【SS】ことり(18)「今日からあなたの専属メイドになることりです。まりちゃんよろしくね♡」鞠莉(11)「ふんっ…」
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出会いのための出会い 1/2
とあるカフェにて
店員「お待たせしました──あっいけない、Grazie per l'attesa.」コト…
女性客「Grazie.」
店員「Per favore, rilassati.」ペコッ
女性客「……」
店員 スタスタ…
女性客「待ちなサイ」
店員「…?」キョロ
女性客「呼んだのが聞こえまセンでしたか、こちらデス」
店員「え、は、はい。えっ、日本語…」
女性客「あなた、日本人のようデスね」
店員「え、ええ…そうです、けど…お客様は…」
女性客「話せる程度デスが、日本語もわかりマス」
女性客「あなた、年齢は?」
店員「じゅ、18歳になったところです」
女性客「この時間に働いているのは、学校は行っていないのデスか?」
店員「いえ、その、夏休み…と、いうか…」
女性客「ホウ…」 出会いのための出会い 2/2
店員「あの…?」
女性客「二週間」
店員「え?」
女性客「二週間、ワタシに雇われなサイ。来週末、迎えにいきマスから。近くの駅を書いて」スッ
店員「えと、は、話が…よく…」
女性客「いいから早く書きなサイ。Caffe Latte が冷めるでショウ」
店員「は、はいっ!」カキカキ
女性客「…フム。わかりまシタ。二週間は家に戻れないので、そのつもりで」
店員「え、ええとぉ……」
先輩店員「Che stai facendo.」
女性客「もう用は済みまシタから。仕事に戻りなサイ」
店員「えええ…」
女性客「ああ、聞いていまセンでしたね。あなた、名前は?」
ことり「──南ことり、です」
鞠莉ママ「私はオハラ。では来週末から、よろしくお願いしマスね」 やんやん遅れずに来たらこれです。 1/2
ことり ソワソワ
ことり (うう──言われた通りに荷物も用意して駅まで来ちゃったけど、よかったのかなあ…)
ことり (すっごい美人さんだったけど、美人だからいい人とは限らないし、怖いところに連れていかれちゃったりしたらどうしよう) ブルブル
ことり (まだ、まだ間に合うかも。駅の人に伝言だけお願いして引き返しちゃおっかな。実習が入っちゃったって言えばきっと無理なことは言わないよね。それとも日本に帰省することになったって言ったら、飛行機も取っちゃったことにして、それから) ウロウロ
鞠莉ママ「待たせまシタか」コツ
ことり「ぴいっ!?」ビクッッ
ことり「あ、おは、おはようございます」
鞠莉ママ「Buongiorno. 構いまセンが、挨拶くらいは現地語で言うクセをつけた方がいいのでは」
ことり「そ、そうですね。そうですよね…」
鞠莉ママ「では行きまショウか。向こうに車を待たせていマスから」
ことり「あ──あの、えっと、ことりやっぱり、」
鞠莉ママ「どうしたのデスか?」ギロ
ことり「都合、が…」ガクガク
鞠莉ママ「なにかあるならばハッキリと言いなサイ。日本のような context を求めても無駄デス」
ことり「こ、こんてく…?」 やんやん遅れずに来たらこれです。 2/2
ことり「あのあの、ことり、実は学校の実習が入っちゃって…」
鞠莉ママ「嘘を言いなサイ。そんな予定はないはずデス」
ことり「えっ!?…えっと、そうじゃなくって、その、実は親から呼ばれて帰省しなくちゃいけなくなって…」
鞠莉ママ「…日本にデスか?」
ことり「は、はいっ。そう、日本に!だから今回のお話は」
鞠莉ママ「ちょうどよかった」
ことり「え…」
鞠莉ママ「今からあなたはワタシと日本へ飛ぶのデスから。必要ならば家族のところへ寄る時間も作りマス。他にないなら早く行きマスよ、荷物を貸して」パシ
ことり「あっそんな、重いから持たなくて…」
鞠莉ママ「子どもが遠慮をするものではありまセン。あの車デス」
ことり「あ、ありがとうございます………っていうか、え?日本に…?」
鞠莉ママ「ええ。日本へ行くのデスよ」
ことり「……………ええ〜〜〜〜〜〜〜…!!?」 波乱のイントロ、空の旅 1/4
ヘリコプター ドン!!
ことり ポカン…
鞠莉ママ「初めてデスか?」
ことり「は、はい…飛行機を貸し切ったことはあるんですけど、ヘリコプターは…」
鞠莉ママ (そっちの方がすごいのでは)
鞠莉ママ「揺れる心配も落ちる心配もしなくて結構、民間の飛行機よりよっぽど快適デスよ」
ことり「そんな心配をしてるわけじゃないんですけど…民間の…?」
鞠莉ママ「私物ではない飛行機、と言いたかったのデス。日本の生活はそう長くないので、言葉の拙さは多目に見なサイ」
ことり (私物の飛行機ってなに?このヘリコプター私物なの??ふええん…お話が噛み合わないよう…)
鞠莉ママ「それなりの長旅になるので寝るのもいいデスが、先に今回の目的を聞いてからにしなサイ」
ことり「は、はい」
ことり (それを聞かないと寝ようにも寝られません…) 波乱のイントロ、空の旅 2/4
鞠莉ママ「ワタシには一人娘がいるのデス。
鞠莉ママ「今年で11歳になるのデスが、幼い頃からワタシも夫も仕事で家を離れることが多かったせいで、大切なことを全て教えながら育ててこられたとは思えまセン。
鞠莉ママ「友人も多くなく、家族以外にはほとんど心を開かず、積極的でもない。
鞠莉ママ「もう小学五年生にもなるのに、まだそんな様子なのデス。
鞠莉ママ「なんとかしなければと思っていたもののなかなか仕事の手があかず、ズルズルと来てしまいまシタ──が。
鞠莉ママ「と〜ってもちょうどいいところで、あなたに出会ったというわけデス!」 波乱のイントロ、空の旅 3/4
ことり「…え?ことりですか!?」
鞠莉ママ「なんの話だと思って聞いていたのデスか」
ことり「えっと、ことりも小学生の頃は同じ感じだったので、お母さんは大変だったのかな〜…とか…」
鞠莉ママ「それは好都合。気持ちがわかるならば娘ともすぐに打ち解けられるでショウ。二週間しかないのだから、早く馴染むに越したことはありまセン」
ことり「う、打ち解ける?馴染む?」
鞠莉ママ「ここまで聞けばわかりそうなものデスが、あなたには我がオハラ家のメイドになってもらいマース!」
ことり「え………ええええ!?メイドさん!?」
ことり「な、なんでことりがそんな…」
鞠莉ママ「得意なのでショウ?メイド」ゴソゴソ… 波乱のイントロ、空の旅 4/4
鞠莉ママ「有名なメイドだそうではありまセンか」っ写真
ことり「────ふええっ!?」ギョッ
『ミナリンスキー生写真』
ことり「な、ななななななんでこんなものを!?」
鞠莉ママ「なぜとは。売ってあったから買ったのデス」
ことり「わ、私とはなんの関係も」
鞠莉ママ「あの店であなたを見かけたとき、かなり手慣れた様子だったので声をかけたのデスが、まさか本職とは思いまセンでした」
鞠莉ママ「今は服作りをしているようデスが、メイドもキライではないのでショウ。いい勉強だと思って頑張りなサイ」
ことり「そ、そんな勝手なあ…」
ことり (あれ?服飾の学校にいるって言ったんだっけ…)
ことり「っていうかその写真!返してくださあい!」ピーッ
鞠莉ママ「ダメ、ダメ、デース。これはワタシのお土産に買ったのだから、あげられまセーン」
ことり「ふええ〜〜〜〜〜〜ん……!」
こうして不思議なお姉さん──お母さんとの空の旅が始まったのでした… 開幕前、準備運動、負けないほどの愛情で。 1/2
ことり「その、私は具体的になにをすればいいんですか?」
鞠莉ママ「娘と遊んでくれればいいデス。できるだけ普通に」
ことり (こんな状況で『普通に』って言われても…)
鞠莉ママ「きっと警戒されるでショウが、二週間しかありまセンから。負けないで」
ことり (無茶を言う…!)
鞠莉ママ「コトリがウチを出るとき、少しでも別れをイヤがってくれたら、それで成功デス」
ことり「…わかりました」コク
鞠莉ママ「生活するのに必要なモノはありマスか?日本に着いたらまずはコトリの欲しいものを買い揃えまショウ。
なんでもいいデスよ、snack, juice and toys... あなたくらいの年頃の女の子がなにを欲しがるのかよくわかりまセンが、無理を言っているのはわかっていマスから、遠慮なく──」
ことり「娘さんは、なんていうお名前ですか?」
鞠莉ママ「エ?ああ、まだでシタね。マリデス」
ことり「まりちゃん。漢字はありますか?」
鞠莉ママ「与えてありマス。難しい漢字デスが、こうやって」カキカキ…
ことり フンフン 開幕前、準備運動、負けないほどの愛情で。 2/2
ことり「鞠莉ちゃんの好きなこととか好き嫌い、わかる範囲で教えてもらってもいいですか?それと、もしわかれば身体のサイズとお洋服の好みも」
鞠莉ママ「ハ、ハイ…」
鞠莉ママ「コトリ、マリのことは後からでも教えられマス。まずは自分が欲しいモノを…」
ことり「そんなの後でいいんです。欲しいものがあったらお買い物くらい自分で行っちゃいますから。『そんなことより』、鞠莉ちゃんのことみんな教えてください!」ズイッ
鞠莉ママ ポカン…
鞠莉ママ「…そうデスね」ニコッ
鞠莉ママ「まずは好き嫌いデスか。マリは coffee がニガテなようで…」
ことり「小学生ですよね!?飲めなくて普通だと思いますっ」
鞠莉ママ「でもワタシはマリと coffee break を楽しみたいのデース!」イヤイヤ
ことり「ふええ……小原さんの願望じゃないですかあ…」
こうして揺れる心配も落ちる心配もない、民間の飛行機より何倍も快適な空の旅の中、ことりは一睡もすることなく鞠莉の話をたくさん聞いて過ごしたのでした… あなたに会うまで、できることから。 1/2
家の者「お帰りなさいませ、奥様」
鞠莉ママ「ただいマ。マリは帰っていマスか?」
家の者「はい。今日はとても暑かったので汗を流しておいでです」
鞠莉ママ「そうデスか。では先に紹介しまショウ。話しておいたコトリデス、二週間ほどここでマリの相手をしてもらうわ」
ことり「み、南ことりです。よろしくお願いしますっ」ペコッ
鞠莉ママ「我がオハラ家を古くから支えてくれているイエノデス。彼女が知らないことはないので、なにか困ったときはイエノに聞きなサイ」
家野「よろしくお願いいたします、ことりさん」ペコ
鞠莉ママ「コトリは料理も裁縫も一通りできるようデスよ」
家野「それは心強い。もしお手回りに余裕があるときは、ぜひご一緒しましょう」
ことり「今日のお夕飯はもう作っちゃいましたか?」
家野「いえ、先ほどお嬢様をお迎えにいくのに合わせて食材を買ってきたところで、これから準備に入ります」
ことり「だったらことりも一緒に作りたいです!」
家野「着いたばかりで、お疲れではありませんか?そう無理をなさらずとも、明日以降でも…」
ことり「私が一緒にやりたいんです!まりちゃんの傍にいられる時間は長くないので、少しでも仲良くなりたいから!」
家野「ほう…」
ことり「あ、でも、まだこのお家のこととか全然知りませんし、ご迷惑ですよね。ごめんなさい、無理を言って…」
家野「迷惑だなんて、そんな。ことりさんさえよいのであれば、ぜひお願いいたします」
ことり「あ…ありがとうございますっ!お料理はあんまり上手じゃないんですけど、なんでもするので言ってください!」
家野「ふふ、承知いたしました」 あなたに会うまで、できることから。 2/2
鞠莉ママ「ではこの後はイエノと dinner の用意デスね」
ことり「あっ、ごめんなさい、勝手に。なにか予定があったり…」
鞠莉ママ「イイエ。なにもすることがなければ島内の案内でもしようかと思いまシタが、そんなのはいつでもできマスから。ここにいる間、コトリは思うことを全てしなサイ。イエノにもワタシにも、他の者にも──もちろんマリにも、遠慮することはありまセン」
ことり「はい…ありがとうございます」
鞠莉ママ「せめて荷物だけ置いておきまショウか。部屋を準備しているので案内しマス」
ことり「は、はいっ」
家野「奥様」
鞠莉ママ「なんデスか?」
家野「とても素敵な方ですね」ヒソ
鞠莉ママ「ワタシが連れてきたのだから、当然デス」ニッ
鞠莉ママ「先に kitchen へ行っていなサイ。すぐにコトリも向かわせマス」
家野「はい」
<あれはなんですか?
<マリの銅像デス
<ま、まりちゃんの銅像…!?
家野「楽しい二週間になりそうですね」フフ 知らないあの人、知りたいあなた 1/3
まり「いっただっきまーす!」
鞠莉ママ「頂きマス」
家野「私どもも、失礼します。頂きます」
まり カチャカチャ パクパク
鞠莉ママ「マリ。今日は一日どうでシタか?」
まり「うん、楽しかったわ!かなんがね、算数の時間にね、水筒のお茶をこぼしてね、もぐもぐ…これおいしい!」パァァァ
鞠莉ママ「まったく、食事くらい落ち着いて食べなサイ」
まり「いえの!これおいしいわ!」
家野「そうですか、それはよかったです。ですがそれは私が作ったものではないんですよ」
まり「え?」
家野「それはこちらのことりさんが作ったものですよ、お嬢様」 知らないあの人、知りたいあなた 2/3
ことり「は、初めまして。まりちゃん」ニコッ
まり「!」
まり「……………」
まり モジ…
まり「は、ハジメマシテ…」ボソ
まり モグ…モグ…
カチャ…カチャ…
ことり (え…えええ〜〜〜〜…!?)
ことり (さっきまであんなに楽しそうにお話ししてごはん食べてたのに、突然こんな…)
ことり (え?え!?お、小原さん?家野さん??) オロ
家野 (まりお嬢様は極度の人見知りですので。奥様から聞いていらっしゃいませんでしたか?)
ことり (き、聞いてましたけどぉ…なんか、身構えてたほどじゃないなって思って安心してたんですけど、)
まり モグ…モグ…
ことり (…………えええ〜〜〜…) 知らないあの人、知りたいあなた 3/3
鞠莉ママ「マリ。コトリは今日から二週間ほど、イエノと共に働いてもらいマス。仲良くしなサイね」
まり「!」
まり「…………ウン…」
ことり「よ、よろしくお願いします、まりちゃん。ことりって呼んでくれていいからね」
まり ジッ
ことり ニコ…
まり プイッ モグモグ…
ことり ガーーーンッ
鞠莉ママ「コラ、マリ!」
まり ツーン
家野 (なかなか大変な二週間になりそうですね) パク…
家野 (! 本当、とても美味しい) モグモグ… 一人で行けるもん 1/2
二日目
まり「なんであなたがいるの」ブスゥ
ことり「きょ、今日はことりが学校まで送っていこうかな〜…なんて…」エヘヘ
まり「ヤだ」プイッ
ことり「そ、そんなこと言わないで。ねっ?まりちゃんが住んでる内浦のこと、ことりにも教えてほしいなあ」
まり ジーーーッ
ことり「…?」ニコ…
まり「待ってて」スタスタ
ことり「う、うん!」パァ 一人で行けるもん 2/2
まり「はい」っ冊子
ことり「これは?」ペラ
『淡島・内浦観光案内パンフレット』
ことり「えっ、とぉ…」パラパラ…
まり「出して!」
船頭「あれ。あの人も乗るんじゃないですか?」
まり「いいの、行かないって。出して」
船頭「はあ…じゃ、しっかり掴まっててくださいね」
ブゥゥゥゥン…
ことり「あーーーーーーっ!?」ガーンッ
二日目:まりちゃんに置いていかれた。 台所の秘め事 1/1
ことり「家野さん、キッチン借りてもいいですか?」
家野「構いませんよ。二時半頃にお迎えをかねて買い物にいくので、後で使ったものを教えてください」
ことり「ありがとうございますっ」チュン
ことり「〜♪」トコトコ
家野 (まりお嬢様のおやつでしょうか)
…
鞠莉ママ「イエノ」
家野「いかがなさいましたか、奥様」
鞠莉ママ「コトリは kitchen でなにをしているのデスか?」
家野「お嬢様のおやつを作っているのだと思っていましたけど、どうかしましたか?」
鞠莉ママ「umm... ワタシが覗いたら、とても慌てた様子で追い出されてしまったのデス」
家野「あら」
鞠莉ママ「なにかしたかしら…」
家野「聞いてきましょうか?」
鞠莉ママ「…ノン、コトリの好きにさせると約束しまシタから。イエノがやめさせるべきだと感じたこと以外はさせておきなサイ」
家野「かしこまりました」
鞠莉ママ ウーン… スタスタ…
家野 (お嬢様のおやつ…では、ないのでしょうか) 潮の香りも届かない 1/2
家野「ではお嬢様のお迎えと買い出しにいってきます」
ことり「行ってきます!」
鞠莉ママ「いってらっシャイ。コトリにこの辺りのこと、色々と教えてあげなサイね」
家野「お任せください。では船着き場へ行きましょうか、ことりさん」
ことり「はいっ♪」ルンルン
…
ことり ガタガタガタ…
家野「だ、大丈夫ですか?」
ことり「足元、ゆらゆら、頭、ぷわぷわ…」
家野「昨日はヘリコプターでいらしたのでしたね。船は初めてですか」
ことり コクッコクッ
家野「無理をなさらなくても、私一人で行ってきますが…」
ことり「い、いえっ!行きたいんですっ!」ブンブンッ 潮の香りも届かない 2/2
船頭「出してもいいですか?」
家野「いいですか?」
ことり「は………はいっ」ガシッッッ
家野「短い時間ですし、今日は波も弱いので、しっかり手すりを掴んで座っていればそうそう危ないこともありませんよ。安心してください」
ことり「お…お願いします」
家野「それじゃ、出してください」
船頭「おうとも!」
ブ…
ブゥゥゥゥン…
家野「淡島は見ての通り一切本土との地続きがない離島ですから、船に乗れないことにはどうしようもありません。奥様のようにヘリコプターで移動することがあれば別ですが、あれは特殊ですからね」
家野「なんであれ、五回も乗れば慣れてしまいますよ。私も最初は足元が頼りない感覚に戸惑ったものですし──」
ことり コキーーーン
家野「…」
家野 (お嬢様が喜びそうですね)
ブゥゥゥゥン… お迎えと、焼いたお菓子と、早足と。 1/3
家野「お嬢様。お帰りなさいませ」
まり「ただいま、いえの!…と、」
ことり「お帰りなさい、まりちゃん」
まり「…ただいま」
ことり「あはは…」
家野「今日は果南さんと一緒じゃなかったんですね」
まり「うん、かなん『とちまん』に寄っていくからって、途中でばいばいしたの」
家野「十千万さんならお嬢様もご一緒なさればよかったものを」
まり「うん…いいの、今日は。また今度」プイ…
家野「…そうですか。では船に乗りましょうか」
まり「うん」
ことり「?」 お迎えと、焼いたお菓子と、早足と。 2/3
まり「ママ、ただいま!」ハグゥ
鞠莉ママ「お帰りなサイ、マリ」ハグゥ
ことり「家野さん」
家野「はい?」
ことり「さっきの、かなんさんと十千万さんっていうのは誰ですか?」
家野「ああ。果南さんにもまだお会いになっていないのでしたか」
家野「果南さんはお嬢様の同級生で、この島内に唯一小原家の他に住んでいる松浦家の娘さんです。仲良しで普段は一緒に帰ってくるのですが、今日は果南さんにご用があったみたいですね」
家野「十千万さんというのは本土にある老舗の旅館です。そちらにも年の近い娘さんがいらっしゃるのですが、どうもお嬢様は人見知りで、なかなか新しい友人を作ろうとなさらないのですよ」
ことり「そうなんですか…」
まり「いえの!シャワー浴びてくるから、おやつ用意しておいてね!」 お迎えと、焼いたお菓子と、早足と。 3/3
家野「かしこまりました。ちなみに今日は、ことりさんがお嬢様の好みに合わせてお菓子を焼いてくださいましたよ」
ことり「まりちゃんレモン味が好きだって聞いたから、パウンドケーキをね、」
まり「いえの食べていいわよ」スタスタ
ことり「そんなあ!?まりちゃん!?」ガーンッ
ことり「待ってよぉ、美味しく焼けたと思うから食べて〜」タタタ
まり「来ないで!まりシャワーなの!」
ことり「いじわる言わないで〜」
家野「お湯を沸かしてきますね」
鞠莉ママ「ワタシは Earl Gray で」
家野「コーヒーも新しく入れましたが」
鞠莉ママ「マリと同じものがよいのデス」プンッ
家野「そうですね」クス 大人達の夜 1/4
家野「歯は磨きましたか?」
まり「磨いたわ、ピッカピカよ!」イーッ
家野「うん、綺麗ですね。そのナイトハットも似合っていますよ」
まり「えへへ〜」
家野「じゃあママ!まり寝るわね!」
鞠莉ママ「ええ、お休みなサイ、マリ」チュ
ことり「あ、まりちゃん!ことりも添い寝しよっか?それとも眠くなるまでなにかご本でも読んで、」
まり「い、ら、な、い!おやすみなさい!」フンッ スタスタ…
ことり「う〜…」グスン
鞠莉ママ「マリを baby だと勘違いしているのでは」
家野「多感なお年頃ですからね」 大人達の夜 2/4
ことり「私、まりちゃんに嫌われてるのかなあ…」シュン
鞠莉ママ「好かれてはいないように見えマスね」
ことり グサッ
家野「奥様」
家野「嫌われているわけではないと思いますよ」カチャカチャ
ことり「本当ですか?」
家野「はい。言ったよう、まりお嬢様はとても恥ずかしがり屋で人見知りをされますからね。突然現れたことりさんにどう接すればよいかわからない、というのが本音ではないでしょうか」カチャカチャ
鞠莉ママ「イエノ」
家野「ただいま」カチャ…
家野「ナポリからダークローストを仕入れました」スッ
鞠莉ママ「ウン、この香りが最高ね」スン… 大人達の夜 3/4
鞠莉ママ「コトリは、年下と接するのは初めてデスか?」
ことり「ボランティアに参加したことはありますけど、ほとんど初めてだと思います」
鞠莉ママ「そう」
鞠莉ママ ズ…
鞠莉ママ フゥ
鞠莉ママ「母のワタシだって、マリが考えていることを全てはわかりまセン。昨日出会ったばかりのコトリが、い…糸、」
家野「いとも容易く、でしょうか」
鞠莉ママ「イトモタヤスク、マリのことを全て知れるはずがないでショウ」
鞠莉ママ「ワタシがマリのことを考えて選んだコトリなのだから、自信を持ちなサイ。意味もなく嫌われるような人物ではないと思っていマス」
ことり「は、はいっ」
鞠莉ママ「それに」 大人達の夜 4/4
鞠莉ママ「マリは意味もなく人を嫌うような娘でもありまセンから」
ことり「!」
ことり「──はいっ!」
ことり「キッチンお借りしますね!明日はまりちゃんに『おいしい』って言ってもらわなくちゃ!」ヤンヤン
家野「今日はお疲れでしょうし、明日にされては…って、行ってしまいましたね」
鞠莉ママ「『おいしい』とは言っていたように思うけれど」ズ…
鞠莉ママ「イエノも座りなサイ。一人で coffee break をしても楽しくないわ」
家野「では失礼します」
家野「早く、まりお嬢様がご一緒できるようになるといいですね」
鞠莉ママ「いつになることやら」
家野「ふふ…」 船内、二人きり、なにも起きない。 1/3
三日目
まり「いってきます!」
家野「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
鞠莉ママ「気を付けるのデスよ」
まり「うん!…あの人はいないのね」キョロ
家野「そうですねえ」
船内
まり「なんでこんなところにいるの」ジト
ことり「乗り遅れちゃったら大変だから!」ヤンッ
まり ムムーッ…
まり「こんな時間から向こうに行ったって、お店なんかどこもあいてないわよ」スタスタ
ことり「お買い物じゃなくて、まりちゃんを送っていくだけだから平気だよ。お買い物はお昼過ぎに行く予定なの」
まり「別に聞いてないわ!」フンッ
船頭「じゃ出しますよー」
ブ…
ブゥゥゥゥゥン… 船内、二人きり、なにも起きない。 2/3
ことり「昨日はね、お昼の間ホテルの中をちょっとだけ案内してもらったんだよ。すごいね、あの大きなホール。まりちゃんもいつかあそこで歌ったり楽器を演奏したりするのかなあ。ことりも絶対に来るからそのときは呼んでね!」
ことり「それとね、ホテルのお部屋もみんな見せてもらったの。スイートルームとラグジュアリールームだって、私なんか一生頑張っても泊まれっこないなあ。こんな素敵なホテルに泊まれるようになりたいね!」
ことり「そうだ、まりちゃん今日はおやつになにか食べたいものある?作ったことないやつでもいいよ、リクエストしてほしいな。あ!コーヒーに挑戦してみるのはどうかな?コーヒーと一緒に食べやすいお菓子作ってみよっか、
まり「ねえ。静かにして」
ことり「…っ、」 船内、二人きり、なにも起きない。 3/3
まり「…」
ことり「…」
ブゥゥゥゥゥン…
ことり「………」
ブゥゥゥゥゥン…
ことり「……………ゃ」
ことり「やっぱりだめぇっ!お喋りしてないと揺れて怖いよ!」ピーッ
まり「!?」
まり「ふ、船がゆれるのが怖いからしゃべってたの…!?」
ことり「う、うん。お喋りしてたら気が紛れるかなって思って。ね、まりちゃん、向こうに着くまでなにかお話ししてよう?」
まり ポカン…
ことり「そ、そうだ、昨日ね、家野さんから聞いたんだけど、十千万さんとかなんちゃんについてお話聞きたいな。ね、かなんちゃんってどんなお友達?おんなじクラスなんだよね、今日の帰りに私も会えるかなあ」
まり「…うるさい人」プイッ
ことり「まりちゃあん!」
まり「もうすぐ着くから!」
ことり「おりるとき怖いから手を繋いでてもいい?」
まり「や、だ!そんなに怖いなら乗らなきゃいいじゃない!なんでむりやり乗るのよ!」
ことり ギュッ
まり「ちょっと!いいって言ってない!やーだー、はなしてーー!ママ以外と手なんか繋がないのーーー!」ジタバタ
船頭「着きますよーい」
三日目:まりちゃんと手を繋いだ! 南ことり、おだやか、@メンタルハーブ 1/2
船頭「いってらっしゃい、お嬢様」
まり「いってきます!」
ことり「いってきます!」
まり「お店あいてないって言ったでしょ。どこ行くの?」
ことり「え?学校までまりちゃんを送っていくんだよ」
まり「いらないってば、子どもじゃないんだから!早く帰ってよ!」
ことり「え〜」
まり「わたしだけ送ってもらってたら恥ずかしいじゃない!」
ことり「うーん…それじゃ今日、何時に学校終わる?」
まり「は?今日は…五時間だから、二時半くらいに終わるけど…」 南ことり、おだやか、@メンタルハーブ 2/2
ことり「そっか、わかった。気を付けて行ってきてね」
まり「あなたに言われなくたって毎日気を付けてるもの」フンッ
まり スタスタ…
まり …ハッ
まり「むかえになんか来なくていいからね!」
ことり ニコニコ
まり「来ないでね!!」
ことり「前見て歩かないと危ないよー」
まり「絶対やめてよね!!!」
ことり「かなんちゃんによろしくねー」ノシ
まり「うるさい!!」
ことり「いってらっしゃ〜い」ニコニコ ノシシシ
船頭「意外とタフですね」 私だから見えること、あなただからできること。 1/6
船内
ブゥゥゥゥゥン…
家野「なんだか楽しそうですね、ことりさん」
ことり「えっ、そうですか?」
家野「はい、先ほどからずっと笑顔ですよ。無意識でしたか?」
ことり「か、顔に出ちゃってますか…」//
ことり「もうすぐまりちゃんに会えるって思ったら、嬉しくって。今日はことりにも『ただいま』って言ってくれるかなあ」
家野「こんなにも想われて、お嬢様は幸せ者ですね」クス
ことり「だって可愛いですもんっ!ちっちゃくて、髪の毛さらさらで、ほっぺたぷくってしてて、ちょっとツンって口を尖らせてるところとか、もうっ………はああ〜♡」ウットリ 私だから見えること、あなただからできること。 2/6
ことり「まりちゃん、最初は家野さんにも人見知りしてたんですか?」
家野「どうでしたか、私はお嬢様が本当に幼い頃から傍にいさせていただいているので、家族のような認識をされているかもしれませんね」
ことり「いいな〜。帰っちゃうまでに、髪の毛撫でたりだっこしたりさせてくれるかなあ」
家野「それはどうでしょうね。そこまで打ち解けられたら本当に大したものだと思いますが」
家野「ですが、意外とそんな日は近いような気もしますよ」
ことり「えっ、本当ですか!?」
家野「ええ」
ことり「どんなところが!?そう見えますか!?」
家野「…」 私だから見えること、あなただからできること。 3/6
お嬢様は、とても心優しく、とても純粋な方で。
──まり「ママ!お仕事お疲れ様、一緒にお風呂入りましょ!」
──まり「いえの聞いて!社会のテストで百点だったのよ!」
日常の些細なことを一つひとつ大切に受け止めて、一喜一憂できる繊細な方で。
──まり「お友達ができたの。かなんと、ダイヤっていうのよ!」
──まり「かなんは、今日は他のお友達と遊ぶからって…」
かと思えば、見知らぬ相手には強く萎縮してしまうほど恥ずかしがりな方で。
──まり「あ、こんにちは…」
──まり「いつも、ママが、えっと…お世話になってます…」モジモジ…
本当に気を許した相手以外にはなかなか口も心も開かない方で。
だけれど。 私だから見えること、あなただからできること。 4/6
表情は硬いし、口調は冷たい。
──ことり『よ、よろしくお願いします、まりちゃん。ことりって呼んでくれていいからね』
──まり プイッ モグモグ…
──まり ツーン
いやそうな、迷惑そうな、そんな態度をお取りになる。
──ことり『待ってよぉ、美味しく焼けたと思うから食べて〜』タタタ
──まり『来ないで!まりシャワーなの!』
──ことり『いじわる言わないで〜』
でも、これまでお嬢様の傍に使えてきて、初めてだから。
──ことり『あ、まりちゃん!ことりも添い寝しよっか?それとも眠くなるまでなにかご本でも読んで、』
──まり『い、ら、な、い!おやすみなさい!』フンッ スタスタ…
いやなことを『いや』と、してほしくないことを『してほしくない』と、はっきり口にするお嬢様を見るのは。 私だから見えること、あなただからできること。 5/6
恥ずかしがって、遠くから見ているだけではない。
与えられる言葉に、意思なくおずおずと頷くだけではない。
奥様やご友人、私以外に対して、あんなにもはっきりとした態度を示すまりお嬢様は──これまでで、初めてだ。
きっと、初めて言葉を交わした瞬間にわかるものなのだろう。
この人が敵なのか味方なのか、信頼できるのかできないのか。
心の奥底に、自分でも気づかないような形で、はっきりと刻まれるのに違いない。
ことり ワクワク…
願わくば、この人が──お嬢様の心の鍵を、解き放ってくださればいい。
奥様にも私にもなれない存在に、なってくださればいい。 私だから見えること、あなただからできること。 6/6
家野「…さあ、なんとなくです。根拠などありませんよ」フイッ
ことり「えーっ、そうなんですかー?」
家野「さて、間もなく着岸ですよ。掴まっていてくださいね」
ことり「はあい」プー
家野「今日は果南さんとお帰りになればよいのですが」
ことり「あ、そうですね。かなんちゃんにも会ってみたいです」
家野「お嬢様とはまた違って、元気で素直なとてもよい子ですよ」
ことり「はああ〜♡」
船頭「さあて岸に着けるぜい!」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 1/8
家野「お帰りなさい、まりお嬢様。それに果南さんも」
まり「ただいま、いえの」
かなん「ただいまー!」
ことり「お帰りなさい。まりちゃん、かなんちゃん」
まり「…ただいま」
かなん「ただいま!誰?」
家野「しばらく小原家にいてくれる、新しいお手伝いの方ですよ」
かなん「へー!こんにちは!」
ことり「こんにちは。私、ことりっていいます。よろしくね」
かなん「よろしく!」
まり「早く帰りましょ、いえの」
家野「そうしましょう。果南さん、ことりさん、船に乗りますよ」
「「は〜い」」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 2/8
まり「ただいま、ママ!」
鞠莉ママ「お帰りなサイ、マリ。…ム」
かなん「ただいま!」
鞠莉ママ「ここはハグゥの家ではありまセンよ」
かなん「まーまー、気にしないでいいから!」
鞠莉ママ「…」
家野「おやつにしましょうか。お二人とも、手を洗ってきてください」
「「は〜い」」
まり「いこ、かなん」
かなん「うん!」
ことり「はああ〜…かわいい…♡」メロメロ
鞠莉ママ「…イエノ。ワタシは日本語を間違えたりしたのでショウか…」
家野「果南さんはああいう方ですよ、奥様」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 3/8
ことり「今日はリンゴと紅茶のシフォンケーキを焼いてみたの」
かなん「おーー!」
家野「果南さん、飲み物はどうしますか?」
かなん「みかんジュース!」
家野「かしこまりました」フフ
ことり「かなんちゃん、みかん好きなの?」
かなん「好きだよ、美味しいもん。内浦のみかんが一番うまい!」
ことり「え?」
家野「お父様の口癖だそうですよ。この西浦地区ではみかん農業が盛んで、ちょうど地産のみかんを全国に進出させようという動きが始まったんです」
ことり「へ〜、そうなんですね。りんごとみかんでお口に合うといいなあ」
かなん「このケーキ美味しいよ!」パクパク
ことり「もう食べてる!?」
家野「おや、果南さん。そう急いで食べるとはしたないですよ」
ワイワイ…
まり ムムーッ… 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 4/8
まり「いえの!紅茶!」
家野「ああ、失礼いたしました。果南さんと同じ飲み物でなくてよいですか?」
まり ム…
かなん「飲む?一口あげるよ!」っジュース
ことり「いいの?ありがとう!」
ことり「…美味しい!」
かなん「へへー、でしょー」ドヤッ
まり「…いい!紅茶飲むの!」
家野「あらあら…承知いたしました」カチャ 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 5/8
家野「ことりさん、お嬢様達を少しお任せしてもいいですか?」
ことり「あ、はい。もちろん!」
ことり「家野さんは?」
家野「ケーキとコーヒーを奥様のお部屋へお持ちしてきます」
ことり「あれ、そういえば小原さん…」キョロ
家野「実は」コソ
家野「果南さん…と、お嬢様のご友人がもう一人いらっしゃるのですが、奥様とあまり折り合いがよくないようで」コソ
ことり「そうなんですか?かなんちゃん可愛いのに…」
家野「うふふ。そういうことなので、しばらく外しますね」
ことり「はいっ」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 6/8
かなん「ねー」クイ
ことり「うん、なあに?」
かなん「名前なんだっけ、えっと…」
ことり「私ね、南…こと……り…クチュンッ」
まり (は?あざといんだけどっ) ムゥ
ことり「あ、ごめんね。南こ 「ことちゃん!」 えっ?」
かなん「ことちゃんだね、よろしく!私はかなんだよ!」
ことり「こ、ことちゃん…」
まり「!」
かなん「ことちゃんのケーキ美味しいなー。毎日作ってほしい!明日はなんのケーキ?」
ことり「ことちゃん…えへへ…♡」テレ 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 7/8
ことり「そうだね、なんにしよっか。かなんちゃんはどんなケーキが食べたい?」
かなん「ワカメがいっぱい乗ったやつ!」
ことり「わ、ワカメ…??ワカメ、は…ちょっと難しいかも…」
かなん「えー、できるよ!ことちゃんならきっとできる!」
ことり「そ、そうかな…!」
まり ムムムムム…
まり「かなん!みかんジュースまりにもちょうだい!」
かなん「まりは紅茶じゃないの?」
まり「どっちも飲むの!」
かなん「はいはい。まったくまりってば」っジュース
まり ゴクゴクゴクッ
まり プハッ
まり「…ふんっ!」
かなん「どうしたのさ、まり。ケーキおいしくない?」
まり「!」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 8/8
かなん ジー
まり「…」
ことり ジーー
まり「……」
かなこと ジジジーーー
まり「………っ」
まり「ぉ」
まり「おいしいけどキライっ!」
ことり「えええ〜〜〜!?」ガーンッ
かなん「変なまりだなー」モグモグ
ことり「まりちゃん、ほら!もう少し食べない?ね、こっちちょっぴりリンゴ多いよ」
まり「いーらーなーいぃぃぃ」フンッ
かなん「じゃーもらおーっと」ヒョイパク
家野 (面白い雰囲気になっていますねえ) 的なね。
最低限ですみませんが、今はここまでで。
明日できるだけ投下します
遅くなりましたが、改めてスレ立て代行ありがとうございます "待"ってたぜェ!!この"瞬間"をよォ!!
落ちた日からずっと待ってた もう五年生、まだ五年生 1/3
四日目、土曜日
鞠莉ママ「出かけまショウ」
ことり「はい?」
鞠莉ママ「マリ、お買い物に行きマスよ。支度をなサイ」
まり「お買い物!わーいっ!いえの、一緒に服を選んでちょうだい!」グイ
家野「ぜひ。奥様、今日はどちらへ?」
鞠莉ママ「そうデスね、いつもの店でもよいのデスが…」チラッ
ことり「?」
鞠莉ママ「コトリもいることだし、民間の方にしまショウか」
家野「かしこまりました。それではお嬢様、お部屋へ」
まり「はーい!」ルン
ことり「えっと…」
鞠莉ママ「コトリも支度をなサイ。三人で department store に行きマスよ」
ことり「わ、ことりも行くんですか!?」
鞠莉ママ「当然デス。ここに着いてからずっと働いてもらっていて、まだあなたが欲しいものを買ってあげられていないでショウ。それも一緒にやりマスよ」
ことり「ああ、そんな約束をしてもらったような…あの、私は別になにも…」
鞠莉ママ「さあ、早く!決めたらすぐに行動デース!」パンパン
ことり「は、はいぃっ」チュン! もう五年生、まだ五年生 2/3
鞠莉ママ「では留守を頼みマスよ、イエノ」
家野「お任せください。お戻りの時間がわかったらまたご連絡ください」
まり「行ってくるわね、いえの!」
家野「はい、行ってらっしゃいませ。奥様とことりさんの傍を離れてはいけませんよ」
まり「大丈夫よ、まりもう五年生だもの!」エヘン
ことり「家野さん、私…」
家野「土曜日と日曜日は、通常お仕事というのはお休みになるものでしょう。ここへ来てから毎日家のことをご一緒してくださって大変助かっています」
家野「今日は思い切り休日を楽しんでいらしてください」
ことり「わ…わかりましたっ」
鞠莉ママ「行きマスよ、コトリ」
ことり「は、はぁい!それじゃ行ってきます!」
家野「行ってらっしゃいませ」ペコ… もう五年生、まだ五年生 3/3
ことり「あれ、バスで行くんですか?」
まり「なによ。バスいやなの?」
ことり「ううん、てっきりお家の車か、またヘリコプターで行くのかなって…」
まり「お買い物行くのにヘリコプターに乗るわけないじゃない」
ことり「あはは、そうだよね…」
ことり (お買い物じゃなくても普通ヘリコプターには乗らないと思うんだけどなあ)
鞠莉ママ「ワタシ達も地域あっての商売なのデスから、たまにはこうして地域の活性化に貢献するのが筋というもの」
鞠莉ママ「と、いうのはタテマエで」
ことり「?」
プップー
まり「ママ!バス来たわ!まりが整理券取ってあげるわね!」キャッキャ
鞠莉ママ「oh. アリガトウ、マリ」ニコッ
ことり「…なるほどっ♡」
四日目:まりちゃん達とおでかけです! 庶民の店も悪くない 1/5
イシバシプラザ
鞠莉ママ「到!着!デース!」
ことり「ふええ…あんなに長い時間バスに乗ったの初めてです」クタクタ…
鞠莉ママ「ダラシがないデスね、コトリ。helicopter や飛行機ではもっと長時間になることもあるでショウ」
鞠莉ママ「それに、疲れているヒマなどありまセンよ」
ことり「え?」
まり「ママ、行くわよ!まずはあっち、お洋服のお店ね!競走よ、よーいドン!」タタタタ
ことり「あっまりちゃん走ったら…」
鞠莉ママ「コトリは好きに見ていなサイ。また後ほど集合しまショウ」グッグッ
ことり「小原さん?なにを…」
鞠莉ママ「マ、リーーー!負けまセンからねーーー!」ダッシュ!!
ことり「ええええええええーーーーーっ!?」ガーンッ 庶民の店も悪くない 2/5
まり「このノート可愛いわ。見て、全部のページに絵が描いてある!」パラララ…
まり「! キラキラのボールペン!こっちが赤で、ピンク…わっ、キレイなグリーン!」カキカキ
まり「ねえママ知ってる?こういうの、プロフィール帳っていうのよ。お友達と書きっこして交換するの、好きな食べ物とか好きな教科とか…」
鞠莉ママ「フム、ワタシが子どもの頃にはなかったものね。見せてみなサイ…」
ことり「懐かしいな〜、私も小学生の頃にやりましたよ」
まり ジッ…
ことり「?」
まり「交換するにはお友達がいなくちゃいけないのよ?」
ことり「そ、それはどういう意味かな!?」ガーーンッ 庶民の店も悪くない 3/5
まり「うわあ、あの帽子可愛い〜」
鞠莉ママ「マリ、もう一つ隣よ」
ことり「キッチン雑貨のお店ですか?」
鞠莉ママ「なんデスか、その不思議そうなカオは」
ことり「あ、えと、小原さん料理とか…あんまりするイメージなかったので…」
鞠莉ママ「モチロン、普段の料理はイエノに任せているのでワタシはやりまセンが」
ことり「…ああ!」
鞠莉ママ「わかったなら、コトリもイエノが喜びそうなものを一緒に探しまショウ」
ことり「はいっ!」
まり「ママ見て、このマグカップ二つで一つの絵になるわ」
鞠莉ママ「ホウ、なかなかね。四つで一つの絵になるものはないのかしら」キョロ
ことり「さすがにそれはないと思います…」
まり「三つでいいわよ。あと一つは、うーん、これでいいんじゃない」ヒョイ
ことり「ことりだけ湯呑み!?」ガガーーーンッ 庶民の店も悪くない 4/5
併設のファミレス
「お待たせしました、ハンバーグプレートです」ジュワァァァ
まり「わーい!いただきますっ!」カチャカチャ
鞠莉ママ「ああホラ、口の端に着いてしまってマスよ」
まり「んむー」
ことり クスッ
鞠莉ママ「なにを笑っているのデスか」
ことり「使用人さんがいる人がこんなお店でごはん食べてる様子が、なんだか面白くて。どこか遠い人なのかなって思ってたけど、小原さんも私達と同じなんですね」
鞠莉ママ「ム?」
ことり「誘拐されて良かったなってことです」フフ
鞠莉ママ「だ、誰が誘拐したというのデスか。合意に基づいていたでショウ」
ことり「え〜」
まり「ほいほいついていきそうだものね」
ことり「つ、ついていかないよぉ!」
まり「ママ美人だから」
ことり ギクゥゥゥッッ
鞠莉ママ「美人でよかったわ」
ことり「ご、誤解ですから!もう、まりちゃんってば!」アワワ 庶民の店も悪くない 5/5
鞠莉ママ「帰る前にワタシの買い物に付き合ってもらえる?」
まり「仕方のないママね。一時間だけよ!」
鞠莉ママ「わかりまシタ」クス
鞠莉ママ「コトリも、今のうちにどこか見たいものがあったら見てきなサイ。先にお金を渡しておきまショウか?」ゴソ…
ことり「あっ、やっ!結構ですっ!その、欲しいものがあったら後で言うので!お金は!大丈夫ですっ!」
鞠莉ママ「そう?遠慮しないで言うのデスよ」
ことり「は、はいっ!じゃ私は向こう見てますね!」タタタタ
まり「いつも慌ててるわね、あの人」
鞠莉ママ「そうデスねえ」
ことり (危なかったー…小原さん札束とかカードとか渡してきそうで怖いよぅ…) ←偏見
ことり (せっかくだし色々見たいけど、あんまり大きなものは自分で買ったらばれちゃうよね、うーん………あ。あれ可愛いな) ススス 呼ぶ声 1/12
ことり「…ん?」
『着信:小原さん』
ことり「!」ハッッ
ことり「はっはい、ことりです。ごめんなさい、時間過ぎちゃってますよね!えっと、一階のインフォメーション辺りに行けば──」
ことり「────え…!?」 呼ぶ声 2/12
ことり「小原さん!」
鞠莉ママ「! こ、コトリ!」
ことり「──まりちゃんとはぐれたって…!」
鞠莉ママ「そうなのデス…つい自分の買い物に熱中してしまっていて、ふと気づいたときには…」オロ…
ことり「落ち着いてください。私は順番にお店を捜して回るので、小原さんは迷子の呼び出しを…」
鞠莉ママ フルフル
鞠莉ママ「マリは shy デスから、自分から名乗り出ることは恐らくできまセン」
ことり「あ、そ、そっか…」
ことり「だったらもう、二人で捜すしかないですね。小原さん、どんなルートでお買い物したか覚えてますか?」
鞠莉ママ「足取りくらいなら」
ことり キョロキョロ
ことり「フロアボード!あれ見ながら、大体でいいのでルートを教えてください!」
鞠莉ママ「は、ハイ…」
ことり「一秒でも早く迎えにいってあげなくちゃ──大好きな人と離れるなんて、絶対に寂しいに決まってるもん…!」 呼ぶ声 3/12
少し前
まり「ママ、このスカート似合いそうよ」
鞠莉ママ「好きな色デス、さすがねマリ」
まり「えへへ〜」
「ご試着なさいますか?」
鞠莉ママ「そうデスね、だったらこれと、これと…これと、これと、ウーン…これと…」
「…!?」
まり (もっとママに似合うお洋服探そーっと) キョロ
まり「あ」
まり「さっき見かけたブーツも似合いそうよね。何階だったっけ…」チラ
<それと向こうの blue の…
<は、はぃぃっ!
まり (しばらくはこのお店にいるよね。ぱっと行ってブーツ借りてこようっと)
まり タタタタ… 呼ぶ声 4/12
鞠莉ママ「マリが選んでくれた色が最高ね、やはりワタシの自慢の娘デス。card は使えマスか?」
「はい、お使いいただけます」
鞠莉ママ「ではこれで、会計を」スッ
「お預かりします」
鞠莉ママ「マリ、待たせたわね。いいコにしていまシタか?」
鞠莉ママ「…………マリ?」キョロキョロ
シン…
鞠莉ママ「ェ…」
「お客様、こちらにサインを」
鞠莉ママ「ま、マリを見ませんでシタか!?」
「え!?」
鞠莉ママ「ワタシの娘デス!さっきまでその辺りで服を見ていたでショウ!」
「あ、あれ…?そういえば、いませんね…」
鞠莉ママ「────………!」
鞠莉ママ「マリ、マリ…!そう、コトリ…コトリに電話を…!」
──ことり「はっはい、ことりです。ごめんなさい、時間過ぎちゃってますよね──」 呼ぶ声 5/12
まり (ブーツ貸してもらえなかったわ)
──「どうかしたかい、お嬢ちゃん」
──まり ビクッ
──まり「ぁ、あのあの、その、ブーツ、ママに…はいてみて、ほしくて…だから…」ゴニョゴニョ
──「ブーツ?さっきから見てるそれかい?」
──まり コクン…
──「お嬢ちゃんには少しだけ大きいかもしれないな。それよりほら、こっちの可愛いのはどうだい?」
──まり「ぇと、はくの、ママだから…こっちの、かっこいい方、で…」ゴニョゴニョ
──「そうか、そうだね。ママと一緒の方がいいかもしれないな。よし、このブーツはおじさんが取っといてあげるから、ママを呼んでおいで」
──まり「ちが、こっちのブーツ、少しだけ、貸して…ほしく、て………」
──「ん?そっちはママにかな?それじゃ一緒に取っといてあげよう」
──まり モジモジ…
──まり ペコッ タタタタ…
──「急がなくていいからね〜」
まり「…まったく!まり一人で自分のブーツも選べないみたいな言い方して、失礼しちゃうわ。こうなったらあの可愛いブーツも買ってもらっちゃうんだから」プン
まり「ママ、向こうでかっこいいブーツがあったんだけ──ど──」
まり「あれ、ママ………?」 呼ぶ声 6/12
「あ!店長、あの子…!」
「ねえキミ」
まり「!?」ビクッッッ
「お母さんが捜してたよ、もう行っちゃったけど…よかったらここで待たない?うちのスタッフに呼び出しの放送させてこよっか、ねえ、誰か下行ける人いるー?さっきの金髪のお客さん呼び出してほしいんだけど。キミ、お名前……あれ!?」
まり コツゼン
「顔面蒼白って感じで出ていっちゃいましたよ、店長」
「ええ…私、怖かった…?」
「いや、別に…」 呼ぶ声 7/12
まり フラフラ…
ママ──どこ──?
──ァハハハ!まじウケるんだけどー!
まり ビクッ
勝手に離れたから、怒って帰っちゃったの──?
でもね、聞いて、悪いことしたわけじゃないんだよ──
ただママに、ブーツをはいてほしかっただけなの──
──ママ、アイス食べたい!
──仕方ないわねえ、パパには内緒よ
まりは──アイスなんかいらない、なんにもいらない──
ママ──お願い──会いたい──どこにいるの──まりの手を、握ってほしい── 呼ぶ声 8/12
「あれ、お嬢ちゃん一人?」
まり「ぁ…」ビク…
「ママのとこ行こっか、連れてってあげるよ」
まり「ほ、ほんと…?」
「うん。だからあっちに──」
まり フラ…
「妹をどこへ連れていくつもりですか?」
「!」
まり「…!」
ことり「母と父が待ってるので、失礼します。面倒を見ていただいてありがとうございました」キッ
「ちっ…なんだよ…!」スタコラサッサ
まり ポカン… 呼ぶ声 9/12
まり「こ、とり…」
ことり「────まりちゃんっ!!!」ガバッッッ
まり「むぎゅう!?」
ことり「まりちゃんまりちゃん!遅くなってごめんね、怖かったよね、どこも痛くない?変なことされなかった?私のことわかる?」ギュウウウウッ
まり「ぐぇ、苦し…」
まり「だ、ダイジョブよ、なにもされてない、痛くもない…ってゆーか今あなたに痛くされてるんだけど、ちょっと、いったん、離れて…よっ!!」グイ
ことり「きゃっ」
まり「もう、なんなのよ!いきなり飛び付いてきて!」
ことり「だってぇ、まりちゃん見つけたら安心しちゃって…」
ことり「一人ぼっちにしてごめんね。来るのが遅くなったのも、ごめん」
ことり「でも本当に、なにもなくてよかった──間に合って、よかったぁ…」
まり「!」 呼ぶ声 10/12
まり「まに、あって…」
──「あれ、お嬢ちゃん一人?」
──「ママのとこ行こっか、連れてってあげるよ」
まり「なにも、なく…て……」
──「だからあっちに──」
まり「………………!!」ゾッ…
まり「わ、わたし、さっきの人、ママのとこ、連れてってくれるって、言われて…」
まり「わた、し…」カタカタ…
まり「あのままだったら、わたし…っ」ブルブル
ことり「大丈夫だよ」ギュ
ことり「私、ちゃんと来たでしょ。ママじゃなくて残念だったかもしれないけど、我慢してね。まりちゃんに良くないことしようとする人なんか絶対に私が許さない──」
ことり「ことりのおやつに、してあげるんだから」ニコッ
まり「……………っ」 呼ぶ声 11/12
まり「…こ、ことり……っ」ジワ…
ことり「うん」
まり「来て、くれて、ありがと…」
ことり「うん」
まり「さみしかったの、ママとはぐれて。怖かった、一人ぼっちも、あの人…も」
ことり「そうだよね」
まり「ことり………っ、ことりぃぃ……!」ブワッ
まり「わぁぁぁぁぁん………!ぅわぁぁあああああん…………!」
ことり「よしよし。大丈夫──大丈夫だよ」ポン…ポン… 呼ぶ声 12/12
『コトリ:まりちゃんと合流できました』ヒュポ
鞠莉ママ「ああ…!よかった…!」
『コトリ:よく聞いておいてくださいね』ヒュポ
鞠莉ママ「ン?」
──『淡島よりお越しの、小原様…淡島よりお越しの、小原様…』
──『お子様達がお捜しです。一階インフォメーションセンターまでお越しください…』
鞠莉ママ「ワタシが迷子になったような呼び出し!?」ガーンッ だってママだもの。 1/5
ブゥゥゥン…
ことり「わ。西日が海に反射して──見て見てまりちゃん、すごくきれい…」
まり ウト…ウト…
ことり「疲れちゃった?」
まり「ううん、そんなことないわ。ちょっとだけ、ちょっとだけ…だもん…」ウト…
ことり「ことりのおひざ、使う?」ポンポン
まり「や。ママの、おひざ…が…」コロン
まり スー
ことり「今日から私がママみたいです」フンス
鞠莉ママ「なにを言っているのデスか」 だってママだもの。 2/5
まり スー
ことり ナデ…
ことり「やっぱり、髪の毛とってもさらさら」
鞠莉ママ「コトリ。今日は本当にアリガトウございまシタ」
ことり「! もういいですってば、私だってまりちゃんから目を離したわけですし、こうして何事もなく一緒に帰れるんですし」
鞠莉ママ「…ハイ」
ことり「それに、結局みんな買ってもらっちゃいましたし」ガサ
鞠莉ママ「…本当にそんなものでよかったのデスか?それでは余計にコトリの時間が減るだけなのでは…」
ことり「ううん、これがいいんです。私の数少ない得意なことなので」
鞠莉ママ「そう」
ことり「はい」 だってママだもの。 3/5
『次は江の浦、江の浦…』
ことり「今日の晩ごはんはなにかな〜」
鞠莉ママ「初めてデスか、コトリが手伝っていないゴハンは」
ことり「はい。家野さんのお料理、美味しいから大好きです」
鞠莉ママ「ワタシが鍛えただけのことはありマスね」
ことり「え?小原さんが…?味が気に入らなくて何度も作り直させたみたいなことですか…?」
鞠莉ママ「イヤイヤ、ワタシが料理を教えたのデス。イエノに」
鞠莉ママ「教えたのは基礎だけなので、今のウデはイエノ自身のものだけれどね」
ことり「……………………????笑?」フヒ…
鞠莉ママ「とんでもなく失礼な反応ね」 だってママだもの。 4/5
ことり「どうしてごはん作ってあげないんですかー!」チュン!
鞠莉ママ「こ、コトリ。マリが起きてしまうでショウ…」
鞠莉ママ「作ってあげないというわけでは、ホラ、普段は仕事でなかなか家にいないので、ワタシが料理をしたらイエノの仕事も」ゴニョゴニョ
ことり「今はお家にいるじゃないですか。今日もこのまま帰りますよね」
鞠莉ママ「は、ハイ…」
ことり「家野さんが毎日お料理しかしてないなんて思ってますか?」
鞠莉ママ「の、ノン…」
ことり「他には?」
鞠莉ママ「エト、その…」
ことり ジーーーーーッ
鞠莉ママ「…っ」タジ…
ことり スマホ サッ
鞠莉ママ「!」
ことり「もしもし、ことりです。はい、帰ってるところです、バスの中なので手短に。晩ごはんはどこまで用意しちゃいましたか?はい、はい。だったら下味まで着けて、今日は冷凍してもらえますか?はい………」
鞠莉ママ オロ… だってママだもの。 5/5
ことり「それじゃ、もうすぐ帰りますね」ピ
鞠莉ママ「コトリ、なにを…?イエノに指示を出していたようデスが…」
ことり「はい」
ことり「ごはん作るのやめてもらいました。帰ったら小原さんが作ってくださいね」ニコッ
鞠莉ママ「!? な、なぜデスか!?」
ことり「だって、ことりだったらお母さんの手料理たくさん食べたいから〜」エヘヘ
鞠莉ママ「だからと言って急に──」
ことり「なに作りますか?お手伝いならしますよっ」ニコニコ
鞠莉ママ「ーーー〜〜〜……っ…」
鞠莉ママ ハァ…
鞠莉ママ「材料はなにを買ってきたと?」
ことり「手付かずで残ってるのは、鶏肉と、ブロッコリーと…」
鞠莉ママ「ハイハイ…」ヤレヤレ
ブゥゥゥン… 雪解けの初日 1/3
まり「ごちそうさま!とっても美味しかったわ、ママ!」
鞠莉ママ「そ、そう。ワタシが作ったのだから当然デス」コホン
家野「やはり奥様の料理は美味しいですね。久し振りに味わいました」
鞠莉ママ「やめなサイ、イエノまで…」//
ことり「ほんと、美味しかった〜。普段と違って『人の料理』って感じだったなあ」ホッコリ
鞠莉ママ・家野「「どういう意味デス/ですか?」」 雪解けの初日 2/3
まり「お風呂に入ってくるわね」
家野「お湯も沸かしてありますので、よければお浸かりください。長い外出でお疲れでしょうから」
まり「ありがと!」
ことり「まりちゃん、ことりが頭洗ってあげよっか!」
まり「…」
まり「したいなら好きにすれば」プイッ
三人「「「………!!」」」
ことり「えっえっ、いいの?一緒に入っていいの!?」ガタ
まり「待たないからね。遅かったら一人で洗い終わっちゃうから」スタスタ
ことり「あ、わ、待ってまりちゃん!えっとごちそうさまでしたっ、お皿っ、調理場に置いておいてください!お風呂から出たらみんな私が洗うので!あっ痛たっ!」ガンッ
鞠莉ママ「お、落ち着きなサイ…」
ことり「ぉふ、お風呂に入ってきます!」タタタ 雪解けの初日 3/3
<ほんとに?ほんとにことりもついていっていいの?
<うるさい。じゃあだめ。来ないで
<やだ、まりちゃんいいって言ったもん。
<言うこと聞かないから聞かないでよ!
<嬉しいな〜まりちゃんとお風呂。嬉しいな〜
<変なことしたら許さないからね
<うん!
家野「今日一日で、随分と親しくなられたようで」
鞠莉ママ「そうみたいね」
家野「なにかありましたか?」
鞠莉ママ「…」
鞠莉ママ「コトリがマリのママになったことくらいデスかね」
家野「ほう」
家野 (くらい…?) 一人きりなら呑み込めたもの 1/6
夜…
コンコン
鞠莉ママ「いマスよ」
ことり「こんばんはぁ」キィ…
鞠莉ママ「コトリ。どうかしまシタか?」
ことり「入ってもいいですか?」
鞠莉ママ「構いまセンが」
ことり「お邪魔しますっ」トコトコ
鞠莉ママ「そこに掛けなサイ」
ことり「失礼します」ポフ
鞠莉ママ「どうしたのデスか。マリの部屋へ行ったのでは」
ことり「追い返されましたぁ…」シュン
鞠莉ママ「距離を詰めるのが速過ぎるのでショウ」←予想してた 一人きりなら呑み込めたもの 2/6
ことり「だって、一緒にお風呂はいれたからもう大丈夫かなって…」
鞠莉ママ「お風呂でもイヤがられていたようでシタが」
ことり「き、聞こえてたんですか!?」ガンッ
鞠莉ママ「あれだけ騒いでいれば coffee を飲んでいても聞こえマス」ヤレヤレ
ことり「うう〜…」
ことり「今日はあんなことがあったから、まりちゃんも寂しいかなって思って…甘えてくれるかなって思ったり…」モゴモゴ
鞠莉ママ「そんな企みが」
ことり「はあ〜〜〜…」
鞠莉ママ「コトリ」
ことり「はい…」
鞠莉ママ「寂しいのは、アナタなのではありまセンか?」
ことり「…!」 一人きりなら呑み込めたもの 3/6
ことり「えっ、と…」
鞠莉ママ「恋しいモノが、あるのでショウ」
鞠莉ママ「その年で産まれ育った国も離れて、母親の元も離れて、たった一人頑張っているのだから」
鞠莉ママ「自分が決断した道とは言っても、迷うことも後悔することもあるはずデス」
鞠莉ママ「会いたい人が、いるのでショウ──」
ことり「…………」
鞠莉ママ「来なサイ」
鞠莉ママ「ハグをしまショウ」スッ
ことり「………っ、…!」
ことり フラ…
ことり …グッ フルフル…
鞠莉ママ「なにを遠慮することがあるのデスか。言ったはずデスよ」
鞠莉ママ「ここにいる間は、全てコトリが思うように──したいようにしなサイ、と」
ことり「………………!!」 一人きりなら呑み込めたもの 4/6
ことり「小原…さん」
鞠莉ママ「ハイ」
ことり「少しだけ、……ても…いい、ですか…」ボソ
鞠莉ママ「──当然デス」
鞠莉ママ「この二週間は、ワタシがコトリの母親デスよ」
ことり タッ
ことり ギュウッ
ことり「さみしい…」 一人きりなら呑み込めたもの 5/6
──まり「かなん!みかんジュースまりにもちょうだい!」
──かなん「まりは紅茶じゃないの?」
──まり「どっちも飲むの!」
──かなん「はいはい。まったくまりってば」
ことり「さみしいよぉ…!頑張るって決めたけど、みんなに迷惑かけてまで選んだ道だけど、やっぱりさみしい!」
──まり「じゃあママ!まり寝るね!」
──鞠莉ママ「ええ、お休みなサイ、マリ」チュ
ことり「お洋服の道なんかもういい!難しいしつらいし、なによりこんなにさみしいだけなら──もうやだ…!みんなのところに帰りたい…!」
──まり「ごちそうさま!とっても美味しかったわ、ママ!」 一人きりなら呑み込めたもの 6/6
ことり「会いたいよ──穂乃果ちゃん。海未ちゃん。…………お母さん──」
ことり グスン…グスン……
鞠莉ママ ポンポン…
…
ことり スー
鞠莉ママ「眠ってしまいまシタか。ワタシの bed を独り占めして、いけない子デース」
鞠莉ママ「かかえているものはたくさんあるのでショウね。その年齢で、大きな決断だったに違いないもの」
鞠莉ママ「ワタシにはあなたの人生を決めることも、その責任を背負ってあげることもできまセンが──」
鞠莉ママ「今は、隣で眠りまショウ」
鞠莉ママ「good night, コトリ」
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