凛(はっきり言って私は、小さい頃野球に興味なんて無かった)



凛(始まりは……小学校の夏休みのあの日、たまたま押し入れで見つけた一本のVHS)



凛『甲子園決勝大会 音ノ木坂高校対浦の星女学院……?』



凛(なんの気無しにビデオデッキに入れて、暇つぶしのつもりで見始めて)



凛(……試合が終わるその瞬間まで、目が離せなかった)



実況『空振りィィッ! 四番松浦、その場に崩れ落ちましたッ! 凄い、凄すぎるぞ豪腕桜内ッ! 9回裏の連続三振ーッ! キャッチャー星空がマスクを取って駆けつけ……』



実況『おっと……どうしたことでしょうか桜内。肩を抑えて……』



凛(そこで、テープは終わっていた。後でママに聞いた話だと、それはママが高校球児だった時の映像で。音ノ木坂が最強と呼ばれた、その時代を納めたものだったらしい)



凛『音ノ木坂高校……!』



凛(特に目標も無かった凛の人生に、その日一つの目標が生まれたんだ)



凛(ママのように、音ノ木坂高校で甲子園に出たい。って)