこういうの好きだよね。」
璃奈「まあね、それよりも目の前の二人に集中しなきゃ。」
せつ菜「……」
かすみ「……」
栞子「無言ですね……」
しずく「何か喋らないと……」 璃奈「かすみちゃんに早く喋れってLEINしとく?」
しずく「それはさすがにちょっと……」
璃奈「もう送っちゃった。」
栞子、しずく「えっ……」
かすみ「……」ピロンッ
Rina:早く喋れ。
かすみ「……」キョロキョロ
栞子「さすがに不味いですって……」
璃奈「今更引き返せないよ。」
しずく「ど、どうすれば……」
かすみ、せつ菜「「あの……!!」」 かすみ「先にどうぞ!」
せつ菜「いえいえ!ここはかすみさんから。」
かすみ「いいですって、先輩からどうぞ。」
せつ菜「じゃあお言葉に甘えて。」
せつ菜「今日は楽しかったです。久しぶりにスクールアイドル以外でこんなに大好きの溢れる時間を過ごせた気がします!!かすみさんのおかげですね。」
かすみ「いえ……かすみんは何も……」
せつ菜「本当にありがとうございます。また二人で遊園地に行きましょう。」ニコッ
璃奈「いけー!!!!今しか無いよ……」
しずく「璃奈さん落ち着いて……」
栞子「そ、そうですよ!!でも……チャンスなのは私から見ても分かります。」
かすみ「えっと……かすみんこそ今日はせつ菜先輩と一緒に遊園地に来れてすっごく楽しかったです!!」
かすみ「それで……えっと……」 せつ菜「……何ですか?」
かすみ「えっとなんていうかその……」
せつ菜「ゆっくりでいいですよ。」
かすみ「私、私は……」
かすみ「せつ菜先輩のことが……す……す……」
かすみ「好きです!!大好きなんです!!LikeじゃなくてLoveの方で……だから……私と……」
かすみ「付き合ってもらえませんか?」
璃奈、栞子「行ったー!!!!!!!!」
しずく「…………」 せつ菜「そうですか……かすみさんは私のことが……」
かすみ「はい……返事は今すぐじゃなくてもいいですよ……」
せつ菜「いえ、すぐに返事はさせてもらいます、礼儀として。ただ一つだけ聞いてもいいですか?」
かすみ「何ですか?」 そう言って彼女は持っていた髪ゴムで三つ編みを作り出した。
菜々「かすみさん、あなたは……"優木せつ菜"としての私が好きなんですか?それとも"中川菜々"としての私ですか?」 かすみ「それは……どっちも好きですよ。」
菜々「そんな玉虫色の解答は聞きたくないんです。」
菜々「優木せつ菜か中川菜々かどちらかを選ぶだけ。簡単な話です。」
かすみ「そんな……」
菜々「私は中川菜々として日常生活を生きてきました。でも優木せつ菜も私。分からないんです、本当の私は何なのか。」
菜々「自分が大好きな世界を作るだなんて言っておいて恋愛感情も好きって気持ちも分からない。最悪です。」
かすみ「……」 菜々「でも、そんな時に私はある舞台を見ました。」
菜々「彼女もまた演技をしている時と日常生活で違う自分がいる。そんな気がした。だから……」
菜々「かすみさん。あなたを一人の後輩以上には見れない……私は……」 かすみ「そう……ですか……」
かすみ「わざわざ教えてくれてありがとうございました……それじゃあ……私帰りますね……」
菜々「送っていきますよ。」
かすみ「いいです。今の先輩に送られたら私、立ち直れない気がします。」
かすみ「今日はありがとうございました。」 ~間~
璃奈「ウソ……そんなことってある……」
栞子「信じられません……」
私は駆け出した。
璃奈「しずくちゃん!」
栞子「しずくさん!」
どうして……どうして……
かすみさん…… しずく「かすみさん!!」
かすみ「……笑いに来たの?」
しずく「そんなわけ……」
かすみ「じゃあどうしてこんな所にいるの?」
しずく「それは……」
かすみ「りな子としお子と三人でかすみんの失恋でも見に来たの?」
しずく「そんな……かすみさ……」
かすみ「近寄らないで……」
かすみ「しず子なんて……」
かすみ「大っ嫌い!!!!!!」 これが悪夢だったらどれだけ良かったか……
でも……でも……
かすみ「しず子に私の気持ちなんて分かるわけない!!」
しずく「分かんないよ!!」
しずく「分かるわけない!!分かればどれだけ良かったか!!」 >>60
どっちも自分だろ!!せっつーらしくないな!! しずく「ねえ、かすみさん……かすみさんは私の気持ちとか考えたことあった?」
かすみ「あるに決まってるよ。」
しずく「そっか……」
かすみ「それがどうしたの?」
しずく「好きな人に見て貰えない。それがどんなに辛くて悲しいか。私は……」
しずく「かすみさんのことが……」
かすみ「やめて。そんなの聞きたくない。」
しずく「でも!!」
かすみ「同情と演技でそんなこと言われても嬉しくなんか……無い。」
しずく「こんなこと演技で言うわけない!!」
かすみ「でもね、しず子。私はしず子が憎いよ。私も……」
かすみ「しず子みたいに二人くらい別の人がいるみたいに見えたら良かったのに……そしたら……せつ菜先輩も……」 しずく「二人……?何言って……私は……わたしは……ワタシ……は……あ……れ……」
しずく「わたしは……誰?」
私の意識は深く堕ちていった。
#5~しずく編3~終わり 1年組の会話口調に何か違和感あるがまだ供給少ないしな #6~かすみ編2~
どうしてこうなっちゃったんだろう。
こんなはずじゃ無かったのに…… ~間~
かすみ「あの……せつ菜先輩!!」
せつ菜「かすみさん、どうしたんですか?」
かすみ「その……今度の日曜日って空いてたりしますか?」
せつ菜「えっと……ちょうど休みですね!!」
かすみ「だったら、かすみんと一緒に遊園地に行きませんか?」
せつ菜「遊園地……ですか。」
かすみ「嫌……ですか?」
せつ菜「いえ!その日は確か園内でヒーローショーがあったはずなので……一緒に付き合ってもらってもいいですか?」
かすみ「いいですよ。たまにはかすみんもカッコイイ物を見て更に可愛さを磨きます!」
せつ菜「じゃあ決まりですね!!今からワクワクが止まりません!!」 ~間~
しず子が倒れた。
原因は私が責めたから。
理不尽な怒り方だったって自分でも分かってる。
お医者さんは2、3日すれば目を覚ますって言ってたけど、凄く心配だよ。
かすみ「早く目を覚ましてよ……しず子がいないと、一人でボケてるだけみたいじゃない……」 しずく「……」パチッ
かすみ「しず子!?気がついたの?良かった……」
しずく「……」
かすみ「しず子……?」 かすみ「えっ……」
しずく「わたしは……あなたは……誰……ですか?」
#6~かすみ編2~終わり #7~せつ菜(菜々)編~
いつからだろう。私が分からなくなったのは。
私は中川菜々。
どこにでもいる……みたいなライトノベル的な紹介はしにくいですが、ある一点を除けばどこにでもいる普通の高校2年生。
その一点とは、私が"優木せつ菜"としてスクールアイドル活動を続けていること。
家で、学校で平穏に過ごすための私、中川菜々としての姿。
スクールアイドルが大好きな私、優木せつ菜としての姿。
どちらも私だ。それは間違いない。 でも……
みんなが好きな"私"はどっちですか?
分からない……分からない……
"優木せつ菜"としての私を認めてくれた両親は胸を張ってどちらも好きと言ってくれるだろう。
でも、みんなは?
中川菜々としての姿を私はあまり見せていない。
いや、見せたくないとでも言うべきか。
クラスでの立ち位置。グループ。
さまざまなものが煩わしくてぶつかることが多い。
恋愛……本や漫画やアニメの世界で見たとしてもそれはやっぱりどこか現実感は無くて……
かすみさんに告白された時でもどこか他人事のように酷いことを言ってしまった。 でも、私と同じように見えた人がいた。
スクールアイドル同好会での彼女のステージと演劇部での彼女の舞台。
全く違う。
しずく「分からない……私の記憶が……」
しずく「私の中に誰かいるの……」
まるで別人が憑依しているように見える感覚。
あなたは……
私と同じなんですか?
私は……
彼女、桜坂しずくのことが……
どうしようも無く…… …………
スマホに着信が来ていた。
かすみさんからだ。
かすみん:しず子が目を覚ましました……けど……
菜々(せっつー):けど?
かすみん:何も覚えていないみたいです……
私が……
彼女を……奪ってしまった……
#7~せつ菜(菜々)編~終わり #8~終演~
あれから一週間がたった。
夏の日差しも少し落ち着いて来てもまだ、しず子の記憶はまだ戻らない。 璃奈「しずくちゃん、リンゴ剥いたよ。良かったら食べて……」
しずく「はい、ありがとうございます。」
しずく「うん、美味しいです。良かったら皆さんも食べてください!」
歩夢「こんなに大勢で押しかけて大丈夫なのかな……」
侑「しずくちゃんの記憶の鍵になればってお医者さんも言ってたし大丈夫だよ!」
栞子「でもさすがに9人でお見舞いは迷惑では?」
果林「あまり人数が多いとしずくちゃんも疲れちゃうかもね。」
しずく「そんなことないです!元気100倍ですよ!!」ニコッ
愛「その笑顔が見れたら、愛さん達も来た甲斐があるってもんだよ〜。」
エマ「スイスではすぐに入院してる患者さんを退院させようとするけど、日本はゆっくりでいいからいいね〜。」
彼方「そうだね〜。ふわあ……ゆっくりした空間にフカフカのベッド見てたら眠く……なってきちゃった……」
せつ菜「彼方さん!!!!さすがにここで寝るのは不味いですよ!!」
彼方「そうだね……ごめん、ごめん〜。」 しずく「……中須さんはどうして私と目を合わせてくれないんですか?」
かすみ「え!?そ、そんな事ないよ……」
しずく「わたしから見てもバレバレですよ。」
かすみ「ええ……」
歩夢「さて……じゃあそろそろ帰ろっか?」
侑「そうだね。」
璃奈「そうですね。」
栞子「そうですね。」
果林「そうね。」
愛「そうだね。」
エマ「そうだね〜。」
彼方「そうだね〜。」
せつ菜「そうですね!」
璃奈「じゃあ、後は二人でごゆっくり〜。」 ガラッ
かすみ「えっ!?ちょっと……」
しずく「中須さんは……私のことが苦手なんですか?」
かすみ「そんなわけないよ……」
ううっ……目線が痛い。 ベシッ
突然左手でチョップされた。
かすみ「いったーーい!何するのしず子!?」
しずく「ふふっ……やっと笑ってくれた。」
かすみ「えっ……」
しずく「ワタシ、ゆっくりかすみさんから私のことを聞きたかったんだ。どんな感じだったのか。教えてくれないかな?」
かすみ「いいの……?」
しずく「はい。わたしの直感で中須さんは以前の私の中でただの"友達"……じゃ無かったような気がするんです。全部……教えてください。」
かすみ「じゃあ……」
こうして私は全てを話した。
出会った時のこと。
同好会での話。
この間の遊園地の話まで全部。 しずく「そっか……わたしは中須さんのことが好きだったんですね……」
かすみ「うん……私はそんなしず子の気持ちに甘えて……だから、しず子が倒れたのも私のせいなの。」
しずく「そんなこと……」
かすみ「そんなことある!!全部!!全部、私が悪いの!!」
しずく「……」
かすみ「だから……謝るから……何でもするから……帰ってきてよ、しず子……寂しいよ……」
しずく「……」 しずく「……ホントにずるいよね。かすみさんは。」
かすみ「え……」
しずく「そんなこと言われたら、戻りたくなるじゃない……」
しずく「改めて……」 しずく「かすみさん、ワタシともう一度"友達"になってくれないかな?」 そう言って彼女は左手を差し伸べた。
かすみ「うん……うん……おかえり、しず子……」
私はその手を掴めずに泣きじゃくってしまった。まるで子供のように。
涙が止まらない私に微笑みかける彼女は綺麗で……儚くて……まるで別人のようで……
少しだけ怖かった。
でも……
おかえり、しず子。
#8~終演~終わり YES!YES!YES!
YES!YES!YES! >>94
無理に全員喋らせなくていいと思う…
笑ってしまった ゆっくりかすみさんでまんじゅうになったかすみん思い浮かんで吹いた To be continue?
(Yes)← No #9~Curtain Call~
何かがおかしい。
そう気づいたのは私だけだった。
璃奈さん、栞子さんさえも気づかない僅かな仕草。
二人の会話をドアの隙間から見ていた時に感じた謎の違和感。 …………
かすみさんは気づいたかもしれない。
だとしたら、気づかないフリをした。
彼女と"友達"でいるために。
みんなが帰った今しか話すタイミングは。
無い。 ガラッ
せつ菜「失礼します。少し忘れ物を……」
しずく「そうですか……」
せつ菜「……」キョロキョロ
しずく「どうしました?」
せつ菜「今、誰もいませんよね。」
しずく「皆もう帰りましたからね……」
せつ菜「しずくさん……ジャンケンをしませんか?」
しずく「ジャンケン……ですか?」
せつ菜「童心に帰ったと思って。やりましょう!!」
これは答え合わせ。
私の勘が外れることを祈る限りだ。 せつ菜「ジャンケンポン!で行きますよ!せーの!!」
せつ菜「ジャンケンポン!」
やっぱり……
彼女が出したのはグー。
私が出したのはパー。
私の"勝ち"だ。
いや、そんなことはどうでもいい。 それより問題は……
しずく「……どうしました?」
せつ菜「しずくさん、一つだけ聞いてもいいですか?」
しずく「いいですよ。」ニコッ しずく「……どういう意味ですか?」
せつ菜「あなたは最初から記憶喪失のフリをして情報をずっと集めていた。違いますか?」
しずく「ワタシは桜坂しずく。それ以外としたら誰なんですか?」
せつ菜「それは……私にも……分かりません。」
せつ菜「でも……さっきのジャンケン、かすみさんに差し伸べた手、かすみさんにチョップした手。」 せつ菜「あなたは……"右利き"だったはず。」
しずく「……」
せつ菜「これはあくまでも私の推測です。証拠も何も無い。憶測に過ぎない与太話かもしれません。」
せつ菜「もう一度聞きます。あなたは……」
せつ菜「誰なんですか…………」 自我の根源に触れてるみたいな背徳感があってドキドキする そう言って、彼女は微笑んだ。
#9~Curtain Call~終わり 皆さん、Curtain Callをありがとうございました。これにて完結です。 かすみ「ええ……」
歩夢「みんな、このSSよかったよね?」
侑「そうだね。」
璃奈「そうですね。」
栞子「そうですね。」
果林「そうね。」
愛「そうだね。」
エマ「そうだね〜。」
彼方「そうだね〜。」
せつ菜「そうですね!」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています