【SS】ことり(18)「今日からあなたの専属メイドになることりです。まりちゃんよろしくね♡」鞠莉(11)「ふんっ…」
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出会いのための出会い 1/2
とあるカフェにて
店員「お待たせしました──あっいけない、Grazie per l'attesa.」コト…
女性客「Grazie.」
店員「Per favore, rilassati.」ペコッ
女性客「……」
店員 スタスタ…
女性客「待ちなサイ」
店員「…?」キョロ
女性客「呼んだのが聞こえまセンでしたか、こちらデス」
店員「え、は、はい。えっ、日本語…」
女性客「あなた、日本人のようデスね」
店員「え、ええ…そうです、けど…お客様は…」
女性客「話せる程度デスが、日本語もわかりマス」
女性客「あなた、年齢は?」
店員「じゅ、18歳になったところです」
女性客「この時間に働いているのは、学校は行っていないのデスか?」
店員「いえ、その、夏休み…と、いうか…」
女性客「ホウ…」 出会いのための出会い 2/2
店員「あの…?」
女性客「二週間」
店員「え?」
女性客「二週間、ワタシに雇われなサイ。来週末、迎えにいきマスから。近くの駅を書いて」スッ
店員「えと、は、話が…よく…」
女性客「いいから早く書きなサイ。Caffe Latte が冷めるでショウ」
店員「は、はいっ!」カキカキ
女性客「…フム。わかりまシタ。二週間は家に戻れないので、そのつもりで」
店員「え、ええとぉ……」
先輩店員「Che stai facendo.」
女性客「もう用は済みまシタから。仕事に戻りなサイ」
店員「えええ…」
女性客「ああ、聞いていまセンでしたね。あなた、名前は?」
ことり「──南ことり、です」
鞠莉ママ「私はオハラ。では来週末から、よろしくお願いしマスね」 やんやん遅れずに来たらこれです。 1/2
ことり ソワソワ
ことり (うう──言われた通りに荷物も用意して駅まで来ちゃったけど、よかったのかなあ…)
ことり (すっごい美人さんだったけど、美人だからいい人とは限らないし、怖いところに連れていかれちゃったりしたらどうしよう) ブルブル
ことり (まだ、まだ間に合うかも。駅の人に伝言だけお願いして引き返しちゃおっかな。実習が入っちゃったって言えばきっと無理なことは言わないよね。それとも日本に帰省することになったって言ったら、飛行機も取っちゃったことにして、それから) ウロウロ
鞠莉ママ「待たせまシタか」コツ
ことり「ぴいっ!?」ビクッッ
ことり「あ、おは、おはようございます」
鞠莉ママ「Buongiorno. 構いまセンが、挨拶くらいは現地語で言うクセをつけた方がいいのでは」
ことり「そ、そうですね。そうですよね…」
鞠莉ママ「では行きまショウか。向こうに車を待たせていマスから」
ことり「あ──あの、えっと、ことりやっぱり、」
鞠莉ママ「どうしたのデスか?」ギロ
ことり「都合、が…」ガクガク
鞠莉ママ「なにかあるならばハッキリと言いなサイ。日本のような context を求めても無駄デス」
ことり「こ、こんてく…?」 やんやん遅れずに来たらこれです。 2/2
ことり「あのあの、ことり、実は学校の実習が入っちゃって…」
鞠莉ママ「嘘を言いなサイ。そんな予定はないはずデス」
ことり「えっ!?…えっと、そうじゃなくって、その、実は親から呼ばれて帰省しなくちゃいけなくなって…」
鞠莉ママ「…日本にデスか?」
ことり「は、はいっ。そう、日本に!だから今回のお話は」
鞠莉ママ「ちょうどよかった」
ことり「え…」
鞠莉ママ「今からあなたはワタシと日本へ飛ぶのデスから。必要ならば家族のところへ寄る時間も作りマス。他にないなら早く行きマスよ、荷物を貸して」パシ
ことり「あっそんな、重いから持たなくて…」
鞠莉ママ「子どもが遠慮をするものではありまセン。あの車デス」
ことり「あ、ありがとうございます………っていうか、え?日本に…?」
鞠莉ママ「ええ。日本へ行くのデスよ」
ことり「……………ええ〜〜〜〜〜〜〜…!!?」 波乱のイントロ、空の旅 1/4
ヘリコプター ドン!!
ことり ポカン…
鞠莉ママ「初めてデスか?」
ことり「は、はい…飛行機を貸し切ったことはあるんですけど、ヘリコプターは…」
鞠莉ママ (そっちの方がすごいのでは)
鞠莉ママ「揺れる心配も落ちる心配もしなくて結構、民間の飛行機よりよっぽど快適デスよ」
ことり「そんな心配をしてるわけじゃないんですけど…民間の…?」
鞠莉ママ「私物ではない飛行機、と言いたかったのデス。日本の生活はそう長くないので、言葉の拙さは多目に見なサイ」
ことり (私物の飛行機ってなに?このヘリコプター私物なの??ふええん…お話が噛み合わないよう…)
鞠莉ママ「それなりの長旅になるので寝るのもいいデスが、先に今回の目的を聞いてからにしなサイ」
ことり「は、はい」
ことり (それを聞かないと寝ようにも寝られません…) 波乱のイントロ、空の旅 2/4
鞠莉ママ「ワタシには一人娘がいるのデス。
鞠莉ママ「今年で11歳になるのデスが、幼い頃からワタシも夫も仕事で家を離れることが多かったせいで、大切なことを全て教えながら育ててこられたとは思えまセン。
鞠莉ママ「友人も多くなく、家族以外にはほとんど心を開かず、積極的でもない。
鞠莉ママ「もう小学五年生にもなるのに、まだそんな様子なのデス。
鞠莉ママ「なんとかしなければと思っていたもののなかなか仕事の手があかず、ズルズルと来てしまいまシタ──が。
鞠莉ママ「と〜ってもちょうどいいところで、あなたに出会ったというわけデス!」 波乱のイントロ、空の旅 3/4
ことり「…え?ことりですか!?」
鞠莉ママ「なんの話だと思って聞いていたのデスか」
ことり「えっと、ことりも小学生の頃は同じ感じだったので、お母さんは大変だったのかな〜…とか…」
鞠莉ママ「それは好都合。気持ちがわかるならば娘ともすぐに打ち解けられるでショウ。二週間しかないのだから、早く馴染むに越したことはありまセン」
ことり「う、打ち解ける?馴染む?」
鞠莉ママ「ここまで聞けばわかりそうなものデスが、あなたには我がオハラ家のメイドになってもらいマース!」
ことり「え………ええええ!?メイドさん!?」
ことり「な、なんでことりがそんな…」
鞠莉ママ「得意なのでショウ?メイド」ゴソゴソ… 波乱のイントロ、空の旅 4/4
鞠莉ママ「有名なメイドだそうではありまセンか」っ写真
ことり「────ふええっ!?」ギョッ
『ミナリンスキー生写真』
ことり「な、ななななななんでこんなものを!?」
鞠莉ママ「なぜとは。売ってあったから買ったのデス」
ことり「わ、私とはなんの関係も」
鞠莉ママ「あの店であなたを見かけたとき、かなり手慣れた様子だったので声をかけたのデスが、まさか本職とは思いまセンでした」
鞠莉ママ「今は服作りをしているようデスが、メイドもキライではないのでショウ。いい勉強だと思って頑張りなサイ」
ことり「そ、そんな勝手なあ…」
ことり (あれ?服飾の学校にいるって言ったんだっけ…)
ことり「っていうかその写真!返してくださあい!」ピーッ
鞠莉ママ「ダメ、ダメ、デース。これはワタシのお土産に買ったのだから、あげられまセーン」
ことり「ふええ〜〜〜〜〜〜ん……!」
こうして不思議なお姉さん──お母さんとの空の旅が始まったのでした… 開幕前、準備運動、負けないほどの愛情で。 1/2
ことり「その、私は具体的になにをすればいいんですか?」
鞠莉ママ「娘と遊んでくれればいいデス。できるだけ普通に」
ことり (こんな状況で『普通に』って言われても…)
鞠莉ママ「きっと警戒されるでショウが、二週間しかありまセンから。負けないで」
ことり (無茶を言う…!)
鞠莉ママ「コトリがウチを出るとき、少しでも別れをイヤがってくれたら、それで成功デス」
ことり「…わかりました」コク
鞠莉ママ「生活するのに必要なモノはありマスか?日本に着いたらまずはコトリの欲しいものを買い揃えまショウ。
なんでもいいデスよ、snack, juice and toys... あなたくらいの年頃の女の子がなにを欲しがるのかよくわかりまセンが、無理を言っているのはわかっていマスから、遠慮なく──」
ことり「娘さんは、なんていうお名前ですか?」
鞠莉ママ「エ?ああ、まだでシタね。マリデス」
ことり「まりちゃん。漢字はありますか?」
鞠莉ママ「与えてありマス。難しい漢字デスが、こうやって」カキカキ…
ことり フンフン 開幕前、準備運動、負けないほどの愛情で。 2/2
ことり「鞠莉ちゃんの好きなこととか好き嫌い、わかる範囲で教えてもらってもいいですか?それと、もしわかれば身体のサイズとお洋服の好みも」
鞠莉ママ「ハ、ハイ…」
鞠莉ママ「コトリ、マリのことは後からでも教えられマス。まずは自分が欲しいモノを…」
ことり「そんなの後でいいんです。欲しいものがあったらお買い物くらい自分で行っちゃいますから。『そんなことより』、鞠莉ちゃんのことみんな教えてください!」ズイッ
鞠莉ママ ポカン…
鞠莉ママ「…そうデスね」ニコッ
鞠莉ママ「まずは好き嫌いデスか。マリは coffee がニガテなようで…」
ことり「小学生ですよね!?飲めなくて普通だと思いますっ」
鞠莉ママ「でもワタシはマリと coffee break を楽しみたいのデース!」イヤイヤ
ことり「ふええ……小原さんの願望じゃないですかあ…」
こうして揺れる心配も落ちる心配もない、民間の飛行機より何倍も快適な空の旅の中、ことりは一睡もすることなく鞠莉の話をたくさん聞いて過ごしたのでした… あなたに会うまで、できることから。 1/2
家の者「お帰りなさいませ、奥様」
鞠莉ママ「ただいマ。マリは帰っていマスか?」
家の者「はい。今日はとても暑かったので汗を流しておいでです」
鞠莉ママ「そうデスか。では先に紹介しまショウ。話しておいたコトリデス、二週間ほどここでマリの相手をしてもらうわ」
ことり「み、南ことりです。よろしくお願いしますっ」ペコッ
鞠莉ママ「我がオハラ家を古くから支えてくれているイエノデス。彼女が知らないことはないので、なにか困ったときはイエノに聞きなサイ」
家野「よろしくお願いいたします、ことりさん」ペコ
鞠莉ママ「コトリは料理も裁縫も一通りできるようデスよ」
家野「それは心強い。もしお手回りに余裕があるときは、ぜひご一緒しましょう」
ことり「今日のお夕飯はもう作っちゃいましたか?」
家野「いえ、先ほどお嬢様をお迎えにいくのに合わせて食材を買ってきたところで、これから準備に入ります」
ことり「だったらことりも一緒に作りたいです!」
家野「着いたばかりで、お疲れではありませんか?そう無理をなさらずとも、明日以降でも…」
ことり「私が一緒にやりたいんです!まりちゃんの傍にいられる時間は長くないので、少しでも仲良くなりたいから!」
家野「ほう…」
ことり「あ、でも、まだこのお家のこととか全然知りませんし、ご迷惑ですよね。ごめんなさい、無理を言って…」
家野「迷惑だなんて、そんな。ことりさんさえよいのであれば、ぜひお願いいたします」
ことり「あ…ありがとうございますっ!お料理はあんまり上手じゃないんですけど、なんでもするので言ってください!」
家野「ふふ、承知いたしました」 あなたに会うまで、できることから。 2/2
鞠莉ママ「ではこの後はイエノと dinner の用意デスね」
ことり「あっ、ごめんなさい、勝手に。なにか予定があったり…」
鞠莉ママ「イイエ。なにもすることがなければ島内の案内でもしようかと思いまシタが、そんなのはいつでもできマスから。ここにいる間、コトリは思うことを全てしなサイ。イエノにもワタシにも、他の者にも──もちろんマリにも、遠慮することはありまセン」
ことり「はい…ありがとうございます」
鞠莉ママ「せめて荷物だけ置いておきまショウか。部屋を準備しているので案内しマス」
ことり「は、はいっ」
家野「奥様」
鞠莉ママ「なんデスか?」
家野「とても素敵な方ですね」ヒソ
鞠莉ママ「ワタシが連れてきたのだから、当然デス」ニッ
鞠莉ママ「先に kitchen へ行っていなサイ。すぐにコトリも向かわせマス」
家野「はい」
<あれはなんですか?
<マリの銅像デス
<ま、まりちゃんの銅像…!?
家野「楽しい二週間になりそうですね」フフ 知らないあの人、知りたいあなた 1/3
まり「いっただっきまーす!」
鞠莉ママ「頂きマス」
家野「私どもも、失礼します。頂きます」
まり カチャカチャ パクパク
鞠莉ママ「マリ。今日は一日どうでシタか?」
まり「うん、楽しかったわ!かなんがね、算数の時間にね、水筒のお茶をこぼしてね、もぐもぐ…これおいしい!」パァァァ
鞠莉ママ「まったく、食事くらい落ち着いて食べなサイ」
まり「いえの!これおいしいわ!」
家野「そうですか、それはよかったです。ですがそれは私が作ったものではないんですよ」
まり「え?」
家野「それはこちらのことりさんが作ったものですよ、お嬢様」 知らないあの人、知りたいあなた 2/3
ことり「は、初めまして。まりちゃん」ニコッ
まり「!」
まり「……………」
まり モジ…
まり「は、ハジメマシテ…」ボソ
まり モグ…モグ…
カチャ…カチャ…
ことり (え…えええ〜〜〜〜…!?)
ことり (さっきまであんなに楽しそうにお話ししてごはん食べてたのに、突然こんな…)
ことり (え?え!?お、小原さん?家野さん??) オロ
家野 (まりお嬢様は極度の人見知りですので。奥様から聞いていらっしゃいませんでしたか?)
ことり (き、聞いてましたけどぉ…なんか、身構えてたほどじゃないなって思って安心してたんですけど、)
まり モグ…モグ…
ことり (…………えええ〜〜〜…) 知らないあの人、知りたいあなた 3/3
鞠莉ママ「マリ。コトリは今日から二週間ほど、イエノと共に働いてもらいマス。仲良くしなサイね」
まり「!」
まり「…………ウン…」
ことり「よ、よろしくお願いします、まりちゃん。ことりって呼んでくれていいからね」
まり ジッ
ことり ニコ…
まり プイッ モグモグ…
ことり ガーーーンッ
鞠莉ママ「コラ、マリ!」
まり ツーン
家野 (なかなか大変な二週間になりそうですね) パク…
家野 (! 本当、とても美味しい) モグモグ… 一人で行けるもん 1/2
二日目
まり「なんであなたがいるの」ブスゥ
ことり「きょ、今日はことりが学校まで送っていこうかな〜…なんて…」エヘヘ
まり「ヤだ」プイッ
ことり「そ、そんなこと言わないで。ねっ?まりちゃんが住んでる内浦のこと、ことりにも教えてほしいなあ」
まり ジーーーッ
ことり「…?」ニコ…
まり「待ってて」スタスタ
ことり「う、うん!」パァ 一人で行けるもん 2/2
まり「はい」っ冊子
ことり「これは?」ペラ
『淡島・内浦観光案内パンフレット』
ことり「えっ、とぉ…」パラパラ…
まり「出して!」
船頭「あれ。あの人も乗るんじゃないですか?」
まり「いいの、行かないって。出して」
船頭「はあ…じゃ、しっかり掴まっててくださいね」
ブゥゥゥゥン…
ことり「あーーーーーーっ!?」ガーンッ
二日目:まりちゃんに置いていかれた。 台所の秘め事 1/1
ことり「家野さん、キッチン借りてもいいですか?」
家野「構いませんよ。二時半頃にお迎えをかねて買い物にいくので、後で使ったものを教えてください」
ことり「ありがとうございますっ」チュン
ことり「〜♪」トコトコ
家野 (まりお嬢様のおやつでしょうか)
…
鞠莉ママ「イエノ」
家野「いかがなさいましたか、奥様」
鞠莉ママ「コトリは kitchen でなにをしているのデスか?」
家野「お嬢様のおやつを作っているのだと思っていましたけど、どうかしましたか?」
鞠莉ママ「umm... ワタシが覗いたら、とても慌てた様子で追い出されてしまったのデス」
家野「あら」
鞠莉ママ「なにかしたかしら…」
家野「聞いてきましょうか?」
鞠莉ママ「…ノン、コトリの好きにさせると約束しまシタから。イエノがやめさせるべきだと感じたこと以外はさせておきなサイ」
家野「かしこまりました」
鞠莉ママ ウーン… スタスタ…
家野 (お嬢様のおやつ…では、ないのでしょうか) 潮の香りも届かない 1/2
家野「ではお嬢様のお迎えと買い出しにいってきます」
ことり「行ってきます!」
鞠莉ママ「いってらっシャイ。コトリにこの辺りのこと、色々と教えてあげなサイね」
家野「お任せください。では船着き場へ行きましょうか、ことりさん」
ことり「はいっ♪」ルンルン
…
ことり ガタガタガタ…
家野「だ、大丈夫ですか?」
ことり「足元、ゆらゆら、頭、ぷわぷわ…」
家野「昨日はヘリコプターでいらしたのでしたね。船は初めてですか」
ことり コクッコクッ
家野「無理をなさらなくても、私一人で行ってきますが…」
ことり「い、いえっ!行きたいんですっ!」ブンブンッ 潮の香りも届かない 2/2
船頭「出してもいいですか?」
家野「いいですか?」
ことり「は………はいっ」ガシッッッ
家野「短い時間ですし、今日は波も弱いので、しっかり手すりを掴んで座っていればそうそう危ないこともありませんよ。安心してください」
ことり「お…お願いします」
家野「それじゃ、出してください」
船頭「おうとも!」
ブ…
ブゥゥゥゥン…
家野「淡島は見ての通り一切本土との地続きがない離島ですから、船に乗れないことにはどうしようもありません。奥様のようにヘリコプターで移動することがあれば別ですが、あれは特殊ですからね」
家野「なんであれ、五回も乗れば慣れてしまいますよ。私も最初は足元が頼りない感覚に戸惑ったものですし──」
ことり コキーーーン
家野「…」
家野 (お嬢様が喜びそうですね)
ブゥゥゥゥン… お迎えと、焼いたお菓子と、早足と。 1/3
家野「お嬢様。お帰りなさいませ」
まり「ただいま、いえの!…と、」
ことり「お帰りなさい、まりちゃん」
まり「…ただいま」
ことり「あはは…」
家野「今日は果南さんと一緒じゃなかったんですね」
まり「うん、かなん『とちまん』に寄っていくからって、途中でばいばいしたの」
家野「十千万さんならお嬢様もご一緒なさればよかったものを」
まり「うん…いいの、今日は。また今度」プイ…
家野「…そうですか。では船に乗りましょうか」
まり「うん」
ことり「?」 お迎えと、焼いたお菓子と、早足と。 2/3
まり「ママ、ただいま!」ハグゥ
鞠莉ママ「お帰りなサイ、マリ」ハグゥ
ことり「家野さん」
家野「はい?」
ことり「さっきの、かなんさんと十千万さんっていうのは誰ですか?」
家野「ああ。果南さんにもまだお会いになっていないのでしたか」
家野「果南さんはお嬢様の同級生で、この島内に唯一小原家の他に住んでいる松浦家の娘さんです。仲良しで普段は一緒に帰ってくるのですが、今日は果南さんにご用があったみたいですね」
家野「十千万さんというのは本土にある老舗の旅館です。そちらにも年の近い娘さんがいらっしゃるのですが、どうもお嬢様は人見知りで、なかなか新しい友人を作ろうとなさらないのですよ」
ことり「そうなんですか…」
まり「いえの!シャワー浴びてくるから、おやつ用意しておいてね!」 お迎えと、焼いたお菓子と、早足と。 3/3
家野「かしこまりました。ちなみに今日は、ことりさんがお嬢様の好みに合わせてお菓子を焼いてくださいましたよ」
ことり「まりちゃんレモン味が好きだって聞いたから、パウンドケーキをね、」
まり「いえの食べていいわよ」スタスタ
ことり「そんなあ!?まりちゃん!?」ガーンッ
ことり「待ってよぉ、美味しく焼けたと思うから食べて〜」タタタ
まり「来ないで!まりシャワーなの!」
ことり「いじわる言わないで〜」
家野「お湯を沸かしてきますね」
鞠莉ママ「ワタシは Earl Gray で」
家野「コーヒーも新しく入れましたが」
鞠莉ママ「マリと同じものがよいのデス」プンッ
家野「そうですね」クス 大人達の夜 1/4
家野「歯は磨きましたか?」
まり「磨いたわ、ピッカピカよ!」イーッ
家野「うん、綺麗ですね。そのナイトハットも似合っていますよ」
まり「えへへ〜」
家野「じゃあママ!まり寝るわね!」
鞠莉ママ「ええ、お休みなサイ、マリ」チュ
ことり「あ、まりちゃん!ことりも添い寝しよっか?それとも眠くなるまでなにかご本でも読んで、」
まり「い、ら、な、い!おやすみなさい!」フンッ スタスタ…
ことり「う〜…」グスン
鞠莉ママ「マリを baby だと勘違いしているのでは」
家野「多感なお年頃ですからね」 大人達の夜 2/4
ことり「私、まりちゃんに嫌われてるのかなあ…」シュン
鞠莉ママ「好かれてはいないように見えマスね」
ことり グサッ
家野「奥様」
家野「嫌われているわけではないと思いますよ」カチャカチャ
ことり「本当ですか?」
家野「はい。言ったよう、まりお嬢様はとても恥ずかしがり屋で人見知りをされますからね。突然現れたことりさんにどう接すればよいかわからない、というのが本音ではないでしょうか」カチャカチャ
鞠莉ママ「イエノ」
家野「ただいま」カチャ…
家野「ナポリからダークローストを仕入れました」スッ
鞠莉ママ「ウン、この香りが最高ね」スン… 大人達の夜 3/4
鞠莉ママ「コトリは、年下と接するのは初めてデスか?」
ことり「ボランティアに参加したことはありますけど、ほとんど初めてだと思います」
鞠莉ママ「そう」
鞠莉ママ ズ…
鞠莉ママ フゥ
鞠莉ママ「母のワタシだって、マリが考えていることを全てはわかりまセン。昨日出会ったばかりのコトリが、い…糸、」
家野「いとも容易く、でしょうか」
鞠莉ママ「イトモタヤスク、マリのことを全て知れるはずがないでショウ」
鞠莉ママ「ワタシがマリのことを考えて選んだコトリなのだから、自信を持ちなサイ。意味もなく嫌われるような人物ではないと思っていマス」
ことり「は、はいっ」
鞠莉ママ「それに」 大人達の夜 4/4
鞠莉ママ「マリは意味もなく人を嫌うような娘でもありまセンから」
ことり「!」
ことり「──はいっ!」
ことり「キッチンお借りしますね!明日はまりちゃんに『おいしい』って言ってもらわなくちゃ!」ヤンヤン
家野「今日はお疲れでしょうし、明日にされては…って、行ってしまいましたね」
鞠莉ママ「『おいしい』とは言っていたように思うけれど」ズ…
鞠莉ママ「イエノも座りなサイ。一人で coffee break をしても楽しくないわ」
家野「では失礼します」
家野「早く、まりお嬢様がご一緒できるようになるといいですね」
鞠莉ママ「いつになることやら」
家野「ふふ…」 船内、二人きり、なにも起きない。 1/3
三日目
まり「いってきます!」
家野「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
鞠莉ママ「気を付けるのデスよ」
まり「うん!…あの人はいないのね」キョロ
家野「そうですねえ」
船内
まり「なんでこんなところにいるの」ジト
ことり「乗り遅れちゃったら大変だから!」ヤンッ
まり ムムーッ…
まり「こんな時間から向こうに行ったって、お店なんかどこもあいてないわよ」スタスタ
ことり「お買い物じゃなくて、まりちゃんを送っていくだけだから平気だよ。お買い物はお昼過ぎに行く予定なの」
まり「別に聞いてないわ!」フンッ
船頭「じゃ出しますよー」
ブ…
ブゥゥゥゥゥン… 船内、二人きり、なにも起きない。 2/3
ことり「昨日はね、お昼の間ホテルの中をちょっとだけ案内してもらったんだよ。すごいね、あの大きなホール。まりちゃんもいつかあそこで歌ったり楽器を演奏したりするのかなあ。ことりも絶対に来るからそのときは呼んでね!」
ことり「それとね、ホテルのお部屋もみんな見せてもらったの。スイートルームとラグジュアリールームだって、私なんか一生頑張っても泊まれっこないなあ。こんな素敵なホテルに泊まれるようになりたいね!」
ことり「そうだ、まりちゃん今日はおやつになにか食べたいものある?作ったことないやつでもいいよ、リクエストしてほしいな。あ!コーヒーに挑戦してみるのはどうかな?コーヒーと一緒に食べやすいお菓子作ってみよっか、
まり「ねえ。静かにして」
ことり「…っ、」 船内、二人きり、なにも起きない。 3/3
まり「…」
ことり「…」
ブゥゥゥゥゥン…
ことり「………」
ブゥゥゥゥゥン…
ことり「……………ゃ」
ことり「やっぱりだめぇっ!お喋りしてないと揺れて怖いよ!」ピーッ
まり「!?」
まり「ふ、船がゆれるのが怖いからしゃべってたの…!?」
ことり「う、うん。お喋りしてたら気が紛れるかなって思って。ね、まりちゃん、向こうに着くまでなにかお話ししてよう?」
まり ポカン…
ことり「そ、そうだ、昨日ね、家野さんから聞いたんだけど、十千万さんとかなんちゃんについてお話聞きたいな。ね、かなんちゃんってどんなお友達?おんなじクラスなんだよね、今日の帰りに私も会えるかなあ」
まり「…うるさい人」プイッ
ことり「まりちゃあん!」
まり「もうすぐ着くから!」
ことり「おりるとき怖いから手を繋いでてもいい?」
まり「や、だ!そんなに怖いなら乗らなきゃいいじゃない!なんでむりやり乗るのよ!」
ことり ギュッ
まり「ちょっと!いいって言ってない!やーだー、はなしてーー!ママ以外と手なんか繋がないのーーー!」ジタバタ
船頭「着きますよーい」
三日目:まりちゃんと手を繋いだ! 南ことり、おだやか、@メンタルハーブ 1/2
船頭「いってらっしゃい、お嬢様」
まり「いってきます!」
ことり「いってきます!」
まり「お店あいてないって言ったでしょ。どこ行くの?」
ことり「え?学校までまりちゃんを送っていくんだよ」
まり「いらないってば、子どもじゃないんだから!早く帰ってよ!」
ことり「え〜」
まり「わたしだけ送ってもらってたら恥ずかしいじゃない!」
ことり「うーん…それじゃ今日、何時に学校終わる?」
まり「は?今日は…五時間だから、二時半くらいに終わるけど…」 南ことり、おだやか、@メンタルハーブ 2/2
ことり「そっか、わかった。気を付けて行ってきてね」
まり「あなたに言われなくたって毎日気を付けてるもの」フンッ
まり スタスタ…
まり …ハッ
まり「むかえになんか来なくていいからね!」
ことり ニコニコ
まり「来ないでね!!」
ことり「前見て歩かないと危ないよー」
まり「絶対やめてよね!!!」
ことり「かなんちゃんによろしくねー」ノシ
まり「うるさい!!」
ことり「いってらっしゃ〜い」ニコニコ ノシシシ
船頭「意外とタフですね」 私だから見えること、あなただからできること。 1/6
船内
ブゥゥゥゥゥン…
家野「なんだか楽しそうですね、ことりさん」
ことり「えっ、そうですか?」
家野「はい、先ほどからずっと笑顔ですよ。無意識でしたか?」
ことり「か、顔に出ちゃってますか…」//
ことり「もうすぐまりちゃんに会えるって思ったら、嬉しくって。今日はことりにも『ただいま』って言ってくれるかなあ」
家野「こんなにも想われて、お嬢様は幸せ者ですね」クス
ことり「だって可愛いですもんっ!ちっちゃくて、髪の毛さらさらで、ほっぺたぷくってしてて、ちょっとツンって口を尖らせてるところとか、もうっ………はああ〜♡」ウットリ 私だから見えること、あなただからできること。 2/6
ことり「まりちゃん、最初は家野さんにも人見知りしてたんですか?」
家野「どうでしたか、私はお嬢様が本当に幼い頃から傍にいさせていただいているので、家族のような認識をされているかもしれませんね」
ことり「いいな〜。帰っちゃうまでに、髪の毛撫でたりだっこしたりさせてくれるかなあ」
家野「それはどうでしょうね。そこまで打ち解けられたら本当に大したものだと思いますが」
家野「ですが、意外とそんな日は近いような気もしますよ」
ことり「えっ、本当ですか!?」
家野「ええ」
ことり「どんなところが!?そう見えますか!?」
家野「…」 私だから見えること、あなただからできること。 3/6
お嬢様は、とても心優しく、とても純粋な方で。
──まり「ママ!お仕事お疲れ様、一緒にお風呂入りましょ!」
──まり「いえの聞いて!社会のテストで百点だったのよ!」
日常の些細なことを一つひとつ大切に受け止めて、一喜一憂できる繊細な方で。
──まり「お友達ができたの。かなんと、ダイヤっていうのよ!」
──まり「かなんは、今日は他のお友達と遊ぶからって…」
かと思えば、見知らぬ相手には強く萎縮してしまうほど恥ずかしがりな方で。
──まり「あ、こんにちは…」
──まり「いつも、ママが、えっと…お世話になってます…」モジモジ…
本当に気を許した相手以外にはなかなか口も心も開かない方で。
だけれど。 私だから見えること、あなただからできること。 4/6
表情は硬いし、口調は冷たい。
──ことり『よ、よろしくお願いします、まりちゃん。ことりって呼んでくれていいからね』
──まり プイッ モグモグ…
──まり ツーン
いやそうな、迷惑そうな、そんな態度をお取りになる。
──ことり『待ってよぉ、美味しく焼けたと思うから食べて〜』タタタ
──まり『来ないで!まりシャワーなの!』
──ことり『いじわる言わないで〜』
でも、これまでお嬢様の傍に使えてきて、初めてだから。
──ことり『あ、まりちゃん!ことりも添い寝しよっか?それとも眠くなるまでなにかご本でも読んで、』
──まり『い、ら、な、い!おやすみなさい!』フンッ スタスタ…
いやなことを『いや』と、してほしくないことを『してほしくない』と、はっきり口にするお嬢様を見るのは。 私だから見えること、あなただからできること。 5/6
恥ずかしがって、遠くから見ているだけではない。
与えられる言葉に、意思なくおずおずと頷くだけではない。
奥様やご友人、私以外に対して、あんなにもはっきりとした態度を示すまりお嬢様は──これまでで、初めてだ。
きっと、初めて言葉を交わした瞬間にわかるものなのだろう。
この人が敵なのか味方なのか、信頼できるのかできないのか。
心の奥底に、自分でも気づかないような形で、はっきりと刻まれるのに違いない。
ことり ワクワク…
願わくば、この人が──お嬢様の心の鍵を、解き放ってくださればいい。
奥様にも私にもなれない存在に、なってくださればいい。 私だから見えること、あなただからできること。 6/6
家野「…さあ、なんとなくです。根拠などありませんよ」フイッ
ことり「えーっ、そうなんですかー?」
家野「さて、間もなく着岸ですよ。掴まっていてくださいね」
ことり「はあい」プー
家野「今日は果南さんとお帰りになればよいのですが」
ことり「あ、そうですね。かなんちゃんにも会ってみたいです」
家野「お嬢様とはまた違って、元気で素直なとてもよい子ですよ」
ことり「はああ〜♡」
船頭「さあて岸に着けるぜい!」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 1/8
家野「お帰りなさい、まりお嬢様。それに果南さんも」
まり「ただいま、いえの」
かなん「ただいまー!」
ことり「お帰りなさい。まりちゃん、かなんちゃん」
まり「…ただいま」
かなん「ただいま!誰?」
家野「しばらく小原家にいてくれる、新しいお手伝いの方ですよ」
かなん「へー!こんにちは!」
ことり「こんにちは。私、ことりっていいます。よろしくね」
かなん「よろしく!」
まり「早く帰りましょ、いえの」
家野「そうしましょう。果南さん、ことりさん、船に乗りますよ」
「「は〜い」」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 2/8
まり「ただいま、ママ!」
鞠莉ママ「お帰りなサイ、マリ。…ム」
かなん「ただいま!」
鞠莉ママ「ここはハグゥの家ではありまセンよ」
かなん「まーまー、気にしないでいいから!」
鞠莉ママ「…」
家野「おやつにしましょうか。お二人とも、手を洗ってきてください」
「「は〜い」」
まり「いこ、かなん」
かなん「うん!」
ことり「はああ〜…かわいい…♡」メロメロ
鞠莉ママ「…イエノ。ワタシは日本語を間違えたりしたのでショウか…」
家野「果南さんはああいう方ですよ、奥様」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 3/8
ことり「今日はリンゴと紅茶のシフォンケーキを焼いてみたの」
かなん「おーー!」
家野「果南さん、飲み物はどうしますか?」
かなん「みかんジュース!」
家野「かしこまりました」フフ
ことり「かなんちゃん、みかん好きなの?」
かなん「好きだよ、美味しいもん。内浦のみかんが一番うまい!」
ことり「え?」
家野「お父様の口癖だそうですよ。この西浦地区ではみかん農業が盛んで、ちょうど地産のみかんを全国に進出させようという動きが始まったんです」
ことり「へ〜、そうなんですね。りんごとみかんでお口に合うといいなあ」
かなん「このケーキ美味しいよ!」パクパク
ことり「もう食べてる!?」
家野「おや、果南さん。そう急いで食べるとはしたないですよ」
ワイワイ…
まり ムムーッ… 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 4/8
まり「いえの!紅茶!」
家野「ああ、失礼いたしました。果南さんと同じ飲み物でなくてよいですか?」
まり ム…
かなん「飲む?一口あげるよ!」っジュース
ことり「いいの?ありがとう!」
ことり「…美味しい!」
かなん「へへー、でしょー」ドヤッ
まり「…いい!紅茶飲むの!」
家野「あらあら…承知いたしました」カチャ 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 5/8
家野「ことりさん、お嬢様達を少しお任せしてもいいですか?」
ことり「あ、はい。もちろん!」
ことり「家野さんは?」
家野「ケーキとコーヒーを奥様のお部屋へお持ちしてきます」
ことり「あれ、そういえば小原さん…」キョロ
家野「実は」コソ
家野「果南さん…と、お嬢様のご友人がもう一人いらっしゃるのですが、奥様とあまり折り合いがよくないようで」コソ
ことり「そうなんですか?かなんちゃん可愛いのに…」
家野「うふふ。そういうことなので、しばらく外しますね」
ことり「はいっ」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 6/8
かなん「ねー」クイ
ことり「うん、なあに?」
かなん「名前なんだっけ、えっと…」
ことり「私ね、南…こと……り…クチュンッ」
まり (は?あざといんだけどっ) ムゥ
ことり「あ、ごめんね。南こ 「ことちゃん!」 えっ?」
かなん「ことちゃんだね、よろしく!私はかなんだよ!」
ことり「こ、ことちゃん…」
まり「!」
かなん「ことちゃんのケーキ美味しいなー。毎日作ってほしい!明日はなんのケーキ?」
ことり「ことちゃん…えへへ…♡」テレ 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 7/8
ことり「そうだね、なんにしよっか。かなんちゃんはどんなケーキが食べたい?」
かなん「ワカメがいっぱい乗ったやつ!」
ことり「わ、ワカメ…??ワカメ、は…ちょっと難しいかも…」
かなん「えー、できるよ!ことちゃんならきっとできる!」
ことり「そ、そうかな…!」
まり ムムムムム…
まり「かなん!みかんジュースまりにもちょうだい!」
かなん「まりは紅茶じゃないの?」
まり「どっちも飲むの!」
かなん「はいはい。まったくまりってば」っジュース
まり ゴクゴクゴクッ
まり プハッ
まり「…ふんっ!」
かなん「どうしたのさ、まり。ケーキおいしくない?」
まり「!」 友達増えて、視線は逸れて、リンゴ味 8/8
かなん ジー
まり「…」
ことり ジーー
まり「……」
かなこと ジジジーーー
まり「………っ」
まり「ぉ」
まり「おいしいけどキライっ!」
ことり「えええ〜〜〜!?」ガーンッ
かなん「変なまりだなー」モグモグ
ことり「まりちゃん、ほら!もう少し食べない?ね、こっちちょっぴりリンゴ多いよ」
まり「いーらーなーいぃぃぃ」フンッ
かなん「じゃーもらおーっと」ヒョイパク
家野 (面白い雰囲気になっていますねえ) 的なね。
最低限ですみませんが、今はここまでで。
明日できるだけ投下します
遅くなりましたが、改めてスレ立て代行ありがとうございます "待"ってたぜェ!!この"瞬間"をよォ!!
落ちた日からずっと待ってた もう五年生、まだ五年生 1/3
四日目、土曜日
鞠莉ママ「出かけまショウ」
ことり「はい?」
鞠莉ママ「マリ、お買い物に行きマスよ。支度をなサイ」
まり「お買い物!わーいっ!いえの、一緒に服を選んでちょうだい!」グイ
家野「ぜひ。奥様、今日はどちらへ?」
鞠莉ママ「そうデスね、いつもの店でもよいのデスが…」チラッ
ことり「?」
鞠莉ママ「コトリもいることだし、民間の方にしまショウか」
家野「かしこまりました。それではお嬢様、お部屋へ」
まり「はーい!」ルン
ことり「えっと…」
鞠莉ママ「コトリも支度をなサイ。三人で department store に行きマスよ」
ことり「わ、ことりも行くんですか!?」
鞠莉ママ「当然デス。ここに着いてからずっと働いてもらっていて、まだあなたが欲しいものを買ってあげられていないでショウ。それも一緒にやりマスよ」
ことり「ああ、そんな約束をしてもらったような…あの、私は別になにも…」
鞠莉ママ「さあ、早く!決めたらすぐに行動デース!」パンパン
ことり「は、はいぃっ」チュン! もう五年生、まだ五年生 2/3
鞠莉ママ「では留守を頼みマスよ、イエノ」
家野「お任せください。お戻りの時間がわかったらまたご連絡ください」
まり「行ってくるわね、いえの!」
家野「はい、行ってらっしゃいませ。奥様とことりさんの傍を離れてはいけませんよ」
まり「大丈夫よ、まりもう五年生だもの!」エヘン
ことり「家野さん、私…」
家野「土曜日と日曜日は、通常お仕事というのはお休みになるものでしょう。ここへ来てから毎日家のことをご一緒してくださって大変助かっています」
家野「今日は思い切り休日を楽しんでいらしてください」
ことり「わ…わかりましたっ」
鞠莉ママ「行きマスよ、コトリ」
ことり「は、はぁい!それじゃ行ってきます!」
家野「行ってらっしゃいませ」ペコ… もう五年生、まだ五年生 3/3
ことり「あれ、バスで行くんですか?」
まり「なによ。バスいやなの?」
ことり「ううん、てっきりお家の車か、またヘリコプターで行くのかなって…」
まり「お買い物行くのにヘリコプターに乗るわけないじゃない」
ことり「あはは、そうだよね…」
ことり (お買い物じゃなくても普通ヘリコプターには乗らないと思うんだけどなあ)
鞠莉ママ「ワタシ達も地域あっての商売なのデスから、たまにはこうして地域の活性化に貢献するのが筋というもの」
鞠莉ママ「と、いうのはタテマエで」
ことり「?」
プップー
まり「ママ!バス来たわ!まりが整理券取ってあげるわね!」キャッキャ
鞠莉ママ「oh. アリガトウ、マリ」ニコッ
ことり「…なるほどっ♡」
四日目:まりちゃん達とおでかけです! 庶民の店も悪くない 1/5
イシバシプラザ
鞠莉ママ「到!着!デース!」
ことり「ふええ…あんなに長い時間バスに乗ったの初めてです」クタクタ…
鞠莉ママ「ダラシがないデスね、コトリ。helicopter や飛行機ではもっと長時間になることもあるでショウ」
鞠莉ママ「それに、疲れているヒマなどありまセンよ」
ことり「え?」
まり「ママ、行くわよ!まずはあっち、お洋服のお店ね!競走よ、よーいドン!」タタタタ
ことり「あっまりちゃん走ったら…」
鞠莉ママ「コトリは好きに見ていなサイ。また後ほど集合しまショウ」グッグッ
ことり「小原さん?なにを…」
鞠莉ママ「マ、リーーー!負けまセンからねーーー!」ダッシュ!!
ことり「ええええええええーーーーーっ!?」ガーンッ 庶民の店も悪くない 2/5
まり「このノート可愛いわ。見て、全部のページに絵が描いてある!」パラララ…
まり「! キラキラのボールペン!こっちが赤で、ピンク…わっ、キレイなグリーン!」カキカキ
まり「ねえママ知ってる?こういうの、プロフィール帳っていうのよ。お友達と書きっこして交換するの、好きな食べ物とか好きな教科とか…」
鞠莉ママ「フム、ワタシが子どもの頃にはなかったものね。見せてみなサイ…」
ことり「懐かしいな〜、私も小学生の頃にやりましたよ」
まり ジッ…
ことり「?」
まり「交換するにはお友達がいなくちゃいけないのよ?」
ことり「そ、それはどういう意味かな!?」ガーーンッ 庶民の店も悪くない 3/5
まり「うわあ、あの帽子可愛い〜」
鞠莉ママ「マリ、もう一つ隣よ」
ことり「キッチン雑貨のお店ですか?」
鞠莉ママ「なんデスか、その不思議そうなカオは」
ことり「あ、えと、小原さん料理とか…あんまりするイメージなかったので…」
鞠莉ママ「モチロン、普段の料理はイエノに任せているのでワタシはやりまセンが」
ことり「…ああ!」
鞠莉ママ「わかったなら、コトリもイエノが喜びそうなものを一緒に探しまショウ」
ことり「はいっ!」
まり「ママ見て、このマグカップ二つで一つの絵になるわ」
鞠莉ママ「ホウ、なかなかね。四つで一つの絵になるものはないのかしら」キョロ
ことり「さすがにそれはないと思います…」
まり「三つでいいわよ。あと一つは、うーん、これでいいんじゃない」ヒョイ
ことり「ことりだけ湯呑み!?」ガガーーーンッ 庶民の店も悪くない 4/5
併設のファミレス
「お待たせしました、ハンバーグプレートです」ジュワァァァ
まり「わーい!いただきますっ!」カチャカチャ
鞠莉ママ「ああホラ、口の端に着いてしまってマスよ」
まり「んむー」
ことり クスッ
鞠莉ママ「なにを笑っているのデスか」
ことり「使用人さんがいる人がこんなお店でごはん食べてる様子が、なんだか面白くて。どこか遠い人なのかなって思ってたけど、小原さんも私達と同じなんですね」
鞠莉ママ「ム?」
ことり「誘拐されて良かったなってことです」フフ
鞠莉ママ「だ、誰が誘拐したというのデスか。合意に基づいていたでショウ」
ことり「え〜」
まり「ほいほいついていきそうだものね」
ことり「つ、ついていかないよぉ!」
まり「ママ美人だから」
ことり ギクゥゥゥッッ
鞠莉ママ「美人でよかったわ」
ことり「ご、誤解ですから!もう、まりちゃんってば!」アワワ 庶民の店も悪くない 5/5
鞠莉ママ「帰る前にワタシの買い物に付き合ってもらえる?」
まり「仕方のないママね。一時間だけよ!」
鞠莉ママ「わかりまシタ」クス
鞠莉ママ「コトリも、今のうちにどこか見たいものがあったら見てきなサイ。先にお金を渡しておきまショウか?」ゴソ…
ことり「あっ、やっ!結構ですっ!その、欲しいものがあったら後で言うので!お金は!大丈夫ですっ!」
鞠莉ママ「そう?遠慮しないで言うのデスよ」
ことり「は、はいっ!じゃ私は向こう見てますね!」タタタタ
まり「いつも慌ててるわね、あの人」
鞠莉ママ「そうデスねえ」
ことり (危なかったー…小原さん札束とかカードとか渡してきそうで怖いよぅ…) ←偏見
ことり (せっかくだし色々見たいけど、あんまり大きなものは自分で買ったらばれちゃうよね、うーん………あ。あれ可愛いな) ススス 呼ぶ声 1/12
ことり「…ん?」
『着信:小原さん』
ことり「!」ハッッ
ことり「はっはい、ことりです。ごめんなさい、時間過ぎちゃってますよね!えっと、一階のインフォメーション辺りに行けば──」
ことり「────え…!?」 呼ぶ声 2/12
ことり「小原さん!」
鞠莉ママ「! こ、コトリ!」
ことり「──まりちゃんとはぐれたって…!」
鞠莉ママ「そうなのデス…つい自分の買い物に熱中してしまっていて、ふと気づいたときには…」オロ…
ことり「落ち着いてください。私は順番にお店を捜して回るので、小原さんは迷子の呼び出しを…」
鞠莉ママ フルフル
鞠莉ママ「マリは shy デスから、自分から名乗り出ることは恐らくできまセン」
ことり「あ、そ、そっか…」
ことり「だったらもう、二人で捜すしかないですね。小原さん、どんなルートでお買い物したか覚えてますか?」
鞠莉ママ「足取りくらいなら」
ことり キョロキョロ
ことり「フロアボード!あれ見ながら、大体でいいのでルートを教えてください!」
鞠莉ママ「は、ハイ…」
ことり「一秒でも早く迎えにいってあげなくちゃ──大好きな人と離れるなんて、絶対に寂しいに決まってるもん…!」 呼ぶ声 3/12
少し前
まり「ママ、このスカート似合いそうよ」
鞠莉ママ「好きな色デス、さすがねマリ」
まり「えへへ〜」
「ご試着なさいますか?」
鞠莉ママ「そうデスね、だったらこれと、これと…これと、これと、ウーン…これと…」
「…!?」
まり (もっとママに似合うお洋服探そーっと) キョロ
まり「あ」
まり「さっき見かけたブーツも似合いそうよね。何階だったっけ…」チラ
<それと向こうの blue の…
<は、はぃぃっ!
まり (しばらくはこのお店にいるよね。ぱっと行ってブーツ借りてこようっと)
まり タタタタ… 呼ぶ声 4/12
鞠莉ママ「マリが選んでくれた色が最高ね、やはりワタシの自慢の娘デス。card は使えマスか?」
「はい、お使いいただけます」
鞠莉ママ「ではこれで、会計を」スッ
「お預かりします」
鞠莉ママ「マリ、待たせたわね。いいコにしていまシタか?」
鞠莉ママ「…………マリ?」キョロキョロ
シン…
鞠莉ママ「ェ…」
「お客様、こちらにサインを」
鞠莉ママ「ま、マリを見ませんでシタか!?」
「え!?」
鞠莉ママ「ワタシの娘デス!さっきまでその辺りで服を見ていたでショウ!」
「あ、あれ…?そういえば、いませんね…」
鞠莉ママ「────………!」
鞠莉ママ「マリ、マリ…!そう、コトリ…コトリに電話を…!」
──ことり「はっはい、ことりです。ごめんなさい、時間過ぎちゃってますよね──」 呼ぶ声 5/12
まり (ブーツ貸してもらえなかったわ)
──「どうかしたかい、お嬢ちゃん」
──まり ビクッ
──まり「ぁ、あのあの、その、ブーツ、ママに…はいてみて、ほしくて…だから…」ゴニョゴニョ
──「ブーツ?さっきから見てるそれかい?」
──まり コクン…
──「お嬢ちゃんには少しだけ大きいかもしれないな。それよりほら、こっちの可愛いのはどうだい?」
──まり「ぇと、はくの、ママだから…こっちの、かっこいい方、で…」ゴニョゴニョ
──「そうか、そうだね。ママと一緒の方がいいかもしれないな。よし、このブーツはおじさんが取っといてあげるから、ママを呼んでおいで」
──まり「ちが、こっちのブーツ、少しだけ、貸して…ほしく、て………」
──「ん?そっちはママにかな?それじゃ一緒に取っといてあげよう」
──まり モジモジ…
──まり ペコッ タタタタ…
──「急がなくていいからね〜」
まり「…まったく!まり一人で自分のブーツも選べないみたいな言い方して、失礼しちゃうわ。こうなったらあの可愛いブーツも買ってもらっちゃうんだから」プン
まり「ママ、向こうでかっこいいブーツがあったんだけ──ど──」
まり「あれ、ママ………?」 呼ぶ声 6/12
「あ!店長、あの子…!」
「ねえキミ」
まり「!?」ビクッッッ
「お母さんが捜してたよ、もう行っちゃったけど…よかったらここで待たない?うちのスタッフに呼び出しの放送させてこよっか、ねえ、誰か下行ける人いるー?さっきの金髪のお客さん呼び出してほしいんだけど。キミ、お名前……あれ!?」
まり コツゼン
「顔面蒼白って感じで出ていっちゃいましたよ、店長」
「ええ…私、怖かった…?」
「いや、別に…」 呼ぶ声 7/12
まり フラフラ…
ママ──どこ──?
──ァハハハ!まじウケるんだけどー!
まり ビクッ
勝手に離れたから、怒って帰っちゃったの──?
でもね、聞いて、悪いことしたわけじゃないんだよ──
ただママに、ブーツをはいてほしかっただけなの──
──ママ、アイス食べたい!
──仕方ないわねえ、パパには内緒よ
まりは──アイスなんかいらない、なんにもいらない──
ママ──お願い──会いたい──どこにいるの──まりの手を、握ってほしい── 呼ぶ声 8/12
「あれ、お嬢ちゃん一人?」
まり「ぁ…」ビク…
「ママのとこ行こっか、連れてってあげるよ」
まり「ほ、ほんと…?」
「うん。だからあっちに──」
まり フラ…
「妹をどこへ連れていくつもりですか?」
「!」
まり「…!」
ことり「母と父が待ってるので、失礼します。面倒を見ていただいてありがとうございました」キッ
「ちっ…なんだよ…!」スタコラサッサ
まり ポカン… 呼ぶ声 9/12
まり「こ、とり…」
ことり「────まりちゃんっ!!!」ガバッッッ
まり「むぎゅう!?」
ことり「まりちゃんまりちゃん!遅くなってごめんね、怖かったよね、どこも痛くない?変なことされなかった?私のことわかる?」ギュウウウウッ
まり「ぐぇ、苦し…」
まり「だ、ダイジョブよ、なにもされてない、痛くもない…ってゆーか今あなたに痛くされてるんだけど、ちょっと、いったん、離れて…よっ!!」グイ
ことり「きゃっ」
まり「もう、なんなのよ!いきなり飛び付いてきて!」
ことり「だってぇ、まりちゃん見つけたら安心しちゃって…」
ことり「一人ぼっちにしてごめんね。来るのが遅くなったのも、ごめん」
ことり「でも本当に、なにもなくてよかった──間に合って、よかったぁ…」
まり「!」 呼ぶ声 10/12
まり「まに、あって…」
──「あれ、お嬢ちゃん一人?」
──「ママのとこ行こっか、連れてってあげるよ」
まり「なにも、なく…て……」
──「だからあっちに──」
まり「………………!!」ゾッ…
まり「わ、わたし、さっきの人、ママのとこ、連れてってくれるって、言われて…」
まり「わた、し…」カタカタ…
まり「あのままだったら、わたし…っ」ブルブル
ことり「大丈夫だよ」ギュ
ことり「私、ちゃんと来たでしょ。ママじゃなくて残念だったかもしれないけど、我慢してね。まりちゃんに良くないことしようとする人なんか絶対に私が許さない──」
ことり「ことりのおやつに、してあげるんだから」ニコッ
まり「……………っ」 呼ぶ声 11/12
まり「…こ、ことり……っ」ジワ…
ことり「うん」
まり「来て、くれて、ありがと…」
ことり「うん」
まり「さみしかったの、ママとはぐれて。怖かった、一人ぼっちも、あの人…も」
ことり「そうだよね」
まり「ことり………っ、ことりぃぃ……!」ブワッ
まり「わぁぁぁぁぁん………!ぅわぁぁあああああん…………!」
ことり「よしよし。大丈夫──大丈夫だよ」ポン…ポン… 呼ぶ声 12/12
『コトリ:まりちゃんと合流できました』ヒュポ
鞠莉ママ「ああ…!よかった…!」
『コトリ:よく聞いておいてくださいね』ヒュポ
鞠莉ママ「ン?」
──『淡島よりお越しの、小原様…淡島よりお越しの、小原様…』
──『お子様達がお捜しです。一階インフォメーションセンターまでお越しください…』
鞠莉ママ「ワタシが迷子になったような呼び出し!?」ガーンッ だってママだもの。 1/5
ブゥゥゥン…
ことり「わ。西日が海に反射して──見て見てまりちゃん、すごくきれい…」
まり ウト…ウト…
ことり「疲れちゃった?」
まり「ううん、そんなことないわ。ちょっとだけ、ちょっとだけ…だもん…」ウト…
ことり「ことりのおひざ、使う?」ポンポン
まり「や。ママの、おひざ…が…」コロン
まり スー
ことり「今日から私がママみたいです」フンス
鞠莉ママ「なにを言っているのデスか」 だってママだもの。 2/5
まり スー
ことり ナデ…
ことり「やっぱり、髪の毛とってもさらさら」
鞠莉ママ「コトリ。今日は本当にアリガトウございまシタ」
ことり「! もういいですってば、私だってまりちゃんから目を離したわけですし、こうして何事もなく一緒に帰れるんですし」
鞠莉ママ「…ハイ」
ことり「それに、結局みんな買ってもらっちゃいましたし」ガサ
鞠莉ママ「…本当にそんなものでよかったのデスか?それでは余計にコトリの時間が減るだけなのでは…」
ことり「ううん、これがいいんです。私の数少ない得意なことなので」
鞠莉ママ「そう」
ことり「はい」 だってママだもの。 3/5
『次は江の浦、江の浦…』
ことり「今日の晩ごはんはなにかな〜」
鞠莉ママ「初めてデスか、コトリが手伝っていないゴハンは」
ことり「はい。家野さんのお料理、美味しいから大好きです」
鞠莉ママ「ワタシが鍛えただけのことはありマスね」
ことり「え?小原さんが…?味が気に入らなくて何度も作り直させたみたいなことですか…?」
鞠莉ママ「イヤイヤ、ワタシが料理を教えたのデス。イエノに」
鞠莉ママ「教えたのは基礎だけなので、今のウデはイエノ自身のものだけれどね」
ことり「……………………????笑?」フヒ…
鞠莉ママ「とんでもなく失礼な反応ね」 だってママだもの。 4/5
ことり「どうしてごはん作ってあげないんですかー!」チュン!
鞠莉ママ「こ、コトリ。マリが起きてしまうでショウ…」
鞠莉ママ「作ってあげないというわけでは、ホラ、普段は仕事でなかなか家にいないので、ワタシが料理をしたらイエノの仕事も」ゴニョゴニョ
ことり「今はお家にいるじゃないですか。今日もこのまま帰りますよね」
鞠莉ママ「は、ハイ…」
ことり「家野さんが毎日お料理しかしてないなんて思ってますか?」
鞠莉ママ「の、ノン…」
ことり「他には?」
鞠莉ママ「エト、その…」
ことり ジーーーーーッ
鞠莉ママ「…っ」タジ…
ことり スマホ サッ
鞠莉ママ「!」
ことり「もしもし、ことりです。はい、帰ってるところです、バスの中なので手短に。晩ごはんはどこまで用意しちゃいましたか?はい、はい。だったら下味まで着けて、今日は冷凍してもらえますか?はい………」
鞠莉ママ オロ… だってママだもの。 5/5
ことり「それじゃ、もうすぐ帰りますね」ピ
鞠莉ママ「コトリ、なにを…?イエノに指示を出していたようデスが…」
ことり「はい」
ことり「ごはん作るのやめてもらいました。帰ったら小原さんが作ってくださいね」ニコッ
鞠莉ママ「!? な、なぜデスか!?」
ことり「だって、ことりだったらお母さんの手料理たくさん食べたいから〜」エヘヘ
鞠莉ママ「だからと言って急に──」
ことり「なに作りますか?お手伝いならしますよっ」ニコニコ
鞠莉ママ「ーーー〜〜〜……っ…」
鞠莉ママ ハァ…
鞠莉ママ「材料はなにを買ってきたと?」
ことり「手付かずで残ってるのは、鶏肉と、ブロッコリーと…」
鞠莉ママ「ハイハイ…」ヤレヤレ
ブゥゥゥン… 雪解けの初日 1/3
まり「ごちそうさま!とっても美味しかったわ、ママ!」
鞠莉ママ「そ、そう。ワタシが作ったのだから当然デス」コホン
家野「やはり奥様の料理は美味しいですね。久し振りに味わいました」
鞠莉ママ「やめなサイ、イエノまで…」//
ことり「ほんと、美味しかった〜。普段と違って『人の料理』って感じだったなあ」ホッコリ
鞠莉ママ・家野「「どういう意味デス/ですか?」」 雪解けの初日 2/3
まり「お風呂に入ってくるわね」
家野「お湯も沸かしてありますので、よければお浸かりください。長い外出でお疲れでしょうから」
まり「ありがと!」
ことり「まりちゃん、ことりが頭洗ってあげよっか!」
まり「…」
まり「したいなら好きにすれば」プイッ
三人「「「………!!」」」
ことり「えっえっ、いいの?一緒に入っていいの!?」ガタ
まり「待たないからね。遅かったら一人で洗い終わっちゃうから」スタスタ
ことり「あ、わ、待ってまりちゃん!えっとごちそうさまでしたっ、お皿っ、調理場に置いておいてください!お風呂から出たらみんな私が洗うので!あっ痛たっ!」ガンッ
鞠莉ママ「お、落ち着きなサイ…」
ことり「ぉふ、お風呂に入ってきます!」タタタ 雪解けの初日 3/3
<ほんとに?ほんとにことりもついていっていいの?
<うるさい。じゃあだめ。来ないで
<やだ、まりちゃんいいって言ったもん。
<言うこと聞かないから聞かないでよ!
<嬉しいな〜まりちゃんとお風呂。嬉しいな〜
<変なことしたら許さないからね
<うん!
家野「今日一日で、随分と親しくなられたようで」
鞠莉ママ「そうみたいね」
家野「なにかありましたか?」
鞠莉ママ「…」
鞠莉ママ「コトリがマリのママになったことくらいデスかね」
家野「ほう」
家野 (くらい…?) 一人きりなら呑み込めたもの 1/6
夜…
コンコン
鞠莉ママ「いマスよ」
ことり「こんばんはぁ」キィ…
鞠莉ママ「コトリ。どうかしまシタか?」
ことり「入ってもいいですか?」
鞠莉ママ「構いまセンが」
ことり「お邪魔しますっ」トコトコ
鞠莉ママ「そこに掛けなサイ」
ことり「失礼します」ポフ
鞠莉ママ「どうしたのデスか。マリの部屋へ行ったのでは」
ことり「追い返されましたぁ…」シュン
鞠莉ママ「距離を詰めるのが速過ぎるのでショウ」←予想してた 一人きりなら呑み込めたもの 2/6
ことり「だって、一緒にお風呂はいれたからもう大丈夫かなって…」
鞠莉ママ「お風呂でもイヤがられていたようでシタが」
ことり「き、聞こえてたんですか!?」ガンッ
鞠莉ママ「あれだけ騒いでいれば coffee を飲んでいても聞こえマス」ヤレヤレ
ことり「うう〜…」
ことり「今日はあんなことがあったから、まりちゃんも寂しいかなって思って…甘えてくれるかなって思ったり…」モゴモゴ
鞠莉ママ「そんな企みが」
ことり「はあ〜〜〜…」
鞠莉ママ「コトリ」
ことり「はい…」
鞠莉ママ「寂しいのは、アナタなのではありまセンか?」
ことり「…!」 一人きりなら呑み込めたもの 3/6
ことり「えっ、と…」
鞠莉ママ「恋しいモノが、あるのでショウ」
鞠莉ママ「その年で産まれ育った国も離れて、母親の元も離れて、たった一人頑張っているのだから」
鞠莉ママ「自分が決断した道とは言っても、迷うことも後悔することもあるはずデス」
鞠莉ママ「会いたい人が、いるのでショウ──」
ことり「…………」
鞠莉ママ「来なサイ」
鞠莉ママ「ハグをしまショウ」スッ
ことり「………っ、…!」
ことり フラ…
ことり …グッ フルフル…
鞠莉ママ「なにを遠慮することがあるのデスか。言ったはずデスよ」
鞠莉ママ「ここにいる間は、全てコトリが思うように──したいようにしなサイ、と」
ことり「………………!!」 一人きりなら呑み込めたもの 4/6
ことり「小原…さん」
鞠莉ママ「ハイ」
ことり「少しだけ、……ても…いい、ですか…」ボソ
鞠莉ママ「──当然デス」
鞠莉ママ「この二週間は、ワタシがコトリの母親デスよ」
ことり タッ
ことり ギュウッ
ことり「さみしい…」 一人きりなら呑み込めたもの 5/6
──まり「かなん!みかんジュースまりにもちょうだい!」
──かなん「まりは紅茶じゃないの?」
──まり「どっちも飲むの!」
──かなん「はいはい。まったくまりってば」
ことり「さみしいよぉ…!頑張るって決めたけど、みんなに迷惑かけてまで選んだ道だけど、やっぱりさみしい!」
──まり「じゃあママ!まり寝るね!」
──鞠莉ママ「ええ、お休みなサイ、マリ」チュ
ことり「お洋服の道なんかもういい!難しいしつらいし、なによりこんなにさみしいだけなら──もうやだ…!みんなのところに帰りたい…!」
──まり「ごちそうさま!とっても美味しかったわ、ママ!」 一人きりなら呑み込めたもの 6/6
ことり「会いたいよ──穂乃果ちゃん。海未ちゃん。…………お母さん──」
ことり グスン…グスン……
鞠莉ママ ポンポン…
…
ことり スー
鞠莉ママ「眠ってしまいまシタか。ワタシの bed を独り占めして、いけない子デース」
鞠莉ママ「かかえているものはたくさんあるのでショウね。その年齢で、大きな決断だったに違いないもの」
鞠莉ママ「ワタシにはあなたの人生を決めることも、その責任を背負ってあげることもできまセンが──」
鞠莉ママ「今は、隣で眠りまショウ」
鞠莉ママ「good night, コトリ」
カチ… 行くぞ内浦探険隊! 1/7
五日目、日曜日
ことり ルンルンルン
家野「おはようございます、ことりさん。なんだかご機嫌ですね」
ことり「そうですか?そんな風に見えますか??」ニコニコ
家野「はい、とても」
ことり「別に、うーん、なにもないんだけどなあ」エヘヘ
家野「………そうですかね」
鞠莉ママ「Good morning, イエノ」トコ…
家野「おはようございます、奥様」
ことり「!」タタタ…
ことり「おはようございますっ、小原さん!」
鞠莉ママ「…二回目デスよ」
ことり「朝の挨拶は何回したって気持ちいいものですよ!」
鞠莉ママ「ハァ…」 行くぞ内浦探険隊! 2/7
まり「おはよー」トコトコ…
ことり「!」タタタタッ
ことり「まりちゃあんっ、おはよおおお!」
まり「うわっなに!?きもちわる!」
ことり「まだ一回目だよ!?」ガーンッ
まり「はあ?一回目…?」
家野「どうなさったのでしょうね」
鞠莉ママ「サテね…ワタシはなにも知りまセン。それよりもイエノ、breakfastの用意を」プイ
家野 (あっ、これなにかご存知のやつですね)
家野「はい、ただいま」ペコ… 行くぞ内浦探険隊! 3/7
朝食中…
家野「お嬢様、今日はなにかご予定がありますか?」
まり「ううん、なんにも。かなんと遊ぼうかな〜」
鞠莉ママ「マリ。ハグゥの他にもトモダチはいないのデスか?もっとこう、淑やかな…」
まり「そうよね、かなんと遊ぶならダイヤも呼ぶわ!」
鞠莉ママ「そ、そうではなくて…」
ことり (はぐう?) 行くぞ内浦探険隊! 4/7
家野「せっかくですし、果南さんと一緒に内浦の町をことりさんへご案内してあげてはどうですか?」
ことり「!」
まり「え〜、」
──かなん「ことちゃんだね、よろしく!」
──ことり「ことちゃん…えへへ…♡」
まり ムムムー
ことり「はいはいはい!行きたいですっ、まりちゃん達に内浦の案内してほしいなっ!」
家野「だそうですよ」
まり「…」
まり「わかったわ」
家野「おっ」
鞠莉ママ「ほう」 行くぞ内浦探険隊! 5/7
ことり「! やった、それじゃ…」
まり「でも内浦を歩くなら、三人じゃなくて二人がいいわ」
ことり「そ、それってまりちゃんと二人!?やんやんっ、ことりも大賛成…!」
まり「そう」ガタ
まり「まりとかなんの二人がね!ごちそうさまでした!」ダッシュ!
ことり「あっ!?ままま待ってまりちゃん!ことりも行く〜〜〜!」ワタワタ
家野「相変わらずのようですねえ」
鞠莉ママ「イエノ、coffeeのおかわりを」
家野「はい、ただいま」カチャ… 行くぞ内浦探険隊! 6/7
船頭「三人で仲良くおでかけかい!いいねえ」
ことり「はいっ♪」
かなん「ダイヤのとこに行くんだよ!」
船頭「おー、いいじゃねえか。おじちゃんも行っちゃだめかい?」
かなん「だめ!」
船頭「あたたた、まいったなあ」ハッハッハ
まり「いいから早く出して〜」
船頭「おっと、そうだったな。揺れるから掴まってな!」
ことり ガシッ
まり「まりにじゃなくて手すりにでしょ!」
かなん「じゃ私も〜」ガシ
まり「…」←まんざらでもない 行くぞ内浦探険隊! 7/7
家野「気を付けていってらっしゃいませ」
かなん「行ってくるねー!」ノシシシ
まり「夕方には戻るわね」
家野「はい。美味しい晩ごはんを用意して待っていますよ」
ことり「ま、ままま、まりちゃん達のことはことりにお任せください…」
家野「…果南さん、ことりさんのことをお願いしますね」
かなん「まかせて!」
船頭「そいじゃ出すぜい!」
ブ…
ブゥゥゥゥン…
<ぴぃぃぃぃ〜〜〜〜……!
家野「相変わらずなのはお二人とも、ですか」クスッ 冷たい甘い、ムジュンが愉快 1/4
ことり「これが…内浦…!」パァァァ
まり「別に、よくある港町でしょ」
かなん「まり、内浦の他に港町なんか見たことあるの?」
まり「…ないけど!そういうものでしょ!」
かなん「佐世保とか函館もそうなんだってさ」
ことり「かなんちゃん、詳しいんだね」
かなん「うん!じいちゃんがよく聞かせてくれるんだ、色んな町のこと」
ことり「へ〜、よく旅行に行かれるの?」
かなん「んっとねー、お父さんは『おやじのあれは旅行じゃなくてホーローだ』って言ってた」
ことり「放浪」
まり「ねねねかなん、つじそーさん寄っていきましょうよ」グイ
かなん「いいよ、みかんアイス食べよっか」
まり「うん!」 冷たい甘い、ムジュンが愉快 2/4
辻宗商店
かなん「おばあちゃーん、おはよー!」
まり「おはよー!」
「ああおはよう、かなんちゃん。まりちゃん。今日も元気だねえ」
かなん「えへへー。ねえ、みかんアイスちょうだい!」
「はいはい。まりちゃんも食べるかい?」
まり「もらうわ!」
かなん「ことちゃんも食べるでしょ?」
ことり「! あっうん、食べてみたいな。私にも頂けますか?」 冷たい甘い、ムジュンが愉快 3/4
「おや、見ない顔だね。かなんちゃん達のご親戚ですか?」
ことり「私は、」
かなん「この人はねー、ことちゃんっていってねー、まりの………………まりのなに?」
まり「この前からうちに住んでる人よ」
ことり「あ、新しいメイドですっ!」チュン!
かなん「あはは、それだ。メイドさん」
「そうかいそうかい、みんな仲良しみたいでいいねえ。じゃ今日はおばあちゃんが奢ってあげようかね」っみかんアイス
まり「ほんと!?やったーっ!」
かなん「ありがと、おばあちゃん!」
ことり「えっ、い、いいんですか!?二人の分だけで、私は出します…」ゴソゴソ
「いいんだよ、若い子が遠慮するもんじゃないさ。美味しかったらまた買いにきてくださいな」
ことり「あ…ありがとうございます。お言葉に甘えて、頂きます」
「うんうん」 冷たい甘い、ムジュンが愉快 4/4
まり「んー、おいし〜っ」チュー
かなん「このいっぱいのために生きてる!」チュー
ことり「待って二人とも、ことりも食べる〜!」
かなん「ことちゃんってば遅いよー」
ことり「…ん、美味しい!」チュー
かなん「へっへー、そうでしょー」
ことり「さすが、まりちゃんお気に入りのお店だね。おばあちゃんも優しいしアイスも美味しいな」
まり「そりゃそうよ、まりの目に狂いはないもの!」
かなん「えー、まりってばちょっと前まで恥ずかしがって来なかったじゃん」
まり「か…かなん!余計なこと言わなくていいの!」
アハハハ…
「今日も暑くなりそうだねえ」 観光案内人かなん 1/3
かなん「あれがね、おきしーてっく」トコトコ
ことり「なんの建物なの?」
かなん「わかんない!」
まり「オキシーテックは、海洋音響測定の試験とか評価をする専門の会社よ」
ことり「えっ!まりちゃんすごい、なんでそんなこと知ってるの!?」キラキラ
まり「!」//
まり「べ…別に、これくらい小原の人間としては当然の知識だもの!すごくなんかないわよ!」プイッ
かなん「かいよーおんきょー?」
まり「…海の中で音を測って、海の中の環境を調べるのよ」
かなん「おー、わかりやすいね!なるほどなるほど、確かに海の中って色んな音が聞こえるもんね」
ことり「そうなの?」
かなん「うん。それで今日は機嫌がよさそうだなーとか、あんまりよくなさそうだなーとかわかるんだよ」
ことり「へ〜!」 観光案内人かなん 2/3
かなん「それでね、ここの道を向こうに行ったら、私達の学校があるんだよ」
まり「あっかなん…」
ことり「! わかった、覚えておくね!」ゞ
まり「いいの覚えとかなくて!忘れて!絶対に来ないで!」
ことり「今週雨が降るみたいだよ?」
まり「だからなに!かささすから平気だもの!」
ことり「可愛いレインコート探しておかなくっちゃ」ムンッ
まり「着ないからね!」
かなん「私はアマガエルのレインコート持ってるんだよ。今度見せてあげるね」
ことり「うんっ、楽しみにしてるね」
まり「聞きなさいってば!!」 観光案内人かなん 3/3
かなん「そこがねー、かき氷屋さんでー、郵便局でー、こっちがぎょぎょー組合でー」
ことり「色んなお店があるんだね」
まり キョロキョロ
ことり「まりちゃん?」
まり「あ、うん。あんまりこっちには来ないから…」
ことり「あれ、そうなの?」
ことり (てっきりかなんちゃんと一緒によく来てるのかと思ったけど…)
かなん「でね、あれが松月さんだよ」
まり「松月さんは覚えてるわ。みかんタルトを食べたところよね」
かなん「そーだよ。でもさっきみかんアイス食べたから今は行けないね」
ことり「お菓子屋さんなの?」
かなん「喫茶店なんだって〜」
ことり「…わあ、ショーケースにケーキとお菓子がいっぱい!見て見てまりちゃん、かなんちゃん!」
まり「ちょっと、外から覗くなんてやめてよ恥ずかしい…」
かなん「私らには高いんだよね〜」
ことり「そっか、そうだよね…」
まり「もう、早く行きましょうよー」 敵陣到達!囚われの果南!? 1/3
かなん「♪せーんろっはつづくーよー どーっこまーでーもー」
ことり「♪やーまこえたにこーえー てーんまでとどけー」
かなん「そんな歌詞だっけ?」
ことり「あれ、違ったっけ…」
かなん「ま、いっか!でもことちゃん歌うまいね!」
ことり「えへへ、そうかなあ」
まり ソワソワ…
ことり「まりちゃん?またなんだか落ち着かない様子だけど、どうかした?」
まり「どうもしてない、けど」モゴモゴ 敵陣到達!囚われの果南!? 2/3
かなん「こんにちはー」スッ
ことり「ってかなんちゃん!?そんな自然にどこ入っちゃうの──」ギョッ
『十千万』
ことり「じゅっ、せん…まん……?旅館…?」
ことり「あっかなんちゃん、勝手に入ったら怒られちゃうよ!」アワワ
まり「かなんなら放っといて平気よ」
ことり「で、でも…」オロ
まり「気になるなら覗いてきていいと思うけど、っていうかすぐには戻ってこないと思うから…」
ことり「へ?どういうこと??」
<あっはっはっはっは!!
ことり「!?」ビクッ 敵陣到達!囚われの果南!? 3/3
ことり「かなんちゃんと…元気そうな女の人の笑い声…」
まり「!」
まり サササッ
ことり「まりちゃん!?」
ことり (よくわかんないけど、まりちゃんが私のかげに隠れた…!可愛い!) キュンキュン
美渡「おっ、初めて見る顔だ」ヒョコ
かなん ヒョコ
ことり「あ、かなんちゃん…」
美渡「どうしたんですか、そんなところに突っ立って。入っちゃいなよ」
かなん「はいっちゃいなよ」
美渡「いやいや、ここ果南ちゃんの家じゃないからw」
かなみと「「あははははは!」」ケラケラ
ことり「???」ポカン…
まり モジモジ… 高海さんとこの三姉妹、次女 1/5
十千万、ラウンジ
ことり「とちまんさん!」
──家野『十千万さんというのは本土にある老舗の旅館です。そちらにも年の近い娘さんがいらっしゃるのですが、どうもお嬢様は人見知りで、なかなか新しい友人を作ろうとなさらないのですよ』
ことり「そっか、ここが」
美渡「お?その感じ、名前は知ってたのかな」
ことり「はい、小原家の方から聞いてました」
美渡「そっかそっか。なんだっけ、小原さんとこでアルバイト?」
ことり「アルバイトというか、まあその…職業体験、みたいな…」アハハ…
美渡「なんだそりゃ。せっかくこんな辺鄙な町に来るんだったらうちでやってくれればよかったのに」
かなん「ねーみとちゃん、チカはー?」
美渡「だからいないって言ってるだろ。おとなしくお菓子食べてなって」
かなん「むー」ポリポリ
まり ホッ… 高海さんとこの三姉妹、次女 2/5
ことり「ちかちゃんって確か、」
美渡「うん、うちの末っ子。なんだ〜、そんなとこまで聞いてるんですか?もしかして敵情視察のために来たとか」ニシシ
ことり「そ、そんなんじゃないです!ダイヤちゃん?のところに行く途中だったんですけど…」
美渡「果南ちゃんが自宅かのように入ってったからびっくりしたってわけだ」
ことり「心配ないみたいですね」エヘヘ
美渡「まあね。果南ちゃんも千歌のお姉ちゃんみたいなもんだからさ、朝起きたらいたって驚かないくらいだよ」
ことり「そうなんですね」
かなん「でもチカいないんだってさ。曜の応援に行ってるんだって」
ことり「ようちゃんもお友だち?」
かなん「チカの双子だよ!」
ことり「えっ!?」
美渡「いや双子じゃないだろ。それくらい仲良しってだけだからw」
ことり (情報がごちゃごちゃしててよくわかんなくなってきた) 高海さんとこの三姉妹、次女 3/5
まり ポリ…ポリ…
美渡「鞠莉ちゃんでしょ?」
まり「!」ビクッ
まり「あ、はい、こんにちは、おは…小原…まりです…」
美渡「随分緊張しいだな。鞠莉ちゃんって人見知りなのか?」
かなん「まりは英語が話せるんだよ」
美渡「会話になってないだろ。なんでだよ」
ことり「ちょっぴり恥ずかしがり屋さんみたいで、私もまだなかなかお話しできないくらいなんです」ハハ…
美渡「そっかそっか、大丈夫。怖くないぞ〜、美渡ちゃんって呼んでみな〜」
まり ササッ
美渡「お?」
まり ギュ…(裾)
ことり「!」
美渡「…なんだ。お姉さん、全然なつかれてるじゃんか」
ことり キューーーンッ クラクラ…
美渡 (こっちはこっちで重症そうだな) 高海さんとこの三姉妹、次女 4/5
美渡「へー、じゃ私と同い年なんだ。しっかりしてるからもっと上かと思ったよ」
ことり「そうですか?友達にはいつもぼーっとしてるって言われてましたけど…」
美渡「うん。ぼーっとしてもいる」
ことり「もうっ!」チュン!
美渡「あははは、ごめんごめん。でもせっかく同い年なんだから仲良くしてよ。美渡って呼んでくれていいからさ」
ことり「美渡、ちゃん」
美渡「ことりちゃん」ニカッ
美渡「小原さんとこにいるんじゃよっぽどなにもないと思うけど、ま、なんかあったらいつでも頼ってよ。家族総出で助けにいくからさ」
ことり「わあ、ありがとう!」 高海さんとこの三姉妹、次女 5/5
美渡「さて。千歌もいないんじゃあの子らも退屈だろうし、黒澤さんとこに行くんだよね。あんまり引き留めちゃ悪いか」
ことり「お茶ごちそうさまでした」
美渡「静岡と言えばお茶だからね。美味しかったろ?」
ことり「はい!」
美渡「そろそろ行くってよー。なにやってんの?」
かなん「ここにまりの写真飾ろうと思って片付けてたんだよ!」
美渡「だからなんでだよ!こら、それは置いとかなきゃいけないやつだって、志満姉に怒られるだろ!」
かなん「私はあんまり好きじゃないけどな、これ」っ置物
美渡「知らないよ!」
ことり「うふふ…」
まり「………ふふっ」 メイドさん、正体見たり、枯れぬ花 1/5
ことり「ねえねえ、ダイヤちゃんってどんな子なの?」
かなん「ぷぷっ、ダイヤ…ちゃん…」ククッ
まり「どんなって…頭がかたくて、」
ことり (海未ちゃん?)
かなん「怖がりだよね」
ことり (海未ちゃん…)
まり「かなんが言う…?」
かなん「あと日本のおじょーさまだよ」
ことり「日本のお嬢様?」
かなん「うん。まりはアメリカのおじょーさまでしょ?それでダイヤは日本のおじょーさま」
まり「まりはアメリカじゃないけど…」
まり「立派な日本家屋に住んでるのよ。内浦では歴史のある名家だっても聞いてる」
ことり「へえ〜」
ことり (海未ちゃんんんん!!) メイドさん、正体見たり、枯れぬ花 2/5
かなん「それとねー、背が低くて、前髪がなくて、いつもルビィがくっついてるんだー」
ことり (前髪がない?ルビーがくっついてる??)
ことり (カチューシャで髪を上げてて、お気に入りの宝石かなにかを身に付けてる…の、かな…?)
まり (全然違う想像になってそう)
かなん「今日ルビィもいるかな?」
まり「どうかしらね。いてもこの人がいるから隠れて出てこないかもよ」
かなん「そっかー、私たちはことちゃん好きなんだけどね」
まり「………」//
ことり (鈴木財閥のお嬢様みたいな感じ…??) ムムム
かなん「あっほら、そろそろ着くよ」
ことり「!」パッ メイドさん、正体見たり、枯れぬ花 3/5
黒澤邸
ことり「わあ…本当に立派なお家…!」
かなん「つーしょー『黒澤邸』だよ」
まり「それまりたちしか呼んでないけどね」
ことり「黒澤邸って、歴史的文化遺産みたいな名前だね…あっ、そっか黒澤さんだもんね」フムフム
かなん ポチ
ことり (あ、ここではちゃんとインターホン押すんだ)
かなん「ダイヤのお母さんは礼儀にきびしいからね。勝手に入ったら怒られるんだよ」シーッ
まり「うちのママも怒ってはいるわよ…?」
かなん「まりのお母さんとみとちゃんは平気!」
『はい』
かなん「こんにちはー、かなんでーす。ダイヤいますかー?」
『あら、こんにちは。ダイヤさんね、少々お待ちくださいな』プツッ
かなん「はーい。いるって!」
ことり ワクワク… メイドさん、正体見たり、枯れぬ花 4/5
ジャリ ジャリ ジャリ…
かなん「あ、来た」
ことり「!」
かなん「やっほーダイヤ〜」ノシシ
まり「遊びにきたわよ〜」
ダイヤ「かなんさん、まりさん。おはようございます」トコトコ
かなん「あれ、ルビィが一緒じゃない」キョロキョロ
ダイヤ「ルビィはお琴のお稽古中ですわ。あと一時間もすれば終わると思いますが」
かなん「じゃ上がって待ってよっか!」
ダイヤ「それはかなんさんが決めることではないかと…もちろんいいですけど…」
ことり ポーッ…
まり ツンツン
ことり ハッ!!
ダイヤ「あら、そちらの方は?」キョトン
ことり (ぴええええっダイヤちゃんも二人に負けず劣らず可愛いいいい!!)
ことり「あっえっと、初めまして!」フンスフンス
まり (うわっだいぶ興奮してる…) ヒキ… メイドさん、正体見たり、枯れぬ花 5/5
ダイヤ ジーッ
ことり (見てる!ダイヤちゃんが可愛い目をぱちくりさせて私を見てる!まりちゃんともかなんちゃんとも違うこの反応、ずっと見つめ合っていたいくらい可愛いよぉ) キュンキュン
まり「早くあいさつしなさいよ」
ことり「あっあのあの私ね、まりちゃんのところでしばらくお世話になってます、
ダイヤ「南、こと…り……?」
ことり「!! 嬉しいなあ、ダイヤちゃん私のこと知ってくれてるんだぁ!そうですっ、私、μ'sの南ことりですっ♡」
ことり「…………………………………え?」ハッ…
ダイヤ ポカン…
ことり「あっ…うそ…」
まり「?? ダイヤ、知り合いなの?」
かなん「おっきなネコがいる!」
ネコ ニャー
ダイヤ「……………ぴ」
<ぴぎゃあぁぁぁああああ〜〜〜〜〜〜っっ!!!
<ふぇぇぇ〜〜〜んっンミチャ〜〜〜〜…! 娘の憧れ、母の願い 1/6
黒澤邸
カポーン… (ししおどし)
ことり セイザッ
ダイヤ セイザッ
まり(正座)
かなん アグラッ
ことり「あ、あの…」
ダイヤ「ピギャいっ!!なななな、なんでしょうか南ことりさん!様!」
ことり「さ、様じゃなくていいんだけど…」
ダイヤ「ではではではっみみみみ南ことり…っ孃…!」
ことり「それはなんだか普通にイヤだよ!?」ガーンッ
ことり「フルネームでもなくていいってば、まりちゃんやかなんちゃんみたいにただ名前で呼んでくれたらいいから」
ダイヤ「こっ、こっここここ……ここここ…」
かなん (ニワトリみたい)
まり (ダイヤがこんなことになってるの初めて見たわ)
ダイヤ「ころりさんっ!!!///」
ことり「疫病!!?」 娘の憧れ、母の願い 2/6
黒澤母「ようこそいらっしゃいました。粗茶ですが」スッ
ことり「すみません、頂きます」
まり「ありがとうございます」
かなん「おばさん、」
黒澤母「はいはい、お茶は嫌なのでしょう。ですが我が家にいる間はそう易々とみかんジュースが飲めるとは思わないでくださいな」
かなん「くっ…!ことちゃん!私はちょっと用事をすませてくるよ!」
ことり「へ?なに?なに??」
まり「気にしないで、いつものことなのよ」
かなん「うおーっ」スタスタスタ
ことり (掛け声の勢いの割には走らないで早歩き!黒澤さんの教育が行き届いてる!?)
黒澤母「差し支えなければ、ご一緒してもよろしいですか?」
ことり「! は、はいっもちろん!」
黒澤母「それでは」ストン 娘の憧れ、母の願い 3/6
黒澤母「改めて。黒澤ダイヤの母でございます」
ことり「初めまして。南ことりです」
黒澤母「南さんは、小原さんのところへお勤めの身なのだそうですね」
ことり「はい…ご存知なんですね」
黒澤母「ええまあ。放っておいても区内の情報が入ってくる場所なもので」
黒澤母「私には」
ダイヤ ガチガチ…
黒澤母「このやたらと緊張したダイヤと、妹のルビィ。二人の娘がおります」ポン
ダイヤ ハッ…
黒澤母「いつまで緊張しているのですか」
ダイヤ「お母さま…」
まり「あの」オズ
黒澤母「なんでしょう」
まり「どうしてダイヤはそんなに緊張してるの?ことりのこと、知ってるの…?」
黒澤母「ダイヤさん。ご自分で」
ダイヤ「は、はい」コク 娘の憧れ、母の願い 4/6
まり「──アイドル!?」
ことり「いやっ、あのねっ、アイドルって言ってもテレビに出てたわけじゃなくてね、学校の部活動でやってたってだけだよ」アセアセ
黒澤母「そうご謙遜なさらず。南さんが所属されていたグループ、それに当の南ことりさんといえば、その界隈にわずかでも興味を持てば知らずにいられない存在でしょう」
ダイヤ「そっそうですわ!」バンッ
ダイヤ「国立音ノ木坂学園スクールアイドルμ's!始まりのスクールアイドルとも呼ばれるA-RISEと並び、スクールアイドルの世界ではその名前を知らない人はいませんわ!」
ダイヤ「グループができてからほんの数ヶ月でラブライブ!本選に出場というところまで上り詰めた俊足のスクールアイドル!わたくしはA-RISEよりもμ'sの方が大好きなのです!」バンバン
ことり「わ、わかった。わかったから落ち着いてダイヤちゃん、机が壊れちゃうよ」オロ
黒澤母「ダイヤさん」
ダイヤ ハッ
ダイヤ「ご、ごめんなさい。取り乱しました…」
まり「うん、そうね」 娘の憧れ、母の願い 5/6
ダイヤ「…お母さまにお願いして、ずっとインターネットでμ'sの動画を観ていました。新しい動画が出たら何回も繰り返して観ましたわ」
黒澤母「一日になんべんもせがむので、とうとうホームページをスタートアップに設定したほどです」
ことり「それは…ありがとうございました…」
ダイヤ「ラブライブ!の本選はテレビで流れるので、やっと…やっと動くμ'sをテレビで観られるんだって、歌って踊るμ'sを応援できるんだって、……そう…思ってたのに…」
ことり グ…
まり「な、なに?どうかしたの?」
ダイヤ「μ'sは、本選への出場を辞退したのですわ…」
まり「ジタイ?」
黒澤母「本選に出るのをやめてしまったのですよ」
まり「え、なんで?」キョトン
ことり「…っ」
ダイヤ ジワ…
黒澤母「…」 娘の憧れ、母の願い 6/6
黒澤母「ご覧の通り、ダイヤはμ'sさんに対して強い思い入れを持っています」
黒澤母「たまたま知り合っただけのそんな一人に、しかも現役を退いていらっしゃる御身に無茶を申し上げることは致しませんが」
黒澤母「袖触れ合うも多生の縁。もしご迷惑でさえないのならば、南さんのご無理でない範囲で、娘の話に付き合ってやってはいただけませんか」ペコリ…
ことり「そっそんな、頭を上げてください!私なんかでよければ、こちらこそっダイヤちゃんとたくさんお話ししたいくらいで!」
黒澤母「そうですか。やはり、お優しい方なのですね」
ことり「私なんか、たまたま運に恵まれただけのいちメンバーだっただけなので…たいしたことないんです」
黒澤母「そうでしょうか」
黒澤母「私も娘達に並んで何度もμ'sさんの歌や踊りを拝見しましたが、そこに映る南さんの姿に、笑顔に、歌声に、他の方々と見劣りする部分など全くなかったように思います」
黒澤母「…さて」スッ
黒澤母「これ以上母親が傍にいては話もしづらいでしょうから、私は奥へ下がります。ダイヤさん、くれぐれも失礼のないように」
ダイヤ「はい…」グシグシ
黒澤母「妹も、後ほどこちらへ寄越してよいですか?同じくμ'sさんのことが大好きなのです」
ことり「はっはい、ぜひ!」
黒澤母「それでは一旦失礼いたします」ススス 問う者、噤む者、明かす者 1/6
ダイヤ「…」
ことり「…」
まり「…」
ことり「ダイヤちゃん、あのね」
ダイヤ「どうして」
ダイヤ「どうして、μ'sは解散してしまったのですか」
ことり「っ…」グ…
まり「あ、解散したのね…」
ダイヤ「わたくしたちはたくさんのスクールアイドルを見てきました。
最初はグループだったのに少しずつ減っていて最後にはひとりぼっちになってしまった方や、二年間活動していても全然お名前が有名にならないグループ、どこどこの下位互換、なんて言われているようなグループ」
ダイヤ「たくさん、たくさん。ルビィと二人で知らないグループを見つけてはいっぱい調べて曲を聴いて。そんな風にずっとスクールアイドルを追いかけてきましたが」
ダイヤ「そうして出会ったスクールアイドルの中でも、μ'sの皆さんが大好き……いちばん好きでしたわ!」
ダイヤ「ラブライブ!本選で優勝して、テレビや雑誌にもたくさん出て、曲もたくさん出して、もっともっと好きになる──なりたかった、のに…」
ダイヤ「…………どうして…」ポロ… 問う者、噤む者、明かす者 2/6
ことり「それは……それは、」
──ヒデコ『え!?穂乃果達、解散しちゃうの!?』
──フミコ『ってかことりちゃん海外行っちゃうの!?えーん、寂しいよー!』
──ミカ『まー、無理は言えないじゃん。いちクラスメイトの私達がさ』
──『解散したってまじ?』ヒソ
──『予選突破した〜って騒いでなかったっけ』ヒソ
──『なんか、リーダーの子が倒れたとか』ヒソ
──『うっそ自己管理できないとか、だっさ!』ヒソ
──『ネットニュース』
──『俊足のスクールアイドル、μ's!本選辞退!原因はメンバー間の不仲か!?』
──『μ's解散!本選辞退から見る「計画的解散」の背景とは』
──『かなC』
──『WZ好きだったのにな〜』
──『スクールアイドルは所詮量産品』
──『俊足解散w』
ことり「それ…………は……」
まり「もうやめて」 問う者、噤む者、明かす者 3/6
ことり ハッ
ダイヤ「!」
まり「なにがあったのか知らない、まりにはわからないけど、これ以上ことりにそのことを思い出させるのはやめて。ダイヤ」
ダイヤ「で──ですが、わたくしは知りたいのです!本当に本当に好きだった、μ'sが解散してしまったのはなぜなのか…!」
まり「ねえダイヤ、ことりの表情を見て。今、あなたの目の前にいることりの表情を」
ことり「…!」
まり「わたしはみゅーずのことも、アイドルとしてのことりも知らない。ダイヤがそんなに好きになるんだからきっとすごく素敵だったんだろうなって、それだけはわかる」
まり「でも、もうそれは終わったことなんでしょ。きっと理由があったのよ、誰も知らない事情とか、そういうのが」
まり「ダイヤが本当にみゅーずのことを、ことりのことを好きだったんなら、これ以上ことりを苦しめないでほしいの」
まり「お願い──」ペコッ…
ことり「まりちゃん…」
ダイヤ「まり、さん…」 問う者、噤む者、明かす者 4/6
ダイヤ「ごめんなさい」
ダイヤ「自分が知りたいことだからと、ことりさんの気持ちを考えていませんでした。反省いたします…」
ことり「そんな、いいんだよ。私達を応援してくれてたんだから、それが気になるのは当然だもん」
ダイヤ「まりさんに言われるまで気がつかないなんて、ことりさんを前にして、わたくしは…とんでもない失礼を…」ジワ
ことり「わわわわっ、だだだ大丈夫だよ!ことり怒ってないよ、泣かないでダイヤちゃん!」
まり「ダイヤ」
まり「ことりはそれくらいで怒ったりしないわ。あなたのことをキライになったりなんかしないから、落ち着いて」
ダイヤ「!」
ことり「まり…ちゃん…」
まり「ふんっ」プイッ
ことり「まりちゃあん…♡♡」キュンキュン 問う者、噤む者、明かす者 5/6
ことり「まりちゃんっ、ことりのことそんな風に思っててくれたんだねっ。嬉しい!」ギューッ
まり「もーいーから!うるさい!ダイヤとお話ししなさいよ!ダイヤだって、せっかく憧れのことりに会ったんなら泣いてないで話したいこと話さないと損よ!ああもうくっつかないでってば!」ジタバタ グイ
ことり「ふぎゅ…そ、そうだよダイヤちゃん。なんでもお話ししよ、私ダイヤちゃんのこととかルビィちゃんのこととかたくさん知りたいな」
ダイヤ「は、はい。だったら、ええと、これを」ゴソ
『μ'sに会ったらききたい1000のこと! ダイヤ・ルビィ』 ドスン
ダイヤ「ルビィがまだいませんが、お夕飯までにみんな聞くには時間をむだにできませんわ!さあことりさん、たくさん教えてくださいな!μ'sのことが200個と、ことりさんのことは…どこからだったでしょうか」パラパラ
ことり「」
まり「ことり」
ことり ギギギ…
まり「がんばれ」ポン
ことり「ふぇえ〜〜〜んっ、ンミチャ〜〜〜〜………!!」
ダイヤ「えっ海未さん!?どこですか!?来ているのですか!?」バッ キョロキョロ
………………
……… 問う者、噤む者、明かす者 6/6
<ことちゃ〜〜〜んっヘルプミ〜〜〜〜!
ことり「かなんちゃんの声…?」
ダイヤ「いつもお一人でがんばっているのに、助けを求めるなんて珍しいですわね」
まり「それだけなついてんでしょ、この人に」ムゥ
ことり「なんだかよくわからないけど、ちょっと行ってくるね」タタタ
ダイヤ「お早めにお戻りくださいね!」ウキウキ
ダイヤ「はわ〜それにしても本物のことりさんにインタビューができるなんて、記者さんになったみたいですわ」ウットリ…
まり「みゅ
ダイヤ「はい!?なんでしょう!?」
──まり「みゅーずってそんなにすごかったの?」
──ダイヤ「すごいなんて言葉では言い表せませんわ!きらきら一生懸命でどうのこうのどうのこうのそうだ一緒に曲を聴きましょう!わたくしが好きなのは云々………」
まり「…ううん、なんでもない。ことりと話せてよかったわね」
ダイヤ「はいっ最高ですわ!」
まり「…」
まり「ねえダイヤ。ことり本人に話さないでいてくれるなら、わたしが──」
ダイヤ「はい…?」 愛しき者の膝の上 1/11
黒澤母「どうぞ」コト
かなん「わーいっ、いただきます!」グビグビ…
かなん「ぷはあ〜っ、この一杯のために生きてるぅ!」クーッ
かなん「ことちゃんも飲む?内浦のみかんジュースは最高だよ!」
ことり「悪いよ、それはかなんちゃんが頑張ってお手伝いしたご褒美のみかんジュースなんだから…」
かなん「おばさん、ことちゃんにも同じのを!」
まり「かなんがあげるんじゃないんかい」
黒澤母「飲みますか?」
ことり「いえ、私はお茶で結構です。とっても美味しいです、このお茶」
黒澤母「静岡と言えばお茶ですからね。当然のことです」ホホ
──美渡「静岡と言えばお茶だからね。美味しかったろ?」
ことり「ぷ…」ククッ…
黒澤母「?」 愛しき者の膝の上 2/11
ルビィ「ねーねー、いっしょに歌おー」クイ
ことり「うん、いいよ。なに歌おっか?」
ルビィ「ぼらりゃ!」ゥュ!
ことり「ぼ…なあに?」
ダイヤ「『僕らのLIVE 君とのLIFE』を歌いたいと言っているのですわ」
ことり「そっかあ、さすがダイヤちゃん!」
ルビィ「てーれれってってってって」チマチマ
ことり「かわわわわわわわわっ!!!♡♡♡♡(わあ!振付も覚えてるんだ、すごい!)」キューーーンッ
ルビィ「たしかないまよりも〜 あたやしいゆめ〜 つかまえたい〜」
ことり「♪大胆に飛び出せばO.K. マイライフ」
ことルビ「「〜〜〜〜〜〜♪」」 愛しき者の膝の上 3/11
ダイヤ「いくら映像で見慣れているといっても、ルビィがあんなにも自分から近づくだなんて」
かなん「ね。よっぽどことちゃんのこと好きになったんだな〜」ハハハ
ダイヤ「や、ですからルビィとわたくしは……まあいいですけど」
まり「でも本当に楽しそうに歌って踊るわね、ルビィは」
ダイヤ「まったく、ことりさんにインタビューしたいことが山ほど残ってるというのに、ルビィったら…」ウズウズ
かなん「ダイヤ踊んないの?」
ダイヤ「んなっ!わ、わたくしはそんな、ことりさんと歌って踊るなんて、おおおおそれ多いというかなんというか」
かなん「でも楽しそうだよ。ことちゃんすごく歌じょうずだし!私もやろっと!」スクッ
ダイヤ「え!?」
まり「…じゃあまりも」スクッ
ダイヤ「え!え!?」アワワ 愛しき者の膝の上 4/11
かなん「ことちゃん、私もまぜて!」
ことり「うんっ、一緒に踊ろ!」
まり「まりも歌うわ」
ことり「じゃあなにかみんなが知ってる曲にしよっか〜」
ルビィ「こたえなくていいんだ わかゅから〜……」ハッ
ルビィ「歌うのやめちゃだめー」クイクイ
ことり「あっごめんね、そうだよね。二人ともこの曲が終わるまで待ってね。♪何度でも諦めずに 探すことが僕らの挑戦」
まり「はー…すっごいキレイな歌声…」
かなん「この動き面白いね!こう、こう、こんな感じ?」クイックイッ
まり「あははは、かなんってば上手上手!」
ワイワイワイ…
ダイヤ「んま…」プルプル
ダイヤ「待ってください、わたくしも一緒にやります〜〜〜〜っ!」ワッ
かなん「やっと来た〜」
アハハハ…
………………
……… 愛しき者の膝の上 5/11
ことり「お世話になりました」
黒澤母「娘達と遊んでくださり、本当にありがとうございました。とてもよい想い出になったと思います。ほら二人とも、きちんとご挨拶をなさいな」
ダイヤ「今日はありがとうございました。憧れのことりさんとお話しできて、歌ったり踊ったりしたこと、わたくしの大切な想い出にします。おからだに気をつけて、」ハキハキ
ルビィ「ことりちゃー」ギュ
ルビィ「かえっちゃうのやだー」スリスリ
ダイヤ「………」
ルビィ「もっとあそぶのー」クイクイ
ダイヤ「…わ、わたくしだって我慢してるのに!ルビィってばずるいですわ!ことりさん帰らないでくださいな!」ギュ
ことり「あわわわ…」
黒澤母「こら、無理を言うのではありませんよ。暗くなってしまうでしょう」
ことり「よしよし、また来るからね〜」ナデナデ 愛しき者の膝の上 6/11
かなん「ことちゃん大人気だねー。まりもハグしないの?」
まり「しないわよ、同じ家に帰るのに。そろそろバス来ちゃうわよ」ヤレヤレ
かなん「聞いたよ、まり。ことちゃんのことかばってあげたんだって?」ヒソ
まり「! なんで!?」
かなん「さっきダイヤにね。まりに注意されちゃったって、少ししょんぼりしてたから」
まり「なにか聞いたの?」
かなん「ううん、中身は聞いてないよ。でもやっぱり優しいなって思ってさ。えらかったね、まり」ナデナデ
まり「も、もう!からかわないでよ!」プクー
かなん「あははは!よしよ〜し。ことちゃんの真似〜」ナデナデ
まり「も〜…!」// 愛しき者の膝の上 7/11
ことり「それじゃ行くね、またね。ダイヤちゃん、ルビィちゃん」
ルビィ「ぅゅー!ことりちゃー!」モガモガ
ダイヤ「ぅぶぶ………また来てくださいね」ウルウル
黒澤母「お気をつけてお帰りくださいな」
かなん「ばいばーい!ルビィもまたね!」ノシシ
かなん「おじゃましましたっ!」ビシッ
ことり (わおわお…さすが黒澤さん)
まり「お邪魔しました。ダイヤとルビィも、またね」
ことり「それじゃ二人とも、帰ろっか」
かなん「はーい」
まり「走らないとバス来ちゃうかもよ」
ことり「わ、大変!急ご!」
かなん「負けないよー!」タタタタタ
まり「かなんったら待って〜!」タタタタタ
ことり「え!?お、置いてかないで〜!」タタタ… 愛しき者の膝の上 8/11
黒澤母「さあ、家に入りますよ」
ルビィ「はぁぃ…」テチテチ…
ダイヤ「…」
──まり『ねえダイヤ。ことり本人に話さないでいてくれるなら、わたしが──』
──ダイヤ『はい…?』
──まり『ことりがアイドルをやめた理由』
──ダイヤ『え──』
──ダイヤ『だってまりさん、ことりさんがスクールアイドルだったことすら知らなかったのでは…』
──まり『うん、知らなかったわ。だから正しく言うなら、「ことりが日本を離れた理由」なんだけど。これってたぶん、アイドルをやめたのと関係あるんじゃないかなって思って』
──ダイヤ『…!』
──まり『ママから聞いたの。ことりに言わないでいてくれるなら、ダイヤには…話しましょうか』
──ダイヤ『……………わたくしは…』
黒澤母「ダイヤさん、中へ。いつまでも姿が見えていては南さん達も困るでしょう」
ダイヤ「あっ、はい…」スタスタ… 愛しき者の膝の上 9/11
『沼津駅行き、発車します』
ブゥゥゥン…
かなん「ダイヤたち喜んでたね。あんなにはしゃいでるの初めて見たよ」
ことり「ね。みんなで歌って踊って楽しかったなあ」
かなん「ことちゃん歌もダンスもうま過ぎだよ!なにかやってたの!?」
ことり「あ、ああー…かなんちゃんはいなかったんだっけ。うん、まあ…高校の部活動でちょっとね」
かなん「へー、部活動かー。わたしも高校生になったら歌とダンスの部活やろうかな!」
ことり「わ、それいいね。まりちゃんとダイヤちゃんと?絶対応援しにいくよ!」
かなん「そのときはことちゃんも一緒にやるんだよ」
ことり「わ…私は部外者だし年齢が…!」
まり「…」ボーッ 愛しき者の膝の上 10/11
──ダイヤ『……………わたくしは…』
──ダイヤ『…結構、です…』
──まり『!』
──ダイヤ『それをまりさんの口から聞いてしまうのは、ズルだと思うので。μ'sが解散した理由、それはずっと知りたくて知りたくて苦しいことでしたけど』
──ダイヤ『まりさんに言われたこと。それに』
──ことり『ダイヤちゃん!』
──ダイヤ『わたくしはもう──充分過ぎるほどに、満たされましたから』
──まり『……そっか』
──ダイヤ『はい』ニコ… 愛しき者の膝の上 11/11
かなん「まり?まりってば」トントン
まり「ん、ああ。なに?かなん」
ことり「まりちゃん疲れちゃった?たくさん歩いたし歌って踊ったんだもんね」
まり「…そうね。少しだけ」
まり「だから、ひざ貸してよね」
ことり「へ──」
まり トスン…
かなん「まりったら、すぐ着いちゃうよ?」
まり「いいのー」スリ…
ことり キュン…
かなん「甘えんぼだなー。ダイヤたちと仲良くしてるの見てことちゃん一人占めしたくなったんでしょ!へへ、ダイヤたちには言わないでおいてあげるからね。ね、ことちゃん──」
ことり デレェェェ
かなん「わあ顔やばーーー!!!」
ブゥゥゥン… ニヤニヤが止まらない
今ことりちゃんの数百倍やばい顔してる自信ある スキだから、キライだけど、いつかスキに。 1/5
六日目
まり「いってきます」
鞠莉ママ「行ってらっしゃい、マリ」
家野「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
ことり「行ってきます」
まり「ちょっと、なんであなたまで乗ってるのよ」
ことり「向こうまで送るから」
まり「いいってば!一人で行けるから!」
ことり「だだだ出してください」
船頭「よし、そいじゃ行くぜ!」
ことり「ままままりちゃん座って。ことりのおひざに」ポンポン
まり スタスタスタ… ストン
ことり「まりちゃん!ことりのひざ!あいてますよ!」
ことり「まりちゃん!!!」
ブ…
ブゥゥゥゥン… スキだから、キライだけど、いつかスキに。 2/5
ことり「ただいま戻りました〜」
家野「お帰りなさい。毎朝お疲れ様です」
ことり「お疲れなんて全然!まりちゃんと一緒に船に乗るの好きなので」
家野「怖いのでは?」
ことり「出発のときに大きく揺れるのはまだ怖いですけど、走り始めてからは平気になってきました。まりちゃんもお話ししてくれるから気が紛れますし」
家野「それはよかった。今日はどうなさいますか?」
ことり「お家のこと一通りお手伝いします!でもお昼過ぎにおやつ作りで少し外してもいいですか?」
家野「もちろんです。今日はショーホールの掃除をしたいのでお手伝いをお願いしましょうか」
ことり「はい!お願いします!」
家野「ではこちらへ」
… スキだから、キライだけど、いつかスキに。 3/5
まり「ただいまー」
家野「お帰りなさいませ。おや、ことりさんはご一緒ではありませんでしたか?」
まり「一緒だったわよ。でもなんかまだ船にいる」
家野「? そうですか」
家野「ことりさんがおやつを作ってくれていますので、手を洗ってお待ちください。すぐに参ります」
まり「はーい」スタスタ
家野「ことりさん、いますか?どうかなさいましたか?」ヒョコ
船頭「おう家野ちゃん。よければお姉さんを引き取ってってくれるかい」
ことり「」チーン
家野「これは一体どういう状況ですか」
船頭「いやあ、着岸の速度を少し誤ってな。ドンと揺れたらお姉さんがエンジンダウンしちまったんだよ」ハッハッハ
家野「そうでしたか。ほらことりさん、戻りましょう。まりお嬢様におやつを作ってくださったのでしょう、一緒に食べないのですか?」ユサユサ
ことり「!」キュピーン
ことり「まりちゃんとのおやつタイム!一回だって無駄にできないっ!」シュタッ
家野「ええ。早く用意しないと、またむくれてしまいますよ」
ことり「はい!先に行って用意してます!」タタタ
船頭「ほ〜、アルバイトなんだろ?それなのに仕事熱心で感心だな」
家野「そうですねえ」 スキだから、キライだけど、いつかスキに。 4/5
ことり「今日のおやつはバナナティラミストライフルですっ」
鞠莉ママ「可愛いデスね。しかし tiramisu とは」
まり「…」ジー
まり「ねえいえの、」
家野「私も先ほど味見をさせていただきました。一口、食べてみてください」ヒソ
まり「いえのがそう言うなら…いただきます」
まり パク…
鞠莉ママ「…」
まり「! お、美味しい!」
ことり「ほんと!?よかったあ!」
鞠莉ママ「どれどれ。………フム」モグ
まり「コーヒーの味はするけど苦くないわ」
ことり「生地に加えるコーヒーを薄めに淹れてみたんだよ。バナナとチーズも多めにしたからあんまりコーヒーの苦味が気にならないでしょ?」
まり「うん、美味しいわ」パク
ことり「えへへ〜」 スキだから、キライだけど、いつかスキに。 5/5
ことり「まりちゃん、コーヒーの香りはキライ?」
まり「え?ううん、匂いは好きよ」
ことり「そっか。だったら、きっとコーヒーそのものを楽しめるようにもなると思うの」
ことり「すっぱかったり渋かったり苦かったりするけど、まりちゃんが『美味しい』って思えるコーヒーに出会えるように、少しずつ試してみようね」
まり「な…誰かコーヒー好きになりたいなんて言った!?」
ことり「ううん、言われてないけど」
ことり「好きな人の好きなものを好きになりたいって気持ちは、誰にだってあると思うから」
まり「!」
まり チラ…
鞠莉ママ「ワタシの tiramisu は coffee の風味が強く感じマスね」
家野「奥様の分とまりお嬢様の分とで、分量を変えて作っていらしたようですよ」
まり …//
ことり「ちょっとずつコーヒーの味に慣れていって、いつかママと一緒にコーヒーを楽しめるようになろうね」ヒソ
まり「うん…」
ことり「飲み物はね、どうしようかなって思ったんだけど、ロイヤルミルクティーを用意したから淹れるね──」カチャ…
まり「ことり」
まり「……………ありがと…」
ことり「うんっ♡」
六日目:まりちゃんにありがとうって言われた! 夜は一人、あなたを想って針の音 1/3
ことり「それじゃ、私もお部屋に戻りますね」
家野「はい。今日もお疲れ様でした、ゆっくりお休みください」
鞠莉ママ「Good night, コトリ」
ことり「お休みなさい!」ペコッ タタタ…
Bird's room...
ことり「ふう…」パタン
ことり トコトコ…
ボフンッ (in bed)
ことり スッ (makura mo-gyu!!)
ことり「あああああああああああ!!!!今日もまりちゃんが可愛かったよおおおおおおおお!!!!」 夜は一人、あなたを想って針の音 2/3
ことり「朝!!まだちょっぴりおねむで目をうとうとさせてる姿!!寝てる間に取れちゃったはずのナイトハットをちゃんと被り直し…たつもりがへにゃってなっちゃって!!それも含めた全体が可愛いの権現!!」
ことり「お船のとき!!口ではあんな風に言っていながらも、実は船に乗るとき足元が震えちゃうことりの手を先に乗ったまりちゃんが引いてくれるようになってきました!!
それで出発前に少しだけいじわる言うの!!今日はおひざには座ってくれなかったけど、たぶんもうそろそろ座ってくれるようになるってことりは思ってます!!」
ことり「帰りのお船!!思いがけずドンってなって怖くて動けなくなっちゃったことりでしたが、それでも気づきました!!お船が大きく揺れた瞬間、まりちゃんも『ひっ』って言いました!!ちっちゃな声で『ひっ』って!!
ちくしょおおおおおっなにやってんだことりぃぃぃぃぃ!!あれはかっこよくまりちゃんを支えて『大丈夫だよ、怖くないよ(イケボ)』ってしてあげる場面だったのに!!
ちくしょおおおおおおおおおおおっ!!!」
ことり「最初はちょっぴり警戒されてて、ことりの作ったごはんとかおやつとか恐る恐るって感じだったけど、最近は喜んでくれてるってわかる!!楽しみにしてくれてる!!
そりゃそうだよ、だってまりちゃんのために愛情いっぱい込めてるもん!!人を愛せる子は人の愛情に気づけるものだもん!!まりちゃん!!ああっ好き!!可愛い!!」
ことり ………
ことり「二日続けてコーヒーの味はイヤだよね。明日はスコーンでも焼いて、アフタヌーンティー風にしよっかな…」(賢者タイム) 夜は一人、あなたを想って針の音 3/3
ことり「さてと」ヨイショ
ことり「後は大詰めだけだもんね、今夜じゅうに仕上げちゃおっと」
ことり「〜♪」ダダダダ…
ことり「それにしても、……」チラッ
ことり「う〜ん。どう考えても帰るまでに使いきれないくらいの分量だよね」
布と生地の山 コンモリ…
──ことり『それに、結局みんな買ってもらっちゃいましたし』
──鞠莉ママ『…本当にそんなものでよかったのデスか?それでは余計にコトリの時間が減るだけなのでは…』
──ことり『ううん、これがいいんです。私の数少ない得意なことなので』
ことり「張り切ってあれもこれも選んじゃった私も悪かったなあ。小原さんにしてみれば、これくらいの平凡な布なんかこれだけ積み重ねてもきっとたいした金額じゃないのかもしれないもん」
ことり「かと言って、持って帰って向こうで自分の服とか実習に使うのもなあ」
ことり「どうしようかなあ」ダダダダ… 心臓に悪いタイプの女の子 1/5
七日目
<きゃ〜〜〜〜〜〜〜〜………………っ!!!
家野「まりお嬢様!?」
鞠莉ママ「何事デスか!?」
家野「お部屋の方からです!」
鞠莉ママ「ワタシが行ってきマス!イエノは現場に混乱が行かぬよう、ゲストへの対応指示をお願い」
家野「かしこまりました」
タタタタタ…
鞠莉ママ「マリ!入りマスよ!」ガチャッ
鞠莉ママ「どうしまシタか!?」
まり「ママ…」ワナワナ…
まり っベレー帽と ギュ…
鞠莉ママ「それは…!?」
まり「起きたら──起きたら可愛いベレー帽が置いてあったの!!」
鞠莉ママ「……………ハイ…?」 心臓に悪いタイプの女の子 2/5
まり「いえの!おはよう!」
家野「おはようございます、まりお嬢様。先ほど大きなお声がしましたが、なにか──…まあ」
まり(ベレー帽equip)「なんにもないわ!」ニコニコ
家野「…そうでしたか、それならばよいのですが」
まり「うん!」ニコニコ
家野「…えっと、」
家野「とてもお似合いですね、そちらの帽子」
まり「そう?そう??気づいちゃった?」
まり「えへへ、いえのってば目ざといんだから〜♡」
家野「どうされたのですか?初めて見るように感じますが」
まり「わからないの。起きたら部屋の入口に置いてあってね、あけたら可愛かったのよ!」フフン
家野「ほう、もう完成したのですね」
まり「え?なあに?」
家野「いえ、なんでも。今日のお洋服ともばっちり合っていますね」
まり「そうでしょ!」クルン 心臓に悪いタイプの女の子 3/5
まり ウキウキ ソワソワ
家野「ところで、ことりさんなら調理場の方にいらっしゃいますよ」
まり「!!」
まり「な、なんでことり!?どこにいたっていいわ!」
家野「そうですか。ご挨拶なさるかと思いまして」
まり「…ま、まあ、朝のあいさつはした方がいいかもね!小原家の者として、日々の礼儀は大切にしなくちゃいけないもの!」
家野「そうですね、それがいいと思います」
まり トコトコ…
まり「あいさつしにいくんだからね!」
家野「はい」
まり トコトコ…
まり「それだけだからね!!」
家野「わかっていますよ」ニコニコ 心臓に悪いタイプの女の子 4/5
ことり「…うん、焦げ目もいい具合。まりちゃんは甘いのが好きだから仕上げにハニーをたっぷりかけてっと…」
ことり「ことり特性のフレンチトーストの出来上がり〜♡」
コホン
ことり「! あ、家野さん。ちょうどできましたけどまりちゃんは起きてきて──」
まり「ぉ、おはよぅ…ことり……」モジ
まり(ベレー帽equip!!)
ことり「──────」
ことりは、大宇宙を感じた。
産まれてから今日までに体験してきた様々な出来事が脳裏を駆け巡り、森羅万象、世の中のありとあらゆる真理を瞬時に理解した。
人は皆ちっぽけだが、営みは繰り返され、何世紀にもわたり命を紡いでいく。
そう、世界はそれそのものが永遠に終わることなく生き続けていく一つの輪廻であるのだ。
生を受けると同時に定められる死、その限られた時間の中で為す各々の営みこそが大宇宙。それはまるで、そう、スクールアイドルという存在そのものに コホン、コホン
ことり「!!!」ハッ 心臓に悪いタイプの女の子 5/5
まり「おはようって、言ったんだけど。聞こえなかったの?もっと近くに行って耳元で言わなくちゃだめかしら」モジ
ことり スタ…
ことり スタスタスタスタ
ことり スッ (片膝つき
まり「な、なによ。なにか言ってよ──」
ことり「可愛いよ。とっても似合ってる」
まり「…っ!」///
まり「ま、まあ、知ってるし。っていうか、なにが。まりはおはようって言っただけなんだけど」
ことり ハグッ
まり「……!!?」
まり「ちょっ放してよヘンタイ!ヘンタイことり!もう、朝ごはん食べられないじゃないの!いえの!いえのーーー!」ジタバタ
まり「あれ、なにこの濡れてるの…」
ことり 鼻血ダラァーーーーー
まり「ぎええええええええっ!!鼻血!鼻血出てるわことり!出てるとかいうレベルじゃない!!待ってほんとに放してお洋服についちゃう!ついちゃうううう!!」ジタバタジタバタ
ことり「(鼻血が)ぶっぶーですわぁ…♡」トローン
まり「いえのーーーーーーーーーー!!!!」 真実に刺された日 1/6
船頭「お、まりさんですね」
ことり「! お〜〜〜〜い、まりちゃあ〜〜〜〜ん!お帰りなさぁ〜〜〜〜い!」ノシシシ
まり「…た、ただいま…」
ことり「ん…?」
──ことり「まりちゃ〜ん、お帰りなさ〜い!」ノシシシ
──まり「ちょっと!大きな声で呼ばないでよ、恥ずかしいでしょ!」
──ことり「お帰りなさい♡」
──まり「ただいまっ!」フンス
まり「早く乗ってよ、帰るわよ」
ことり「まりちゃん、なにかあった?」
まり「な、なんにもないから!見ないで!」プイッ
ことり「んんーーー……???」ムムム 真実に刺された日 2/6
船頭「はい到着しました、一日お疲れ様でした」
まり「ぁ、ありがと」スタスタ…
船頭「なんだか元気なさそうですね」
ことり「やっぱりそうですか?お膝に乗せても暴れなかったし、どうしたんだろう…」
船頭「お姉さんとしては少し嬉しかったんじゃないですか?」
ことり「…………ううん。お膝になんか、座ってくれなくていいんです」
ことり「そんなことよりも、まりちゃんには笑顔で元気でいてほしいのに」 真実に刺された日 3/6
まり「ただいま」
家野「お帰りなさいませ、まりお嬢様。今日は久し振りに私がおやつを作りましたよ、すっかりことりさんの味に慣れてしまったかもしれませんが──」
家野「…」
家野「お嬢様」
まり「な、なにっ」
家野「お顔が赤いですが、どうかなさいましたか?」
まり「べ、別に!なんにもないけど!」
家野「…そうですか、それならよいのですが。カバンをお部屋に置いていらしてください、おやつの用意をしておきますね」
まり「う、うん」トコトコ…
家野「ああそれと、その帽子はとても似合っていますが、お家の中では脱いでおきましょうね」
まり「っ!」
まり「わ、わかってるっ!」/// タタタタ…
家野「…………んん?」ハテ 真実に刺された日 4/6
まり's room
バタン… スタスタ ボフン (布団)
まり「ぅぅ…」
まり「ぅぅぅ〜〜〜っ」
──家野「とてもお似合いですね、そちらの帽子」
──まり「起きたら部屋の入口に置いてあってね、あけたら可愛かったのよ!」
──コホン、コホン
──まり「おはようって、言ったんだけど。聞こえなかったの?もっと近くに行って耳元で言わなくちゃだめかしら」
──ことり「可愛いよ。とっても似合ってる」
──まり「…っ!ま、まあ、知ってるし。っていうか、なにが。まりはおはようって言っただけなんだけど」
まり「ぅぅぅぅううううう〜〜〜〜」 真実に刺された日 5/6
──まり「おはようっ!」ルン
──かなん「おはよー、まり」
──まり「ねえねえ、かなん。お、は、よ、う」頭フリフリ
──かなん「うん、まり。お、は、よ、う!」お尻フリフリ
──まり「…」
──かなん「?」
──ダイヤ「おはようございます、かなんさん。まりさん」
──かなん「ダイヤおはよー!」
──ダイヤ「まあ、まりさん!その帽子!」
──まり「! さすがダイヤ、ニブチンのかなんとは違ってよく気づくんだから。どう、とっても可愛いでしょ?」
──ダイヤ「とっっっっっても可愛いです!はああ〜〜羨ましい、ことりさんお手製の帽子をかぶれるだなんて」ウットリ
──まり「えへへ〜。朝起きたら置いてあってね、なんにも言わなかったけどたぶんママがプレゼントで──────え?」
──ダイヤ「またお会いしたいですわぁ…」トロン
──まり「え?ねえダイヤ、今なんて?ことりの手作りって言った?」
──ダイヤ「えっ、違いましたか!?」
──ダイヤ「μ'sの衣装で一番気に入っているとおっしゃっていた飾りがあしらってあるので、てっきりそうだと思ったのですが…」 真実に刺された日 6/6
まり「ぅぅぅぅぅうあああああああああっっっっ!!!!」///////
まり「恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!」
まり「やだやだやだやだやだやだやだやだ、散々可愛いって誉めてママにもいえのにもことりにもみんなに見せびらかして!!」
まり「ママがくれたんだと思ってた!!この前のお土産なんだと思ってた!!だってこんな可愛いベレー帽が手作りだなんて誰も思わないじゃない!!」
まり ベレー帽と彡 バッ
まり っベレー帽と ギュ
まり ジィィィィィィィ…
ベレー帽 Kawaii !!!
まり「あああああ可愛いいいいいい!!!」チクショーーーッ!!
──ことり「可愛いよ。とっても似合ってる」
──ことり ハグッ
──ことり 鼻血ダラァーーーーー
──ことり「(鼻血が)ぶっぶーですわぁ…♡」トローン
まり「ヘンタイ鳥めぇぇぇえええええっ!!!!!」ウオオオオオッ
その日、まりは寝るまでことりと口を聞いてくれなかったという。 大人達の夜、その二 1/4
※ まりがことりと口を聞いてくれなかった日の夜中
家野 スタスタ… (館内巡回中)
家野 (うん、異常なし。このまま奥様に挨拶してから部屋へ戻るとしましょうか………ん?)
ことり コンコン
家野 (ことりさんも奥様に挨拶でしょうか)
<いマスよ、どうぞ
ことり「こんばんはぁ」キィ…
家野 (…挨拶、ですかね?)
家野 (…)
家野 ススス… 大人達の夜、その二 2/4
<小原さぁん
<なんデスか、そんな声を出して
<まりちゃんがお話ししてくれませんでしたぁ
<またなにか構い過ぎたのではありまセンか
<なんにもしてないのにぃ…
家野 (…………ほう)
<そういえば、コトリがマリに作ってくれた帽子デスが
<はい
<とても可愛かったデスね。今朝もマリは喜んでいまシタよ
<似合ってましたね!はぁぁ〜可愛かった
<鼻血がどうとか言っていまシタが
<きっききき気のせいじゃないですか!?
家野 (気のせいではなかったでしょう)
<そうデスか
家野 (奥様…) 大人達の夜、その二 3/4
<まりちゃんがとびっきり可愛くしたいなって思ったときに選べるように、デザインしてみたんです
<横につけてた飾り
<私が昔作った服につけたもので、一番可愛くできたなって思うやつで。ほ………友達も、すっごく誉めてくれたやつで
<まりちゃんのお洋服の好みに合わせて少し変えてみたんですけど、気に入ってくれたみたいで、よかった
<ほんとは、毎日学校に着ていくお洋服も、お休みの日にはくスカートも、パーティに着ていくドレスも、みんな作ってあげたいです
<今度はしっかりまりちゃんとお話ししながら、こんなデザインがいいなって教えてほしい
<そうやって少しずつ可愛いお洋服を増やしていって、まりちゃんが明日を楽しみにしながら毎日過ごせるような、そんな………風に………
<……………… 大人達の夜、その二 4/4
家野 (なるほど、こういうことでしたか)
家野 (奥様と眠ったことなど、もう何年前になるのやら)
家野 (少し──羨ましいですね) スタスタ…
ことり スー
鞠莉ママ ポン…ポン…
鞠莉ママ「あら、もうこんな時間デスか。イエノが寝る前に顔を出さないとは」
鞠莉ママ (また一緒にどこかへ旅行にでも行きたいものね…)
こうして夜は更けていく── 適材適所、明確な不適 1/3
八日目
ことり「ただいま戻りました」
家野「お帰りなさい、ことりさん。いつもありがとうございます」
ことり「普段は、家野さんが向こうまで送ったりするんですか?」
家野「そうですね、朝から用があって本土へ渡る日なんかは、少し時間が早くてもお嬢様のお見送りもかねて同じ船に乗ることが多いです」
家野「ただお嬢様ももうお年頃ですから、あまり構われてもイヤかと思って、そう毎日はご一緒しないようにしています。本当は学校まで送り届けたいくらいなのですけどね」
ことり「なるほどなるほど、そうですよね。あんまり構われたらイヤですよね。愛情だってわかってても『ほっといて!』ってなっちゃいそうですし」ウンウン
ことり「あ、お洗濯物干してきますね!」タタタ
家野「お願いします」
家野 (頭で理解しているからといって行動が伴うとは限らない、という見本みたいですね) クス 適材適所、明確な不適 2/3
サンルーム
ことり「♪ふんふふ〜ん」パタパタ
ことり「…むむっ!」っしわくちゃの布きれ
ことり「もうっ小原さんってば!こういう生地のお洋服はネットに入れるか手洗いしなくちゃって言ってるのに!」チュンチュン!
ことり「こんな雑に洗濯してたら、すぐぼろぼろになっちゃって着られなくなっちゃう。乾いたら傷んでるところ見とこうっと」サッサッ
ことり「……………!!」チュピーンッ
ことり っブラ プルプル…
ことり (お、大きい…!ことりの<秘>カップのブラとは迫力が違う…!)
ことり (これは小原さん…?ううん、もしかして家野さん…!普段のお洋服は生地も厚くて装飾も多いから見た目じゃわからないけど、あのメイド服の下に広がるエデンの園には──もしかして、極上の果実が………!?) ゴクリ
ことり (くっ、耐えて。耐えるのよことり。裏地を触ってみたり縫製を確認したりするのはお洋服の勉強として見逃されても、他の好みから誰のものかを想像したりましてや匂いを嗅いじゃったりするなんてっ…そんな、ヘンタイさんみたいなこと…!)
──母親の手料理──幼女向けのテレビアニメ──一面のお花畑──友近姉さんの物真似芸──淡島の緑と内浦の海──YAZAWAの絶壁──
ことり スン
ことり (無心で干そう) サッサッ… 適材適所、明確な不適 3/3
ことり「〜♪」パタパタ
ことり「────」
ことり「ぁ………ぁあ………っ」カタカタ
ことり「ぁぁぁぁぁぁああああああ……!!」
ことり っ小学生の女の子の服 ババーーーン
ことり (こっこここここことりが干してるのは、ホテルに住んでる中でもごく一部の人達の洗濯物のみ…!)
ことり (小原さん、家野さん、ことり自身、そして──そしオフッw そして、まっまま…まりちゃんのもの…!!)
ことり (まりちゃんの──まりちゃんのまだあどけない、それでいてちょっぴり背伸びしたい気持ちも見え隠れする、揺れ動く思春期の心を体現したかのような可愛いお洋服…)
ことり (背中のデザインがちょっぴり主張強いな、肩から肘にかけて伸びるラインの色はすごく好き、合ってる。確かこれと合わせてたスカートはっと) ゴソゴソ
ことり (こっこれだあ…) エヘヘ…
ことり (それぞれで見ると悪くないけど、まりちゃんの身長と髪の毛、靴とランドセル。みんな含めて考えると上をもう少し落ち着いたトーンの柄モノにするか、スカートを思い切ってパンツスタイルに変えてみるとか──デュフw まりちゃんのパンツスタイルもいいなあ)
ことり デヘヘヘヘ……
家野 (ことりさんはお仕事が早いですが、洗濯物を干す時間だけは日に日に長くなっていきますね) ヤレヤレ… Cleaning of Memories 1/3
『まりの部屋』
キィ…
ことり「失礼しまぁす」
ことり「本人がいないときにお部屋に入るのって、なんだかとっても緊張するよね…」
──家野「お嬢様のお部屋の掃除をお願いできますか?」
──家野「ただ、お嬢様もお年頃ですので、できればお部屋に入ったことは気づかれない方がベターです」
ことり「ふっふっふ…」
ことり っハタキ スチャ
ことり「この南ことりをなめてもらっちゃ困りますよ、家野さん」
ことり「適度に散らかっているこのお部屋を、物を動かすことなくお掃除するのは困難です。困難ですが──それは普通のお母さん達のお話!」
ことり「ことりには長年培ってきたスキルがあるのです!」
※ 独り言です。 Cleaning of Memories 2/3
──ことり「──ちゃあん、こんにちは〜」
──母親「あらことりちゃん、いらっしゃい。あの子ってばお菓子買ってくるって出かけちゃったのよ。ことりちゃんが来るなら言っておけばいいのに」
──ことり「そうなんですかあ」
──母親「どうせ近所の駄菓子屋さんだと思うから、よかったら上がって待ってて。すぐお茶持っていくからね」
──ことり「ありがとうございます!」
──ことり「失礼しまぁす」キィ…
──ことり「──ちゃんってば、またこんなに散らかしてる」
──ことり「片付けておいてあげたいけど、勝手にさわられたらいやかなあ。それなら、ものを動かさないようにすき間だけお掃除しておこうっと」ヨイショヨイショ
──「お母さんたっだいまー!」
──母親「あっ、あんた!ことりちゃん遊びにきてるわよ!」
──「あーっ、忘れてた!いっけない!」タタタタタ
──「ことりちゃん!待たせてごめーん!」
──ことり「お帰りなさい。全然まってないよ〜」
──「お菓子買ってきたから一緒に食べよう!」
──ことり「うんっ!」 Cleaning of Memories 3/3
ことり「約束して遊びにいくのに、いっつも出かけちゃってたよね」
ことり「お部屋だって、読みかけのマンガとか使い終わったおもちゃとか、いつもそこそこ散らかってたもんね」
ことり「遊びにいくたびに、気づかれないようにお掃除してたから──いつの間にか、変なスキルが身に付いちゃったよ」クス
ことり サッサッ…サッサッ…
ことり「──ねえ。今はきちんと片付いてるかな。ことりなんかがいなくても、ちゃんとお部屋はきれいにしておかないとだめだよ」
ことり サッサッ……サッサッ……
ことり「ふうっ、こんなものかな!」
ことり「うん。見た目には人が入ったなんて全然わからないはずだけど、拭き掃除も磨き掃除もできた。完璧!」フフン
ことり「それじゃ家野さんに報告して次のお仕事をっと〜…」
──ことり サッサッ…サッサッ…
──ことり「…あれ?なんだろう、これ…」カサ
ことり「…………」
ことり「家野さん、お掃除終わりましたよ」
家野「ありがとうございました。それでは次ですが…」
ことり (帰ってきたら秘密のお話があるけど、うーん…どうしよっかなあ。これ…) っ小テスト カサ… おおらか・オア・無頓着 1/4
家野「…」
ことり「…」
小テスト『30点』 ドン
家野「なるほど、なかなかのものを見つけてしまいましたね」
ことり「まりちゃんに言うのも小原さんに言うのも気が引けちゃって、巻き込んじゃってすみません」
家野「いえ。元々私がお掃除をお願いしたことで見つかったわけですからね」
ことり「ちなみに、小原さんって成績とかに厳しいんですか?」
家野「そうですね…」
家野「ほぼ全くの無関心ですね」
ことり「そうですか……………えっそうなんですか?」
家野「はい。通知表すらわざわざお見せしなければ見ようともなさいません」
ことり「え、あ、それは…珍しいですね…」
家野「テストの点数や成績が原因で怒っていらっしゃったことは、私の記憶にある限りは一度もないですね」
ことり「い、一度も」 おおらか・オア・無頓着 2/4
ことり「でもだったらどうしてまりちゃんはテストを隠したんでしょう」
家野「…奥様がそんな風ですから、必ずテストのたびに答案用紙を見せるという習慣は、確かにお嬢様にもないのですが」
家野「これくらいの点数でもあえてベッドの下に押し込んでいらしたことなど、それはそれで一度もなかったと思います」
家野「奥様が長く不在の時期もあるので、そういうときは私に預けてくださるのですが…」
家野「…」
ことり「…?」
家野「これ、つい最近のものですね」
ことり「え?」
家野「先生の性格なのでしょうか。テストの作成日の記載があります」トン
ことり「あ、ほんとですね。先週の金曜日…ってことは、返ってきたのは昨日か一昨日ですかね」
家野「この規模の小テストならば当日に採点が済んだ可能性もありますが、いずれにせよ直近であるのは間違いなさそうですね」 おおらか・オア・無頓着 3/4
ことり「明日の準備をしてるときに、たまたまベッドの下に紛れ込んじゃったとかでしょうか」
家野「それも有り得なくはないですね。結局、テストに無関心なのはお嬢様にも引き継がれてしまった特徴だと言えるので…」
ことり「もしそうなら、わざわざ見つけたことを話す必要もないですよね」
家野「反対に、あえて見て見ぬふりをする必要もないということではあります」
ことり「そっかあ。まりちゃんの認識がわからないと、どうしたらいいのかもよくわからないですね…」
家野「そうですね。ただこれまでお嬢様を傍で見てきた私の感覚としては、ことさら取り沙汰することではないように思います。たまたまベッドの下に紛れ込んでしまいお嬢様自身がそれに気づいていない、という可能性が濃厚でしょう」
ことり「…だったら、ベッドの下に戻してきますね!」
家野「それもおかしな行為ではあるのですが、お部屋に入ったことを悟られないことを優先していいでしょうからね。お願いします」
ことり「はぁーい♪」タタタ おおらか・オア・無頓着 4/4
再び『まりの部屋』
ことり「ぎりぎりまりちゃんが気づくか気づかないかってレベルで、端だけ覗くように…」ゴソゴソ
ことり「こう」
ことり「…ちょっと不自然に出すぎかな。えっとー…こう」
ことり「…隠れすぎかな。なにか物を置いたら見えなくなっちゃうかも…」
ことり「うーん…うーん…」ゴソゴソ…
ことり「…うん!このくらいならいいかな」フゥ
ことり「そういえば小学校って単元ごとに小テストあったもんね。中学校に入ってテストの形式が変わったのは驚いたな〜」
ことり「こんな可愛いテストばっかりだったらやる気も出るのにね」
──「あれがデネブ、アルタイル、ベガ。俗に言う夏の大三角ね」
ことり「…みんなで星を見にいったりもしたなあ。あの子が先生だったら、まりちゃんにも楽しくわかりやすく教えてくれたかもな」
ことり「なんてね」
キィ… バタン 長女の微笑み 1/1
まり「ただいま!いえの!」
家野「お帰りなさいませ、お嬢様。ことりさんも」
ことり「今日はまりちゃんがお膝に乗ってくれませんでしたぁ」シュン
まり「なんで乗るのが前提なのよ」
ことり「昨日は乗ってくれたもん!」
まり「そっ!れ、は…そんなの気にする余裕なかったからっていうか……」ゴニョ
まり「いいから、早くおやつの用意してて!ママ呼んでくるわ!」スタスタ
ことり「うう………あ、家野さん。紅茶とコーヒー淹れましょうか」
家野「はい。では紅茶をお願いします。お嬢様とも随分打ち解けてきましたね」カチャ
ことり「えへへ…そうですか?」テレ
家野「目標の髪を撫でるのはそろそろできそうですか?」
ことり「それは、まだ…っぽい、ですね…」ム
家野「では引き続き精進ですね」フフ
ことり「あっでも昨日お話はしてくれなかったけどお風呂は一緒に入ってくれましたよ!」ルン
家野「それは素晴らしい」
ことり「それから、それから──」
家野 (お嬢様とことりさんと。姉妹のようで、お二人の仲はずっと見ていても飽きませんね) ことりが変態すぎるw
にやけが止まらんわ
それにしても矢澤の絶壁よ...... 凶兆不安注意報 1/3
九日目
スッ…
家野「! ことりさん、おはようございます──」
ことり「お、おはようございますっ家野さん!!」
家野「!?」キーン
家野「えっと、はい、今日もお元気そうで…なによりです…?」
ことり「はいっ!南ことり、元気です!朝ごはんの用意しますね!」
家野「では、いつも通りお嬢様のご朝食をお願いできますか」
ことり「お任せくださいっ!!」
家野 (う、うるさい…)
鞠莉ママ「なんだか大きな声が聞こえマスが、どうかしまシタか?」ヒョコ
家野「奥様、おはようございます。特になにがあったというわけではないのですが…」
ことり「おはようございますっ小原さん!!」
鞠莉ママ「!? ぉ、オハヨウ…」キーン
家野 (これです、これ) 凶兆不安注意報 2/3
船頭「おはようございます、まりお嬢さん。メイドのお姉さんも」
まり「おはよう。よろしくね」
ことり「ぉ、おはようございます…」
まり (え。さっきまであんなにうるさかったのに)
船頭「…?乗らないんですか?」
ことり「えっと…」
まり「早くしてよ、学校行くの遅くなっちゃうでしょ」
ことり「…今日は、お見送りここまでにしよっかな、なんて…」
まり「は?」
まり「…どうして?」
ことり「その……今日はちょっと、船に乗るの、は…」
まり「………」
──まり「ママ、また──────の?」
まり「…ことり、あなたも…私のこと…」 凶兆不安注意報 3/3
ことり ハグッ
まり「!」
ことり「本当は向こうまで送っていきたいんだけど、今日は…ちょっとね。ごめんね」
ことり「今日、おやつなに食べたい?」
まり「ぇ、ぁ…」
まり「なんか、フルーツの…やつ…」
ことり「わかった。美味しいおやつ作って、まりちゃんが元気で帰ってくるの待ってるからね」
ことり「いってらっしゃい」ギュッ
まり「………うん。いってきます」ギュ…
まり「…!」
まり (汗のにおい?こんな朝から…?)
船頭「出しますよ」
ブ…
ブゥゥゥゥン…
ことり 手フリフリ
まり「…」 前スレで設定踏襲したスクスタ時空っぽい話があったけどあれは作者別だったのか
あれもすげえ面白そうな感じだったからまた読みたい あらかじめ、あったもの。 1/7
ことり「私、温泉見てきますね!」タタタ
家野「あ、はい。お願いします」
鞠莉ママ「イエノ」ヌッ
家野「奥様」
鞠莉ママ「なんだか、今日のコトリは随分と…張り切っている?ように見えマスが、ワタシの気のせいデスか?」
家野「ええ、私にもそう見えますが…」
家野「張り切っている、のとは少し違うようにも見えます。挨拶を含め全体的な声量が大きく、動きも普段より明らかにきびきびしている」
家野「ことりさんもバイタルの波があるでしょうし、その一環なのかもしれませんが…」
鞠莉ママ「…笑顔が、強いデスね」
家野「強い…?」
鞠莉ママ「なんと言うのでショウ。一生懸命笑顔を作っているように見える、というか」
家野「表情が堅い、と?」
鞠莉ママ「ああ、そう言うのかしら。なんだか無理をして笑っているように──…」ハッ
鞠莉ママ「イエノ。コトリを連れてきなサイ」
家野「? は、はい」タタタ あらかじめ、あったもの。 2/7
ことりの部屋
家野「なるほど、こういうことでしたか」
『37.8度』
家野「ことりさん、平熱はどのくらいですか?」
ことり「…36度前半です」
家野「朝から体調が悪いのは自覚していらっしゃいましたね?」
ことり「はい…」
家野「いけませんね」
家野「お仕事をきちんとこなそうとするのは大事ですが、体調不良を隠すのは責任感不足です」
家野「ことりさんはお客様達のいるフロアにも顔を出しますし、まだ免疫力の低いお嬢様とも密接な距離にいる。風邪など伝染るものであった場合、接した相手に影響を与えることも充分に考えられます」
家野「一人で動いていただいているときにもし体調が悪くなって倒れたりしても、それを把握していなければ気付くのが遅くなるかもしれません」
家野「ことりさんご自身のためにも、周りの方々のためにも、決してよい選択とは──」
鞠莉ママ「イエノ」ポン
鞠莉ママ「あなたは現場に戻りなサイ。イエノの手がなくては、現場の業務の進行が間に合わなくなってしまいマス」
鞠莉ママ「コトリにはワタシからよく言って聞かせておくから」
家野「…はい」 あらかじめ、あったもの。 3/7
家野「それでは後ほど」
キィ…バタン
ことり「……ごめんなさい」
鞠莉ママ「ノンノン。イエノはマジメなのであんな言い方をしまシタが、コトリを心配していただけデス。言わなければいけない立場というのもありマスから」
鞠莉ママ「…朝からオオゲサに元気がよかったのはわざとデスか?」
ことり「はい…昔からの癖で」
ことり「お母さんがあんまりお仕事を休める人じゃなかったから、風邪を引いたりしたときも気付かれないように隠す癖ができて。いつもより元気に振る舞うようになってました」
鞠莉ママ「シカシああも普段と違えば、余計に変だと思いマスけどね」
ことり「あはは…その通りです。お母さんにも友達にも、すぐにばれてました」
鞠莉ママ「そこはまだまだ子どもということね。オトナはいつもより元気に振る舞うのではなく、いつもと同じように振る舞うものなのデース」
ことり「そっか、そうなんですね…」エヘヘ… あらかじめ、あったもの。 4/7
鞠莉ママ「…」ギシ
鞠莉ママ「いけまセンね。体調不良を隠すのは」
ことり「はい…」
鞠莉ママ「あなたは『それ』を、ずっと後悔しているのでショウ」
ことり「……ぇ…?」
鞠莉ママ「ホノカ、でシタか」
ことり「……………!!」バッ
鞠莉ママ「体調不良を隠して無理をして、倒れて。気付いてやれなかったことをずっと後悔している。自分が気付いていれば、ホノカは倒れなかった。あんなことにはならなかった」
鞠莉ママ「そう、全てを後悔しているのではないのデスか?」
ことり「どう、して……」
ことり「小原さんが、そんな…こと…」 あらかじめ、あったもの。 5/7
鞠莉ママ「ミナミ」
鞠莉ママ「あなたの母とは、何度か話をしたことがありマス」
ことり「えっ!?」ガタ
ことり「小原さん、お母さんと──っ」フラ
鞠莉ママ「おっと。急に体勢を変えてはいけまセン」ガシ
ことり「なん、なんで、いつ、お母さん、」
鞠莉ママ「落ち着きなサイ」
鞠莉ママ「ワタシの夫が、いくつか学校の理事としての権利を持っているのデス。細かいことはショウリャクしマスが、その仕事の中で話す機会があった──といったところデスね」
ことり「そう、だったん…ですか…」
ことり「…あれ?ってことはもしかして、私がここに連れてこられたのって偶然じゃないんですか…?」
鞠莉ママ「HA-HAHAHAHA!!」カンラカンラ
ことり ビクッ
鞠莉ママ「どこの馬ともanemoneとも知らない輩に大切な娘を任せるほど、愚かではありまセーン」
ことり「え、ええ…」ポカン あらかじめ、あったもの。 6/7
ことり (あ、でも、そっか。だから──)
──鞠莉ママ「今は服作りをしているようデスが、メイドもキライではないのでショウ。いい勉強だと思って頑張りなサイ」
──ことり「そ、そんな勝手なあ…」
──ことり (あれ?服飾の学校にいるって言ったんだっけ…)
ことり (初めから、知ってたんだ…ことりのこと)
ことり (だったらそう言ってくれたらいいのに、待ち合わせの日とっても怖かったんだから…) ムゥ
鞠莉ママ「ミナミはあなたのことをとても心配していまシタよ」
鞠莉ママ「連絡をくれる回数が減った、元気がないのではないか、まだ──気になっていることが残っているのではないか、とね」
ことり「!」
鞠莉ママ「聞けばちょうど学校も休みの時期だというので、いいvacationになればと思ってワタシの帰国に合わせてコトリにも来てもらったというわけデス」
ことり (そんな田舎のおばあちゃんの家に帰るのについていったみたいなノリじゃなかったけど…) あらかじめ、あったもの。 7/7
ことり (でも、そうなんだ。お母さんに心配かけて、小原さんまで巻き込んで──私…)
鞠莉ママ「だから、一日だって無駄にしているヒマなどないのデスよ。せっかくのsummer vacationを布団の中で過ごすなんて、ダメ、ダメ、デース」
鞠莉ママ「あなたが体調不良で倒れただなんて知れたら、ミナミからオオメダマを喰らってしまいマスから」テヘペロ
ことり「小原さんってば…」クス
鞠莉ママ「ゆっくり休んで、早く治して。作っていない、本当の笑顔をまた見せなサイ」ポン
ことり「ぁ……」
ことり「はい…」///
鞠莉ママ「ではワタシは行きマス。オネボウなコトリに代わってマリのおやつを用意しておかなければ」スク
鞠莉ママ「また後で顔を見にきマスから。お休みなサイ、コトリ」
ことり「──お休みなさい、小原さん」
キィ… バタン── 他人本位な嘘同士 1/8
家野「…」
『まりお嬢様:ちょっとおそくなります』
『まりお嬢様:船は自分で呼ぶからお迎えはこなくて大丈夫です』
家野 (先ほど船が向こうへ行ったのはお嬢様ですかね。間もなく戻ってくるはずですし、一応表で様子を見ておくとしましょうか) スタスタ…
ブゥゥゥ…
船頭「お嬢ちゃん一丁!」
家野「やはりお嬢様でしたか、お帰りなさいませ」
まり「ただいま」ヨット
家野「お嬢様、一つお話ししておくことがあります。ことりさんのことなのですが、」
まり「気分悪いんでしょ」
家野「! ご存知でしたか」
まり「朝、ちょっとね。気になったの」
まり「だからね、いえのに教えてほしいことがあるんだけど」ガサ
家野「それは──」 他人本位な嘘同士 2/8
ニュル…
鞠莉ママ「………っ、…フゥ」
鞠莉ママ「…できまシタ!」
料理長「奥様、これは…」
鞠莉ママ「今日のマリのおやつデーース!」
デコレーションケーキ ドドーーーン
料理長「お誕生日はもう過ぎましたが…」
鞠莉ママ「育ち盛りの女の子にはこれくらいの甘いものが必要なのデス!」
料理長「ええ…」
鞠莉ママ「おや?いつもなら帰ってきている時間だけど、まだマリは帰らないのかしら」
家野「奥様、お嬢様がお帰りになりました」ヒョコ
まり「ただいま」ヒョコ
鞠莉ママ「oh, 待っていまシタ!さっそく手を洗ってきなサイ、このspecial cakeを一緒に──」
まり「ママ、今日はおやついらないから!」
鞠莉ママ「!?」ガーンッ…
家野 (またこんなものをお作りになって…)
料理長 (どうするんですかこれ…) 他人本位な嘘同士 3/8
ことりの部屋
コンコン
ことり「!」
「起きてる?」
ことり「はい、起きてます。どうぞ」
キィ…
まり ヒョコ
ことり「あっまりちゃん、お帰りなさい。えっとね、これはね」アセ
まり「わかってる。気分悪いんでしょ。いいから寝ててよ」
ことり「…うん」 他人本位な嘘同士 4/8
まり モジ…
ことり「? うつったりするやつじゃないから大丈夫だよ」
まり「うん、そう、ならいいんだけど」
まり「…ごはんは?」
ことり「お昼前から寝てたから、食べてないんだぁ」
まり トコトコ…
まり「だったら、ほら、これ、あげる」コト
すりおろしりんごのハチミツがけ
ことり「わあ…!えっ、まりちゃんが?」
まり「べ、別に。たまたまりんごが余ってたから、い、いえのが作ってくれたの。持っていってあげなさいって、まりがって」ゴニョ
ことり「そっか」
ことり「ありがとう」エヘヘ
まり「い、いいから早く食べたら?」プイッ
ことり「うん。いただきますっ」 他人本位な嘘同士 5/8
ことり シャムシャム…
まり ジー
ことり「食べやすいし、とっても美味しい」
まり「!」パァ
まり ハッ
まり「そ、そう。後でいえのに言っといてあげる」
まり「まりが言うから、ことりは余計なこと言わなくていいからね」
ことり「はぁい」シャム… 他人本位な嘘同士 6/8
まり「…どうしたの?風邪?」
ことり「ううん、風邪じゃないんだよ。ほら、咳は出てないでしょ?」
まり「うん」
ことり「えっとね、たまに…なるんだ。私は普段軽い方なんだけど、何ヶ月かに一回だけ、熱が出ちゃうことがあるの」
ことり「だいたい一日で引くし、付き合い方にも慣れてるから。心配しなくても明日には元気になるよ。ありがとう」
まり「そ、そう。それならいいけど」
ことり「でも、怒られちゃった。小原さんにも家野さんにも。体調が悪いのを隠しておくのはよくない、って」
まり「………言っとくけど、わたしも怒ってるからね」
ことり「えっ!?……ごめんなさい」
まり「うん、許してあげる」
ことり ホッ… 他人本位な嘘同士 7/8
ことり「ごちそうさまでした」カラン
まり「晩ごはんの準備はいえのがするからって、ことりは休んでなさいってママが言ってた」
ことり「小原さんはしないんだ…」
ことり「うん、わかった。お言葉に甘えようかな」
まり「寝る?」
ことり「少しだけ」
まり「やっぱりきついんじゃないの」
ことり「…少しだけ」
まり「ねえ、ことり」
ことり「なに?まりちゃん」
まり「わたしには、隠しごとしないで」
ことり「──────」
ことり「…うん。ごめんね」ナデ…
まり「うん…」ギュッ 他人本位な嘘同士 8/8
コンコン
家野「ことりさん、体調はいかがですか。食事ができたので、食べられそうなら──」キィ…
ことまり スゥ…スゥ…
家野「お姿を見かけないとは思っていたけれど、やはりここにいらしたのですね」
家野 (奥様から伝染るものではないだろうと言われているし…) スタスタ
空の器
家野 (お腹もまるっきりの空っぽというわけでもないようですし) スッ
家野「また、後で参りますね」ヒソ
キィ… バタン── 仁義なき覇権争い 1/2
十日目
ことり「おはようございます、小原さん。家野さん」
鞠莉ママ「オハヨウ。もう良さそうデスね」
ことり「はい、無理もしてません」
家野「おはようございます。それならばよかった」
ことり「ご心配おかけしました」ペコ
まり「おはよう、ママ。いえの。ことりも」
鞠莉ママ「オハヨウ、マリ」
家野「おはようございます、お嬢様」
ことり「まりちゃんおはよう。昨日はありがとう」
まり「な。んの、こと?元気になったんならちゃんとフルーツのおやつ作ってよね。昨日は約束守ってくれなかったんだから」プイ
鞠莉ママ「マリ。おやつならばspecial cakeがありマス」
ことり「あ、ごめんねまりちゃん。今日はおやつ作れないんだぁ」
まり「え、なんで?」
ことり「だって今日は…ねえ」ニコッ
まり「………………まさか…!?」ハッ 仁義なき覇権争い 2/2
お昼過ぎ
ことり「やーーでーーすーー!ことりも絶対まりちゃんの応援に行きますー!」
鞠莉ママ「Noooo!! マリのハレスガタを見るのはワタシデース!コトリはおとなしくマリのおやつを作っていなサイ!」
ことり「小学校の場所だってかなんちゃんに教えてもらったし道も調べましたもん!」
鞠莉ママ「ハグゥの言うことなど信じてはいけまセン!海に引きずりこまれマスよ!ワタシがどれだけ頑張ってこの時期にvacationを取ったと思っているのデスか!!」
家野「お二人で行けばよいのでは」
ことり「こんな格好でいいのかなぁ」ソワ
鞠莉ママ「こんなのはどうデスか?」っ喪服
ことり「黒あんまり好きじゃないからイヤです!」
家野「色の問題でしょうか」
ことり「それじゃあ行ってきます」
鞠莉ママ「このコは大瀬崎までヨロシク」
船頭「えっ」
ことり「小原さん!!」チュン!
家野「仲良くなさってください」
ブ…
ブゥゥゥゥン…
家野 (いいな、私も行きたいな) チェー
十日目:今日はまりちゃんの授業参観です! 二人行く道 1/4
鞠莉ママ「歩いて行きまショウか」
ことり「はい!」
テクテク…
ことり「小原さんって歩くんですね」
鞠莉ママ「どういう意味デスか?」
ことり「運転手さんがいて車で運んでもらったりするものなのかなーと思ってました」
鞠莉ママ「頼めばクルマを出してくれる者くらいはいマスが、ワタシを運ぶために貴重な人材を使うのはムダというものデス」
鞠莉ママ「歩けば済むし、busだってtrainだってあるのだから。人材は大切に使わなくてはね」
ことり「へ〜、素敵な考え方ですね」
鞠莉ママ「そ、そうデスか?普通のことでショウ、これくらい」ゴニョ 二人行く道 2/4
鞠莉ママ「淡島の居心地はどうデスか?」
ことり「はいっ、もう最高です!自然がいっぱいで気持ちいいし、ホテルのお仕事も楽しいです。なによりもまりちゃんがいるので♡」ウットリ
鞠莉ママ「よほどマリを好いたようね」
ことり「このまままりちゃんの専属メイドになっちゃいたいくらいですもん」
鞠莉ママ「ハハハ、それはマリも喜ぶでショウ。イエノはイヤかもしれまセンけどね」
ことり「あー、うう…まりちゃんの専属メイドは家野さんのお役目ですもんね…」シュン
鞠莉ママ「第二のマザーとも言うべき存在デスからね」
家野「くしゅんっ」
※ 専属メイドではありません。 二人行く道 3/4
ことり「ここを曲がった先だってかなんちゃんが言ってましたよ」
鞠莉ママ「ホントなのデスかね」
ことり「嘘をつく理由がないような…」
鞠莉ママ「前に行ったときはそうでシタが、今も同じとは限りまセンからね」
ことり「どうして小原さんはそんなにかなんちゃんを信じてないんですかぁ」
鞠莉ママ「ハグゥと遊ぶようになってから、マリがイタズラっ子になってきたのデス。夜に部屋を抜け出したこともあるのデスよ」
ことり「へ、そうなんですか?全然そんな風に見えないし、私が来てからは一度もそんな素振りなかったけど…」
鞠莉ママ「ワタシが帰ってきているからでショウね。ハグゥとデスワもそれをわかっているので夜に来ないのでショウ」ヤレヤレ
鞠莉ママ「それに、今はコトリもいマスから」
ことり「私ですか?」
鞠莉ママ「いいコでいたいのだと思いマスよ。マリだけでなく、ハグゥもデスワも」
ことり「夜にお部屋に来たって、抜け出したって、悪い子だなんて思わないですけどね」ボソ
鞠莉ママ「!? コトリまでそんなことを言い出すのデスか!?」
ことり「あっやっ冗談です嘘ですごめんなさい!ちゃんと叱りますっ!」アワワ 二人行く道 4/4
鞠莉ママ「やっと着きまシタね」フー
ことり「ぽつぽつ他の保護者さん達も入っていってますね」
チラ…チラ…
鞠莉ママ「なんだか見られていマスね?」
ことり「小原さん目立ちますからね」
鞠莉ママ「メイド服のコトリも目立っていると思いマスけどね」
ことり「メイド服で来てる保護者さんはいませんね」キョロ
鞠莉ママ「いるはずがないでショウ」
鞠莉ママ「…コトリ、飲み物を買っておきまショウか」
ことり「校門の傍に自販機あるのっていいですね。私買いますよ」スス
鞠莉ママ「お金は出しマス。ワタシはcocoaで」
ことり「はーい。私はミルクティーかなぁ」ポチ
鞠莉ママ ソロ…
ことり「自販機の冷たいココアって美味しいですよね。私は結局いつもミルクティーにしちゃうんですけど、ココアも好きで──…って、あれ?小原さん…?」
鞠莉ママ「マリの一番乗りはワタシデーーース!!」ダッシュ!
ことり「あーっ!あーっ!?ちょっ、やだ、嘘ずるい小原さん!待って!小原さんが言うから買ったのにひどい!私が先です〜〜っ!!」タタタ… 的なね。
やっとここまで戻ってくることができました…
前スレのスクスタ時空というのも、恐らくですが私が書いたものだと思います 隠れた名スレに当たっちゃったなこれ
楽しみに待ってると同時に別れの時が辛そう このSSに出会ってなかったら、いまごろコロナってました 内浦限界バトル 1/11
五時間目──
先生「はい、今日は前から話していた通り、みんなの授業をご家族が見にきてくださっていますね」
児童達「「「………」」」
先生「先生は色々と考えました。みんなのどんな様子を見てもらおうかなって」
保護者達「「「………」」」
先生「国語で作文を書いてご家族の前で読んでみようか、算数で一つ難しい問題に挑戦してみようか。音楽で綺麗な合唱を聴いてもらうのもいいかもしれないな」
先生「たくさん考えて、決めました。今日の授業参観は、」
児童達 ゴクリ…
先生「ご家族の皆さんも交じってのドッジボールをやります!!」
児童達(体操着)「「「いぇーーーーーーーっ!!!」」」フウーッ
保護者達「「「!!!??」」」ドヨッ
──体育! 内浦限界バトル 2/11
体育館
先生「それではみんなは出席番号でAチームとBチーム、Cチームに分かれて、ご家族の皆さんはそれぞれのチームに入ってもらいましょう。試合の順番は…」
ことり「ドッジボール、ですって」
鞠莉ママ「dodge ball... デスか…」
ことり「何年ぶりくらいですか?」
鞠莉ママ「そうね、に──……」
鞠莉ママ「…五年ぶりくらいデース」
ことり「高校生の年齢ですよ、それ!」チュン!
鞠莉ママ「マ、こんなこともあるかもしれないと」ヌギ
鞠莉ママ「準備は万端デーーース!!」バァァァン
ことり「あーーっ!お母さんがランニングとかするときによくしてる格好ーー!」
ことり「ずるい!なんで運動向きのお洋服なんか仕込んできてるんですか!」
鞠莉ママ「アリトアラユル状況を想定できなくては、経営などママなりまセーン。ママだけに!」チッ、チッ、チッ
ことり「私こんな服なのに〜!」
児童達 (((あの人やばそう…))) ザワ… 内浦限界バトル 3/11
まり「ママ!」
鞠莉ママ「マリはA-teamなのデスね」
まり「うん、ダイヤも一緒よ」
ダイヤ「ごきげんよう、まりさんのお母様」ペコ
鞠莉ママ「…ゴキゲンヨウ」
鞠莉ママ (デスワは大きな家の子だし礼儀は正しいのよね。ハグゥと一緒でなければおとなしいのだけど──)
ダイヤ「こっここここここ、ここここっここここ、ことっ、ことりさんっ、も!ご、ごきげんょ…こんにち、ご…」
ことり「こんにちは、ダイヤちゃん。おんなじチームだね。頑張ろうね!」
ダイヤ「ひゃ、ひゃいっ!」フニャ
鞠莉ママ (あっるぇーーーーー???) 内浦限界バトル 4/11
男子「えいっ」三○ ヒュン
まり「ことり!ボール来るわよ!」
ことり「きゃあ!」サッ
まり「え?」
Σ まr○三 ビシッ
まり「ぎゃふんっ」
鞠莉ママ「マリ!!」
ことり「うわあごめんねまりちゃん!そんなところにいるなんて思わなくて!」
先生「顔はノーカン!小原さん平気ですか?」
まり「ギャグパートだったから平気です…」フラ
先生「よし、続行!」
ダイヤ「あら?ボールはどこでしょう、まりさんにあたって跳ねかえって…」
鞠莉ママ「hey, boy. カクゴはできていマスね──?」ユラァ
ダイヤ「スポーティな格好のおばさまが復讐に燃えていますわ!」ンマー!
鞠莉ママ「必殺!ギルティ☆ダイナマイト!」≡≡○ ビュンッ
Σ 男s○≡≡ ゴッ
男子「ふぐぅっ!」
先生「胴体(トルソー)!有効!!」ピッ
鞠莉ママ「URYYYYYYYYYYYY!!!」
児童達 (((あの人やば…))) ザワ… 内浦限界バトル 5/11
鞠莉ママ「なんとか勝ちまシタね」フゥ
ことり「結局外野から戻れませんでしたぁ」
まり「あなたボール見失うの早すぎたわよ」
鞠莉ママ「真後ろから両手の下投げであてられていたものね」
ことり「だってえ…」
ダイヤ「くっ、ことりさんをお守りすることができず悔しい限りですわ…」
ことり「そんな、ことりが弱かっただけだよダイヤちゃん!気にしないで!」
まり (弱かったわね)
鞠莉ママ (弱かったわね)
まり「少し休憩したら、BチームとCチームの試合を見ておかなくちゃね」
ダイヤ「かなんさんはCチームでしたね。味方のときは心強いですが、戦う相手となると気が重い──」
先生「試合終了!Cチームの勝ち!」
ダイまり「「──え…?」」 内浦限界バトル 6/11
ザワザワ…
まり「え、あれ…?二試合目って始まったばっかりじゃ…」
ダイヤ「五分と経っていないはずですが…」
ダイヤ「あ、あの、今の試合はどうなったのですか?」
男子「見てなかったのかよ黒澤〜」
男子「またあれが発動したんだよ!」
ダイヤ「あれ?…というと、まさか…『あれ』ですか!?」
男子「うわー、あいつとやりたくねー」
まり「ダイヤ?どうしたの?」
ダイヤ「…まりさん。あれを…」スッ
まり「…?」
かなん ダムダム…
まり「かなん…?」
ダイヤ「ドッヂボールをあんな風にダムダムできる人など、そうそういるものではありません。今日の試合──荒れるかもしれませんわね…」ザワ… 内浦限界バトル 7/11
先生「AチームとCチームの試合を始めます。礼」ピッ
「「「お願いしまーす」」」
先生「ではボールじゃんけんをしましょう」
男子「勝てよ!絶対勝てよ!」
ダイヤ「ここでじゃんけんに負けることは、そのままチームが試合に負けることにもつながりますわ!」
男子「そんなこと言っても…じゃんけんって運じゃんか…」
鞠莉ママ「すごいデスね。全員とても真剣…」
ことり「それだけ、小学生にとってのドッヂボールって大きなことなんですよ。それに今日は──」
保護者達 ザワザワ… ソワソワ…
ことり「絶対に負けたくない闘い、なんだと思います」
「「ボールじゃんけん、じゃーんけーん………」」 内浦限界バトル 8/11
先生「市原くん、矢上くん、アウト!」ピッ
一同「「「……………!!」」」
かなん ダムダム…
男子「お、おい…またボール松浦に戻っちゃったぞ…」
男子「早く奪わないと、このまま全滅するって…」
男子「だったらおまえキャッチしろよ」
男子「むちゃ言うなよ…」
かなん スッ
男子「! ま、また来るぞ!」
男子「絶対ボール奪え!もう松浦に戻すな!」
かなん ブンッ
ゴオオオオオッ ≡≡≡≡≡≡○
男子「ひっ…!」
──バシッ バシッ
先生「棚元くん、榊くん、アウト!」ピッ 内浦限界バトル 9/11
ことり「ぁ…また、ボールかなんちゃんに…」
まり「もう三回連続で、一度に二人あててかなんにボールが戻ってるわよ…」
ことり「じゃんけんでボール取られちゃってから、一回もこっちから投げてないね…」
まり「あんなのずるじゃないの…」
ダイヤ「あれこそが、かなんさんの必殺技ですわ」スッ
ことり「ダイヤちゃん!」
まり「まだ生きてたのね」
ダイヤ「ええ、なんとか。というか、おそらくかなんさんがあえてわたくし達はあてないようにしているのだと思います。わたくし達というか、女子ですかね」
まり「そういえば、さっきからあたってるのは男子だけね」
ことり「あんな速さのボール、女の子だったら痛くて泣いちゃうかもしれないよね…」
まり「ってか、なに、必殺技って」
ダイヤ「…」
ダイヤ「──『夏の大三角(トライアングル・シューティングスター)』」 内浦限界バトル 10/11
ダイヤ「かなんさんがゾーンに入ったときだけ使えるという、ドッヂボール中の必殺技」
ダイヤ「みとれるほどの美しいフォームから放たれるボールは、一人を討って軌道を変えて、さらに一人を討ってからかなんさんの手元に戻る」
ダイヤ「一瞬のうちにえがかれる三角形は夏の夜空に輝く三つの星座のごとく。あまりの勢いにボールを受けた男子が吹っ飛んで尻もちをついてしまうその姿は流れ星のごとく」
ダイヤ「わたくし達の中では知らない子はいないその必殺技は、いつからかそんな風に呼ばれていましたわ」
ダイヤ「あの状態のかなんさんにボールが渡れば最後、こちらの男子が全滅してしまうまで──流星群がやむことはありません」 内浦限界バトル 11/11
まり「そんな…ってことは、もう…」
ダイヤ「試合の途中でこうなったのならばまだ取り返しようがある場合もあるのですが、相手のチームは誰一人アウトになっていない。最初からこれでは、勝ち目は…」
鞠莉ママ「気弱なことを言うのではありまセン」ザッ
ことり「ここは私達の出番みたいですね」ザッ
ダイヤ「!」
まり「ま、ママ…?ことりも…」
鞠莉ママ「dodge ballをあんな速さで投げる人間など見たことがない。小学生ならば怖くて当然デス」
ことり「男の子でも太刀打ちできないんじゃ、女の子にはどうしても荷が重いですもんね。でも、それなら──『女性』がどうにかすればいいんです!」
鞠莉ママ「………ワタシは女の子なのでやめておきマース」ススス
ことり「あっ!わ、私だって女の子ですもん!小原さんずるいっ!」チュン!
鞠莉ママ「HAHAHA, 冗談デース!」
ことり「もうっ…」
ダイヤ (おばさまが…女の子………??)
鞠莉ママ「さて、それでは──反撃といきまショウ」コキコキ
ことり「はいっ!」 放課後好々爺 1/10
ダムダム… ダムダム…
かなん (相手のチーム、残ってる男子は四人)
かなん (高橋くんの右肩、浦川くんの左脚、それでコースは見えた)
かなん (悪いね、ダイヤ。まり。ことちゃん)
かなん (あと二球で──終わりにするから!)
かなん ブンッ
ゴオオオオオッ ≡≡≡≡≡≡○
かなん「──────」
高橋「うわっ!」バシッ
かなん「………!!」
ダイヤ「!」
まり「!」
ことり バッ…!!
一同「「「!!?」」」ザワ 放課後好々爺 2/10
────バシィィッッ
ダイヤ「こ、ことりさん!」
まり「ことり!」
ことり「あ痛ったぁい…!」ヨロ…
かなん「こ……っ、ことちゃん…!!」
ことり「…小原さんっ!」ハァ
鞠莉ママ「イエス!」ダッシュ!
かなん「!?」ハッ…
「ま、松浦の『夏の大三角』が…止まった…」
「ボールが…」
鞠莉ママ ズザザザ…
………パシッ
「こっちに来た…!」
鞠莉ママ「ここからはour turnデース」ニッ っボールと 放課後好々爺 3/10
鞠莉ママ「高橋ボーイ!ボールから目を離さない!」
鞠莉ママ「浦川ボーイ!out zoneに近づき過ぎデス!」
鞠莉ママ「womenは二人、girlsは三人で固まって!ボールを全体で受け止めて確保するのデース!」
三○
○====
≡≡≡≡≡≡○
○)))……
ことり「す、すごい…」
ダイヤ「コート全体を見渡す広い視野、的確な作戦と指示。先ほどまでの一方的な差がどんどん縮まっていますわ…」
まり「ママが本気になったらこんなものなんだから!」ヘヘン
ダイヤ「さすがの手腕には感服ですわ。でも、やっぱり一番の原因は…」
かなん シュン… ←外野
ダイヤ「ことりさんにあててしまったことで、かなんさんがすっかり落ちてしまったことでしょうね」
まり「そうね…」
鞠莉ママ「コラ、そこ!ボールと敵に集中していなサイ!」
ことり「ぴっ!ご、ごめんなさぁい!」
まり「とにかく今は勝つことだけ考えましょ!」
ダイヤ「は、はい…!」 放課後好々爺 4/10
鞠莉ママ「ハァ……ハァ………」
坂井(敵)「はぁはぁ……ふぅ…」
鞠莉ママ「ギルティ☆ダイナマイト……っ!」==○ ビュッ
坂井(敵)「…っ、ああ!」パシッ
まり「キャッチされたわ…」
ダイヤ「さすがに速度が落ちていますからね…」
まり「内野に残ってるのはママと坂井くん、それぞれ一人ずつ。ボールもお互いにキャッチし合うから、外野からも手出しできない…」
ダイヤ「っ、もどかしい…!外野でボールを回して翻弄すればよいのに!どうしてこちらへボールを下さいませんの?」
まり「それは坂井くんも同じね。なんでお互いにボールを投げ合うだけなのかしら、体力も残ってないはずなのに…」
ことり「それが、誇りなんだよ」
ダイヤ「!」
まり「誇り…?」 放課後好々爺 5/10
ことり「そう。ここまで戦い抜いて、そして内野に一人きりになった自分の誇り。そして、同じようにたった一人になるまで残ってた相手に対する誇り」
ことり「小原さんも坂井くんも、自分自身の手で決着をつけたいんだよ。誰の手も借りずに、自分だけの手で──!」
ダイヤ「ことりさん…」
まり (よく、わからないんだけど…) ドーン
ことり「! 坂井くんが投げるよ!」
まり「ま、ママ!頑張って!」
ダイヤ「最後までお気を確かに!」
「がんばれ坂井!」
「ママさんがんばって!」
鞠莉ママ「来なサイ…!」
坂井「て、やぁあ…っ!」≡○ ヒュンッ
………
……
… 放課後好々爺 6/10
先生「せいれーつ!」
児童達 ゾロゾロ…
先生「みんな、お疲れさま。ご家族の皆さんもお疲れ様でした」
先生「どのチームもとても頑張っていましたね。入学してきたばかりの頃はあんなに小さくて頼りなかったあなた達が、こんなに…たくましく、動き回っている姿に…先生はっ…」ウッ
まり「先生泣いてない?」
ダイヤ「先生は、昨年度赴任してきたはずですが…」
ことり ウルウル…
まり「って、ええ!?なんで貰い泣きしてるの!?」ギョッ
先生「すみません」ズビ
先生「どのチームも頑張ったけど、勝負事なので結果はつきましたね。見事二勝して──Cチームの優勝でした!拍手!」
パチパチパチパチ……
「やったなー坂井!」
「すごかったよ、坂井くん」
坂井「えへへ…」
先生「特に最後の試合はすごかったですね。頑張ったチームメイトと、素敵な試合をしてくれた相手チームのみんなにも向けて、全員でもう一度大きな拍手!」
パチパチパチパチ!
先生「それでは五時間目の体育はこれで終わります。ホームルームをするので教室に戻りましょう」
児童達「「「はーーい」」」 放課後好々爺 7/10
帰り道…
鞠莉ママ「ハァ…」トボトボ
ことり「まだ落ち込んでるんですか?」
鞠莉ママ「だって!ワタシがもっと踏ん張っていれば、マリをwinnerにすることができたのデスよ!」
まり「わたしは楽しかったし、ママがカッコよかったから満足よ」
鞠莉ママ「そう言ってくれるのは嬉しいデース」ニコ…
まり「ママ…」
ことり「なかなか深刻だね…」
ことり (この日のためにお仕事を調整してお休み取ったんだって言ってたもん。すごく惜しかっただけに、悔しい気持ちもきっとすごく大きいよね…)
ことり (これが国語や算数だったなら、小原さんがこんな気持ちになっちゃうこともなかったのにな…)
まり「ママ、今日はママが作ってくれたごはんが食べたいわ──」
「まりのお母さん!」 放課後好々爺 8/10
ゴオオオオオッ ≡≡≡≡≡≡○
鞠莉ママ「!?」
ことり「お、小原さんっ!」
鞠莉ママ「クッ、ナンノコレシキ…!」
鞠莉ママ バシッ
ことり「な、ナイスキャッチ」ホッ…
まり「ちょ…ちょっと、危ないじゃない!なにするのよ──かなん!」
かなん ニッ
かなん「とうっ!」シュタッ
かなん「カモン、おばさん」クイクイ
鞠莉ママ「…ホウ、いい度胸デスね」
ことり「え?え??小原さん、ここ校門の前ですよ」アセ
かなん「運動場ならいいでしょ!」タタタタタタ
鞠莉ママ「受けて立ちマース!」ダッシュ!
ことり「えっ、あっちょっと小原さん!かなんちゃん!」
まり「二人とも待ってー!」タタタ… 放課後好々爺 9/10
「すみませんな、うちのじゃじゃ馬が」ヌッ
ことり「あ、あなたは…?」
松浦爺「これは失礼、松浦と申します。果南の祖父をやっとりますわ」
ことり「かなんちゃんのおじいさんですか!初めまして、えっと…」
松浦爺「ことさんですかな。果南がうちでよく話しとる」
ことり「は、はい。小原さんのところでメイド…使用人のお手伝いをさせてもらってます、南ことりです」
松浦爺「小原さんは相変わらず元気だな」
ことり「そうですね」
松浦爺「もう何年前になるか、ホテルオハラを建てるっちゅうて挨拶に見えたとき。その頃からパワフルなお嬢さんではあったがな、果南に付き合ってやれるのは凄いことだ」
ことり (お、お嬢さん…そうだよね、松浦さんからしたら小原さんなんてまだまだひよっこだよね)
松浦爺「わしも若くないんでな、ドッヂボールは見学させてもらうだけだったが、終わってから果南を叱りつけてやったんですわ」
ことり「叱った、ですか?」
松浦爺「おう!試合の途中でやる気をなくすなんてバカタレのすることだっちゅうてな。果南が最後までやっとけば、小原さんなんか目じゃなかったろう、ってゲンコツくれてやったわ。かっかっかっ!」
ことり「げげげゲンコツ!!?」 放課後好々爺 10/10
松浦爺「そしたら先生の話が終わるやボールを借りてきよってな、『リベンジするから見てろ』と抜かす」
松浦爺「小原さんに勝てなかったら晩メシは食わせんと言うとるからな、しばらくはああやっとるはずですわ。ま、わしはジャングルジムでもやって気長に待つとしますか」グッグッ
ことり「ジャングルジムはなさるんですか!?」
松浦爺「ことさんも?」クイクイ
ことり「や、私は、その、大丈夫です。かなんちゃん達の応援でもしてます」
松浦爺「そうか。残念」
松浦爺「勤めは小原さんのところだろうが、果南とも仲良くしてやっとくれな。あれも相当あなたを好いとるようだ」
ことり「はい、私もかなんちゃん大好きですから!」
松浦爺「かっかっかっ!」ヒョイヒョイヒョイ
ことり (するする登ってくー!!)
<ことちゃーん、こっちおいでよー!
<コトリ、ジャッジをしなサイ!ジャッジを!
<ねえ、いつまでやるの?
松浦爺 ニカッ
ことり フフッ
ことり「はぁーい!」タタタ… まごころクッキング 1/11
十一日目、土曜日
♪
鞠莉ママ「おっと電話デス。Hi, this is Ohara...」
ことり ジッ
まり「どうしたの?」
ことり「ううん、やっぱりお仕事の電話は英語なんだなーと思って」
まり「当たり前じゃない…っていうわけでもないか」
ことり「そうなの?」
まり「うん」
まり「だってママ、イタリアでもお仕事するし、お仕事の相手はドイツの人だったり中国の人だったりするもの。だからいつも英語なわけじゃないわよ」
ことり「そ、そっちかあ…」
まり「今電話をくれたのがたまたま英語圏の相手だったんでしょうね」
ことり「ことりなんか、まだまだイタリア語もうまく喋れないのに…」
まり「ママってばすごいでしょ!」ドヤッ まごころクッキング 2/11
鞠莉ママ「Sorry, 出かける用事ができてしまっタわ」
家野「あら」
まり「えーー!ママ、今日土曜日よ!?」ブー!
鞠莉ママ「スミマセン、なかなか会えない人なのデスが、たまたま日本に来ているのだと…」
鞠莉ママ「マリ。イエノの言うことをキチンと聞いて、いいコにお留守番を──」
家野「! 奥様、」
ことり「?」
まり「大丈夫」
まり「わたし、もう五年生よ。ママがお仕事で忙しいことくらいわかってるから」
まり「このお休みだって頑張って取ってくれたのよね。一日くらい我慢するわ」
鞠莉ママ「マリ…」ホッ
鞠莉ママ「一日なんて言いまセン、afternoon-teaには戻りマス!」バッ
家野「運転手は待機させておきます、奥様もご支度を」ササッ まごころクッキング 3/11
ブ…
ブゥゥゥゥン…
まり「行っちゃった」
ことり「行っちゃったねえ」
まり「あーあ、せっかくの土曜日くらいママと遊んであげようと思ったのに。やることなくなっちゃったわ」プー
ことり「ね、まりちゃん」
まり「なに?」
ことり「ことり、いいこと思いついたんだけど」
まり「そうなの。よかったわね、頑張ってね」
ことり「違うの!まりちゃんも一緒に!」チュン!
まり「え〜」
ことり「小原さん、午後には帰ってくるって言ったでしょ」
まり「言ったわね」
ことり「だからさ、ことりと一緒に──おやつ作って待ってない?」ニコッ
まり「…!」
まり「や、やる!」
ことり「それじゃ、美味しいおやつ作って小原さんビックリさせちゃおう!」
まり「うんっ!」 まごころクッキング 4/11
まり「なに作るの?」ソワソワ
ことり「ふっふっふ…ことりはね、こんな日が来るんじゃないかと思って用意してたんだよ」ゴソゴソ
ことり「じゃじゃーん!」っメモ サッ
『まりちゃんと作る!おやつレシピ』デーン
まり「ええ…」
ことり「さーさーまりちゃん、お菓子作りはやること多いんだよ。てきぱき動かないと小原さんが帰ってくるまでに間に合わなくなっちゃうんだから!」
まり「わ、わかったわよ。…でもまりお菓子作るなんて初めてだからなにから始めたらいいかわかんないけど…」
ことり「はい」っメモ
『作業手順(まりちゃん)』
まり「…………ことりは?」
ことり「こっちだよ」っメモ
『作業手順(ことり)』
まり (用意よすぎ…きもちわる…)
ことり「さー、がんばろー!」
まり「お、お〜!」 まごころクッキング 5/11
ことり「まりちゃんはニガテなお菓子とかある?」
まり「ニガテなお菓子?考えたこともないけど…ことりはあるの?」
ことり「私はねえ、辛いのがダメなんだぁ」
まり「辛いの?」
ことり「唐辛子とかハバネロとか、そういうのあるでしょ。ちょっと食べただけできゃあってなっちゃう」
まり「ああ、そういうお菓子もありなのね。てっきりケーキとかシュークリームとかのことかと思ったわ」
まり「んー………あ、一つあるかも」
ことり「なになに?」
まり「なんていうお菓子か知らないんだけど、なんか…お仏壇に飾ってあるやつ」
ことり「お仏壇?」
まり「うん。かなんと辻宗さんに行ったときにおばあちゃんがくれたんだけど、すっごく甘くて、っていうかたぶんあれただの砂糖だと思うのよね」
ことり「…らくがんかあ」
ことり「らくがんは、そうだね。ことりもあんまり好きじゃないかなあ」
まり「ねー。仏様にあげたものなんだからまり達が食べるべきじゃないと思うわ」プンスコ
ことり「そーだそーだ!」プンスコ まごころクッキング 6/11
ことり「よーし」キュ
まり「なに、そんなに気合い入れて」
ことり「ここがね、ことりの作業の中で一番大事な部分なの。慣れてても気を抜いちゃいけないから頑張ろうって思って」
まり「ふうん。…見ててもいい?」
ことり「うん!でも飛んで顔についちゃうかもしれないから少し離れててね」
まり「わかった」ススス
ことり パラ
まり「…ことり!?それ塩よ!?砂糖はこっち!」
ことり「あっううん、お塩でいいんだよ。こうやってほんのちょっとだけ入れておいたら卵白が固まりやすくて、泡立つのが早くなるんだ。お砂糖は後から入れるの」
まり「へ、へえ…そうなの…」
ことり「まぜるよ〜」カチ ウィィィィィィン
まり「………………へ〜…」ジー
ことり「う〜ん、このくらいでいいかな。そしたらまりちゃんがふるってくれたお砂糖を入れます」サラサラサラ
ことり「いっぺんにバンって入れたらせっかく立てた泡が潰れちゃうから、こうやって優しく全体にね」
まり「うん」
ことり「それじゃまたまぜま〜す」カチ ウィィィィィィン
まり ジー
ことり (興味津々。可愛いなあ♡) まごころクッキング 7/11
ことり「まりちゃんがかなんちゃんとダイヤちゃんと仲良くなったときのこと、聞きたいな」
まり「えっ」
まり「別に、面白くないわよ。普通だし…」
ことり「それでもいいの。ね、聞かせて?」
まり「………」ムゥ
まり「特別なことなんてなにもなかったわよ、転校したばっかりのわたしにかなんがすぐ話しかけてくれたの。『髪の毛きれいだね』って、なでてくれたの」
まり「わたし、それがびっくりしちゃって。日本に来る前は、お金持ちばっかりのスクールにいたから、そんな風に気軽にしてくるコなんかいなかったもの」
まり「でも、そういうの慣れてなかったから、ちょっと怖い、なに考えてるのかわかんない、ってさけてたの」
まり「でもかなんってば、休み時間のたびにわたしの席まで来て一人で色んなこと楽しそうに話すの。ダイヤはうんとかそうですわねって言うだけだったけど、必ず一緒に来たわ」
まり「かなんのことちょっと怖かったけど、他にお話しする友達もいないし、いつも声かけてくれるから…嬉しかった」
まり「それでね、わたしの誕生日にね、二人がヘアゴムを二つくれたのよ。これ」
まり「誕生日なんか教えてないのになんで、しかもなんで二つ、って思ったら、かなんが『先生に教えてってお願いしたんだ』って。ダイヤが『お母さまとおそろいにしてください』って」
まり「髪の毛なでられたとき、びっくりしてとっさに『ママと同じ自慢の髪』って言ったのを覚えててくれたみたいでね」
まり「ああ、この人達と仲良くなりたい、って思ったの」
まり「…それだけ!面白くないでしょ!」プイッ
ことり「ううん、そんなことないよ。とっても素敵な想い出だなって思う。二人のこと、大切にしてあげてね」
まり「ことりに言われなくってもそうするもの!ほら、手が止まってるわよ!」
ことり「はーい」 まごころクッキング 8/11
ことり「それじゃ焼こっか」ピピ
まり「そんな短くていいの?」
ことり「うん、まずはね。この後、何回かに分けて焼くんだよ。その間にもすることあるから頑張ろうね」
まり「…お菓子作るのって、大変なのね」
ことり「そうだね。慣れてなかったら段取りもわかんないし、途中でいっぱいいっぱいになっちゃうかも」
まり「ことりは随分慣れてるのね」
ことり「あはは。昔からたくさん作ってたからね」
まり「うちに来る前もどこかでメイドやってたの?」
ことり「えっ!メイドさん…やってなかったことはないんだけど………ううん、ただ普通に、友達にあげたり部活に持っていったりしてたんだよ」
まり「げ、こんな面倒くさいこと好きでやってたの!?」
ことり「めんどくさくないよぉ!手順は多いし時間もかかるけど、食べてくれる人のことを考えながら作ってる間って、すっごく楽しいから」
ことり「まりちゃんも。やること多くて大変だったと思うけど、イヤじゃなかったでしょ?」
まり「……」
──まり『ことり、これどうするの?』
──ことり『下にクッキングペーパーを敷いて、このくらいの高さで…トントントン、って』
──まり『あ、ありがと』
──『いただきマス。………so delicious!! さすがマリ!』
まり「…うん、楽しかった」
ことり「えへへ、よかったぁ」
ことり「もうひと頑張り、しようね!」
まり「うん!」 まごころクッキング 9/11
ことり ペロ
ことり「うん、いいと思う」
まり「ほんと?」
ことり「ガナッシュが冷めたら生地に絞り出して、冷蔵庫に入れておいたら完成。小原さんが帰ってきたら食べられるくらいになってるはずだよ」
まり「わぁ…!」パァ
ことり「疲れちゃったね、冷めるまで休もっか」
まり「すごいわ、ことりもいえのも。毎日こんなことやってるなんて」
ことり「あはは、普段はもう少し簡単なものが多いよ。でも今日はまりちゃんとの初めてのお菓子作りだったから、やった、頑張った、って思えるものがいいなと思って」
まり「ママに食べてもらうのが楽しみだわ」ワクワク
まり「〜♪」フンフン
ことり「…」
ことり「まりちゃんって、お星さま、好き?」
まり「え?星?なんで?」
ことり「あっううん、たいした理由はないんだけど…」 まごころクッキング 10/11
まり「好きかキライかだったら好きよ。キラキラしてきれいだもの」
まり「でも、理科で習うのはニガテ。よくわかんないわ」
ことり「そっかぁ。ことりのお友達…に、ね、お星さまに詳しい子がいるんだよ。なんでも知ってて、科学館の職員さんみたいに色んなことを教えてくれるから、その子がなぞる人差し指を追ってお話を聞いてるだけでどんどん引き込まれていっちゃうの」
ことり「ことりもお星さまのことなんかよくわかんなかったけど、その子と星空を見るのは好きだったなぁ」
ことり「いつか、まりちゃんも会ってみてほしいな。そしたらきっとお星さまのこと、好きになれると思うよ」
まり「…色んなお友達がいるのね、ことりには」
まり「わたし、流れ星を見てみたいわ。知ってる?流れ星を見つけてお祈りしたら、お願い事が叶うんだって」
ことり「へえ、そうなんだ。ことり、流れ星は見つけたことないな。まりちゃんだったら流れ星にどんなお願い事をするの?」
まり「そうねー、やっぱり大好きな人達とずっと一緒にいられますように、ってことかなぁ」
ことり「…うん。すごくいいね。私も、そう願いたいな」
まり「ところで、なんで突然星の話?」
ことり「えっ!?」
まり「……………!まさかあなた、まりの部屋に入ったりした?」
ことり「えっっっ!!?し、してないよ!なんで!?」ギクゥッ
まり「ほんとに!?なんでそんなに動揺してるの!?」
ことり「ど、動揺なんてしてないよ。あ!ガナッシュ冷めたかな、様子見なくちゃ!」ガタ
まり「あっちょっとことり!!」ガタ まごころクッキング 11/11
パタン…
ことり「冷えたら出来上がり!」
まり「やったーっ!」
ことり「小原さんが帰ってくるのが待ち遠しいね」
まり「うん。いっぱい食べてもらうわ!」
ことり「四人でも食べきれないくらい作っちゃったし、明日かなんちゃん達に持っていってあげたらどうかな?」
まり「わ、それいいわね。きっと喜ぶわ」
ことり「う〜ん、それじゃことりは小原さんが帰ってくるまで少しホテルのお仕事を手伝ってくるね」
まり「あー、そうよね。じゃあまりは宿題やってるわ」
ことり「えらいっ!…あ。ところで、かなんちゃん達がくれたヘアゴムって、小原さんはどうしてるのかなあ?」
まり「つけたことは一回もないわよ」
ことり「そうなんだ…」
まり「でも、机の一番上の引き出しに入ってる。ちっちゃな箱に入れて、大切にしてるわ」
ことり「…うふふ。そうだよね」 ブレイク ブレイク スタイル 1/6
鞠莉ママ「オォ………ォ…」
まり「じゃーんっ、どうママ!?ことりと一緒に作ったのよ!」
マカロン テテーン
まり「どう?どう??」
鞠莉ママ「──────」カタカタ
ことり (あ、これ感動のあまり大宇宙感じてるやつだ)
※ ことりも大宇宙の経験者だよ!
鞠莉ママ ──ハッ
鞠莉ママ「イエノォ!!スグに coffee を!!」
家野「ご用意できています」カチャ
鞠莉ママ「マリ、コトリ、座りなサイ。スグに頂きまショウ!」
まり「うん!」
ことり「はい!」 ブレイク ブレイク スタイル 2/6
まり「こっちのがココア味で、こっちが抹茶。これはね、えへへ…コーヒー味よ」
鞠莉ママ「こんなにたくさん、大変だったでショウ」
まり「それがことりったらすごいんだから!レシピほとんど見てないのに、次から次に色んなことやっちゃうの。まりが聞いたこともすぐ教えてくれるのよ!」ニコニコ
鞠莉ママ「ホウ…」
鞠莉ママ「アリガトウ、コトリ」
ことり「いえいえ。まりちゃんとお菓子作りできてとっても楽しかったですから」
鞠莉ママ「…おや、マリはなにを飲んでいるの?」
まり「ホットミルクよ」
鞠莉ママ「ホットミルク…!?」
家野「奥様はこちらを」カチャ
鞠莉ママ「アラ?紅茶?」
家野「召し上がるとおわかりになるかと思いますが、やや濃い目の味になっています。ハイマウンテンの浅煎りでもいいのですが、私はウバの方が合うと感じましたので」
鞠莉ママ「そう、イエノがそう言うのなら文句はありまセン。マリはホットミルク、ワタシは紅茶。なんだか不思議な光景ね」 ブレイク ブレイク スタイル 3/6
四人「「「「いただきます」」」」
パク…
鞠莉ママ「...Fine Del Mondo...!!」
まり パァ
鞠莉ママ ス…
鞠莉ママ「…なるほど。ウバの渋味と非常に match しマス」
ことり「アフタヌーンティーって言うからには、お菓子によっては紅茶を合わせるのもいいですよね」
鞠莉ママ「そうね」
まり ソワソワ
鞠莉ママ「? どうしたのデスか、マリ」
まり「ねえママ、一緒にコーヒー味の食べましょ」
鞠莉ママ「言われなくても、ぜひ」ヒョイ
まり「せーので食べるわよ。せーのっ」
まり パク
鞠莉ママ パク
モシャ…モシャ…モシャ…
鞠莉ママ「これもとても美味しいわね。coffee がかなり濃いけれど、マリは平気なの?」
まり「うん、ミルクと合わせたらちょうどいいわ」ゴク ブレイク ブレイク スタイル 4/6
鞠莉ママ「そう、ミルクと合わせるために濃くしてあるのデスね」
鞠莉ママ「ワタシも coffee を飲まなくても満足なほど濃いけれど、マリも食べられるならば──」
ことり ニコニコ
鞠莉ママ「……なんデスか、ニヤニヤして」
ことり「に、にやにやしてないですもん!」
まり「きもちわるい」
ことり「まりちゃんまでぇっ!!」
まり「…あのね、ママ。コーヒー味をこんなに濃くしたのはことりが考えてくれたことなのよ」
鞠莉ママ「ハイ?レシピがコトリのものだというのなら、当然のことでショウが…」
まり「そうじゃないの」
まり「まりが、ママとコーヒーブレイクを楽しめるようにって。考えてくれたのよ」
鞠莉ママ「エ──…?」
ことり「まりちゃんは、まだコーヒーを飲むのは難しいかなって思うんですけど。お菓子ならこれくらい濃くても食べられるみたいだから」
ことり「一緒にコーヒーを飲めないのなら、一緒にコーヒーを『食べる』コーヒーブレイクにしちゃえばいいんじゃないかなって、思ったんです」
鞠莉ママ「────………!!」 ブレイク ブレイク スタイル 5/6
──鞠莉ママ「まずは好き嫌いデスか。マリは coffee がニガテなようで…」
──ことり「小学生ですよね!?飲めなくて普通だと思いますっ」
──鞠莉ママ「でもワタシはマリと coffee break を楽しみたいのデース!」イヤイヤ
──ことり「ふええ……小原さんの願望じゃないですかあ…」
鞠莉ママ (私が言ったほんの些細なことを、ずっと気にしてくれていて)
──鞠莉ママ「ワタシの tiramisu は coffee の風味が強く感じマスね」
──家野「奥様の分とまりお嬢様の分とで、分量を変えて作っていらしたようですよ」
鞠莉ママ (そう、この子は…マリと実際に会うよりもずっと前から、私達のことを一生懸命に考えてくれていて。ここにいる間も、きっとずっと考えてくれていたのね)
──鞠莉ママ「コトリは kitchen でなにをしているのデスか?」
──家野「お嬢様のおやつを作っているのだと思っていましたけど、どうかしましたか?」
──鞠莉ママ「umm...ワタシが覗いたら、とても慌てた様子で追い出されてしまったのデス」
──家野「あら」
鞠莉ママ「…………」 ブレイク ブレイク スタイル 6/6
まり「ごちそーさまでしたっ」
家野「どの味も、とても美味しかったですね」
鞠莉ママ「エエ」
家野「日持ちはそんなにしませんよね。残った分はどうしましょうか」
まり「あ、それ明日かなん達に持っていくの」
家野「そうでしたか。では簡単にラッピングをしてから冷やしておきますね」
まり「ありがとう!」
ことり「私、洗い物してきますね」ガタ
まり「あー、お菓子作り楽しかったわ。ちょっと面倒くさかったけど、ことりがちゃんと教えてくれるならたまにやってみてもいいわね。ねえママ、なにか作ってほしいお菓子ある?よくわかんないけど、ことりなら作り方知ってると思うから一緒に作って……… …ママ?」
鞠莉ママ「コトリ、イエノ!こちらへ来なサイ!」
鞠莉ママ「…マリ、話しておくことがありマス」
まり「…?」 >>210
おお!そうなんですか!
気が向いたらそちらの方もひとつ… 離れて欲しくない…
ことりちゃん鞠莉ちゃんの専属メイドになって欲しい🥺 ロリーはロリの中でもトップクラスの可愛さだから是非映像化してほしい 残酷な通達 1/8
十二日目、日曜日
ことり「……」
家野「保冷剤は入れていますが、黒澤さんのお家に着いたら、おやつの時間までは冷蔵庫に入れさせてもらうんですよ」
まり「わかってる、ありがと!」
鞠莉ママ「わざわざハグゥとデスワァに分けなくても、ワタシがみんな一人で食べるのに」ムスー
まり「ママってば、そんなこと言わないの!」
家野「果南さんを呼びにいかれている間に、船の準備をしておきますからね」
まり「うん、ちょっと呼んでくるわ!」
ことり「まりちゃん、
まり「あ。そうだいえの、今日、四時くらいにお迎えにきてもらってもいい?」
家野「わかりました」
ことり「あ、わ、私お迎え行こうか!?」
まり「………ことりは運転できないでしょ?運転ができる人に来てもらうから、大丈夫よ」ニコッ
ことり「そ、そっか…そうだね…」
家野「……」
鞠莉ママ「……」
まり「じゃあ呼んでくる!」タタタ 残酷な通達 2/8
かなん「いってきま〜す!」ノシシシ
まり「いってきます」
ブ…
ブゥゥゥゥン…
ことり「………」
家野「ことりさん」
ことり「あ、いえ、大丈夫です。昨日、覚悟はしてたので」
家野「…そうですか」
鞠莉ママ「コトリ、」
ことり「はい」
鞠莉ママ「…イエ、なんでもありまセン」
家野「ホテルのことは時間があれば、で構いません。ことりさんは先にご自身の整理をされてください」
ことり「ありがとうございます、そうしますね」スタスタ…
家野「寂しくなりますね。あっという間の二週間でした」
鞠莉ママ「そうね」
──鞠莉ママ「コトリがウチを出るとき、少しでも別れをイヤがってくれたら、それで成功デス」
鞠莉ママ (「これで成功デスよ」なんて、とてもじゃないけど言えないわね……) 残酷な通達 3/8
──鞠莉ママ「…マリ、話しておくことがありマス」
──まり「…」
──家野「…」
──ことり「…」
──鞠莉ママ「ワタシは、明後日出発しマス」
──ことり「!」
──まり「あ…そうよね、もうそんなにたっちゃったんだ」
──鞠莉ママ「それに伴って、コトリも…明後日でウチを出ることになるわ」
──まり「ぇ………」
──家野「あっ、そう…でしたね…!」ハッ
──鞠莉ママ「毎日とても真剣に頑張ってくれて、ホントウに感謝していマス。明後日の昼前にはウチを出ることになるので、明日いっぱい楽しく過ごしなサイ」
──家野「すっかり馴染んでしまっていました。まるで昔からご一緒しているようで、それでいてこれからもご一緒していくかのような気持ちでいましたね。寂しいことですが、あと一日、よろしくお願いします」
──ことり「はい。私も、なんだか変な気持ちです」 残酷な通達 4/8
──鞠莉ママ「それで明日デスが、せっかくならば四人でどこか出かけて──」
──まり ガタ…
──家野「お嬢様?」
──まり クルッ
──まり スタスタスタ…
──鞠莉ママ「マリ?どうしたの?」
──まり「お部屋に戻るわ。ちょっと寝る」
──家野「え、っと…」
──鞠莉ママ「今スグでなくてもいいでショウ。明日どうするかだけ決めたら、dinner までは自由に…」
──ことり「まりちゃん、明日…」ソッ
──まり「さわらないで!!」パシッ
──ことり「…っ!?」
──鞠莉ママ「マリ!なにをするのデスか!」ガタッ
──家野「お嬢様、どうかなさいましたか──」
──まり ポロポロ……ボロ…ボロ……
──鞠莉ママ「マ、リ…」
──家野「お嬢様…」
──ことり「まり、ちゃん…」 残酷な通達 5/8
──鞠莉ママ「マリ、どう…したの……」
──まり「………っぱり……」
──まり「…やっぱり、いなくなっちゃうんだ……」グシグシ…
──鞠莉ママ「…………!!」
──まり「ことりも、まりを置いて……行っちゃうんだ…」グズ
──ことり「まりちゃん、わたし…」
──まり「わかってたことだもん、いいわ。平気。そういう約束だったもんね」
──まり「大丈夫だから。ちょっと、疲れたから寝るだけ」
──まり「おやすみなさい」
──まり スタスタスタ…
──家野「……お嬢様、お部屋までご一緒します」タタッ
──ことり「わたし…」ヨロ…
──鞠莉ママ「…スミマセン、コトリ」 残酷な通達 6/8
──ことり「小原さん…」
──ことり「まりちゃん、『やっぱり』って…『ことりも』って…」
──鞠莉ママ「…ワタシのせいなのデス。イエ、ワタシ達のせい…デスか」
──鞠莉ママ「ワタシも夫も家を離れがちだった、とは話したわね。今はこれでも昔よりずっと長くマリと一緒にいられている方なのだけど、今よりもっとずっと幼いマリをイエノに任せて仕事仕事と飛び回っていた弊害が、……ああいう形でマリの心に傷を残してしまったのデス」
──鞠莉ママ「一人、家に置いていかれること。親しい相手が離れていくこと。それを強く怖がるようになりまシタ」
──ことり「……ぁ、だから…あのとき…!」
──ことり「その……今日はちょっと、船に乗るの、は…」
──まり「………」
──まり「…ことり、あなたも…私のこと…」
──ことり (咄嗟に抱き締められて、よかった)
──ことり (…でも結局、寂しい思いをさせちゃうんだ)
──ことり グ… 残酷な通達 7/8
──鞠莉ママ「ホントウのことを言うと、コトリ、マリがここまであなたに懐くとは思っていなかったのデス」
──鞠莉ママ「家族以外に心を開く、そのきっかけになる。その程度の変化があればいいと、思っていたの」
──鞠莉ママ「それが、まさか…」
──鞠莉ママ「ごめんなサイ。マリにも、コトリにも、つらい気持ちを味わわせることになってしまいまシタね…」ハァ
──ことり「…ううん、私は。まりちゃんの気持ちに比べたら、なんてことないです」フルフル
──鞠莉ママ「…」
──ことり「…」
──鞠莉ママ「コトリ」
──鞠莉ママ「アツカマシイお願いだとはわかっていマス。でも、どうか…明後日までは、マリのことを…」
──ことり「当たり前です」
──ことり「私、まりちゃんのこと大好きだから。明後日までなんて言いません。これからずっと、もし二度と会うことがなかったとしても、ずっとまりちゃんのことは愛し続けます」
──鞠莉ママ「アリガトウ…コトリ、アリガトウ……」
──ことり「それに、私もう自信あるんです。まりちゃんに好きになってもらえた自信」
──ことり「一度好きになった相手を本当にキライになっちゃうなんてこと、ないって知ってるから。大丈夫です──私も、まりちゃんも…!」 残酷な通達 8/8
家野「………おはようございます、小原家の家野です。ええ、ご無沙汰しています。先日はありがとうございました」
家野「はい、そうです、今日もこれからまりさんが果南さんとお邪魔するのですが、おやつを持たせているので冷蔵庫に入れさせておいていただいてもよいですか?…はい、ありがとうございます」
家野「それと、申し訳ありません、厚かましいお願い事で恐縮なのですが、二人が到着したらおにぎりかなにかを出していただけませんか。…ええ、実は昨日少しありまして、まりさんが昨晩の夕飯と…今朝も、はい……すみません、ありがとうございます」
家野「四時には迎えの車を寄越しますので、はい、なにかあればご連絡ください。はい、よろしくお願いいたします。それでは」
家野 フー…
鞠莉ママ「アリガトウ、イエノ」
家野「いえ。果南さん達と一緒であれば、食べてくださるでしょうからね」
鞠莉ママ「だといいのデスが」
家野「あまりお気を煩わずに。まりお嬢様は強い方です、今日は私がとびきりに腕を振るってお夕飯を用意しますので、きっと大丈夫ですよ」
鞠莉ママ「…そうね。そうよね…」
家野「はい」 辛いよ...
毎年長期休みにことりちゃんとまりちゃんが遊んで大人になるとこまで想像した 二週間という積日 1/2
まりの部屋
キィ…
ことり「入るね」
お返事は当然ない。
かなんちゃんとダイヤちゃんのお家へ行っているのだから、当たり前のこと。
部屋の中を触ってしまわないように、入口に立ってただぼうっと視線をさまよわせる。
それだけでもふわりと届くまりちゃんの匂い。
眠るまりちゃんの髪を撫でた。指がくすぐったくなるくらいさらさらだった。
お風呂でまりちゃんの身体を洗った。ボディソープがいらないくらいすべすべだった。
船の中でお膝に乗ってくれたこと。バスの中で膝枕をしたこと。目をつむるだけで、じんわりと体温を思い出す。
小原さんに向けた満面の笑み。家野さんに対する優しい笑顔。ことりにいじわるを言って、にやっと笑う。
楽しいこと、嬉しいこと、恥ずかしいこと、いやなこと。好きなこと、キライなこと、したいこと、してほしくないこと。
二週間なんて、きっと嘘だ。私達は、ずっとずっと長い間、一緒に色んなことを分かち合ってきたんだ。そう思えるくらい、数えられないほどの想い出と感情で溢れている。
そう思えるくらい、愛している。 二週間という積日 2/2
視界がぐにゃりと歪んで、滲んで、喉がきゅっと苦しくなって。今のうちに、まりちゃんがお家にいないうちに、全てを出し切ってしまおう。
その場にしゃがみ込んで膝を濡らす。
声はできるだけ抑えようとするけれど、しゃくる音、喉が鳴る音、鼻をすする音、漏れる息。
ここがプライベートフロアでよかった、なんて、頭の片隅でいやに冷静な自分が思う。
────────。
ひとしきり理性を忘れていた間、誰も通りかからなかったのは幸いだった。
目が赤くならないように、袖口でとんとんと叩くようにして最後の雫を拭う。
もう四時を過ぎたはず、まりちゃんが帰ってくる。
お夕飯を作りながら、家野さんとなにを話そう。
長く息を吐いて、立ち上がる──その寸前。ふと気づく。
ことり「………あれ…?」
下の階から「奥様!!」と聞こえてくるのと、ほとんど同時だった。 ちいさなはかりごと 1/3
黒澤邸前
使用人「お嬢様がお世話になりました」ペコ
黒澤母「いえ。鞠莉さん達はとてもよい子ですので、いつでもいらしてくださいな」
かなん ジーッ
黒澤母「…果南さんもね」
かなん「!」パァァ
ルビィ モジモジ…
黒澤母「ルビィさん。言いたいことがあるのでしょう」
ルビィ「…おやつ、ありがとう。おいしかった」
まり「うん。ことりに伝えておくわね」
ルビィ「ことりちゃん…」シュン
黒澤母「明日で発ってしまわれるとは、残念ですね。またぜひ内浦へいらしてほしいものです」
まり「…伝えておきます」
ダイヤ ジッ
かなん チラ
まり コクン… ちいさなはかりごと 2/3
まり「あ、ねえ。帰りに、寄ってほしいところがあるんだけど」
使用人「はい?」
まり「ことりにお別れのおみやげ買いたくて。ね、いいでしょ?」
使用人「はあ、そうですね。まだ時間も早いですし、家野さんに連絡しておけば大丈夫でしょう──」スッ
まり「あっ、い…いえのにはもう伝えてあるの!実はこっそりお金も預かってて」
使用人「あら、そうなんですか。それなら安心です」
まり「かなんも、まだ時間平気でしょ?」
かなん「うん、うん、もちろん平気だよ。だ、ダイヤは?」
ダイヤ「わ、わたくしも…ことりさんへのお礼の品を選ぶのに、ついて…いきたい、です…」オソルオソル…
黒澤母「!」
黒澤母「…ええ、構いませんよ。そういうことならば、私からも少し出しましょう。お財布を取ってくるので待っていなさいな」ススス
ダイヤ ホッ…
かなん b グッ
ルビィ「!」
かなん「あー、ルビィはお留守番してよっか。私達がちゃんと選んでくるからさ」ポン
ルビィ「ぅゅ…」 ちいさなはかりごと 3/3
黒澤母「鞠莉さん、家野さんからは幾らほど?」
まり「え!?えーっと……に、にせんえん…くらい…」
黒澤母「? そうですか。では私からも同じだけお渡ししておきましょう。ダイヤさん、なくさないよう」
ダイヤ「は、はい。……ありがとうございます…」ギュ…
使用人「それでは行きましょうか」
黒澤母「よろしくお願いいたします」
まり「かなん、ダイヤも。後ろに乗りましょ」
かなん「うん」トトト
ダイヤ「行ってきます、お母さま。ルビィ」
黒澤母「行ってらっしゃいな」
ルビィ「いってらっしゃい」
バタン
使用人「どちらへ行きますか?沼津駅の辺りでいいですか?」
まり「ううん、行ってほしいのはね──」
まり「パノラマパークの方なの」 知っていること、見えているもの 1/4
ホテルオハラ、私用厨房
家野 (よし、現場の方はもう大丈夫そうですね。今のうちにお夕飯の下準備、……ことりさん、声をかけた方がいいかな)
家野 (最後のお夕飯作りだし、きっとご一緒なさりたいですよね。自室にいらっしゃるでしょうか) スタ…
家野「………」
『16:32』
家野 (お嬢様のお戻り、随分と遅くないですか?)
家野 (45分には向こうへ渡ったはずだし、道が混んでいたとして、それに黒澤さんと少し話し込んだとして。それにしても…こんなに遅くならないのでは)
家野 (念のため連絡しておきましょうか──)
──♪
家野「! はい、家野です。ちょうど連絡しようと思っていたところでした。帰りが遅いようですが、今どちらに………ええっ!?」 知っていること、見えているもの 2/4
家野「奥様!!」タタッ
鞠莉ママ「何事デスか、騒々しい」
家野「今、お嬢様を迎えにいった山岸から連絡があったのですが…」
鞠莉ママ「…どうかしたの?」
家野「まりお嬢様が──逃げ出した、と…!」
鞠莉「なんデスって…!?どういうことなの、詳しく説明なサイ!」
ことり「なにかありましたか…?」オズ…
鞠莉ママ「コトリ、ちょうどよかった。イエノ!」
家野「は、はい。メイドの山岸にお嬢様のお迎えへ行ってもらったのですが、今その山岸から連絡があり、まりお嬢様と果南さん、それにダイヤさんの三人が『逃げ出した』とのことです」
ことり「逃げ出した…?」
家野「慌てていてあまり話が要領を得ませんでしたが、まりお嬢様のお願いで三人をパノラマパークの辺りへ連れていったところ、少し目を離した隙にロープウェイに乗り込んでしまった、という事態のようです」
鞠莉ママ「………っ、また…ハグゥとデスワァが…!!」ギリ…
ことり「……………」 知っていること、見えているもの 3/4
鞠莉ママ「イエノ、スグに車の手配を!現場で手透きの者も使うので多めに用意させなサイ!ヤマギシにはロープウェイの麓で待機させておくように!」
家野「はい、すぐに!」
ことり「ちょっとだけ!…いいですか?」
家野「! な、なんでしょう。ことりさん」
ことり「パノラマパーク、ってどういう場所ですか?」
鞠莉ママ「それは行きながらでよいでショウ、まずは追いかけるのが最優先──」
ことり「教えてください」
鞠莉ママ「!? …イエノ」
家野「はい…正式名称は伊豆の国パノラマパークといい、伊豆の代表的な観光施設の一つです。観光の根幹となるのは葛城山の山頂へ至るロープウェイで、山頂からは富士山や駿河湾、伊豆の町並みが一望できます。喫茶店やアスレチックなどもあり、複合的な…」
ことり「星は──星は、見えますか?」
家野「は、星…ですか?そうですね、見えるかどうかでいえば、かなりよく見えるはずです。ですがロープウェイが17時までの運行なので、天体観測で訪れることはそうそうないかと…」
ことり「………」
家野「ことりさん…?」
鞠莉ママ「コトリ、なにが気になるのデスか。こうしている間にもあの二人といることでマリがどんな危険な目に遭うか──」
ことり「小原さんは、お家に残っていてください」
鞠莉ママ「…なにを言い出すかと思えば」 知っていること、見えているもの 4/4
鞠莉ママ「ワタシ以外に、カナンとダイヤを叱れる者がいるの!?コトリがちゃんと叱れマスか!?」
鞠莉ママ「これまでもちょっと抜け出すようなことはあった。イタズラだと思って見逃してきたけれど、今回はもう許しまセン!きちんと叱って、もうマリを余計なことに巻き込まないよう──」
ことり「決めつけないでください!!」
鞠莉ママ「………っ!?」
ことり「今まで、まりちゃん達が…かなんちゃんとダイヤちゃんが、どういう風に悪さしてきたか、私は知りません。でも、今回のことがかなんちゃんとダイヤちゃんが言い出したってどうして決めつけられるんですか」
鞠莉ママ「それは、だって…」
ことり「もし二人にお説教をして、『悪いのが二人じゃなかった』とき、小原さんは責任を取れるんですか?かなんちゃんとダイヤちゃんの心に──そして、まりちゃん達の友情に」キッ…
鞠莉ママ「………っ…」タジ…
ことり「家野さん、私も行きます」
ことり「誰を叱るべきなのかはっきりしたら、ちゃんと私が叱ります。もしかしたらまりちゃん達が入れ違いで帰ってくるかもしれないから、小原さんはお家で待っていてあげてください」
鞠莉ママ「…………わかりまシタ」
ことり「行きましょう、家野さん」
家野「は、はい」 シャイニーを探して 1/4
ゴトゴト…ゴトゴト…
<お嬢様ーっ!まりお嬢様〜〜っ!!
ダイヤ「どうするんですの?おおごとになっていますわよ!」
かなん「あきらめる…?」
まり「イヤ!!」
まり「流れ星にお祈りできなかったら、きっとだめになっちゃう…!」
っ〔星座☆早見盤 北半球版〕と ギュ…
『間もなく、山頂駅に到着します…』
三人 トコトコ…
職員「あ。ねえキミ達、保護者の人は?下で心配してるって連絡があったんだけど…」
まり「!」
ダイヤ コクッ
かなん グイ
三人 ダッシュ!!
職員「あっちょっと、待って!」 シャイニーを探して 2/4
かなん「空、遠いね…」
ダイヤ「もっと星がよく見える場所は?」
かなん「わかんない…」
まり キョロキョロ
まり「…あっち!」
ダイヤ「方向は!?」
かなん「この上、行ってみよう!」タタタ シャイニーを探して 3/4
まり ハァ…ハァ…
かなん「くもってる、ね…」
ダイヤ「そんなあ…」
かなん「…これで確かめなきゃ、まだわかんないよ!」っ早見盤 サッ
まり「貸して!」
まり (星──星──星が見える方向──) スッ、スッ、スッ…
ダイヤ「………」ドキドキ…
かなん「………」ドキドキ…
まり「………」スッ、スッ、スッ…
…ポツッ
かなん「! 雨…」 シャイニーを探して 4/4
ダイヤ「そんな…これじゃお祈りできませんわ。これじゃ…」
まり「来たのに…」
まり「せっかく、来たのに…」ジワ…
かなん「………っ、泣かないで!」
かなん 早見盤と彡 パシッ
かなん キュキュ…
まり「かなん…?」
ダイヤ「かなんさん…?」
かなん「ほら!」
まり「わぁ…!」
かなん「これで大丈夫!」
https://i.imgur.com/Yu87CSb.jpg
かなん「祈ろう、まり!ダイヤ!」
まり コクン
ダイヤ コクン
お星さま。どうか、どうか──わたし達の願いを── 歩く大人 1/6
家野「山岸さん!」タッ
山岸「あっ、家野さん…!申し訳ありません、私が傍についていながらこんな失態を…」オロオロ
家野「それは後で話しましょう。まりお嬢様達は上に?」
山岸「はい、三人ともロープウェイで…」
家野「係員の方には話したんですか?」
山岸「話しました。山頂駅で引き留めてくださるとのことだったのですが、どうやらそこでも引き留めることができなかったようで…」
家野「そうですか。では私が、」
ことり「家野さん、私が行ってきてもいいですか?」
家野「ことりさん…」
ことり「山から降りてくるときには、ロープウェイはここに停まるんですよね?だったらここには誰か残っておいた方がいいと思いますけど、いざってときに運転できない私じゃあまり役に立たないかもしれないので」
ことり「それに、逃げ回るまりちゃん達を追いかけなくちゃってなったら、…少しは鍛えておいた足腰が役に立つと思うので」
家野「…わかりました、そういうことならことりさんにお願いします。山岸は念のため他の者と連携してここ以外の登山口にそれぞれ付くようにしなさい」
山岸「は、はい!」タタタ
家野「ことりさん、よろしくお願いします」
ことり「………はい…!」 歩く大人 2/6
係員「では出発します、ご注意ください」
バタン
ゴトゴト…ゴトゴト…
約7分間の空の旅。
眼下に拡がる伊豆の景色は、と丁寧なアナウンスが流れるけど、少しも頭に入ってこない。
ゆったりと移ろう雄大な自然が今だけはもどかしくて、おとなしく座っていることすら難しい。
このロープウェイには、二つ、制約があるらしい。
一つは登りの最終乗車時間が16時半であること、そしてもう一つは小学生以下の子どもだけでの乗車が不可であること。
行きがけ家野さんに説明されたその制約は、言われれば当然というか、ふと意識しなければ気にも留めないような些事でしかない。
けれど、今回はそのどちらもまりちゃん達はきちんと把握していて、その上できっと利用した。
なんでかな、わかっちゃう。私達も同じだったよ。
必死でいたずらしようとするときって、普段の何倍もずる賢くなっちゃうんだよね。
そして、必死でいたずらしようとするのは譲れないことがあるときばっかりだってことも──わかってるんだよ。 歩く大人 3/6
『間もなく、山頂駅に到着します…』
ゴトン、と大きく揺れて扉が開く。
係員「小原さんですね。下の者から連絡を貰っています」
ことり「無理を言ってすみません」
係員「いえ、こちらこそすみませんでした。私が声をかけた途端、走っていってしまって、追いかけることができませんでした」
ことり「子どもたちがどっちへ行ったかわかりますか?」
係員「向こうの道をまっすぐ走っていったと思います」
ことり「ありがとうございます、できるだけ早く子どもたちを連れて戻ります。……あ、そうだ」
ことり「星が一番よく見えるのは、どの辺りですか?」 歩く大人 4/6
まばらにすれ違う人達の視線を浴びながら、足早に歩く。
私と同じ方に向かう人はいない。
当然だ、だってもう間もなくロープウェイの最終運行時刻になってしまうから。
家野さんが話をしてくださっているから少し過ぎても大丈夫だと思うけど、できるだけ早く戻らなくちゃ。
ばか。
茶寮があって、神社があって、足湯があって、展望ソファがあって。
すっきり晴れたお休みの日をこんなところでのんびり過ごせたらとっても気持ちがいいだろうな。
今は眺める余裕もないけど、左手にはアスレチックもあるみたい。
ふと抜けると、木材で組まれた展望台が現れた。
ことり「!」
駆け寄って、登る。
ことり「まりちゃん!かなんちゃん、ダイヤちゃん!?」
人は誰もいなくて、私の呼びかけに応える声もない。
どんよりとした空は、淡島から見るよりもずっと遠くて、手を伸ばす気にさえなれない。
視界の端──
ずっと伸びるパノラマパークの奥、小さな三つの影が見えた。 歩く大人 5/6
深い木々に囲まれたボードウォークを踏みしめる。
山の上だなんて嘘だぁ、と言いたくなるような光景。
ばか。
ちょっとしたウォーキングにはぴったり、でも体力作りのランニングをするには向いてないかもしれない。
こんな穏やかな空間で走っていて微笑ましいのは子どもだけ、高校生や大人が走っているのは少しみっともなく映っちゃうはずだ。
難しいことはなんにも考えないで走り回っていてくれたら、どんなによかったか。
それなら私はいつもの調子でいられただろう。
ばか。
うるさくしちゃだめだよ、なんて笑いながら追いかけることができたはずなのに。
無邪気な子どもに振り回される頼りない保護者でいられたはずなのに。
ばか。
でもね、私は大人なんだよ。
少なくとも今この時は、大人でなくちゃいけないんだよ。
ばか、ばか、ばか、ばか、ばか。
いつもみたいに頼りない笑顔で振り回されるわけにはいかないの。 歩く大人 6/6
木々を抜けて、視界がひらけて、二つ目の展望台。
寄り添う影。
もう、ずっと前から目が合ってる。
近づいてくる私から視線を逸らさないまま、三人はぎゅっと抱きしめ合って、ただただ私を見つめてる。
カチ、バサ──
黒く大きな傘で三人を包んで、私は。
ことり「帰るよ。まりちゃん、かなんちゃん、ダイヤちゃん」
お願いだから、心配させないでよ────ばか。 雲の下で涙と祈りを 1/7
ダイヤ「こ、ことりさん…カサは、ここまで…ささずに来たのですか…?」
ことり「うん、速く歩くのに邪魔だったから」
かなん「ことちゃん、濡れちゃってるよ。ことちゃんも入って」
ことり「帰ったらお風呂に入るから、大丈夫だよ」
ことり「ほら、帰るよ。もうロープウェイだって止まっちゃうんだから」グイ
まり「いや!だって、だって──まだ…ちゃんと……」
ことり「…」
ダイヤ「まりさん…」
かなん「まり…」
ことり「みんな心配してるんだよ。小原さんは怒ってた。かなんちゃんとダイヤちゃんも、お家の人に話してないよね」
かなん「…ことちゃん、まりはね」
ことり「わかってるよ」
ことり「お星さまにお祈りしにきたんだよね」
まり「!」
ダイヤ「ご存知だったのですか…」
ことり「…うん」
まり っ〔星座☆早見盤 北半球版〕と ギュ…
まりちゃんのベッドの下から、小テストが──星座の早見盤がなくなっていたから。 雲の下で涙と祈りを 2/7
ことり「ねえ、まりちゃん」スッ
まり ビクッ…
かなん「ことちゃん──
ことり ス
ことり「お星さまにお祈りしようって、かなんちゃんとダイヤちゃんを誘ったんだよね?」
ことり「まりちゃんが、誘ったんだよね?」
まり「…………」
ことり「大好きな人達とずっと一緒にいられますようにって、お祈りしたかったから」
まり「…………」
まり コクン…
ことり ハァ…
ことり「それはね、間違ってるよ」
まり「…っ」
ダイヤ「!」
ことり「私だってお友達は大切だよ、ずっと一緒にいたいって思ってる。お星さまにお祈りしたことだってある。まりちゃんにも──まりちゃん達にも、みんなのことずっと大好きでいて、仲良くしててほしいって思う」
ことり「でも、こんなやり方をしちゃだめだよ」 雲の下で涙と祈りを 3/7
ことり「他の人達を心配させるようなやり方でお祈りしたって、お星さまはきっと聞いてくれないんだよ」
まり「だって……だっ、て………っ」グス…
ことり「どうして今日だったの?どうして嘘をつくみたいにしたの?」
ことり「ずっと一緒にいたいって、お星さまにお祈りするのは全然悪いことじゃないよ。でもこんな風にしちゃったら、まりちゃんが大切にしたいと思ったかなんちゃんとダイヤちゃんだって怒られちゃうんだよ」
ダイヤ「……」
ことり「こんな悪いことをするならもう三人で遊んじゃだめだって言われるかもしれない。三人でずっと一緒にいられますようにってお祈りしたのに、それが理由で離ればなれになっちゃうかもしれないんだよ」
ダイヤ「!」
かなん「!」
まり「…!」
ことり「…私から言えるのはこれだけ。下で家野さんが待ってるから、まず家野さんにお話ししよう。その後、順番にダイヤちゃんのお家、かなんちゃんのお家に行って、みんなで謝ろう」スクッ
ことり「私も一緒に謝りにいくから、ちゃんと──
ダイヤ「違いますわ!!」 雲の下で涙と祈りを 4/7
ことり「!」
まり「い、いいわよダイヤ、」
ダイヤ「いいえ、よくありません!きちんと言わなくてはいけないことですわ。他の誰に怒られたっていい、おやつを食べられなくったって、おけいこの時間が増えたっていい」
ダイヤ「だけど、ことりさんにだけはきちんと言っておかなくてはいけませんわ」
かなん「そうだよ、まり!」
ことり「なに…?なんの話?」
かなん「ことちゃん、心配かけたのはごめんなさい。後でみんなにもちゃんと謝るから、聞いてほしい」
かなん「まりが、ううん…私達がお祈りするのは、今日じゃなくちゃだめだったの!今日こうするしかなかったんだよ!」
ことり「どうして…?」
ことり「今日はこんな天気でお星さまだってちゃんと見えないし、こんな明るい時間じゃなくても、ちゃんとお家の人に話して夜に連れてきてもらえばよかったんだよ。それだったら誰も心配しなくてよかったし、まりちゃん達も怒られずに済んだんだよ」
ことり「今日しかなかったなんて、
ダイヤ「わたくし達がお祈りしたのは、ことりさんとずっと一緒にいられますようにってことだからです!」
ことり「──────ぇ──」 雲の下で涙と祈りを 5/7
ことり「う、そ…」
かなん「まりがね、ダイヤんとこでおやつ食べてるときに言ったんだ。『ことりのことでお星さまにお祈りしたいから一緒に来てほしい』って」
ダイヤ「お母様に嘘をついたことも、運転手の方をだましてしまったことも、本当にごめんなさい。心配をかけてしまった皆さんにもちゃんと謝るつもりでしたわ」
ダイヤ「でも、それでもいいからそうしたいって、同じことをお祈りしたいってわたくし達も思ったのです!」
ダイヤ「大好きなことりさんが明日でいなくなってしまうと聞いて、そんなのイヤだって…思ったのです……」
ことり「まり、ちゃん…ほんとなの……?」
ことり「ことりのことをお祈りするために、こんなことしたの…?かなんちゃんとダイヤちゃんとずっと一緒にいられますようにってお祈りしたかったんじゃなくて…?」
まり「…………うん…」
まり「あのね、………あのね、ことり…」
まり「…………わたし……っわた、し………っ、あなたにいなくなってほしくないの……!」ポロポロ…
ことり「………!!」 雲の下で涙と祈りを 6/7
まり「ことりがうちに来てから、すごく楽しかった…」
まり「いじわるしても、無視しても、ずっとまりのこと好きって言ってくれて、嬉しかった…!」
まり「ごはんもおいしかった、おやつもおいしかった」
まり「参観日に来てくれたのも嬉しかった、一緒にマカロン作ったのも楽しかったわ!」
まり「頭を洗ってくれたのも、ママとはぐれたときに見つけてくれたのも、バスでひざまくらしてくれたのも、ベレー帽作ってくれたのも、船でたくさん話しかけてくれるのも、コーヒーのこと考えてくれたのも、全部…全部…嬉しかった……!」
まり「明日出ていっちゃうって聞いて、さみしかったの…イヤだったの…!でもそんなこと言ったら、ことりも…ママも…みんな困るから、言えなくて……っ」
まり「優しいことりが好き。いつも笑顔のことりが好き。困ってることりも怖がってることりもみんな好き!まりのこと一生懸命に考えてくれて、いっぱい好きって言ってくれて、困ってたら助けてくれて、優しくて、美人で、歌も上手でダンスも上手でっ……」
ことり「ま、り…ちゃん……」
まり「……ことりのことが好き!大好きなの!!」
ことり ガバッ
まり「行かないでよ…まりのこと置いて、行っちゃわないでよ……!ずっと、ずっと一緒にいてよぉ!!わぁぁぁん………うわぁぁぁあああああ………ん…!!」ボロボロ…ボロボロ……
ことり「まりちゃん…!ことりも、ことりもまりちゃんのこと大好きだよ!ずっとずっと、一番好きだよ…!ごめんね、さみしい想いをさせて、ごめんね……!!」ギュウウゥ
まり「わぁぁぁぁぁん…………ぅわぁぁあああああん…………」
………
……
… 雲の下で涙と祈りを 7/7
やがて、あんまりにも戻ってくるのが遅いと心配した家野さんが係員の人と捜しにきてくださった。
私達は四人でお互いに抱き締め合って全員でわんわん泣いていて、傘も傍に転がっていてみんなびしょ濡れだし、家野さん達もかなり困惑したとのことでした。
特別に動かしてもらった下りのロープウェイの中で家野さんにお話しして、謝ったら、
「私は皆さんが風邪を引いてしまわないか、今はそれが一番の心配事です」
って呆れたように笑った。
その後、順番にみんなのお家を謝って回った。
黒澤さんは私達が話し終わるまでずっと無言で聞いていて(無表情だからすごく怖かった)、最後にみんなで謝ったら、
「もし祈りが届かなかったとしたら、私とルビィさんを除け者にしたせいでしょうね」
と、怒ってるのかなんなのかよくわからないことをおっしゃって、微笑んだ。それとルビィちゃんがよしよししてくれました♡
松浦さんはぐしゃぐしゃの私達を見るや大笑いして、
「お母さんに似て大したもんだ!」
ってまりちゃんの頭を豪快に撫でた。
小原さんには私も含めてしこたま怒られた。 関係ないの出して悪いけど、まきちゃんがにこちゃんに冷たくするssで嫌われたと思ったまきちゃんがにこちゃんに好きなとこあげて泣きつくシーンがこのまりちゃんに被った。 Mattina di speranza 1/13
コンコン
「お嬢様、朝ですよ。起きてくださ〜い」
まり モゾ…
まり「もう起きてるー」
まり「でも、お布団から出られないみたいなの。…出して」
「失礼しまぁす」ガチャ
スタスタ…
スッ
「おはようございます、まりお嬢様。今朝はお布団がいつもより重いですか?」
まり「そうみたい」
まり モゾモゾ…
まり「ん」
「はい」
ギュ
「…はい、出られましたね。おはようございます」
まり「おはよう」
「朝、お嬢様に一番始めに挨拶できたのは初めてですね」
まり「これから、ずっとそうでしょ?」
「…そうだったら、よかったんですけどね」
まり「…ばか。うそでも、そうだねって言ってよ」グリ
まり「おはよう、ことり」
ことり「おはよう、まりちゃん」
−最終日− Mattina di speranza 2/13
コンコン
「奥様。朝ですよ」
鞠莉ママ「起きていマスよ。入りなサイ」
「失礼いたします」
ガチャ
「おはようございます」
鞠莉ママ「オハヨウ」
「ご支度は、もうお済みですね」
鞠莉ママ「モチロン」
「ヘリコプターは、十一時に手配しています」
鞠莉ママ「アリガトウ」
鞠莉ママ「次は、ワタシは再来月の下旬になるわ。その間に一度 hubby が帰れるだろうと言っていまシタよ」
「承知しました」
鞠莉ママ「…おいで」
トトト…
ギュ
鞠莉ママ「いつもアリガトウ。あなたがいてくれるから、ワタシ達も安心していられるのよ。またしばらくマリのことをお願いね──イエノ」ポン…
家野「…はい。奥様と旦那様が帰ってくる場所を、そしてお二人の宝物であるまりお嬢様を、私が必ず守ります」
鞠莉ママ「エエ、信じていマス」 Mattina di speranza 3/13
家野「今朝はフランスパンのフレンチトーストとカボチャのポタージュ、オムレツ、梨とプチトマトのマリネです」
まり「ありがとう、いえの」
「「「「頂きます」」」」
家野 ス…
まり「あ、いえの。牛乳はいいわ」
家野「おや、そうですか。紅茶になさいますか?」
まり「ううん。ママと同じの、いれてくれる?」
鞠莉ママ「coffee よ?」
まり「うん、知ってるわよ」
家野「ご用意いたしますね、少々お待ちください」
カチャ コポポ…
家野「熱いので、お気をつけて」
まり「ありがとう」
まり フー…フー…
まり ゴク…
まり「………にがい」
鞠莉ママ「でショウね」
まり「ねえ、ことり」
ことり「! なに?まりちゃん」
まり「次にあなたに会うまでに、わたし、コーヒー飲めるようになってるから。だからそのときは、一番おいしくコーヒーいれてよね」
ことり「…うんっ、任せて!」 Mattina di speranza 4/13
ガチャ…
まり「ママ、そろそろ行ってくるわ」
鞠莉ママ「そうね、船まで送りまショウ」
まり タタタ ギューッ
鞠莉ママ ギューッ
まり「次はパパよね。ママは再来月」
鞠莉ママ「エエ。いつもお留守番させてばかりで、ごめんね」
まり「ほんとーよ!ママがいつも家にいてくれたらまりだってイタズラしないのに!」
鞠莉ママ「ホントウに?」
まり「…ちょっとするわ」
鞠莉ママ「なんデスか、それは」クスクス
まり「えへへ。年末は?」
鞠莉ママ「年末はパパと二人とも帰れると思うわ」
まり「ほんと!?やった!」パァ
鞠莉ママ「イエノの言うことをよく聞いて、お利口にね」
まり「うん。でも一番は?」
鞠莉ママ「元気イ〜ッパイで過ごしなサイ!」ナデ
まり「もちろんっ!」ニパッ Mattina di speranza 5/13
かなん「まり〜!ことちゃ〜ん!」タタタ
まり「かなん!おはよう、早いわね!」
かなん「一緒の船で行こうと思って、早起きしたんだ」
家野「おはようございます、果南さん」
ことり「おはよう、かなんちゃん」
かなん「家野さん、ことちゃんも!おはよう!まりのお母さんも!」
鞠莉ママ「…オハヨウ」
かなん「ことちゃん、これあげる!」
ことり「え、なあに?」
かなん「貝がらのネックレスだよ!プレゼント!」
ことり「わあ…ありがとう、かなんちゃん。大切にするね」
かなん「えへへー」
まり「えー、ずるい!まりも欲しい!」
かなん「わかったわかった、今度作ってあげるから。それと」トトト Mattina di speranza 6/13
鞠莉ママ「なんデスか?」
かなん「おばさんにも、はい!昨日もだけど、いつもまりのことで心配させてごめんなさい!」
鞠莉ママ「…!」
鞠莉ママ「こんなもので、ワタシはハグゥ達のことを許したりはしまセンからね。次またイタズラをしたらこれもあなたに返しマス」チャリ
かなん「うん!ばれないようにします!」
鞠莉ママ「ハァ!?誰がそんなことを言いまシタか!」
かなん「さ、行こ!まり」
まり「うん、いってきます!」
ことり「私も向こうまで送ってきますね」
家野「行ってらっしゃいませ、まりお嬢様。果南さん。ことりさん」
船頭「そいじゃ出しますね」
鞠莉ママ「コラ、ハグゥ!話を最後まで聞きなサイ!!」
ブ…
ブゥゥゥゥン… Mattina di speranza 7/13
ことり「このお船から見る景色、好きだなあ」
かなん「きれいだよね、私も好きだよ!」
まり「…もう怖くないの?」
ことり「え?うーん、乗るときは足元がまだちょっと怖いけど、座っちゃえば平気になったよ。それに今はまりちゃんとかなんちゃんもいるしね」
まり「戻るときは一人よ」
ことり「うう、頑張るよ…」
ことり「…ね、まりちゃん。ことりのおひざ、あいてますよ?」ポン
まり「………座らない」プイッ
ことり「え〜〜〜〜!今日、最後なんだよー?」
まり「最後じゃないわよ。この次、ね。座るのは」
まり「だから、絶対にまた──」
かなん(on the bird's ひざ) チョコン
まり「…」
ことり「…」
かなん「じゃーわたしもーらいっ!」ペカー
まり「…………かっ」
まり「かなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!」
かなん「うわーなにまりどしたの!?」 Mattina di speranza 8/13
まり「ありがとう」
かなん「ありがとーございました!」
船頭「気をつけて行ってらっしゃい!」
ことり「少しだけ」
船頭「はい、もちろん。待ってますよ」
ダイヤ「ことりさん!」
ことり「ダイヤちゃん。ルビィちゃんも!」
ダイヤ「おはようございます。最後にお会いしたくて、待たせてもらっていましたわ」
ルビィ「おはよぉ」
ことり「えー、嬉しいなぁ。遠いのにありがとう、ダイヤちゃん。ルビィちゃん」
かなん「四人で学校行くなんて初めてかもね」
ことり「え、どうしよっかな。学校まで送ってっちゃおっかな」ソワソワ
ダイヤ「それはとても嬉しいですが、わたくし達は大丈夫ですわ。わたくし達がしっかりしていないと、ことりさんが安心して帰れませんものね」
かなん「そう!安心して未来に帰れないんだよ!」
まり「…未来?」
ダイヤ「ことりさんが帰るのはイタリアなのでは…?」
ルビィ「ことりちゃー」ギュー
ことり「よしよし。元気でね、ルビィちゃん」
ダイヤ「あー!ずるいルビィ、わたくしも!」ギュー
かなん「じゃー私も!」ギュー
ことり「わっわっ、えへへ…もう。みんなくすぐったいよ」 Mattina di speranza 9/13
ダイヤ「名残惜しいですけど、学校に行かないと遅刻してしまいますわ」
かなん「うん。またね、ことちゃん」
ルビィ「ばいばいー」
ことり「ダイヤちゃん、かなんちゃん、ルビィちゃん。必ずまた来るからね」
まり「…」
かなん「ほらまり、いいの?」
ダイヤ「しばらくお別れですわよ」
ことり「まりちゃん」
ことり「ことり、向こうに戻っても頑張れるように、まりちゃんのことぎゅーってしたいな」
ことり「だめかなあ?」
まり「……………仕方ないことりね」
タタタ…
ギュウゥゥ…
ことり「二週間、ありがとう。すっごくすっごく楽しかったよ。たくさんした約束、絶対守るからね」
まり「わたしこそありがとう。大好きよ、ことり」
ことり「うん、私もだよ」
ギュッ…
まり「…そうだ、ことり。最後に言っておきたいことがあるの」
ことり「うん、なに?」
まり「あのね、────────」 Mattina di speranza 10/13
ヘリコプター ドン!!
ことり「相変わらず、すごい迫力…」
鞠莉ママ「もう慣れたでショウ」
ことり「いや、二回目ですし…慣れる気はしません…」
家野「ことりさん、二週間お疲れ様でした。ぜひまたいらしてくださいね」
ことり「家野さん。こちらこそ、お世話になりました。忘れられない想い出になりました」
家野「もし学校を卒業されて進路にお悩みでしたら、お電話を下さい。履歴書不要、面接不要で即日採用しますよ」
ことり「ほんとですか!?」
鞠莉ママ「イエノは部下には厳しいわよ」
ことり「ぴ…ぴぃっ!?」
家野「お、奥様!」
鞠莉ママ「ハハハ。褒め言葉デース!」
家野「もう…!ですが、今の言葉は本当ですよ。ご自身の夢を精いっぱい追いかけた後、もしもこの二週間を思い出されたときには、ぜひ」
ことり「…はい、ありがとうございます!」
鞠莉ママ「では、そろそろ行きまショウか」
家野「奥様。ことりさん」
家野「──行ってらっしゃいませ」ペコ… Mattina di speranza 11/13
鞠莉ママ「二週間、どうでシタか」
ことり「最高でした」
ことり「まりちゃんは可愛くて、ダイヤちゃんにかなんちゃん、ルビィちゃんとも会えて、家野さん、黒澤さん、松浦さん、それに小原さん。色んな人と会って、色んなことをしました」
鞠莉ママ「子ども達と一緒になって雨の中で泣いたりね」
ことり「その節は、すみませんでした…」
鞠莉ママ「ノン。そんなコトリだからこそ、マリと、それにあの子達とあんなにも打ち解けることができたのでショウ。ワタシでも、イエノでも、きっとできなかったことデス」
ことり「小原さん、かなんちゃん達のこと…好きですよね?」
鞠莉ママ「なにを急に…」
鞠莉ママ「好きなはずがないでショウ。あの子達はいつもいつもマリに変なことをフキコムのよ。…ただ」
鞠莉ママ「カナンとダイヤが友達になってから、マリが一人ぼっちではない時間が増えたことには感謝しているけれど」
ことり「うふふ…そうですね」 Mattina di speranza 12/13
ことり「私、ここに連れてきてもらえて本当によかったです」
ことり「楽しかった、嬉しかった、色んなわくわくした気持ちを感じられたのはもちろんですけど、それだけじゃなくて」
ことり「一生懸命で純粋なまりちゃん達から、教えてもらったことがたくさんあるんです」
鞠莉ママ「hmm...?」
──まり「…そうだ、ことり。最後に言っておきたいことがあるの。あのね、
──ことりも、大切なお友達のことをあきらめちゃだめよ。
──あなた自身が言ってくれたことなんだから」
ことり「私、向こうに戻ったら穂乃果ちゃん達にお手紙を書こうと思うんです。みんなとお別れしてからのこと。イタリアで見たこと、学んだこと、みんなを想って泣く夜があること。それにこの二週間のこと」
ことり「きちんと謝って、離れてからぽっかり空いちゃった時間と友情を取り戻したいから」
ことり「そして次は私の大切なお友達を、まりちゃん達に紹介するんです。みんなでドッヂボールして、お菓子作りをして、ラーメンなんか食べにいって、占いで盛り上がって、夜は星を見ます。きっと、仲良くなれます」 Mattina di speranza 13/13
ことり「すっごくうるさいと思いますけど、いいですよね?」
鞠莉ママ フ──
鞠莉ママ「モチロン、いいデスよ。一泊一人20,000円ね」
ことり「えええ〜〜〜っ、お金とるんですか!?」
鞠莉ママ「これでもかなりサービスしているのデスよ、ありがたく思いなサイ!」
ことり「み、みんなでホテルのお手伝いするので…」
鞠莉ママ「トーゼン!それも含んだ上での料金デス!」
ことり「そっ、そんなあ〜」
鞠莉ママ「イエノにもビシビシ指導させマスので、遊んでる時間はないかもしれないわね」
ことり「ふぇぇぇん……」
ことり「マリチャ〜〜〜〜〜〜ン………!」
こうして、私の短い夏休みは終わりました。
後日、宅配便で届けてもらった、使い切れずに余らせてしまった大量の布と生地。
これをどうしたか、わかりますか?
うふふ──それは、ご想像にお任せしますね♡
終わり 的なね。
ことり(16)「今日から貴女の専属メイドになることりです。鞠莉ちゃんよろしくね♡」鞠莉(11)「ふんっ…」
https://fate.5ch.net/test/read.cgi/lovelive/1563982278/
こちらが元スレになります、他の方が書いたssレスやシーンなどもあるのでぜひご覧ください。
長い間保守をしたり待っていてくださったりした方、アイディアを寄せてくださった方、読んでくださった方、また着想そのものをくれたこのスレにいた方々、皆さん本当にありがとうございました。
もしよければ、好きな話やお気に入りのシーンなどあったらお聞かせいただけると嬉しいです お疲れ様でした。大変素晴らしいものをありがとう
雲の下で涙と祈りを6/7と
宇宙を感じることり がお気に入り
2週間と短いのにしっかりと心を開くまでが書かれてて、こんなの書けるのが羨ましい おわっちゃった………………つらいなきそう
ありがとう、心よりありがとう
永遠に見ていたかった
ありがとう ああ、終わっちゃった…本当に素敵すぎるSSだったよ
アニメの二期10話の「シャイニーを探して」は、正直何を言いたかったか意味不明な回だったけど
このSSのお陰で48000倍は好きになった
また気が向いた時に後日談でも書いてくれたら、凄く、凄く、嬉しい
お疲れ様でした 感動しました
ありがとうございました。
まさか、星を見に行く話をこうつなげるとは恐れ入ります。
また、心温まる作品をお願いします!!! ありがとうございました。
新しい可能性を感じました。 すごく良かったです
大作をありがとうございました
あまりにもエモいので読んでる途中に、ことりが留学する定期スレの(°8。)を見て笑って心のバランスを保ってました おつおつ
途中本当に泣きそうになる心温まる良い作品だった
流れ星にことりちゃんと一緒に居られるようにお願いするところ好き 泣きました😭
最高でした!
同じ世界線の続きの話も書いてください… めちゃくちゃ良かった……
アニメストーリーを所々補完してたりすごく面白かった
最大限の乙!! 元のスレが立ったときにはまさかこんな素敵なSSが生まれるとは思ってもみなかった
10ヶ月の間すごく楽しかった、最後まで書き切ってくれて本当にありがとう……
上手く言葉が見つからないけど感動した、素晴らしかったです 呼ぶ声、雲の下で涙と祈りをとかはもちろん好き
一人きりなら呑み込めたもの、ブレイク ブレイク スタイルとかも好き
どのキャラも優しさと心遣いが伝わってくる ことりと鞠莉ママたちの年齢差感じさせないツッコミ合いが好きだわ
本筋に全然関係ないけど>>174のデカいブラが誰のだったのかすげー気になる
あとロリルビィちゃん可愛い ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています