凛「この一球に……命を懸ける!」
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凛(はっきり言って私は、小さい頃野球に興味なんて無かった)
凛(始まりは……小学校の夏休みのあの日、たまたま押し入れで見つけた一本のVHS)
凛『甲子園決勝大会 音ノ木坂高校対浦の星女学院……?』
凛(なんの気無しにビデオデッキに入れて、暇つぶしのつもりで見始めて)
凛(……試合が終わるその瞬間まで、目が離せなかった)
実況『空振りィィッ! 四番松浦、その場に崩れ落ちましたッ! 凄い、凄すぎるぞ豪腕桜内ッ! 9回裏の連続三振ーッ! キャッチャー星空がマスクを取って駆けつけ……』
実況『おっと……どうしたことでしょうか桜内。肩を抑えて……』
凛(そこで、テープは終わっていた。後でママに聞いた話だと、それはママが高校球児だった時の映像で。音ノ木坂が最強と呼ばれた、その時代を納めたものだったらしい)
凛『音ノ木坂高校……!』
凛(特に目標も無かった凛の人生に、その日一つの目標が生まれたんだ)
凛(ママのように、音ノ木坂高校で甲子園に出たい。って) ことり「よ、よしっ! 私も……」ブォンッ
ポコンッ
ことり「あぁっ!」
絵里(ことりの大振りは当たると大きいんだけど、やたらめったらだからずれすぎて凡打になりやすいのよね……)
ことり「あわっ! あわわっ!」タタタ
ことり「『ぶる〜べりぃとれいん』!」
ポワァ
「なんか甘くて酸っぱい匂いがするでやんす」パシッ
審判「アウトッ!」
ことり「あわわわっ!?」
実況『ブルーベリーの香りがスタジアムに漂っています。心が落ち着きますね』
実況『特に素早くなるわけでもなく、ブルーベリーの香りがするだけのようですね。さて、1アウトランナー無しの場面でバッターは園田海未』
ことり「うう……ごめんね海未ちゃん、塁に出ておきたかったのに」
海未「大丈夫ですよ、ことり。ブルーベリーのとてもいい香りがします」
海未「二度と使わないでください」
ことり「うぇぇん……ゆぇぇぇん……」トボトボ 海未(さて……1アウトですか)
海未(私が塁に出られる可能性は、玄武に飛ばない限りほぼ100パーセント。しかし……)
海未「シングルヒット以上は望めない」
海未(私が出塁したところで続くバッターは凛、そして花陽……どちらもバッターとしての実力は低い)
海未(花陽も努力はしているのですが……まだ球を満足に追えているとは言い難い)
海未(となると……また、私が残塁したままアウトになる可能性が高い)
かのん「……ふっ!」キュオッ
ヒュオォォォォンッ!
海未「……」
スパァンッ!
審判「ストライッ!」
実況『園田選手、一球見送りました。例の構えをしておりませんが……今度は普通に打ってくるのでしょうか』
かのん(……突いてこない?) かのん(普通に打ってくれるなら、打ち取るチャンスは広がる……それは分かってる筈だけど)
かのん(ま……後続のバッターが連続で凡打に抑えられてるんだから、シングルヒットしか狙えないあれでいくのは厳しいか)
かのん「……やっ!」
ヒュオォォォォンッ!!
海未「っ……」
スパァンッ
審判「ストライッ! ツー!」
実況 実況『二打目も振ってきません! どうした園田海未、微動だにしませんっ!』
かのん(試合を諦めた? いや……)
海未「……」
かのん(何とかして長打にしようと模索してる? させないっ……!)
かのん(考える時間を与えるな……っ!)
かのん「……らぁっ!」キュオッ
海未「っ!」
ヒュオォォォォンッ
海未(駄目です……! 何も、何も思い付かない……!)
海未(今から突きに……間に合わない! くっ……!)ブォンッ
かのん「いける……打ち取った!」
海未(どっちに曲がる……!? どっちに……)
海未「……!?」
カキィィィンッ!
かのん「……! なっ……!?」 海未「曲がらない……!? よしっ……!」ダッ
実況『真芯で捉えたァァッ! ボールは左中間を割って転がっていくゥ! これは長打コースですっ!』
かのん「なんで……!?」
恋「く……」
実況『レフト葉月追い縋るが……今、ボールがフェンスにぶつかりましたッ!』
恋(まずい……! 今までのバッティングのせいで……前進守備気味になっていたのに!)
恋「っう……!」パシッ ヒュッ
可可「恋ッ! こっちね……!」
実況『今、ボールがセカンドに投げられました! 速いッ! 玄武の吸い込みとレフト葉月の肩が合わさって160キロ級のボールが真っ直ぐにセカンドに向かっていますッ!』
可可(間に合……)
海未「……届けぇっ!」バッ
実況『園田海未が飛んだァッ! 同時にボールは唐可可の手にッ! どうだっ! 間に合ったのかッ!?』
可可「……」
審判「……」
審判「セーフッ!」
可可「……くうっ!」
海未「……」ハァハァ
実況『間に合いましたァッ! 園田選手、意地の走りで二塁セーフッ! 音ノ木坂、追加点のランナーを得ました!』 海未「よ、よかった……はぁ……はぁ……」
可可「まさか打たれるとは思わなかったデス。凄い走りでシタ」
海未「それはどうも……」
海未(しかし……)
海未(渋谷かのんのボールは手元で曲がる筈なのに……先程の一投は全く曲がらなかった)
海未(曲がるボールに曲がらないという選択肢が増えた? ……あるいは)
実況『続くバッターは7番星空凛。主人公なのに余りいいところがありません』
凛「うるせぇ」
凛(……かよちんは恐らく打てない。何とかして凛が海未ちゃんをホームに返さなきゃ)
凛(というか次の回からピッチャーにこちゃんに交代だし……ここで活躍しておかなきゃ、これ球拾と真姫ちゃん主役じゃね? 何でタイトルに凛ちゃんいるのwwwってなるにゃ)
凛「よしっ……!」
実況『並々ならぬ気迫を感じます、星空選手。ここは是非とも打っておきたいところですが……』
かのん「……ッ」ギリッ
かのん(おかしい……何なの、さっきの球。いつもと同じように投げた筈なのに)
かのん(全く曲がらなかった……!) かのん(偶然……? 偶然だよね、きっと……)
かのん「……っらぁ!」キュオッ
ヒュオォォォォンッ!
凛「やっぱり速い……にゃっ!」ブォンッ!
クイッ
ボコォッ
審判「……ファール!」
凛(スピードには慣れてきてるけど、やっぱりあの曲がりに対応できない……!)
かのん「なんだ……やっぱり曲がんじゃん、へへ……」
かのん「さっきのは偶然……二度目はないよっ!」キュオッ
ヒュオォォォォンッ!
凛「……っにゃ!」ブォンッ
凛(曲がる方向は……って、あれ?)
かのん「……!」
カキィィィンッ!!
凛(曲がら……なかった?) ラブライブで1レスで分かる山月記(翻案)
にこ「私は天才にこ。妻の真姫ちゃんを養うために公務員になったけど、他の無能とは違ってアイドルとして活躍出来る才能があるにこ」
にこ「だから公務員辞めてアイドルやるわよ!」
真姫ちゃん「ヴェッ!?」
〜ソレカラドシタノ〜
にこ「売れないにこ……私は天才のはずなのに……」
真姫「どうするのよ、もうお米ないわよ……?」
にこ「もう一回公務員やるわ……」
穂乃果「にこちゃんお帰り。今度は私の部下だねっ!」
にこ(馬鹿にしてた奴らが出世してるにこ……)
〜ツキヒハナガレテ〜
穂乃果(にこちゃんが湖畔の宿屋から失踪してもう一年かぁ)
ガサガサ
穂乃果「ひっ! 虎!? ……ってあれ、にこちゃん?」
にこ虎「!? いかにも、私は矢澤にこよ」
穂乃果「何で虎なんかになってるの!?」
にこ虎「発狂して走り回ってたらこうなったのよ。惨めでしょ、笑ってもいいのよ」
にこ虎「何だか今の気持ちを曲にしたくなったわ。にこにーのラストライブ、見ていって」
〜♪
穂乃果(技量は凄まじいのに何か心に響かない曲だなぁ……)
その後、にこの姿を見たものはいない 凛(と、とにかく走るにゃ……!)
可可「っ……! これは……!」
実況『レフト前ヒットォ! 星空、一塁に滑り込みますっ!』
実況『その間に園田選手も三塁を踏み……まさかまさかのワンアウト一三塁! 理想的な状況を掴みました!』
かのん「あれ……あれ……?」
可可「かのんっ!」
かのん「クゥクゥちゃん……」
可可「さっきのボール、曲がってないように見えマシタ。何かあったデスカ?」
かのん「わからないの……いつもと同じように投げた筈なのに、何故か曲がらなくて……」
可可「なんで……」ハッ
かのん「……」プルプル
可可(指先が僅かに痙攣している……!?)
可可「かのん、大丈夫デスカ!? 疲れとか……指の痛みとかありまセン!?」
かのん「へ? いや……と、特にはないけど」
可可(無意識……? かのんはスタミナがある選手だから過信しすぎていた……! 昨日の連続ファールから疲れが抜けきってなかったんだ……腕が限界を迎えてる!)
可可(交代……!? けど……!) すみれ「……?」
すみれ「カリスマな私に見とれてるのね。ギャラクシー!」ドヤッ
可可(まだ6回表……すみれじゃあと3回抑えきれない!)
可可(とはいえかのんの球は最早ただの速いストレート……どうしようもない!)
可可「くぅ……!」
可可(負けっ……! 負けっ……! ここで終わりっ……!)
可可(そうなれば……)
ーーーー
可可「師父、お呼びデスカ」
師父「うむ……可可。お前に伝えなければいけないことがある」
師父「この神域を手放さなければいけないかもしれぬ……」
可可「……神域を!?」
師父「オハラという会社にリゾート地として買収されかけているのだ……抵抗したのだが、一族のものが次々金に籠絡されておる」
師父「金が……金さえあれば……」
可可「金……!」
可可「……」バッ
『唐 可可殿。貴殿の神を従える力を評価し、結ヶ丘高校指定強化選手に……………契約の暁には契約金を……………』
可可(神を野球に使うなんて……いや、これしかないデス)
可可「大丈夫デス、師父。お金なら……クゥクゥが用意シマス!」
ーーーー
可可(甲子園に行けなければ契約を終了させられる可能性がある……理事長はストイックな人間だ。敗者に情けをかけるような人じゃない!)
可可「……っ!」 かのん「大丈夫だよ、クゥクゥ」
可可「……! かのんさん……!」
かのん「私はまだ投げられる。ボールもきっと曲がるよ」
可可「……っ」
かのん「信じて、ね?」
可可「……ワカリマシタ、かのんさんに任せマス」
実況『タイムが終わりました……何かあったのでしょうか?』
実況『7番小泉花陽、緊張の面持ちでバッターボックスに入ります』
花陽「……」
花陽(打たなきゃ……皆、打ったんだ。チャンスなんだ……!)
花陽(モブAさんの分も背負ってるのに、私だけ打てないなんて嫌だ……っ!)
かのん「……ふぅ」
かのん「っやぁ!」キュオッ
ダッ
かのん「っ!」
実況『一塁星空、盗塁ぃ! 二塁を狙っていますが……玄武相手に盗塁は無謀すぎます!』
実況『いや……渋谷選手も予想外だったのでしょうか! 球がすっぽ抜けて……!』
ヒュロロロッ
かのん「まずっ……!」
花陽(打たなきゃ、打たなきゃ、打たなきゃ!)
花陽(……っ!?)
ドンッ かのん「あ……!」
カラッ…
凛「かよちん……?」
絵里「た、タイムッ! 花陽っ!」
実況『打ち気が流行ったのでしょうか……! 小泉選手、前に出過ぎましたっ……!』
実況『頭にボールが当たっています! 小泉選手、ぴくりとも動きませんッ!』
凛「かよちんっ!」ダッ
かのん「嘘……そんな……!」
かのん「また……やだ、ストライクゾーンだったのに……なんで!」
千砂都「落ち着くっすよかのん!」
花陽「……」
希「た……タンカ。タンカを……!」
実況『小泉選手、タンカで運ばれていきます……! 二試合連続で相手選手の頭にボールをぶつけてしまった渋谷選手、うずくまっています。泣いているのでしょうか、肩が細かく震えて……』
かのん「なんで……なんでぇ……!」
実況『小泉選手が運ばれ……音ノ木坂、残るメンバーは8人です』
実況『……この時点で、音ノ木坂の敗戦が決まりました! 最早ベンチには誰も残っていません!』
凛「あ……」 凛(終わり……そうだ、野球は8人になった時点で……)
絵里「……負け、なのよね」
穂乃果「……」
かのん「ごめんなさい……違うの、わざとじゃ……!」
海未「……分かってます、見てましたから」
海未「あの時花陽は……随分と前のめりになっていました。すっぽ抜けを見て無理やり打ちに行こうとしたんですね」
海未「けれど……」
海未「……」ポロポロ
凛「……仕方ないにゃ。ここまでやってこれたのが奇跡みたいなものだもん」
希「ん……」
審判「……只今を持って、音ノ木坂対結ヶ丘女子の試合を終了――」
「その必要は無いな」 絵里「え……?」
希「え、ええ……!?」
審判「何だ、君は……音ノ木坂の選手か? 今までベンチにいなかったじゃないか」
審判「そんな選手の参加は認められない……」
「今まで病院に入院していたんだ。選手登録はされているだろう?」
「理由があって遅れたんだ……認められる筈じゃないか?」
にこ「な、なんで……」
穂乃果「貴女がここに……」
審判「……ふむ、確かに入院中と聞いていたが」
審判「分かった。小泉花陽に代わることを認めよう」
「助かる。皆、待たせたな……戻ってきたぞ。この……」
英玲奈「モブAが!」
凛(に……似てるけど違う! 誰だこいつ……!?) 絵里「ちょ、ちょっと」
英玲奈「なんだ? さっきの打席は扱い的にはストライクだろう」
英玲奈「打席に立たなければいけないのだが」
絵里「いや、そうじゃなくて……貴女統堂英玲奈よね?」ヒソヒソ
希「UTXの統堂英玲奈選手やんな? 何で金髪にしてるん……!?」ヒソヒソ
英玲奈「……? 何を言っているんだ、私はモブAだが」
英玲奈「ああ、そうだ。これ、お土産だ。病院で会ったギャルっぽい子に貰った」ヒョイ
絵里「何? 手紙……?」
『統堂英玲奈選手と同じ病室になったんだけど、記憶無くしてるみたいだから勝手に染髪して、自分があーしだって刷り込ませておいたわ』
『割と顔似てるしいけるっしょ』
絵里「え、ええっ!? そ、そんな無茶苦茶な……」
審判「何だね? その手紙に何か……」
絵里「んんっ!」バクッ
絵里「がひゅ、ごくっ!」モチャモチャ
審判「ん……!?」
希「え、絵里ちは紙を見ると食べたくなるんよ! あはは、あはははー!」アセアセ
審判「そ、そうか……精神病院に行ったほうがいいぞ」 絵里「集まって! 英玲……モブA以外!」
英玲奈「?」
絵里「もう皆分かってると思うけど……あれはモブAじゃなく、UTXの統堂英玲奈よ」ヒソヒソ
凛「やっぱり別人にゃ……」
穂乃果「ど、どうするの? バレたら敗戦どころの騒ぎじゃないよ」
穂乃果「やってること完全に替え玉受験だもん」ヒソヒソ
絵里「そうだけど……ここであの選手はモブAじゃないって言ったらどうなると思う?」
希「その時点で彼女は退場、8人で負け……」
海未「……」
ことり「……よし、あの子はモブAちゃんだよ」
絵里「ええ、そうよ」
絵里「あの子はモブAよ。統堂英玲奈じゃない……!」
絵里「タイム終了! 頑張ってねモブA!」
英玲奈「あぁ、頑張るぞ」 実況『負傷した小泉選手に代わりまして、代打モブA選手。入院していたとは思えない堂々とした構えです』
かのん「……!?」
かのん(えっ、この人……UTXの選手じゃなかったっけ)
かのん(しかも私が昨日頭ぶつけた人じゃ……)
かのん「あ、あの……UTXの人、ですよね?」
英玲奈「? 違うが。そんなに似ているのか?」
英玲奈「色んな人から言われるんだ」
かのん「い、いえ……あはは」
かのん(他人の空似か……世界には似てる人が三人いるって言うもんね)
かのん(けどよかったよ……あれで試合終了なんて後味悪すぎるもん)
かのん「悪いけど……ついさっきまで入院してた人になんて負けないよっ!」キュオッ
ヒュオォォォォンッ!!
英玲奈「……」
かのん(……やっぱり曲がらない。けど、病み上がりならこれでも十分……)
英玲奈「……ふっ!」ブォンッ
ガキィィィィンッ!!
かのん「……うわっ!?」 実況『な……も、モブA選手初球から打って……』
ドォォッンッ…
可可「かっ……」
実況『ら……ライト方向に飛んでいったボールが、そのままスタンドに突き刺さりました! 素晴らしいバッティングです!』
実況『まるでUTXの統堂英玲奈を思わせるような、清々しい一打……たった今まで数ヶ月入院していた選手とは思えませんっ!』
かのん「な……な……」
実況『三塁ランナー、二塁ランナー、そしてモブA選手……それぞれホームインッ! これで9-6、一気に点差は三点に広がりました! 結ヶ丘には苦しい展開です!』
英玲奈「良い球だった。ノビがあるストレートだ」
絵里「良かったわ……よくライトに打ってくれたわね」
英玲奈「何でか分からないが、レフトは駄目な気がしたんだ。センター方向は大きな亀がいるからな。だからライトに……」
かのん「や、やっぱりUTXの選手じゃ……?」
すみれ「私もそんな気がするんだけど……けど髪の色が違うのよ」
すみれ「多分ギャラクシーに別人よ、この平安名すみれに保証される権利をあげるわ!」
英玲奈「ありがとう」 凛(最早、統堂英玲奈選手を加えた音ノ木坂に敵はなかった)
凛(にこちゃん、穂乃果ちゃんが凡打に抑えられたものの結ヶ丘側にももう打つ手はなかったようで)
凛(6回裏、7回裏、8回裏とにこちゃんが点を取られつつも凡打に抑えていき……)
すみれ「っ……ううっ!」ブォンッ!
スパァンッ!
審判「バッターアウッ! ゲームセット!」
審判「12-9で音ノ木坂学院の勝利ですッ!」
実況『なんと……なんということでしょうか。あの弱小音ノ木坂が……東東京代表です! 夢でも見ているのでしょうかッ!』
凛「勝った……やった、やったにゃー!」
凛「にこちゃーん!」ダダダッ
ギュッ
にこ「ぐえっ!? や、やめなさいよ凛! 恥ずかしいでしょ!」
絵里「優勝……」
海未「呆けてる場合じゃありませんよ、絵里。本当に優勝したんですから……」
真姫「やれやれ……って感じね。理解が追いついてないみたい」
凛「真姫ちゃんももっと喜ぶにゃーっ!」ドゴォォォンッ
真姫「ぎえっ!」 かのん「……終わっちゃった、かぁ」
すみれ「ごめんなさい……私が、私がもっと打てていれば」ポロポロ
かのん「ううん……私だって、ちゃんと最後まで曲がる球を投げられてたらこんなことには……」
可可「……」
かのん「皆、これからどうするの?」
可可「多分……国に帰ることになると思いマス。契約も終わりでしょうシ」
千砂都「私もダンススクールの費用払ってもらえなくなりそうだし……田舎に引っ込むっすかねぇ」
すみれ「私は特には……とはいえ、今までのように最高の機材で動画配信をすることは出来ないでしょうけど」
かのん「……離れ離れ、かぁ」
恋「……待ってください、皆」
かのん「恋ちゃん?」
恋「私が母を説得してみます。きっと……きっと、来年には甲子園に行けると思うんです」
恋「この皆なら……出場どころか優勝も狙えます! だから、だから……」
恋「離れ離れなんて寂しいこと言わないでくださいよぉ……」ボロボロ
かのん「恋ちゃん……」 絵里「甲子園……私達が本当に……」
審判「両校集まってください! 整列……整列してください!」
希「ほら、絵里ち。整列やん」
凛「部長なんだから……いつまでも呆けてちゃ駄目にゃ」
英玲奈「そうだぞ。絵里は部長……」
英玲奈「あれ……部長はツバサ……ん?」
凛「どうしたの?」
英玲奈「いや……何でもない。一瞬変な記憶が……」
絵里「ぁ……そ、そうね」
絵里「よし……」パンパンッ
審判「礼ッ!」
「「「ありがとうございましたッッ!!」」」 ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
三日後 凛の家
凛「にゃー……」
凛(優勝かぁ……何だかんだ絶対優勝だって吠えてたけど)
凛(いざ優勝すると実感ないにゃー……)
凛「球拾ちゃんの葬式も終わったし、モブAの家族も統堂英玲奈を二人目の娘として迎え入れたし……」
凛「後は二週間後の甲子園に向けて努力を……努力……」
凛「やーる気起きねぇにゃぁぁぁ!?」
凛(五月病にゃ……マジで何もする気起きない……)
凛「はぁ……かよちんが寝てる間に部屋忍び込んで手マンでもしようかな」
花陽「何で本人が隣にいるのにそういうこと言うの?」
凛「手マンかクンニしていい?」
花陽「駄目だよ、殺すまであるからね?」
凛(あの時頭をぶつけ意識を失ったかよちんは……試合後、特に問題なく起き上がった)
花陽『レイプ宇宙人のチップを取るときに脳味噌と頭蓋骨を弄ったから、衝撃ですぐ意識飛んじゃうんだぁ』
凛(とは本人の弁にゃ) 花陽「それに冗談言ってる場合じゃないよ。凛ちゃん、宿題にまっっっったく手を付けてないよね?」
花陽「甲子園行くまでに何とか終わらせたいって、私呼んだの凛ちゃんでしょ。早くやっちゃおうよぉ」
凛「それはそうなんだけど凛は五月病にゃ」
花陽「今は八月だよ?」
花陽「八月病だね」
凛「面白くない時のきらら系アニメにありそうな会話はやめようよ。宿題もいい感じに進んだし遊びに行かない?」
花陽「数学何問やったの?」
凛「3問」
花陽「3問?」
凛「凛としてはベストを尽くしたつもりだけど?」
花陽「ベストを?」
凛「あるいは」
凛「遊びたい遊びたい遊びたいにゃー!」ジタバタ
花陽「仕方ないなぁ……気晴らしも大事だし少しだけだよ」
凛「やったー! かよちん大好きにゃ!」ペロペロ
花陽「ぁっ……んっ……」 花陽「何処か行きたいところとかあるの?」
凛「んー……甲子園チップス見に行きたいにゃ」
※甲子園チップスとは甲子園出場選手や予選落ちした選手のカードが入ったチップスである。音ノ木坂が優勝した翌日には出てた。
花陽「あれどういうことなんだろうね。私達のカードも入ってるみたいだけど」
凛「予選落ちした選手のカードも入ってるみたいだしあらかじめ作ってたんじゃないの?」
凛「ほら、甲子園チップス最強カード一覧によると天下高校の柘榴選手がTier1にゃ」
『『奇術師』柘榴 攻100 防2500 東東京大会属性を持つカードを生贄に捧げることで相手のターンをスキップできる』
花陽「チートだよこれ」
凛「凛のカードはまだ調べてないけど多分最上位クラスな気がするにゃ」
花陽「あ……うん、そうだね」
『『月猫夜』星空凛 攻800 防1200 5ノーツの間特技発動率が4%上昇』。評価圏外。
凛「楽しみだにゃー」 街
凛「甲子園チップス1つしか売ってなかったにゃ……」
花陽「ま、まあ……それだけ人気ってことだよ」
花陽(これに凛ちゃん入ってる可能性低いし……出来れば一生自分の性能知らないで生きていってほしいなあ)
凛「早速開けるにゃ……あれ?」
花陽「どどどどうしたの凛ちゃん!? まさかクソザコナメクジみたいな凛ちゃんのカードが!?」
凛「いや違くて……というか凛のカードクソザコなの?」
凛「あそこ見てよ、スマホと景色交互に見ながらうろうろしてる人がいる」
花陽「迷ってるのかなぁ……この辺の道ややこしいし」
凛「声かけていい?」
花陽「いいよ。知ってる場所なら案内してあげればいいし……一応聞いとくけど」
花陽「少しでも帰る時間遅らせて、宿題やる量減らそうとしてないよね?」
凛「そんなわけないにゃ。凛は正義の人だよ、困ってる人を見捨ててはおけない性質なんだ」
花陽「初めて聞いたよ、それ」 「ええと……この道を」
凛「あのー……」
「きゃぁっ!? え、えっと!? な、なんでしょうか!?」
花陽「ピャアッ!?」
凛「かよちんまで驚かないで、収集つかなくなるにゃ」
花陽「ごめん」
「えっと……」
凛「ああ、いや。道に迷ってるように見えたから……凛達、この辺地元だからよかったら案内しようと思って」
「本当? よかった……ずっと迷ってたのよ、道がよく分からなくて」
凛「何処に向かってるの?」
「えっと、ね……」
「音ノ木坂学院っていう高校なんだけど、分かる?」 ―――――
「こんな偶然ってあるのね、まさか凛ちゃん達が音ノ木坂の生徒だなんて」
凛「それにしても、おねーさん何で音ノ木坂学院なんかに?」
凛「通ってる凛が言うのもあれだけど大したことない学校だよ? アルパカ臭いし理事長は風俗狂いだし」
「あんまり聞きたくない単語が聞こえたような気がするんだけど」
花陽「そうだよ! アルパカは臭くないもん!」
凛「いや臭いよ! 悪いと思って言わなかったけどアルパカ小屋の掃除した後とかさぁ!」
凛「シャツが、どぶに投げ捨てた牛乳雑巾みたいな臭いしてるんだよ!?」
花陽「えっ……そんなに……?」
「そっちじゃないんだけど……まあいいや」
凛「っと、あれにゃあれ。あれが音ノ木坂」 「ここが……ママの母校」
凛「にゃ?」
「ああ……えっとね、私のママがここの卒業生なの」
「私が産まれて少ししてから、パパの仕事の都合で静岡に引っ越しちゃったから……今まで見たことなかったんだ」
「たまたまこっちに来る機会があったから、一度見ておきたくて」
花陽「へえ……ところで」
「あっ、梨子ちゃーん!」
凛「にゃ!?」
凛(瞬間――感じたのは、身体が押しつぶされるような恐怖)
凛(振り向いた凛の目に映ったのは、梨子――恐らくは目の前のお姉さんの名前だろう――と叫びながら駆け寄ってくる五人の影)
凛(そのどれもが……真姫ちゃんに匹敵するほどの『野球オーラ』を放っている!) 梨子「皆……」
「音ノ木坂に向かうって聞いたのに、何処にもいないから焦ったでありますよー」
梨子「ご、ごめん。道に迷っちゃって」
「私達は無事神田明神にお参り出来たのだ!」
「あの聖雪姉妹に絡まれましたけど……『甲子園は遊びじゃない』なんて私達が一番分かってますわ」
「マリー達にかかればあの程度相手にもなりまセーン!」
「こっとんきゃんでぃえいえいおー」
「ルビィちゃんは残念だったね……」
「ルビィ……こんな変わり果てた姿になってもルビィは可愛いですわ……」ナデナデ
梨子「いや何があったの? 骨格レベルで変わってない?」
凛(……ただ話しているだけなのに、立っていられないッ! 凛太郎ッ!)
凛太郎(……なんにゃ? 久しぶりに呼んでくれたと思ったら……)
凛太郎(どえれぇクールな奴らがいるにゃ……!?) 凛(凛太郎なら勝てそう?)
凛太郎(タイマン(一打席勝負)なら何とか……ってとこにゃ。ただ……)
凛太郎(あの女はヤバい。凛、お前無意識に気付かないようにしてただろ?)
凛(にゃ……?)
ブワッ
凛「な……がっ……!?」
凛(何だ、この野球オーラ……真姫ちゃんより、いや、凛達九人の野球オーラを合わせても勝てない)
梨子「……」
凛(こんな奴の隣を凛は歩いていた……気付かなかった、本当に? この恐ろしいオーラを!?)
凛(まさか……意図的に隠していたの!?)
花陽「何してるの凛ちゃん」
「のけぞってるけど大丈夫?」
花陽「ごめんなさい……この子基本的に精神異常者なんです」 「ワオ! ソーキュートガールズね、梨子をここまで案内してくれたの?」
凛「イ、イエスファック」
梨子「ありがとうね、凛ちゃん、花陽ちゃん。おかげでずっと見たかった場所を見ることが出来たよ」
梨子「今度何処かで会ったらお礼させてね」
「早く帰ろうよー梨子ちゃん、お腹ペコペコだよ」
「さっさと旅館に戻るのだ!」
「しまうま」
「ルビィ……」
凛「はぇー……凄い集団だったね」
花陽「何処から来た人なのかな。梨子さん、って言ってたけど」
凛「さあ……」
花陽「ところで甲子園チップスまだ開けないの? 半分開いて止まってるけど」
凛「あ、うん。開けてみるにゃ……」 凛「あ」
花陽「え?」
『『魔槍』桜内梨子 静岡 浦の星女学院二年』
凛(桜内、って)
凛「……」
花陽「あの浦の星女学院の選手だったんだぁ……凛ちゃん?」
凛「ん、ああ……なんでもないにゃ」
凛(ママに聞きたいところだけど……まだ行方不明だし)
凛(ま……いいや。ママはママ、凛は凛だもん) 公式のせいでルビィが…
やっぱ拓瑠の本気見たかったよね >>814
球拾いほんとに死んでたしモブAの家族なんか受け入れてるし 更新頻度減ったし来ても量は少ないしネタ切れならもう辞めたら? ーーーー
甲子園 当日
実況『甲子園初日、初戦……音ノ木坂対福岡劇場! 試合はヒートアップしていますッ!』
しずく「ああ……『何故抗うの? 何故認めないの? 貴女は敗北者だと』!」
凛「あーもう! 集中力乱されるにゃっ……!」
実況『福岡劇場学院の試合は何度も見ておりますが……何というか野球というよりは、スタジアムを舞台にした演劇を眺めているような。そんな気になりますね』
しずく「オフィーリア……」
凛「凛はオフィーリアじゃ……無いっての!」シュッ
カァンッ!
凛「にゃっ!?」
ワーワー……
愛「音ノ木坂がまさか甲子園に出るなんてねぇ……。合宿の時は想像もしてなかったよ」
『異次元の標的』宮下 愛
花丸「そう? マルは順当に上がってくると思ってたけど」
『ブラックホール』国木田 花丸 愛「んー……あの時は大して強そうに見えなかったのになぁ」
愛「にしても皆結構見に来てるね、この試合。あのしずくって子そんなに注目されてるの?」
花丸「しずくちゃんも凄い選手だけど多分皆が見に来てるのは……」
侑「星空凛、でしょ?」
『魔術師』高咲 侑
愛「あれ、侑ちゃんじゃん。愛さんの親友の侑ちゃんじゃん?」
愛「甲子園の観戦でもしにきたの? 身体弱いんだし日陰にでも行けば? 日陰者だけにね」
侑「……中学の頃の話でしょ。今は身体動かしても平気よ」
かすみ「なんなんですかぁ、この失礼な人!? 侑先輩は日陰者なんかじゃ……!」
『ルネ・マグリット』中須 かすみ
璃奈「落ち着いてかすみちゃん。璃奈ちゃんボード『まぁまぁ』」
『ポーカーフェイク』天王寺 璃奈
璃奈「彼方ちゃん達が来れなかった分、私達がちゃんと試合を見なきゃいけないんだから。喧嘩してる場合じゃないよ」 愛「ふんっ……まだ許してないからね。愛さんを裏切ったこと」
侑「……許してほしいなんて言わないよ」
侑「お互い勝ち進めば準決勝で当たるよね。そこで証明してあげるよ、私は間違ってなかったってこと」
侑「……ま、簡単には勝ち進められそうにはないけど」チラッ
果南「いやいや……それにしてもびっくりだよ」
果南「普段なら試合なんて見に来ないじゃん、皆。それが四天王揃い踏みだなんて」
『現代の水ゴリラ』打振五輪羅高校 松浦 果南
鞠莉「果南こそ。いつもなら試合以外は常に海で泳いでるじゃない」
『尋ね人』浦の星女学院 小原 鞠莉
エマ「あはは……皆それだけ注目してるってことだよ。弱小高校を甲子園に導いた、星空真凛の娘にね」
『ミヒャエルの奇跡』聖ミヒャエル大学付属 エマ・ヴェルデ
聖良「正直に言いますと、その四天王という言い方が気に入らないんですよね」
聖良「聖良さんと愉快な三人組とでも呼び方を変えてください」
『雪砕き』函館聖泉女子高等学院 鹿角 聖良 理亞「姉様、流石にそれは横暴だと思う」
千歌「いいなー、千歌達も四天王とか呼ばれたいのだ」
曜「来年になったら呼ばれるんじゃない? 特に梨子ちゃんなんかは……」
ダイヤ「三年生になっても特に呼ばれない人もいますわ……」
善子「ふっ……現世での呼び名に固執するなんて、まだまだリトルデーモンとしての力が足りないようね」
エマ「善子ちゃん、初対面の人を悪魔扱いしたら駄目だよ? またシスターに怒られるよ」
善子「善子じゃなくてヨハネよ!」
千歌「自分が一番固執してるじゃん!?」
梨子「あはは……」
梨子(……そっか。あの時のあの子が……星空真凛の娘だったんだ)
梨子(私のママの右腕を壊した、あの女の娘……)
梨子(……勝ち上がってきたら、全力で潰してあげるわ)
『魔槍』桜内 梨子 凛「ママは『凛太郎に身体操られて海外に置き去りにされてた』とか言ってたし……」
凛「凛太郎は凛太郎で、皆に無茶苦茶な量の練習させるし! というか皆ボロボロになってたり、野球で人が死んだりしてるのこいつが裏で色々策を講じてたせいだったし!」
凛「女でも甲子園に出場できるよう、男子をレイプ宇宙人に差し出し……いや『男子の遺伝子が滅びた旧人類』と、凛たち『男子を作り出す家畜として創造された新人類』の対立を作り上げたのも凛太郎だったし……」
凛(甲子園が終わり次第……理亞ちゃんの『時空を越える球』で、第二次世界大戦で凛太郎を生き残らせ世界を改変してあるべき姿に戻さなきゃ……!)
しずく「何をブツブツ言ってるの?」
しずく「貴女のボールは私には通用しない……もう分かってるよね?」
凛「分かってるにゃ……さっきから散々打たれてるからね」
凛「今まで戦ってきた相手とは段違いに強い……」
しずく「嗚呼……それが分かっていながら何故抗うの? それとも何か対抗する術を持っているとでもいうの?」
凛「抗う術? そんなの決まってるにゃ」
凛「この一球に……」 確かにネタ切れ起こしてるよなぁと思ったんで一旦打ち切ります
甲子園編はあれば書き溜めして一括投下出来るように努力します ここまで読んでいただいたのに、こんな結末で申し訳ありません お疲れ様
気になる能力沢山あるし続き待ってるよ
楽しかった ゆっくり書きたいように書けばいいのに
辞めればとか言うやつはなんなん 楽しかった。甲子園編、期待してます。ひとまずお疲れ様です! キャラが終始壊れているくせに王道はきっちりおさえた名作でした
甲子園編待ってます ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています