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ルビィは激怒した。

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0001名無しで叶える物語(えびふりゃー)
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2020/04/07(火) 21:45:42.97ID:zyyxGR7l
ルビィは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
ルビィには政治がわからぬ。ルビィは、漁村の漁師である。網を張り、船上で昼寝をして暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明ルビィは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此この沼津の市にやって来た。
ルビィには父も、母も無い。旦那も無い。十八の、勝ち気な姉と二人暮しだ。
0002名無しで叶える物語(えびふりゃー)
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2020/04/07(火) 21:47:11.92ID:zyyxGR7l
この姉は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。
結婚式も間近かなのである。
ルビィは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。
ルビィには竹馬の友があった。漆黒の堕天使ヨハネである。今は此の沼津の市で、自宅警備員をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
0003名無しで叶える物語(えびふりゃー)
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2020/04/07(火) 21:48:15.80ID:zyyxGR7l
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。
歩いているうちにルビィは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。
のんきなルビィも、だんだん不安になって来た。
路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二日まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈だが、と質問した。
0006名無しで叶える物語(えびふりゃー)
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2020/04/07(火) 21:51:42.91ID:zyyxGR7l
若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。
老爺は答えなかった。ルビィは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
「王様は、マスクを配ります。」
「なぜ配るのだ。」
「悪菌を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪菌を持っては居りませぬ。」
「たくさんのマスクを配ったのか。」
「いえ、はじめは一人あたり10万円を。それから、世帯あたり30万円を。それから、収入の半減した者のいる世帯に限り30万円を。それから、お肉券を。それから、お魚券を。それから、マスク2枚を。」
「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、自宅で待機することを命じて居ります。御命令を拒めば悪菌にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」
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