穂乃果(24)「ありがとうございました、またのお越しを〜!」
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
何年か前にエタッてしまったSSです
そこまで行くのにだいぶ長いので、以前に読んでくださってた方は退屈かも知れませんがお付き合いください ジジジツ……パッ
秋穂「えへへ、似合ってる…かな?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
希「じゃ、そろそろ解散しよっか」
秋穂「あ、待って!希おばちゃん!」
希「また悩み事があったら連絡してきなよ」スッ
希「……でも、最も適当な相談相手は一番身近にいるって事、忘れたらあかんよ?」
秋穂「……大丈夫、わかってる」
希「よし!じゃあおやすみ、気をつけて帰るんよ?」
秋穂「希おばちゃんもね」
希「ちゃんと海未ちゃんと仲直りするんよ?」
秋穂「……うん、がんばる」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
秋穂「……とは言っても、海未おばちゃんも流石に家に帰ってるだろうしなぁ」
秋穂「……こんな夜遅くに行っちゃ迷惑だし、明日にしよっか」 秋穂「さてと…じゃあ、そろそろ帰ろっか」
秋穂「この前の公務執行妨害の件もあるし、補導とかされたら面倒くさいもんね」
秋穂「よっこいしょっと」
ザッ
秋穂「え?……!」
海未「………」
秋穂「あ、あれ……海未おばちゃん、今から帰るの……?」
秋穂「ちょっと遅くない…?」
海未「………ですか」
秋穂「え?」
海未「……ッッ!!何やっていたんですか!!」
秋穂「!!」ビクッ
海未「…………」
秋穂「………ごめん、なさ」
ダキッ!
秋穂「………っ!」
海未「どれだけ探したと思っているんですかっ…!」
秋穂「海未おばちゃん……ごめん……なさい、本当にごめん……」
海未「……許しません」
ギュッ… スタ…スタ…
秋穂「あ、あのさ…海未おばちゃん…」
海未「どうしました」
秋穂「…今日のこと、ホントにごめんね」
海未「…いえ、私も言いだすのが唐突でしたし、こちらにも落ち度はあります…。だから、もういいんですよ」
秋穂「そ、そっか……あ、ありがと……」
スタ…スタ…
秋穂「(…改まって言うと、なんか照れくさいなぁ…)」
ザッ、ドスッ!
秋穂「あぷっ!!?」
海未「え!?」
秋穂「イテテ……きゅ、急に止まらないでよ!」
海未「止まらないでって……何を言ってるんですか、もう着きましたよ」
秋穂「え?あっ…もう家か」
秋穂「たはは…ご、ごめん…!」
海未「もう…」 海未「では…私はこれで」
秋穂「えっ…」
海未「明日も学校があるんですから、早く寝るんですよ?」
秋穂「待って!あ、あの海未おばちゃん…」
海未「…?まだ何か…?」
秋穂「え、えーと…その…今日だけでいいから…ちょっと、泊まっていってほしいなぁ…なんて…///」
海未「……あなたはもう高校生なんですよ?」
秋穂「うっ……知ってるよぉ」
海未「…フッ…冗談ですよ、早く上がりましょう」
秋穂「えっ…?あっ、ありがと!」
海未「……ですが、私が泊まる以上は夜更かし禁止です!」
秋穂「うぇぇ!?」
海未「当然です!さっき言ったでしょう!明日も学校があると!」
秋穂「ぐ、ぐぬぬぅ〜!!(ぜ、絶対遅刻できないっ!)」 ・
・
・
ドサッ!!!
曜「いてっ……!!」
ルビィ「あうっ……!」
ガチャン…ガチャリ!!
曜「えぇ!?ちょ、ちょっと!!」
曜「〜〜!何さ〜!!変な施設で目覚ましたと思ったら!!今度はこんな薄汚い牢屋なんかに連れてきてー!!」
曜「……ッッ!!ふーざーけーんーなー!!!!!」
ルビィ「よ、曜ちゃん、とりあえず落ち着いて…」
曜「……なんなのもう、早く千歌ちゃん達と会いたいね」
ルビィ「うん……でも、もうルビィは何が何だか……」
曜「あはは…私もだよ…」 曜「…ここってご飯とかあるのかな?」
ルビィ「えっ!?そ、そんな……もしもこなかったらルビィ達……!」
曜「……餓死」
ルビィ「うひいぃ〜!」
曜「いや、大丈夫だよ」
ルビィ「へ…?ほ、ホントに?」
曜「うん!」
ルビィ「なんで大丈夫ってわかるの?」
曜「え?うーん……なんとなく……だけど」
ルビィ「うひいぃ〜!」
曜「ご、ごめんね!ルビィちゃん、適当言って!」
「くるわよ」
曜&ルビィ「!?」
「ありがたいことに…しっかりと三食、ね」 曜「……今、前の部屋から」ボソボソ
ルビィ「声が聞こえたよね?」ボソボソ
ルビィ「それに日本語だったよ!」ボソボソ
曜「うん、しかもかなり流暢だった…って事は日本人?」
曜&ルビィ「・・・」
曜「あ、あの!」
・・・シーン
曜「あれ?」
キィー
曜「…?(扉が開く音?)」
・・・ドスッ!!!バキッ!!!
曜&ルビィ「……!!!」
「〜〜〜〜〜!!!!! 」
「かはっっ……!!」
ルビィ「……〜〜!!」ブルブル…
曜「だ、大丈夫……大丈夫だからねルビィちゃん……」ポンポン
曜「(次は、私たちの番……なのかな……?)」バクバク ルビィ「はっ…はっ…こない…のかな?」
曜「大丈夫……みたいだね」
ルビィ「う、うん…」
曜「……あ、あの!すみません!」
・・・シーン
曜「……あ、あの」
・・・シーン
曜「おかしいな、連れて行かれちゃったのかな…」
ルビィ「いなくなっちゃった…?」
曜「うん、返事がない…」
曜「(……死んでないよね?)」 -20分後-
曜「」ボー
「何?」
曜「えっ!?…あっ」
曜「(い、今なんだ…呼んでからの時差がすごいな)」
曜「あの!ここってどこなんでしょうか?というかここはなんなんですか…!?」
「プリズン」
曜「プリズンってことは…牢獄?」
ルビィ「ろ、牢獄って…ルビィ達、何も悪い事はしてないんです!」
「……達か、やっぱり二人いたのね」
「じゃあ、あと二週間ってところね」
曜「二週間…?二週間ってなんの事ですか?」
「殺されるまで」
曜&ルビィ「!!!!」 ルビィ「こ、殺されって…」
ルビィ「うっ、あうぅ……」
ルビィ「」バタッ
曜「あっ!る、ルビィちゃん!!」
「その牢屋、今までも何人か入って来る子がいたわ」
「人は……余命が二週間とわかった時、何をするんでしょうね」
「教えて欲しい?」
曜「うっ…い、いえ…」ゾクッ
曜「…な、何か助かる方法はないんですか?」
・・・シーン
曜「(まただ……何で急に黙るんだろ……)」
・・・ザクッ
曜「……?なんの音?」
曜「ルビィちゃん…?」
ルビィ「ううっ……あうぅ……」グテッ
曜「違う、ルビィちゃんじゃない…」
ドンッッッ!!!
曜「うぇっ……!?」
モクモクモクッ……
曜「こほっ…げほっ…えぇ…?な、なに…?」
「……いいわ、助かる方法、教えてあげる」
曜「……あ、あなたが……前の部屋の?」
「その代わり、手伝いなさい」
曜「えぇと…あの、お名前は…」
「私?私は…そうね…」
絵里「9番よ」 曜「9番って本名……なわけないですよね……あはは」
曜「それで、助かる方法って?」
絵里「脱獄するのよ」ガッガッ
曜「脱獄……」
絵里「向かいの牢獄からここに来るまで8年もかかったわ」
絵里「目と鼻の先……たかだか直線1mの距離で8年……」
曜「そんなに大変だったんなら、わざわざこの部屋に来る必要はなかったんじゃないんですか?」
絵里「いいえ、ここは構造上、最高の脱出ポイント……どうしても一度ここに来る必要があった」
絵里「……あなた達、ツイてるわよ?あと1日でも遅く投獄されていたら、私は一足先に脱獄して……あなた達は予定通り……殺されていた」
曜「」ブルッ
絵里「………」ガッガッ
曜「そ、それってスプーンですよね?まさかそれで掘り続けてきたんですか?」
絵里「……えぇ」
絵里「さっ、手伝ってくれんでしょ?私は掘り続けるから、あなたは看守が来ないか見張っておきなさい」
曜「あ、はい!」 ガッガッ…ガッガッ
曜「……普通は無理ですよ」
絵里「………」ガッガッ
曜「そんな小さいスプーンで脱獄しようとするなんて……どんなに根気がある人でも、普通は諦めますよ」
絵里「………」ガッガッ
曜「…………」
絵里「あの子は最後まで諦めなかった」
曜「え?」
絵里「どんなに絶望的な状況でも、どんな困難が待ち受けていようと、成功する可能性がほとんど0に近くても、あの子は絶対に……諦めなかった」
ガッ!!ガッ!!
曜「………」
絵里「体育館…」
曜「……?」
絵里「例えば体育館でファーストライブをやって、お客さんが一人も来なかったら…普通、辞めると思わない?ガッガッ
曜「……あっ」
絵里「でも、あの子は決して諦めなかった」
曜「もしかして、あなたは……」
絵里「………」ガッガッ
曜「μ'sの……絢瀬絵里さん……?」
絵里「………」
絵里「…えぇ」ガッガッ 曜「やっぱり…」
絵里「……心変わりしたかしら?犯罪者の片棒を担ぐのは嫌?」
絵里「嫌なら辞めてもいいわよ、私はあなたという障害物を乗り越えて、必ず脱獄してみせる」
曜「いいえ!逆に信頼出来ました!」
絵里「やっぱ……って、え?」
曜「正直、最初は不信感マックスだったんですけど……μ'sの絵里さんなら信用信頼、全面協力、圧倒的ヨーソローです!!」
絵里「……っ、ハラショー、気に入ったわ」
絵里「あなた、名前は?」
曜「渡辺曜です!ちなみにこっちでのびちゃってる子が黒澤ルビィちゃんです!」
絵里「曜、ルビィ……いいわ、やってやりましょう」
曜「はいっ!」 ガッガッ、カッ!
絵里「!!」
曜「あっ!」
絵里「……ハラショー、こんなに早く通じるなんて」
絵里「よし、行くわよ」
曜「はい、あ…ルビィちゃん…」
絵里「……私が背負う義理はないんだけど」
曜「で、ですよね」
絵里「まぁ、いいわ……寄越しなさい」
曜「は、はい…なんか…ごめんなさい」
絵里「よいしょ……っと」
ルビィ「うっ……うぅ〜……」
絵里「行くわよ、ついてきなさい」
曜「ヨーソロー!」
絵里「………(この子、緊張感のキの字もないわね…)」 曜「なんかこういうダクトを通って脱出って、映画みたいでカッコいいですね」
絵里「……っ」
ズリ…ズリ…
曜「それにしても、真っ暗ですね…」
絵里「と…当然よ…ここはこの刑務所の最深部…ライトなんてないんだから…」
曜「ですね…」
絵里「……え、えぇ」
曜「絵里さん?なんか…震えてる…?」
曜「どうかしました?」
絵里「べ、別に…」
絵里「……ッ!!シッ!」 ピタッ
曜「え?」
絵里「見て、前方の下の方から、かすかに明かりが見えてるでしょ?」
曜「あっ、確かに…」
絵里「おそらく、管理室か警備室か何かね」
絵里「あの部屋から避難路に出て、そのあと海に出る」
曜「でも…話し声が聞こえる、人がいるって事ですよ」
曜「ここは遠回りしてでも安全なルートに行く方が得策じゃないですか?」
絵里「ダメよ、私たちに遠回りしてる時間なんてない」
絵里「今この瞬間に私たちが脱獄した事がバレて、警備に人を回されている可能性がある」
絵里「下の部屋のヤツらが談笑しているのを見ると、まだバレてはいないみたいだけど…」
絵里「一刻も早くこの刑務所から出るに越した事はないわ」
絵里「もし警備に人を回されたら詰みよ」
曜「そ、そうですよね…」 〜〜〜ペチャクチャペチャクチャ
絵里「……3人か」
絵里「私が先に降りてあいつらを仕留めるから、曜はここで待ってなさい」
曜「え、一人で大丈夫なんですか?」
絵里「大丈夫よ、隙を見て出るから」
〜〜〜ペチャクチャ
絵里「(こっちには気づいてない……今ね)」
スッ…
ルビィ「うっ……あれ……ここは……曜ちゃん?」
絵里「!!?」
曜「あっ…!!」
ルビィ「って……え、えぇ!?みゅ、μ'sの絵里……さん……!?えっ……えっと!」
絵里「(……!!!んもぅ!なんて間の悪い子なの!)」
「誰かいるのか!?」
絵里「(気づかれた…!当然ね……)」
絵里「曜、ルビィ、そこで待ってなさいよ!」バッ
ルビィ「こ、これって…夢なのかな」
曜「夢じゃないよ…もう、ルビィちゃん起きるタイミング悪いよ〜…」
ルビィ「あうっ…な、なんか…ごめんなさい…」 スタッ
絵里「…っ!」キッッ!
看守1「き、貴様っ!」
警備員「コイツ、なんで……!!」
看守2「取り押さえろ!」
ドスッ、バキッ、ドスドスドス!!!
看守&警備員「」
曜「す、すごっ…」
ルビィ「ほわぁ〜…か、かっこいいなぁ〜…///」 曜「YOUっと!」スタッ
ルビィ「た、高いよぉ…」
曜「ルビィちゃん降りられる?」
ルビィ「こんなの…む、無理だよぉ…」
絵里「来なさい」
ルビィ「え?」
絵里「私が絶対に受け止めてあげるから、早く来なさい」スッ
ルビィ「は、はい!え、えっと…えいっ!」
ポフッ
絵里「……ね?思っていたよりも、怖くなかったでしょう?」
ルビィ「は、はい…///」
ルビィ「あ、あのなんでエリーチ……絵里さんが……」
曜「それは私が説明してあげるよ!」
絵里「曜、説明するのもいいけど、懐中電灯…そうね、あとビニール袋も探してちょうだい」
曜「よしきた!ヨーソロー!!」 カクカクシカジカデ〜
エェ!!!ルビィ、エリサンニオンブシテモラッテタノ!?
絵里「」キョロキョロ
絵里「……!」
絵里「この手紙…」
絵里「………」シャッ、ピラッ
絵里「………」
【前略、おばさん、お元気ですか。ここまでしらみ潰しに各地方の刑務所に手紙を書いていますが、果たしておばさんの元に届く日は来るのでしょうか。
届いたとしてもやはり、この手紙も検閲され、おばさんの目に通すことなく処分されてしまうのでしょうか。
……届いて欲しい、どうしたらいいか教えて欲しい。
私も成長して、色々行動できるようになりました……そのせいか警察にマークされつつあります。
私の友人が警察官が人を殺すところを見たと言うのです。やはり最早警察なんてあてになりません。
友人を助けたい…でも、どうすればいいかなんてわからない。
相談はする。だけど正直、海未おばちゃんにはこれ以上迷惑をかけられません。
……どうしたらいいんだろう、絵里おばさん。
・・・高坂 秋穂】
絵里「……秋穂」 曜「絵里さん、見つけましたよ!」
絵里「……」クシャ
絵里「そう、なら行くわよ」
タッタッタッタ
曜「でも…なんで海に出ないとダメなんですか?陸を行った方が、見つかったとしても小回りがきくんじゃ?」
ルビィ「た、確かに……それにもし海を行くとしたらルビィ……」
絵里「あなた達、ここが何なのか知らないで連れてこられたの?」
曜「え、刑務所ですよね…?」
絵里「そういうことじゃなくてよ」
絵里「……私も陸があるんなら陸を行きたい。でも、ここの周りには陸なんてないのよ」
曜「あっ…もしかしてここって、海に囲まれた島とか?」
絵里「違う…ここは船なのよ」
ルビィ「ふ、船…ですか?」
絵里「えぇ」
曜「でも絵里さん、長い間拘留されてたんですよね?」
曜「なんで船ってわかったんですか?」
絵里「ここは環境劣悪に加えて施設の老朽化、設計も杜撰だから頻繁に時化が起きては大きく揺れる」
絵里「まっ、そのおかげで脱獄出来るんだけど」 スタ、スタ、スタ、スタ
曜「……どれだけ歩いたんだろう?ずっと下り続けてる、結構遠いんですね」
絵里「……ほんとにね」
ルビィ「船内にも車道ってあるんだね…」
絵里「」ピタッ
ボフッ
ルビィ「アウッ…!!」
ルビィ「ご、ごめんなさ……!あ……」
曜「絵里さん?急に止まってどうしたんですか……って」
絵里「………」
曜「こ、これは……」
ザパァ…
ルビィ「し、浸水してる…」 絵里「……曜、ビニール袋を貸して」
曜「え、あ…はい」
絵里「」パシッ
カチカチッ
絵里「これで懐中電灯も半防水にはなるわ、よし…」
絵里「行くわよ、どっちにしたってこの船はもう終わり」
曜「え?」
ルビィ「行くって…こ、ここを行くんですか!?」
曜「この先どんどん水かさが増えていきますよ!」
絵里「…それがなに?」
曜「え…」
絵里「だから諦めろっていうの?」
曜「いや、ち、違うんです……ルビィちゃんは……あまり泳ぎが上手くなくて……どこかもわからない海のど真ん中で泳がせるなんて流石に……」
絵里「……あなたは?」
曜「私は…泳げます…」
絵里「そう…なら、あなただけ来なさい」
曜&ルビィ「!!!」 曜「え、絵里さん?冗談ですよね…?」
絵里「……あなた達、何か勘違いしていない?」
絵里「私があなた達を連れてきたのは仕方なく……そう、脱出する最中で偶然出くわしたからなのよ」
絵里「仕方なくなの…」
絵里「……早く決めなさい、ついて来ることに関してはダメとは言わない」
曜「……私がルビィちゃんを担いで」
絵里「ダメよ、万が一の時あなたは絶対にその子を見捨てようとしない」
絵里「あなたが捕まると私が捕まるリスクも高くなる」
絵里「……取捨選択は重要よ、私にも最重視しているものがある」
絵里「……あなた達まで救うなんて、そんなおとぎ話はないわ」
絵里「私は誰も……誰一人だって救えなかったんだから……」
亜里沙『お姉ちゃん♪」
穂乃果『μ'sに入ってください!』
ミカ『絵里先輩!』
絵里「…………」 絵里「……曜の気持ちは多分変わらない、あなたを置いては行かない」
絵里「もしあなたがここに残るなら、きっと曜も…」
曜「………」
絵里「……選びなさい、ここに残って大人しく殺されるか、不得意な事でも頑張って私たちと逃げるか」
絵里「……この船は沈没するわ、どっちにしても残ったら死ぬ、それまで奴らに何をされるかわかる?」
ルビィ「……え、えっと」
絵里「ここの奴らはクズよ、私の歳でも欲情して身体を求める…」
ルビィ「うっ……」
絵里「あなたはまだ若い、必ず迫られるわ」
ルビィ「る、ルビィは…」
ルビィ「(ルビィ…やれるのかな…途中でダメになったら二人に迷惑をかけるんじゃ…)」
ルビィ「(もし、やり遂げられなかったら…)」
ポンッ
ルビィ「……!」
絵里「……泳ぎが苦手なら、私が出来る限りのフォローをしてあげるわ」
ルビィ「……や」
絵里「私たちのリーダーは…最後までやり遂げたわよ?」
ルビィ「や、やります!行きます!」
曜「ルビィちゃん……!」
絵里「決まったわね、行くわよ……曜、私が先導するからあなたはルビィを見ててあげなさい……」
曜「あの…ルビィちゃん、大丈夫ですかね?」
絵里「泳ぎなんて気持ちの問題よ、今のあの子なら人並みに泳げるわ」 ・
・
・
-神田明神-
希「ふぅ…葉っぱさんがようけ落ちてて、掃除もやりがいがあるなぁ〜」
希「」サッサッ
ザッ
希「…ん?」
希「おやおや、これは珍しい参拝者やね」
海未「……希」
希「久しぶりだね、海未ちゃん」
海未「希も…元気そうで何よりです」 ズズッ…
希「……ふぅ、お茶がしみるね」
海未「……」ズズッ
コトッ
海未「……そうですね」
希「秋穂ちゃんに聞いたの?」
海未「はい…なるべくメンバーとは接触しないように、とは思っていたんですが…」
希「……ウチ達二人はもうほとんどマークされてない」
海未「未だに大晦日になると、あの時の特集番組が放送されますが……主犯格は穂乃果と絵里の二人になっています」
希「同じμ'sメンバー、ウチ達の事もきっと“あいどる”側に割れてるんだろうけどね」
海未「にも関わらず、私たちのことが大々的に報道されないのはやはり…」
希「秋穂ちゃんの存在やろうね。でも…ウチも海未ちゃんも秋穂ちゃんを盾にして身を潜めてたんじゃない」
海未「はい、それは…理解しているつもりです…」 海未「少し前からボノカ一派という過激派集団が名を馳せているようですが……これは」
希「うん、ウチも噂には聞いてた……きっとμ'sの誰かが……」
海未「……絵里でしょうか?」
希「……絵里ちは今も収監されてるはず……たぶん絵里ちじゃない」
海未「となると…」
希「…何にしても、それなりの戦力があるみたいだし」
希「ボノカ一派に協力するのもありなんかもね」
海未「希…動くんですか?」
希「秋穂ちゃんやみんなに任せっぱなしって訳にはいかないやん。それに、もう秋穂ちゃんも自立できる歳なんやし」
海未「はい、そうですよね…」
希「ウチ達と一派、あとは……」
希「……絵里ちを」
・
・
・
ザパァ
絵里「……っ」
ルビィ「はぁはぁ……ひぃひぃ……ごめんなさい、ルビィはもうダメです……」ブクブク
曜「わわっ!ルビィちゃん!?」
絵里「……大丈夫そう?」
曜「いえ…これは…」
絵里「………そう」 ガシッ
ルビィ「もう…はっ…はっ……体力の限界ですぅ…」
曜「私の感覚だと…もう2kmは泳いでますよ」
絵里「……それはマズイわね」
曜「はい、だから少し休憩して…」
絵里「いいえ…休憩は無しよ、一刻も早くこの冷たい海水から上がらないと命が危ないわ」
絵里「行くわよ」
曜「そ、そんな…待ってください!」
絵里「……あなたは何のために脱獄を?」
曜「え?そ、それは……みんなと会うためです」
絵里「私は……あの子の仇を取らないとダメなの」
絵里「こんな所で立ち止まってなんかいられない」
ジャプ…
曜「うぅ…」
ルビィ「はぁ……ふぅ……い、いいよ曜ちゃん……!ルビィは大丈夫だから!」
曜「ルビィちゃん…」
ルビィ「行きます!!」
絵里「……えぇ、行きましょう」 ザプッ…ザパァ
曜「!!」
曜「足がつく…」
絵里「……そりゃあそうね、だってここで」
曜「え……?あっ……」
絵里「トンネルは陥落してる」
ルビィ「あっ……あぁ……花丸ちゃん、お姉ちゃん……みんな……」
曜「行き止まりって…どうするんですか、絵里さん…」
絵里「…………」
曜「……そんな」
絵里「……5分後に戻ってくる」
曜「え?」
絵里「下の避難用通路は無事かもしれない、懐中電灯で下を照らしてて」
ルビィ「それって…」
絵里「陥落箇所がここだけなら、下の避難路をくぐり抜けて向こうの道路に出られるかもしれない」
絵里「大口叩いた以上、あなた達は死なせないから…」
バシャン!!!
曜「!!絵里さん…!!」 ルビィ「……うっ」ブルッ
曜「ルビィちゃん…大丈夫?」
ルビィ「う、うん…」
曜「身体が冷え切ってる……絵里さんの言う通りだ、休憩する時間なんてなかった……」
ルビィ「うん……だね……」
曜「私、絵里さんのこと、少し薄情だなって思ってたけど……考え違いだったのかも」
ルビィ「ルビィは最初からやっぱり優しい人だなって思ってたよ」
曜「え、そ、そうなの?ルビィちゃん、結構キツイ事言われてたから……てっきり、ショック受けてると思ってたよ」
ルビィ「確かにグサってくることもあるけど、それはルビィの事を本当に思ってくれてるから言ってるんだって思うの」
ルビィ「それにさっき、ルビィが降りられない時も優しく受け止めてくれたし……泳ぐことだって、絵里さんに後押しされなきゃ……ルビィ、残ってたかもしれない……」
曜「……そっか」
曜「理解してるつもりで、本当はなにも理解してないや、私……やっぱり……」
曜「バカ曜だ…」 ルビィ「それにしても絵里さん…遅くないかな…」
曜「そうだね、ちょーっと遅いかもね…」
曜「(もう10分以上は潜ってる、普通に考えてこんなに長くは……)」
曜「……私ちょっと行ってくるよ」
ルビィ「あっ、ルビィも!!」
曜「うぇ!?だ、大丈夫?」
ルビィ「うん、少しでも絵里さんの役に立ちたいもん!」
曜「……わかった、行こう」
曜「ビニール袋に空気を入れて…と」
曜「ルビィちゃんは懐中電灯で前を照らしてて、私の手…離しちゃダメだからね?」
ルビィ「わ、わかった!」 曜「スゥー…ハァー」
曜「よし!行くよ!ルビィちゃん!」
ルビィ「うん!」
ザパンッ!
ブクブクブグク…
曜「(ここを絵里さんは通ったんだ…)」
曜「(……やっぱり、μ'sのメンバーは大きく見えるや……千歌ちゃんが尊敬するのも頷ける)」
曜「(千歌ちゃんに会いたい…みんなに会いたい…)」
曜「(もう少しで…)」
グイッ
曜「!?」
曜「(や、ヤバイよ!何か引っかかった!)」
曜「……〜〜!!!」ゴボゴボゴボ…
ルビィ「(曜ちゃん!?)」
曜「(や、ヤバい……ルビィちゃんももう息が続かないはずだ……)」
曜「(先に行って!)」ブンブンッ
ルビィ「(え、先に行けってこと!?)」
ゴポゴポ
曜「(い、いいから!!!)」
ルビィ「(曜ちゃん…)」コクッ 曜「(ダメだ…!!やっぱ…取れない!!)」
曜「ゴポォ…!!!」
曜「(もう…息が…)」
曜「カハッ……!!」
曜「(みんな……ごめん……)」
ゴポゴポゴポゴポ……
・
・
・
・
・
ザパッ!!!!
曜「プハッ!!」
曜「ゲホッ…ゲホッ…!ガハッ…!!」
絵里「……っ、待ってなさいって言ったでしょ!!」
曜「え、絵里さん……ごめんなさい」
絵里「……死なせないとも言ったでしょ?ルビィが私を呼んだのよ」
絵里「感謝しときなさい」
曜「ルビィちゃん…」
ルビィ「ごめんね曜ちゃん!ルビィに気を配ってたせいで…」
曜「いやぁ…私の不注意だよ…ごめん」
曜「絵里さん……本当にありがとうございます」
絵里「…もういいわよ、それよりあれを見てみなさい」
曜&ルビィ「え?……あっ!!」
絵里「光よ」 曜「瓦礫ばっかりだ…」
絵里「たて穴ね…相当破壊されてるけど、多分トンネル内に空気を送る施設だったんでしょうね」
ルビィ「でも、外だ…!」
曜「私たち…!」
ルビィ「やっと自由に…!」
曜「なれるんだー!!」
ウオオオオォーーー!!!
絵里「」グイッ
曜&ルビィ「うわっ……!」
ドスンッ!!
曜&ルビィ「ぐえっ……!」
曜「え、絵里さん…?な、何を…あイテテ…」
絵里「今、地上に出るのは危ないわ。上を見てみなさい、私は久方ぶりに外に出るから光を直視出来ないの」
ルビィ「上…?」
曜「あっ」
ババババババババババ!!!!
絵里「……どう、ヘリが飛んでない?」
曜「は、はい……飛んでます……それも無数に……」 絵里「しばらくはここに身を隠しておいた方がいいわね」
ルビィ「全部、る、ルビィ達を捜して…?」ヒヤッ
ルビィ「ルビィ達、そんなに悪い事したって思われてるの…?」
曜「イヤ…違うよルビィちゃん、このヘリは多分私たちを捜してるんじゃなくて…」
曜「……」チラッ
絵里「………」
絵里「その通りよ、このヘリが捜してるのはあなた達じゃない……私」
曜「絵里さん……μ'sの件は私たちもある程度知ってます、あれは全部真っ赤な嘘なんですよね?」
絵里「………」
曜「え、絵里さん…?」
ルビィ「μ'sは…絵里さんはいったい何をしたんですか…?」
絵里「………」
絵里「さぁ、本当に…」
絵里「……何をしたっていうんでしょうね」 絵里ってこんなに辛い目に遭ってたか
読んだはずなのに忘れてしまってた ・・・2019年の12月31日。あなた達がまだ学生だった頃、私たちは・・・世紀の大悪党に仕立て上げられようとしていた。
ザッ
穂乃果「行こうか・・・人類を・・・世界を救うために」
あの子はそう言って他のメンバーを鼓舞したわ。
空には何機ものヘリが、地上には何両もの戦車が、なす術もなく右往左往していた。
道路には無数の死体が転がり、中にはそれを見て嘔吐するメンバーもいた。
希「ロンドンにパリにニューヨークに北京、どこもウィルスで大パニックやって……」
真姫「世界中の反政府組織が手を組んだ同時多発テロで……」
海未「その元凶であり、すべての黒幕が……」
穂乃果「……私たち、μ'sって事かぁ」
穂乃果はどこか呆れにも似た表情を浮かべたあと、軽く笑ってみせた。
そしてその後、穂乃果は車に乗り込み、ロボットの元へと向かったわ。 海未「穂乃果、大丈夫でしょうか…」
絵里「穂乃果は何も考えずに動くから…不安はあるわね」
真姫「え?何言ってるの、そんなのエリーもよ」
絵里「フッ…私も?」
真姫「いつも誰かさんの思いつきで苦労させられるのは、この私なんだから」
凛「真姫ちゃんも自分一人でやろうとする所があるから…今回、無茶しそうで怖いにゃ」
真姫「い、今…私の事はいいでしょ!」
ことり「……クスッ、みんな変わってないね……よし!じゃあ絶対にこの後みんなで会おうね!」
「おーう!!!」
海未「では、行きましょうか」 絵里「………」
海未「……?」
海未「絵里…?みんな行ってしまいましたよ?私たちも…」
絵里「……えぇ」
海未「……絵里らしくないですね、怖気付いたんですか?」
絵里「……えぇ、怖いわ」
絵里「ことりがああ言った手前黙ってはいたけど…」
絵里「この戦い、誰かは絶対に死ぬ……それが怖い」
日々訓練を受けている自衛隊でも歯が立たないのに、ただの一般人のみんなが、この死地を乗り越えられるわけないと……私は思っていた。
海未「……それは、わからないじゃないですか」
海未も分かってはいたんでしょうけど、それを認めようとはしなかった。
絵里「それが私か、穂乃果か、にこか、凛か、誰かなんてのはわからない、もしかしたら全滅だってありえるもの…」
海未「………」
絵里「でも海未…あなただけは死んじゃダメ、深追いはしない事…あなたは秋穂ちゃんを…秋穂を守りなさい」
海未「!」 絵里「私たちに何かあったとしても、次代に繋ぐために……秋穂を……私たちの希望を守るのよ」
絵里「いいわね?」
海未「……何が希望ですか……負ける事を前提にして話を進めないでください!!」
絵里「……海未、穂乃果から直々に言われたんでしょ?何かあったらあなたに預けたいって」
海未「それは……そうですが……」
海未「……絶対に死んではいけないのは私ではなく……穂乃果のはずです」
絵里「そうね、でも私たちが何か言って穂乃果が止まると思う?」
海未「……っ」
絵里「せめて私たちだけは落ち着いて行動しないとダメ」
絵里「………」
絵里「まぁいいわ、何にせよ……もしものことがあった場合はあなたが秋穂の面倒をみる事になる」
海未「………」
それが海未との最後の対話だった。
その後、凛とテレビ局に乗り込んだりもして、なんとかロボットを止めて穂乃果の危険を排除したかった・・・でも。
・・・止められなかった。
・
・
・
ルビィ「そんな、それってつまり……」
絵里「……さっきも言ったでしょ?私はあの子の仇を取らないといけないって」
曜「じゃあ……穂乃果さんは」
絵里「えぇ……あの子は……穂乃果は……」
絵里「………死んだ」 ・
・
・
看守長「沿岸部150名、周辺海域40隻!魚1匹逃しはしない布陣を敷いておりますが未だに脱走者3名は発見出来ていません!」
所長「そうか…」
所長「…このまま見つけられないなら君は“退部”だな」
看守長「え…!?」
所長「被験体のガキ2人はともかく、9番に逃げられれば“あいどる”もきっとお冠だ」
看守長「」ゾッ
所長「……看守長、9番を取り逃がす……この事の重大さが理解できないわけではあるまい?」
看守長「は、はい…」
所長「だよな……発見に至りませんなんて答えは聞きたくない」
所長「未だかつて、海上から脱走して生存したヤツなどいない、早く……早くあの9番の死体をここに……!」
「それはダメだね」
所長「っ!!」
看守長「!?」
所長「……あ、“あいどる”」
“あいどる”「どうも所長さん、久しぶりですね」 “あいどる”「絵里ちゃんにはまだまだ沢山のエンターテイメントを提供してもらいたい」
所長「よ、よろしいのですか?」
“あいどる”「当然だよ。人を笑顔にするのがアイドルの仕事だからね」
“あいどる”「看守長、指揮系統は無視してもいい。船と捜索している人たちを撤退させて」
看守長「は、はい…!」ダッ
“あいどる”「……ふふ、流石絵里ちゃんだなぁ」
“あいどる”「では私はこれで」
所長「は、はい…!こんな所にまで足を運んでいただき、ありがとうございました!」
“あいどる”「うーうん、いいんだよ……あっ、いけない忘れるどころだった……所長」
所長「……?はい、何でしょう?」
“あいどる”「君は“退部”だから」
所長「え?」
ブチュッ
所長「ゴプッ…」
“あいどる”「」ピチャッ
所長「」バタッ
“あいどる”「あはは」 絵里「……話はこれまでよ」
曜「え、まだ全部は……」
絵里「続きなら後でしてあげるわ。見て、どういうわけか船やヘリが退散してる」
曜「あっ、ほんとだ…」
絵里「陽も落ちてきた今がチャンスだわ、陸を目指すのよ」
曜「わかりました…ルビィちゃん、もうひと頑張りだよ!」
ルビィ「うん、頑張る!」
絵里「私が先陣を切るわ」スッ
絵里「あまり音を立てないようにね」
ザパンッッッ…
曜「私たちも」
ルビィ「うん、行こう」
ザパンッッッ… ジャプ…ジャプ…
曜「お〜!ルビィちゃん、かなり泳ぎ上達したね……!!」
ルビィ「うん、高校生の時は泳げなくてもいいやと思ってたけど……今になって、なんかコツを掴んだみたいで……!」
絵里「はぁ……あなた達、少しは緊張感を持ちなさい」
ルビィ「あっ…ご、ごめんなさい…」
絵里「身体も疲弊してるし、これが罠の可能性もある、油断なんてでき……」
曜「……?絵里さん……?」
絵里「誰が……誰がこんなふざけたマネを……」
曜「え?」
絵里「勝手に日本の海域だと思ってたけど……あの街並み……ここは……」
絵里「ニューヨークだったのね……なのに……なんで」
絵里「なんで……アキバドームがあるのよ!」
曜&ルビィ「あっ……」
ルビィ「ん…?しかもあのアキバドーム…μ'sのロゴが刻印されてる…?」
曜「今、μ'sの名前を冒用するのなんて……一人しかいないんじゃ」
絵里「……何を考えてるの」
絵里「“あいどる”……!」 ・
・
・
鞠莉「警官が人を殺した?」
千歌「うん、私の友達の友達が見たみたいで…」
鞠莉「そう……何か嫌な予感がする……。わかった、果南には私から警戒する様に言っておくわ……千歌ッチはムロタさんとコンタクトを」
千歌「……へ?」
鞠莉「へ?じゃないよ!だからムロタさんと」
千歌「えっと……ムロタさんって……誰だっけ……?」
鞠莉「………オーマイゴッート!私とした事が内通者の存在を言いそびれていましたぁ」
千歌「えぇ…!内通者なんていたの!?」」
鞠莉「私のパパと顔見知りでね、千歌ッチが警察に潜入出来てるのも彼のおかげと言っても過言じゃないよ」
千歌「ふぇ〜…」
鞠莉「とにかく千歌ッチはムロタさんに相談よろしくね!」 -署内-
千歌「あの、すみません…ムロタって人は刑事課にいるんですか??」
受付「ムロタ?ムロタなんて人いたかしら……」
受付「あなた刑事課所属でしょ?見たことないの?」
千歌「す、すみません…ないです」
刑事2「ムロタさんなら、犬のとこにいるんじゃないか」
受付「あら、お疲れ様です」
千歌「先輩、お疲れ様です…犬って…?」
受付「警察犬の事よ、鑑識の人なんですか?」
刑事2「いいや刑事課の人間だよ?あの人はただ戯れたいだけ」
千歌「いいなぁ、私も警察犬と遊んでみたいです!」
刑事2「やめとけ、警察犬は利巧が故に知らない奴にはうんともすんとも言わないからな」
千歌「でも、ムロタさんも刑事課の人なんですよね?なのに犬に懐かれるんですか?」
刑事2「まっ、あの人は仕事せずにいつも犬と遊んでるし……下手すりゃ鑑識の人間より犬と触れ合ってるからな」
千歌「……(どんな人なんだろう?)」 コンコンッ、ガチャ
千歌「失礼しまーす…」
ムロタ「この寝顔……可愛すぎる」
千歌「あ、あのムロタさんですか?」
ムロタ「癒される……」
千歌「あ、あの!」
ムロタ「!……あぁ、なんだ千歌か」
千歌「あっ……しっ、知ってるんですか?」
ムロタ「当然。話はマリーから聞いてるよ……一応、今までも陰ながらサポートはしてきたつもりだよ」
千歌「そ、そうなんですか……あの、今日は折り入って相談が」
ムロタ「相談?何かな?」
千歌「その、えっとぉ……(あれ?なんて言えばいいんだろう)」
ムロタ「…わかってる。知り合いの子が警官が民間人を殺すところを見たから、情報提供をして欲しいんだよね」
千歌「え、あっ……そ、そうです!って、なんでそれを……?」
ムロタ「ふふ、その程度の事ぐらいとっくに調べがついてるよ」
千歌「す、すごい…」
ムロタ「……ただ、対価として君を描かせてもらう」
千歌「へ、描く?」
ムロタ「君はすごく絵になるから…!」
千歌「へ、へ?」
ムロタ「よし、座りたまえ」 サラサラサラ…
千歌「(うーん……なんかこういうのって、少し恥ずかしい気がぁ)」
ムロタ「………」サラサラ
ムロタ「よし出来た」
千歌「え、もうですか!?早い!!」
ムロタ「ん」ピラッ
千歌「?これは?」
ムロタ「この地区のマップ。それに赤丸で囲ってるところがあるよね?」
千歌「はい」
ムロタ「そこは人通りが少ない上にコンテナやらなんやらが沢山あるのでいざとなれば身を隠すことができる」
千歌「へぇ〜…なるほどぉ、ここまで調べがついてるなんて…」
千歌「ありがとうございます!」
ムロタ「一つ忠告、もし、君の知り合いの友人の子がその殺害現場を目撃しているのが向こうにバレているなら…千歌、君はもっと慎重に動くべきだよ」
・・・シーン
ムロタ「って、いないし…」
ムロタ「善は急げか…大丈夫だと思いたいけどね」 千歌「はいこれ!」
スッ
秋穂「……これは?」
千歌「私の知り合いのすっごく優秀な人が作ってくれた安全なところリスト!」
秋穂「……ありがと、助かるよ」
千歌「困った時はお互い様だから!」
秋穂「……今もある場所に彼女を匿ってるんだけど……良かったら会う?」
千歌「え、いいの?」
秋穂「うん、でも移動する時は護衛お願いね?」
千歌「よーし!!任しといて!!」 〜とある倉庫〜
オカマ「あっ秋穂ちゃーん!」
秋穂「私がいない間、何もなかった?なんか変な事起きてない?」
オカマ「もうぜーんぜん……って、そっちの子は?」
千歌「あっ、私、高海千歌っていいます!あなたを守りに来ました!」
オカマ「あらやだ〜、頼もしい子〜、でも守ってほしいのは私じゃなくてあの子なのよ〜」
千歌「あの子?」
オカマ「ブリトニーちゃん!出てらっしゃい、大丈夫だから」
ブリトニー「」ヒョイ
ブリトニー「ママ〜!」
千歌「ママ?」
オカマ「あーこの子ね、未成年なのにウチのパブで働いてて引っかかちゃったのよ、新青少年保護条例に」
千歌「新青少年保護条例?」
秋穂「仮にも刑事でしょ?知っときなよ…」
千歌「うぐっ…ご、ごめん」 秋穂「これ、この人が用意してくれたの」スッ
オカマ「なにこれ?」
千歌「この区域の安全な場所をリストアップしたものです、しばらくここに隠れた方がいいかと!」
オカマ「あ〜ら嬉しい!んー、でもね…」
ブリトニー「うん、ね?」
秋穂「……?なに?」
オカマ「お金溜まったから故郷に帰れる事になったのよ、ブリトニーちゃん」
秋穂「え!?な、なんで……!?お金がネックだって……」
オカマ「警察にありのまま話したら貸してくれたの」
秋穂「へ、警察……?なんで警察なんかに!?何から逃げてるのか分かってんの!?」
オカマ「警察に行ったのは私だし、戸籍もデタラメに名前も偽名、大丈夫よきっと」
ブリトニー「明日、日本を発つの!」
秋穂「信じらんない…。何でよりにもよって、警察なんかに…」
オカマ「あらやだ何言ってんのよ。秋穂ちゃんも警察の人と一緒じゃない」
秋穂「この人は!!……違うから……」
オカマ「何よ〜それ〜」
秋穂「…ッ!もういいもん!!」ダッ
千歌「あ、秋穂ちゃんッ!」
オカマ「ちょっと心配性すぎるのよね、あの子」
千歌「………」 -翌日- 放課後 〜学校〜
秋穂「………」ボー
秋穂「……帰ろ」
ピンポンパンポーン
『高坂秋穂さん、至急理事長室までお越しください』プツッ
秋穂「………」
・
・
・
秋穂「まさかついに退学?これってやばいんじゃ…」
秋穂「もしそうなら…海未おばちゃんから…雷が落ちる?」
秋穂「」ゾッ
秋穂「はあ…」トボトボ
秋穂「ここだ…」
コンコン
「どうぞ〜」
ガチャリ
秋穂「失礼します……」
秋穂「……何かご用ですか?」
鞠莉「ふーむ…この子が高坂秋穂…。あの高坂穂乃果の姪っ子ね」
千歌「うん、正真正銘…穂乃果さんの姪ちゃんだよ」
果南「(……全然知らなかった)」
秋穂「……松浦さんに刑事に……理事長」
秋穂「何の集まりですか?これ…」
鞠莉「うーんと、この集まりはね……何の集まりだろう?」
秋穂「……帰ります」
鞠莉「え、ちょっと!ストップ!!ストーップよ!!
」
秋穂「っ…何なんですかいったい?」
鞠莉「はぁ…千歌ッチ、説明してあげて」 ・
・
・
千歌「っていうわけなの」
秋穂「じゃあこの人たちがこの前あなたが言ってた残った友達?」
千歌「そう!スクールアイドルやってる時からの仲間だよ!」
秋穂「そうなんだ…。ん…?じゃあ松浦さんって…」
果南「」ギクッ
鞠莉「そっ。果南はとっくにアラサー♪所謂、お・ば・さ・ん♡」
鞠莉「おばさんなのに制服着て果南ったら、んもう〜///」
果南「なっ!鞠莉がやれって…!」
秋穂「…なんでこの高校にいるの?」
鞠莉「ここは“あいどる”に近づける何かがあるの」
秋穂「……漠然としすぎじゃない?」
秋穂「そもそも、私があなた達と協力するメリットがない」
鞠莉「ふふっ、あなた…“あいどる”側からマークされつつあるんでしょ?」
秋穂「……たぶん」
鞠莉「使える駒は多い方がいい、それは私たちも同じ事」
鞠莉「昨日の敵は今日の友……なら逆もまた然りでしょ?昨日の友は今日の敵……」
秋穂「………」
秋穂「………わかったよ」
鞠莉「OK!じゃあ交渉成立って事ね!」 秋穂「ただひとつ条件」
鞠莉「……?なーに?」
秋穂「あなた達の職業柄、ただの高校生の私が接触してるのは…側から見てておかしい。だから松浦さんを貸して欲しいの」
秋穂「すぐにコンタクトが取れるように」
鞠莉「なーんだ!そんな事、どうぞどうぞご自由に!」
鞠莉「果南もいいよね?」
果南「え、まぁ…いいけど」
秋穂「ありがとう、じゃあ今日は帰るから」
秋穂「さよなら」ペコリ
鞠莉「チャオッ!」
バタンッ
鞠莉「……ふー」
千歌「どうだった?」
鞠莉「気難しそうな子かなぁ?それに割とナイーブそうだね」
千歌「……寂しいのかな」
鞠莉「どうだろうねぇ…私たちで穴埋め出来るような存在じゃないのは間違い無いね、あの人は」
鞠莉「それは千歌ッチが一番分かるでしょ?」
千歌「分かるけど…」 果南「ねぇ鞠莉、私、どれくらい彼女と一緒にいなきゃいけないのかな?」
鞠莉「んー、べったり…かな?」
果南「え…」
千歌「ってことは今からだね!」
鞠莉「ザッツライト!さっ、果南、行っておいで!」
果南「……やっぱり、一番損な役回りだ」 スタスタ
果南「…どこ行くの?」
秋穂「友達のところ、今日母国に帰るらしいから一応見送り…一応だよ」
果南「ふーん…」
果南「…こんな人気のない場所にいるの?」
秋穂「まだ日本から発ってなければ…」
・・・パーーーン!!
秋穂「!?」
果南「なに今の音…?」
秋穂「銃声……っ!」ダッ
果南「あっ、ちょっと!」ダッ タッタッタッタッ、ザッ
秋穂「ッ!どうした……の……」
果南「…?なに?」
果南「…!!」
ブリトニー「」
オカマ「うっうっうぅ……」
秋穂「なに…なんで…?」
オカマ「あ、秋穂ちゃん…」
オカマ「い、今…ここから出ようとして…ブリトニーちゃんが立った瞬間…うっ…うぃ…」
秋穂「…瞬間、なに?」
オカマ「私が相談した警察官がやって来て…ブリトニーちゃんを銃で…殺したの…!!」
果南「……っ」
秋穂「その人の顔は…見たの?」
オカマ「携帯で写真撮ったわ……」ゴソゴソ
オカマ「これよ…!!」
秋穂「ん…」スッ
秋穂「!!!この人…」
果南「どうしたの?」
秋穂「……松浦さん、理事長達…まだいるかな」
果南「え、そりゃあね」
秋穂「戻ろう」ダッ
果南「えっ!?ちょ、ちょっと!!」
オカマ「あ、秋穂ちゃん!」 バンッ!!
千歌&鞠莉「んん??」
秋穂「はぁはぁ…はぁ…」
鞠莉「どうかした?秋穂ッチ」
秋穂「……今、ブリトニーが死んだ」
千歌「えっ…」
秋穂「警察官に殺されたの」
鞠莉「……その警察官のお顔は見たのかしら?」
秋穂「写真がある…これ…」
千歌「……!この人は」
秋穂「この人…あなたの上司だよね?珍さんのお店に来た時、私から穂乃果おばちゃんの帽子を取り上げた人だからハッキリと覚えてる」
千歌「そうだけど…先輩が…なんで…」
秋穂「二人が言ってた人を殺した警察官ってのも多分この人だと思う」
千歌「……」
鞠莉「……それで秋穂ッチ、それが私たちに関係あるのかしら?」
鞠莉「私たちが情報を漏らしたとでも?」
秋穂「……そうじゃない、そうじゃないけど手を組んだ以上は情報共有するべきでしょ?」
鞠莉「……なるほど。まったく、その通りだね…。そうですね、では私からも一つ情報を渡します」 果南「はっ…はっ…完全に歳だ…やっと着いた…」
鞠莉「この高校に“あいどるランド”への招待状が届いたの、それも秋穂ッチをわざわざご指名でね」
秋穂「“あいどるランド”?」
千歌「“あいどる”が作ったテーマパークだよ」
鞠莉「そう、表向きはね」
秋穂「表向き…どういうこと?」
鞠莉「裏ではあんな事やこんな事をやってるって口」
秋穂「……そんな所に馬鹿正直に行く必要が?」
鞠莉「当然、無理にとは言わない。だけど、ここには何か重要な事実が隠されてるはずなの、行ってくれると助かっちゃうんだけど」
鞠莉「果南もつけるから」
果南「えっ!?」
秋穂「……考えとくよ」 〜三森荘〜
ガチャ、バタン
秋穂「……はぁ」ドサッ
秋穂「……人が死んだのに、混乱もしない……私、おかしいのかな……」
秋穂「……“あいどるランド”」
スッ
秋穂「ネットの評価は…」
【“あいどる”の魅力を余す事なく教えてくれる世界一のテーマパークだ】
【バーチャル映像でのわかりやすい説明で、血の大晦日、ホノカ一派の残虐さがひしひし伝わってきた】
秋穂「……こんなんばっか、何も知らないくせに」
シャッシャッ
秋穂「……ん?」
秋穂「これって…」
【ゴミ清掃員?がすげぇデカイおにぎり食ってたのは笑った】
秋穂「……いや……まさか……ね」
秋穂「こんな所に行くなんて言ったら……海未おばちゃんは絶対に反対するよね……」
海未「私がどうかしましたか?」
秋穂「え……う、うわぁ……!!!??」
海未「な、なんですか…その化け物でも見るような反応は…」 秋穂「う、海未おばちゃん…。は、入るならノックしてよぉ…!」
海未「しましたよ…返事が無かった上にカギが空いているから何かあったのかと思い心配して…」
秋穂「し、したんだ…そっか」
海未「何かしていたんですか?」
秋穂「い、いや別に!」
秋穂「そ、それより海未おばちゃんは何の用?」
海未「あっ…晩ごはんを作りにきたんです。今日はアルバイトもないと聞いていたので」
秋穂「う、うん…ないよ」
海未「ではキッチンを借りますね」
秋穂「は、はーい…」
スタスタスタ…
秋穂「……やっぱ、言えないよ」ボソッ ・
・
・
ムロタ「そうか…死んでしまったんだね…」
鞠莉「ええ…秋穂ッチの勧めを受け無かったみたい」
千歌「ごめんなさい…私がもっと強く勧めとけば…」
ムロタ「本人たちが選んだ道だ、僕たちが後悔してもどうしようもない」
ムロタ「……話は変わるが穂乃果の姪に話はつけたかい?」
鞠莉「一応、話はしました。ただ悩んでるみたい」
ムロタ「身内に心配はかけたくない……その辺りの事で悩んでいるのかも」
千歌「……秋穂ちゃんが嫌って言うなら私が」
鞠莉「ダメだよ、千歌ッチは顔が割れてる。行くなら秋穂ッチ…もし千歌ッチが行くとしても、やっぱり秋穂ッチも同伴しないと」
ムロタ「“あいどる”の娘、このアドバンテージを活かさないわけはないからね」
ムロタ「それにあそこには…」
鞠莉「……?あそこにはなぁに?」
ムロタ「いや、なんでもない…まぁ最終的に彼女なら行く決断をしてくれるだろう…。もしダメだったなら、また僕に相談してくれ」 -翌日- 〜学校〜
秋穂「………」ボー
「おーい、高坂」
秋穂「…?」
教師「何を黄昏てんだ、教室閉めるから出ろ」
秋穂「……はい」ゴソッ
ガララ、ガチャン
秋穂「………」
教師「なぁ高坂、いったいいつになったら血の大晦日のレポート出す気だ?」
秋穂「………“あいどる”を誉めそやす文なんて書きたくないもん」
教師「まぁ…お前ならそう言うと思ったわ」
教師「だからもうレポートは書かなくていい、代わりに“あいどるランド”に研修行ってこい」
秋穂「……研修って何のためにですか?」
先生「いやなに…校外学習みたいなもんだ、これ行かないと進級出来ないと思っとけよ、ただでさえお前は単位ヤバいんだから」
先生「じゃあなっ!」
秋穂「……ちぇ、足元見て……私、そんなに休んでないよ」
秋穂「進級しないと海未おばちゃん怒るかな…?」
秋穂「…うん、怒るだろうな」
秋穂「くそぅ…」 コンコン
鞠莉「どうぞぉ〜」
ガチャ
秋穂「理事長」
鞠莉「あら秋穂ッチ、どうするか決めたの?」
秋穂「決めたよ…。行く、確かめたい事もあるし」
秋穂「というか理事長…なんか根回しした?」
鞠莉「No!私はダーティーな事は好きじゃないの」
鞠莉「……でも良かった、果南にも連絡しとくね」
秋穂「……あのさ、一つお願いしたい事が」
鞠莉「んー?」
秋穂「私が行く事は内密にお願い、あんまり心配とかかけたくないからさ…」
鞠莉「……園田海未の事ですね?」
秋穂「」ギクッ
秋穂「まぁ…それはそうとして、出発とかはいつするの?」
鞠莉「一週間後の早朝にバスが出ます、団体ツアーですよ」
鞠莉「詳細は日を追って説明するから、今日は帰って結構よ」
秋穂「……わかった」 秋穂「」スタスタ
秋穂「……ん?」
千歌「あっ」
千歌「…やっ、今日はどうしたの?」
秋穂「“あいどるランド”…行くことを伝えに」
千歌「そ、そっか……気をつけてね」
秋穂「……うん」
千歌「……先輩、今日は署に来てなかったよ」
秋穂「……そうなんだ」
千歌「ごめんね…」
秋穂「何で謝るの?あなたが謝る必要なんて…ないよ…」
千歌「………」
秋穂「私、行くね…」
千歌「あっ…うん…」
秋穂「………」 スタスタ
秋穂「私が全部終わらせなきゃ……穂乃果おばちゃんの為にも……」 -1週間後-
トントン
秋穂「…よし、じゃあ行こっか」
大家「こんな朝早くからどこに行くんだい」
秋穂「あっ大家さん!おはようございます!えーと……ちょっとテーマパークに……」
大家「そうかい……ほら、掃除の邪魔だから退くんだよ」サッサッ
秋穂「あっと…すいません、それじゃ!」
秋穂「…………」
スタスタ……タッ…ダダダダ!
秋穂「やってみせる、私が…」
秋穂「私やる…やるったらやる!!」
第4章「最後の希望」-完- 第5章「あの日その時この場所で」
ブロロロロッ…
「はーい、みなさん!今回のツアーのガイドを務めさせていただきます私!はっちゃけお姉さんです!」
ガッハッハッハッハッ
秋穂「……」
果南「……あのさ高坂さん」
秋穂「ん?あぁ、秋穂でいいよ」
果南「そう?なら秋穂…マリーも言ってたけど今回、少しでも危険だと感じたら直ぐに逃げるんだよ?」
秋穂「……うん、わかってる」
果南「……何か行く目的があるの?」
秋穂「目的っていうか…」
秋穂「……もしかしたら、会えるかもしれないから」
果南「誰に?」
秋穂「………」
果南「……?」 キッ
ガイド「みなさん着きましたよ〜!!ここが“あいどるランド”です!」
ゾロゾロ…
ガイド「では、ここからは一旦自由行動ですので!皆さんお好きなアトラクションへどうぞ!」
ガイド「正午に再度集合願います!」
果南「正午まで時間あるね…私たちはどうする?」
秋穂「……寝たい」
果南「へ?」
秋穂「朝早かったから眠いんだよぉ…」
果南「そ、そう?えっと…どこかにベンチは…」 秋穂「……Zzz」
果南「(マイペースな子だなぁ…)」
果南「はぁ〜、暇だなぁ〜…」ボー
果南「ん?」
「さっきの乗り物超楽しかったなぁ!!」
「おーおーおー!」ポイッ
カンカラッカラカラ…
果南「ポイ捨て……っ、ここは人生の先輩として一言ガツンと……」
果南「って、え?」
サッサッサッ、ガシャン
「………」
果南「……(清掃員の人かな?……仕事早いなぁ……)」
「………」ジッ
果南「(えっ…なんか見られてる?)」
秋穂「……ムニャ」ゴロンッ
果南「あ」
ドサッ!!
秋穂「ぐえっ…!?」
「…あっ」サッ!!!
果南「あ、逃げた……何なんだろ?」 果南「よいしょっと…」
秋穂「ん〜…Zzz…」
トサッ
果南「ふ〜…しかし、ベンチから落ちてよく起きないなぁ…」
秋穂「……ふふっ……Zzz……」
果南「…結構大人びた子なのかと思ってたけど」
秋穂「ムニャムニャ……うふふ、海未おばちゃん……♪」
果南「クスッ…割と子供っぽいところもあるのかな」 ユサユサ…
秋穂「うぅ……んぅ……?」
果南「起きて秋穂、時間だよ?行こ」
秋穂「はぁい……」クシクシ
果南「シャキっとしなよ〜?むしろ今からがメインなんだから」
秋穂「うぅん…そうだね…よし、行こうか…」
果南「うん」
果南「(……寝言は聞かなかったことにしよっか)」 ガヤガヤ
ガイド「はい!では、お次は皆様をバーチャルアトラクションへとご案内させていただきます!」
果南「これだ、多分…このアトラクションに何か秘密が」
秋穂「………」
ガイド「スクリーンに注目です!」
ガイド「今から悪の団体、史上最低のチーム、ホノカ一派の紹介を立体映像を交えて説明していきます!」
秋穂「……!!」
秋穂「……っ、こんな事だろうと思った」
果南「でも何か掴めるかもしれない…耐えて」 」
秋穂「……わかってるよ」
果南「(……ホントにわかってるのかな)」 ・
・
・
ガイド「さて、お次は絢瀬絵里! 通称エリーチカ!」
ブワンッッ!!
「うわああああぁぁ!!!」
ガイド「この冷酷な目…如何にもテロリストですね」
秋穂「」プルプル
果南「……耐えて」
秋穂「……」コクッ
ガイド「つい先日までは収監されていたようですが……現在は脱走、アメリカ国内に潜伏中との事です!」
秋穂「!!」
ガイド「怖いですねぇ〜!もういっそ殺してしまえば!と思いますね!」
果南「よかったね…もうすぐ来てくれるかもしれないよ?」
秋穂「……うん」
秋穂「(絵里おばさんが…来てくれる)」 ガイド「最後はこの…世紀の大悪人!!」
ガイド「高坂穂乃果!!!」
ブワンッッ!!
「うわあああぁぁぁ、ひいいいぃぃ!!!!!」
秋穂「…………」ワナワナ
果南「…………」
ガイド「世界を滅亡へと追いやろうとした……悪魔です!!!」
ブーブーブーブーブー!!
秋穂「……ッ」ギリギリ
秋穂「……ッッッ」グシャッッ
果南「こらこら、そんなに噛んだら唇切れるよ…」
果南「制服も破れちゃうし…」
秋穂「わ…か…って…るぅ…よぉ…」
果南「(……この子、やっぱりわかってない!)」 ガイド「続きましては、予てより検討されていました“あいどる”のイメージソングについて」
ガイド「作詞・作曲を担当するのは現在も一線でご活躍中のハターキ先生に決定しました!」
「いえええええぇぇぇぇい!!!」
ガイド「ハターキ先生は今回ご自身で初作曲との事で“あいどる”も『偉大なるお方、楽しみです』と期待を寄せています!」
ガイド「続きましては……」
・
・
・
ガイド「ではみなさん!明日に備えて、今日はおやすみなさい!グッバイ!」
ゾロゾロゾロ…
果南「とりあえず、マリーには私から連絡しておくよ」
秋穂「……うん」
ガイド「おっとその前に!スマホなどの貴重品はこちらでお預かりさせていただきます!」
果南「………」
秋穂「………」
ガイド「さぁ!こちらのボックスに!!」
ワイワイワイワイ…
秋穂「どうするの…?」
果南「まぁ…大丈夫だよ…」 〜理事長室〜
果南『うん…うん…そう』
果南『絵里さんが生きてる事はわかった……今はアメリカにいるらしいよ』
鞠莉「そう……それはよかったわね、希さんと海未さんも喜ぶことでしょう」
果南『ただ…みんなについての有益な情報は得られなかった…』
鞠莉「……まだ明日がある、何か絶対に」
果南『そうだね、明日……うわっ!?ちょ、いやっ……!』ブツンッ
鞠莉「え、果南!?ちょっと果南!返事なさい!!」
プープープー
鞠莉「………」サァー
鞠莉「これは…もしかしたら…ヤッバイかもね…」 〜ホテル自室〜
果南「うっ…」
ガイド「ダメですよ松浦さん!」ニッコリ
ガイド「スマホ類は預かるって言ったじゃないですかー!では研修期間しっかり預かっとくので!グッバーイ!」スタタタタタタタタ
キィ、バタンッ
果南「………」
果南「って…えぇ?なんで電話してる事が分かったの…?電波…?」
果南「もしかして監視カメラ?」
果南「そうだ、監視カメラだ…!まずい、秋穂にも伝えなきゃ」
果南「でも、秋穂の部屋は別棟だから一回外に出ないとダメか…」 果南「早く早く…!」タッタッタッ
「脱走者発見ッッ!!!」
果南「!?」
果南「(まずい!隠れないと!)」サッ!
女子高生「キャア!!」
ガイド「もう逃げられないわよ」ニッコリ
女子高生「やめて!離して!」
ガイド「大丈夫よ!大人しくしなさい」ニッコリ
女子高生「やめっ…!うっ…」バタッ
果南「(眠っちゃった……あの子にいったい何をする気なの?)」
ガイド「ボーナスステージ!1名追加です!」ニッコリ
職員1「サンキュー!」
職員2「サンキュー!」
職員3「サンキュー!」
職員4「サンキュー!」
果南「(ボーナスステージ…?)」 ガイド「・・・」チラッ
果南「うっ…!」
果南「(し、しまっ…嘘ッ…!目…あっちゃった…!)
ザッザッ
果南「(こっちに来てる!!うっ……どうしよう……応戦する?でもそんな騒ぎ起こしたら……)」
果南「(誰か…誰か助けて…!)」
ザッ
果南「……〜〜!」
「………」
トントン
果南「えっ?」クルッ
フッ…
果南「あっ……えっ……こ……Zzz……」 バタッ
「………」
スッ、サササッ… ズル…ズル…ズル…
果南「スー…スー…」
「……はぁはぁ」
「」キョロキョロ
ガチャリ
秋穂「待って!!」
「」ビクッ!!
秋穂「その人をどうするつもり?」
「!……っ」プイッ
秋穂「……ッ!!」
秋穂「あなた…もしかして…」
「ち、違う!私は違うよ…!全然違うから…!」
秋穂「この声…やっぱりそうだ…花陽おばさん…だよね?」
花陽「……!!」
花陽「……わ、私……私は……花陽おばさんじゃ……ないから!!」
秋穂「やっぱり……花陽おばさんだ!!」 スタスタスタ…
花陽「………」
秋穂「花陽おばさん」
花陽「………」
秋穂「ねぇ!花陽おばさん!」
花陽「………」
秋穂「…ッ!ねぇってば!!!」
花陽「わ、私は花陽じゃないから!人違いだから……早く……か、帰りさない!」
秋穂「……嘘ばっか」 スタスタスタ…ピタッ
秋穂「……?なんで止まるの?」
花陽「……はぁ」
秋穂「何もないよ?」
秋穂「上も、下も、右も、左も…壁!壁!壁!壁っ!」
秋穂「なんでこんなところに?」
花陽「」コンコンコンコンコンッ
秋穂「……?なにやってるの?ドアじゃないよ?そこ、壁だよ?」
ギィ…
秋穂「わっ…壁に隠し扉が!?」
花陽「」スタスタ
秋穂「あ、ま、待って…!」 ザッ…!
「お帰りなさい!リーダー!」
秋穂「り、りーだぁー?」
花陽「ただいま」
花陽「先にこの子をお願い、向こうで寝かせといてあげてくれるかな」
果南「ん…んぅ〜…」
「了解しました!」
秋穂「……ここって、花陽おばさんの秘密基地?」
花陽「だから…私は花陽おばさんじゃ…!」
秋穂「…っ、あっそう!違うんだ!じゃあ、あそこに飾ってある写真はなに!?」
花陽「!!」
秋穂「昔のμ'sの写真…あれ、メンバー以外は持ってないはずだよねっ!!」
花陽「……ッッ!」 ダダダダダダッ…!
秋穂「……ん?」
花陽「あっ……」
ダキッ!
凛「かーよちん!おかえり〜!」
花陽「あ…ちょ、ちょっと凛ちゃん…!」
凛「んにゃ…?」
秋穂「り、凛おばちゃん……」
凛「あ、あれ…?もしかして…」
にこ「花陽〜…あんた、帰ってるなら言いなさいよねぇ…」
にこ「ったく、なんであんな子連れてきたのよ…って」
秋穂「に、にこおばちゃんまで…」
にこ「あっ…秋穂…?」
花陽「〜〜〜!!……はぁ、うぅ……」
にこ「花陽?な、なんで秋穂を連れてきたのよ!?」
秋穂「ほら、やっぱり…花陽おばさんなんじゃん…」 秋穂「なんで…しらを切るの?」
花陽「………」
秋穂「花陽おばさん…私ずっとおばさんのこと!」
凛「ま、待って!秋穂ちゃん!」
秋穂「……凛おばちゃん達は隠したりしないのに!なんで花陽おばさんは!」
凛「ち、違うんだよ…秋穂ちゃん!かよちんの話、聞いてあg…」
にこ「…凛」
凛「にゃ?な、なに?どうしたのにこちゃん?」
にこ「……花陽は多分、話す気ないわよ」
秋穂「……なんの話?」
凛「でも!ちゃんと話さないと秋穂ちゃんにも伝わらないよ?」
凛「伝わらないままなんて、秋穂ちゃんもかよちんもかわいそうだよ…」
にこ「……いいわ秋穂」
秋穂「えっ、なに?にこおばちゃん」
にこ「私から話すわ」 にこ「いいでしょ?花陽」
花陽「………」
にこ「…っ、まぁいいわ」
にこ「単刀直入に言うと、花陽はあんたに会いたくなかったのよ」
秋穂「…え?」
凛「ちょ、ちょっとにこちゃん!」
花陽「………」
にこ「…いいから聞いてなさい」
秋穂「な、なんで?私は…おばちゃん達と会えて嬉しいよ…?すごく安心もしたし…」
にこ「勘違いしないで。別に花陽はあなたが嫌いだから会いたくなかったわけじゃない」
秋穂「どういうこと…?」
にこ「…心配なのよ、花陽は」 にこ「あの血の大晦日で穂乃果が…あぁなったのは自分のせいだって」
秋穂「そんな…!花陽おばさんは全然悪くないよ!悪いのは…そう、“あいどる”だよ…」
凛「秋穂ちゃんあのね…かよちんは昔、穂乃果ちゃんと同じユニット組んでたりもして、人一倍穂乃果ちゃんに対して思い入れがあるんだ」
にこ「ましてや花陽の性格で、あの事に負い目を感じないわけがない」
秋穂「………」チラッ
花陽「……ッ!」サッ
秋穂「……そっか」
凛「だからね、ここで秋穂ちゃんに何かあったら…って、かよちんは考えちゃうんだと思う…すごく心配なんだと思う」
秋穂「………」スタスタ
にこ「秋穂…?」
秋穂「………」ピタッ
花陽「うっ…」クルッ
凛「……!秋穂ちゃんお願いにゃ!かよちんを許してあげて!」
秋穂「………」
花陽「〜〜!」 ギュッ
花陽「……え」
秋穂「……」ニコッ
秋穂「さっきも言ったじゃん…。私、花陽おばさんの事…本当に恨んでなんかいない…」
花陽「………」
秋穂「今日、会えて良かったと思ってる…。凛おばちゃんにもにこおばちゃんにも」
秋穂「花陽おばさん…。全然負い目なんか感じなくていいんだよ…そんなこと…」
花陽「……っ」プルプルッ
秋穂「………ありがとう、私のこと想ってくれてて」
花陽「!」
クルッ
秋穂「あっ…」
ダキッ!
花陽「私も……私も本当は、ずっと会いたかったよぉ…!」
花陽「ずっと…ずっとずっとっ!!」
花陽「ごめんね…ごめんね!秋穂ちゃん…!!」
ギューー!!
秋穂「…うん、全然、平気だよ…」
にこ「ふぅ、まったく、世話焼かせるんだから…」
凛「グスッ、うんうん…流石にこちゃんにゃ…凛、感動しちゃったよぉ…」 ・
・
・
花陽「少しでも穂乃果ちゃんの穴を埋めるようと思ってリーダーを引き受けたんだけど…」
花陽「やっぱり私なんかじゃ全然で…本当はにこちゃんが適任だと思うんだけど…」
にこ「バカ言わないで。あんたが作ったグループなんだからあんたがリーダーよ」
にこ「それに…私はここにいる時間も短いんだし」
凛「みんながまとまってやっていけてるのはかよちんのおかげだと思うけどな〜」
凛「だから、うん!やっぱりかよちんが適任!」
花陽「え、えぇ〜、そうかな…」
秋穂「ふふっ…流石だね」
花陽「あ、ありがとう…」 花陽「……あのね、秋穂ちゃん。これは秋穂ちゃんを子供扱いしてるから言うわけじゃないんだけど……」
秋穂「ん…?」
花陽「これ以上はダメ、今すぐ帰った方がいい」
秋穂「え、な…なんで?」
花陽「それは…」
ゴソッ…
花陽「…!」
果南「うっ…」
にこ「起きたみたいね」
凛「大丈夫だった?」
果南「え、あっ…は、はい……あの、ここって……」
秋穂「花陽おばさんが助けてくれたの」
果南「花陽おばさんって…」チラッ
花陽「…おはよう」ニコッ 果南「あっ、μ'sの…」
秋穂「それで、花陽おばさん…帰った方がいいってどういうこと?」
秋穂「いったいここには何があるの?」
花陽「……」
花陽「……ボーナスステージ、あそこに行ったら最後だよ」
秋穂「ボーナスステージ…?」
にこ「あんた達、研修生としてここに来てるんでしょ?」
秋穂「うん、まだ1日目だけど」
にこ「なら、明日にでも見極めされるわね」
果南「見極め?」
にこ「なんて事無いわ、ただμ'sのメンバーをVRゲームで殺してポイントを取るシンプル極まりない遊び」
果南「うっ…」
凛「なんて事ある気がするけど…ほんと酷すぎだにゃ!」
花陽「ゲームとはいえ……秋穂ちゃんに穂乃果ちゃんを撃ってほしくはないから」
にこ「……というより、撃てないでしょ?」
花陽「……だからここにいても、もう意味は無いんだよ?」
秋穂「………」 にこ「ボーナスステージに行けば、あんた達の知りたい情報も何か掴めるかもしれないわ」
果南「(…なら!そこに行けばAquorsについても何か…)」
花陽「……ここに入ったら必ず“卒業”しないといけない。絶対に見極めはさせられるけど…安心して、ボーダーを下回れば、その時点で“卒業”、帰れるよ」
凛「わざわざゲームをやる必要は無いってことにゃ」
果南「………」チラッ
秋穂「……わかったよ」
花陽「うん、わかってもらえてよかった…」
果南「(まぁ、そりゃそうだよね……)」ガクッ
にこ「・・・」 ・
・
・
ギィ…
花陽「じゃあ、海未ちゃんや希ちゃんによろしくね」
凛「凛たちは元気だってねー!」
秋穂「うん、ちゃんと伝えとく」
秋穂「……じゃあ、また」
花陽「うん、気をつけてね」
秋穂「うん…」クルッ
スタスタスタ…
花陽「……大きくなったんだね」
凛「そうだね〜、昔はあんなに小さかったのに…」
にこ「……花陽、あの子」
花陽「ん?」
にこ「……いや、やっぱりなんでもないわ」
花陽「……?」 スタスタスタ…
秋穂「松浦さん…」
果南「あっ、今更だけど私も果南でいいよ?」
秋穂「そっか、ねぇ果南さん」
秋穂「私、ボーナスステージに行くよ」
果南「えっ!?」
果南「でも花陽さん達に…」
秋穂「花陽おばさんはああ言ってくれたけど…私、手ぶらで帰る事なんて出来ない」
秋穂「理事長と約束したしね」
秋穂「それに花陽おばさん達に頼ってばっかりじゃダメだと思うし…」
果南「秋穂…」
秋穂「見極めだっけ……とりあえずそこで目に止まらないと話にならないけど」
果南「そうだね……」
秋穂「はぁ……」
秋穂「憂鬱だなぁ…」
果南「え?」 凛おばちゃん40歳でにゃはちょっと寒くないかにゃ? ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています