善子「愛と欲情と幻滅と」
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———
私、津島善子は不登校だ
四月最初の自己紹介の時にクラスでの立場が気まずくなって以降、一度も学校には行けていない
でもだから何だっていうんだろう。別に勉強は一人でもできるし、暇な時間を適当に潰すころには慣れている方なのだから
だから別に生活には、何一つ不自由はなかった
一生このままでもいいとさえ思っていた
あの天使に、出会える日までは—
——— 4月13日
ピンポーン
善子「……」
ピンポーン!
善子「はぁ……」
善子(どうせ宅配かNHKか公共料金の収集でしょ……ママもいないから黙っといてまた後で来てもらお……)
ドンドン
??「あーけーるーずーらー!」ドンドン
善子「!!!?」 善子(な、何なのコイツ!?急にドア叩いてきて……もしかしてヤバいヤツ!?警察にでも突き出してやろうかしら……)
善子「……」
善子(とりあえず顔だけは、のぞき窓から……)
花丸「善子ちゃん!家にいるのはわかってるずらよ!開けないなら居座ってでも会うまで帰らないずら!」
善子(ず、ずら丸!?なんでここに!?)
花丸「もう!善子ちゃんの強情っぷりには呆れるずら……」
善子「……」
善子(な、何でずら丸が私の家に……まさか、学校に行くように説得に……)
善子(い、嫌よ!そんなの!だって学校に行ったら、また……)
善子(で、でも、せっかく来てくれたクラスメイトをこのまま無視してるってのも、なんだか申し訳ないような気もするし……)
善子(あー!もう!どうしたらいいのよぉ!) 善子「……」
スッスッ
ピロリン!
花丸「あっ!マルのけーたいにめっせーじが来てるずら!ふむふむ……」
善子:ずら丸、何しに来たの?
花丸「善子ちゃんやっぱり家にいるんだね……善子ちゃん、マルの声聞こえてる?善子ちゃんと少しお話しようと思って、今日は来たんだよ?」
善子「……」
スッスッ
ピロリン!
善子:話って何よ?
花丸「学校での出来事だよ。今日の昼休みのこととか、図書室のこととか。善子ちゃんとお話したいこといっぱいあるずら」 スッスッ
ピロリン!
善子:どうせ学校に行くように説得するつもりなんでしょ?
花丸「そんなめんどくさいことしないよ〜。マルは別に善子ちゃんが学校に行っても行かなくても、ずっと部屋から出てこなくてもそれでいいと思ってるもん」
花丸「だから善子ちゃん、少しだけマルのおしゃべりに付き合って欲しいな」
善子「……」
スッスッ
ピロリン!
善子:ホントに?
花丸「本当ずら。約束するよ、善子ちゃん」 善子「……」
ガチャッ
善子「ずら丸……天界堕天条例に誓える?」
花丸「そんな条例はどこにも存在しないと思うずら……」
善子「……さよなら」
花丸「わあっ!?待ってよ善子ちゃん!ごめんずら!誓う!誓えるから!」
善子「……ホントに?」
花丸「ほんとうずら!」
善子「じゃ、じゃあ……」
善子「少しだけなら、入ってもいいわよ……」 花丸「おじゃましまーす〜」
花丸「わあっ!善子ちゃんの部屋すっごく黒い!こんなお部屋見たことないずら……」
善子「ふっ、驚くのも無理はないわ……ヨハネの真の住処は俗世間からは遠く隔たれた場所にあるもの……普段は俗物の目につかぬよう、このように漆黒のベールに身を隠しひっそりと……」
花丸「……」ニコニコ
善子「……ずら丸、なんであんたちょっと嬉しそうなのよ?」
花丸「ずら?いや〜善子ちゃんってお家だと良く喋るんだねーって思っただけずら」
善子「なによ!気持ち悪いって言いたいわけ?」
花丸「ううん、マルはこっちの善子ちゃんも好きだよ」
善子「んにゃっ?//」
善子「そ、そういうのいいから!堕天使的にNGなのよねっ!!//」
花丸「はいはい、わかったずら〜」
善子「ニヤニヤするなっ!!」 善子「で、ずら丸。私と話したいことって何よ?」
花丸「う〜ん特には決めてなかったんだけど……ただ善子ちゃんに会いたいなって思ってただけだから……」
善子「じゃあずら丸、もう用事は済んだってことで……」
花丸「だから話したいことを思い出すまで、このソファで本でも読んでるずら」
善子「ええっ!?勝手に決めないでよ!」
花丸「別に善子ちゃんの邪魔をするつもりは微塵もないずら。マルは善子ちゃんのこと全然気にならないから、善子ちゃんも好きにくつろいでいていいんだよ?」
善子「あんたは気にならなくても、私が気になるのよ!」 善子「……」
善子(まったくずら丸ってば、一般常識ってものが欠けているんじゃないかしら?不登校の私が言える立場じゃないかもしれないけど……)
花丸「〜♪」ペラッ
善子(こ、こいつ……上手いこと自分の世界に入り込んだわね……)
善子「はぁ……じゃあ私も、ゲームの続きでもやろうかしら……」 ピコピコ
善子「……」
花丸「〜♪」
善子「……」ピコピコ
花丸「〜♪」
善子「……」
善子(ど、どうしよ……なんだかすっごく気まずい……)
善子(それもそうよね……だってずら丸なんてただ幼稚園が同じってだけで、別に特別仲がいいってわけでもないし……)
善子(な、何か話かけた方がいいのかしら……?でも、ずら丸と最後にちゃんと会話をしたのなんて十年くらい前のことだろうし……)
善子(い、いざこうして二人っきりで会話をするってなると、緊張が……)
善子「ね、ねえ、ずら丸……?」
花丸「うん?どうしたの、善子ちゃん?」
善子「えええっと、あの、その……」 善子(そ、そうよ!学校のことなら!)
善子「さ、最近の学校は、どんな感じ……なのかしら?」
花丸「……?善子ちゃん、もしかして学校行く気になったの?」
善子「ち、違うわよ!た、ただ!興味本位って言うか……」
花丸「学校か〜……最近は部活道勧誘も始まって……マルは無事に図書委員になれて……」
花丸「あっ!そうずら!ねえ善子ちゃん、黒澤ルビィちゃんって覚えてる?髪が赤くてちっちゃい子なんだけど……」
善子「黒澤、ルビィ……ああ、あの子ね、覚えてるわ。舌ったらずな喋り方が独特だったからすぐに覚えちゃったわ」
花丸(自己紹介のインパクトは善子ちゃんの方が上回ってたと思うずら……) 花丸「ルビィちゃんがね、スクールアイドルって部活に興味あるんだって。善子ちゃんは聞いたことある?」
善子「スクール、アイドル……」
善子(確かネットでバズった動画の中にそんなのがあったようななかったような……)
善子(ま、どちらにせよ私には一生縁のない世界ね)
善子「……知らないわ、そんなもの。で、そのルビィって子がどうかしたのよ?」
花丸「あ、そうそう。ルビィちゃんがねすっごく可愛いんだ〜。今日のルビィちゃんのお昼がサンドイッチだったんだけどね、ちょこちょこ少しずつ食べている姿は見ていて飽きなかったずら〜」
善子「そ、そうなのね……」
善子(なんか可愛いって言うよりあざといって感じね……) 花丸「あと、他にもね〜……」
カチャリ
ガチャッ
善子ママ「ただいま〜……って善子?もしかして誰か来てるの?」
花丸「あっ、おばさん。おじゃましてますずら」ペコリ
善子ママ「あら、花丸ちゃん?おっきくなったわね〜昔も可愛かったけどもっと可愛くなっちゃって、私も嬉しいわ〜」
花丸「いや〜そんなことはないと思うずら〜おばさんの方が昔と変わらずお綺麗だと思うずら〜」
善子ママ「やだ!お世辞まで使えるちゃんとした子に育ってるのね、偉いわ〜うちの善子とは大違い!」
善子「マ、ママ!!//恥ずかしいからそういうのやめてよね!!//ほら行くわよずら丸!続きは私の部屋で……」
花丸「え、あ、うん……」
善子ママ「そうだ花丸ちゃん、よかったら夜ごはんウチで食べてかない?ちょうどパパからさっきご飯いらないって連絡あって、食材余っちゃってるのよね〜」 スレタイ見て愛と欲と色々との続編がついにきたかと思ったら違った 三人「いただきます!」
パクパク
花丸「ん〜♡カレー美味しいずら〜♡」
善子ママ「喜んでもらえて良かったわ〜花丸ちゃん、おかわりあるからどんどん食べてね〜」
ガツガツ
花丸「お代わりお願いしますずら!」
善子ママ「はいは〜い、ちょっと待っててね〜」
花丸「〜♪」
善子(こ、こいつよくそんな食えるわね……)
善子(それにこんだけ食べてあんまり太ってないとか……胃袋の中にブラックホールでも飼ってるのかしら……)
善子(まあ私に比べたら肉付きはいい体形してはいるけど……それほどってわけじゃないわよね……)
善子(ま、まさか栄養は全部!?その……胸に吸われてるとか!?) 花丸「ん?どうしたの善子ちゃん?マルのことじろじろ見て……」
善子「んにゃっ!?//いや、その……よく食べるなって思って……」
花丸「……もしかして善子ちゃん、たくさん食べる女の子は嫌いずら?」
善子「いや別に。むしろ羨ましいわ。私なんて少し食べただけでお腹いっぱいになっちゃうから」
花丸「……むぅ〜」
善子「どうしたのよ、ずら丸?」
花丸「……別に、何でもないずら」 善子ママ「はい花丸ちゃん、お代わりよ〜」
花丸「ありがとうございますずら〜では早速!いただきますずら!」
パクッ
花丸「ん〜♡頬っぺた落ちるずら〜♡」
善子ママ「ふふっ、そんなに美味しそうに食べてくれるなんて思ってなかったから、私も嬉しいわ。花丸ちゃんって本当に可愛いわね、娘に欲しいくらい」
花丸「ずらっ!?//」
善子「んなっ!?//マ、ママ!そういうこと言わないでよ!!」
善子ママ「え〜いいじゃない〜ホントのことだし〜」
花丸「お、おらも、そういうのは困るっていうか……//まだ早いっていうか……//」
善子「ほら!ずら丸だって困ってるじゃない!」
善子ママ「あら、ごめんなさいね、花丸ちゃん」
花丸「い、いえ……//おらは、大丈夫ずら……//」 善子ママ「そういえば花丸ちゃんはずっと内浦なの?」
花丸「はい。小学校も中学校もずっと内浦で、高校で善子ちゃんと再会しました」
善子ママ「あらそうだったのね〜」
花丸「善子ちゃんとはクラスが同じで、席も偶然にも近くて……善子ちゃんは学校にはあんまりいないけど……」
善子「こら!いちいち付け加えないでよね!」
善子ママ「……ねえ花丸ちゃん、善子のこと、お願いね?ほら、この子ってこう見えて少し変わってて、周りに変な人って思われることも多いから」
善子「ママ!どういう意味よ!」
善子ママ「だから……」
花丸「……」
花丸「はい!任されましたずら!善子ちゃんのこと、責任もって面倒みます!」ニコッ 花丸「そろそろ終バスの時間ずら……おばさん、マルはここら辺で失礼させていただきます」ペコリ
善子ママ「あら、もうそんな時間なのね……花丸ちゃん、またいつでも来ていいわよ?多分善子はほとんど家にいると思うし」
花丸「はい、ありがとうございます」
善子「ん、じゃあね、ずら丸」
花丸「……善子ちゃん、もしかしてお見送りしてくれないの?」
善子「いや、めんどいし、外寒いし……」
花丸「むぅ……」 善子ママ「こら善子。せっかく来てもらったんだからバス停くらいまではついて行ってあげなさい。バス停直ぐ下だし大丈夫でしょ?」
善子「……」
善子「……ま、すぐ下までなら」
花丸「ついてきてくれるの!?」
善子「……すぐ下までなんだからね」
花丸「うん!それでも嬉しい!行こ!善子ちゃん!」ギュッ
善子「ちょっ!ずら丸!私羽織るもの無いと寒いのに!」 花丸「終バスの時間が八時半で……あと十五分あるずら」
善子「それまでどうするの?戻る?」
花丸「バス逃したら大変だからここで待つずら」
善子「そ。じゃあ私はこれで……」
ギュッ
花丸「善子ちゃんもここで待つずら」
善子「えー……寒いから早く部屋戻りたいのに……」
花丸「マル一人で待つのは寂しいから……善子ちゃん、お願い?」
善子「……」
善子「はぁ……今回だけよ……」
花丸「うん、ありがと、善子ちゃん」 善子「……」
花丸「……」
善子「……」
花丸「……ねえ善子ちゃん、手、繋がない?」
善子「……はぁ?何よ急に?」
善子「それに私はポケットに手突っ込んでるから、外に出すのは寒いの……にっ!?」
花丸「えへへ〜温かいずら♪」
善子「ちょっ!?ずら丸!?上着のポケットに手突っ込まないでよ!動きづらいじゃない!」
花丸「善子ちゃんだけ温かくてずるかったから、これでおあいこずら〜」
善子「何よそれ……意味わかんないんだけど……」
花丸「〜♪」 善子「……」
善子(……昔の花丸はおどおどしてて人前にはあまり出ない、引っ込み思案な性格だったはず)
善子(でも……それがどうしてこんなにグイグイ来るような人になっちゃったのかしら……?)
花丸「……ねえ善子ちゃん?」
善子「何よずら丸?」
花丸「ん〜……何でもないずら」
善子「あっ、そう……」
花丸「……」
善子「……」 花丸「……ねえ善子ちゃん?」
善子「何よさっきから!」
花丸「……善子ちゃんはもう、どこにも行ったりしない?」
善子「はぁ?どういう意味よ、それ?」
花丸「う〜ん、どういう意味だろ……」
善子「……」
花丸「ねえ善子ちゃん」ギュッ
花丸「学校に来いとは言わないずら。別に学校に来ようが来まいが善子ちゃんの自由だとマルも思うから、でも……」
花丸「ずっとマルと一緒にいようね、善子ちゃん?」
善子「あ、あんた、それどういう—
花丸「あっ!バス来たずら!またね?善子ちゃん!」
タタタッ
プゥ〜
善子「……」
善子(……本当にめんどくさい奴と、私は再会してしまったのかもしれない) ———
それからというものの、ずら丸は毎日放課後に私を訪ねてきた
鍵を開けないとずら丸は拗ねるし私も対応するのがめんどくさかったから素直に開けるようにはしていたのだが……別に心を許したというわけではない……はずよ
ただ単純にめんどくさかったから、本当にそれだけ
ずら丸が家に来たからって、別に特別なおもてなしをしたりとか、おしゃべりをしたというわけじゃない。ただずら丸は本を読んでいて、私はゲームをしたりネットを見たりの繰り返し
私はずら丸にあまり興味はなかったし……ずら丸だって私に興味なんてないのよ、きっと
ただ幼馴染だから、幼稚園が一緒だったから一緒にいるだけ……それだけの関係
だから別に……
——— 4月16日
善子「……」ピコピコ
花丸「……」ペラッ
花丸「ふぅ〜……読み終わったずら〜」パタン
善子「ふーん……」ピコピコ
花丸「……ねえ善子ちゃん、善子ちゃんはずっとなんのげーむをやっているずら?」
善子「……FF7のリメイクよ。ずら丸に言ってもわからないでしょうけど」
花丸「わからないずら」
善子「あっ、そう……」
花丸「……」
善子「……」カチカチ
花丸「……善子ちゃん、それ面白いの?」
善子「面白いって言うより魅かれる感じね……」
花丸「へぇ〜、ねえ善子ちゃん、マル隣で見てていい?」
善子「別に構わないけど……アクションってより映画って感じだから楽しめないと思うわよ?」
花丸「マルはそっちの方がありがたいずら〜」
善子「そ。ならいいけど……」 花丸「ずらっ!?う、うぅ……」
善子「……」カチカチ
花丸「ずらぁ〜//………」ハラハラ
善子「……」
善子(こいつ、意外とうるさいタイプなのね……まあいいけど……)
善子「……ふぅ、今日はここまでかしら」
花丸「ええっ!?もう終わっちゃうの!?マルもっと見ていたいずら!善子ちゃん!」ペチペチ
善子「ちょっ、いたっ!もう!ずっとやってると眼も体も疲れちゃうじゃない!だから今日はここまでなのよ!」
花丸「ずら〜……残念ずら……」ムムム
花丸「でもげーむって意外と面白いんだね〜マルつい見入っちゃったずら〜」
善子「そうね。もともとこのゲームは評判が良かったものをリメイクしたってこともあるけど……やっぱり時間をかけて練られているってことが伝わってくる作品は、どれも面白いわ」
花丸「うん、作品にかけた想いが伝わってくるずら〜」 花丸「ねえ善子ちゃん!善子ちゃんはどの登場人物が一番好きなの?」
善子「登場人物……キャラってこと?そうね……」
善子「やっぱり主人公のクラウドは格好いいわね……クールで知的な印象だけど仲間思いで……やっぱりああいう主人公の器には憧れちゃうわね……」
善子「あとは、メインヒロインの……」
花丸「……善子ちゃん、ああいう性的な女の子がお好みずら?」
善子「せ、性的って!!//やめなさいよそんなこと言うの!//確かに肌の露出は多いかもしれないけど……//」
善子「そ、それにただ!私は!主人公を助ける献身さにただキュンときただけなのよ!」
花丸「ふーん……」ジトー
善子「なによその眼は!」
花丸「べっつにー、ただ善子ちゃんはムッツリさんなんだな〜って思っただけずら。この前だってマルのおっぱい食い入るように見てたし……」
善子「んにゃっ!?ち、ちがっ!あれは……」
花丸「……否定しないってことは認めたってことずらね。やっぱり善子ちゃんはむっつりさんずら」
善子「ちょっと!私の話も聞きなさいよ!」
善子(本当にこいつと話してると調子狂うわね……) 花丸「……」ペラペラ
善子「……」
花丸「……」ペラッ
善子「……ねえずら丸、一つだけいいかしら?」
花丸「ん〜?何ずら、善子ちゃん?」ペラッ
善子「……もうずら丸が家に入り浸るようになってまあまあ経つけど」
善子「その……私に学校に行くように説得しないのは、なぜなのかしら?不登校になってる側の私が言えることじゃないのかもしれないけど……」
花丸「……善子ちゃん、そんなことが気になってたんだね」パタン 花丸「最初に来た時にも少し言ったかもしれないけど、たとえ善子ちゃんがずーっと学校に来ればかったとしても、別に構わないって思ってるずら」
善子「じゃあどうして
花丸「マルは善子ちゃんのそばにいたい。ただそれだけずら。だからこうして毎日来てるんだよ?」
善子「はぁ?何よそれ、意味わかんないんだけど」
花丸「うん、善子ちゃんにはわかんないだろうね〜」
善子「……あんたもしかして、私のことバカにしてるでしょ?」
花丸「もしかしなくてもバカにしてるずら。だって善子ちゃん不登校だし」
善子「こら!そういう事言わないでよ!私だってちょっとは気にしてるんだからね!」
花丸「はいはい〜わかったずらよ〜」
善子「あっ!ちょっ!聞きなさいよずら丸!」 4月21日
ピンポーン
善子(あら、もう学校終わる時間なのね……)
ピンポーン!
善子「はーい!今開けるわよ!」テクテク
ガチャッ
ルビィ「ぴぎっ!」
善子「あら?あなたは……」
ルビィ「は!はじめまして……!津島さんのクラスメイトの!黒澤、ルビィです……」
善子「え、ええ……」 ルビィ「あのっ!花丸ちゃんが!今日用事で来られなくて……だからルビィが、代わりに……は!はい!これ!学校のプリントです!受け取ってください!」
善子「わ、わざわざ、ありがと……」
ルビィ「う、うん!じゃあルビィは、これで……」
善子「……ねえ、少し上がってかない?」
ルビィ「ええっ!?で、でも……」
善子「それにあなた、ずぶ濡れじゃない。髪くらい拭いてけば?」
ルビィ「じゃ、じゃあ、少しだけ……」 ルビィ「お、おじゃまします……」
善子「そこで少し待ってて、すぐタオル用意してくるから」
ルビィ「は、はい……」
………
…
善子「はいこれ、使いなさい」
ルビィ「あ、ありがと、津島さん……」ポンポン
善子「……わざわざ使わせてあげてるんだから遠慮しなくていいのよ?ほら、貸しなさい」ワシワシ
ルビィ「ぴぎゃっ!津島さん、くすぐったいよぉ!」
善子「我慢しなさい、風邪ひくわよ?」
ルビィ「ぷるっ!ぴぎゃぁ〜……すっきりしたぁ〜……ありがと!津島さん!」 善子「……それで、なんでこんな雨の日にあんたは傘も持たずに出歩いてたのよ?」
ルビィ「え、えっとぉ、今日は朝は雨が降ってなかったんだけどね、お姉ちゃんが雨が降るから傘を持っていきなさいっていってたんだけど、ルビィ忘れちゃってね?あはは……あっ!お姉ちゃんっていうのはね!……」
善子「はぁ……だいたいのところはわかったわ……」
善子(つまりちょっとだけ頭のネジが抜けた子ってところね、この子は……)
ルビィ「そういえば津島さんのお家ってすっごく学校から遠いんだね!なんでわざわざルビィの学校に通ってるの?」
善子「……別に、家庭の事情ってやつよ」
ルビィ「ふ〜ん、ルビィにはよくわかんないけど、そうなんだ〜」 善子「……詮索しないの?」
ルビィ「うーん……でも、他所のお家のことはあんまり口出ししちゃいけないって、お姉ちゃんが言ってたから!」
善子「ふーん……」
善子(案外素直な子……なのかしら?) 善子「……そうだ、せっかくわざわざ来てもらったんだし、ケーキでも食べる?」
ルビィ「えっ!いいのぉ?」ガバッ
善子「え、ええ……ほんとはずら丸のためにママが買ってきてくれたものだけど、別にいいでしょ」
ルビィ「わーい!ケーキ♪ケーキ♪ルビィ、ケーキだーい好き!」
善子「そう、ならよかったわ」 ルビィ「いっただっきまーす♪」
善子「ええ、召し上がれ」
ルビィ「んん〜♡美味しくってしあわせぇ〜♡」
善子(すっごく美味しそうに食べるのね……)
善子(なんか表情がコロコロ変わって、見てて飽きないっていうか……)
善子「……」
フニッ ルビィ「ぴぎっ!?//津島さん!?急にほっぺたさわらないでよぉ!!//」
善子「ご、ごめんなさい!!//ちょっとどういう反応するのか気になって……//」
善子(す、すっごく柔らかかった……//)
ルビィ「もう!津島さん!触りたいときは触らせてって言わなきゃだめなんだよ?」
善子「じゃあ触らせてってお願いしたら触らせてくれるのかしら?」
ルビィ「えっ!?そ、それはぁ……」
ルビィ「す、少しだけ、なら……//」
善子「それじゃあ少しだけ、失礼するわね」 ルビィ「つ、津島さん!?ぴぎっ!く、くすぐったいよぉ……//」
善子「……」フニフニ
善子(やっぱり柔らかくって……天使みたい)
善子(なんだか、すごく……)
ルビィ「津島さん?ルビィ、ケーキ食べられないよぉ……」
善子「そ!そうね!ごめんなさい!」 ルビィ「ん〜♡しあわせだよぉ〜♡」
善子「そう、なら良かったわ」
ルビィ「あっ!そうだ!はい!あーん♡」
善子「……どういうつもり?」
ルビィ「?津島さん自己紹介で、イチゴ好きって言ってたでしょ?だからあげよって思って!」
善子(確かに言ったような気がするわね……)
善子「……そ、そんなことしなくても、自分で食べられるわよ」
ルビィ「でも、津島さんにはルビィのほっぺた触らせてあげたよ?だからそのお返し♪はい、あーん♡」
善子(そ、そういうものなのかしら……)
善子「あ、あーん……//」
パクッ
ルビィ「ふふっ、美味しい?」
善子「あ、当たり前でしょう!!//だってイチゴなんだから!!」
ルビィ「うん!よかったぁ〜」 ルビィ「今日はありがと、津島さん!ルビィケーキまでもらっちゃたし……」
善子「いいのよそれくらい、気にすることじゃないわ」
ルビィ「じゃあ津島さん、また学校でね?」
善子「ま、待ちなさいよ!」
ルビィ「ん?どうしたの、津島さん?」
善子「その……津島さんっての、やめなさいよ。よ、善子でいいわよ……//そ、その代わり私も、ルビィって呼ぶから……//」
ルビィ「うん!善子ちゃん!」
ルビィ「えへへ〜善子ちゃん!善子ちゃん!うん!善子ちゃんだよぉ!」
善子「きゅ、急に連呼しなくたっていいわよ!!//」
善子「そ、それと……また気が向いたら、家に来ていいっていうか……//」
ルビィ「じゃあまた明日来るね、善子ちゃん!ルビィ部活があるから遅くなっちゃうかもだけど……」
善子「……」
善子「……ええ、待ってるわ」 ———
人見知りな私が、なんであんなにもルビィに魅かれたかなんてわからない
ただ、なんていうか、他人には思えないっていうか……妹みたいな感じなのよね、ルビィって
それに表情がコロコロと変わる様子がとっても可愛くて、見てて飽きないのよ、ほんとに
だから……
……もっとあなたを、教えてほしいの
——— 4月22日
ルビィ「〜♪」ペラッ
善子「……ねえルビィ、さっきから熱心に何の雑誌読んでるの?」
ルビィ「あっ!善子ちゃんも興味あるの?これはね!スクールアイドルの総合誌なんだぁ!」
善子(スクールアイドル……確かずら丸も言ってたような……)
ルビィ「もしかして善子ちゃんも、スクールアイドル興味あるの!?」キラキラ
善子「……ま、まあ、少しだけね」
ルビィ「そうなんだ〜もう〜早く言ってよぉ〜」
ルビィ「見て見て!善子ちゃん!すっごく可愛くない?」
善子「そ、そうね……」 ルビィ「ルビィ憧れちゃうなぁ〜可愛い衣装着て〜みんなを笑顔にするんだよ!ほら!」
善子(……確かに。テレビで見るような職業アイドルと遜色ないわね)
善子「……だったら目指せばいいじゃない。この子たちみたいに」
ルビィ「でもね善子ちゃん、スクールアイドルってとっても厳しいんだよ?可愛いだけじゃなくて運動もできないと……」
善子「でもルビィはなりたいんでしょ?立派なスクールアイドルに」
ルビィ「それは、そうだけど……」
善子「だったら頑張ればいいじゃない、頑張ればいつかきっとなれるわよ」
善子(ま、不登校の私が言える立場じゃないんだけどね)
ルビィ「……善子ちゃん、バカにしないんだ」 善子「は、はぁ?なんでバカにしないといけないわけ?本気で目指そうと思ってるんでしょ?」
ルビィ「う、うん……」
善子「だったら、頑張ってみればいいんじゃないの?頑張ってみてそれから結論を出しても、遅くはないはずよ」
善子(ま、不登校の私には関係ない話だけど)
ルビィ「……」
ルビィ「うん、ありがと、善子ちゃん」 4月24日
ルビィ「ねえねえ、善子ちゃん、善子ちゃんは学校に来ない時何やってるの?」
善子「そうね……勉強も一応少しはやったりするけど……もっぱらゲームかネットがメインね」
ルビィ「ふーん、ゲームか〜いいなぁ〜」
善子「……もしかしてルビィのお家って、そういうの禁止されてるタイプなのかしら?」
ルビィ「う、うん……お姉ちゃんが厳しくて……」
善子「そう……」
善子「……なら少し、やってみる?」
ルビィ「えっ!?いいのぉ!?」キラキラ
善子(……そんなにキラキラした目で見られたら断れないわよ) 善子「このレースゲームなら初心者でも楽しめるわよね……」
ルビィ「よ、善子ちゃん!?これどうやるのぉ!?」
善子「Aボタンでアクセル、左のレバーで方向転換、左奥のボタンでアイテムだから」
ルビィ「ぴぎっ!!!?えええええっ!?」
サン、ニ、イチ、ゴー!!
ルビィ「よよよよ善子ちゃん!?」
善子「ほら、ルビィ、頑張りなさい!」
善子(といってもCPUを弱いに設定してあるし、私も接待するつもりだからなんとかなると思うけどね) ルビィ「ぴ、ぴぎっ!!?」
ルビィ「ぴぎゃぁっ!!」
ルビィ「ふぅ〜終わったぁ……善子ちゃんこのゲーム難しいよぉ……」
善子「それでも三位じゃない。健闘したほうだと思うわ」
ルビィ「えっ!?三位!?ルビィ三位なのっ!?」
善子「え、ええ……」
善子(興奮しすぎて順位も確認できてないのね……)
ルビィ「三位……ルビィが、三位……」
ルビィ「ねえ善子ちゃん!ルビィすごくない?だって三位だよぉ!!」
善子「え、ええ、そうね……」
ルビィ「わぁい!!ルビィ三位だよ!!やった〜!!」ピョンピョン
ルビィ「ねえ善子ちゃん!もう一回!もう一回やろっ!!」
善子(本当はかなり接待してあげたんだけど……)
善子(ま、ルビィのこの笑顔が見れるなら、いっか……) 4月25日
ルビィ「ねえ〜善子ちゃん〜」
善子「なによ急に」
ルビィ「どうして善子ちゃんは学校に来ないの?」
善子「急にぶっこんだ話するのね……」
ルビィ「だって気になったんだもん。善子ちゃんは知らないかもだけどね、学校ってね、すっごく楽しいんだよ?今日も花丸ちゃんがね……」
善子(……知ってるわよ、だってあなた、とても楽しそうに話すもの)
善子「……」
善子「……ねえルビィ、私も学校……行ってもいいのかな?」 ルビィ「え?どうして?」
善子「だって……あんな変な自己紹介しちゃったし……みんな私のこと変な目で見ると思うし……友達だっていないし……」
ルビィ「えー、そんなことないと思うけどなー、だってルビィはすっごく面白いって思ったよ?善子ちゃんの自己紹介」
善子「そ、それは、ルビィが少し特殊なだけで……」
ルビィ「それとね!ルビィと花丸ちゃんはもうね!善子ちゃんのお友達だもん!」
ルビィ「お友達はたくさんいた方が楽しいんだよ?だからね、ルビィは善子ちゃんに学校、来てほしいな」 善子「……」
善子「……ほんとにそう思ってる?」
ルビィ「うん!ルビィ嘘つかないもん!」
善子「じゃ、じゃあ……明日からってわけにはいかないかもしれないけど……出来るだけ早く……来週中くらいには学校、行けるように頑張るから……その……」
善子「が、学校でも、友達でいなさいよね……ルビィ……」
ルビィ「うん!もちろん!約束だよ!善子ちゃん!」
ルビィ「ほら、善子ちゃん!手出して?」
善子「……何よ」
ルビィ「何って、指切りだよ?約束だもん」
善子「……」
善子(指切りって、なんか子供っぽい……)
ルビィ「ゆーびきーりげーんまーん!うそついたらはりせんぼんのーます!ゆびきった!」 4月28日
ピンポーン!
善子「あっ!ルビィ!待ってて!今開けるから……」
ガチャッ
花丸「……悪かったずらね、ルビィちゃんじゃなくて」
善子「ずら丸!?ひ、久しぶりね……」
花丸「ルビィちゃんがずっと来たがってたけど、無理を言って変わってもらったずら」
善子「そ、そうなのね……」
花丸「とにかく、入れてもらうずらよ、善子ちゃん」スタスタ
善子「あっ!ちょっ!勝手に!」 花丸「……なんか雰囲気かわったね、善子ちゃんのお部屋」
善子「そ、そうかしら?ちょっと部屋の掃除をしたからじゃないの……?」
花丸「前はもっと全体的に黒かったような気がするずら。それに確かここに不気味な髑髏の模型が置いてあったような……」
善子「ああ、あれならルビィが怖がってたから、部屋の奥にしまったのよ」
花丸「……」ズキッ
花丸「……ふーん」
善子「あっ!ルビィと言えばね!ずら丸!もう聞いてよね!ずら丸が来なかった間ルビィが来てくれてたんだけどね!ルビィってばもうほんとにいい子なのよね!仕草がいちいち可愛いし、小動物みたいでもふもふしたくなるし!私の話なんでも面白いって言ってくれるし……」
花丸「……」
善子「ん?どうしたのよずら丸、そんな不満そうな顔しちゃって」
花丸「……ねえ善子ちゃん、マルとルビィちゃん、どっちが好き?」 善子「はぁ?急に何言い出すのよあんた……」
花丸「マルとルビィちゃん、どっちが善子ちゃんにとって大切なお友達なの?」
善子「え?そりゃあ、まあ、二人とも友達……だと私は思ってるけど……」
善子(もしかして友達だって思ってるのは私だけで……私の勘違いとか?)
花丸「ねえ!はぐらかさないでよ!ちゃんと答えて!善子ちゃん!」
善子「ね、ねえずら丸、落ち着きなさいよ、私は、その……」
花丸「善子ちゃんとマルは幼稚園が同じで立派な幼馴染、そうだよね、善子ちゃん?」
善子「え、ええ……」
花丸「だからマルは善子ちゃんの一番の友達だよ、善子ちゃん」
ドサン! 善子「えっ!?ちょっ!?ずら丸!?何考えてるの!!ど、どきなさいよ!」
花丸「……」
花丸「……善子ちゃんにマルの想い、伝わって欲しい」
善子「う、うそっ!?いやっ!?やめてよ!!」ジタバタ
善子(ち、力出ない……ってかずら丸意外と力強くて……)
花丸「……」
ブチッ
ブチッ
善子「んんっ!!!?」 善子(わ、私ずら丸に洋服脱がされて、ブラ見えて……も、もしかしてキスも……?)
善子(いやよ!!だって私初めてなのに……)
花丸「ねえ善子ちゃん、善子ちゃんはずっとマルだけのものだよ?」
善子「んんっ!!!んんんっ!!!」
善子(やだっ!!やめてよずら丸!!こんなことしないでよ!私たち、友達なんじゃ……)
善子(ずら丸、お願いだから……)
善子(お願いだから誰か、助けて……)
バタン!!
ルビィ「はぁ……はぁ……」
善子(ル、ルビィ!?) ルビィ「花丸ちゃん……何してるの……?」
花丸「……」
花丸「……ルビィちゃんにはわからないことだよ」
花丸「ルビィちゃんにはまだ早いかもだけど……マルたちは愛を確かめ合ってたんだよ」
ルビィ「愛を……?」
花丸「そう、これは大人の儀式なんだ。だからルビィちゃんは……」
ルビィ「でも……でもっ!善子ちゃん苦しそうにしてるよ!」
花丸「違うよルビィちゃん。これが私たちなりの愛のカタチなの、だから……」
ルビィ「それに!花丸ちゃんだって笑ってないよ……?」 花丸「……」
ルビィ「お願い花丸ちゃん。こんなの間違ってるよ……だって花丸ちゃんも、苦しそうだもん!」
ルビィ「あのね!ルビィ、花丸ちゃんに!もちろん善子ちゃんもだけど、笑っていて欲しいの!だから、だから!上手く言葉にできないんだけどね……」
ルビィ「お願いだよぉ、花丸ちゃん……」ポロポロ
善子(ル、ルビィ……)
ルビィ「お願い花丸ちゃん……お願い、ほんとうに、お願い……」
花丸「……」
花丸「……帰る」
花丸「マル、もう今日は帰るね」
ルビィ「あっ!花丸ちゃん!待ってよ!」
バタン
ルビィ「花丸ちゃん……」 善子「ひぐっ……ぐすっ……」
ルビィ「よ、善子ちゃん!?大丈夫!?」
善子「ぐすっ……ルビィ……ルビィ……」
ルビィ「え、えっと……ど、どうしよ……」
ルビィ「と、とりあえずお水……」
ガシッ!
善子「ルビィ……お願い……ひぐっ……」
ルビィ「善子ちゃん?」
善子「お願いだから……今はそばにいて……」
ルビィ「よ、善子ちゃん……」
ハグッ!
善子「お願い……ほんの少し……今だけでいいから……」
善子「少しだけこうして、いて欲しい……」
ルビィ「う、うん……」
………
… 善子「ひぐっ……ぐすっ……」
ルビィ「よ、善子ちゃん!?大丈夫!?」
善子「ぐすっ……ルビィ……ルビィ……」
ルビィ「え、えっと……ど、どうしよ……」
ルビィ「と、とりあえずお水……」
ガシッ!
善子「ルビィ……お願い……ひぐっ……」
ルビィ「善子ちゃん?」
善子「お願いだから……今はそばにいて……」
ルビィ「よ、善子ちゃん……」
ハグッ!
善子「お願い……ほんの少し……今だけでいいから……」
善子「少しだけこうして、いて欲しい……」
ルビィ「う、うん……」
………
… 善子「……」
ルビィ「……」
善子「……」
ルビィ「……善子ちゃん、落ち着いた?」
善子「ええ、ありがと、ルビィ……」
ルビィ「う、うん……」
善子「……」
ルビィ「……あ、あのね!」
善子「ごめんなさいルビィ、今はそっとしておいてほしい」
ルビィ「う、うん……」 こういうドロドロしたのとは無縁な3人だからなんか違和感 善子「それとね、今日はもういろいろあって疲れちゃった。だから少し、眠らせて欲しいの」
ルビィ「うん、いいよ、善子ちゃん」
善子「それと、最後のお願いなんだけど……」
善子「……眠れるまで、手を握っていて欲しいの」
ルビィ「……手を?」
善子「そうよ、ルビィ、お願いできる?」
ルビィ「うん、大丈夫だよ」
善子「ありがと、じゃあ……」
………
… 善子「……」パチッ
善子「ん、んんんっ……」
善子(だいぶ、すっきりしたような、してないような……)
善子「……」スッ
善子(……一時間くらい寝てたのね)
善子「起きよ……」
善子(……?)
ルビィ「すぅ……すぅ……」
善子(あれ、右手……そっか、ルビィ……約束、守ってくれてたのね……)
ルビィ「すぅ……すぅ……」
善子「……ありがと、ルビィ」 善子(そういえば、ルビィって不思議な子よね……)
善子(普段は小動物みたいでそそっかしくて見てるこっちの方が心配になるんだけど……)
善子(でも……)
ルビィ『お願い花丸ちゃん。こんなの間違ってるよ……だって花丸ちゃんも、苦しそうだもん!』
ルビィ『あのね!ルビィ、花丸ちゃんに!もちろん善子ちゃんもだけど、笑っていて欲しいの!』
善子「……」
善子(……私のこと、助けてくれた)
善子「……ほんと、不思議な子」 善子「そういえば、ルビィってスクールアイドルってもの、やってるのよね……」
善子(興味なかったから調べてこなかったけど、もしかしたら……)
カチカチッ!
善子(あった……!!浦の星女学院スクールアイドル部……Aqours?)
善子(あっ!自己紹介ってページがあるわ!)
カチッ!
ルビィ『はははは——、初めましてっ!!わ、私、黒澤ルビィと申し……あぅ!ごめんなさい!今度は少しだけ噛んじゃった……』
ルビィ『あのっ!ルビィずっとずっとアイドルが大好きで!アイドルになりたくて!こんなルビィがアイドルになれるなんて思ってなかったけど……』
ルビィ『でも絶対にこのチャンスを逃さないって決心しました。す、すっごく緊張してるけど……目をつぶって頑張ります!!こんなルビィを応援してくださいっ!!』
善子「……やっぱりルビィはルビィみたいね」
善子(……あら、これは……練習風景?)
カチカチッ! 〜♪
善子(どうやら曲に乗せて踊ってる様子が投稿されているようね、えっと、ルビィは……)
カチッ!
善子「……」
善子「嘘……?これが、ルビィ、なの……?」
善子(確かにこの真紅の赤髪とあどけなさの残る柔らかい顔立ちはルビィ以外には考えられないけど……)
善子(で、でも……)
善子「……」
善子「すごく、カッコイイ……」
善子(普段の幼い言動からは考えられないっていうか……)
善子(これが、ほんとの、ルビィ……) ルビィ『お願い花丸ちゃん。こんなの間違ってるよ……だって花丸ちゃんも、苦しそうだもん!』
善子(本当は誰よりも芯が強くて、誰よりも他人思いで……)
ルビィ「……う、うーん……うゆ……?ここは……?」
ルビィ「はっ!そうだ!善子ちゃん!!善子ちゃんだよっ!どこ??」
善子「ちゃんとここにいるわよ、ルビィ」
ルビィ「よ、良かったぁ……善子ちゃん、ひとりでどっかいっちゃうんじゃないかって思っちゃったから……」
善子「……しないわよ、あなたを置いていくなんて」
ルビィ「う、うん……」
善子「……ねえルビィ?」 ダキッ
ルビィ「よ、善子ちゃん!?」
善子「あのね、ルビィ……私ね、嬉しかった。さっきルビィが私のこと助けてくれて」
ルビィ「さ、さっき……?」
ルビィ「!!!!い、いや、あれは、ただ……学校帰るとき花丸ちゃんの様子がおかしかったから、ちょっと気になっただけで……もしかしたら善子ちゃんのところかもって、なんとなく思っただけで……」
ルビィ「ごごごごめんね!善子ちゃん!ルビィ、善子ちゃんと花丸ちゃんのこと何もわかんなかったのに、余計な事しちゃって……」
善子「……」
善子「いいのよルビィ、あなたの判断は間違ってなかったと思う。だって私は救われたもの」
ルビィ「う、うん……あ、あと、善子ちゃんせっかく学校来ようって思ってたのに、花丸ちゃんあんなんになっちゃったから、もう少しルビィ我慢した方がいいのかも……花丸ちゃん、怒ってるだろうし……」
善子「……心配いらないわ。ちゃんと学校には行くから」
ルビィ「えっ!?で、でも……」
善子「あのねルビィ、私ね、強くなりたいの。あなたみたいに」 ルビィ「えええっ!!?ル。ルビィ別に強くなんて……お姉ちゃんにもよく泣いてばっかりって怒られるし……」
善子「いいえ、あなたはすっごく強い子だって思う。このヨハネが保証するわ」
善子「……それとねルビィ、もう一つだけ聞いて欲しいことがあるの」
ガバッ!
ルビィ「ぴぎっ!?よよよ善子ちゃん!?//」
善子「……好きよ、ルビィ。あなたの全てが大好きなの」 ルビィ「う、うん……ルビィも善子ちゃんのこと、大切なお友達だって思ってるよ?もちろん花丸ちゃんもだけど……」
善子「違うのルビィ、そういう意味じゃないわ。私が言いたいのは……」
善子「……恋人として、あなたのことが好きだってこと」
ルビィ「ここここいびとぉぉぉ!!!?///」
善子「もうっ、そんなに驚かなくたっていいじゃない」
ルビィ「ででででもっ!!ルビィたち女の子どうしだしっ!!!そ、それに、ルビィまだ子供だから、そういうことはわからないっていうか……//」
善子「ええ、それでもいいわ。とにかく私はあなたのことが好きなんだから、これだけは覚えておいて欲しいの」
ルビィ「う、うん……わかった、善子ちゃん……」 善子「ありがとね、ルビィ、今日は来てくれて」
ルビィ「う、うん……」
善子「それと私も頑張って学校行けるようにするから、応援しててよね、ルビィ」
ルビィ「わ、わかった……」
善子「あ、あと……」
ギュッ
ルビィ「よ、善子ちゃん……?」
善子「……うん、これでルビィの力をもらえた気がするわ。ありがとね」
ルビィ「う、うん……」
ルビィ(なんだかよくわかんないんだけど……善子ちゃんも大変なんだね……)
善子「じゃあルビィ、また学校でね?」
ルビィ「う、うん!ルビィも待ってる、よ……」 ———
……最低なことをした、大好きな人を傷つけてしまった
わかってる。それくらいは自分でもわかるんだよ
変な気を起こしたとか、欲に溺れたとか、きっとあなたは思うのかもしれない
でもね……これがマルなりの、愛の形なんだ
マルはこうじゃないと愛を伝えられないし、伝えてもらえないって思ってるから
だっておらは、ルビィちゃんにはなれないもん
だから……
……マルは善子ちゃんのことが、大好きなの
——— 素晴らしい
てかこの程度でドロドロとかまだSSほとんど読んだことないピュアピュアな坊っちゃんなのかな この花丸はちょっとね…
二人はピュアなのに一方的にドロドロしてる
キスとかならまだしも無理やりというのは性急だしらしくない感ある 国木田先生「オラと善子ちゃんに幼馴染設定をつけろズラ」
アニメスタッフ「はい…」 5月7日
ルビィ「おはよ……善子ちゃん!?」
花丸「……!!!?」
善子「……なによ、浦女生が学校にいるの、そんなに珍しいわけ?」
ルビィ「い、いや、そういうわけじゃ
花丸「珍しいずら。だって善子ちゃんずっと不登校だったもん」
ルビィ「は、花丸ちゃん!?そ、そういうこと言わない方が……」アワアワ
善子「……」
花丸「……善子ちゃん、マルに言いたいこと、あるんじゃないの?」 善子「……そういうあんたの方はどうなのよ」
花丸「マルは自分の気持ちは全部善子ちゃんに伝えたつもりずら」
ルビィ「は、花丸ちゃん!!?よ、善子ちゃんも!!ケンカしちゃだめだよぉ……」
善子「そ。私も別にないわ、ただ……」
善子「あんたは最初にできた私の大切な友達だから、別に嫌いにはなれないっていうか、その……」
花丸「……」
花丸「うん、ありがと、善子ちゃん」 5月11日
先生「え〜このようにだな、因数分解は展開の逆の演算であり……中学校では展開公式を覚えてもらったと思うが高校ではこの三次式の展開公式をだな……」
ルビィ(ふ、ふぇぇぇ〜……ぜんぜんわかんないよぉ……)
コンッ!
ルビィ「ぴぎっ!」
ルビィ(な、何!?急に……ノートの切れ端?)
ルビィ(だ、誰から……)キョロキョロ
ルビィ「……!!!」
善子「……」チョイチョイ
ルビィ「……」ペラッ
『好きよ』
ルビィ「……!!!//」 ルビィ(よ、善子ちゃん!?おバカさんなのっ!!?//授業中にこんな下らないイタズラなんて……//)
善子「……」ニヤニヤ
ルビィ(もうっ!!ニヤニヤしないでよっ!!//ルビィまで恥ずかしくなってくるじゃん!!//)
先生「こら!津島!聞いとるのか!」
善子「ひゃ、ひゃい!!」
先生「じゃあこの問題、解いてみろ」
善子「え、えっと、公式がそのまま使える形だから……x^3-8、よね?」
先生「……ほう、出来るじゃないか、不登校なのに」
善子「”元”不登校ですっ!そういうこと言わないでくださいっ!!」
ルビィ(す、すごい……善子ちゃん、勉強できるタイプなんだぁ……) >>84
二次創作でもこの花丸の行動は突飛で違和感を覚えた、それだけ 休み時間
ルビィ「よ、善子ちゃん!!ルビィね!!お願いがあるの!!」
善子「わっ!ルビィ!急に大声出さないでよっ!」
ルビィ「ご、ごめんなさい……あのね善子ちゃん、さっきの数学の時間でね、ルビィ、善子ちゃんのことすっごいって思ったんだぁ〜」
善子「あ、ありがと……」
ルビィ「でねでね!ルビィね!善子ちゃんにお勉強教えてもらいたいんだぁ!!ほら、来週小テストやるって先生言ってたでしょ?ルビィ自信なくって……またお姉ちゃんに怒られちゃうのも嫌だし……」
善子「勉強を教える……私が?」
善子(な、なんか、みんなで集まって勉強会するって、雰囲気がすっごくリア充っぽいかも……!!)
善子(それに、ルビィと二人きりになれるいい機会……//しかもルビィから……//)
ルビィ「ダメかな?善子ちゃん?」
善子「……ええ、大丈夫よ。じゃあ今日の放課後、少し教室でやりましょうか」 ルビィ「うぅ〜わかんないよぉ〜……」
善子「どれよ?ほら、貸してみなさい」
ルビィ「ほら、これ……四角二番の(2)……」
善子「……なんだ。簡単なたすき掛けじゃない」
ルビィ「たすき、がけ……善子ちゃん、マラソンでも走るの?」キョトン
善子「……そうとう重症みたいね、これは」
善子(しかも、たすきを使うのはマラソンじゃなくて駅伝のほうじゃない……) 善子「ほら、元はこういう公式で……」
ルビィ「ふむふむ、なるほどぉ……あっ!じゃあじゃあ!さっきのやつはこうして……こういうこと?善子ちゃん?」
善子「ええ、それで合ってるわ」
ルビィ「わーい!じゃあ次のはこうして……あっ!ルビィ!この問題全部わかっちゃうかもっ!えっと、これは〜……」
ルビィ「〜♪」カリカリ
善子(解決したみたいね、良かった……他人に教えたことなんて今までなかったからどうなることか不安だったけど……)
ルビィ「ふふふふ〜ん♪」カリカリ
善子(まあルビィの物分かりが良かったってのもあるし……)
善子「……」
善子(ルビィ……) ルビィ「えっと、これはこうで〜……」
善子「……」
プニッ
ルビィ「ぴぎっ!!よよよ善子ちゃん!!?//急にルビィの頬っぺたさわらないでよぉ!!!//もうっ!!//」
善子「ご、ごめんなさい!!ルビィが可愛くてついちょっかいかけてみたくなちゃって……」
ルビィ「ルルルルビィがかかか可愛い!!?ぴ、ぴぎぃぃ!!!?///」カァァッ!!
ルビィ「も、もうっ!!善子ちゃん!!!だ、だめなんだからね!!!ほんとうにっ!!!///」
善子「え、ええ……気を付けるわ……」
ルビィ「ぜったい!!ぜったいだよぉ!!!女の子のほっぺたいきなり触ったらだめ!なんだからね!!」 ルビィ「……」カリカリ
善子「……」
ルビィ「……」カリカリ
善子「……」
善子(き、気まずい……やっぱりさっきの私の言動のせい、よね……)
善子(な、何か空気を変えられるような話題は……)
善子「ね、ねえルビ
ルビィ「ねえ善子ちゃん、あのさ」
パタン
ルビィ「……善子ちゃんはさ、普段……ルビィのこと、どう思ってるの?」 善子「え?それはどういう意味かしら、ルビィ?」
ルビィ「あのね、ルビィはね、その……あの日善子ちゃんに好きって言われちゃたから……ルビィ誰かに告白なんてされたの初めてで……///だからね……//」
ルビィ「……これでも善子ちゃんのこと、すっごく意識、してるんだよ?」
善子「そ、それは、どういうこと……」
ルビィ「あのね善子ちゃん、ルビィね……
花丸「二人で何やってるずら、善子ちゃん」
善子「わああっ!?ずら丸!?どうしてここに!?」
花丸「図書委員の仕事が一区切りついたから帰ろうと思ってたんだけど、善子ちゃんとルビィちゃんの声が聞こえたから教室にきてみただけずら」
善子「ふ、ふ〜ん、そうなのね〜……」
花丸「……善子ちゃん、何がそんなに不満ずら?」
善子「べっつに!なんでもないわよ!」 花丸「で、二人は教室でなにしてたの?」
ルビィ「ルビィが数学の問題わかんなかったからね、善子ちゃんに教えてもらってたんだ〜」
花丸「ふーん、ルビィちゃんは昔から努力家だよね〜」
ルビィ「そんなことないよ〜ただお姉ちゃんが厳しいだけだよ」
花丸「それにしても、善子ちゃんがちゃんと家でも勉強していたなんて……マルにはそっちのほうが驚きだったずら……」
善子「何よ!私だってやるべきことはちゃんとやってたんだからね!」
花丸「ふーん、おらはてっきりただ堕落を貪っているだけかと思ってたずら」
善子「……あんた不登校に対して偏見すごくない?」 花丸「だって善子ちゃんだもん。信用してなくて当然ずら」
善子「それ、どういう意味?」
花丸「言葉通りの意味ずら、よっ!」
ペチッ
善子「あいたっ!もう!ずら丸!どういうつもり!!」
花丸「善子ちゃんがぼさっとしてたから気合をいれてあげようと思っただけずら〜」
善子「べ、別にぼさっとなんかしてない、わよっ!」
ムニッ
花丸「ふぇっ!?ほ、ほひほひゃん!?ふぁるのほっふぇふぁひっふぁふぁふぁいふぇよっ!!」
善子「さっきのデコピンのお返しよっ!ヨハネのこと甘く見てると痛い目にあうんだからねっ!!」 花丸「うぅ〜……//マル最近頬っぺたにお肉ついてきたこと気にしてるのに〜……//」
善子「別にそんなことなかったわよ?」
花丸「ず、ずらっ!!?//」
花丸「よ、善子ちゃんはやっぱり魔性の女ずら!魔女!堕天使!不登校!」
善子「不登校は余計でしょっ!これでも結構気にしてるんだからんねっ!!」
花丸「ふんっ!善子ちゃんが悪いんずらよ!」プイッ
善子「ちょっ!ずら丸!?話聞きなさいよ!!」
ルビィ「……」
ルビィ(やっぱり善子ちゃんと花丸ちゃん、仲良いんだなぁ……) ルビィ「……」カリカリ
花丸「ずらっ!」ドンッ!
善子「……何よその紙束、ずら丸?」
花丸「図書委員で作ってる本の紹介ポスターずら。善子ちゃんには罰としてマルのお仕事を手伝ってもらうずら」
善子「か、勝手にきめないでよね!!」
花丸「はい、これ色ペン。善子ちゃん、可愛く装飾してね?」
善子「はぁ……私に拒否権はないのね……まあいいけど……」
ルビィ「……」カリカリ ルビィ(そうだよね……だって善子ちゃんと花丸ちゃんって幼稚園一緒だったんだもんね……ルビィは花丸ちゃんとは中学校からだし……善子ちゃんとは高校で初めて出会ったから……)
善子「可愛くって言われても、その……私の感性ってほら、一般人とは大きくかけ離れてるから……」
花丸「いいから口じゃなくて手を動かすずらよ〜善子ちゃん〜」
善子「そ、そういわれても……」
ルビィ(……むぅ)
ルビィ「……??」
ルビィ(あれ?ルビィなんで……?)
ルビィ(なんでルビィ……?)
善子「……ん?ルビィ?何かわかんないとこあるの?私が教え
ルビィ「ぴ、ぴぎゃぁぁぁ!!」
ドンッ! 善子「……えっ?ルビィ?」
ルビィ「え、あ、いや……ごめん、善子ちゃん……今のはただちょっとびっくりしちゃっただけで……」
善子「え、ええ……」
ルビィ「それにルビィ一人でもできるから……もう大丈夫だから……」
善子「う、うん……わかった……」
花丸「……」
花丸「ほら善子ちゃん、ルビィちゃんもああ言ってくれてることだし、マルの方を手伝って欲しいずらよ」ギュッ
善子「え、ええ、そうね……」
ルビィ「……」
善子「……」 ———
特別な関係なんて、ルビィにはまだわからない
でも、それでも……なんだか胸がどきどきしてくるの……
わからない、わからないよ……だってまだ、ルビィは……
だからせめて、ルビィに……
あなたのことを、もっと教えて欲しいな……
——— 5月14日
ルビィ「おはよう、花丸ちゃん」
花丸「ルビィちゃん、おはようずら。あれ、善子ちゃんは?」
ルビィ「確か風邪ひいちゃったから今日はお休みするって連絡きてたと思うけど……花丸ちゃんのところにはきてないの?」
花丸「うん、マルは何も聞いてないけど……」
ルビィ「えっとね、確か……昨日遅くまでゲームしてたら体調崩しちゃって今日はお休みずるって」
花丸「ふーん……」
ルビィ「花丸ちゃんのとこには、連絡来てないの?」
花丸「いや、おらには何も……」
ルビィ「あれ?じゃあルビィだけにメールしたってことなの?おかしいなぁ……」
花丸「……」 お昼休み 屋上
花丸「……」
ルビィ「あっ!花丸ちゃんの今日のお弁当唐揚げなんだね!いいなぁ〜美味しそう〜!」
花丸「……」
ルビィ「ルビィは今日ね、タコさんウインナーなんだぁ〜お姉ちゃんが早起きして作ってくれたの!」
花丸「……」
ルビィ「善子ちゃんは今日は……」
ルビィ「あっ!そっか!善子ちゃん今日お休みなんだぁ〜忘れてたよぉ〜てへへ〜……」
ルビィ「……」チラッ
花丸「……」 ルビィ「……ねえ花丸ちゃん、体調悪そうだけど大丈夫?保健室行く?」
花丸「……」
花丸「……ねえ、ルビィちゃんはさ」
パタン
花丸「善子ちゃんのこと、どう思ってるの?」
ルビィ「え?善子ちゃん?うーん、どうって言われても……」
ルビィ「えっと……善子ちゃんは……ときどき不思議なことをするちょっと面白い人だなぁって思うけど、本当はすっごく良い子なんだって最近気づいて、ルビィは……」
花丸「ううん、そういうことじゃないの、ルビィちゃん」
花丸「おらが聞きたいのはね?」
花丸「ルビィちゃんは善子ちゃんのこと、好きなの?」 ルビィ「す、好きぃ!?そ、それは……」
花丸「あのねルビィちゃん、おらはね、好きなの。善子ちゃんのこと」
ルビィ「う、うん……」
花丸「……ねえ、ルビィちゃん、マルたちずっと、友達だよね?」
ルビィ「も、もちろんだよ!花丸ちゃんは中学校で出来たルビィの最初の友達で、誰よりも大切な友達で……」
花丸「うん、ありがと、ルビィちゃん」
花丸「……」
花丸「じゃあさ、ルビィちゃん」
花丸「マルのお願い、聞いてくれる?」 5月15日
善子(な、なんか一日ぶりの学校ってだけでもすっごく緊張するわね……思い返せば一か月近く学校に来てない期間があったっていうのに……)
善子(で、でも今はもうルビィもずら丸もいてくれてるから……)
ガラガラッ
善子「……おはよ、ルビィ、ずら丸」
ルビィ「よ、善子ちゃん……」
花丸「善子ちゃん、おはようずら。今日はずる休みじゃないんだね」
善子「なっ!別にずる休みしてたわけじゃないんだからね!ちょっと体調崩しちゃっただけなんだからね!」
花丸「はいはい、わかってるずらよ〜」
善子「あっ、そうだルビィ、悪いけど昨日の授業のノート見せてくれない?写しちゃいたいんだけど……」
ルビィ「……」 ルビィ「……ご、ごめん善子ちゃん!ルビィ部室行かないとだから!!」ガタッ!
善子「あっ!ちょっ!ルビィ!!」
善子「……もう、用事くらい私が来る前に済ませておいてくれても良かったのに」
花丸「ルビィちゃんは部活で忙しいんだよ、善子ちゃんとは違って」
善子「いちいち軽口いわなくてもいいでしょ!!」
パサッ
花丸「はいそれ、昨日のノートのコピーずら。数学と生物と地理の分ちゃんと用意しておいたから」
善子「あ、ありがと……」
善子「にしても本当に用意周到ね……いつもの嫌味なずら丸からは想像できないくらいには……」
花丸「いらないなら回収するずらよ、善子ちゃん」
善子「わあっ!いる!いるわよっ!!」 お昼休み
善子「ルビィ!一緒にお昼
ルビィ「……」ガタッ!
タッタッ
善子「ちょっ!?ルビィ!?」
花丸「ルビィちゃんもきっと色々あるんだよ」
善子「で、でも明らかに様子がおかしいっていうか……」
花丸「それより善子ちゃん、今日は二人でお昼食べるずらよ」
善子「なんであんたが勝手に決めてんのよ!」
花丸「じゃあ善子ちゃんはマルとはお昼別々ずらね、残念ずら……」
善子「……」 善子(はっ!よく考えたら私!ルビィとずら丸以外に友達いないのでは!!?)
善子(こ、これじゃあ……)
善子「ま!待ちなさいよ!まだ一緒に食べないなんて……」
花丸「じゃあ一緒ってことでいいの?」
善子「きょ、今日だけなんだからね!特別の特別よ!!」
花丸「うん、マルはそれでもいいよ。そうと決まれば……」
ギュッ
善子「わっ!ちょっ!ずら丸!?」
花丸「マルのとっておきの場所、善子ちゃんに案内してあげるずら!!」 中庭
善子「学校にこんな場所があったのね……」
花丸「うん!芝生がふかふかだし風が気持ちいいから、マルのお気に入りんなんだぁ〜」
善子「それに日陰になってるから目立ちにくくて……生徒もあまり寄ってこないみたいだから……」
花丸「うん、マルと善子ちゃんだけの、学校の秘密なんだよ?」
善子「秘密……」
花丸「ん〜気持ちいいずら〜」 モグモグ
善子「そういえばずら丸、ルビィから何か聞いてないの?」
花丸「何かって、何のことずら?」
善子「ほら、今朝からルビィの様子、少しおかしかったじゃない?ずら丸なら何か知ってると思ってたんだけど……」
花丸「……」
花丸「いや、マルは何も聞いて無いずら」
善子「そ、ならいいわ」 善子「にしてもここ……」
サワサワ…
善子「本当に気持ちのいい風が吹くわね……」
サーッ~…
花丸「善子ちゃんも気に入ってくれた?マルのお気に入りの場所なんだぁ〜」
善子「ええ……でもこんだけ心地いいと……」ウトウト
フワァ~…
善子「なん、だか……眠、くなる、っていう、か……」コクッ
花丸「もしかして善子ちゃん、昨日もまた夜更かししてたの?」
善子「ちょっと、考え事、してて……寝れ、なくて……」ウトウト 花丸「じゃあ……善子ちゃん!」ポンポン
善子「……何よその仕草?」
花丸「ほら!膝枕してあげるずら!」
善子「……また何か企んでるんでしょ?どうせ」
花丸「ええっ!そんなことないよ!信じて欲しいずら!マルはただ善子ちゃんがゆっくり休めるように……」
善子「……」コクッ
善子(ダメよヨハネ、警戒を怠っては……)
善子「……」ウトウト
善子(で、でも……)
善子(さすがに睡魔には勝てない、のよね……)
花丸「さあ善子ちゃん?」
花丸「マルのところにおいで?」 善子「すぅ……すぅ……」
花丸「……」ポンポン
花丸(ふふっ、善子ちゃん眠っちゃた……よっぽど疲れてたんだね……)
花丸(それに……)
花丸「……」チラッ
善子「すぅ……すぅ……」
花丸(善子ちゃんは寝顔も、やっぱり可愛いずら)
花丸「……」
ソーッ
サワッ
花丸(……ねえ、善子ちゃん)
花丸(もしも……もしもだよ)
花丸(ずっとこのままで、二人でこうしていられたのなら……)
ビュー…
花丸「……」
スーッ
花丸(……ルビィちゃんのことなんて、きれいさっぱり忘れて)
花丸(マルのことだけを、見ていてくれるようになってくれますか?) ———
……最低なことを、またしてしまった
また罪を重ねてしまった。あなたの弱さに付け込んで、親友の想いまで捻じ曲げて
ほんとうに、自分で自分が嫌になる。だって私は、誠実にはなれないから、純真にはなれないから
でも、でもせめて
たとえ努力で勝つことが出来なくても
善子ちゃんの心だけは、ずっと、マルの手元に……お願い……
……本当に堕ちてしまってのは、マルのほうだったのかもしれない
——— 善子「ん、んぅ〜……」
善子(あら、私、中庭で寝て……)
花丸「おはようずら、善子ちゃん」
善子「ず、ずら丸っ!?」ガバッ!
善子(思い出した!確かお昼食べた後眠すぎて、私……)
花丸「どうだった?マルの膝枕は?」
善子「……変なことしてないでしょうね」
花丸「ひどいずら!せっかく善子ちゃんを気持ち眠れるように色々頑張ってたのに!そんなこと言わないで欲しいずら!」
花丸「善子ちゃんのばかぁ……」ウルウル
善子「……」 善子(……そうよね。ずら丸だって友達だし、むやみに疑うのはだめよね)
善子(それに、ずっとずら丸の行動をここ最近は注視してたけど……あの時のことはもう反省してるみたいだし……)
善子(許してあげても、いいのかも……)
善子「……ごめんずら丸、悪気はないのよ」
花丸「……ほんとう?」
善子「ええ、本当よ」
花丸「……じゃあ善子ちゃん、これからはマルのこと、もっと信用してくれてもいいんだよ?」
花丸「善子ちゃんに……幼馴染に信用されてないってのは、すっごく寂しいずら……」ギュッ
善子(もとをたどればこいつの自業自得な気もしないでもないけれど……)
善子(でも、それでも……) 善子「……わかったわよ」
花丸「ほんとうずら!?」パァァッ
善子「ちょっ!ずら丸!近い!近いってば!!」
花丸「えへへ〜嬉しかったから、つい……」
キーンコーンカーンコーン!
善子「……ほら、ずら丸、教室戻るわよ?」
ギュッ
善子「ずら丸?」
花丸「あのね善子ちゃん……もう一つだけお願いしたいこと、あるんだ」 5月17日 沼津駅
花丸「善子ちゃん〜ごめんずら〜」
善子「全く!遅いわよ!どんだけ私のこと待たせるのよっ!」
花丸「そこは『別にいいわよ。ヨハネも今来たところだもの』って返すべきところだと思うずら」
善子「なんで私がわざわざそんな嘘つかなきゃいけないのよ……」
花丸「……」
花丸「まあそれより、善子ちゃん」
ギュッ
花丸「ほら、いこっ?」 善子「……」
花丸「沼津にお買い物なんて久しぶりずら〜今日はどんなものに出会えるのかなぁ〜」
善子「……」
善子(今日のずら丸のファッションは、白を基調としたワンピースに黄色がかったカーディガンを羽織って……春の暖かさと初夏の清涼さを両立させたバランスのとれたコーデ、って感じね……)
善子(あとは首元から覗くネックレスが大人らしさを演出してて……ってか、ずら丸っておしゃれとかに無頓着な印象って決めつけてたけど……)
善子(そんな格好されると、なんか意外というか、イメージ狂うわね……//)
花丸「善子ちゃん、マルのことじろじろ見て、どうしたの?」
善子「わああっ!?じろじろなんて見てないわよっ!!//た、ただちょっと気になっただけよ!!//」
花丸「気になったって、何が?」
善子「なんでもない!!//こっちの話だから!!//」 花丸「あっ!ここずら!」
善子「洋服屋……私服でも見にきたの?」
花丸「運動用の練習着を探しに来たずら」
善子「練習着?ウチの高校って学校指定の体育着があったはずだから必要ないんじゃ……」
花丸「違うずらよ、善子ちゃん」
花丸「実はマルもスクールアイドル部に入部することにしたんだ〜それで練習着が必要になったから善子ちゃんに見繕ってもらおうと思ったずら」
善子「スクールアイドル部……」
善子(たしかルビィがやってるっていう……)
善子「……ん、ねえ!ずら丸!部活でのルビィって
花丸「さあっ!突撃ずら〜♪」
善子「ちょっ!ずら丸!?私の質問に……」
善子(……ま、あとでゆっくり聞けばいっか) 花丸「う〜ん、迷うずら〜」
善子「たかが練習着でそんなに迷わなくたっていいじゃない」
花丸「たかが練習着じゃないずら!マルはアイドルにならなくちゃいけないんだから、こういうところから可愛くなれるように頑張らないといけないんだよっ!」
善子「へ、へぇ〜……大変なのね……」
花丸「それにマルのお家はお小遣い少ないから、あんまり贅沢はできないずら……」 花丸「ねえ善子ちゃん!こっちの白いのとさっきの黄緑のもの、どっちがマルに似合うと思うずら?」
善子「……別にどっちも似合うと思うわよ!」
花丸「そんな煮え切らない返事じゃ困るずら!」
善子「だったら自分で決めなさいよ……試着室も用意されてることだし……」
花丸「それじゃあ善子ちゃんがついてきた意味がないずら」
善子「いいわよ別に私のことなんて。ほら、さっさと着替えてきなさい」ドンッ!
花丸「よ、善子ちゃん!?」 シャーッ
善子「やっと決まっ……ってなんで試着したまま出てきたのよ」
花丸「……だって善子ちゃんに見て欲しかったんだもん//」
善子「はぁ?別に私がなんて言おうが気に入ったものにすればいいじゃない」
花丸「……ねえ善子ちゃん、もう一回聞くよ」
花丸「似合ってると思う?//」
善子「……」
善子「ええまあ、それなりには……//」
善子「……//」
善子「じゃ、じゃあずら丸!!わ、私外のベンチで少し休んでるから!!//」
花丸「あっ!善子ちゃん!」
花丸「もう……」
花丸「……ヘタレ堕天使」 ピッ
ガラン
プシュッ!
善子「ふぅ〜……」ゴクゴク
善子「……」
花丸『ねえ善子ちゃん、もう一回聞くよ……似合ってると思う?//』
善子「……//」
善子(な、何なのよずら丸のあの表情!!意味わかんないんだけどっ!!//)バクバク
善子(それになんであんなにボディラインが強調されてるのよ!スポーツウェアってものは!!考えたやつ出てきなさいよ!!//)
善子(だってずら丸って二か月前までは中学生だったなんて思えないほど……//)
善子「……//」カァァッ 善子(だ、だめよヨハネ!考え直しなさい!だってヨハネの想い人はこの地球上でただ一人で……)
善子(それにいくらずら丸が可愛くったって中身は嫌味ったらしくて口うるさいただの幼馴染で……)
善子「……」
善子「でもずら丸ってああ見えて意外と美少女なのよね……」
花丸「マルがどうかしたの?善子ちゃん」
善子「わあああっ!!?ず、ずら丸!!?いつからそこに……?」
花丸「ちょうど今さっき買い物済ませてきたところずら」
善子「そ、そうなのね、良かった……」
善子(さっきの独り言、聞かれてないわよね……?)
花丸「良かったって、何が?」
善子「なんでもない!こっちの話よ!」 花丸「それより大丈夫?善子ちゃん?気分悪くない?」
善子「確かに人込みに来たのは久々で少しくらっとしたけど……もう大丈夫よ、ちょっと休んだら元気になれたわ」
花丸「うん、良かったぁ〜」
善子(それから私たちはショッピングモールでの買い物を楽しんで……)
善子(私は誰かとこう買い物に行くのって新鮮で不安もあったけど、ずら丸が上手く私に合わせてくれて……)
善子(善子そろそろ日も傾きかけたかなって思った、そのころ……)
善子「プリクラ?」
花丸「そう!そのぷりくら?ってげーむマルずーっとやってみたいって思ってたずら!お願い善子ちゃん!マルと一緒にやって欲しいずら!」
善子「別にプリクラはゲームじゃないし、そこまで難易度は高くないと思うけど……」
善子(それに私だってプリクラを他人と撮ったことなんてないし……)
花丸「善子ちゃん!一生のお願いずら!」
善子「……」
善子「……今回だけなんだからね」 花丸「わぁ〜これがぷりくら……未来ずら〜!!」
善子「別にプリクラが登場したのなんてもう10年以上前のことだと思うわよ……」
アカルサヲエランデネ!
花丸「ずらっ!機械がしゃべったずら!!」
善子「別にそれくらい驚くことじゃないでしょ……」ピッピッ
ジャアトルヨ〜
花丸「取るって何をずら!マルの魂をとるつもりずら!?」
善子「写真に決まってるでしょ!!あんたプリクラの意味わからないわけ!?」
サン、ニ、…
花丸「わわわ、じゃあポーズを……」
花丸「えいっ!」ギュッ!
善子「わわっ!?ずら丸!?」
パシャッ! コレデオッケー?
善子「……ずら丸、聞かれてるわよ」
花丸「え?何をずら?」
善子「さっきの写真で大丈夫か、だって、ほら」
花丸「……これが、マル?なんだか別人に見えるずら」
善子「ま、機械が補正してくれてるものね。普段の写真より可愛くなっている……はずよ」
花丸「確かに、まるでお化粧をしてるみたいずら……」
花丸「でも……善子ちゃんはあんまり変わんないね」
善子「ま、私もともと肌白い方だから、加工してもあまり……」
善子「……」
善子(私、こんなにはしゃいでたっけ?)
善子(頬緩みまくりじゃない……もっとクールな感じをイメージしてたのに……)
善子(だって、ただずら丸と二人でプリクラ撮りに来たってだけで……)
善子(……きっとこれも、加工のせいよね) 花丸「善子ちゃん、これは何する機械ずら?」
善子「ラクガキよ」
花丸「落書き……?」
善子「そ。撮られた写真にラクガキして自由にデコレーション出来るのよ。例えば……」
ポチッ!
花丸「わわっ!?文字が出てきたずら!?」
善子「こうやれば文字も書けるってわけよ。他にも……」
花丸「未来ずら〜クラスの友達が言ってた通りずら〜!じゃあマルも……ずらっ!」
善子「ちょっ!やめなさいよ!この神聖なるヨハネの顔に落書きするのは!!」
花丸「えへへ〜」
善子「この!お返し、よっ!」
花丸「じゃあマルも!ずらっ!」
ワイワイワイ
………
… 帰り道 沼津駅
善子「今日は楽しかったわ、ありがとね、ずら丸」
花丸「……」ポカーン
善子「……どうしたのよ、鳩が豆鉄砲を食らったような顔しちゃって」
花丸「いや、善子ちゃんが素直にありがとうなんて言ってくれるなんて思ってなかったから……」
善子「どういう意味よっ!!私だって感謝の気持ちくらい言えるんだからね!!」
花丸「ご、ごめんずら……」
善子「全く……じゃ、私、こっちだから」
花丸「うん」
スタスタ
テクテク 善子「……なんでずら丸がついてくるのよ。バスあっちじゃない」
花丸「今日は善子ちゃんのお家にお泊りするからだよ」
善子「はぁ?そんな話私聞いて……」
花丸「それに善子ちゃんのお父さんとお母さん今日は帰れないみたいだから、おばさんに善子ちゃんのこと頼まれてるずら。はいこれ」
善子「……」ジーッ
善子(確かにママからのメールだわ……私に内緒で余計なことを……)
花丸「さ、帰るずらよ?お家に」
善子「……あんたの家じゃないでしょうが!!」 津島家 お風呂
チャポン…
善子「はぁ……疲れたぁ……」
善子「そうよね……今日一日大変だったものね……久々に長い時間外に出て……」
善子(……ってなんでこんなことになっちゃったのよ!まだずら丸が家にいるからくつろげないじゃない!!)
善子(べ、別に緊張してるわけじゃないんだからね!!ずら丸が家にいつのなんて私の不登校期間を考えれば自然なことで!だから意識する必要なんて全くないんだからね!ヨハネ!)バシャン!
花丸『善子ちゃん〜大丈夫ずら〜?』
善子(やばっ!?声漏れてた!?)
善子「だ、大丈夫よ!!」
花丸『そう、わかったずら、じゃあ!』
バタン
花丸「失礼させてもらうずら♪」 善子「す、ずら丸!?//」バチャン!
善子「ま、まだ私入ってるんだけどっ!!!?//」
花丸「でも善子ちゃんさっき大丈夫って……」
善子「そういう意味じゃないわよっ!バカ!!//」
花丸「でもせっかくのお泊りなんだから、やっぱり一緒にお風呂入りたいずら〜」ジャー
善子「ちょっ!?何それ!?意味わかんないんだけど!!//」
善子(ずら丸には恥じらいとかないわけ!!?//こいつの貞操観念どうなってるのよ……//)
善子(それにずら丸って発育だけは無駄に良好だから余計に意識しちゃうっていうか……//)
花丸「〜♪」ジャー キュッキュッ
花丸「ほら善子ちゃん♪詰めて詰めて♪」
善子「えっ!?ええっ!?」
チャポン
花丸「ふぅ〜……生き返るずら〜♪」
善子「……//」
花丸「〜♪」
善子「……」ジーッ
善子(やっぱりこいつ……)
フニッ
善子「……」
善子(私なんかとは……//)
善子(はぁ……ほんと不公平よね、神様って……) 善子「はぁ……」
花丸「善子ちゃん、ため息なんかついてどうしたの?」
善子「……あんたは恥ずかしくないわけ?自分の裸見られて」
花丸「……善子ちゃんはマルの裸見てるの?//」
善子「そ、そういう意味じゃないわよ!!//」
花丸「それにね、善子ちゃん」ギュッ
善子(ひゃっ!?//)
花丸「マルも誰でもいいってわけじゃ……ないんだよ?」
善子(ふぇっ!?ずら丸、胸、手に当たってるんだけど!!//) 善子「ちょっ!!ずら丸!?当たってるわよ!!//」
善子(柔らかい……//私のと全然違う……//)モミモミ
花丸「……とかいいながら揉むのやめて欲しいずら//」
善子「い、今のは!!不可抗力よっ!!//」ガバッ!
善子「……//」ドキドキ
善子(ず、ずら丸もやっぱり、女の子なのよね……//)
善子(やっぱり私……女の子が好きなの?//……その……性的対象、として……//)
善子「……//」
善子(今までは違うって思ってたけど……)
善子「……//」チラッ
善子(でもやっぱりこうして見ると、ずら丸もすごく魅力的に思えてきて……//)
善子「……//」ドキドキ ギュッ
善子「!!!?//」
花丸「ねえ善子ちゃん、そのままでいいから聞いて?」
花丸「あのね善子ちゃん……やっぱりマルは善子ちゃんのことが好き」
善子「ず、ずら丸……//」
花丸「だからね……♡」
チュッ
善子「んっ//……ずらまるぅ……//」
花丸「善子ちゃん……♡」
花丸「ベッド、いこ?♡」 善子「ず、ずら丸……//だめ……//だって私は……//」
チュッ
花丸「うん、言わないでいいよ、善子ちゃん。わかってるから」
善子「で、でも……//」
花丸「あのね善子ちゃん。善子ちゃんの好きな人が誰であろうと、マルは善子ちゃんが好き。これだけは変わらないずら」
善子「で、でも……//」
花丸「だからね……」
チュッ
善子「んんっ//………ぷはっ……じゅらまるぅ……♡」
花丸「うん、今は……今日だけは」
花丸「マルのことだけ、考えていて欲しいな?♡」
この日、私は初めてをずら丸に捧げた このマルちゃんには思い通りの展開にはなって欲しくないなぁ 5月18日
チュンチュン…
善子「……んっ、もう朝……?」
善子(えっと、今日は月曜日なはず……)
善子「起きなきゃ……」
善子「……ってずら丸!?」
善子(しかも素っ裸!?)
善子「うっ、さっむ」
善子「……」
善子(い、いったい何が起こったのよこの部屋で!?) 花丸『今は……今日だけは……マルのことだけ、考えてて欲しいな……』
善子「……」
善子(もしかして私取返しのつかないことをしちゃったんじゃ……)スーッ
善子「と、とにかく私も服着なきゃ……」ソーッ
ガシッ!
花丸「えへへ……善子ちゃん、おはよ♪」
善子「ず、ずら丸……」
花丸「もう行っちゃうの?もう少しだけここにいようよ」
善子「……そういうわけにもいかないのよ。だって今日学校あるじゃない」
花丸「そっか〜じゃあ起きなきゃだね〜……ねえ善子ちゃん、おはようのキス、して欲しいな?」
善子「……」 花丸『今は……今日だけは……マルのことだけ、考えてて欲しいな……』
善子「……」
善子(もしかして私取返しのつかないことをしちゃったんじゃ……)スーッ
善子「と、とにかく私も服着なきゃ……」ソーッ
ガシッ!
花丸「えへへ……善子ちゃん、おはよ♪」
善子「ず、ずら丸……」
花丸「もう行っちゃうの?もう少しだけここにいようよ」
善子「……そういうわけにもいかないのよ。だって今日学校あるじゃない」
花丸「そっか〜じゃあ起きなきゃだね〜……ねえ善子ちゃん、おはようのキス、して欲しいな?」
善子「……」 ペチッ
花丸「いたっ」
善子「ほら、目覚めたでしょ?バカなことやってないで準備するわよ」
花丸「うぅ〜」
善子「ねえ、ずら丸は家帰んなくていいの?制服とか教科書とか…」
花丸「大丈夫ずら。善子ちゃんのお家にお泊りするって決めたときから、ほら、学校の用意は全部持ってきてるずら!」
善子「はぁ……用意周到ね……」
善子「……」
善子(じゃあずら丸は最初からこうなることを見越して……)
善子「……」
善子(全く、頭の痛い話だわ……)
善子「はぁ……」
善子(……学校、行きたくないな) 花丸「どうしたの善子ちゃん、ため息なんかついちゃって、もしかして悩みごと?マルでよければ相談にのるずら」
善子(……誰のせいだと思ってんのよ)
善子「別に、なんでもないわよ」
花丸「うん、でもね善子ちゃん、ため息をついてると幸せが逃げていくんだよ?」
花丸「だから笑顔♪笑顔♪」ニコッ
善子「……」
善子(ほんとに学校、行きたくないのに……) 浦の星 校門
花丸「〜♪」
善子「朝からごきげんね、あんたは」
花丸「うん♪」
善子(私の心の中はこんなにもブルーだってのに……)
ルビィ「あっ!花丸ちゃん、それと……」
善子「……おはよ、ルビィ」
ルビィ「う、うん……おはよう……善子ちゃん……」
花丸「おはようずら、ルビィちゃん♪」
ルビィ「……でも珍しいね、善子ちゃんがこんなに早く登校してるなんて、普段は遅刻ギリギリなのに」
善子「そ、それは……」 花丸「善子ちゃん昨日はマルと一緒にお泊りだったから、叩き起こしてきたずら〜」
善子「ちょっ!?ずら丸!?」
ルビィ「……ふーん」
善子「……」
ルビィ「……」
善子(き、気まずい……) 千歌「あっ!花丸ちゃんとルビィちゃん!おっはよー!!」
曜「おはヨーソロー!花丸ちゃん!ルビィちゃん!それと……」
千歌「津島善子ちゃん!」
善子「えっ!?」
千歌「ねえねえ、お名前、津島善子ちゃんでしょ?」
善子「え、ええ……」
善子(なんで私の名前知ってんのよ!?ってかそもそもこいつ一体何者!?)
千歌「あ!やっぱり?部活でルビィちゃんがいっつも話してる人にそっくりだなぁって思ったんだ〜噂通りの美少女さんだし〜」
善子(ってことはルビィの部活の先輩ってところね、タイの色赤いし……)
善子(それとルビィいつも部活で私の話してるんだ……どんな話してるか気になる……) 善子「あ、あの!」
千歌「すんすん……すんすん……」
曜「ん?千歌ちゃん、どうしたの?」
千歌「……善子ちゃんから花丸ちゃんの匂いがする」
善子「!!!?///」
善子(う、嘘!?今朝ちゃんとシャワー浴びたのに!!)
花丸「……//」
花丸「実は昨日善子ちゃんのお家にお泊りだったずら……//それで……//」
千歌「いいな〜お泊り!私も小さいころは曜ちゃんのお家によく遊びに行ってたな〜ね!曜ちゃん?」
曜「う、うん……//」 千歌「あっ!それで二人でじゃれ合ってたんだね!おうちで!」
善子「……?」
千歌「だってほら、花丸ちゃんの首筋……傷みたいなのついてるよ?怪我しちゃったんじゃない?」
善子「!!!?//」
善子(キ、キスマーク……!?//もう!なんてことしてくれたのよ!!//昨日の私!!//)
花丸「……もう、善子ちゃんのえっち//」
善子「ちゃうわい!!//」 曜「……//」
千歌「ねえ花丸ちゃん……もがっ!!?ひ、ひほひゃん!?」
梨子「ごめんね花丸ちゃん、千歌ちゃんが邪魔しちゃって……ほら千歌ちゃん、余計な事言ってないで行くわよ?」
千歌「ひほひゃん!!くるしい!!はなして!!」
梨子「それと……曜ちゃんもそんなところで赤面してないで、ほら、教室行くよ?」
曜「……//」ビクッ!
曜「りょ、りょ、了解であります!!」テクテク
梨子「……そっちは逆の方向よ、曜ちゃん」
曜「ふえっ!?//し、知ってるでありますよ!!梨子ちゃん!!//」
梨子「はぁ……ほらルビィちゃんも、邪魔しちゃ悪いわよ?」
ルビィ「え、あ、うん……」ヒョコヒョコ
梨子「じゃあ花丸ちゃん、お幸せにね?」
花丸「梨子さん、ありがとずら〜」
善子「……」 教室
ガラガラッ!
善子「あっ、ルビィ……部活の用事はもう終わったの?」
ルビィ「……」
善子「……」
ルビィ「……」
善子「……ねえルビィ聞いて!あのね!」
先生「ホームルーム始めるぞー!席つけー!」
ルビィ「……だって」
善子「え、ええ……」
善子「……」
ルビィ「……」 >>90
>>154
皆を不快にさせてまでわざわざ言いたいことなのか? 善子(結局お昼にもルビィに言い訳……じゃなくて弁明……でもなくて、説明できないままで……)
善子(ほんと、意気地なしよね、ヨハネって……)
善子(でも、放課後にはちゃんと目を見て謝らないと……)
善子(だって私、いくら本気ではないとはいえ、あんあことしちゃって……)
善子(この機を逃したら、本当に人間には戻れなくなってしまいそうで……)
キーンコーンカーンコーン!
ルビィ「……」ガタッ!
善子「ねえルビィ!あのね」
ルビィ「……」スタッ
ガラガラッ! ルビィ「……」スタスタ
善子「ルビィ!待ってよ!話があるの!」
ルビィ「……」ピタッ
善子「あのね、昨日のことなんだけど……」
ルビィ「……梨子さんから聞いた」
善子「そ、そう……って違うのよ!あれは……」
ルビィ「さいってー」
善子「!!!?」グサッ! ルビィ「津島さん、まだルビィで遊ぼうとするんだね」
善子(つ、津島さん!?)
ルビィ「花丸ちゃんにも確認した。間違ってないって」
善子「そ、それは……」
ルビィ「……ずっと初めてできた大切な人だって、信じてたのに」
クルッ
ルビィ「最低だよ、津島さんは」
善子「ル、ルビィ……」
ルビィ「……さよなら」
善子「あっ!ちょっ!待ってよ!」
パチン!!
善子「……え?」
善子(ひ、平手打ち……)
ルビィ「……それだけ」スタスタ
善子「……」
善子「ルビィ……」 ———
……初めて他人をたたいてしまった
今まで花丸ちゃんともケンカしたことないし、お姉ちゃんとだってしたことはない
だから自分が、すごく不思議だ。自分のことが怖いとも思えてくる
あなたと話すとわからないことだらけ。ドキドキも、ポロポロも、ウルウルも、ズキズキも
でも、たった一つわかったことは
……たたいた方も、すっごく痛いってことだけ
——— 中庭
善子「はぁ……」
善子「……」
ルビィ『最低だよ、津島さんは』
善子「……」
善子(そう、なのかもしれない。自分の行いが、何よりそれを証明しているわ)
善子「……」
善子「でも……」
善子「何も殴らなくてもいいじゃない……」
善子(……)
善子(だって殴られると……こんなにも痛いのよ……)ポロポロ
善子「……」
善子「ルビィ……」 花丸「あっ、善子ちゃん、やっぱりここにいたんだ」
善子「……ずら丸」
花丸「善子ちゃん、ルビィちゃんとケンカになっちゃったんでしょ?」
善子「……ずら丸には関係ないでしょ」
花丸「あるよ、だって……」
花丸「悪いのはおらの方なんだもん」
善子「……」
花丸「だからね、善子ちゃん。マルに全部怒りをぶつけてもいいんだよ?」
花丸「善子ちゃんの悲しみも、怒りも。ルビィちゃんに嫌われちゃったことも、全部」
善子「……」
善子(そうだ、私、ルビィに嫌われちゃったのよね……)
花丸「ほら、マルのことめちゃくちゃにしてもいいんだよ?」
花丸「マルが全部、受け止めてあげるずら」
善子「……」
善子「ずら、丸……」
善子「ごめん、ずら丸」 花丸「善子ちゃん……?」
善子「私、行かなくちゃいけないところあるから」
花丸「……ルビィちゃんのところ?」
善子「……」コクッ
花丸「……マルのこと、見捨てるつもりなの?あんなことしておいて」
善子「……」
花丸「ひどい……やっぱり善子ちゃんは最低だよ!」
花丸「マルのことめちゃくちゃにしておいて!まだルビィちゃんにすがろうとして!本当に最低!善子ちゃんは!信じられないずら!」
善子「……」 花丸「善子ちゃんのバカ!人でなし!マルの気持ちも、もっとちゃんと考えて欲しいずら!!」
善子「……」
花丸「はぁ……はぁ……」
花丸「……」
花丸「……ねえ善子ちゃん、おらのこと、嫌いなの?」ダキッ
善子「……」
花丸「マルのどこが嫌いなの……?マル、善子ちゃんに好きになってもらうためには、何でもするよ……?」 花丸「……ねえ、善子ちゃん……?答えてよ!」
花丸「善子ちゃんの……善子ちゃんの……」ウルウル
善子「……ごめんずら丸。私行かなきゃだから」スッ
花丸「やっぱり善子ちゃんは、最低ずら……」ポロポロ
善子「……」
善子「そう、かもね」
善子「だって私、堕天使だもの」 花丸「……」
善子「……もう行くわね、私」ダッ
花丸「あっ!善子ちゃん!待ってよ!」
花丸「……」
花丸「善子ちゃん……どうして……」
花丸「マルのどこがいけないの……?善子ちゃんのためなら、マルは、マルは……」
花丸「……」
花丸「……やっぱり善子ちゃんは最低だよ」 ———
はぁ……はぁ……
花丸『……やっぱり善子ちゃんは最低だよ!』
ルビィ『最低だよ、津島さんは』
くっ……
……やっぱり私は最低だと思う
強いルビィに憧れて、弱い自分が嫌になって、自分を変えてみたいって思った。変わりたいって強く思った
だけど結果は散々で……大切な人を傷つけて……挙句の果てに逃げ出した……
行かなきゃいけない場所なんてわかんないし、何が出来るかさえも曖昧なまま、それでも足は動いていて
……本当に、自分の弱さが嫌になる
でも、でもせめて……
あなたの前だけでは、美しくあろうとするこのエゴを……
……それすらも傲慢だねと、あなたは鼻で笑うのかしら?
——— スクールアイドル部 部室
ガラガラッ!
善子「あのっ!」
千歌「あれ?津島善子ちゃん!どうしたの?もしかしてスクールアイドルに……!」
善子「はぁ……はぁ……」
善子「ルビィいますか?」
曜「え?ルビィちゃんなら今日は練習お休みするってさっき連絡あって……」
善子「ありがとうございます!」
ピシャッ!
千歌「……なんだったんだろ?」
曜「さ、さあ……?」
梨子「……」 黒澤家
善子「帰ったってことは、ここにいるのよね……」
善子「……」ゴクリ
ピンポーン!
善子「……」ドキドキ
ガチャッ
ダイヤ「……はい?」
善子「あのっ!私ルビィさんと同じクラスの!津島善子って言います!」
ダイヤ「津島、善子……」 善子「そ、それで!ルビィさんにすこし用事……というか話したい事があって!」
ダイヤ「すみませんがそれは出来ませんわ。今日は帰って下さい」
善子「そ、そんな……どうして……」
ダイヤ「……」ブチッ!
ダイヤ「そんなことの言える立場ですの!!?自身の立場を弁えてから発言して下さい!!」
善子「た、立場……」
ダイヤ「だいたい!あなたの悪い噂、悪行は生徒会長である私の耳にまで届いているのですわ!!そんなことも想像できないのですか?あなたは!!」
善子「あ、悪行って……」 ダイヤ「ルビィに恋心を伝えておき、数々の手段でたぶらかせておきながら他の女性と一夜を過ごし恋仲になる。これのどこが悪行でないと言えるのですか!不誠実極まりないですわ!!」
善子「いや恋仲にはなってないし……ずら丸とは遊びだったっていうか……」
ダイヤ「……」ブチブチッ!!
ダイヤ「……本気で言ってますの?」
ガシッ!!
ダイヤ「本気で言っているのかと!聞いているのです!!」
善子「ちょっ、ちょっと!何よ急に!放しなさいよ!!」
ダイヤ「ルビィがどれほど苦しんでしるかあなたにはわからないんですか!!あの子がどれだけ苦しんでいるか!!」
ダイヤ「あなたは!妹の心を!幸せを!未来を!奪ってしまったのですよ!!」 善子「……」
ダイヤ「……」
ダイヤ「……少し熱くなり過ぎましたわ」
ファサッ!
善子「うっ……」ドサッ!!
ダイヤ「……それにもし仮に万が一あなたがルビィを心から愛していたとしても……それがなんというのでしょうか?あなたがルビィの心を深く傷つけてしまったという事実は、未来永劫消えないのですから」
善子「そ、そうかもだけど……」
ダイヤ「……」
ダイヤ「……では最後に現実を教えて差し上げましょうか」
善子「……?」
ダイヤ「ルビィは二度とあなたの顔を見たくないと言っている。これが全てですわ」 善子「……」
ダイヤ「わかったならさっさと去りなさい。そして二度とルビィに近寄らないでください」
ダイヤ「……本来ならば私に刺殺されても文句は言えませんのよ?それくらい私のはらわたは煮えくり返っているのです。命あるうちにお引き取り下さい」
善子「ま、待って!」
ダイヤ「……まだ説明が足りないというのですか」
善子「ち、違うの!あのね!……」
善子「ルビィに、ごめんなさいって伝えて欲しいの……最後に……お願い……本当に反省してるから……」
ダイヤ「……」
ダイヤ「……考えておきますわ」 夜 津島家
善子「……」
花丸『……やっぱり善子ちゃんは最低ずら!』
ダイヤ『ルビィは二度とあなたの顔を見たくないと言っている。これが全てですわ』
善子「……」
ルビィ『最低だよ、津島さんは』
善子「……」ポロポロ
サイテー…サイテー…
善子「うっさい!うっさいうっさい!!」ドンッ!
善子「あんたたちに私の何がわかるっていうのよ!!」
善子「私のことなんてわからないくせに!偉そうなこと言わないでよ!」
善子「この気持ちなんてわからないくせに!わかったような口きかないでよ!!」
善子「私だって……私だって……!!!」ドンッ!! 善子「はぁ……はぁ……」
善子「……うっ……ひぐっ……」
善子「いったい私が、なにしたっていうのよ……」
善子「……」
善子「どうして誰も私のこと、わかってくれないの……?」
善子「私の弱さに、寄り添ってくれないの……?」
善子「どうして……どうして……」
………
…
善子「……」
善子「……そうよ。全部私が悪いんだわ」 善子(すべてはあの時外の世界へと羽ばたいてしまったこと、これが原因なの)
善子「だってずっとこの部屋の中にいれば、二度と傷つくことはないってことに、気づいてたのに……」
善子(彼女の魅せる甘い蜜に誘われてしまったばかりに……)
善子(私の心の甘さを、弱さを見せてしまったばかりに……)
善子「……」
善子「……やっぱりヨハネには世間は似合わないのね」
善子「そう、ヨハネにはここがお似合いなの。薄暗いこの部屋がね」
善子「そう、なのよ、ほんとに……」ポロポロ
善子「……ぐすっ」
善子(……)
善子(神様……)
善子(嘘と妄言と偽悪の溢れたこの世界で……)
善子(甘い夢物語だけを味わいたいっていうのは、私のワガママなのでしょうか……?) ———
私、津島善子は不登校だ
友達……大切な人との関係が気まずくなって以来、一度も学校には行けていない
自業自得、よね。本当は元不登校だったんだけど……道を踏み外したばかりに逆戻りだわ
………
… ……外に出れば何かが変わると夢想していた
あなたならきっと刺激的な夢を見せてくれるってどこか期待していた
でもリアルこそが真実で、痛みをいとわず歩くことを強いられる
信じたものは幻影で、都合のいいただの蜃気楼
何も寂しさを紛らわせない、誰も穴を埋めてはくれない
だって私は、孤独なのだから。これが受けるべき報いなのだから
……堕天使には空は、まぶしすぎた
——— 5月25日
善子「……」ポチポチ
善子「……」
ピンポーン!
善子「……」
ピンポーン!
善子「……全く、うるさいわね」
ピンポーン!
善子「はぁ……」スタッ
善子(宅配だか誰だか知らないけど、何もこんな土砂降りの日にまで働かなくてもいいじゃない……バカじゃないの……)イラッ ピンポーン!
善子「はい!今開けますよ!」
ガチャッ
ルビィ「……」
善子「え!?ルビィ!?」
ルビィ「……」
善子「ど、どうして……」
ルビィ「……」
ルビィ「……入れてよ。寒いんだけど」
善子「え、あ、うん……」 ルビィ「……」
善子「……」
ルビィ「……」
善子「……ね、ねえ、学校どうしたのよ?今日平日じゃ」
ルビィ「善子ちゃんだって学校行ってないじゃん」
善子「そ、それは、そうだけど、私の場合は行ってないのがデフォルトっていうか……」
ルビィ「……」
善子「そ、そうよね……ごめんなさい……」 ルビィ「……」
善子「……」
善子(え、えっと……どこから聞いたらいいんだろ……)
善子(なんでルビィは家に来たの、とか……学校はどんな感じなのか、とか……)
善子「……」
善子(……私のことをどう思ってるのか、とか)
善子「……」
ルビィ「……」
善子「……」
善子(……違う、そういうことじゃないのよ、きっと) 善子(だってこれが、最後なのかもしれない。神様が用意してくれた最後の弁解なのかもしれない)
善子(……別に許されなくてもいい。部屋から出られなくても構わない。だってこれは私の償いで、私なり覚悟だもの)
善子(だって……たとえ私は堕ちてしまったとしても……)
ダイヤ『あなたがルビィの心を深く傷つけてしまったという事実は、未来永劫消えないのですから』
善子(せめて、せめてあなただけは……)
善子(……壊してしまったあなたの強さだけは、元通りにしなきゃいけないのかもしれないのよ)
善子(それが私の決意だから、決別だから)
善子「……あ、あのね!ルビィ!」 ルビィ「……」
善子「あの……その……」
ルビィ「……」
善子「え、えっと……」
善子(上手く言葉が出てこない。伝えたいことは山ほどあるのに……)
善子(言葉で固めてしまったら、多分この想いも嘘になってしまうというのに……)
善子(で、でも、それでも……)
善子(私は……私とルビィは……)
善子「あ、あのね!!」
ルビィ「……うん」
善子「ご、ごめんなさい!!」 ルビィ「……」
善子「その……ルビィに告白しておきながら、ずら丸との関係を持ってしまって……ほんとうにごめんなさい!」
ルビィ「……」
善子「本当に最低なことをしたってことはわかってるし、自覚もあるし、全部水に流せなんてことは言えないけど……」
ルビィ「……」
善子「それでも、本当に……ごめんなさい」
善子「本当の、本当に、ごめんなさい……」
ルビィ「……」
ルビィ「……うん、善子ちゃんが反省してるってことは、お姉ちゃんからも聞いた」
善子「そ、そう……」
ルビィ「……あのね、善子ちゃん」
ルビィ「ルビィの方こそごめんなさい」ペコリ 善子「……え?」
ルビィ「あのね善子ちゃん。実は善子ちゃんが風邪で休んだ日、花丸ちゃんに言われたんだ。善子ちゃんとあんまり仲良くしないでって」
善子「……」
ルビィ「ルビィ、花丸ちゃんも友達だからお願い聞いてあげようと思ってたんだけど……でも善子ちゃんとお話できないのもなんだか寂しくて……どうしたらいいかわかんなくて……」
善子「……」
ルビィ「それでね、善子ちゃんのこと、無視しちゃったの」
善子「なんだ、そんなこと……」
ルビィ「ううん、そんなことじゃないよ。だってルビィ悲しかったもん」
ルビィ「だからごめんなさい、善子ちゃん」 善子「……」
善子「ル、ルビィ……」
善子「ううっ……るびぃ……」ポロッ
ルビィ「……なあに、善子ちゃん?」
善子「ぐすっ……ぐすっ……」
善子「ごめんあさい……ごめんなさい……」
あなたと違って弱い私には、ただ涙をながすことしか許されていない ルビィ「あとね、善子ちゃん、もう一つ言いたいことあるんだ」
善子「……?」
ルビィ「……やっぱりね、ルビィも好きなの……善子ちゃんのこと」
善子「……!!」
ルビィ「ルビィもね、もっと善子ちゃんのそばにいたいって思ってるんだ」
ルビィ「ねえ、善子ちゃんもおんなじこと考えてくれてる……のかな?」
善子「!!?」
善子(も、もしかしてこれ、両想いってこと?じゃ、じゃあ……) 善子「……もちろんよ。だって私の好きな人は、今も昔もルビィだけだもの」
善子「だ、だから私たち付き
ルビィ「できるわけないじゃん、そんなこと」
善子「え、ええっ!?」
ルビィ「善子ちゃん、自分がしたこと、本当に反省出来てるの?」
善子「……」
善子「……ご、ごめんなさい」
ルビィ「うん、だからね……」ギュッ
善子「ル、ルビィ……」
ルビィ「もう一回お友達からスタートして、善子ちゃんのことを少しずつ許していって……ルビィが善子ちゃんのこと許してあげてもいいなぁって思えるようになったら……」
ルビィ「ルビィのこと、善子ちゃんの恋人にしてください」
善子「……」
善子「……こちらこそ、よろしくお願いします、ルビィ」
ルビィ「うん、じゃあ善子ちゃん」
ルビィ「指切り、しよ?」 善子「……」
善子(これで、終わり、なのよね……)
善子(いや、むしろ始まり、なのかな……)
善子「ふぅ……やっと……」
フニッ
善子「ちょっ!?//ルビィ!?//」
ルビィ「えへへ〜♪」
善子「……何のつもりよ」
ルビィ「え〜善子ちゃん難しそうな顔してたから〜励ましてあげよって思って〜つい〜♪」フニフニ
善子「く、くすぐったいわよ!//やめてよね!」
ルビィ「やめなーい♪」
善子「なら……」コチョコチョ
ルビィ「ぴぎっ!?くすぐったいよぉ〜」
善子「お返しよ!ほら!」 ルビィ「ひっ!くすぐったい!」ケラケラ
善子「あっ!待ちなさい!ルビィ!ヨハネの堕天使奥義!食らいなさい!」
ボサッ!
ルビィ「善子ちゃん♪」
善子「ルビィ……」
ルビィ「あのね、やっぱり善子ちゃんと一緒だと……楽しい♪」
善子「ええ、私もよ」
ルビィ「えへっ♪」
善子「ふふっ♪」
善子(……やっぱりルビィの強さには、救われてばかりだわ) ルビィ「ねえ、善子ちゃん?」
善子「……?」
ルビィ「あのね、少し……目、つぶってて欲しいの」
善子「え、ええ……」
善子(……って言ってもうっすらと開けてしまうのは、きっと人間の性よね)
善子「……」ソーッ
ルビィ「……」スーッ
善子「……!!?」
善子(ま、まさかこれ、キスの流れじゃ……//)
善子(ル、ルビィとキス……//夢にまで見た……//)
チュッ
善子「……って、ええっ!?」 善子「ちょっと!!ルビィ!!今のは口にする流れでしょ!!どう考えても!!」
ルビィ「……やっぱり善子ちゃん、目開けてたんだ」
善子「ち、ちがっ!今のは言葉の綾というか……」
ルビィ「反省の足りない善子ちゃんには、そんなものあげません♪」
善子「え〜!!ルビィ〜!!」
ルビィ「今はおあずけ、だよ?善子ちゃん」ギュッ
ルビィ(ルビィの”好き”は、いつかきっとちゃんとあげるからね)
ルビィ「……それまでいい子にしててね、善子ちゃん?」 5月27日
ガラガラッ
ルビィ「おはよ、花丸ちゃん」
花丸「ルビィちゃん……おはようずら……」
ルビィ「……」
花丸「……」
ルビィ「……あのね花丸ちゃん、花丸ちゃんにお話があるの……善子ちゃんのこと」
花丸「……?何ずら?ルビィちゃん」
ルビィ「あのね……」
ルビィ「……実はね、ルビィも好きなの、善子ちゃんのこと」 花丸「……」
花丸「で、でも!あの日ルビィちゃん言ってくれたよね?マルのこと応援してくれるって」
ルビィ「うん……でもね、やっぱりルビィも善子ちゃんのことが好き。もちろん花丸ちゃんのことも」
花丸「……」
ルビィ「だからね!ルビィ負けないよ!花丸ちゃんに!」
花丸「……?ルビィちゃん?」
ルビィ「もちろんルビィは花丸ちゃんのことも応援してる!だって花丸ちゃんも友達だもん!」
ルビィ「でもルビィも頑張る!だからルビィ負けないよ!花丸ちゃん!」
花丸「ルビィ、ちゃん……」
花丸「……いいの?」 ルビィ「……?どういうこと、花丸ちゃん?」
花丸「……」
花丸「ねえルビィちゃん……ルビィちゃんはやっぱり優しいんだね」
花丸「……でもねルビィちゃん、その優しさはいつか弱さに変わってって」
花丸「いつか自分に、還ってくるかもしれないんだよ……?」
ルビィ「……?」
花丸「マルはルビィちゃんにも、それから善子ちゃんにもひどいことをして……二人の気持ちを自分勝手に捻じ曲げて……」
花丸「それでも……おらのこと、許してくれるの?」
ルビィ「……うん!」
ルビィ「だって花丸ちゃんは一番の友達で、ずっとずっとルビィのライバルだもん!」 花丸「……?」
ルビィ「あのね花丸ちゃん。ルビィね、全部叶えたいの。スクールアイドルの夢も、花丸ちゃんも……それから善子ちゃんも。ちょっと欲張りかもだけど……」
花丸「……」
ルビィ「だからルビィね、負けないんだ!スクールアイドルも!善子ちゃんのことも!全部だよ!」
ルビィ「いつかきっと花丸ちゃんに追い付いて見せるから……!善子ちゃんに振り向いてもらうから……!」
花丸「ルビィ、ちゃん……」
ルビィ「だから……!」
ルビィ「覚悟しておいてね!花丸ちゃん!」 ガラガラッ
善子「……おはよ、ルビィ、ずら丸」
ルビィ「うん!おはよ!善子ちゃん」
花丸「……おはようずら、善子ちゃん」
善子「……」
善子「……ねえ、ずら丸、ルビィ」
花丸「……何ずら?」
善子「その……」
善子「……これからもよろしく頼むわね」
花丸「……」
花丸「……わかったずら」
ルビィ「うん!もちろんだよ!善子ちゃん!」
善子「……それだけよ」スタスタ 善子「……」スタッ
ビューッ…
善子(風、けっこう気持ちいいかも……)
善子「……」ボーッ
サワ…サワ…
善子「……」
善子「……空、青いわね」
善子「……って当たり前か」
ヒュォォー…
善子「……」
善子(殻に閉じこもっていた春も終わりを告げ、季節がまた一つ進んでいく)
善子(時を巻き戻すことなんてできないし、やり直せたところで意味があるのかなんて想像のしようもない)
善子(苦さと酸っぱさとほんの少しの甘さを味わい、弱さも幼さも受け入れて前に進んだこの春の先に、きっと—
善子(私たちの、私たちだけの、夏が来る—
———
— 終わりです。お粗末様でした
ここまでお読みいただき誠にありがとうございました 乙
花丸は汚い手段に出た時点で負けルート濃厚なのは仕方ないね
善子の処女を奪えただけでもありがたく思うべきかと ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています