海未「面影を探して」
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ズズー
ことり「うーん、海未ちゃんが淹れるお茶は相変わらず深みがあるねえ」
海未「それはありがとうございます」
ことり「海だけに」
海未「……」スッ
ことり「あぁん、お菓子下げないでぇ」
海未「変な声を出さないで下さい、おぞましい」
ことり「お、おぞましい……そんなこと言う海未ちゃんには私手作りのチーズケーキあげないよー?」
海未「!……冗談です。ことりは世界一可愛らしいお嬢さんですよ」
ことり「そ、そこまで言われると嬉しい通り越して引いちゃうかも…」 モグモグ
海未「美味しいです。さすがはことりですね」
ことり「えへん」
海未「しかし少し甘すぎないですか」
ことり「だってケーキは甘いものだよー?」
海未「それはそうですが、これはやり過ぎでは。健康診断で引っかかるレベルですよ」
ことり「海未ちゃん、私はね、健康を捨ててでもケーキは甘いものが食べたいんだよ」
海未「あなたも、変なところでこだわりを見せますよね」
ことり「えへん」
海未「褒めてないですから」 ことり「でもお茶ともよく合うでしょ? 甘味と苦味のダブルパンチ、飴と鞭!」
海未「飴と鞭は意味が違うと思いますが…まぁ、確かによく合います」
ことり「あ、お茶なくなっちゃった」
海未「ああ、淹れなおしますよ。よいしょ」
ことり「ありがとう。あれ、そういえば今日は海未ちゃん一人?」
海未「ええ。私以外は皆出掛けてますよ」
ことり「どこに行ってるの?」
海未「確か、映画を見に行くと言ってましたね」
ことり「映画かぁ。海未ちゃんは行かなくてよかったの?」
海未「ことりが会いに来るなら、それが最優先ですよ」
ことり「う、海未ちゃん……抱きしめても良かですか?」
海未「駄目です」 ことり「海未ちゃんのいけず〜」
海未「何がいけずですか、まったく」
ことり「あ、じゃあ私達二人で映画見に行く?」
海未「何でそうなるんですか」
ことり「いいでしょ〜? 最近刺激的なことがないから、燃えるような恋を描いた映画を見て、乙女心を燃え上がらせさせたいの〜」
海未「あ、あなたはまったく……というか、二人で恋愛映画とか、何の罰ゲームですか」
ことり「ひ、ひどいっ!」
海未「常識的な意見でしょう」
ことり「うぅ、海未ちゃん最近口悪くなったよね……昔はあんなに可愛らしかったのに…」シクシク
海未「いつの話をしてるんですか」
ことり「恥ずかしがり屋さんで、一緒に遊ぼって言い出せないような、玉のようなお子だったのに…」
海未「ホントにいつの話をしてるんですか…」 海未「馬鹿な事を言っていないで、食べ終わったのなら片付けの手伝いをして下さい」
ことり「はーい」
海未「……それに映画館まで行かなくとも、映画は見られるでしょう」
ことり「え?……まさか…!」
海未「ふふ、抜かりはありません。友人が遊びに来ると分かっていれば、準備は万全にしておくのが迎える側の務め」
海未「きっちり用意してありますよ」
ことり「う、海未ちゃん……! さすがすぎるよ…」
海未「では見ますか。『七人の侍』」
ことり「……」 海未「やはり黒澤監督作品の中ではこれは鉄板の」
ことり「海未ちゃん、違う。違うんだよ」
海未「何が違うんですか」
ことり「私が求めてるのはそういう白と黒の画面じゃなくてね? こう、キラキラしてて見てるだけで胸躍るような恋物語なんだよ」
海未「しかし……黒澤作品以外となると後はもうジブリしか」
ことり「あ、じゃあ『耳をすませば』でいいよ!」
海未「すいません、『紅の豚』ならあるんですが」
ことり「くっ……!」 ことり「ま、まぁ恋愛要素がない訳じゃないかもだし、見よう、か」
海未「おお、では一緒に見ましょう」
ウィーン
ー間ー
海未「うーん、やはり良い話ですね」
ことり「うん。……やっぱり私が求めてたものとは大分違うけど」
海未「こう、見る時期によって抱く印象が変わる映画ですよね」
ことり「そうだねぇ、最初見た時はポルコ豚なのにカッコいいなぁくらいだったけど」
海未「こうして改めて見ると、キャラクターそれぞれの味わいが沁みますよねぇ」ウンウン
ことり「ふふ、海未ちゃん、それお年寄りくさいよ」
海未「む、失礼な。私はまだまだピチピチですよ」
ことり「ピチピチって言い方もちょっと…」 ことり「それにしても、映画なんて久しぶりに見たなぁ」
海未「そうなんですか?」
ことり「うん。最後に見たのいつだったかなぁ……穂乃果ちゃんと映画館で見たのが最後だったかな?」
海未「穂乃果と? いつですかそれ」
ことり「……半年前くらい?」
海未「どういう経緯で映画館に?」
ことり「えーとね、穂乃果ちゃんが新作の映画やるから一緒に見に行こーって引っ張ってかれた」
海未「容易に想像出来るのがまた……って、それなら私も一緒に行きたかったです」
ことり「海未ちゃんその日は日舞のお稽古があったから、ホントは誘いたかったって言ってたよ?」
海未「…そうでしたか。まあそれなら仕方ないですね」 ことり「でも穂乃果ちゃん、途中からずっと寝ちゃってたなぁ」
海未「穂乃果は映画を見ると大体眠ってましたからね」
ことり「あはは、皆でラブソング作ろう〜って、参考に映画見た時も眠っちゃってたよねぇ」
海未「ああ、そんなこともありましたね」
ことり「海未ちゃんは恥ずかしがって全然見てなかったっけ」
海未「……覚えていませんね」
ことり「あっ、ずるい」 海未「私の話はいいでしょう。それより、映画も見ましたし、もういい時間ですよ」
ことり「あ、ほんとだ。そろそろ行く?」
海未「ええ。今日も気温が高いようですし、一番暑い時間帯と被らないようにしましょう」
ことり「確かに、海未ちゃん家来るまでに、既にちょっと暑かったな〜」
海未「熱中症にならないよう、塩飴と、麦茶と、帽子と、念のためストックも持っていきますか」ゴソゴソ
海未「これで準備万端ですね」バーン
ことり「登山行くみたいになってるよ、海未ちゃん」
海未「何かと入り用な物もありますからね」
ことり「大丈夫? 私も持とうか?」
海未「いえ、平気です。行きましょう」
海未「穂乃果の所に」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています