0001名無しで叶える物語(茸)
2020/05/02(土) 08:24:21.07ID:tLo0kFNu見ると一人のスクール水着姿の中学生くらいの黒い髪のツインテールの女の子が、まるで私達が来るのを待っていた様に
乗ってきたレンタカーのボンネットに腰掛けていた。
「…こんにちは。 これあんた達の車?」
「あぁ、借りた車だけど、そうよ。貴方は? 地元の子?」
コクッと頷いたかと思うと、同時にピョンッと車から飛び降りた彼女は、
私達の顔を一人一人品定めでもする様に見上げて、私達の間をねり歩きながらこう言った。
「あの…よかったらこの近くの駅まで乗せていって欲しいんだけど、駄目?」
「そうですねぇ、あと2年、いやあと1年経ったら是非にでもと言いたいところですが…」
人一倍女好きの海未がそんな冗談を言いながら断ろうとしたので、私はすかさず
「いや、困ってるみたいだし乗せていってあげましょうよ。
駅の近くに行けばラーメン屋くらいあるだろうし、どうせついででしょ?」
と言って、その少女の願いを聞き入れようとした。
「駄目や! ねぇ、早く車を出すから、みんな急いで乗らんと!」
突然、大きな声を出して希が反対してきた。
やや青冷めた顔でその少女の方を見ながら俺達を車へと急かす。
「どうしたのよ、突然。この辺は車も通らないだろうし、彼女もこんな格好で置いてけぼりじゃかわいそうでしょ?」
そんな言葉にも聞く耳を持たず、希は車にキーを挿しエンジンをかける。
「いいから…よし、全員乗ったん? 出すで」
遠ざかる車の中で、バックミラー越しに彼女の姿が見えたが、特に落ち込む様子もなく、
じっとこちらを見ている様に彼女は突っ立っていた。
「ねぇ、どういうことよ、説明して?」
「あっ、この4人の中で希だけ彼女がいるからって、その彼女に義理立てて可愛い女の子は乗せないって事ですか?」
「あんなお子ちゃまだってのに、モテる女は何かと気を使って大変だにゃ〜」
そうやって3人で茶化したものの、希は訳を答えず、強くアクセルを踏み込んだ。
加速した車が、陽炎が揺らめくアスファルトの道を駆けていく。