花丸「マル達の住む街」
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皆さんこんにちは。
国木田花丸です。
私は高校卒業後から地元の沼津市役所で働いています。
え?一人称が変わってるって?
それもそうずら…じゃなかった。それもそうです。
もう働き出してから7年も経つんですから、立派な社会人です。
マルとかオラとか言えません。
今日は新年度。部署が変わるということで、その辞令を受け取ります。
ちなみに今までは、市民福祉部で俗にいう窓口業務を担当していたずら。 〜沼津市役所 財務部長室〜
財務部長「それでは、国木田花丸を本日4月1日付財務部に配属とする。そして財務部沼津市活性化特別室室長とする」
花丸「特別室!?どういうことですか!?」
財務部長「最もな疑問だね。
これには色々と事情があってね」
花丸「事情…?」
財務部長「年々沼津市の人口は減る一方。先月の段階で16万人を下回ってしまっている。
観光客も減る一方だ。沼津市が閑散の一途を辿っているのはなんとなく分かっているだろう?」 花丸「はい…」
財務部長「そこでだね、私が財務部長になったからには、いい加減本腰をあげて活性化に取り組まなければいけないと思ったんだ。
そこで、君には沼津市活性化の指揮を取ってほしいんだ」
花丸「一時的な専門チームを作るということですか?」
財務部長「その通り。先に言っておくが予算は気にする必要はないよ。金に糸目はつける必要はない。
これを見てくれる?」
花丸「なんでしょうか…?」
覗き込んだ資料には見慣れた名前と見たこともないような数字が書かれていたずら。 花丸「黒澤家からの寄付額ですか?…こ、この数字…え、個人でこの数字の寄付が!?」
財務部長「うん。黒澤家は代々沼津発展のために毎年多額の寄付をしてくれている。
先代である15代目当主になってグループ全体の売り上げが激増してからは寄付の額も桁が2つは増えた。
ここ10数年くらいはずっとこれくらいの額が寄付されているの」
花丸「いやいやいや、それにしてもこの額、沼津市の予算の1/3近い額じゃないですか!?」
財務部長「先代と今の当主はストイックな方達でね…控除額を超えても寄付をしてくれているのよ」 確かに、ダイヤさんもルビィちゃんも、お洋服や着物は素人が見ても上質だと分かるものを身につけていたけど、
同じお嬢様の鞠莉ちゃんとは違って金銭感覚は普通だったずら。むしろ普通よりも倹約家だったくらい。
その背景には、こう言った家庭の主義・信条があったずらね。
花丸「そ、それなのに今の沼津の現状は…」
財務部長「つまりそういうこと。流石に黒澤家代々の気持ちに応えなければまずいよね。
経済界において今や黒澤家の影響力は計り知れない。
現当主が沼津にどれだけ思い入れがあるかは分からないが、市という狭い枠組みへの寄付をいつ打ち切ってしまうかも分からない」
花丸「なぜそんな一大プロジェクトに私を?」 財務部長「君は黒澤家の娘さん達と仲が良かったよね。確かAqoursというスクールアイドルとして一緒に活動していたんだっけ。
それに、内浦において黒澤家に次ぐ小原家の御令嬢とも同じグループだし。
それだけのコネクションを持つのは貴女くらいのものよ。
どんな手を使ってもいい。金なら…金だけなら今のところある。
チームの人選も基本的には貴女に任せる」
花丸「そ、そこまでずら……?
人員は、市の職員に限らなくても良いってことですよね…?」
財務部長「成功する算段があるならば、当然よ」
花丸「しかし、こういった業務は産業振興部や都市計画部などの仕事では?
なぜ財務部が?」 財務部長「難色を示されたんだ。自分たちは十分やるべきことをやっている。余計な口出しをするなとね」
花丸「それで財務部長が…?」
財務部長「ああ。責任は私が取ると言うことで、無理やり押し通した。
花丸「なぜそこまで…」
財務部長「博識な君のことだ。沼津と黒澤家の関係は知っているだろう」
花丸「それなりには…」 財務部長「黒澤家は謙虚だからそうは言わないけど、間違いなく沼津は黒澤家と共にあった。
明治維新の荒波で網元という制度が廃止になり、窮地に陥った網元達の中で黒澤家だけが地域への貢献に乗り出したそうなの」
花丸「聞いたことがあります」
財務部長「当時は、黒澤家も金があったとは言え、住民達からの反発もあったでしょう。
それでも、ただ地域に尽くしてくれた。
でも、いつしかそれを当たり前に感じてしまっていた。
与えられるだけで、返す気持ちを忘れてしまっている」
花丸「だから今、その溜まったツケを市民に、黒澤家に返したいと…?」 財務部長「そう。上場していないから推定でしかないけど、今の黒澤グループ全体の時価総額は間違いなく世界でもトップ10に入ると言われているわ。
普通に生活している分には水産業や飲食業しか目につかないからわからないけどね。既に小さな島国の田舎町に収まる規模じゃないわ。
手が届かなくなる前に、恩返しをしたいの」
花丸「…わかりました。私も自分の生まれ育った沼津市は大切な場所です。
できる限りの努力をしてみます」
財務部長「ありがとう。チームのために空き部屋も用意してある。
パソコンやその他必要なものがあれば何でも言ってちょうだいね」
花丸「ありがとうございます。最後に一つだけお聞きしてもいいですか?」 財務部長「何かしら?」
花丸「本当に…黒澤家への感謝とか…それだけですか?」
財務部長「どういうことかしら?」
花丸「違ったら申し訳ないのですが…個人的な意思をなんとなく感じたので。
いや、悪いとかではなく、なんとなくそんか気がしただけずら…じゃなくて、だけ…です」
財務部長「鋭いのね。…うん。すべて終わったら話してあげる。恥ずかしいもの」
そう言って財務部長はポニーテールの先をくるくる弄りながらはにかんでいました。
これは絶対に何かあるずらね。 そうして、仕事を受けてしまったは良いけど…何から始めれば良いずら…
昨日までは戸籍謄本出したり印鑑証明出したりしていただけなのにいきなりこの仕事は……
花丸「とりあえずは人集めずらね……」
黒澤家といえども、国家公務員で静岡にすらいない黒澤姉妹には当然頼めない…
影響力で言えばまずは、地元の宿泊業界を仕切っているあの2人ずらね。
花丸「メール…送ってみるずら」 果南ちゃんは…また海外にダイビングに行ってるみたいだし。今回は無理ずらね。
それと、多額の寄付までしてもらっていて、更に何かを頼むのは気が引けるけれども…
花丸「今の黒澤社長にも、ダメ元で送ってみるずら」
機械に弱かったマルでも、いまは当たり前にメールを打つようになった。
電気自動車になった公用車の運転だってしている。
どんなことにも未来を感じていた私が少しづつ進歩していく一方で、私の…私達の住む街、沼津は衰退していたのだ。
花丸「他人事では、やっぱりいられないずらよね」
何より親友の家も深く関わっているずら。
やれるだけやってみよう。
まずは資料集めでもしながらメールの返事を待つずら。 〜花丸の辞令から数ヶ月前 東京拘置所〜
璃奈「…誰?何力団?何組の人?」
現黒澤当主「いやいや、何力団って一つしかないでしょう。違いますけど。
ああ、サングラスしてるからかな。君なら知ってるでしょう?ほら」
璃奈「あなたは…黒澤社長……私に何のようですか?」 現黒澤当主「半グレ組織『首都高連合』と協力関係にあった海外の薬物売買組織を壊滅させたのは君で間違いないんですよね。
『友愛同盟』構成員で株式会社Y&Iセキュリティサービス代表、天王寺璃奈さん。
ああ、この会話は非公式だし、録音も当然していないから素直に答えて大丈夫ですよ」
璃奈「……!」
現黒澤当主「と言っても、ダークウェブの更に奥深くまで潜っていたサイトを乗っ取ることができるなんて、
国内では、君とあと数人くらいしかいないだろうから、間違いはないね。」
璃奈「答え、もう出てるじゃないですか」 現黒澤当主「まあね。形式上の確認ですよ。
しかし…なんで個人でそんなことをしたのかな。罪名は不正アクセス禁止法と…各警察組織も追っていたから公務執行妨害も当然つくでしょうね。
他にも余罪はありそうだ」
璃奈「起訴は免れないってわかってます。間違いなく実刑も」
現黒澤当主「そうかな?」
璃奈「どういうことですか」 現黒澤当主「事件の大きさに反して、事件報道はほぼ皆無だ。
きているのでしょう。各国家機関から。警察庁は当然。海上保安庁、財務省税関、公安調査庁、内閣情報調査室、防衛省、外務省。
しかし、本命はここですかね」
璃奈「……」
現黒澤当主「厚生労働省」
璃奈「…なんで?」 現黒澤当主「天王寺さんの背景を少し調べさせてもらいました。
それに、今回の事件の対象。薬物に対して恨みがあるのでしょう。
君ほどの腕があれば、捕まる方が難しかったはずだ。
各機関からの特別捜査官としてのスカウトのためにわざと痕跡を残したね」
璃奈「お見通しなんですね」
現黒澤当主「そう難しい推理じゃない。
ただ1つの君の誤算が、君の生殺与奪を握る法務省からも声がかかっていることだろう?
サイバー犯罪が激化する今、二次捜査機関である検察庁も喉が出るほど君が欲しいはずだ。
そうなると、目的の厚労省にはいけない」
璃奈「結論から言ってもらえますか」 現黒澤当主「わかった。結論として、君は厚労省にいける。
法務省は私が黙らせた」
璃奈「…え?」
現黒澤当主「君の親御さんも、私と業界は違うが有名人だ。しかし、この事件レベルの話で国家機関と個人で渡り合える力はないだろう?しかし、黒澤にはある。
総額数百億を握らせたよ。決して痛くはない出費じゃない」
璃奈「す、数百億!?」
現黒澤当主「法務省にはそれに加えて我が社の優秀な中堅エンジニアを10人送ることで話をつけた。
天王寺さん、君にはそれだけの価値がある」 璃奈「なぜ、そこまで……」
現黒澤当主「兄の親バカに付き合っただけですよ」
璃奈「何の話ですか?」
現黒澤当主「ああ、失礼。家の話さ。
で、天王寺さん、どうする。この話にのるかな?」
璃奈「……決まっているでしょう。それ以外に選択肢なんてないんですから」 現黒澤当主「ですよね。それともう一つ、今回の法務省への条件は流石にお釣りをもらえてね。
君の身柄を救うために、君には一つお願いを聞いてもらう」
璃奈「なんでしょうか?」
現黒澤当主「少しの間、黒澤グループで働いてもらいます。長くて2年くらいかな」
璃奈「はい…?」
現黒澤当主「私は先代である兄が安定させた黒澤の基盤から、更なる技術の発展を促し、地域や社会全体に還元する義務がある。
君に力になって欲しい。」
璃奈「私が…黒澤に?」 現黒澤当主「そうです。君が運営する会社も、可能であれば黒澤と業務提携を結んでくれると助かる。
安心してください。経営に口出しする気もない。必要な時に力を借りたいだけですから」
璃奈「分かりました…」
現黒澤当主「助かるよ。今は沼津市内を中心に電子決済システムを広めたくてね。
天王寺さんのようにソフトとハード、両方において優秀なエンジニアが欲しかったんだ」
璃奈「それだけですか理由は?前社長の望みとシステム向上だけ?
明らかに私が、貰いすぎてる…」 現黒澤当主「…うん。私は兄と違って家庭を持っていないんだけど、もし娘がいたら君と同じ歳くらいなのかなって思うとね。
兄の親バカのことなんて言えないなこれじゃ……」
璃奈「いえ…私も、家族ってよくわからないから。
一緒に過ごす時間、少なかったし……私が捕まってもきてくれない。
でも、社長からはあったかさを感じる…顔は怖いけど」
現黒澤当主「顔は余計ですよ。
そんな若い君が、友人のためにこれだけの事件を起こした。
手段が正しいかは別として、胸を打たれた。
真っ直ぐで、かっこいい思いますよ」
璃奈「そんなことないです……ただの個人的な復讐です…」
現黒澤当主「復讐でもいいんですよ。結果としてサイバー犯罪減少に向けて国を動かしたんだ。
天王寺さんの出した勇気で、これから救われる人は多い。
私も若い頃はやんちゃだったしね」 璃奈「そうでしょうか…そう、なれるでしょうか」
現黒澤当主「それは、これからの天王寺さん次第ですよ」
璃奈「…はい!」
現黒澤当主「君のご両親にも話はついている。
とても心配していた。力になれずすまない…ともね。
ご両親も大勢の人を助ける仕事だ。なかなか来られないさ。
でも、心から君のことを気にかけていた。それは、私にも伝わっていたよ」
璃奈「お父さんと…お母さんが…?
ありがとう…ございます。このご恩は…必ず結果で返します」 〜時間は今に戻って、沼津市役所 沼津市活性化対策チーム用空き部屋〜
空き部屋は思った以上に空き部屋ではなく、物置という感じでした。
使われていない着ぐるみが散乱したりしていたので、少し掃除をしていました。
ゴミ袋を縛ろうとしたときに、ふとパソコンを見たらメールが3通きていました。
花丸「あ、もう全員から返信きてる」 鞠莉『オフコース!今から向かうわ!シャイニ〜!』
千歌『はーい。今から早速向かうね』
現黒澤当主『承知しました。私自身は来週から長期の出張に行きますので、チームに参加はできませんが、代理として優秀な新人を連れて行きます。14時ごろには伺えるかと思います」
花丸「え?みんな今から来るの?フットワーク軽すぎずら…何の準備もできていないのに」 〜数分後〜
千歌「ついに沼津に求められてしまったか…私達の力をね!」
鞠莉「見せてやりましょう。私達を敵に回したらどうなるか!!」
花丸「ふ、2人とも、ひさしずりずらね」
二人はなぜかサングラスをつけて大物感を演出しようとしていたずら。
現黒澤当主「あなた達は小さい頃から変わりませんね、全く」
黒澤さんはダイヤさんとルビィちゃんの叔父さんです。
こちらもサングラスをかけていて、風貌は怖いずら。 千歌「あ、地元のヤクザの親分だ!飴ください!」
鞠莉「お勤めご苦労様デース!!」
現黒澤当主「やめなさいやめなさい。勘違いされちゃうから。
ごめんなさい、天王寺さん。
本当にヤクザじゃないから、そんな疑いの目で見ないでください」
璃奈「……」
花丸「黒澤さん、そちらの方は?」 現黒澤当主「ああ、今年から有期で働いてもらっている、インターンの天王寺璃奈さんです。
今回のチームの私の代わりと思ってください。
彼女は東京の出身ですから、皆さんとは違った視点での意見もくれることでしょう」
璃奈「天王寺璃奈です。エンジニアとして黒澤さんのところで働かせていただいております。
よろしくお願いします」
鞠莉「あら!めちゃくちゃ可愛い子ね!
私は小原鞠莉!
ホテル経営してるの」
千歌「私は高海千歌です!私は地元で旅館の経営をしてるんだ。よろしくね、天王寺さん」 璃奈「璃奈でいい…です。名前の方が好きだから」
鞠莉「わかったわ!よろしくね、璃奈」
花丸「マルは…じゃなくて、私は国木田花丸。今回のチームの指揮を任されています。
皆さん、この度は集まってくださりありがとうございます。
よろしくお願いします!」
天王寺さんはとても小柄で、152cmのマルよりも背が小さい可愛らしい女性です。
ただ、表情を表に出すのが苦手なのか、少し硬い雰囲気を感じます。 現黒澤当主「私は参加できないが、何かあれば言ってください。出来る限り力になります。
じゃあ、天王寺さん、よろしく頼みましたよ」
璃奈「はい、黒澤さん。必ず力になります」
現黒澤当主「ありがとう。では失礼するよ。出張から戻ったらお土産持ってきますね」
花丸「ありがとうございました!…では、早速話に入っていくね。
メールでも軽く書きはしたんだけれど、この度沼津市を盛り上げるための特別チームを編成することになりました。
是非とも、みんなの力を貸してください」 鞠莉「まかせなさい!とは言っても…何から手をつけて良いのやらって感じよね。
観光客が減っているのは、確かに働いていて感じるけれども……」
璃奈「少し調べてきたけど、人口が減ってきてるんですね。
単に人口が減るだけじゃなくて、著しい高齢化と20代〜30代の人口減少が激しいみたい」
千歌「確かに…同世代とかもほぼ見ないかも。
みんな名古屋とか大阪、東京、神奈川に流れちゃうもんね」
鞠莉「地域柄、自営業が多いのよね。
サラリーマン家庭の人たちは沼津が嫌というよりかは、沼津で仕事がないから都会に流れていく…ってことかしら。
…そう思いたいわね」 千歌「色々と問題は山積みみたいだねぇ…ねえ、花丸ちゃん。
今回の案件に取り組むにあたって確認したいことがあるんだけどいいかな?」
鞠莉「あ、それ私も。まあ、多分チカっちと同じだと思うけど」
花丸「何ずら?」
千歌「花丸ちゃん、この案件のリーダーとして取り組む上で、どんな沼津なら観光に来たいと思う?住みたいと思う?
共通の目的や全体像を、しっかり共有したいんだ」
花丸「どんな…沼津なら……」 千歌「直ぐにじゃなくて大丈夫。難しく考えなくてもいい。
ただ、こんな風にしたいって、率直な気持ちを教えて欲しいな」
花丸「私は……」
考えなかったわけではない。
観光客は減り、住む人は減り……
それでも沼津は人が温かくて、自然にあふれた素敵な場所だと。嘘ではない…と思うずら。
でも、それは誰にとって素敵な場所なのか……
花丸「私は、ずっと住んでいた人たちの言う『素敵な場所』だけじゃなくて、子育て家庭や、仕事で来ている人。
観光客ももちろんずら。老若男女誰が住んでも、来ても…ここに居たいと思ってもらえる街にしたい」 鞠莉「ふふ、随分とスケールが大きいわね」
花丸「ごめんさない…なかなかうまく思いつかなくて」
鞠莉「いいじゃない。目標は大きいほうが燃えるわ。
昔からそうでしょ、私たちは」
千歌「やろうよ!私たちで力を合わせて!」
璃奈「こういうの、ワクワクしますね。頑張りましょう」
鞠莉「そうね。璃奈の言う通り、やるからにはワクワクしながら楽しんでやりましょう!」
花丸「みんな…」 璃奈「じゃあ、まずは抽象的でも良いから、街全体の現状で改善したい場所を挙げていきますか?」
都市計画部長「ここかな〜?財務部の新設された特別室っていうのは」
全員が扉の方を振り返りました。
突然ノックもなく、それも乱暴に部屋の扉が開かれたからです。
花丸「都市計画部長…お疲れ様です。
どうされましたか?」
都市計画部長「どうも何もないよ。え〜国木田くんだったかな。
突然こんな仕事を財務部長に押し付けられて。ん〜かわいそうだね」
花丸「かわいそうだなんて、そんな」 都市計画部長「今私が喋っているんだよ。立場を弁えなさい。
しかしなんだね。沼津市活性化特別室?
沼津に活気がないような言い方して全く。
日々都市計画部の私たちが汗水流して働いているというのに失礼だと思わないなかね」
花丸「はぁ…」
都市計画部長「はぁじゃないよ!!失礼だと思わないかと言っているんだ!!
私だけじゃないよ。産業振興部もご立腹だ。
まぁ、高卒で窓口業務ばかりだった君に何かできるとも思えんがね。
せいぜい私たちの邪魔だけはしないでくれたまえよ」
花丸「は、は…」 鞠莉「ダメよ花丸」
都市計画部長「はぁ!?なんだね君は」
鞠莉「小原鞠莉。ご存知ない?ちゃんと静岡新聞毎日読んでます?
読んでないわけないわよね。市役所の部長さんが」
都市計画部長「失礼な口をきくじゃないか。小原?ああ、親の七光で経営してる世間知らずのお嬢様か」
千歌「ちょっと、その言い方は失礼じゃ…」 鞠莉「ああ、いいのよ千歌。マリーも少しトゲのある言い方をしてしまったもの。
ごめんなさいね、部長さん」
都市計画部長「分かればいいんだよ。生意気な小娘かと思ったが、聞き分けはいいようだな」
鞠莉「でもね、花丸。はいなんて返事しちゃダメよ。
自分が納得して返事するなら止めないけど。
そうじゃないなら、自分の心に反する返事はしちゃダメ」
都市計画部長「なんだと…?」
花丸「鞠莉ちゃん…」
都市計画部長「全く。忠告しに来てやったのに不快な気分だ。
もう一度いう、邪魔はするなよ!」 花丸「わ…私は、沼津をより良くしたいと思っています…
そのために…できることをやるだけです。
ご忠告、ありがとうございます」
都市計画部長「…ふん!」
そう言って、部長は来た時のように乱暴に部屋の外に出て行きました。
私は、上席の人に反発したのは初めてで、腰が抜けてしまいました。
花丸「ず、ずらぁ…やってしまったずら」
千歌「何さ!自分たちが何もできてないからこのチームができたのに!」
璃奈「きっとそれが気に食わないんだと思います。
もしこれで私たちが結果を出したら自分たちの立場が危うくなりますから」 鞠莉「啖呵切ったからには、もう結果を出すしかなくなったわね」
千歌「まさか、わざと喧嘩売ったの!?」
鞠莉「さぁ?どうかしらね」
花丸「ま、鞠莉ちゃん…!!」
鞠莉「ソーリー!でも大丈夫よ。
最強のチームよ。なんだってできるわ」
璃奈「3人とも、信頼しあってるんですね」
千歌「まあね。もう長い付き合いだし」
璃奈「Aqours…ですか?」 鞠莉「ワオ!よく知ってるわね!」
璃奈「私もスクールアイドルやってたので…Aqoursも歴代優勝校の1つなので当然知ってます。」
千歌「天王寺璃奈…あ!あの謎のボードがなくてわからなかったけど、もしかして虹ヶ咲の天王寺璃奈ちゃん!?」
花丸「虹ヶ咲?」
千歌「うん!私、引退してからも結構スクールアイドルチェックしててね、もう7〜8年前かな。
ソロ活動主体の学校があって、ラブライブ本選の上位を総嘗めしたんだよ」
鞠莉「それが虹ヶ咲?」
璃奈「は、恥ずかしい…」 千歌「虹ヶ咲の黄金時代の10人は今でもいろんな業界で強い影響力を持っているんだって。
ほら、大河女優の桜坂しずくちゃんもそうだし、プロのアイドルとして活動している子も何人もいるよ。
YouTubeでも中須かすみちゃんのパン作りチャンネルとか、朝香果林ちゃんのメイク講座チャンネルとかよく見るし!」
花丸「す、すごいずら…」
千歌「でも、高校卒業後の動向がわからないメンバーがいてね……
それが宮下愛ちゃんと…あ」
鞠莉「千歌?」
千歌「天王寺…璃奈ちゃんだ…」
璃奈「……」 鞠莉「まあ人気スクールアイドルとはいえ、一人の人間なんだし、あまりその後を追われたくない子もいるでしょ!」
璃奈「私は卒業後は普通に進学して、途中で起業したんです。
そんな目立つようなサービスの会社でもないので……
他のメンバーほど追っても面白くまいと思いますし」
千歌「そっか〜確かに私たちだって優勝はしても今は一市民だしね。
ごめんね璃奈ちゃん、変なこと言って!」
璃奈「全然気にしてないですよ。むしろ…昔の私達を知っていてくれて、恥ずかしいけど…嬉しい。
あの楽しくて、全てがキラキラしていた時間は、本当に現実だったんだって…思えるから」
鞠莉「璃奈…?」 千歌「そうだ、ずっと知りたかったんだけど、虹ヶ咲ってそれぞれが自分の曲作ってたの?
それとも作る人は別にいたの?」
璃奈「……千歌さん、そろそろ仕事の話に戻りましょう。
時間は有限ですから」
千歌「あ、そうだね!ごめんごめん!」
虹ヶ咲の過去の話になったときに、明らかに璃奈ちゃんの表情が曇りました。
今までで、一番大きい表情の変化だったので余計に気になるずら。
過去に何があったのだろう。
でも、人には触れて欲しくない過去もあるずら。
今は仕事に集中しないとね。 ふぅ…今日の話し合いは終わったけど、具体的なビジョンはなかなか見えてこないずら。
他の地域の取り組みとかも、調べてみないとな…
花丸「まずは今日の話し合いの報告書を財務部長に持っていくずら」
印刷した報告書に署名捺印して部屋を出たとき、背後から声をかけられました。
少し不快な響きのあるその声は、産業振興部長の声でした。
産業振興部長「ちみかね?財務部の特別チームの国木田さんは。
ふ〜ん、少し田舎臭いが、可愛い娘じゃないか。
え?ちみ恋人とかいはいるのかね?」
花丸「な、何のようでしょうか」 産業振興部長「なんだいなんだい、最近の子は世間話もできないのかね。
なに、外部の人間を呼んでこそこそ話し合ってると聞いてね」
花丸「財務部長の指示ですから…」
産業振興部長「なんだねこれは。報告書かね」
花丸「あっ…」
産業振興部長は私の持つ報告書を取り上げて読みはじました。
それだけかと思ったのですが…… 産業振興部長「おままごとだねぇ」
読み終わると同時にビリビリに破り出したのです。
産業振興部長「こんなの時間の無駄無駄。私たちがいろいろ頑張っているんだ。
お茶汲みでもしてくれていた方がよっぽど業務効率が上がるよ。
小原支配人と高海女将もいるんだろ?あの娘たちの煎淹れたお茶はさぞかし美味しいだろうね」
花丸「な、なにをするずら!」
産業振興部長「おいおい、直属ではなくても私は部長だよ?
ちみ〜言葉遣いと態度には気を付けたまえよ。
では、資源を無駄にしてないで早く帰りたまえよ」
花丸「こんな…こんなことって……」 報告書…印刷し直さなきゃ……
花丸「ルビィちゃん…みんな……マルは弱虫ずら……こんなことされて、何も言い返せないずら……」
財務部長「国木田さん?」
花丸「部長…」
部屋の扉をしめわすれていた。
入り口に財務部長が立っていました。
荷物を持っていないから、帰りというわけではないみたい。
遅くまで部長も仕事が大変なんだ…
財務部長「遅くまでお疲れ様。報告書?」
花丸「はい…今から持っていこうと。遅くなってすいません」 財務部長「そうだったの。タイミングよかったのね」
花丸「あ…でもこんな時間ですもんね。
ボーッとしていました。定時過ぎに報告書出そうなんて、非常識でした…申し訳ありません」
財務部長「いいのよ。初日から大変そうね。
……ねえ、何かあった?」
花丸「いえ、なんでも……」
財務部長「そう…何かあったらすぐに言いなさい。お願いしたのは私なんだから。遠慮しないで」
花丸「…ありがとうございます。報告書、できました。お願いします」
財務部長「はい。お疲れ様。遅いし…気をつけて真っ直ぐ帰りなさいね」
花丸「はい。失礼します」 Aqoursに入った時、ラブライブで優勝できた時。
確かにマルは変われたと思っていた。
本の中の世界に閉じこもっていた頃から、少しずつ世界を広げてこれたと思っていた。
素敵な友達に恵まれて、縁に恵まれて…色々な壁を超えてきたつもりでいた。
でも今、社会、組織、立場という…自分じゃなにもできない壁にぶつかった……
本当に?
自分じゃなにもできないって、誰かが決めたんだっけ…?
私は沼津を今よりも良くしたい。
黒澤さんも、鞠莉ちゃんも、千歌ちゃんも、そう思って力を貸してくれると言ってくれている。
財務部長も、だから私に任せてくれた。 今わかった。マルは……
花丸「やりたいからやるずら…それだけずら…絶対に、地位や権力には屈しないずら……!!
結果を出せば、誰にも何も言われないずら!!」
誰になんて言われようと、誰が邪魔をしてこようと、私のやりたいことには関係ない。
向いてる向いてないでも、できるかできないかでもない。
このまま腐っていたら、ルビィちゃんにも合わせる顔がない。
次に会う時、誇れる自分でいるためにも、私は絶対にこの仕事をやり切るんだ。
でも、まずは…
花丸「悩んで怒ったらお腹すいたずら。まずは晩ご飯ずら」 千歌ちゃんがインターンでホテル修行するSSの人かな 〜翌日 沼津市活性化対策チーム用空き部屋〜
花丸「みんな!!!聞くずら!!!!
目指すべきはスマートシティずら!!」
千歌「スマートシティ?てか花丸ちゃん何かキレてる!?」
鞠莉「マルが横文字使ってる」
花丸「バカにしないでほしいずら!
と言っても、昨日帰りに参考にしようと買って帰った本がそう言う話だったから言ってみただけずら……」 璃奈「スマートシティ化…ありだと思う」
花丸「え!?本当ずら!?」
璃奈「すぐに…と言うよりは一つの実験都市として進める価値が高いと思う。
まず人口が16万人前後と言う程よさ。ステークホルダーが少ないのはありがたい。そして地元企業黒澤グループの技術との相性の良さですね。
特にKWS(黒澤ウェブサービス)の提供するクラウドサーバーをはじめとしたサービスはテクノロジーと生活の融合に非常に相性が良いんです」
千歌「KWSかぁ。うちの旅館でもフル活用だよ」
璃奈「そう、KWSの良いところは、他の会社のクラウドサービスと違って、エンジニアがいなくても最初からすぐに使えるサービスが付属しているところ。
ITのスピード導入にはもってこい。元が水産業や飲食業から始まってるから、黒澤の企業としての強みでもありますね」 鞠莉「逆に市は今まで使ってなかったの?」
花丸「確認したけど…恥ずかしながら」
璃奈「なら、企画が通ったら直ぐにでもKWS契約しちゃってもいいかも。
使った分だけ支払うシステムだから、まずは契約してサービスでなにが使えるか考えましょう」
鞠莉「そうね…スマートシティと言っても、なにをスマートにしていくのか……」
千歌「私はやっぱり、電子決済が増えるといいなって思うんだ」
花丸「電子決済?」 千歌「うん。沼津も市街地ならいいけど、内浦の方に来ると銀行とかもないし、ATMもコンビニくらいでしょ?
海外や都会から来る人たちって、キャッシュレスの人が多いからさ。
ホテルとか旅館はほとんどカードもOKだけど、お土産屋さんとかはそうじゃないとこ、まだ多いし。
鞠莉「そうねえ。カード払いとかICとか便利だけど、お店側が対応していないところが多いわね」
璃奈「手数料…ですね」
千歌「うん…気持ちはわかるんだけどね……3%とか5%は決して無視できない数字ではあるんだけど、お客様の立場になったときに便利なのはどっちかと思えば、やっぱりキャッシュレス対応はやる価値があると思う」 鞠莉「チカっちのところもキャッシュレス対応は完璧なんだっけ?」
千歌「うん。カードはもちろん、交通系ICやバーコード支払いも対応してるよ。
結果的にお金の管理も楽になったし、手数料はかかるけど良かったと思ってる。
オハラインターン時代にお客様がほとんどカード払いだったから、女将になって結構すぐに導入したかな」
鞠莉「私も同意見よ。でも、オハラは一泊の料金が高いから高額の現金を持ち歩きたくない人も結構いたわ。そこは少し特別かもね。
ねえ、新規でキャッシュレスを導入した際に市から補助金を出せないかしら」
花丸「できる…と思うずら。後は、手数料以前に消費者も店側もよくわからないからと導入しない人も少なくないと思うずら。
私も社会人になってすぐの時はよく分からなくてずっと現金使ってたし…」 璃奈「ちょっといいですか」
花丸「璃奈ちゃん、どうしたずら?」
璃奈「今度KWSが開発した電子決済サービス『KURO Pay』がリリースされるんです。
これをうまく利用できないでしょうか」
鞠莉「KURO Pay…?」
璃奈「はい。沼津市内を中心に展開させる予定の電子決済サービスです。
今のバーコード決済の先駆けとなったサービスのリリース時と同様に、導入費用は無料で提供していく予定です」 鞠莉「あの頃に乗り遅れてしまった層にも、もう一度お手軽に参入できるチャンスを作るのね」
璃奈「はい。そして、利用手数料を5年間無料にする予定です」
千歌「5年間も!?どこでお金回収するの!?」
璃奈「黒澤さんはそんなこと考えてないんです。ただ、便利にしたいだけだと言っていました。
だからこそ、このチャンスを逃したくないと私も思っています」
花丸「うまく提携して産官一体となってキャッシュレスを広めるずらね」
璃奈「はい。もし市全体でキャッシュレスが身近になれば、スマートシティにはグッと近づくと思う。
ITが身近になるってことですから。
あとは…例えば各種税金や公共料金を一つのアプリで管理できたらすごい楽。」 鞠莉「確かに、税金はカードで払えることが増えたけど、カード以外はまだイマイチよね。
光熱費とかも、カード対応もあればそうじゃないとこもあるし。
わかりやすいホームページの場所もあれば、そうじゃないところもある」
千歌「固定費とかの支払いを全部同じアプリで見られたら楽だね」
璃奈「理想は、財布を持たずに生活ができること。
スマートフォン一つで全て完結させること」
花丸「わかりました!では、案一つ目。『完全キャッシュレス化』ずらね」 璃奈「後は…個人的にチャットAIは導入したいですね」
花丸「チャットAI…?」
璃奈「例えば、何か困ったときに市のホームページを見て必要な情報を拾うのは大変。
サイト内検索とかはあるけど、それでも市民の人たち全員が使いやすいかと言うと、そうじゃないと思う」
千歌「そうかも。ちょっと情報量多すぎるよね」
璃奈「事前に利用者の属性を登録してもらうんです。そうすることで、まず必要がないと思われる情報が表示されないようにする。
逆に子育て中とか、色々と申請すれば便利な制度が受けられる人には、予めそう言った情報を表示するようにする」
鞠莉「確かに、知らないと受けられないサービスって多いのよね。
それを予め表示してもらえるなら助かるわ」 璃奈「その上で、わからない情報はチャットAIに質問するんです。24時間365日対応だから気楽で安心。
でも、チャットAIを導入しているところは多いけど、精度がいまいち。
だから私が最高のAIを作り上げる」
花丸「た、頼もしいずら……」
千歌「となると、2つ目は『市政のデジタル化』になるのかな」
璃奈「うん。後は、こう言った取り組みをしていくことを、知ってもらわなければいけない。
ホームページを作りましょう」
鞠莉「誰が作るの?璃奈の負担が大きくなるわよ……」 璃奈「私は大丈夫です」
千歌「だめだよ!!ITが絡む時点で璃奈ちゃんは絶対に欠かせない存在なんだよ!?無理して体壊したりしたら大変!」
花丸「ホームページ…ホームページ……」
そのとき浮かんだのは、幼なじみの元堕天使の顔ずら。
鞠莉「花丸?」
花丸「適任が…いたずら!!私たちの大事な友達で、そういうのに強い人が!」
鞠莉・千歌「あっ!!」
璃奈「?」 ニジガクはAqoursがラブライブ優勝してから数年後に活動した世界線って認識でOK? >>75
1です。
そうですね。μ's、Aqours、虹ヶ咲学園それぞれ活動開始年分学年が離れてる設定です。 設定に無理がありすぎてちょっとなぁ…
ラブライブじゃなけりゃ設定云々が頭にないからいけるかもしれないけど
まぁその辺りも伏線かな?
終わるまでは待つか 誰も困らないから我慢せず切っていいよ
ただ、お静かに頼むわ 麻薬SSの後半からずっとぼくのかんがえたさいきょうの黒澤家(実質オリキャラ)
とその取り巻きたちのシムシティRTAだよ
まあ現実で出来ないことの復讐をするのは創作の基本だしそういうことだろ じゃあ見て気に入らなかったらじゃなくて、目につくのすら嫌なんでこれらの全て見えなくするにはどうすればいいか教えてくださいよ
嫌なら見るなならレススルーすればいいんじゃないすかね? 反応している時点で自分らどうなんすか? >>83
専ブラ(せんぶら)って知ってる(しってる)? シリーズ物なのにタイトル毎回違うから分かりにくいんだよなぁ >>84
janeっていうのは使ってます、これでこの方の同シリーズ、作品世界観を共有しているものその他全て表示されなくなるやり方教えてください >>84
挑発すんなって
>>83
おれも言い方は悪かったかもな
でも自分でも言ってるからわかるだろ?
人の楽しみを削ぐような感想は終わってからがマナーだってわかるだろ? いやーわかんないですね、書く自由があるなら意見する自由もあると思うので嫌ならみるなはそちらにも当てはまると思うし
それより表示されなくなるやり方教えて下さい、完全に目につかなければそれで済む話ですので 自分の目をシャーペンかなんかで刺して潰せばいいと思うよ おらはハッカーからキャッチーさを抜いた感じ
こりゃ荒れますわ 定期的に挟まれる主役勢ヨイショ描写がふた昔前のエロゲみたいで気恥ずかしい以外は普通に読めてる 〜沼津市街のマンションの1室〜
善子「はい!デザイン事務所YY(だぶるわい)代表の津島です」
花丸『よ〜し〜こ〜ちゃん』
善子「あら、その声花丸?久しぶりね。プライベート用携帯のほうにかけてよね。仕事モードで出ちゃったじゃない」
花丸『仕事の電話だよ』
善子「花丸が?私に?本のレビューサイトでも始めるの?」
花丸『いや、沼津市が善子ちゃんに。でもそれ楽しそうだね』
善子「はぁ?どう言うことよ」
花丸『作ってほしいホームページがあるんだけど…詳しい話は直接話したいな。今から来られる?』
善子「ええ。今ちょうど仕事も落ち着いているし、大丈夫よ。ちゃんと説明しなさいよね」
花丸『もちろん。ちゃんと交通費も出るから安心して。あ、だから印鑑は持ってきてね!』
善子「別にいいわよそんなこと。支度するから…40分くらいあれば着けると思う。
じゃあ、また後でね。仕事とはいえ、会えるの楽しみよ、花丸」
花丸『私もだよ。あ、千歌ちゃんと鞠莉ちゃんもいるずら』
善子「は!?なんで!?ちょっと!ちょっと!!!」 〜沼津市活性化対策チーム用空き部屋〜
花丸「善子ちゃんは40分くらいできてくれるそうずら」
璃奈「善子…友達…もしかして…津島善子さんですか?」
花丸「知ってるずら?」
心なしか璃奈ちゃんの瞳が輝いていうように見えた。
もしかして善子ちゃん、有名人?
璃奈「web業界では数年前から大人気のフリーデザイナーです。
仕事の予約も何ヶ月待ちって聞きますけど……
まさかお会いできるなんて。楽しみです」
花丸「え!?でも仕事落ち着いてるって…」
千歌「やっぱり優しいねぇ。善子ちゃんは」
鞠莉「『よしこ』の『よし』は『おひとよし』の『よし』ね!」
花丸「善子ちゃん……ありがとう」
昔から、不幸体質なのに誰よりも気遣いができて友達想い。
本当に名前の通りの善子ちゃん、ずらね。 〜55分後〜
善子「はぁ、はぁ…みんな、久しぶりね……遅くなってごめんなさい……」
花丸「よ、善子ちゃんボロボロずら…どうしたずら…」
鞠莉「ショッキング……」
千歌「うわぁ…」
善子「道中少しね……深めの水溜りを避けようとしたらスリップして転んだの…もう自転車に乗るのやめるわ……」
善子ちゃんは、ズボンの膝や上着の肘部分が裂けて、痛々しく流血していたずら。
不幸体質はいつまで続くずら……
善子「いいのよ、こういう不幸の後には幸せなことが待ってるって思うことにしてるから、辛くないわ」
璃奈「は、初めまして。天王寺璃奈です…」
善子「天王寺璃奈…?本物?元虹ヶ咲学園スクールアイドルでY&Iセキュリティサービスの?
私は津島善子。善子でいいわ。フリーのwebデザイナーをやってるの。よろしくね。」
璃奈「お会いできて光栄です…!私のこと知っているんですか?」
善子「私の方も、あなたに会えて嬉しいわ。
そりゃ知ってるわよ。私と2個違いでしょ?
私や花丸が3年生の時がちょうどあなた達の黄金時代だったじゃない。
ルビィがいたら大騒ぎよ」
花丸「そうなの…?」
善子「あんたねえ…まあ、あの時は私達は予選すら突破できなかったし、本戦までチェックはしてない…か」
花丸「面目ないずら…」
善子「それに、璃奈の会社はベンチャー企業なのに各国家機関や大手企業ににセキュリティコンサルを行ってる会社よ。
IT業界にいて知らない人がいたらもぐりね」
鞠莉「本当に優秀なのね…」
善子「優秀なんてもんじゃないわ。少なくとも表社会最高のハッカーとして最有力候補ね」
千歌「そ、そうなの?」
善子「あのテレグラムのクラッキングコンテストでクラッキングに成功した数少ない一人よ」
鞠莉「え!?あの…」
千歌「テレグラムを…」
花丸「クラッキングした…?」
璃奈「え、なんで皆さんテレグラムなんて知ってるの?」
善子「とまあ、それはともかく、花丸。仕事について説明を」
花丸「ずら」 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
善子「なるほどね。面白そうじゃない」
花丸「お願いできるずら?」
善子「当たり前でしょ。でも私、フリーだけど結構単価高めよ。
そうじゃないと仕事に追われて自分の時間取れないのよ。
おかげで今は他のことやる時間できてるし」
花丸「金のことは気にするな!ずら!」
善子「やけに強気ね」
花丸「お金だけは潤沢ずら」
鞠莉「で、いくらくらいになりそうかしら」
善子「公的機関の仕事は初めてだけど、大企業のホームページ、その他サービス作成…考えられるサイトの規模からして、150万はみて欲しいわね」
千歌「ひゃ、150万…!?」
善子「それくらいじゃないとめちゃくちゃ仕事舞い込むのよね。ありがたいことではあるんだけど。
でも大手のデザイン事務所だと、作成規模的にこれくらいの値段は珍しくないみたいよ」
花丸「お願いするずら。場合によっては長期の仕事になるかもしれないし、もっと出してもいいずら」
善子「花丸?」
花丸「善子ちゃんもプロとして、この仕事で食べてるんだもん。
それに対してしっかり対価を払うのは当然だよ。友達だからこそ、そこはしっかりしたいの」 善子「…いや、100万でいいわよ。その代わり、しっかり私の実績の一つとして紹介させてもらうわ」
花丸「そんな!だめだよ!自分を安売りするなんて許さないから!」
善子ちゃんはずっと自分で技術を磨いてきて、フリーランスとして今の自分のブランドを築いている。
それなのに友達のよしみで値下げなんて、絶対にしちゃいけないことだ。
それは善子ちゃんの積み重ねてきた努力への、冒涜だと思う。
善子「安売りなんかじゃないわ。フリーのデザイナーが普通こんなに大きな公共の仕事もらえないもの。
それも20代の若造の私がよ?良い宣伝になるわ。お金なんてこれからいくらでも回収できるわよ」
花丸「善子ちゃん……」
善子「何より私がやりたい。久しぶりに、みんなで何かを成し遂げたいわ!」
花丸「ありがとう…ありがとう!絶対に、成功させようね!」
余計、このプロジェクトは失敗できなくなった。
でも、なんでだろう。プレッシャーはあるけど、不思議といやじゃない。
むしろ、ワクワクしている自分がいるずら。
善子「このメンバーでしょ?成功しないほうが難しいんじゃない?
…よろしくね。花丸。みんな」
千歌「よろしく!」
鞠莉「よろしくね、善子!」
璃奈「善子さん、よろしくお願いします」 善子「さあ、できることから取り掛からせてちょうだい!お役所仕事だし、すぐになんでも進められるわけじゃないでしょ?」
花丸「恐らく、案件の規模的に幹部会議を開いて上に挙げるかどうかの決定があるはず……
それに通れば上司である財務部長決裁だね。そのあとは副市長、市長かな」
鞠莉「幹部会議か…昨日のいけすかない部長みたいな人がいたら、ちょっと困るわね」
璃奈「納得してもらえるだけの企画を練っていかなければいけません……」
善子「なーんか先行き不安そうね」
花丸「うん…でも今は、とにかく案を挙げていこう!」
善子「ねえねえ、沼津市ってLINEのアカウントあったわよね。
それでどんな改善があったら助かるかアンケート取りましょうよ。
市民のためなら市民の声を聞くのが一番手っ取り早いじゃない」
千歌「それいい!!やろうよ!!」
花丸「SNSは…企画部ずらね。…うん。交渉してみるよ」
千歌「意地悪じゃないといいけどね…」
花丸「大丈夫だよ。財務部長は信頼も厚いし、昨日きた部長は結構評判が良くない人だったずら。
早速確認してくるね」 〜企画部〜
企画部からは、無事にアカウントの使用許可が降りました。
協力的で助かります。
今回の案件を押し通せるだけの、財務部長の人柄と信頼を実感したずら。
都市計画部長「おいおい、今日も何か余計なことしてるのか?
ええ?国木田」
花丸「なぜここに…いるんですか」
企画部を出たところには、都市計画部長が待ち受けていました。
嫌味ったらしい笑みを受けべて……
都市計画部長「たまたまお前がここに入っていくところを見てな。
何をしているんだか…」
花丸「まだ企画書にすらしていないことですので、お話しすることは……」
都市計画部長「何をしているんだと聞いているんだよ!!!
答えろ!!!」
突然の大声は苦手…でも大丈夫。
マルは…私は、決めたのだから。
花丸「もう一度言います。まだ企画書にもしていないので、他部署のあなたにお話しすることはありません。
失礼します」
都市計画部長「待て国木田!なんだその態度は。室長とはいえ、俸給はせいぜい係長程度だろ。
何を偉そうに……」 花丸「部長…昨日仰いましたよね。『邪魔はするなよ』って。
その言葉、そっくりそのままお返しします」
都市計画部長「はぁ……?」
花丸「私は…私たちは、沼津のためにできることをやるだけです。私が沼津のためにしたいと思うことをするだけです。
部長は違うんですか?」
都市計画部長「口を…口を慎めよ下っ端のくせに…国木田ぁ!!」
花丸「今の沼津の状況、わかっていますよね?
こんな風に対立し合うのではなく、手を組むと言うならわかりますが、何で邪魔をしようとするんですか」
都市計画部長「貴様…部長相手に楯突いて…わかっているのか…?」
花丸「わかりません……やるべきことをやるだけですので。仕事に戻りましょう。失礼します」
都市計画部長「覚えておけよ…あとで謝っても遅いぞ」
花丸「……」
企画部長「騒がしいようですが…どうかされましたか?おや、部長。うちに何か用で?」
都市計画部長「……いや、なんでもないです。つい議論が熱くなりましてね。
廊下ですることじゃあなかった。失礼します」
企画部長「はぁ…お疲れ様です。
国木田さん、何か言われたの?大丈夫?」
花丸「いえ…大丈夫です。ありがとうございます。お騒がせしました」 これは豊かな社会経験と深い人間洞察に裏付けられた悪役描写 〜沼津市活性化対策チーム用空き部屋〜
善子「えっ…何でガチの口喧嘩してんのよ……部長でしょ?」
花丸「やってしまったずら……」
千歌「昨日の鞠莉ちゃんが血気盛んすぎたから移ったんだよ」
鞠莉「え…マリーのせい?でもまあ、いいじゃない。
言い方はアレだけど、間違ったことは言ってないわ」
璃奈「でも…あんまり他部署と揉めるとやりづらくなるのも事実ですよね……」
花丸「ご、ごめんなさい…」
璃奈「いいえ、その分、しっかり大勢が納得できる企画を作りましょう」
花丸「そうだよね。実際には企画が通ったら協力関係にならざるを得ないんだし、部長達にも力を貸してもらえるような企画にしたいずら」
鞠莉「さあ、そろそろ市役所の定時ですし、お開きにしましょうか。
良いわよね、花丸?」
花丸「そうだね……善子ちゃんも、今日は急だったのにありがとう。
しっかり傷口ケアしてね」
善子「良いのよ。ありがとうね。私も明日から…って明日は土曜か。来週から来たほうがいいかしら?」
花丸「どっちでもいいずら」
善子「投げやり酷い!!くる!くるわよ!
仕事ならどこでもできるしね」
花丸「それと、自転車じゃなくても職員用の駐車場使って大丈夫ずらよ」
善子「それ最初の電話で言うべき内容よ!!」
璃奈「お二人は仲良しなんですね」
花丸「腐れ縁ってやつずらね」
善子「もっと他に言い方あるでしょ…」
鞠莉「さあ、みんな送っていくわよ。善子は…自転車よね」 善子「折りたたみだがら…トランクに載せさせてちょうだい…私も今日は乗せていって欲しいわ」
鞠莉「OK!璃奈は?」
璃奈「私は黒澤家の伊豆別邸に今はお世話になっています。
遠いので、大丈夫ですよ」
善子「あら、じゃあうちに来る?同居人も単身赴任でいないし。ちょうど良いわ。
私も来週からは車で来るし、ここにも近くて早いほうが楽でしょ」
璃奈「ありがたいですけど…ご迷惑じゃないでしょうか?」
善子「良いのよ。気にしないで。私も璃奈の業界とか興味あるし。
いろいろ話も聞きたいし。むしろ来て欲しいくらいよ」
璃奈「では、お言葉に甘えて…ただ、荷物だけ今日は伊豆に取りに行って良いですか?」
善子「もちろん。私車出すわよ。鞠莉に私の家まで送ってもらったら、そのまま取りにいきましょう」
璃奈「何から何まで…助かります」
千歌「じゃあ行こうか!」
そうして、鞠莉ちゃんの車に送ってもらい、順次解散となったずら。
しかし、善子ちゃんが璃奈ちゃんを家に招いたのは意外。
随分と変わったずらね。でも…確かに昔から面倒見はよかったもんね。
二人が仲良くしてくれていたら嬉しいずら。
私も、そろそろ市街に部屋を借りて一人暮らししようかなぁ。
うーん、でも本の置き場に困るずらね。
そういえば前に寺のお坊さんが板のような物で読書をしていたずら。
新種のパピルスかと思って質問したら、『電子書籍リーダー』って言ってた。
電子書籍かぁ。本は絶対に紙って思っていたけど、自分がスマートシティに手を出そうとしているんだから、ちょっと試してみようかな。
自分にもできる小さな未来を、少しずつ増やしていくずら。
…うん。発注したら明日には届けてくれる。
便利な世の中になったずら。
この企画が本当に上手くいって進んでいくことになったら……市全体で名産品のネット販売サイトをつくったりするのも良さそうかも。 〜翌週 沼津市活性化対策チーム用空き部屋改め沼津市活性化特別室〜
花丸「みんな!聴いて欲しいずら!」
千歌「月曜日から元気だね〜花丸ちゃん。興奮してどうしたの?」
鞠莉「また何か部長たちに嫌がらせされたの?」
花丸「違うよ!ついに私は…電子書籍デビューしたよ!」
善子「えっいつも紙の本に埋もれてたあんたが!?」
花丸「そうずら。やっぱり街のIT化をめざしている私が、何もかもアナログじゃ良くないと思って」
璃奈「私も本は電子書籍派です。
スペース取らないのが良いですよね」
花丸「璃奈ちゃんそうなの!それに、この画面の質感!
思っていた以上に『紙』ずら!」
璃奈「電子ペーパーですね。私も昔自分のアイドル道具の一つに使ってました。
電力消費が少ないので、電池の持ちにビックリしますよ」
花丸「土曜日のお昼に届いて、そこから5冊くらい本を読んだけど、まだ電池は85%ずら。
スマートフォンも見習って欲しいよね。50%と思ったら急に7%になったりするんだもん」
善子「それは買い替えなさいよ」
鞠莉「良い買い物できて良かったわね、花丸!
確かに、花丸みたいに機械見るたびに『未来ずら』って言っていた子がここまで変わるんだもの。
色々と触れてもらえれば、街のみんなも便利さに驚くわよね」
千歌「企画が通ったら、そういう機会もたくさん設けられたらいいね」
善子「まずは身近なところから…ね。良いじゃない!」
花丸「というわけで、私の近況報告が終わったところで話し合いに入っていくずら」
璃奈「話し合いの前に一ついいでしょうか」
花丸「璃奈ちゃん、どうぞ」 >>141
拙僧がkindle使ってるの想像したらなんか笑えた マルが沼津に潜む闇を暴く
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