【スペクタクル叙事詩】【構想2年】Kanan 〜潮騒の辿り着く場所〜【すべてのSSを過去にする】【号泣確約】
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この日も内浦の海は凪いでいた
ザザーン ザザーン
そんな海の上を一隻のボートが滑っている
ブロロロー
ボートには二人の男がいた
一人は筋骨隆々で日に焼け茶色い肌の大男
もう一人は華奢で透き通るくらい白い肌の青年
マイケル「松浦の旦那!あそこに妙なものが!」
操舵手のマイケルが10時の方向を指さす
そこには確かに大きな黒いカプセルが浮いていた
松浦と呼ばれた壮年の男は陽光を遮るため手を頭上にかざし陰をつくった
そして件のカプセルをこれでもかと凝視する 松浦「マイケル、あれに近づいてくれ」
マイケル「おのかした!」
ボートは進路を変え不審物へ一直線
空ではかもめ/cVσ 8 σVがきゅうきゅう鳴いている
松浦「これは一体……」
松浦がカプセルを回収しようと触れた時である
突如としてカプセルが自動的に開いた
プシュー
同時に煙を周囲にまき散らす
マイケルはそれをもろに吸いごほごほと咳を出す
しかし松浦は動じることなく煙が霧散するのを待った
そして彼は見た
カプセルの中に幼子が入っているのを 松浦「赤ん坊じゃねぇか!」
松浦はすぐ赤子をその腕で抱き寄せた
ハグゥ ハグゥ
赤ちゃんはこの阿呆どもの住む世界に誕生したことを嘆くかのように泣き叫んでいた
マイケル「何てこった!」
マイケルも負けじと絶叫した
松浦は不器用にあやすものの赤ん坊は依然として泣き続けた
マイケル「旦那、そいつをどうする気です?」
松浦「育てるさ。この老いぼれに今頃家族ができやがった」
ボートは乗員を増やし岸へ向かっていった
アババ
赤ん坊はこの日、初めて笑った 【第1部の主な登場人物】
果南:本作の主人公。17歳。海で漂流していたところをおじいに拾われる。
その正体は人とイルカの半妖《グリーン族》唯一の生き残り。
己が力《バイキングオブハート》が何のためにあるのか、なぜあるのか、その答えを知るため仲間と共に銀河を駆ける。
千歌:果南の幼なじみ。16歳。内浦にある伝統旅館〈十千万〉の三女。
明るく人懐っこい性格で、果南の手をたびたび焼かせている。
自分のことを平凡普通だと思っているが、実は138億年に一人生まれるとされる宇宙の調停者《姫巫女》である。
絵里:果南の近所で宇宙船屋を営むお姉さん。28歳。おじいとは気の合うチェス仲間。
小さいから果南の良き相談相手であり、千歌ともども妹のように可愛がっている。
しかし彼女の本当の顔は果南を監視し《運営》に情報を流しているスパイ。
エマ:果南の通う高校の友人。17歳。スイス人でおっとりぽわぽわな性格。
銀河鉄道が大好きで将来は自分も車掌になりたいと夢見ている。
果南の力が暴走した際に命を落としてしまう。
真姫:果南が通う高校の後輩。15歳。日本人離れした赤毛が特徴。
図々しくて能天気で馴れ馴れしい果南を当初は快く思っていなかった。
両親への反抗心から半ば強引ともいえる形で果南の旅に加わるが、その途中で牙をむく。
歩夢:果南の後輩であり千歌の親友。16歳。常に憂いを帯びた表情を浮かべている。
千歌のことが大好きで友情というよりはもはや恋に近い感情を抱く。
千歌の「奇跡だよー」に対し「起こらないから奇跡って言うんだよ」と言うのが定番。
海未:果南の武術の師匠。42歳。質実剛健、懇切丁寧な人物であり武術を通して弟子に人の道を教える。
お台場で果南と再会した時にはまっさきにその成長を喜んだ。
しかし自身の目的である地球人類抹殺のために果南を利用することを画策している。
花陽:エルフ《ホワイト族》の王妃。人間年齢21歳。民を慈しむ心を忘れない優しい女性。
夫とともに友好関係にあった《グリーン族》消失事件の背後を調査している。
スティーブ:花陽の夫であり《ホワイト族》の王。人間年齢25歳。若いながらも統治には定評がある。
多忙で銀河中を飛び回っているため、国は花陽に任せっきりで滅多に帰らない。
璃奈:《ホワイト族》の研究主任。人間年齢20歳。常に部屋にこもりきりで研究に没頭している。
その発明品は中々侮れず、果南の危機を幾度も救うことになる。
皇帝:銀河の覇権を握る最高権力者。年齢不詳。常に覆面をしておりその顔を見た者はいない。語尾に必ずニコとつける不可解な人物。
鞠莉:皇帝の側近。人間の姿は仮でありその正体は伝説の神獣麒麟。千歌が《姫巫女》だといち早く見抜いた。
おじい(松浦):果南の育ての親。77歳。ダイビングショップ〈わかめちゃん〉を経営している。いずれは果南に店を継がせたいと思っている。
マイケル:〈わかめちゃん〉の従業員。37歳。果南に恋心を抱いている。 第1部 悲劇の誕生
《17年後》
おじい「果南」
果南「なに?」
おじい「お前ももう17歳。そろそろ打ち明けようと思うからそこに座れ」
果南「わかった」
果南は座布団の上にあぐらをかく
おじいも腰を下ろし果南の顔をまっすぐ見据えて口を開いた
おじい「実はお前は俺と血がつながっていねえ」
果南「え……?」
おじい「お前が赤ん坊だったころ海で拾って育てたのさ」
おじい「お前の両親が事故で亡くなったというのも真っ赤な嘘だ」
おじい「本当の両親が生きているのかも俺には分からん」
果南「……」
おじい「ショックか?」
果南「うーん、ちょっと、ね」
果南「でも本当はそんなことどうでもいいよ」
果南「たとえ血がつながっていなくても、私にとってはおじいはおじいだし」
果南「育ててくれたこと感謝してる」
おじい「俺もだ。お前を拾えたこと、感謝してる」
そう言って二人は同時に吹き出した
それは確かに幸福の笑いだった 果南「あ、おじいごめん。今日は千歌と沼津まで買い物に行くんだった」
おじい「話は終わりだ。いってきな」
果南「うん、いってきます」
果南が家を出た途端、一人の女性が声をかけた
絵里「あら果南、お出かけ?」
果南「あ、絵里ねえちゃん。うん、千歌とね」
絵里「ふふ、相変わらず仲いいわね」
果南「まあね、子どものころからの付き合いだし」
果南「うわあっと、絵里ねえちゃんごめん。早くいかないと約束の時間に遅れちゃう」
絵里「呼び止めてごめんなさいね、いってらっしゃい」
果南「いってきまーす」
果南は駆け足で去っていった 絵里「さてと、仕事に戻りますか」
絵里は果南の実家、ダイビングショップ〈わかめちゃん〉の近くで宇宙船屋を経営している
時は西暦6716年。人類は天の川銀河の至る所にその跡を残していた
そのため宇宙船の需要は途絶えず、絵里は左うちわで暮らしている
たびたびおじいに金を貸すがそれはまったくの善意からだった
絵里「終わったら松浦のおじ様に一局申し込もうかな」
絵里とおじいはチェス仲間である
二人とも中々の腕前だが、実力は一歩絵里が優れていた
そのためおじいがチェックメイトされたときに癇癪を起すこともあったが、心優しい絵里は笑ってそれを流した
こうして絵里が松浦家に出入りしているうちに自然と果南とも親しくなった
それ以来、絵里は果南の良きお姉さんとして今日に至っている flow 〜水の生まれた場所〜のパクリタイトルは草 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています