栞子「友達ごっこ」
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かすみ「球技大会?」
あなた「うん。虹ヶ咲は毎年このくらいの時期にあるんだけど……そっか、かすみちゃんは一年生だから、初めてのことだもんね。知らなくても仕方ないよ」
璃奈「中等部の時に聞いたことある。この学校の球技大会は凄まじいみたい。璃奈ちゃんボード『ムシャブルイ』」
しずく「凄まじい……わ、わたし、その……球技は少し苦手なので……心配です……」
果林「危険ってほどじゃないわよ。ただみんなちょっと熱くなり過ぎちゃうっていうか……」
あなた「そうだねー、なんせ、クラスの名誉がかかってるもんねー」
かすみ「め、名誉!?いったい何を争ってるんですか!?」
果林「ほら、ウチってスポーツ推薦の子たちもクラスに数人いるじゃない?その子たちにとっては、数少ない、目立つチャンスだから……」
果林「わ、わたしも、テストの順位とかじゃ目立てないから、その、球技大会には期待してるっていうか……」ボソボソ
エマ「うん、果林ちゃん!テストの順位は悪くても、きっとスポーツなら大丈夫だよ!頑張ってクラスのみんなを、ぎゃふんと言わせちゃおうね!」
果林「エ、エマ!?//わざわざ大声で言いふらさないでもいいじゃない!//」
かすみ「それに、ぎゃふんなんて言葉、今時誰も使ってませんよ、エマ先輩……」
果林「と、とにかく!球技大会はそれだけみんな本気で取り組んでるってことよ!しずくちゃんも、足引っ張らないように、少し練習しておいた方がいいわよ?」
しずく「は、はい!頑張ります!」
璃奈「私も頑張ってみる。璃奈ちゃんボード『ゲンキゼンカイDDD』」 かすみ「それで、先輩。なんでいきなり球技大会の話をしたんですか?」
あなた「あっ、そうそう。なんかね、球技大会のお手伝いを毎年各部活が分担してやっているらしいんだけど、どうやら今年は私たちの同好会にも手伝って欲しいらしくて……栞子ちゃんから、招集の通知が届いたんだけど……」
せつ菜「そうだったんですね!でも、少し珍しくありませんか?普段ならこういう活動は、強豪の運動部がメインで行うのが慣例のはずですが……我々のような弱小の同好会にまで声がかかるなんて……」
かすみ「せつ菜先輩!弱小って言わないで下さい!かすみんちょっとは気にしてるんですから!」
せつ菜「す、すみません!!!」
せつ菜「ですがこれは、逆にいうと!チャンスってことでもありますよ!」
あなた「チャンス?」
せつ菜「はい!私たちにまで招集通知が届くってことは、生徒会はそれだけ切羽詰まってるってことですよ!!!」
せつ菜「もしこの状況を私たちの力で打開できれば!同好会が生徒会からの厚い信頼を勝ち取ることに繋がるだけでなく!スクールアイドルの学内での知名度向上に役立つこと間違いなしです!!
せつ菜「まさに!!!ピンチこそ最大のチャンス!!!ってことですよ!!!」グッ
かすみ「せつ菜先輩……」
かすみ「はい!球技大会を無事に開催させることが出来れば、私たちの同好会の立場も保障されること間違いなしです!もうこれでワンダーフォーゲル部なんて敵じゃありません!」ガシッ
しずく「かすみさん、まだあのこと根に持ってるんだ……」
歩夢「う、うーん、そんなにうまくいくのかなぁ……」
かすみ「先輩!これはチャンスですよ!ダメダメなしお子を私たちが助けてあげましょうよ!」
あなた「そ、そのつもりではいるけど……」 果林「手伝いって言っても、具体的には何をすることになるのかしら?」
あなた「栞子さんの話によれば、前日の会場設営と当日も進行のサポートが、メインになるみたいだよ」
璃奈「設営はライブで慣れてるから大丈夫。璃奈ちゃんボード『プロフェッショナル』」
愛「おっ、みんなやる気だね!みんなで球技大会、素敵なものにしたいかい?愛さんはめっちゃしたい!なんちゃって!」
しずく「自分の質問に自分で答えるのは、ダジャレとしてどうかと思いますが……」
あなた「うん、じゃあ決まりだね。早速なんだけど、明日の放課後、二回目の実行委員会の会議があって、スクールアイドル同好会からもだれか代表で出て欲しいんだけど……」
………
… >>1
またスレ放置か?
他の書く暇あったら、はよしおせつと安価しおりん書けやー 翌日
歩夢「ほんとに私たちが代表で、いいのかなぁ……?」
菜々「大丈夫ですよ歩夢さん。部長は生徒会側の補佐を任されていますし、私も去年生徒会長として運営の一端を担ってきましたので、勝手は理解しているつもりです。それに栞子さんはたいへん優秀ですし!ここは大船に乗った気持ちで、ドーン!と任されていて下さい!!」
歩夢「う、うん……ありがと、せつ菜ちゃん……」
歩夢(で、でも、なんだか嫌な予感がするというか……)
歩夢(あの子が隣にいてくれないと不安っていうか……)
歩夢(そ、それに、前にも同じようなことがあったから、今回も同じ結末を繰り返すんじゃないかって……)
せつ菜「さあ!行きますよ!!歩夢さん!!!」
歩夢「う、うん……」
歩夢(な、なんか、デジャブだよ……) ガラガラッ
歩夢「し、失礼します……スクールアイドル同好会代表の、上原歩夢です……」
栞子「……やっと来ましたか。もう既に他の部活の代表の方々はいらしているので、早く席について下さい」
歩夢「す、すみません……」
栞子「では、人数がそろったところで、第二回総合球技振興大会実行委員会を、始めたいと思います」
歩夢「よ、よろしくお願いします……」
歩夢(……あれ、球技大会の実行委員会じゃなかったっけ?もしかして私、部屋間違えちゃったのかな?)
菜々「すみません。確か球技大会の実行委員会と伺っていたのですが……」
バスケ部長「ちょっとちょっと!ウチらまだ名前の変更に賛成してないんだけど!勝手に名前、変えんなし!」 栞子「いえ、正式決定ではありません。名称の変更が第二回の実行委員会での重要議題となることは、以前確認したと思いますが」
バスケ部長「だから勝手に決めるなっつーの!」
栞子「そうですね。初めて参加する方もいらっしゃいますので、まずは前回の決定事項から、振り返っていきましょうか……」
栞子「前回の議事録については、既にお手元に配布した資料の通りです。資料の2ページをご覧ください」
ペラッ
歩夢「……」
歩夢「『前回の実行委員会では、各部活の理念を確認しつつ、活発な議論を行い、互いに尊重し合い大会を成功に導いてく方針で合意することができた。大会名称等細かい事項については、今後の実行委員会で議論することとする』」
歩夢「な、なるほど……」 歩夢(って、これ、いったいどういうこと?私、ちっとも、わかんないよ……)
菜々「……つまり、何一つ決まっていない、ということですね?」
歩夢(あっ、やっぱり、そうなんだ……)
栞子「……」
栞子「中川さん。私語は慎んでください。発言時には、挙手をするようにお願いしてますので」
菜々「す、すみません!!」
栞子「議事録にも記載しましたが、調整すべき細かい議案については、今回の実行委員会で詰めていきましょう。活発な議論となるよう、よろしくお願いいたします」 栞子「まずは大会の名称変更についてですが……」
バスケ部長「はい!はい!はーい!」
バスケ部長「どうして名前にそこまでこだわるわけ?別に今まで通り球技大会っていう名前でやったってなんの問題もないじゃん!」
栞子「……」
栞子「前回の実行委員会の際にも申し上げましたが、私は、本行事が、本来の学習目的を大きく逸脱し、楽しむことを目的とした行事に傾倒していることに、警鐘を鳴らしたいと考えています」
バスケ部長「はぁ?学校行事を楽しむことに、何の問題があるわけ?」
栞子「楽しんでいることが問題なのではありません。学習効果が低いことが問題なのです」
栞子「以前から本校の球技大会は、クラスマッチでの勝利にこだわりすぎるあまり、より多くの人にスポーツを体験してもらうという側面が、おろそかにされている現状があります」
歩夢(た、たしかに得意なスポーツ以外は、私も出場は遠慮するようには、しているけど……)
栞子「そもそも球技大会は、多くの人に多様な球技を体験していただき、自らの適性と向き合う場にすること、また、自分の専門とは異なる球技を体験し、得られた知見を自らの専門へと反映させること。この二点に本質があります」 栞子「諸悪の根源は、クラスマッチ形式にあります。そこで今年は、本形式を廃止し、高いスポーツスキルを持つ部員の皆さんが、他の生徒にスポーツを教え、ともに高め合っていく、体験教室のような形式にしたいと考えております」
歩夢(な、なるほど……筋が通ってるような、通ってないような……)
バスケ部長「ク、クラスマッチの廃止!ですって!?」
バスケ部長「そ、そんなの飲めるわけないじゃない!ウチらに楽しむなっていいたいわけ?」
栞子「楽しむことは、行事の本質ではありませんので」
バスケ部長「バ、バカじゃないの!?そんなの行事じゃないっつーの!賛成できるかそんな議案!」
テニス部長「そ、そうだよね……いくらなんでも、やりすぎかも……」
うーん、例年の球技大会でも、いいんじゃないかな……?
クラスマッチで熱くなるのが、ニジガクの球技大会!って感じだもんね……
そうそう、それが伝統なんだよ!
やっぱりクラスマッチがないとねぇ……
うーん……
がやがや……
………
…
栞子「……」 バスケ部長「どう、わかった?これが生徒の意見、ってわけよ!」
栞子「……」
バスケ部長「私たちの球技大会を、たかが生徒会長の分際で、めちゃくちゃにしないでちょうだい!」ドンッ!!
そうだそうだ!
球技大会はみんなのものだぞ!
勝手に壊さないでよね!
ぶーぶー!
あなた「そ、そんな言い方しなくてもいいでしょ!」
栞子「……」
あなた「し、栞子さん……」
バスケ部長「どうやら、決まったみたいね。じゃあ委員会は終わりってことで」
栞子「……」
バスケ部長「じゃあ私、練習があるから」
バスケ部長「言い忘れてたけど、こっちの希望が通らないのなら、一切生徒会に協力するつもりなんてない。これだけは、覚えておきなさい」
ガラガラッ
シーン ………
…
今日も解散かー
結局何も決まらなかったけど、いいのかしら?
まあ生徒会長があんなんだし、しかたないかー
まったく、あんな無能会長に投票したの、どこの誰よ……
わいわいがやがや
………
…
栞子「……」
あなた「み、みんな……待ってよ!まだ、会議は終わってない!」
栞子「……いえ、大丈夫です。それに全員の参加がない委員会に、意味などありませんし」
あなた「そ、それはそうかも、だけど……」
栞子「とにかく今は落ち着きましょう。あなたも私も……みなさんも……一度クールダウンする必要があります」
あなた「う、うん……」
歩夢「……」
菜々「歩夢さん、私たちも帰りましょうか。練習がありますし」
歩夢「で、でも……」
菜々「歩夢さん。これは私たちの問題ではありません。明らかに私たちが対応できる範疇を超えています」
菜々「それに今の私たちはスクールアイドル同好会の代表という立場です。あまり生徒会側に肩入れしてしまうというのも、好ましくないと思います」
歩夢「そ、そうだけど……」
菜々「ですから今は栞子さんを信じましょう。それに部長もついていてくれてますし、ね?」
歩夢「う、うん……」 生徒会室
あなた「栞子さん、大丈夫?」
栞子「……ええ。あれくらいは想定の範囲内です。私に譲れないものがあるように、皆さんにも譲歩できないものがある。以前あなたが教えてくれたはずです」
あなた「それは、そうだけど……」
あなた「でも、私の想像以上にピリピリしてたっていうか……一触即発だったっていうか……」
あなた(……)
あなた(それもそうだよね……だって各部活の晴れ舞台だもん……)
あなた「で、でもね!お互いに尊重し合って、協調し合えばね!きっと落としどころが見つかるはずだよ!頑張ろうね!栞子さん!」
栞子「……」
あなた「だ、だからね、まずは、栞子さんの考えを聞かせて欲しいな。私もこの議案は今日初めて読んだから、イマイチつかみきれてない部分があるっていうか……」
栞子「私の考え、ですか」
栞子「……」 栞子「残念ですが、今回はお話することが出来ません。これは学校の経営方針に関わることですので」
あなた「え、ええっ!?私のこと、信用してくれてないの……?」
栞子「そういう意味ではありません。あくまであなたは単なる弱小同好会の部長という立場に過ぎません。一生徒が首を突っ込んで良い話ではない、ということです」
あなた「それは、そうかもだけど……」
あなた「でも、栞子さんの考えがわからないと、私もサポートしづらいっていうか……」
栞子「……そもそも今回は、球技大会の進行補佐という名目でスクールアイドル同好会に協力を仰いだのであり、あなた個人に私のサポートをするように依頼したわけではないのですが」
あなた「でもっ!私は栞子さんのお手伝いをしたいの!だって私たち、友達だもん!困ってたら放っておけないよ!」
栞子「友達、ですか……」
栞子「……」
栞子「下らない関係ですね」 運動苦手だから部活のやつが張り切りすぎてて辛かったなぁ あなた「……えっ?」
栞子「友達関係など、学生生活において最も無駄と言うべき産物に過ぎないと、言っているのです」
あなた「そ、そんなことない!だって私には、私たちには!たくさんの仲間がいて……」
栞子「……もしかしてそれは、スクールアイドル同好会のことを言っているのですか?」
あなた「そうだよ!歩夢ちゃんがいて!愛ちゃんやせつ菜ちゃんがいて!みんながいて!互いに切磋琢磨し合って……」
あなた「それにね!もう栞子ちゃんだって!私の、私たちの大切な仲間の、一人なんだよっ!」
栞子「……ですからそれが無駄な関係だと、申し上げているのです」
栞子「考えてみてください。所詮あなた方はスクールアイドル活動を一緒にやるだけの関係に過ぎません。それ以上でもそれ以下でもありません」
あなた「そんなことない!だって私たちは……」
栞子「加えてスクールアイドル同好会は、以前関係性が上手くいかずに空中分解しかけたと伺っております。所詮その程度の関係性だった、ということではないのでしょうか?」
あなた「それは……私も、同好会に入部する前だったし……」
栞子「あなたがいないと始まらない関係性。それは仲間関係ではなく、共依存というものです」
栞子「所詮人間は、利害関係でしか協力することが出来ません。だからこそ今回の球技大会の実行委員会も、ここまで紛糾しているのでしょう」
あなた「栞子さん……」
ブブッ
栞子「……理事長より連絡が入りました。時間ですので、私はこれで」
あなた「あっ!栞子さん!待ってよ!」
栞子「……失礼します」スタスタ
あなた「栞子さん!私!絶対に栞子さんのことサポートして、大会を成功させて見せるから!栞子さんが嫌だって言っても、絶対に!」
栞子「………」スタスタ
………
… 会議室
栞子「失礼します」
理事長「おお!三船クン!待っていたよ!」
栞子「すみません。実行委員会が少し長引いていたもので」
理事長「実行委員会というと……球技大会のかね?」
栞子「はい。そうです」
理事長「そうか、もうそんな季節なのか……年を取るとどうにも季節の進みが早くてな……」
理事A「理事長。そろそろ始めた方が良いのでは?」ヒソヒソ
理事長「うむ!ではただいまより、理事会の定例会を始める!」
理事長「ではまず最初に……三船クンから最近の学校環境について、説明していただこうかな?」
栞子「わかりました。では虹ヶ咲学園の最近の様子について、私の方から報告させて頂きたいと思います。お手元の資料の3ページをご覧ください」
栞子「ご存知のように我が学園は『様々な分野におけるスペシャリストの育成』を目標として、これまで教育活動に励んできました。中でも吹奏楽部は全日本吹奏楽コンクール出場、バスケットボール部はインターハイ出場など、輝かしい成績を収め…… ………
…
栞子「……以上が本校の現状の特色です。我々生徒会としても、教育環境の拡充に努めるとともに、生徒自身が自らの適性に合う教育を受けられるよう、適性発見の場を整えるだけでなく、生徒会側が積極的にサポートしていく体制を継続していければと考えております。以上です」
理事A「……さすがは三船さんのところのご令嬢だな」ヒソヒソ
理事B「ああ、前の会長は夢や希望にあふれたエネルギッシュな感じだったが、三船さんは堅実な活動方針が理事長にも上手く評価されてるみたいだぜ」ヒソヒソ
理事C「これで三船家の地位も鰻登りってわけか……」ヒソヒソ
栞子「……」
理事長「……ふむ、ありがとう。三船クン」
理事長「それで……私がもっとも気にしている部分であるのだが……」
理事長「その計画で、本当に入学希望者は、十分に確保できるのかね?」 栞子「……それは……私には判断できかねます」
理事長「わかっているとは思うが……三船クン、学校経営で最も大事なのは、生徒数を確保できるかどうかだ」
理事長「今の日本は少子高齢化社会。生徒数を確保できずに廃校、という学校も、多く発生しているのが現状だ」
理事長「もちろん我が学園はある程度の大きさはある故、今すぐに廃校の危機が迫っている、というわけではない。ただ生徒数が減少すれば、経営難にも繋がりかねない、というのは事実だ」
理事A「うわっ、でたよ理事長の理事長節……」ヒソヒソ
理事B「この話何回目だよ……だれか止めてこいよ……」ヒソヒソ
理事C「ほんと、金のことしか考えてねーな、あいつ……だからこそ理事長になれたんだろうけど……」ヒソヒソ
栞子「……」
理事長「私立高校は慈善事業ではない、企業なのだよ。企業ならば、顧客がいるはずだ。顧客を満足させることが、企業の使命」
理事長「顧客は誰かといえば、当然、出資者である保護者方だ。……生徒じゃない」
理事長「『子供を入れて良かったと思える学校を創ること』これが最も重要なことなのだよ、三船クン?私のこの方針を最も良く反映してくれると思ったから、選挙では私は君を推薦したのだよ……中川クンではなくてね」
理事長「それだけは、忘れないでいてくれたまえよ」
栞子「……」
栞子「……ええ、わかっていますよ、理事長」 理事会後
栞子(生徒数が確保できるような、学校づくり……)
栞子(ならば生徒が成長することが出来るような環境を作ることが一番なはず……)
栞子(そう、私の考えは、間違っていないはず……)
栞子(でも……)
栞子(上原さんや、同好会の皆さんは……)
栞子(なぜあそこまで、本来の目的から逸脱したものに、夢中になれるんだろう……)
栞子「……」
??「三船さん、こんにちは。少しお話、いいかしら?」
栞子「はい、構いませんが……」
栞子(どうして私の名前を知っているのでしょうか……それに、校内ではあまり見かけない方ですね……他校からの来賓の方、でしょうか……?)
??「私、千代田区にある音ノ木坂学院高校で理事長をしております」
ことりママ「南って言います♪」 栞子「音ノ木坂学院高校……」
栞子(確かロボット研究会、書類選考落選以外は、めぼしい成績を残せず一度は廃校が決定しかけたものの……)
栞子(その後入学希望者数を回復させることに成功し、経営を回復させたと言われている高校……)
ことりママ「あら?もしかしてご存知、なのかしら?」
栞子「はい。全国有数の、素晴らしいスクールアイドルがいると、伺っております」
ことりママ「三船さんもμ’sのこと応援してくれてるのね。ありがとう」
栞子「いえ、別に応援している、というわけでは……」
栞子「……それで、音ノ木坂の理事長さんが、虹ヶ咲学園に、何のご用件ですか?」
ことりママ「実はね、虹ヶ咲学園の最近の素晴らしい教育の秘密を探ろうと、さっきの理事会を見学させてもらってたの、でも……」
ことりママ「三船さんのことが、少し気になって」
栞子「……私のことが、ですか?」 ことりママ「ええ。以前私の学校にも、学校のことを考えすぎて、自分の気持ちを疎かにしてしまう子がいたから、昔のあの子に、重なっちゃってね……あの子は今は、元気にスクールアイドルに、励んでいるんだけど……」
栞子「……別に私は、生徒会長としての職務を全うしているだけです」
ことりママ「うん。学校のために頑張ること、それは悪いことじゃないと、私も思うわ」
ことりママ「でもね、あなただって生徒の一人だってこと、忘れちゃだめなのよ?」
ことりママ「学校を良くするのは大人の役目。学生生活を全力で楽しむのが、生徒のお仕事なの。それだけは、はき違えちゃダメだと思うの」
ことりママ「だからあなたも、やりたいって思えることを、やることをお勧めするわ。今しかない、時間だもの」
栞子「はぁ……」
ことりママ「伝えたかったのはそれだけ。じゃあ私はこれで、失礼します♪」
栞子「いえ、こちらこそ、貴重なご意見をいただき、ありがとうございました」
ことりママ「あっ、そうだ。それと三船さん」クルッ
ことりママ「μ’sのこと、これからも応援、よろしく頼むわね?」
栞子「……」
栞子「別に私は、スクールアイドルのファンではないのですが……」 同好会 部室
かすみ「そういえば先輩、結局球技大会のお話は、あの後どうなったんですか?」
歩夢「う、うん……あんまり会議はまとまらなかったんだけど……」
あなた「そうだね、今後の進展に期待って感じかな……」
あなた「それと、実行委員会の後に栞子さんに言われたんだけど……」
………
…
あなた「……って言われちゃってね」
かすみ「むかむかっ!!しお子のヤツ!ひどすぎます!私たちのこと仲間じゃないなんて!そんなひどいこと言うなんて信じられません!最近少しは改心してきたかなって思いかけてたのに!」
あなた「う、うん……そうだね……」
あなた(かすみちゃんのこの様子だと、ワンダーフォーゲル部のこと言われたことは、黙っておいて、正解だったよ……)
歩夢「そんなことがあったんだ……」
果林「でも、友達関係まで無駄なもの扱いするなんて……これまた思い切ったことを言うのね、あの子も……」
歩夢「う、うん。今まで、少し変わった価値観を持つ人だなって、思ってはいたけど……」 愛「そうだよっ!友達はたくさんいた方がハピハピでテンアゲっしょ!これは愛さん直々に友情の大切さを教えてあげるしかないっ!」グッ
かすみ「そうです!そうと決まれば戦争です!かすみん今回ばかりはほんとに頭に来ました!堪忍袋の緒も限界ですよ!」プンプン
璃奈「かすみさん。暴力は良くないと思う。璃奈ちゃんボード『レイセイ』」
しずく「そうだよかすみさん。争いは新たな火種を生むだけだよ」
かすみ「じゃあ!しず子は私にどうしろって言うの!このままじゃまた、私たち……」
しずく「そ、それは……」
歩夢「……」
栞子「……まだみなさん残られいてたのですか」 かすみ「げっ!?しお子!?どうしてここに!?まさか盗聴してたとか!?ヘンタイ!エッチ!のぞき魔!!」
栞子「……別に、最終下校時刻になったので、戸締りをしていただけですが」
かすみ「そういってかすみんたちのこと見張りに来たんじゃないの?もうしお子の言ってること、一切信用できないんだからね!」
栞子「……信用するかしないかは、そちらの勝手ですよ」
せつ菜「まあまあかすみさんも落ち着いて……すみません栞子さん。すぐ帰りますので……」
栞子「……」
栞子「中川さん」
せつ菜「はい?どうしました?」
栞子「聞くところによると、あなた、どうやら理事長と学校の運営方針で、意見の相違があったようですね」 せつ菜「……」
栞子「愚かなことを。それがなければ……もしかしたら、多くのものを手放さずにすんだかもしれないというのに……」
栞子「これが夢を追い求めた結果ですよ、中川さん。あなたに残るその幼さが、自身を破滅へと導いたのです」
かすみ「し、しお子……!!」ワナワナ
かすみ「このっ!せつ菜先輩の悪口まで!もうほんっとにあったまきた!歯を食いしばりなさい!しお子!」ポロポロ
せつ菜「いえ、いいんですよ、かすみさん」
せつ菜「……全て、栞子さんの言う通りなので」 かすみ「せつ菜先輩……どうして……どうして!」ポロポロ
せつ菜「……」
栞子「……」
歩夢「……」
栞子「……とにかく、最終下校時刻も守れないとは、人の上に立つ者としての資質に欠けていると言わざるを得ません」
あなた「違うの栞子さん!それは私が悪いの!部長の私が、練習を上手く組み立てられなかったのが……だからせつ菜ちゃんは、何も悪くないの!」
栞子「……」
栞子「……言いたいことは、以上です。わかったなら、早く下校して下さい」
栞子「では、私は残りの仕事がありますので、これで」スタスタ
せつ菜「……」
あなた「……」
かすみ「……」 かすみ「……さ、さぁっ!わ、私たちも、帰りましょうか!そ、そうだ先輩!わ、私!この前学校の近くにおししいジェラート屋さんみつけたんですっ!よ、良かったら、一緒に……」
あなた「かすみちゃん……」
かすみ「だ、だから……そ、その、せつ菜先輩、も……」
せつ菜「……」
せつ菜「いえ、私は大丈夫ですよ、かすみさん。もう、大丈夫、なので……」ニコッ
かすみ「せつ菜先輩……」
かすみ「そ、そうですか……わかりました……あのっ、じゃ、じゃあ、歩夢先輩、は……」
歩夢「……」
歩夢「ごめんねかすみちゃん。私、ちょっと寄るところ、思い出しちゃったから」ダッ
かすみ「あっ!歩夢先輩!」
あなた「歩夢ちゃん……」
………
… 生徒会室
栞子「……」カリカリ
栞子「……」
あなた『違うの栞子さん!それは私が悪いの!部長の私が、練習を上手く組み立てられなかったのが……だからせつ菜ちゃんは、何も悪くないの!』
かすみ『このっ!せつ菜先輩の悪口まで!もうほんっとにあったまきた!歯を食いしばりなさい!しお子!』
栞子「……」
栞子「……」カリカリ
栞子「……」
栞子(……邪念が気になって、集中できません)
栞子「……」
栞子「このままでは、私も……」
ピトッ
栞子「ひゃん!!?」 歩夢「あっ、驚かせちゃった?ごめんね?栞子さん」
栞子「……」ジトッ
歩夢「でも、一度やってみたかったんだ〜、ほら、冷たい飲み物をぴたってするシーン、ラブコメの定番シーンだもん」
栞子「……最終下校時刻はとっくに過ぎているはずですが?」
歩夢「それは栞子さんもだよ?どうして早く帰らないの?」
栞子「それは……私はまだ、こなすべきタスクが、残っているからです」
歩夢「だったら私もまだやんなきゃいけないこと残ってるから、学校に残っててもいいんだよね?」
栞子「……」
栞子「……勝手にしてください」
歩夢「うん。ありがと、栞子さん」 歩夢「あっ、そうだ栞子さん。さっきの冷たいコーヒー、飲んでいいよ?」
栞子「いえ、頂くわけには……」
歩夢「だって私の分は別に用意してるし、それにほら、私コーヒー少し苦手だし」
歩夢「だから、それは、栞子さんの分だよ?」
栞子「……」
栞子「……そういうことでしたら、遠慮なく頂きます」
歩夢「うん!遠慮なく遠慮なく、だよ?」
栞子「では……」
プシュッ!
ゴクゴク
栞子「…………!!!」
栞子「甘い……!!」
栞子(砂糖入りでしたか……それもかなり大量に……)
歩夢「あっ!ごめんね栞子ちゃん!コーヒー苦手だった?」
栞子「いえ……普段はブラックで飲んでいるので、少し驚いただけです……」
歩夢「ご、ごめんね!栞子ちゃんの好きなものとか、私、あんまり知らなくて……そ、それに、疲れた時には甘いものかなって思ったから……」
栞子「……」
栞子「いえ、気にしないでください。他人からの頂き物を無下には出来ませんし、それに……」
栞子「……」ゴクゴク
栞子(今はこの甘ささえも、なんだか心地よい気がしますから……) 栞子「それで……上原さんは何のために学校に残ってるんですか?」
歩夢「うーん……栞子さんのお手伝い、とか?」
栞子「はぁ、手伝い、ですか……」
栞子「では具体的に、何をしていただけるのでしょうか?」
歩夢「えっ!?うーん、それは……」
歩夢「…………!!」ピコン!
歩夢「栞子さん!さっきから球技大会実行委員会の議事録、作ってくれてるんだよね?だったらそれをお手伝いしたいな!」
栞子「……」
栞子「はぁ……それは別に構いませんが……」
ペラッ
歩夢「ふむふむ……」
歩夢「へぇ〜、栞子さんってやっぱりすごいね。一人でここまで作っちゃうなんて……」
歩夢「……」ペラペラ
器材監理。ストップウォッチ、在庫数十分確保
スコアボード、やや心もとないか。体育科及び担当部活に使用許可申請の必要あり
来週水曜日頃を目安として目途を立てる
人員。主審、副審一名ずつ、線審二名
担当部活部員のみでは不足、他の部活にも声をかけ、輪番制で回すこととする
………
… 歩夢「……」
歩夢(か、漢字だらけ……何言ってるか、さっぱりだよぉ……)
歩夢「で、でも、こんなに一人でやる必要、ないんじゃないかな……」
栞子「いえ、私が全体像を把握できていた方が首尾よく大会を進行できますし、幸いなことに、私にはこういう事務作業に関しては、ある程度の適性を有していると自負しております。それに……」
栞子「……」
栞子「第一回、第二回と実行委員会を無駄にしてしまっています。細かいことは事前にこちらで詰めておかないと、大会の開催まで、危ぶまれてしまいますから……」
歩夢「……」
歩夢(栞子さん、やっぱり会議の進行が遅いこと、気にしてたんだ……)
栞子「……それで、上原さん」
栞子「資料の作成は、手伝っていただけそうですか?」
歩夢「……」
歩夢「うぅ……おとなしく見学しておくことにします……」
栞子「……わかりました」 栞子「……」カキカキ
歩夢「……」ジーッ
栞子「……」カキカキカキカキ
歩夢「……」ジーッ
栞子「……先程から気になってはいたのですが、そこで何をやっているのですか?」
歩夢「へっ!?栞子さんに、エールを送っているん、だけど……」
栞子「……はぁ、エール、ですか」
歩夢「ご、ごめんね!じゃ、邪魔になっちゃうんだったら、もう少し端の方にいるように、するから……」
栞子「……いえ、邪魔というか」
栞子「その……」
栞子「ふ、普段から、他人に見られながら作業をするという経験が、あまり、ない、ので……その、緊張する、というか……///」
歩夢「……」
歩夢「ふふっ、そうなんだ」
歩夢「やっぱり栞子さんは、優しいんだね」 栞子「……先程の私の発言は、優しさとはあまり関係ないように思えますが」
歩夢「でも、栞子さんが優しいのはほんとだよ?」
栞子「……」
栞子(彼女が言わんとしていることの真意は、私には、まだ、わかりませんが……)
栞子(……それでもきっと、悪い意味では、ないのでしょう) 栞子「……」カリカリ
栞子「……上原さん。やっぱり、エールを送ることは私の仕事速度には影響しないと思います」
栞子「今日ももう遅いですし、帰られてはいかがでしょうか?ずっと待たせてしまうというわけにも、いきませんし……」
歩夢「で、でもっ!私は、栞子さんのこと、見届けてあげたいって思ってるから!」
歩夢「だから、もう少しだけ、お話させてよ!ねっ?お願い?」
栞子「上原さん……」
栞子「……」
栞子「上原さん、なぜあなたはそこまで私を待っていて下さるのですか?私の仕事が早く終わることは、あなたにとって何の得にもならないとは思いますが……」
栞子「それに……先程スクールアイドル同好会の部室を施錠しに行った際に、同好会のみなさんが私に大変腹を立てていることを聞いてしまい……少し気が立っていたとはいえ、喧嘩を売るような発言をしてしまったことは、事実ですし……」
歩夢「そ、それは、そうかもだけど……」
栞子「……」
栞子「……やはり、本当はみなさん、私の存在を、快く思ってないのでしょうか」ポツリ
歩夢「……」
歩夢「ううん、そんなことないよ、栞子さん」
歩夢「だって私たち、もう友達だもん」
栞子「とも、だち……」
栞子(確かあの部長にも、同じことを言われた気がします……) 歩夢「そう!友達だよ!一緒に練習したんだもん!スクールアイドルは、一緒に踊れば、それはもう友達の証、だよ?」
栞子「はぁ……そんな簡単なものなのでしょうか……?」
歩夢「うん!栞子さんは少し、難しく考えすぎなんだよ!だからね……」
栞子「う、上原さん!?///きゅ、急に何するんですか!?//い、いきまり背後をとるのは、卑怯ですよ!!?///」
歩夢「ほら、栞子さん♪リラックスリラックス♪」
栞子「えっ!?//あっ、はい……」
栞子(わ、私、上原さんに、肩、揉まれて……//)ドキドキ
歩夢「ほら、肩の力、抜いてごらん?」
栞子「は、はい!!//」
栞子(と、言われても、誰かにマッサージしてもらうのは、その……初めての経験なので……な、なんだか、少し、その……こそばゆい、と、言うか……///)
歩夢「うん♪そうそう♪そんな感じ♪」
栞子「は、はい……//」
栞子(で、でも、なんだか、その……)
栞子(心がほわほわ、してるみたいです……//)
………
… 歩夢「……うん!これくらいで大丈夫かな?」
栞子「……」クルクル
栞子(なんだか少し、腕が軽くなったように感じます……)
栞子「……すみません。わざわざ、ありがとうございます」
歩夢「ううん、大丈夫だよ?それにね、普段からあの子のマッサージしてあげてるから、慣れてるんだ」
栞子「そう、だったんですか……」
歩夢「うん!だから栞子さんも、マッサージして欲しくなったら、いつでも言ってね?」
歩夢「困ったときは、お互い様だよ?」
栞子「困ったときは、お互い様……」
栞子(それが、友達というものなのでしょうか……)
歩夢「じゃあ私、残りの時間は、隅っこのほうから、栞子さんに気合を送っとくね!邪魔しないように!」
栞子「は、はい……」
栞子「……」
栞子(……果たして、上原さんと私は、友達という関係性に、なれるのでしょうか?)
栞子(彼女の伸ばす手に触れたら、私も— 13章みたらあなしおぽむで3人組もありだなと思ってたところにこんなスレが
ぽむしおいいね 栞子「あのっ!上原さん!」
歩夢「ん?どうしたの、栞子さん?」
栞子「その!上原さんでも手伝って頂けそうな仕事があって!地味な仕事なんですけど!」
歩夢「うん、私は大丈夫だよ?」
栞子「あ、あのっ!そこに出ている資料を、全てファイルに戻していただけませんか?ページ番号は既に振り終えてますし、ファイルも正しく名前を対応させてあるはずなので、問題なくできるかと……」
栞子「で、ですから、その……」
栞子「お、お願いします!!」
歩夢「うん、わかった。やってみるね、栞子さん」
栞子「は、はい!ありがとう、ございます……」
歩夢「いえいえ!じゃあ二人で協力して、お仕事、片づけちゃおっ!」 翌日
栞子(結局、昨日はあの後、上原さんのご厚意に、甘える形になってしまいました……)
栞子(はぁ……ダメですね……あのくらいのタスクは、軽々とこなせるように、自分もステップアップしなくては……)
栞子(それに、球技大会の日付も、だんだんと迫っていますし……)
栞子(手遅れになってしまう前に、急いで仕上げなければ……)
栞子「……」カツカツカツカツ
………
…
しずく「えいっ!」
スカッ
かすみ「しず子惜しい!もう少しボールを、良く見てみて!」
璃奈「ボールの軌道を予測するのはとても大事。璃奈ちゃんボード『ファイトだよ!』」
しずく「うん!璃奈さん!もう一回お願い!」
璃奈「うん。いくよ。そーれ!」
しずく「えいっ!」
スカッ
栞子「……」ジーッ
栞子(……一体なにを、やっているのでしょうか?) 璃奈「あっ、栞子ちゃん。こんにちは」
栞子「……天王寺さん。あなた方はいったい、校庭の隅で、何をしているのですか?」
かすみ「べっつに!しお子には関係ないでしょ!」アッカンベー
璃奈「かすみちゃん、隠し事は良くないよ。璃奈ちゃんボード『トモダチ』」
しずく「実は私たち、ここでソフトボールの練習をしていたの」
栞子「……ソフトボールの、練習ですか」
しずく「うん。先輩方に、毎年球技大会は、バスケットボールとソフトボールがあるって聞いたから……」
しずく「私、これまであまりソフトボールってやったことなくて、バットにボールを当てられるか心配で……かすみさんと璃奈さんに、練習を手伝ってもらってたの」
栞子「球技大会の、練習……」
栞子「……」 栞子「……ですが、桜坂さん」
しずく「わかってるよ、栞子さん。適性のない努力は、無駄だからやめておきなさい、って言いたいんだよね?」
栞子「……」
しずく「……確かに私は球技が苦手で、このまま練習を続けても、上手くなれるかはわからないし……自分でもね、もしかしたらもう、限界なのかもって、考えちゃったり、するんだ」
栞子「じゃあ、なんで……」
しずく「でもね、頑張ったこの経験は、絶対いつか活きてくるって思うの。根拠はないんだけど……」
栞子「……」
しずく「それはスクールアイドル活動かもしれないし、お芝居のお稽古なのかもしれない。でも、絶対活きてくるってことだけは、なんとなく、わかるんだ……」
しずく「だから諦めちゃだめなんだと思う。それだけは、わかるの」
しずく「それに、璃奈さんとかすみさんが、ついていてくれてるし、ね?みんなと一緒なら、どんなことでも頑張れるって、そう思うんだ」
栞子「……」
かすみ「しお子!そういうことなの!わかったらしお子は部屋の中で書類とにらめっこしてきてよね!」アッカンベー
璃奈「かすみちゃん、言い過ぎ。璃奈ちゃんボード『ミンナトモダチ』」
栞子「……」
栞子(みんなと一緒なら、頑張れる、ですか……)
栞子(……)
栞子(……私には、わからないことだらけです) 生徒会室
ガチャッ
あなた「あっ、栞子さん遅い!ずっと待ってたんだよ!」
栞子「……なぜ当然のようにあなたが、生徒会室にいるのでしょうか」
あなた「明日の実行委員会の最終確認をするためだよ!さあ!もうひと踏ん張り!頑張ろ!」
栞子「……別にあなたに言われなくても、準備はするつもりです」
あなた「それで栞子さん、私に栞子さんのやりたいこと、話してくれる気になった?」
栞子「……何の話ですか?」
あなた「もうっ!この前約束したじゃない!栞子さんは自分のやりたいことをまとめて、私がそれに沿ってサポートしていくって!」
栞子(そんな約束、した覚えはないのですが……)
栞子(で、ですが……)
あなた「さあ!話して話して!」キラキラ
栞子(そんなにキラキラした目で迫られると……)
栞子「……」
栞子「……すみません。少しお時間を、頂けないでしょうか?」 栞子(……)
栞子(私の、やりたいこと……)
栞子(……)
栞子(思えば、ここ数日、目まぐるしく変化していて……こうして物思いにふける時間は、久しぶりな気がします……)
栞子(それに、色々な人とお話をして……)
バスケ部長『バ、バカじゃないの!?そんなの行事じゃないっつーの!賛成できるかそんな議案!』
理事長『私のこの方針を最も良く反映してくれると思ったから、選挙では私は君を推薦したのだよ……中川クンではなくてね』
栞子「………」
ことりママ『学校を良くするのは大人の役目。学生生活を全力で楽しむのが、生徒のお仕事なの。それだけは、はき違えちゃダメだと思うわ』
栞子「……」 せつ菜『いえ、いいんですよ、かすみさん……全て、栞子さんの言う通りなので』
しずく『だから諦めちゃだめなんだと思う。それだけは、わかるの』
栞子「……」
あなた『でも!私は栞子さんのお手伝いをしたいの!だって私たち、友達だもん!困ってたら放っておけないよ!』
歩夢『困ったときは、お互い様だよ?』
栞子「……」 栞子(この数日で、本当にたくさんの人と話をして、色々な考え方を耳にして……)
栞子(……やはり、自分のやるべきことはこれなんだって思えるものを、見つけることが出来ました)
栞子(正しいかなんてわからない。他の人から見れば、馬鹿馬鹿しいのかもしれない。それは、私がみなさんの考えを、尊重できないのと、同じように……)
栞子(でも……)
栞子(大切な物を守るためには、これしかないと思います) 栞子「……はい、決まりました」
あなた「おっ!さすが栞子さん!じゃあ話してみてよ!」
栞子「ですが……」
栞子「……あなたにだけは、話すことができません」
あなた「えっ!?もしかしてまた機密が何とかとか言い出すつもりなの?」
栞子「いえ、そうではありませんが……」
あなた「じゃあなんで?」
栞子「それは……」
栞子(あなたまで傷つけてしまうわけには、いかないので……)
栞子(それに、言ってしまえば、確実に反対されるでしょうし……)
栞子「……私が一人でやらないと、意味がないからです」 あなた「そんなことないよ!だって私たち友達なんだよ!辛いことも半分こ、したいよ!」
栞子「いえ、そういう意味ではなく……」
栞子「……とにかくもう一度だけ、汚名返上の機会を頂けないでしょうか?」
栞子「今度こそ、私の力で、球技大会の開催に、漕ぎ着けてみせますので……」ギュッ
栞子「お願いします、どうか……」
あなた「し、栞子さん……」
あなた「う、うん……栞子さんが、そこまで言うのなら……」
あなた「でもね」
あなた「無茶しようとしたら、ダメなんだからね」
あなた「私、ハッピーエンドの物語以外は、嫌いだから」
栞子「……わかってますよ、そんなこと」
あなた「うん、栞子さん」
あなた「信頼、してるからね?」 翌日 球技大会実行委員会
栞子「……全員揃ったようですね。では、ただいまより、第三回球技大会実行委員会を開催したいと思います」
栞子「既に皆さんご承知の通りかとは思いますが……大会の開催まで時間が差し迫ている状況です。円滑な議事進行に、ご協力よろしくお願いいたします」
バスケ部長「ちょぉっと待った!その前に!クラスマッチ形式についてはどうなったわけ?まさか、まだ廃止とか、ほざいてるんじゃないでしょうね?」
あなた(し、栞子さん、考えがあるとは言っていたけど……どうするんだろ……)ハラハラ
栞子「……ええ。私も少し考え直してみたのですが」
栞子「確かに大会の形式は、大会の教育効果にはあまり影響はないように思えます」
バスケ部長「じゃあ!クラスマッチ形式は続けてくれるってわけね!良かったわ!」
栞子「ですが、私からも二点ほど、条件があります」
テニス部長「じょ、条件……」ゴクリ 栞子「一点目。全ての生徒が平等に積極的に全種目への参加が叶うよう、各部活が主体となって改善を促すこと」
栞子「二点目。試合の際には勝利を貪欲に追求するのではなく、多くの生徒が参加しクラス全員が一丸となった競技となるように、部活動が主体となってクラスで呼びかけを行うこと」
栞子「この二点です」
バスケ部長「ま、待ちなさいよ!それじゃあ私たちがあんまり試合に出られなくなるじゃない!意味がないわ!」
栞子「球技大会はあなたのものではありません。全ての生徒のためにあるものですので」
栞子「ご協力、いただけますでしょうか?」
あなた(栞子さん……)
あなた(良かった……これなら全部円満に……)
バスケ部長「……協力なんて、できるわけないでしょう?」 バスケ部長「だって年に一度の晴れ舞台なのよ!私がこの日をどれだけ待ち望んできたことか!」
バスケ部長「自由にやらせてもらえない条件を、飲むことなんてできないわ!」
バスケ部長「あなたの考えには賛成できない。前回も言ったけど、私たちの要望が全て通らないなら、協力なんてすることはできない」
バスケ部長「そういうことだから」
栞子「……」
栞子「そうですか、では……」
栞子「残念ですが、球技大会は中止にするしかないようですね」
バスケ部長「………はい?」 バスケ部長「どこをどう解釈したら、中止なんて結論になるわけ?」
栞子「球技大会は各部活の積極的な協力があってこそ成り立つ大会です。それにバスケットボールは大会種目の一つでもあり、大変重要な競技です。その担当部活動の協力が仰げない以上、大会の円滑な開催は見込めないかと」
バスケ部長「……」
栞子「そういうことですので。では私はこのことを先生方に報告してこようと思います」
バスケ部長「バ、バカにするのも大概にしなさいよ!まだ中止でいいなんて、言って……」
栞子「協力できないとおっしゃったのは、あなたの方からだったのですが」
バスケ部長「そ、それは、そっちが、私の条件を、飲まなかったからで……」
栞子「私は出来る限り最大限の譲歩をしたつもりです。そちらにも少し譲歩していただくというのが、筋だと思いますが」
バスケ部長「……」
栞子「……」
歩夢「……でも、みんなが楽しく色んな競技に参加できるのなら、いいことなんじゃないかなぁ?」ポツリ 菜々「ええ、歩夢さん、私もそう思います、それに……」
せつ菜「歩夢さん!私!バドミントンに出場してみたいです!実は私、球技大会のために去年からひそかに練習してたんですよ!私の渾身のせつ菜ウルトラミラクルスマッシュを、お見舞いしてみせますよ!!!」
歩夢「う、うん、頑張ってね、せつ菜ちゃん……」
テニス部長「わ、私も、みんながテニスの楽しさを知ってもらう機会になるなら、それで……」
私もたくさんの競技に参加できる方がいいと思うなー
今まで部活の人と上手な人しかできない雰囲気だったもんねー
それは改善するべきだと、ずっと思ってたんだー
あっ、私ね、実はテニス!やってみたかったんだ!
あっ!私も私も!
うん!じゃあ試合に向けて!一緒に頑張ろうね!
がやがやがやがや
………
…
栞子「……」
バスケ部長「……」
栞子「……もう一度、質問させていただきます」
栞子「私の条件を、お飲みいただけますか?」 バスケ部長「……」
バスケ部長「……わかったわ」
栞子「他の部活動の代表の方々も、これでよろしいでしょうか?」
ぱちぱちぱちぱち
栞子「ありがとうございます。ご協力いただき、感謝いたします」
栞子「では、大会の基本的な方針が決定いたしましたところで、次に細かい運営の内容に入っていきたいと思います。配布した資料の3ページをご覧ください。まず、大会当日のタイムテーブルについてですが……
………
… 実行委員会終了後
栞子「……」スタスタ
バスケ部長『最後に一つだけ言わせて』
バスケ部長『私、あなたのこと、嫌いだから』
バスケ部長『あなたの考え方、理解するつもりなんてないから』
バスケ部長『それだけよ』
栞子『……奇遇ですね。私も同感ですよ』
栞子『あなた方のその考え方は、私も理解できないと思いますので』
栞子「……」スタスタ
栞子(……結局、やってしまいましたね)
栞子(でも私にはこれしか、方法を知らなかったので……)
栞子(協力とか友情とかを、私はまだ知らないので……)
栞子(……)
栞子(ああ、この後きっと、あの人に怒られてしまうんでしょうね……)
栞子(仕方のないことです。自業自得ですから……)
??「栞子さん!」
栞子(などと考えてるうちに、ほら、もう……)
栞子「ぶ、ぶちょ
歩夢「栞子さん!どうしてあんなことしちゃったの!」ギュッ
栞子「う、上原さん!?」 歩夢「ねえ、栞子さん……」
歩夢「どうして無茶なんてしちゃうの?どうしてもっと平和に解決できないの?」
歩夢「栞子さんなら、もっと……それに、あの子だって、ついていてくれてたわけだし……
栞子「……」
栞子「……ですが結果的に、球技大会の開催に漕ぎ着けられました。わが校の球技大会の問題も解消できました。私の創る理想の学園にも、これでまた一歩近づきました」
栞子「全て上手くいったんです。私も、生徒も、そしてあなたも」
栞子「だからこれが、ハッピーエンド、なんですよ」
歩夢「そんなことない!」
歩夢「いくら私たちが嬉しくても……学校のみんなが幸せになれたとしても……」
歩夢「その幸せの中に、私は、栞子さんもいて欲しいって思ってるから」
栞子「……」
歩夢「ねえ栞子さん」
歩夢「誰かを幸せにすることは、学校のみんなのために頑張ることは」
歩夢「栞子さん自身が傷ついていいことの、理由にはならないんだよ?」
歩夢「そのことだけは、忘れないでいて欲しい」 栞子「……」
栞子「……別に、上原さんには、関係のないことです」
歩夢「関係なくなんてない!」
歩夢「言ったよね?私たち、友達だって!」
歩夢「友達が傷つく姿を見るのは嫌なの!私が嫌なの!」
歩夢「だからお願い……もうあんな無茶なことするのは、これでおしまいにして欲しい……」
歩夢「だから、だから……」ポロポロ
栞子「……上原さん、なぜあなたが泣いてるのですか?」
栞子(……)
栞子(私が彼女を悲しい気分に、させてしまったのでしょうか……?)
歩夢「だって……だってぇ……」
歩夢「栞子さんが、泣いてるからぁ……」ポロポロ
歩夢「私も、悲しくて……ぐすっ」 栞子(……)
栞子(私が、泣いてる……?)
栞子(そんなわけありません。会議も無事に終了しましたし、障壁は全て取り除きました)
栞子(これ以上、何が私を困らせてるというのでしょうか……)
栞子「……」ツーッ
歩夢「栞子さん……栞子さん……ごめんね……ぐすっ」
歩夢「私がもっと、協力できてれば、あんなことにはならなかったのに……」
歩夢「ごめんね、栞子さん……」ポロポロ
栞子「……」
栞子(彼女の涙のその意味は、今でもまだ、分からないままです) ———
栞子(球技大会もつつがなく終了し)
栞子(季節がまた一つ、進もうとした頃……)
栞子「……」スタスタ
しずく「えいっ!」ポーン
かすみ「いくよ!りな子!」ポーン
璃奈「わわっ!?」ポーン
しずく「璃奈さん、ありがと!」ポーン
かすみ「ナイスしず子!かすみんも負けてられないよ!えいっ!」ポーン
璃奈「さっきのお返し。フルパワー!」ポーン
しずく「わわっ!?璃奈さん、すごい……」
わいわいわいわい
………
… 栞子「……」ジーッ
しずく「あっ、栞子さん。こんにちは」
璃奈「こんにちは栞子ちゃん。璃奈ちゃんボード『ペコリ』」
かすみ「げっ!?しお子!?何しに来たの!?かすみんたち別に、校則違反なんてしてないけどっ!」
栞子「いえ、単純にあなたたちが何をやっているのか、気になったので……」
かすみ「別にかすみんたちが何やってようと勝手でしょ!」
璃奈「かすみちゃん。仲間外れにするのは良くない。璃奈ちゃんボード『トモダチ』」
しずく「あのね栞子さん。私たちここで、バドミントンの練習をしてたの」
栞子「はぁ、バドミントンの、ですか」
しずく「うん。この前の球技大会でね、私もバドミントンをやらせてもらえたんだけど、それが思いのほか楽しかったの!これなら球技が苦手な私でも、練習すればちょっとは上手くなれるかもって思って」
しずく「それにね!ラリーが続くととっても楽しい!さっきなんて50回も続けられたんだ!」ニコッ
栞子「そう、でしたか……それは、良かったです……」 栞子(桜坂さん、球技に適性はないものと、思っていたのですが……)
栞子(今の彼女の笑顔は、太陽みたいに、まぶしいです)
栞子(これが……)
栞子(姉さんが言ってた『輝いてる』ということなのでしょうか……?)
栞子(……)
栞子(やはりまだまだ、私にはわからないことだらけです)
しずく「うん。私ね、球技大会が無かったら、ずっと球技の楽しさを知らないままだったのかもって思うんだ」
しずく「だからありがとう、栞子さん」 栞子「別に私は何もしていませんが」
しずく「歩夢先輩から聞いたよ?栞子さん、私みたいに球技が苦手な人でも楽しめるように、たくさん工夫してくれていたんだよね?」
栞子「……」
栞子「……桜坂さんのためではありません。ただ私のやりたいように、やった結果です」
しずく「うん、やっぱり栞子さんは優しいんだね。ありがとう」
栞子(……)
栞子(……いえ、そう言って微笑んでくれるあなたの方が、私なんかより何十倍も優しいんだと思いますよ)
栞子(それは、私にはできないことですから)
栞子(私にはわからないことですから)
栞子(友達の意味も努力の理由も、私にはまだ理解できませんし、いつか理解できるようになるのかさえも、わからないままです)
栞子(ただ、それでも……)
栞子(あなたと……いえ、あなたたちと過ごすこの日々は、とても楽しいって思えます)
栞子(楽しいって、そう思えるからこそ)
栞子(伸ばしてくれるその手を、つい握り返してしまいたく、なってしますのです)
栞子(……) しずく「栞子さんのおかげで、また一歩成長することが出来た気がする!栞子さん、これからもお互い、頑張ろうね?」
栞子「は、はい……」
栞子「……」
栞子「あ、あのっ!」
しずく「どうしたの、栞子さん?」
栞子「じ、実はこの後たまたま予定が空いていて……ちょ、ちょうど体を動かしたいと思っていた頃合いで……た、たまにはみなさんと親睦を深めるというのもいいかなと思い……//」
栞子「ですから、その……//」
栞子「わ、私も!バドミントン!混ぜていただけませんか?」 栞子(こ、これでよかったんでしょうか……)ドキドキ
しずく「うん!いいよ!一緒に練習しよ?」
璃奈「みんなでやった方が、絶対楽しい。璃奈ちゃんボード『ワキアイアイ』」
しずく「それに四人になると、ちょうどダブルスができるね!私一回やってみたかったんだ〜」
かすみ「ほら!しお子は私とペアなんだから!足引っ張らないでよね!」
栞子「え、あ、はい……よろしく、お願いします……」
かすみ「はっ!もしかしてこれはしお子を見返す、絶好のチャンスなのでは!?かすみんの華麗なミラクルショットで、しお子をぎゃふんと言わせちゃいますよ!」
栞子「……あまり私を見くびらないでください。これでも運動には、自信があるほうなので」
しずく「二人とも!ラリーなんだから!返しやすい球をお願いね〜、いっくよ〜」ポーン
かすみ「しお子!任せた!」
栞子「はい!行きます!」ポーン
璃奈「さすが栞子ちゃん。フォーム綺麗」
しずく「うん!私たちも、負けてられないね!璃奈さん!」ポーン
わいわいがやがや
栞子(本当にみなさんと過ごす時間は楽しくて)
栞子(かけがえのない時間なんだなって、実感します)
栞子(だから、もしも神様がいるのなら)
栞子(どうか、もう少しだけみなさんと、一緒にいられますように) 終わりです。お粗末様でした
栞子ちゃんだけはポンコツ化させちゃだめだと思うチカ
ここまでコメント&お読みいただき、ありがとうございました! 乙
変なキャラ付されてなくて良かったぞ
でもあなたちゃんが栞子さん呼びしてるのと確かに読点の多さは気になったわ 栞子「友だちごっこぉ慣れたもんさ〜でも手を振ったら泣いちゃった〜♪」 栞子はダメなのにせつ菜の大声と語尾のチカはネタにしていいのか
身勝手だな 胃がキリキリしたが最後栞子ちゃんが楽しそうでホッとした
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